弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
別紙1「処分目録」記載の各処分(なお,同別紙で定める略称等は,以下に
おいても用いることとする。)をいずれも取り消す。
第2事案の概要等
1事案の要旨
本件は,亡P1(平成▲年▲月▲日死亡)の相続人である原告らが,東京国
税局長において,亡P1に対し,①滞納会社の滞納に係る国税につき,国税徴
収法(以下「徴収法」という。)32条1項及び37条の規定に基づき,亡P
1の所有に係る本件不動産1~4(以下「本件各不動産」という。)の限度に
おいて第二次納税義務を負うとして,本件告知処分1~4(以下「本件各告知
処分」という。)をし,その後,②本件督促処分1~4(以下「本件各督促処
分」という。)及び③本件差押処分1~4(以下「本件各差押処分」といい,
本件各告知処分及び本件各督促処分と併せて「本件各処分」という。)をした
ことについて,同法37条のいわゆる柱書に規定する第二次納税義務の成立要
件が満たされていない旨を主張して,本件各処分(ただし,本件告知処分1に
ついては,後記3(5)オの裁決による一部取消し後のもの。)の取消しを求め
る事案である。
2徴収法の定め
(1)ア徴収法32条1項前段は,税務署長は,納税者の国税を第二次納税義務
者から徴収しようとするときは,その者に対し,政令で定めるところによ
り,徴収しようとする金額,納付の期限その他必要な事項を記載した納付
通知書により告知しなければならない旨を定めている。
イ徴収法32条2項は,第二次納税義務者がその国税を同条1項の納付の
期限までに完納しないときは,税務署長は,同条3項において準用する国
税通則法(以下「通則法」という。)38条1項及び2項(繰上請求)の
規定による請求をする場合を除き,納付催告書によりその納付を督促しな
ければならず(前段),この場合においては,その納付催告書は,国税に
関する法律に別段の定めがあるものを除き,その納付の期限から50日以
内に発するものとする(後段)旨を定めている。
ウ徴収法32条4項は,第二次納税義務者の財産の換価は,その財産の価
額が著しく減少するおそれがあるときを除き,同条1項の納税者の財産を
換価に付した後でなければ行うことができない旨を定めている。
(2)徴収法37条は,同条各号(下記ア又はイ)に掲げる者が納税者の事業の
遂行に欠くことができない重要な財産(以下「重要財産」という。)を有し,
かつ,当該財産に関して生ずる所得が納税者の所得となっている場合におい
て,その納税者がその供されている事業に係る国税を滞納し,その国税につ
き滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるとき
は,当該各号に掲げる者は,当該財産(取得財産を含む。)を限度として、
その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う旨を定めている。
ア1号(省略)
イ2号納税者がその事実のあった時の現況において同族会社(会社の株
主等〔その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。〕
の3人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人が
その会社の発行済株式又は出資〔その会社が有する自己の株式又は出資を
除く。〕の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は
出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。徴収
法35条1項,法人税法2条10号)である場合その判定の基礎となっ
た株主又は社員
3前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者に
おいて争うことを明らかにしない事実である。以下「前提事実」という。)
(1)滞納会社の概要
ア滞納会社は,平成3年7月17日,養鶏業並びに鳥卵の製造加工及び販
売等を目的として設立された株式会社であり,亡P1が代表取締役の職に
あった。なお,滞納会社は,少なくとも,平成12年9月1日~平成13
年8月31日の事業年度から平成15年9月1日~平成16年8月31日
の事業年度までの間においては,亡P1が発行済株式の100%を保有す
る同族会社であり,亡P1は,徴収法37条2号にいう「その判定の基礎
となった株主」に該当する。
イ滞納会社の売上げの大部分は,P2株式会社(以下「P2」という。)
に対する液卵(鶏卵の加工品)及び冷凍卵の販売取引並びにP3株式会社
(以下「P3」という。)に対する鶏卵の販売取引によるものであり,滞
納会社は,P3が加工した液卵を株式会社P4(以下「P4」という。)
を介して仕入れ,P2に販売していた。
ウ滞納会社は,平成16年8月31日,株主総会の決議により解散し,亡
P1が清算人に就任したが,平成18年10月13日の時点において,清
算が結了した旨の登記はされていない(乙1)。なお,平成16年9月1
日,養鶏業等を目的とし,本店所在地を滞納会社と同一場所とする株式会
社である「株式会社P5農場」(代表取締役・亡P1)が設立された(乙
6)。
(2)亡P1による本件各不動産の所有等
ア亡P1は,①平成8年7月5日,売買により本件不動産1-1~12の
所有権を取得し,②平成9年5月31日,本件不動産1-13を新築して
その所有権を取得し,③前記(1)ウのとおり滞納会社が解散した平成16
年8月31日までの間,これらを所有していた(乙2の1~13)。なお,
本件不動産1は,平成18年1月1日に行政区画が変更されるまで,いず
れも茨城県旧水海道市(以下「旧水海道市」という。)の区域内に所在し
ていた(乙2の1~13)。
イ亡P1は,平成15年6月18日,売買により本件不動産2の所有権を
取得し,平成16年8月31日までの間,これらを所有していた(乙3の
1~5)。
ウ亡P1は,平成5年6月22日,売買により本件不動産3の所有権を取
得し,平成16年8月31日までの間,これらを所有していた(乙4の1
~6)。
エ亡P1は,平成15年7月7日,有限会社P6(以下「P6」とい
う。)との間の売買により,本件不動産4の所有権を取得し,平成16年
8月31日までの間,これらを所有していた(甲5,乙4の1~6,原告
P7)。なお,本件不動産4は,平成18年1月1日に行政区画が変更さ
れるまで,いずれも旧水海道市の区域内に所在していた(乙4の1~6)。
オ滞納会社は,亡P1から本件各不動産を無償で借り受けて,これらを養
鶏業の用に供していたところ(ただし,本件各不動産が養鶏業の用に供さ
れていた時期や,そもそも本件不動産1-12及び本件不動産4-4が上
記の用に供されていたか否かについては,当事者間に争いがある。),滞
納会社において,①本件不動産4-9~13に係る養鶏場は「第1農場」
と,②本件不動産4-1~3に係る養鶏場は「第2農場」と,③少なくと
も本件不動産4-5~8に係る養鶏場は「第3農場」と(本件不動産4-
4が第3農場として用いられていたか否かについては,当事者間に争いが
ある。),④本件不動産1-7~11及び13に係る養鶏場は「第4農
場」と,⑤本件不動産1-1~6に係る養鶏場は「第5農場」と,それぞ
れ呼称されており,また,いずれも旧水海道市の区域内に所在していたこ
れらの養鶏場の総称として「P8農場」との呼称も用いられていた(甲1,
弁論の全趣旨。上記①~⑤の個々の養鶏場については,特に断らない限り,
以下「第1農場」のように略称する。)。なお,第1農場~第5農場を含
む本件不動産1及び本件不動産4の各不動産のおおよその位置関係は,別
紙図面のとおりである(乙37の1~3,38,39)。
(3)滞納会社に対する課税の状況
ア滞納会社は,練馬東税務署長に対し,平成18年8月14日,別表1の
とおり,法人税,消費税及び地方消費税(税額合計1億2719万240
0円)につき,期限後申告書を提出した。
イ練馬東税務署長は,滞納会社に対し,平成18年10月31日,①別表
2のとおり,前記アの法人税につき期限後申告に係る無申告加算税(税額
合計1146万6000円)の賦課決定処分を,②別表3の1~3のとお
り,前記アの消費税及び地方消費税につき本税の更正処分(税額合計1億
6516万1300円)並びに同更正処分に係る無申告加算税(税額合計
2477万1000円)及び前記アの期限後申告に係る無申告加算税(税
額合計760万8000円)の賦課決定処分を,③別表4のとおり,源泉
所得税につき本税及び不納付加算税(税額総計1511万9615円)の
納税告知処分を,それぞれした(弁論の全趣旨)。
(4)滞納処分の状況
ア東京国税局長は,練馬東税務署長から,通則法43条3項の規定に基づ
き,別紙6「租税債権目録(1)」記載の滞納会社の滞納に係る国税につい
て徴収の引継ぎを受けた(甲1,乙8~12,弁論の全趣旨)。
イ東京国税局長は,亡P1に対し,平成20年5月30日,前記アのとお
り練馬東税務署長から徴収の引継を受けた滞納会社の滞納に係る国税(同
日時点における内訳等は,別紙7「租税債権目録(2)」記載のとおり。乙
8)に関し,徴収法37条2号の規定に基づき,次の(ア)~(エ)のとおり,
納期限を同年6月30日とする本件各告知処分をした。なお,同年5月3
0日の時点においては,滞納会社に営業の実体及び上記滞納に係る国税に
見合う財産はなく,滞納会社の財産につき滞納処分(前記(3)イ)を執行
してもなおその徴収すべき額に不足することが明らかであった。
(ア)別表A-1記載の滞納会社の滞納に係る国税について,納付限度額を
本件不動産1とする本件告知処分1
(イ)別表B-1記載の滞納会社の滞納に係る国税について,納付限度額を
本件不動産2とする本件告知処分2
(ウ)別表C-1記載の滞納会社の滞納に係る国税について,納付限度額を
本件不動産3とする本件告知処分3
(エ)別表D-1記載の滞納会社の滞納に係る国税について,納付限度額を
本件不動産4とする本件告知処分4
ウ東京国税局長は,本件各告知処分の第二次納税義務に係る国税が納期限
である平成20年6月30日までに完納されなかったことから,同年7月
8日,亡P1に対し,徴収法32条2項の規定に基づき,別表A-1記載
の国税につき本件督促処分1を,別表B-1記載の国税につき本件督促処
分2を,別表C-1記載の国税につき本件督促処分3を,別表D-1記載
の国税につき本件督促処分4を,それぞれした。
エ東京国税局長は,本件各告知処分の第二次納税義務に係る租税債権が本
件各督促処分後10日を経過しても完納されなかったことから,平成20
年7月28日,徴収法47条1項及び3項並びに同法68条の規定に基づ
き,本件不動産1につき本件差押処分1を,本件不動産2につき本件差押
処分2を,本件不動産3につき本件差押処分3を,本件不動産4につき本
件差押処分4を,それぞれした。
(5)不服申立ての状況
ア亡P1は,東京国税局長に対し,平成20年7月25日,本件各告知処
分及び本件各督促処分を不服として異議申立てをし,同年8月27日,本
件各差押処分を不服として異議申立てをした(以下,本件告知処分1及び
本件督促処分1に係る異議申立てを「本件異議申立て1」といい,本件告
知処分2及び本件督促処分2に係る異議申立てを「本件異議申立て2」と
いい,本件告知処分3及び本件督促処分3に係る異議申立てを「本件異議
申立て3」といい,本件告知処分4及び本件督促処分4に係る異議申立て
を「本件異議申立て4」といい,本件差押処分1に係る異議申立てを「本
件異議申立て5」といい,本件差押処分2に係る異議申立てを「本件異議
申立て6」といい,本件差押処分3に係る異議申立てを「本件異議申立て
7」といい,本件差押処分4に係る異議申立てを「本件異議申立て8」と
いう。)。
イ東京国税局長は,①平成20年10月21日,本件異議申立て1~4に
つき,②また,同年11月26日,本件異議申立て5~8につき,いずれ
も異議申立てを棄却する旨の異議決定をした(以下,本件異議申立て1~
4に係る異議決定を併せて「本件異議決定1」といい,本件異議申立て5
~8に係る異議決定を併せて「本件異議決定2」という。)。
ウ亡P1は,国税不服審判所長に対し,①平成20年11月21日,本件
異議決定1を経た後の本件各告知処分及び本件各督促処分に不服があると
して審査請求をし,②同年12月16日,本件異議決定2を経た後の本件
各差押処分に不服があるとして審査請求をした(これらの審査請求を併せ
て,以下「本件各審査請求」という。)。
エ亡P1は,平成▲年▲月▲日に死亡し,その相続人(配偶者又は子)で
ある原告らが本件に関する亡P1の地位を承継した。
オ国税不服審判所長は,本件各審査請求につき,平成21年11月13日,
①本件告知処分1のうち別紙1「処分目録」記載1(1)及び(2)の部分を取
り消すとともに,②上記①の部分を除く本件各処分についての本件各審査
請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。
(6)本件訴訟の提起
原告らは,平成22年5月12日,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著
な事実)。
4争点
(1)本件各不動産が重要財産に当たるか否か(争点1)
(2)本件各不動産に関して生ずる所得が滞納会社の所得となっていたか否か
(争点2)
(3)本件各告知処分に係る第二次納税義務の賦課期間において本件各不動産が
滞納会社の事業の用に供されていたか否か(争点3)
5争点に関する当事者の主張の要点
(1)本件各不動産が重要財産に当たるか否か(争点1)について
ア被告の主張の要点
(ア)重要財産の意義
徴収法37条柱書の重要財産とは,一般的には判断の対象となる財産
がないものとした場合において,その事業の遂行ができなくなるか又は
できないおそれがある状態になると認められる程度にその事業の遂行に
関係を有する財産をいうものと解されているところ(乙29),東京地方
裁判所昭和37年12月25日判決・行政事件裁判例集13巻12号2
271頁(以下「昭和37年東京地裁判決」という。)の判示に照らせば,
納税者の事業の遂行に対して「一定の貢献」をしているか否かが,重要
財産に該当するか否かの判定基準の1つになるものと解される。
(イ)滞納会社の取引の概要
滞納会社の売上げの大部分は,P2に対する液卵及び冷凍卵の販売取
引並びにP3に対する鶏卵の販売取引によるものであったところ,滞納
会社は,本件各不動産等の自社における養鶏場で生産された鶏卵をP3
に対して納入する一方,P3が鶏卵を加工した液卵を,P4を介して仕
入れ,その液卵をP2に納品していた(乙31,32)。P3と滞納会
社間における液卵販売取引は,P2に対する液卵の納品枠を有していた
が割卵設備を所有していなかった滞納会社が,P3に対して,滞納会社
の鶏卵を割卵してほしいとの申出をしたことから始まったものであり,
滞納会社においてP2に納品する液卵をP3から調達するに当たっては,
キユーピーが,その液卵の販売数量と見合いの数量の原料鶏卵を滞納会
社から仕入れることが取引条件とされていた(乙32)。すなわち,P
3と滞納会社間における原料鶏卵の販売及び液卵の販売という相互取引
は,実質的には,滞納会社がP3に対して原料鶏卵を供給して行う液卵
の加工委託取引に等しく,実際に,滞納会社の養鶏場において自社生産
された原料鶏卵がP3に納入され,かつ,納入された原料鶏卵の大部分
(納品書の割合:97.82%,納入数量の割合:96.95%)は,
滞納会社の養鶏場で自社生産されたものであった(乙31,32,3
4)。なお,P3に対する原料鶏卵の販売価格については,P2への液
卵の納品価格が,鶏卵市況を基準として決まるもので所与の要素であり,
いわば原料価格に液卵の加工賃を上乗せする取引であったため,P3に
おいて確実に利ざやを稼げるものであったことから,滞納会社からの原
料鶏卵の仕入価格は,他社と比較して高く設定されていた(乙32,3
3)。
(ウ)滞納会社の売上高ないし総利益
a原告ら作成の①「別表」と題する表(甲2の2)における滞納会社
の総利益の各金額は,②「(株)P5農場売上高」と題する表(甲2
の1・2枚目)及び③「(株)P5農場仕入高」と題する表(甲2の
1・3枚目以下)の係数を基に算出されているところ,上記①の表と
上記②及び③の各表における係数の関係を対比させると,別表5「原
告らが主張する滞納会社の総利益の内訳(平成15年期)」及び別表6
の1「原告らが主張する滞納会社の総利益の内訳(平成16年期)」の
とおりとなる。
b①別表6の1のとおり,原告らは,平成16年期の滞納会社の
「(養鶏)」に関する売上げにはP3に対する原料鶏卵(A卵・B卵)の
みを計上しており,液卵の計上はないから,原告らが平成16年期の
「(養鶏)」に関する仕入れとして計上している「P9」からの「液全
卵」6899万4702円及び「冷凍全卵」2444万7327円並
びに「P10」からの「生液卵」420万円の各計数は,「(液卵)」
に関する売上げに対応する仕入れとして計上されるべきものである。
すなわち,原告らの算出した平成16年期の総利益の各金額は,
「(養鶏)」の仕入額を多く計上する一方,「(液卵)」の仕入額を少な
く計上することにより,滞納会社の総利益に占める「(養鶏)」に係る
利益を少額(赤字)に計上している。②また,前記a①の表において,
「経費(養鶏)」欄中の「平成15年期」欄及び「平成16年期」欄に
おける各金額には,「増差額の内訳(損益)」と題する表(甲2の1・
1枚目)の「25一般管理費計」欄の「15/8」欄の1億347
1万5784円及び「16/8」欄の2億4791万6430円の各
計数全額がそれぞれ計上されている一方で,「経費(液卵)」には経費
が全く計上されていないが,滞納会社の液卵の販売取引において,経
費が一切かからないということはあり得ないのであり,この点におい
ても,原告らの算出した経常利益の計数は,液卵に係る計数が養鶏に
係る計数よりも多額になるように算出されている。
cそこで,前記a③の表の「16/8」欄に記載された仕入高につい
て,前記bのとおり計上に誤りのある各金額(別表6の1の「仕入」
欄中の「(養鶏)」欄のア・イ・ウ)に関して,「(液卵)」に係る売
上げと仕入れの対応関係に従って項目を入れ替えて再計算を行うと,
別表6の2「売上に対応する仕入を入れ替えて再計算した滞納会社の
総利益の内訳(平成16年期)」のとおりとなる。これによれば,滞納
会社の平成16年期の「(鶏卵)」の総利益については,3317万
8695円の「赤字」であるとの原告らの主張(別表6の1の「総利
益」欄中の「(養鶏)」欄参照)は誤りであり,6446万3334
円の「黒字」が正当である(別表6の2の「総利益」欄中の「(養
鶏)」欄参照)。そして,平成15年期及び平成16年期の「(鶏
卵)」の計数を比較すると,平成15年期は,後に述べるように本件
不動産1に係る養鶏場が閉鎖されていた時期であり(別表7「本件不
動産の概要」参照),自社生産の原料鶏卵がP3への納入必要量に比
して少ないことから,P3に納入する原料鶏卵を確保する必要がある
にもかかわらず,外部調達を115万3525円(「㈲P11」から
の鶏卵)の僅少額しか行っていないため,P3への納入額が2億96
47万9707円と少なくなっており,「(養鶏)」の総利益は1億3
76万5967円となっている。一方,平成16年期は,本件不動産
1に係る養鶏場の再稼動及び本件不動産4に係る養鶏場の増設により,
P3へ納入する原料鶏卵の必要量を自社生産の鶏卵により十分に賄う
ことができていたことから,原料鶏卵の外部調達額が2254万46
17円(「㈱P12」からの鶏卵:1099万2455円,「P9」
からの規格外卵:1155万2162円)にとどまっているにもかか
わらず,P3への納入額が4億6284万9807円と増加しており,
「(養鶏)」の総利益も6446万3334円の黒字となっている。
dしたがって,滞納会社においては,原料鶏卵の自社生産量の規模に
かかわらず,いずれの年期においても,自社生産による原料鶏卵を主
体としてP3に納入し,そのことによって総利益も黒字を確保してい
るといえる。
(エ)本件各不動産が重要財産に当たること
前記(イ)からすれば,滞納会社とP3との間の鶏卵の販売取引は,滞
納会社のP2との間の鶏卵加工品(液卵)の販売取引にも直接貢献してい
たものであって,本件各不動産における養鶏場での鶏卵の生産は,滞納
会社の取引全体としての鶏卵の生産販売及び鶏卵加工品(液卵)の販売業
に貢献していたといえる。
また,原料鶏卵の自社生産は,前記(イ)及び(ウ)のとおり,P3に対す
る原料鶏卵の販売価格を他社と比較して高く設定することを可能とさせ
るとともに,P3に対する売上高ないし総利益を確保させるものであり,
さらには,P2に対する液卵販売の原価面において,季節的な需給要因
により変動する鶏卵市況の影響を受けることを避けつつ,外部調達に比
して安価に内部調達することにより,P3への原料鶏卵の安定的供給を
目的とするものであるといえ,ひいては,P2への液卵の販売取引をも
安定的に継続し,もって滞納会社の事業全体の収益を高め,利益を安定
的に確保することに大きな貢献をしていたといえる。
そして,滞納会社にとって最大の取引先であるP2との取引を安定的
に継続するためには,本件各不動産における養鶏場において鶏卵を生産
し,P3に納入することが必要不可欠であり,滞納会社における鶏卵の
生産販売と鶏卵加工品(液卵)の販売は,別個独立の事業ではなく,相互
に関連した鶏卵を取り扱う一体の事業と解すべきである。このことを併
せ考えると,原料鶏卵の自社生産は,鶏卵等販売事業という滞納会社の
事業全体に対して極めて大きな貢献をしているのであり,本件各不動産
が,滞納会社の事業全体に「多大な貢献」をしていたことは明らかであ
る。
以上のとおり,本件各不動産は,滞納会社の事業の遂行に対して「一
定の貢献」をしているどころか,その貢献度合いは「多大」であり,当
該不動産がないものとした場合において,滞納会社の事業の遂行ができ
なくなるか又はできないおそれがある状態になると認められる程度にそ
の事業の遂行に関係を有する財産というべきであるから,重要財産に当
たる。
(オ)本件不動産1-12及び本件不動産4-4が重要財産に含まれること
a本件不動産1-12の使用状況
本件不動産1-12は,第4農場の鶏舎の東側に位置しているとこ
ろ(乙37の3,39,45,46),平成15年8月~平成16年8
月の期間におけるその使用状況は,以下のとおりであった。
(a)平成15年8月の養鶏再開時の状況
①P13株式会社(以下「P13」という。)作成の「P8農場
の現況について」と題する文書(平成15年8月10日付け。乙3
3の別紙11。以下「P8農場現況書」という。)の「1実態(8
/9現在)」の「②鶏糞」の項には,「鶏舎内には鶏糞が堆積して
おり,…その高さ50㎝位と推測される。」と記載され,②また,
P2作成の「P14養鶏場再開の件」と題する文書(同月11日付
け。乙33の別紙12。以下「P14養鶏場再開文書」という。)
にも,「P15養鶏場の鶏舎に堆積している糞(約50センチ)」と
記載されているところ(同別紙・2(1)の第6段落),これらの文
書は,滞納会社が同月に「P5農場」を再開するために鶏を搬入し
たことを契機として(乙33の別紙4,乙46の別紙1),「P5農
場」の状況を記載したものであることから,上記①の「鶏舎」及び
上記②の「P15養鶏場の鶏舎」は,いずれも,同月に鶏が搬入さ
れた第4農場及び第5農場を意味していることが明らかである。そ
して,P8農場現況書の「1実態(8/9現在)」の「①鶏舎外
周」の項の「東側のかなりの広さの空き地に鶏糞を持ち出して鋤き
こんでいるのが見受けられた。」との記載中の「東側のかなりの広
さの空き地」とは,第4農場及び第5農場の鶏舎との位置関係から
すると,本件不動産1-12及びその隣接地を指す(乙37の1~
3,39)。
なお,乙46の別紙13の各写真(平成15年12月から平成1
6年9月にかけて,旧水海道市役所農政課職員が撮影したもの)は,
同別紙中の「第4鶏舎」,「第4鶏舎脇」等の記載や,乙45の別
紙4の写真(平成23年10月21日に被告指定代理人が撮影した
もの)との対比からすると,第4農場の鶏舎の東側の周囲を撮影し
たものと認められる(なお,同別紙13の写真<45>の上部及び写真<
49>の上部には「第4鶏舎西側」との表記があるが,「第4鶏舎東
側」の誤記であると認められる。)。
(b)平成15年8月から同年12月までの状況
平成15年12月25日に旧水海道市役所において開かれた「P
5農場(養鶏場)でのハエ発生についての会議」の資料として旧水海
道市役所農政課職員が作成した「P5農場(養鶏場)における卵生
産の現状」と題する文書(乙33の別紙3の3枚目,乙46の別紙
4の2枚目。以下「P5農場卵生産現状書」という。)の「現在の
飼養管理及び鶏糞処理の状況」の項には,「高床式の鶏舎の中は,
鶏糞が溜まっており,ハエの発生源となっている。また,その高床
式の鶏舎で,東側では鶏糞が外に,はみだしている。」と記載され
ているところ,この「高床式の鶏舎」とは,第4農場の鶏舎のこと
を意味する(乙46の別紙9)。
(c)平成16年2月から同年8月の状況
乙46の別紙13の写真によれば,平成15年12月15日現在,
本件不動産1-12には2つのため池が存在し(写真③及び④。乙
46の別紙9の2枚目の地図の「溜池跡地」の表記参照),その後,
平成16年2月から同年6月にかけて,重機を用いて第4農場の鶏
舎から鶏糞を搬出して当該ため池に投棄し(写真⑧,⑫~⑯),薬品
をまいたり,石灰をまいて固めた上で,土を被せたりするなどして
埋め戻し(写真⑰ないし<44>),同年8月には,当該ため池が埋め立
てられたことが認められる(写真<45>及び<46>)。
(d)まとめ
以上のとおり,本件不動産1-12は,主として第4農場の鶏舎
から排出される鶏糞の投棄場所として使用されていた。すなわち,
第4農場の鶏舎においては,鶏糞処理施設が十分に稼動していなか
ったほか,そもそも飼養羽数に比して,鶏糞処理能力が不足してい
たことから(乙33の別紙5及び別紙12,乙46の別紙5),本件
不動産1-12が,第4農場の鶏舎から排出される鶏糞の投棄場所
として使用されたものである。
b本件不動産4-4の使用状況について
本件不動産4-4は,第3農場の鶏舎の南西側に隣接して位置して
いるところ(乙37の1,39,45),平成15年8月~平成16年
8月の期間におけるその使用状況は,以下のとおりであった。
(a)平成15年8月のP5農場の養鶏再開時の状況
P2の従業員は,平成15年8月11日,亡P1から,鶏糞処理
設備で処理した鶏糞は,P16養鶏場の近くに設置してある堆肥置
場に保管する旨を聴取したところ(P14養鶏場再開文書〔乙33
の別紙12〕2(1)第9段落),上記の「P16養鶏場」とは,第1
農場ないし第3農場のことである(なお,亡P1は,本件不動産4
-4も同時に購入している。)。また,旧水海道市役所農政課職員
は,同月20日,P17から,「P18養鶏となり」の土地におい
て,滞納会社の養鶏場から排出された鶏糞を堆肥化させていること
を聴取しているところ(乙46の別紙3),同市役所において,第
3農場の鶏舎を「P18養鶏」ないし「P19」と呼称していたこと
(乙46の別紙14の1枚目及び12枚目)からすれば,上記の
「P18養鶏となり」の土地は,本件不動産4-4を指すものと認
められる。このように,滞納会社は,同月当時から,本件不動産4
-4を,養鶏場から排出される鶏糞を堆肥化させることを目的とし
て使用していた。
(b)平成16年4月から同年8月までの状況
乙46の別紙14の各写真(平成16年2月から同年9月にかけ
て,旧水海道市役所農政課職員が撮影したもの)の1枚目には
「(第3鶏舎)P18養鶏西側」と,同2枚目には「(第3鶏舎)P1
8養鶏」と,それぞれ表記されており,第3農場の鶏舎の周囲を撮
影したものと認められる。そして,上記の各写真と乙45の別紙4
の写真(平成23年10月21日に被告指定代理人が撮影したも
の)とを併せて見ると,第3農場の鶏舎の西側に位置する入口付近
には,平成16年2月から4月にかけて,大量の鶏の死骸が放置さ
れていたものであり(乙46の別紙14の写真①~⑥),第3農場
の鶏舎の南西側に隣接する本件不動産4-4では,①同年4月14
日には,土地が掘削され,鶏糞を投棄した上で盛土がされ(乙46
の別紙14の写真⑦,⑨~⑱),②同年7月22日には,大量の鶏
糞ベルトと思われる廃棄物が投棄され(乙46の別紙14の写真⑲
及び⑳)。③同年8月13日には,大量の鶏の死骸が当該土地に投
棄された(乙46の別紙14の写真<24>~<26>)ものと認められる。
(c)以上のとおり,平成15年8月~平成16年8月の期間において,
本件不動産4-4は,滞納会社の養鶏場から排出される鶏糞を堆肥
化させる場所並びに鶏の死骸及び廃棄物を投棄する場所として使用
されていたものと認められる。
c本件不動産1-12及び本件不動産4-4が重要財産に含まれるこ

養鶏業を遂行するに当たっては,鶏卵の生産のみならず,鶏を飼養
することに伴って発生する鶏糞の処理,死鶏あるいは廃棄物等の処分
についても,家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法
律等に基づき,環境保全に十分に配慮して実施する必要があるのであ
るから,上記鶏糞の処理及び死鶏等の処分は養鶏事業の一環であるこ
とは明らかである。前記a及びbのとおり,本件不動産1-12及び
本件不動産4-4の各不動産は,養鶏業を遂行する上で不可欠な業務
である鶏糞の処理及び死鶏等の処分を行う場所として使用されていた
のであるから,滞納会社の事業の用に供されていたことは明らかであ
り,重要財産に当たるものというべきである。
(カ)原告らの主張について
a原告らは,本件各不動産で自社生産された原料鶏卵は「鶏卵が不足
した場合の調整用」であるなどと主張するが,そのような主張は,事
実に反し,あるいは,合理性を欠くものというべきである。
b既に述べたとおり,滞納会社における鶏卵の生産販売と鶏卵加工品
(液卵)の販売は,別個独立の事業ではなく,相互に関連した鶏卵を取
り扱う一体の事業と解すべきである。そして,昭和37年東京地裁判
決の判示に照らせば,徴収法37条柱書に規定する重要財産に該当す
る要件は,専ら当該財産から事業収益の全てが発生していることなど
の事情は不必要であって,飽くまで滞納会社の事業の遂行に対して
「一定の貢献」をしていれば足り,重要財産該当性の判断の観点にお
いて重視すべき点は,自社養鶏場における鶏卵生産自体の事業全体に
対する貢献度であるところ,仮に原告らが主張するように,本件各不
動産を調整用として使用していたとしても,本件各不動産は調整用の
養鶏場として滞納会社の事業の遂行に対して「一定の貢献」をしてい
たことは明らかであって,それ以上に滞納会社の収益に占める本件各
不動産から直接生ずる収益の割合の高低,自社養鶏場において生産さ
れた鶏卵と鶏卵加工品(液卵)との由来関係などは,重要財産該当性の
考慮要素として意味を有するものではなく,結論に影響しない。
また,原告らが主張するように,養鶏場における鶏卵の生産が,
「鶏卵が不足した場合の調整用」にすぎず,かつ,その割合がP3に
対し納入する鶏卵の20%~50%にとどまるものであるとしても,
生産された鶏卵を必要な際に必要な分量を確保して取引先に納入でき
るか否かといった点は,取引先企業からみれば,安定的仕入先として
滞納会社の信用を高め(仮に納品不足が常態となれば,安定的な取引
はできず,滞納会社全体としての収益が下がること,及び,P3がか
かる安定性を考慮して滞納会社を取引先としていたことは,容易に推
認できる。),かつ,P3という有名企業との取引の有無が,滞納会
社の信用を向上させ,ひいては養鶏場における鶏卵の生産販売と鶏卵
加工品(液卵)の販売をその目的とする滞納会社の収益全体を高めるこ
とに多大な貢献していたことは明らかである。
したがって,上記のような原告らの主張は,およそ重要財産該当性
の判断に影響を与えるものではない。
イ原告らの主張の要点
(ア)徴収法37条の重要財産の一般的な意義については,被告が前記ア
(ア)で主張するように解されているところ,被告は,重要財産に当たる
ためには,当該財産が納税者の事業に一定の貢献をしていれば足りると
主張するが,誤りである。そのような見解では,納税者が同族会社であ
った場合の代表者若しくは同族の株主所有の不動産は,全てについて一
定の貢献をしていることにされ,全ての株主が第二次納税義務者になる
こととなる。納税者と第二次納税義務者となるべき者は全く違う法人格
であり,納税者の納めるべき税金を第二次納税義務者に納付させるには
それなりの密接な関係になければならないから,徴収法37条所定の要
件は,極めて限定的に解されなければならないものというべきである。
(イ)滞納会社の主な事業内容は,P2との間における液卵及び冷凍卵の販
売取引並びにP3との間における鶏卵の販売取引であり,これらの取引
が滞納会社の売上げの大部分を占めていたところ,P3に対して納入す
る鶏卵のうち,滞納会社が生産したものの割合は約20%にすぎないし,
滞納会社がP2に販売した液卵は,滞納会社が生産した鶏卵とは全く関
係がなく,滞納会社が仕入れた液卵をP2に納めたものである。滞納会
社が営んでいた養鶏場における鶏卵の生産は,鶏卵が不足した場合の調
整のためであって,主たる営業ではなく,養鶏場がなくても,滞納法人
の事業の遂行に支障はなかった。
常識的に考えても,液卵又は原料卵を安く仕入れてP3に売り,P3
が加工したものをP2に高く得れば,滞納会社としては全くの経費なし
に利益があげられるのである。一方,養鶏業は,鶏及び飼料を買い,人
件費及び光熱費を払い,鶏糞の処理に多額の費用をかけなければならな
いのであって,養鶏業について赤字の収支となるのは,理屈として肯定
できるところである。
(ウ)滞納会社の所得のうち約70%は,他の鶏卵販売業者から購入した割
卵し,加工した鶏卵の販売により得たものであって,本件各不動産を使
用して養鶏場を経営することによって得たものではなく,また,滞納会
社の養鶏業は,いわゆる赤字であり,養鶏業を経営することによって得
た所得について,本件における滞納会社の滞納国税は発生していない。
滞納会社においては,利益があったから国税を支払うことを求められて
いるのであり,液卵部門の利益について国税が課されているのであるか
ら,重要財産に当たるか否かの判断において,利益を出すことに貢献し
ているかどうかは大変に重要なことである。よって,滞納会社に利益を
もたらしていない養鶏業は,同社にとって事業の遂行に欠くことができ
ない部門ではない。
(エ)本件不動産1-12及び本件不動産4-4は,いずれも養鶏場として
使用されたことはなく,差押えの対象となる不動産ではない。
a本件不動産1-12には,2つの池が掘られており,被告主張のよ
うに鶏糞を鋤き込むことなどできる状態ではなかった。亡P1は,従
業員に対し,本件不動産1-12は養鶏のために一切使用するなと指
示しており,原告P7との間の幼い子のために,平成13年及び14
年頃,本件不動産1-12にそれぞれ1つずつ池を作り,魚を飼って
いたが,本件不動産1の養鶏場に頻繁に行くことがなくなった平成1
6年初め頃,危険でもあるので,これらの池を埋め戻した。
なお,被告引用のP13作成のP8農場現況書(乙33の別紙1
1)によっては,本件不動産1-12の状況は不明である。また,同
社は,滞納会社をたたき,滞納会社に代わってP2との取引をするこ
とを企てていたのであって,同社が,上記の文書において,平成15
年8月9日の状況を正しく報告したという保証はない。
b亡P1が購入した後の本件不動産4-4の状況は,現況(甲7)と
変わらない。乙46の別紙3の「P18養鶏となり」との記載は,そ
もそも誤りであり(誰が記載したものかも不明である。),P17が
旧水海道市農政課職員を案内した「たい肥置場」は,本件不動産1の
土地の一部又は本件不動産4の他の土地に設けられていたものである
(甲8)。平成16年8月に,猛暑のため死んだ鳥の搬出が間に合わ
ず,本件不動産4-4にこれを一時期置いたことがあるが,10㎡に
も満たない範囲に短期間置いたものにすぎず,このことをもって,本
件不動産4-4を養鶏場として使用していたことにはならない。
(オ)以上からすれば,本件各不動産は,いずれも重要財産には当たらない
ものというべきである。
(2)本件各不動産に関して生ずる所得が滞納会社の所得となっていたか否か
(争点2)について
ア被告の主張の要点
(ア)本件不動産に関して生ずる所得が滞納会社の所得となっていること
a徴収法37条柱書の「財産に関して生ずる所得が納税者の所得とな
っている場合」とは,重要財産から直接又は間接に生ずる所得が納税
者の所得となっている場合及び所得税法その他の法律の規定又はその
規定に基づく処分により納税者の所得とされる場合をいい,例えば,
同族会社の判定の基礎となった株主又は社員の所有する財産をその同
族会社が時価より低額で賃借しているため,その時価に相当する借賃
の金額とその低額な借賃の金額との差額に相当するものが同族会社の
実質的な所得になっている場合もこれに当たる(乙29)。
また,納税者が同族会社の場合における徴収法37条の趣旨は,法
人税法2条10号に規定する同族会社にあっては,その事業によって
得られる収益が,実質的には同族会社判定の基礎となった株主等によ
って享受される場合が多く,その株主等がその同族会社にその事業の
遂行上欠くことのできないような重要な財産を提供し,その同族会社
がその財産によって所得を得ているときには,その株主等は,その財
産の提供によって,実質的にはその同族会社と共同事業を行っている
とみることができることから,その事業によって生じた国税につきそ
の同族会社に滞納処分をしても不足を生じるときに限り補充的にその
財産及び不足額の限度でその株主等に納税義務を負わせるものである
(乙36の東京地方裁判所平成5年3月12日判決の判旨〔以下「平
成5年東京地裁判決判旨」という。〕参照)。
bこれを本件についてみると,滞納会社は,亡P1から本件各不動産
を無償で借り受けており,受贈益としての本件各不動産の賃料相当額
が,滞納会社の実質的な所得となっていると認められる。また,滞納
会社のP3に対する原料鶏卵の販売取引においては,当該販売取引に
係る売上金の入金口座として,亡P1の個人名義の預金口座が指定さ
れていたのであり(乙32の別紙4参照),このことは,まさに,平成
5年東京地裁判決判旨における「その事業によって得られる収益が,
実質的には同族会社判定の基礎となった株主等によって享受される場
合」に該当することを示すものである。
cまた,これをおくとしても,既に述べたとおり,滞納会社とP3と
の間の鶏卵の販売取引は,滞納会社のP2との間の鶏卵加工品(液卵)
の販売取引に貢献するものであり,滞納会社における鶏卵の生産販売
と鶏卵加工品(液卵)の販売とは別個独立の事業ではなく,相互に関連
した一体の鶏卵等販売事業と解すべきであって,仮に,原告らが主張
するように,鶏卵の生産販売単体で見れば赤字であるとしても,その
ことのみをもって,原告らの第二次納税義務に係る滞納会社の滞納国
税が発生した所得の源泉を個別に論ずることはできず,本件各不動産
から生ずる所得が,相互に関連する一体の鶏卵等販売事業として同事
業に係る滞納会社の所得となっているといえる。すなわち,滞納会社
の鶏卵等販売事業においては,本件各不動産で自社生産された鶏卵に
よって鶏卵加工品(液卵)の販売を安定的に継続し,利益の安定的な確
保にも大きく貢献しているのであるから,平成5年東京地裁判決判旨
に照らせば,亡P1から提供された本件各不動産と滞納会社の鶏卵等
販売事業の所得との関係は,徴収法37条柱書にいう「財産に関して
生ずる所得が納税者の所得となっている場合」に該当する。
d仮に,原告らが主張するように,鶏卵の生産販売に係る収益が赤字
であったとしても,一方で,鶏卵加工品(液卵)の販売に係る収益が多
額の黒字であるから納付すべき税金が発生しているのであり,その納
付すべき税額を計算する際には,結果的に,鶏卵加工品(液卵)の販売
に係る収益の黒字額から鶏卵の生産販売に係る収益の赤字額が損益通
算され,鶏卵加工品(液卵)の販売に係る収益の多額の黒字額が圧縮さ
れるのであるから,滞納会社における養鶏業の赤字と事業全体の黒字
とが関係のない事柄であるとはいえない。さらに,滞納会社の事業全
体のキャッシュフローからすれば,単にP2への鶏卵加工品(液卵)の
販売のみを行う場合に比べて,鶏卵の販売をも行うことによって,滞
納会社はより多くの収入を得ることができ,それを滞納会社の事業全
体に再投資しているのであるから,その点からしても,滞納会社の事
業において,鶏卵の生産販売の損益を取り出して論ずることには意味
がないというべきである。
(イ)滞納会社の養鶏業が常に「赤字」になることに疑義があること
滞納会社のP3への原料鶏卵の販売取引においては,他社と比べると
原料鶏卵の仕入単価は高い部類であり(乙32),生産量も養鶏数から容
易に把握でき(乙32,33),その生産方法も,廃鶏(500日令以
上)を導入して強制換羽という生産効率の高い手法を中心に採用してい
た(乙33の別紙3の3枚目)というのであるから,滞納会社のP3への
原料鶏卵の販売取引が常に赤字になることを想定することは困難である。
また,前記(1)ア(ウ)のとおり,原告らの算出した平成16年期の総利益
及び経常利益の金額は,養鶏に係る利益が赤字となるように操作されて
いることがうかがわれる。以上からすれば,原告らが主張するように滞
納会社の養鶏業が常に「赤字」になるとは認められないものというべき
である。
イ原告らの主張の要点
(ア)滞納会社の所得のうち約70%は,他の鶏卵販売業者から購入した割
卵し,加工した鶏卵の販売により得たものであって,本件各不動産を使
用して養鶏場を経営することによって得たものではなく,また,滞納会
社の養鶏業は,いわゆる赤字であるから,本件における滞納会社の滞納
国税は,本件各不動産が供されている事業(養鶏業)によって発生した
ものではない。
(イ)滞納会社が本件各不動産を無償で使用しているとしても,本件各不動
産の賃料相当額は,滞納会社の本来の事業から得る収入に比較すると全
く問題とならない程の少額の賃料であり,この賃料相当額が滞納会社の
実質的な所得となっているのではないから,上記の点をとらえて,徴収
法37条柱書の「財産に関して生ずる所得が納税者の所得となっている
場合」に該当するということもできない。
(3)本件各告知処分に係る第二次納税義務の賦課期間において本件各不動産が
滞納会社の事業の用に供されていたか否か(争点3)について
ア被告の主張の要点
(ア)納税者がその供されている事業に係る国税を滞納したことの意義
徴収法37条の第二次納税義務の対象となる国税は,重要財産が事業
の用に供されていた期間に対応する部分の国税の額に限定されると解さ
れる(乙30)。
(イ)本件不動産1が本件告知処分1(本件裁決による一部取消し後のもの。
特に断らない限り,以下においても同様とする。)に係る第二次納税義
務の賦課期間において滞納会社の事業の用に供されていたこと
a本件不動産1及びそこに所在する鶏舎の呼称等
(a)本件不動産1-1~6は第5農場と,本件不動産7~11及び1
3は第4農場と,それぞれ呼ばれていたところ(前提事実(2)オ),
旧水海道市役所においては,第4農場の鶏舎のことを「高床式」と,
第5農場の鶏舎のことを「平飼い」と,それぞれ呼称していた(乙
46の別紙9の2枚目)。
(b)前提事実(2)ア及びエに照らせば,P2作成のP14養鶏場再開
文書(乙33の別紙12)では,亡P1が平成15年7月に購入し
たものとされる「P16養鶏場」が本件不動産4を指し,「P15
養鶏場は,休止して約5年が経過し,鶏舎の傷みもあり,これ以上
放っておくとボロボロになってしまう。P16養鶏場を購入したの
で,この際P15養鶏場を使いたいと考え,若干手直しをした。」
との記載中の「P15養鶏場」が本件不動産1を指すものであるこ
とは明らかであり,本件不動産1の鶏舎は,それ以後「若干手直
し」されて利用されていたと認められる。
また,P2においては,旧水海道市内に所在する滞納会社の養鶏
場を1つの養鶏場として「第1鶏舎」ないし「第5鶏舎」と呼び,
そのうち「第4鶏舎」については「川を挟んだゴルフ場のすぐそ
ば」にあって,その隣に「第3鶏舎」若しくは「第5鶏舎」があり,
その他の鶏舎は少し離れていたと認識しており(乙33の3枚目),
また,上記のとおり「P15養鶏場」及び「P16養鶏場」との呼
称も使用されていたことが認められる。
(c)そして,本件不動産1及び本件不動産4は,①旧水海道市内に所
在し,第1農場ないし第5農場の5か所の養鶏場として利用されて
いたこと,②第4農場の近隣に第5農場が所在し,第1農場ないし
第3農場は第4農場及び第5農場から少し離れているところに所在
し(乙37の1~3),平成15年頃には,第4農場の場所に「P1
5養鶏場」があって,そのそばにα川があり,α川を挟んだ向こう
側にP20ゴルフ場が所在し,第1農場ないし第3農場の場所に
「(有)P6」があって(乙38),この後においてもその位置関係に
変動がみられないこと(乙39),③前記(b)のとおり,本件不動産
1が「P15養鶏場」であり,本件不動産4が「P16養鶏場」で
あることからすれば,P2における「第1鶏舎」ないし「第5鶏
舎」は,第1農場ないし第5農場をそれぞれ指しているものと認め
られる(別表7「P2」欄参照)。
b平成15年8月(養鶏再開時)の本件不動産1の状況
(a)滞納会社は,平成15年8月,鶏を購入するなどして,第4農場
及び第5農場における鶏の飼養を再開した(甲1)。旧水海道市役所
農政課職員は,同月4日午前,同市議会議員からの連絡を受け,同
日午後に現地調査をし,P17から,P5農場(第4農場及び第5
農場の鶏舎)において養鶏を再開している事実を確認した(乙46の
別紙1)。そして,同市役所環境経済部長は,滞納会社に対し,
「P5農場(養鶏)における飼養再開について」と題する文書(同月
7日付け。乙33の別紙4,乙46の別紙2)により,鶏糞処理に
ついての環境対策に関する行政指導をした。
(b)P2作成のP14養鶏場再開文書(乙33の別紙12)によれば,
同書面にいう「P16養鶏場」(本件不動産4)については,亡P
1がこれを購入した後,滞納会社が引き続き養鶏場として使用して
いたと認められるから,前記(a)の行政指導に係る文書(乙33の
別紙4,乙46の別紙2)における「β町γのP5農場」は,上記
のとおり継続使用されていた「P16養鶏場」(本件不動産4)の
ことではなく,平成9年頃から休止していたと原告らが主張する
「P15養鶏場」(本件不動産1)を指すものと認められる。
(c)以上に加えて,P13作成のP8農場現況書(乙33の別紙1
1)及びP2作成のP14養鶏場再開文書(乙33の別紙12)の
記載にも照らせば,滞納会社が平成15年8月に本件不動産1にお
いて養鶏を再開していたことが明らかである。
c平成15年12月~平成16年8月の本件不動産1の状況
(a)滞納会社は,平成15年11月下旬の時点で,本件不動産1-1
~6(第5農場)において3万羽の鶏を,本件不動産1-7~11及
び13(第4農場)において12万羽の鶏を,それぞれ飼養していた
ことが認められる(P5農場卵生産現状書〔乙33の別紙3の3枚
目,乙46の別紙4の2枚目〕)。
(b)また,滞納会社は,①平成16年1月6日の時点では,第5農場
において3万羽の鶏を,第4農場において12万羽の鶏を,それぞ
れ飼養しており(乙46の別紙5),②同年3月3日の時点では,
第5農場において3万羽の鶏を,第4農場において15万羽の鶏を,
それぞれ飼養していたことが認められる(乙46の別紙8の3枚目
右上の表「P15養鶏場飼養羽数(平成16年3月3日現在)」参
照)。
(c)亡P1の署名押印のある「弊社P8農場の閉鎖について」と題す
る文書(平成16年4月22日付け。乙33の別紙8,乙46の別
紙8の2枚目)の記載は,滞納会社が,同日当時,①第5農場にお
いて鶏を飼養し,②また,第4農場において8万羽の鶏を飼養し,
③さらに,旧水海道市内の滞納会社のその他の養鶏場である本件不
動産4に係る養鶏場で鶏を飼養していたことを示すものである。
(d)なお,P2作成の「P5農場(水海道)視察報告」と題する文書
(平成16年5月12日付け。乙33の別紙9)には,滞納会社が同
月10日に第4農場の鶏舎から鶏を搬出した旨が記載されている。
しかし,旧水海道市役所農政課職員は,第5農場の鶏舎について,
同年7月5日には一旦鶏舎からの鶏の搬出及び同鶏舎内の鶏糞の搬
出が完了したが,同年8月6日には鶏舎内に鶏が搬入され(乙46
の別紙9の3枚目及び別紙15の③),その後,同年9月29日の
時点においても,同鶏舎内で鶏が飼養されていることを確認してい
る(乙46の別紙15の⑤及び⑥)。そして,同市長は,その後も同
鶏舎が閉鎖されていなかったことから,同年10月13日,滞納会
社に対し,「P5農場閉鎖遅延について」と題する文書を送付した
(乙46の別紙9の3枚目)。滞納会社は,第4農場は同年5月10
日に閉鎖したが,同年10月13日当時,旧水海道市内の滞納会社
の第4農場以外の養鶏場である第5農場及び本件不動産4に係る養
鶏場で引き続き鶏を飼養していたものである。
(e)①旧水海道市内の養鶏場において,平成17年6月及び7月に鳥
インフルエンザが発生していたことに関する当時の新聞記事の内容
(乙40,42の1・2),②社団法人P21が同月1日付けで提
供した鳥インフルエンザ問題に関する情報の内容(乙41),③亡
P1が購入した「P16養鶏場」(本件不動産4)の前所有者であ
るP6の代表者は「P17」であるところ(乙43),滞納会社の
旧水海道市内の養鶏場については,「P17氏を引き続き養鶏場の
場長にし」ていたとされていること(P14養鶏場再開文書〔乙3
3の別紙12〕2(1)・第3段落),④本件不動産1(第4農場及
び第5農場),本件不動産4(第1農場ないし第3農場)の位置関
係(乙37の1~3,38,39)からすれば,第5農場が,平成
17年7月1日当時,養鶏場として利用されていたことは明らかで
ある。
(f)さらに,平成17年7月1日のインターネット記事(乙44)に照
らせば,第5農場は,少なくとも同日より1年前,すなわち,平成
16年7月1日以降も養鶏場として利用されていたものと認められ
る。
(g)このように,滞納会社は,旧水海道市内の養鶏場について,P2
が閉鎖を確認した第4農場以外の養鶏場も平成16年9月末までに
全て閉鎖するとしていたが(乙33の3枚目・4(2)エ及び別紙8),
実際は,第4農場のみを閉鎖しただけで,鳥インフルエンザにより
強制的に鶏が殺処分されるに至るまで,依然として旧水海道市内に
おいて養鶏業を行い,本件不動産4に係る養鶏場(第1農場ないし
第3農場)並びに本件不動産1-1~6(第5農場)で養鶏を行って
いたものである。
なお,本件不動産1-12は,前記(1)ア(オ)aのとおり,第4農
場が稼動していた期間,主として第4農場の鶏舎から排出される鶏
糞を堆肥化させる場所あるいは鶏糞を投棄する場所として事業の用
に供されていた。
d小括
以上のとおり,①本件不動産1-1~6は,遅くとも平成15年9
月1日から滞納会社が解散した平成16年8月31日までの期間につ
いて,②本件不動産1-7~13は,遅くとも平成15年9月1日か
ら平成16年3月31日までの期間について,養鶏場又は養鶏場から
排出される鶏糞を堆肥化させる場所若しくは鶏糞を投棄する場所とし
て滞納会社の事業の用に供されていたものであり,そのことは,滞納
会社とP3との間の取引状況からも明らかである(乙31の3枚目・
4(3)エ)。
(ウ)本件不動産2が本件告知処分2に係る第二次納税義務の賦課期間にお
いて滞納会社の事業の用に供されていたこと
滞納会社とP3との間の取引状況によれば,亡P1が当該不動産を取
得した平成15年6月18日から滞納会社が解散した平成16年8月3
1日までの期間について,養鶏場として滞納会社の事業の用に供されて
いたことが認められる(乙31の2枚目・4(3)ア。原告らは,本件不動
産2を養鶏場として使用していた期間の終期については何ら主張してい
ないものの,その始期は当該不動産を取得した平成15年6月18日と
主張していることからすれば,本件不動産2が養鶏場として滞納会社の
事業の用に供されていた期間については,争いがないというべきであ
る。)。
そして,本件告知処分2に係る滞納国税(乙10,別表B-1)につ
いては,亡P1が本件不動産2を取得した以降において滞納会社の事業
の用に供された期間を考慮して,当該期間に相当する税額につき,第二
次納税義務者として納付すべき金額としており,本件不動産2からの徴
収可能な滞納国税の限度額(別表B-2)の範囲内の金額であることは明
らかである。
(エ)本件不動産3が本件告知処分3に係る第二次納税義務の賦課期間にお
いて滞納会社の事業の用に供されていたこと
滞納会社とP3との間の取引状況からすれば,少なくとも平成14年
10月1日~平成16年2月9日の期間について,養鶏場として滞納会
社の事業の用に供されていたことが認められる(乙31の3枚目・4(3)
イ。原告らは,本件不動産3を養鶏場として使用していた期間の始期に
ついて何ら主張しておらず,一方で,その終期について,平成16年2
月9日まで滞納会社において養鶏場として使用していた旨認めているこ
とからすれば,本件不動産3が養鶏場として滞納会社の事業の用に供さ
れていた期間については,争いがないというべきである。)。
(オ)本件不動産4が本件告知処分4に係る第二次納税義務の賦課期間にお
いて滞納会社の事業の用に供されていたこと
本件不動産4は,亡P1が平成15年7月7日にP6から売買により
取得しているところ,P2作成のP14養鶏場再開文書(乙33号証の
別紙12。前記(イ)a(b)のとおり,同文書にいう「P16養鶏場」は本
件不動産4を指すものである。)によれば,前記(イ)bで述べたとおり,
その後,滞納会社が引き続き養鶏を行っていたことが認められる。また,
滞納会社は,前記(イ)cで述べたとおり,平成17年7月1日より後の
鳥インフルエンザにより強制的に鶏が殺処分されるに至るまで,依然と
して養鶏を行っていた。さらに,本件不動産4-4は,前記(1)ア(オ)b
で述べたとおり,遅くとも平成15年8月~平成16年8月の間,滞納
会社の養鶏場から排出される鶏糞の処理のため,当該鶏糞を堆肥化させ
る場所並びに鶏の死鶏及び廃棄物を投棄する場所として事業の用に供さ
れていた。したがって,本件不動産4については,平成15年7月7日
から滞納会社が解散した平成16年8月31日までの期間について,養
鶏場又は養鶏場から排出される鶏糞を堆肥化させる場所若しくは鶏糞,
死鶏,廃棄物等を投棄する場所として滞納会社の事業の用に供されてい
たことは明らかであり,そのことは,滞納会社とP3との間の取引状況
からも明らかである(乙31の3枚目・4(3)ウ。なお,原告らは,本
件不動産4につき,平成15年7月7日に亡P1が売買により取得して
おり,取得する以前に発生した国税について,P1が第二次納税義務者
となることはない旨主張していることからすれば,その始期は同日であ
ると解され,一方で,その終期については何ら主張していないのである
から,本件不動産4が,養鶏場として滞納会社の事業の用に供されてい
た期間について,当事者間に争いはないというべきである。)。
そして,本件告知処分4に係る滞納国税(乙12,別表D-1)につい
ては,亡P1が本件不動産4を取得した以降において滞納会社の事業の
用に供された期間を考慮して,当該期間に相当する税額につき,第二次
納税義務者として納付すべき金額としており,本件不動産4からの徴収
可能な滞納国税の限度額(別表D-2)の範囲内の金額であることは明ら
かである。
(カ)小括
以上のとおり,本件各不動産は,本件各告知処分(本件告知処分1に
ついては,本件裁決による一部取消し後のもの)に係る第二次納税義務
の賦課期間において,いずれも養鶏場又は養鶏場から排出される鶏糞を
堆肥化させる場所若しくは鶏糞,死鶏,廃棄物等を投棄する場所として,
滞納会社の取引全体としての鶏卵等販売事業に供されていることは明ら
かである。
イ原告らの主張の要点
(ア)本件不動産1については,ハエの発生による隣接するゴルフ場(P2
0ゴルフ場)等とのトラブルにより,平成9年12月初旬に鶏を全部排
除し,同月26日以降,滞納会社の解散まで養鶏はしていない。
亡P1は,当時取引をしていた飼料メーカーのP22株式会社(以下
「P22」という。)から,本件不動産4の養鶏場を買収するよう依頼
を受け,①同社が,上記養鶏場の管理,鶏の飼育,鶏卵の販売等を全て
引き受けてくれていたこと,②上記養鶏場の鶏糞の処理機能を利用する
ことによって,上記のとおり休止していた本件不動産1における養鶏業
を再開することができるのではと考えたことから,本件不動産4を購入
した。ところが,その直後である平成15年10月にP22が倒産し,
また,1億3800万円もの大金を出して購入した本件不動産4の養鶏
場は,設備が欠陥だらけで,その修理費用に更に5200万円もの大金
を要した上,購入に際して言われていたほどの鶏糞の処理能力もなかっ
た。
亡P1は,本件不動産1に少しの鶏を入れてはみたが,本件不動産4
の養鶏場の管理等を約束していたP22が倒産し,本件不動産1の養鶏
場にまで手が回らず,結局,本件不動産1における養鶏業は閉鎖したま
まであった。
(イ)亡P1は,本件不動産2については平成15年6月18日に,本件不
動産4については平成15年7月7日に,それぞれ売買により取得して
おり,それ以前では亡P1の所有ではない。したがって,亡P1が取得
する以前に発生した国税について,亡P1が第二次納税義務者となるこ
とはない。
(ウ)本件不動産3については,平成16年2月9日まで滞納会社において
養鶏場として使用していたことは認める。
(エ)滞納会社において,本件不動産1-12及び本件不動産4-4を養鶏
場として使用したことがないことは,前記(1)イ(エ)のとおりである。
第3当裁判所の判断
1本件各告知処分に係る第二次納税義務の賦課期間において本件各不動産が滞
納会社の事業の用に供されていたか否か(争点3)について
(1)徴収法37条柱書にいう「その供されている事業に係る国税」の意義
第二次納税義務の制度は,私法上は第三者に財産が帰属している場合であ
っても,実質的には納税者にその財産が帰属している場合と同視しても公平
を失しないようなときにおいて,上記の第三者に対して補充的に納税義務を
負担させることにより,徴税手続の合理化を図るためのものであって,本来
の納税者の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税の額に不足
すると認められる場合に限り,その者と一定の関係がある者に対し,第2次
的にその納税義務を負わせようとする制度である。そして,同法37条は,
同条各号所定の者が,納税者に対し,その事業の遂行上欠くことのできない
ような重要な財産を提供し,その財産に関して生ずる所得が納税者の所得と
なっているときには,同条各号所定の者は,その財産の提供によって,実質
的には納税者と共同して事業を営んでいるとみることができることから,納
税者の経営する事業に係る国税について,その納税者の財産につき滞納処分
を執行してもなお徴収すべき国税の額に不足を生じるときに限り,補充的に
その財産及び不足額の限度で,同条各号所定の者に納税義務を負わせたもの
であると解される。このような同条の趣旨に照らせば,納税者が同族会社の
場合(同条2号参照)における同条柱書にいう「その供されている事業に係
る国税」は,当該同族会社の経営する事業に係る全ての国税のうち当該重要
財産が当該同族会社の事業の遂行に供されていた期間に対応するものに限ら
れるものと解するのが相当である。
(2)本件各不動産及びそこに所在する鶏舎の呼称等
ア滞納会社において,①本件不動産4-9~13に係る養鶏場は「第1農
場」と,②本件不動産4-1~3に係る養鶏場は「第2農場」と,③少な
くとも本件不動産4-5~8に係る養鶏場は「第3農場」と,④本件不動
産1-7~11及び本件不動産1-13に係る養鶏場は「第4農場」と,
⑤本件不動産1-1~6に係る養鶏場は「第5農場」と,それぞれ呼称さ
れており,これらの養鶏場の総称として「P8農場」との呼称も用いられ
ていた(前提事実(2)オ)。また,後記エのP2における呼称が用いられ
ることもあった(乙46の別紙8の2枚目)。なお,これらの農場を養鶏
の用に用いていた滞納会社は,本件不動産4の前所有者であるP6の代表
者であるP17を第1農場~第5農場の責任者として,その運営管理を任
せていた(乙33,41,42の1・2,44,46,弁論の全趣旨)。
イ旧水海道市役所においては,①第3農場の鶏舎を「P18養鶏」又は
「P19」と,②第4農場の鶏舎を「高床式」と,③第5農場の鶏舎を
「平飼い」と,それぞれ呼称することがあった(乙46)。
ウ①本件各不動産の所在地及び亡P1がその所有権を取得した時期(前提
事実(2)ア,エ及びオ),②平成15年11月及び平成18年3月発行の
「P23」(乙38,39)において,本件不動産4にほぼ対応する場所
に「(有)P6」との記載がされ,本件不動産1中の第4農場に対応する場
所に「P15養鶏場」との記載がされていることに照らせば,P2作成の
P14養鶏場再開文書(平成15年8月11日付け。乙33の別紙12)
に記載されている亡P1の発言中において,平成15年7月に購入したと
されている「P16養鶏場」が本件不動産4を指し,「P15養鶏場は,
休止して約5年が経過し,鶏舎の傷みもあり,これ以上放っておくとボロ
ボロになってしまう。P16養鶏場を購入したので,この際P15養鶏場
を使いたいと考え,若干手直しをした。」との部分における「P15養鶏
場」が本件不動産1を指すものであると認められる。
エP2においては,旧水海道市内に所在する滞納会社の養鶏場を「第1鶏
舎」ないし「第5鶏舎」と呼び,これらを全体として1つの養鶏場と見て
いた(乙33)。そして,①本件不動産1及び本件不動産4は,旧水海道
市内に所在し,第1農場ないし第5農場の5つの養鶏場として利用されて
いたこと(前提事実(2)オ),②「第1鶏舎」ないし「第5鶏舎」の位置
関係は,「第4鶏舎は川を挟んだゴルフ場のすぐそばにあり,その隣に,
第3若しくは第5鶏舎があったが,他の鶏舎は少し離れていた。」とされ
ているところ(乙33),③第4農場の近隣に第5農場が所在し,第1農
場ないし第3農場は第4農場及び第5農場から少し離れているところに所
在し,第4農場のそばにはα川が流れており,α川を挟んだ向こう側にP
20ゴルフ場が所在していたものであり,このような位置関係に変動が生
じたような事情もうかがわれないこと(前提事実(2)オ,乙37の1~3,
38,39,原告P7),④滞納会社は,旧水海道市内において,第1農
場ないし第5農場以外の場所で養鶏場を営んでいたことはないこと(原告
P7)などからすれば,P2における「第1鶏舎」ないし「第5鶏舎」は,
第1農場ないし第5農場をそれぞれ指しているものと認められる(別表7
の「P2」欄参照)。
オ①P3においては,鳥インフルエンザが発生した場合等に納品された鶏
卵がどこで生産されたものかを明らかにすることができるようにするため
に,滞納会社に農場名のリスト(乙31の別紙2)を作成させるとともに,
同社に対し,納品に係る鶏卵を生産(採卵)した養鶏場等を納品書に記入
することを求めており,特に平成16年以降は厳格にこれを履行させてい
たところ(乙31,32),②上記リストの記載内容及びその作成経緯,
前記アにおいて述べた滞納会社における養鶏場の呼称,本件各不動産の所
在地(乙2の1~5の17)に照らせば,P3においては,本件各不動産
に係る各養鶏場を,別表7の「P3」欄中の「産地名」欄にそれぞれ記載
されているとおり呼称していたものと認められ,③また,乙31及び32
によれば,滞納会社とP3の取引に係る納品書に記載されている養鶏場名
(納品書に括弧書等で付記されている。上記①に照らせば,納品に係る鶏
卵が生産された養鶏場を示すものと解される。)と本件各不動産との対応
関係は,別表7の「P3」欄中の「納品書」欄に記載されているとおりで
あると認められる。
なお,上記③の点に関して,原告P7は,本人尋問において,上記納品
書の「P5農場(N)」との記載(別表7の「P3」欄中の「納品書」欄
の「N」)の意味について,滞納会社における鶏卵の外部調達先である
「有限会社P24」を示すものであり,P25(本件不動産2)を示すも
のではないとの供述をするが,<ア>上記③の認定に沿うP3の従業員の供
述(乙31,32)と食い違うものである上,<イ>滞納会社とP3の取引
に係る納品書には,「P5農場(N)」との記載がされているもののほか
に,「P26扱」との記載がされた上で「有限会社P24」とのゴム判が
押されたものがあること(乙32の別紙5・1枚目左下参照)及び<ウ>P
3において採卵をした養鶏場等を納品書に記入させることとした目的等
(上記①)に照らし,亡P1が本件不動産2の所有権を取得した後に関し
ては,上記のような原告P7の供述は,採用することができない。なお,
乙31及び34によれば,亡P1が本件不動産2の所有権を取得する以前
における取引に係る納品書の中にも,鶏卵を生産した養鶏場として「N」
と記載されているものがあることが認められるが,亡P1が本件不動産2
の所有権を有していなかったことの一事をもって,滞納会社がそこで鶏卵
の生産をしていたことを否定することはできないというべきであるから,
この点も,当裁判所の上記認定,判断を左右するものではないものという
べきである。
(3)本件不動産1が本件告知処分1に係る第二次納税義務の賦課期間において
滞納会社の事業の用に供されていたか否かについて
ア本件不動産1-7~11及び13(第4農場)並びに本件不動産1-1
~6(第5農場)について
(ア)前提事実,前記(2)の各事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,
以下の事実が認められる。
a滞納会社においては,ハエの大量発生による近隣住民からの苦情等
のため,第4農場及び第5農場における養鶏を停止していたが,平成
15年7月に亡P1が本件不動産4(第1農場~第3農場)を購入し
たことをきっかけとして,同年8月,第4農場及び第5農場の使用再
開を試み,そこに鶏を搬入した(甲5,乙33,46,原告P7)。
b滞納会社は,①平成15年11月下旬及び平成16年1月初旬の各
時点では,第4農場において12万羽の鶏を,第5農場において3万
羽の鶏を,それぞれ飼養しており,②また,同年3月3日の時点では,
第4農場において15万羽の鶏を,第5農場において3万羽の鶏を,
それぞれ飼養していた(乙33,46)。
cところで,滞納会社は,旧水海道市役所環境経済部長から,平成1
5年8月7日付けで,旧水海道市β町内で養鶏を再開するに当たって
は,「環境対策を十分に行い,悪臭及びハエが発生しないような飼育
管理を行っていただきたい」との行政指導を受けていたが,同年12
月,第4農場の鶏舎の中に溜まった鶏糞のためにハエが大量発生し,
近隣住民から苦情が寄せられる事態となった(乙33,46)。滞納
会社の代表者である亡P1は,旧水海道市長に対し,平成16年4月
22日,「水海道の農場については全て閉鎖致します。」と申し出て,
①同年4月22日の時点において8万羽の鶏を飼養していた第4農場
の鶏舎については同年5月5日までに,②第5農場の鶏舎については
同年6月末までに,③その他の鶏舎(本件不動産4に係る第1農場~
第3農場)については同年9月末までに,いずれも「鶏アウト及び鶏
糞処理を完了」する旨を約した(乙33,46)。
d滞納会社は,第4農場の鶏舎については,平成16年5月10日に
鶏の搬出を完了させた(乙33)。一方,滞納会社は,第5農場の鶏
舎については,同年7月5日に一旦は鶏及び鶏糞の搬出を完了させた
が,同年8月6日及び同年9月29日の時点では,同鶏舎内における
鶏の飼養を継続していたため,旧水海道市長は,滞納会社に対し,同
年10月13日,第1農場~第3農場及び第5農場の各鶏舎における
鶏及び鶏糞の処理計画等につき同月29日までに回答することを求め
る旨の「P5農場閉鎖遅延について」と題する文書(乙46の別紙9
の3枚目)を送付した(乙46)。
(イ)前記(ア)の各事実に,滞納会社とP3の間における,納品書に本件
不動産1に係る養鶏場(第4農場又は第5農場)において生産されたこ
とを示す記載のある鶏卵の取引状況(乙31の別表2の「4(2)エの不
動産別紙不動産目録29ないし41」欄,乙34の別表1参照), >旧水海道市内の養鶏場において平成17年6月及び7月に鳥インフル
エンザが発生したことに関する当時の新聞記事等の内容(乙40,42
の1・2,44。殊に,乙44〔同年7月1日付けの記事〕中のP17
の発言は,第1農場~第3農場及び第5農場において,平成16年7月
以降も継続的に養鶏業が営まれてきたことを前提としていると理解する
ことができるものである。)なども勘案すると,①本件不動産1-1~
6(第5農場)は,遅くとも平成15年9月1日から滞納会社が解散し
た平成16年8月31日までの期間について,②本件不動産1-7~1
1及び13(第4農場)は,遅くとも平成15年9月1日から平成16
年3月31日までの期間について,養鶏場として滞納会社の事業の用に
供されていたものと認められる。
証拠(甲5,原告P7)のうち以上の認定,判断と異なる部分は,客
観的な裏付けに欠けるものといわざるを得ないことや,上記のような当
裁判所の認定,判断に沿う証拠(乙31,33,46)に照らし,採用
することができない。
イ本件不動産1-12について
(ア)①本件不動産1-12(登記記録上の面積1388㎡)は,第4農場
及び第5農場の東側に位置する近隣地であること(前提事実(2)オ),
②上記①のような位置関係や,亡P1が本件不動産1-1~11と同時
に本件不動産1-12の所有権を取得していること(前提事実(2)ア
①)に照らせば,亡P1においては,本件不動産1-12についても,
本件不動産1-1~11(第4農場及び第5農場)と一体的に利用する
ことを念頭に置いて,その所有権を取得したものと見るのが自然である
というべきこと,③P13作成のP8農場現況書(乙33の別紙11)
及びP2作成のP14養鶏場再開文書(乙33の別紙12。いずれも,
滞納会社が平成15年8月に「P5農場」〔第4農場及び第5農場〕に
鶏を搬入したことを契機として作成された,同月当時の第4農場及び第
5農場の状況等を記載した文書である。)によれば,第4農場及び第5
農場の鶏舎内は高さ約50㎝にわたり鶏糞が堆積しており,滞納会社に
おいて,当該鶏舎の「東側のかなりの広さの空き地」(上記①からすれ
ば,本件不動産1-12及びその隣接地を指すものと認められる。)に
鶏糞を持ち出して鋤きこんでいたと認められること,④旧水海道市役所
農政課職員作成のP5農場卵生産現状書(乙33の別紙3の3枚目,乙
46の別紙4の2枚目),乙33の別紙5及び別紙12並びに乙46の
別紙5によれば,第4農場の鶏舎においては,鶏糞処理施設が十分に稼
動していなかった上,そもそも飼養羽数に比して,鶏糞処理能力が不足
しており,同年12月の時点において,鶏舎の中に鶏糞が溜まってハエ
の発生源となっており,鶏舎の東側では鶏糞が鶏舎外にはみ出している
状況になっていたと認められること,⑤乙46の別紙9の2枚目の地図
及び別紙13の各写真(平成15年12月から平成16年9月にかけて
旧水海道市役所農政課職員が撮影したもの。同別紙中にこれらの写真が
「第4鶏舎」〔第4農場の鶏舎を意味する。〕の周囲の写真であること
を示すものと解される書込みがされていることや,被告指定代理人が平
成23年10月に撮影した乙45の別紙4の写真との対比〔乙45の別
紙4の写真⑤及び⑥,乙46の別紙13の写真⑧,⑲及び<23>〕に照ら
すと,第4農場の鶏舎の東側の周囲を撮影したものと認められる。)に
よれば,平成16年2月~同年6月の間に,第4農場の鶏舎から重機を
用いて搬出した鶏糞を,本件不動産1-12に存在していた2つのため
池に投棄し,そこに薬品をまいたり,石灰をまいて固めたりした上で,
土を被せるなどし,同年8月には上記各ため池が完全に埋め立てられた
ものと認められることからすれば,本件不動産1-12は,遅くとも平
成15年9月1日から平成16年3月31日までの期間について,養鶏
場から排出される鶏糞を投棄する場所等として滞納会社の事業の用に供
されていたものと認めるのが相当である。
(イ)この点,原告らは,本件不動産1-12は養鶏場として使用されたこ
とはなく,また,P13作成のP8農場現況書(乙33の別紙11)に
おいて,平成15年8月の状況が正しく報告されているという保証はな
いなどと主張し,原告P7もこれに沿う供述をするが,上記(ア)に掲げ
た当裁判所の認定,判断に沿う証拠に照らし,採用することができない
(なお,平成15年8月当時の第4農場及び第5農場の状況等について
のP8農場現況書〔乙33の別紙11〕の記載は,P2作成のP14養
鶏場再開文書〔乙33の別紙12〕等の他の証拠や,その後の本件不動
産1-12の利用状況とも整合するものと認められ,信用するに足るも
のであるというべきである。)。
ウ小括
以上のとおり,①本件不動産1-1~6は,遅くとも平成15年9月1
日から滞納会社が解散した平成16年8月31日までの期間について,②
本件不動産1-7~13は,遅くとも平成15年9月1日から平成16年
3月31日までの期間について,養鶏場又は養鶏場から排出される鶏糞を
堆肥化させる場所若しくは鶏糞を投棄する場所として滞納会社の事業の用
に供されていたものと認められる。したがって,本件不動産1は,本件告
知処分1に係る第二次納税義務の賦課期間(別表A-2参照)において,
滞納会社の事業の用に供されていたものということができる。
(4)本件不動産2が本件告知処分2に係る第二次納税義務の賦課期間において
滞納会社の事業の用に供されていたか否かについて
滞納会社とP3の間における,納品書に本件不動産2に係る養鶏場(P2
5)において生産されたことを示す記載のある鶏卵の取引状況(乙31の別
表2の「4(2)アの不動産別紙不動産目録1ないし5」欄,乙34の別表
1参照)に照らせば,本件不動産2は,亡P1がその所有権を取得した平成
15年6月18日から滞納会社が解散した平成16年8月31日までの期間
について,養鶏場として滞納会社の事業の用に供されていたことが認められ
る(乙31。なお,原告らは,その平成22年11月8日付け第1準備書面
第2の9冒頭において,被告の答弁書第4の1(2)エ(イ)〔本件不動産2が滞
納会社の事業の用に供されていた期間に関する被告の主張を含む部分〕の全
体につき「否認乃至争う。」との認否をしているものの,本件不動産2につ
き,亡P1がこれを取得する以前に発生した国税について同人が第二次納税
義務者となることはない旨,滞納会社が本件不動産2を養鶏場として使用し
ていた期間の始期を,被告と同様に亡P1が当該不動産を取得した平成15
年6月18日とする趣旨と理解し得る主張をする一方で,その終期について
は具体的に主張していないこと〔前記第2の5(3)イ(イ)〕に照らせば,原告
らにおいて,本件不動産2が養鶏場として滞納会社の事業の用に供されてい
た期間については,積極的に争っていないものといい得るところである。)。
そうすると,本件不動産2は,本件告知処分2に係る第二次納税義務の賦
課期間(別表B-2参照)において,滞納会社の事業の用に供されていたも
のということができる。
(5)本件不動産3が本件告知処分3に係る第二次納税義務の賦課期間において
滞納会社の事業の用に供されていたか否かについて
滞納会社とP3の間における,納品書に本件不動産2に係る養鶏場(P2
6農場)において生産されたことを示す記載のある鶏卵の取引状況(乙31
の別表2の「4(2)イの不動産別紙不動産目録6ないし11」欄,乙34
の別表1参照)に照らせば,本件不動産3は,少なくとも平成14年10月
1日~平成16年2月9日の期間について,養鶏場として滞納会社の事業の
用に供されていたことが認められる(乙31。なお,原告らは,その平成2
2年11月8日付け第1準備書面第2の9冒頭において,被告の答弁書第4
の1(2)エ(イ)〔本件不動産3が滞納会社の事業の用に供されていた期間に関
する被告の主張を含む部分〕の全体につき「否認乃至争う。」との認否をし
ているものの,滞納会社が本件不動産3を養鶏場として使用していた期間の
始期につき何ら主張しないまま,平成16年2月9日まで滞納会社において
養鶏場として使用していたことは認めるとの主張をしていること〔前記第2
の5(3)イ(ウ)〕に照らせば,原告らにおいて,本件不動産3が養鶏場として
滞納会社の事業の用に供されていた期間については,実質的には争っていな
いものといい得るところである。)。
そうすると,本件不動産3は,本件告知処分3に係る第二次納税義務の賦
課期間(別表C-2参照)において,滞納会社の事業の用に供されていたも
のということができる。
(6)本件不動産4が本件告知処分4に係る第二次納税義務の賦課期間において
滞納会社の事業の用に供されていたか否かについて
ア本件不動産4-4以外の本件不動産4について
本件不動産4は,亡P1が平成15年7月7日にP6から売買により所
有権を取得したものであるところ(前提事実(2)エ),①亡P1がその所
有権を取得した後も,滞納会社が,引き続き当該不動産(第1農場~第3
農場)において養鶏をしていたこと(前提事実(2)オ,前記(2)の事実,乙
33,46),②滞納会社の代表者である亡P1は,旧水海道市長に対し,
平成16年4月22日,「水海道の農場については全て閉鎖致します。」
と申し出て,<ア>第4農場の鶏舎については同年5月5日までに,<イ>第5
農場の鶏舎については同年6月末までに,<ウ>その他の鶏舎(本件不動産
4に係る第1農場~第3農場)については同年9月末までに,いずれも
「鶏アウト及び鶏糞処理を完了」する旨を約したが,同年9月30日の時
点においても,第1農場~第3農場は閉鎖されていなかったこと(前記
(3)ア(ア)c,乙33,46),③滞納会社とP3の間における,納品書に
本件不動産4に係る養鶏場(第1農場~第5農場)において生産されたこ
とを示す記載のある鶏卵の取引状況(乙31の別表2の「4(2)ウの不動
産別紙不動産目録12ないし28」欄,乙34の別表1参照),④旧水
海道市内の養鶏場において平成17年6月及び7月に鳥インフルエンザが
発生したことに関する当時の新聞記事等の内容(乙40,42の1・2,
44。殊に,乙44〔同年7月1日付けの記事〕中のP17の発言は,第
1農場~第3農場及び第5農場において,平成16年7月以降も継続的に
養鶏業が営まれてきたことを前提としていると理解することができるもの
である。),⑤原告P7は,その陳述書(甲8)において,本件不動産4
-14~17(甲8添付の図面,乙37の1・2,38,39)が「堆肥
置場」として使用されていた旨述べていることに照らすと,本件不動産4
-4以外の本件不動産4については,平成15年7月7日から滞納会社が
解散した平成16年8月31日までの期間について,養鶏場又は養鶏場か
ら排出される鶏糞を堆肥化させる場所(堆肥置場)として滞納会社の事業
の用に供されていたものと認められる(なお,原告らは,その平成22年
11月8日付け第1準備書面第2の9冒頭において,被告の答弁書第4の
1(2)エ(イ)〔本件不動産4が滞納会社の事業の用に供されていた期間に関
する被告の主張を含む部分〕の全体につき「否認乃至争う。」との認否を
しているものの,本件不動産2につき,亡P1がこれを取得する以前に発
生した国税について同人が第二次納税義務者となることはない旨,滞納会
社が本件不動産4〔ただし,原告らにおいて滞納会社の事業の用に供され
たこと自体を否認している本件不動産4-4を除く。〕を養鶏場として使
用していた期間の始期を,被告と同様に亡P1が当該不動産を取得した平
成15年7月7日とする趣旨と理解し得る主張をする一方で,その終期に
ついては具体的に主張していないこと〔前記第2の5(3)イ(イ)〕に照らせ
ば,原告らにおいて,本件不動産4-4を除く本件不動産4が養鶏場とし
て滞納会社の事業の用に供されていた期間については,積極的に争ってい
ないものといい得るところである。)。
イ本件不動産4-4について
(ア)①本件不動産4-4は,第3農場の鶏舎の南西側に隣接して位置して
いるところ(前提事実(2)オ,乙37の1,38,39,45),②上記
①のような位置関係や,亡P1が本件不動産4の全てにつき同時にその
所有権を取得していること(前提事実(2)エ)に照らせば,亡P1にお
いては,本件不動産4-4を含む本件不動産4を一体的に利用すること
を念頭に置いて,その所有権を取得したものと見るのが自然であるとい
うべきこと,③旧水海道市役所農政課職員は,平成15年8月20日,
P17から,「P18養鶏となり」(P18養鶏は第3農場の鶏舎を指
す。)の土地において,滞納会社の養鶏場から排出された鶏糞を堆肥化
させている旨を聴取していること(前記(2)イ,乙46),④乙46の
別紙14の各写真(平成16年2月から同年9月にかけて旧水海道市役
所農政課職員が撮影したもの。同別紙中に,これらの写真が上記②の
「P18養鶏」〔P2のいう「第3鶏舎」〕の周囲の写真であることを
示すものと解される書込みがされていることや,被告指定代理人が平成
23年10月に撮影した乙45の別紙4の写真との対比〔乙45の別紙
4の写真⑬,⑰及び⑱,乙46の別紙14の写真⑥,⑦,⑨,⑩,⑱~
⑳,<29>及び<32>〕に照らすと,第3農場の周囲を撮影したものと認め
られ,また,土地と建屋の位置関係によれば,乙46の別紙14の写真
⑦,⑨,⑩,⑬~⑳,<24>~<26>,<28>~<30>及び<32>は,第3農場の
鶏舎と上記①のような位置関係にある本件不動産4-4を撮影したもの
と認められる。)によれば,<ア>平成16年2月から4月にかけて,第
3農場の鶏舎の西側に位置する入口付近には,大量の鶏の死骸が放置さ
れ(乙45の別紙4の写真⑱,乙46の別紙14の写真①~⑥),<イ>
同月14日以降には,掘削された本件不動産4-4に鶏糞が投棄された
上で盛土がされ(乙46の別紙14の写真⑦,⑨~⑱),<ウ>同年7月2
2日には,同不動産に大量の鶏糞ベルトと思われる廃棄物が投棄され
(乙46の別紙14の写真⑲及び⑳),<エ>同年8月13日には,同不動
産に大量の鶏の死骸が投棄されていた(乙46の別紙14の写真<24>~
<26>)と認められることに照らせば,本件不動産4-4は,平成15年
8月~平成16年8月の期間において,滞納会社の養鶏場から排出され
た鶏糞を堆肥化させる場所並びに鶏の死骸及び廃棄物を投棄する場所と
して使用されていたものと認められる。
(イ)この点,原告らは,本件不動産4-4が養鶏場として使用されたこと
はないとした上で,P17が旧水海道市農政課職員を案内した「たい肥
置場」は,本件不動産1の土地の一部又は本件不動産4の他の土地に設
けられていたものであって(甲8),乙46の別紙3の「P18養鶏と
なり」との記載は誤りであり,また,平成16年8月に,猛暑のため死
んだ鳥の搬出が間に合わず,本件不動産4-4にこれを一時期置いたこ
とがあるが,10㎡にも満たない範囲に短期間置いたものにすぎないな
どと主張するが,前記(ア)掲記の各証拠に照らし,これらの主張は,い
ずれも採用することができない。
ウ小括
以上のとおり,本件不動産4は,平成15年7月7日から滞納会社が解
散した平成16年8月31日までの期間について,養鶏場又は養鶏場から
排出される鶏糞を堆肥化させる場所若しくは鶏糞,死鶏,廃棄物等を投棄
する場所として滞納会社の事業の用に供されていたものと認められる。し
たがって,本件不動産4は,本件告知処分4に係る第二次納税義務の賦課
期間(別表D-2参照)において,滞納会社の事業の用に供されていたも
のということができる。
(7)争点3についての結論
以上のとおり,本件各不動産は,本件各告知処分(本件告知処分1につい
ては,本件裁決による一部取消し後のもの)に係る第二次納税義務の賦課期
間において,いずれも養鶏場又は養鶏場から排出される鶏糞を堆肥化させる
場所若しくは鶏糞,死鶏,廃棄物等を投棄する場所として,滞納会社の事業
に供されていたものと認められる。
2本件各不動産が重要財産に当たるか否か(争点1)について
(1)前記1(1)において述べた徴収法37条の趣旨に照らせば,同条柱書にい
う「納税者の事業の遂行に欠くことができない重要な財産」(重要財産)と
は,仮に当該財産がなかったとした場合には,納税者の事業の遂行ができな
くなるか又はできないおそれがある状態になると認められる程度に上記事業
の遂行に関係を有する財産をいうものと解するのが相当である。
(2)ア前提事実,前記1(2)における認定事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣
旨によれば,次の事実が認められる。
(ア)滞納会社の売上げの大部分は,P2に対する液卵及び冷凍卵の販売取
引並びにP3に対する鶏卵の販売取引によるものであったところ,滞納
会社は,本件各不動産等において営んでいた自社の養鶏場で生産された
鶏卵を「原料鶏卵」としてP3に対して納入する一方,P3が鶏卵を加
工した液卵を,P4を介して仕入れ,その液卵をP2に対して納品して
いた(乙31,32)。なお,滞納会社からP3に対して平成14年1
0月~平成16年8月に液卵の原料として納入された鶏卵の大部分(納
入数量の96.95%)は,滞納会社が本件各不動産等において営んで
いた養鶏場において生産されたものであった(乙31,32,34)。
(イ)P3と滞納会社の間における液卵の販売取引は,P2に対して液卵の
「納品枠」を有していたが割卵設備を所有していなかった滞納会社が,
P3に対し,滞納会社の生産した鶏卵を割卵してほしいとの申出をした
ことから始まったものであり,滞納会社においてP2に納品する液卵を
P3から調達するに当たっては,P3が,その液卵の販売数量に見合っ
た数量の原料鶏卵を滞納会社から仕入れることが取引の条件とされてい
た(乙32)。
(ウ)P2においては,滞納会社に対し,液卵については毎日発注しており,
冷凍卵については液卵を調達することができない場合に発注していたと
ころ,液卵の取引単価は,鶏卵市況(全農の取引相場M・L平均)を基
に定められていた(乙33)。なお,滞納会社が前記(ア)のとおり仕入
れた液卵の販売先はP2のみであり,滞納会社のP2に対する液卵の販
売取引において,P3が加工した液卵は,P3からP2の工場へ直接納
品されていた(乙32)。
(エ)滞納会社のP3に対する原料鶏卵の納入及びP4を介したP3の滞納
会社に対する液卵の販売という相互の取引は,①滞納会社とP3の間で
は,実質的には,滞納会社において,P2に対して液卵を納品するため
に,P3に対して原料鶏卵を提供し,液卵の生産を委託したようなもの
であると理解されていたものであり,②また,前記(ウ)のとおり滞納会
社とP2の間における液卵の取引単価が鶏卵市況を基準として決まるも
のであったことから,P3からすれば,いわば原料鶏卵の価格に液卵の
加工賃を上乗せするだけの取引であり,確実に液卵の加工賃に相当する
額の利益を得ることができるものであったことから,P3において滞納
会社からの原料鶏卵の仕入単価は余り重視されておらず,P3における
滞納会社からの原料鶏卵の仕入単価は,他社からのそれと比較して高い
部類であった(乙32)。
(オ)自社生産の原料鶏卵を加工する場合には,いわゆるコストメリットを
いかすことができることから,鶏卵の生産原価の観点からは,一般的に
は,いわゆる外部調達よりも自社生産の方が有利であるとされる(乙3
2,33)。
イ前記アの各事実によれば,①滞納会社における,P2に対する液卵及び
冷凍卵の販売取引,P3に対する鶏卵の販売取引並びに本件各不動産等に
おける養鶏場の経営は,別個独立の事業ではなく,全体として不可分一体
の事業を成すものとみるのが相当であるというべきところ,②本件各不動
産等において営まれていた滞納会社の養鶏業は,<ア>P3に対する原料鶏
卵の販売単価を他社のそれと比較して高く設定することを可能とさせるも
のであるとともに,P2に対する液卵販売の原価面において,鶏卵市況の
影響を避けつつ安価に原料鶏卵を調達することを可能とするものであって,
P3への原料鶏卵の供給及びP2への液卵の販売の安定化に大きく貢献す
るものである上,<イ>滞納会社が必要な時期に必要な数量の鶏卵を供給す
ることを担保し,滞納会社の取引先としての信用を高めるという点でも,
滞納会社の事業に貢献するものであるということができる。
以上からすれば,本件各不動産は,上記①のような滞納会社の事業の遂
行にとって不可欠な財産であって,重要財産に当たるものというべきであ
る。
ウこの点,原告らは,①P3に対して納入する鶏卵のうち,滞納会社が生
産したものの割合は約20%にすぎず,滞納会社がP2に販売した液卵は,
滞納会社が生産した鶏卵とは全く関係がない,②滞納会社が営んでいた養
鶏場における鶏卵の生産は,鶏卵が不足した場合の調整のためであって,
養鶏場がなくても滞納法人の事業の遂行に支障はなかった,③滞納会社の
養鶏業は赤字であり,養鶏業を経営することによって得た所得について,
本件における滞納会社の滞納国税は発生していないなどとして,本件各不
動産は重要財産に当たらない旨主張する。
しかし,上記①及び②の主張は,これまでの当裁判所の認定,判断と異
なる事実関係を前提とするものであって,採用することができず,上記③
の主張についても,前記イ①のとおり,滞納会社における,P2に対する
液卵及び冷凍卵の販売取引,P3に対する鶏卵の販売取引並びに本件各不
動産等における養鶏業は,全体として不可分一体の事業を成すものとみる
のが相当であることに照らし,本件各不動産等において営まれていた養鶏
業のみの収支がどのようなものであるかは,本件各不動産が重要財産に当
たるか否かを左右するものではないというべきであるから,採用すること
ができない。
3本件各不動産に関して生ずる所得が滞納会社の所得となっていたか否か(争
点2)について
(1)前記1(1)において述べた徴収法37条の趣旨に照らせば,同条柱書にい
う「財産に関して生ずる所得が納税者の所得となっている場合」とは,重要
財産から直接又は間接に生ずる所得が納税者の所得となっている場合及び所
得税法その他の法律の規定又はその規定に基づく処分により納税者の所得と
される場合というものと解すべきところ,前記2(2)イのとおり,本件各不
動産等における滞納会社による養鶏場の経営が,P2に対する液卵及び冷凍
卵の販売取引並びにP3に対する鶏卵の販売取引と全体として不可分一体の
事業を成すものであり,P3への原料鶏卵の供給及びP2への液卵の販売の
安定化に大きく貢献するとともに,滞納会社の取引先としての信用を高める
という点でも滞納会社の事業に貢献するものであることからすれば,本件各
不動産から直接又は間接に生ずる所得が納税者である滞納会社の所得となっ
ていたものと認めるのが相当である。
(2)この点,原告らは,滞納会社の所得のうち約70%は,他の鶏卵販売業者
から購入した鶏卵の販売により得たものであって,本件各不動産を使用して
養鶏場を経営することによって得たものではなく,また,滞納会社の養鶏業
は,いわゆる赤字であるから,本件における滞納会社の滞納国税は,本件各
不動産が供されている事業(養鶏業)によって発生したものではないなどと
主張するが,これまで述べた当裁判所の認定,判断と異なる事実関係を前提
とし,あるいは,本件各不動産等における滞納会社による養鶏場の経営が,
滞納会社のP2及びP3との取引と全体として不可分一体の事業を成すもの
であることを念頭に置いていないものであって,採用することができない。
4本件各処分の適法性について
(1)本件各告知処分の適法性について
前提事実及び争点1~3に関する当裁判所の認定,判断に照らせば,本件
各告知処分は,徴収法37条所定の要件をいずれも満たすものであり,また,
亡P1に対するこれらの告知も,同法32条1項前段の規定に従ったもので
あって(乙9~12),いずれも適法なものと認められる。
(2)本件各督促処分の適法性について
本件各告知処分がいずれも適法なものであることは前記(1)のとおりであ
り,また,亡P1に対する督促の手続も徴収法32条2項の規定に従ったも
のであるから(前提事実(4)ウ,乙13~16),本件各督促処分は,いず
れも適法なものと認められる。
(3)本件各差押処分の適法性について
本件各告知処分及び本件各督促処分がいずれも適法なものであることは前
記(1)及び(2)のとおりであり,また,本件各差押処分は,いずれも徴収法4
7条1項の規定に従ってされたものであり,本件各差押処分に係る差押財産
は,本件各告知処分の納付限度とされる不動産である(前提事実(4)エ)か
ら,本件各差押処分は,いずれも適法なものと認められる。
5結論
以上の次第であって,原告らの請求は,いずれも理由がないからこれらを棄
却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官八木一洋
裁判官田中一彦
裁判官塚原洋一
(別紙1)
処分目録
1東京国税局長が亡P1に対して平成20年5月30日付けでした,納税者株
式会社P5農場(本店所在地・東京都練馬区δ×番1号P27ビル。以下「滞
納会社」という。)の滞納に係る別表A-1の国税につき納付限度額を別紙2
「不動産目録1」記載の各不動産(これらを総称して,以下「本件不動産1」
といい,個々の不動産を指して,以下「本件不動産1-1」〔ハイフンの後の
数字は,同別紙における順号を指す。〕のようにいう。)とする第二次納税義
務の納付告知処分(同日付け東局徴特○-特第○号の納付通知決議書によるも
の。以下「本件告知処分1」という。)のうち,次の(1)及び(2)を除く部分
(1)別表A-1の番号1-1,番号2,番号3,番号6及び番号7の国税に関
する部分
(2)別表A-1の番号1-3の国税のうち本件不動産1-7~13を限度とす
る部分
2東京国税局長が亡P1に対して平成20年7月8日付けでした本件告知処分
1の第二次納税義務に係る国税の納付の督促処分(同日付け第○号の納付催告
決議書によるもの。以下「本件督促処分1」という。)
3東京国税局長が亡P1に対して平成20年7月28日付けでした本件不動産
1についての差押処分(以下「本件差押処分1」という。)
4東京国税局長が亡P1に対して平成20年5月30日付けでした滞納会社の
滞納に係る別表B-1の国税につき納付限度を別紙3「不動産目録2」記載の
各不動産(これらを総称して,以下「本件不動産2」という。)とする第二次
納税義務の納付告知処分(同日付け東局徴特○-特第○号の納付告知決議書に
よるもの。以下「本件告知処分2」という。)
5東京国税局長が亡P1に対して平成20年7月8日付けでした本件告知処分
2の第二次納税義務に係る国税の納付の督促処分(同日付け第○号の納付催告
決議書によるもの。以下「本件督促処分2」という。)
6東京国税局長が亡P1に対して平成20年7月28日付けでした本件不動産
2についての差押処分(以下「本件差押処分2」という。)
7東京国税局長が亡P1に対して平成20年5月30日付けでした滞納会社の
滞納に係る別表C-1の国税につき納付限度を別紙4「不動産目録3」記載の
各不動産(これらを総称して,以下「本件不動産3」という。)とする第二次
納税義務の納付告知処分(同日付け東局徴特○-特第○号の納付告知決議書に
よるもの。以下「本件告知処分3」という。)
8東京国税局長が亡P1に対して平成20年7月8日付けでした本件告知処分
3の第二次納税義務に係る国税の納付の督促処分(同日付け第○号の納付催告
決議書によるもの。以下「本件督促処分3」という。)
9東京国税局長が亡P1に対して平成20年7月28日付けでした本件不動産
3についての差押処分(以下「本件差押処分3」という。)
10東京国税局長が亡P1に対して平成20年5月30日付けでした滞納会社の
滞納に係る別表D-1の国税につき納付限度を別紙5「不動産目録4」記載の
各不動産(これらを総称して,以下「本件不動産4」といい,個々の不動産を
指して,以下「本件不動産4-1」〔ハイフンの後の数字は,同別紙における
順号を指す。〕のようにいう。)とする第二次納税義務の納付告知処分(同日
付け東局徴特○-特第○号の納付告知決議書によるもの。以下「本件告知処分
4」という。)
11東京国税局長が亡P1に対して平成20年7月8日付けでした本件告知処分
4の第二次納税義務に係る国税の納付の督促処分(同日付け第○号の納付催告
決議書によるもの。以下「本件督促処分4」という。)
12東京国税局長が亡P1に対して平成20年7月28日付けでした本件不動産
4についての差押処分(以下「本件差押処分4」という。)
以上

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