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平成14年(行ケ)第455号審決取消請求事件(平成15年2月24日口頭弁論
終結)
          判        決
       原      告   小林製薬株式会社
       訴訟代理人弁理士   大 島 泰 甫
       同          稗 苗 秀 三
       同          後 藤 誠 司
       同          阪 本 英 男
       被      告   特許庁長官 太田信一郎
       指定代理人      山 下 孝 子
       同          宮 川 久 成
          主        文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
   特許庁が不服2000-9987号事件について平成14年7月25日にし
た審決を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   原告は,平成11年1月27日,「ティーバック」の片仮名文字を横書きし
てなり,第5類,第16類,第21類,第30類,第31類及び第32類に属する
願書に記載された商品を指定商品とする商標(以下「本願商標」という。)につい
て,商標登録出願(商願平11-6894号)をし,平成12年4月19日付け手
続補正書により,指定商品を第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油紙,衛生マス
ク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理
用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッ
ド,医療用腕環,失禁用おしめ,人工受精(審決謄本1頁最終段落に「人工授精」
とあるのは誤記と認める。以下同じ。)用精液,乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,
防虫紙」,第21類「袋状の茶こし」,第30類「茶」,第31類「野菜」,第3
2類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース」と補正したが,同年5月29日
に拒絶査定を受けたので,同年7月3日,これに対する不服の審判の請求をした
上,平成14年5月27日付け手続補正書により,指定商品を第5類「薬剤,歯科
用材料,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,
生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこ
う,包帯,包帯液,胸当てパッド,医療用腕環,失禁用おしめ,人工受精用精液,
乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,防虫紙」,第31類「野菜」,第32類「清涼飲
料,果実飲料,飲料用野菜ジュース」と補正した。
   特許庁は,同請求を不服2000-9987号事件として審理した上,同年
7月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,
同年8月6日原告に送達された。
 2 審決の理由
   審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願商標は,引用商標,すなわ
ち,「テイパック」の片仮名文字を横書きしてなり,第5類「薬剤,歯科用材料,
医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理用タ
ンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯
液」を指定商品とする商標登録第4036463号商標(平成7年7月2  8日
登録出願,平成9年8月1日設定登録)とは,その外観及び観念において紛らわし
いところがないとしても,称呼上相紛らわしい類似の商標であり,かつ,本願商標
の指定商品中には引用商標の指定商品と同一又は類似の商品が含まれているから,
本願商標は,商標法4条1項11号に該当するとした。
第3 原告主張の審決取消事由
 1 審決は,原告に対して審判段階で再度の拒絶理由通知を発し,再度意見書の
提出の機会を与えることをしなかった手続上の不備があり(取消事由1),かつ,
本願商標と引用商標の類否判断を誤った(取消事由2)ものであるから,違法とし
て取り消されるべきである。
 2 取消事由1(拒絶理由通知の不備)
   拒絶査定不服審判における新たな拒絶理由通知は,審査における拒絶の理由
を否定する判断が示された後にされるものであって,商標法55条の2第1項にい
う「審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」とは,「査定の
理由では拒絶できないが審判段階で発見した新たな拒絶の理由によって拒絶しよう
とする場合」という趣旨であり,このような場合には,同法15条の2の規定に従
い,出願人に対して再度の拒絶理由通知を発し,再度意見書の提出の機会を与えな
ければならないというべきである。なぜならば,査定の理由を維持し得るとして審
判請求を不成立とすることができるのに,新たな拒絶理由通知を発し,出願人にこ
れに対する応答の負担を掛けた上で,一転して,拒絶査定と同じ理由でいきなり不
成立審決をすることが可能であるとすれば,審判段階における新たな拒絶理由通知
をする意味がなく,この拒絶理由通知に何ら法的拘束力がないとすれば,出願人が
一方的に負担を強いられる不合理な結果を生ずるからである。
   本件において,原告は,審査段階において,本願商標の出願が同法6条1項
の要件を具備せず,かつ,本願商標が引用商標外1の登録商標と同一又は類似であ
って,その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであ
り,同法4条1項11号に該当する旨の平成12年2月28日付け拒絶理由通知を
受けたので,同年4月19日付け意見書及び手続補正書を提出したが,同年5月2
9日,上記拒絶理由通知に係る後者の拒絶理由により拒絶査定を受けた。そこで,
原告が,本件拒絶査定不服審判の請求をしたところ,指定商品中「茶」に使用する
ときは同法3条1項3号に該当し,「小袋入りの茶」以外の「茶」に使用するとき
は,商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあり,同法4条1項16号に該
当する旨の,査定の理由とは異なる理由による平成14年4月15日付け拒絶理由
通知が発せられたのであるから,これにより審査における上記拒絶理由を否定する
判断が示されたというべきである。これに対し,原告は,同年5月27日付け手続
補正書により,指定商品の「第30類 茶」及び「第21類 袋状の茶こし」を削
除する補正をしたが,審決  は,原告に対して再度の拒絶理由通知を発し,再度
意見書の提出の機会を与えることなく,本願商標が同法4条1項11号に該当する
とした原査定は妥当であるとして本件審判請求を不成立としたものであるから,同
法55条の2第1項において準用する同法15条の2の規定に違反した手続上の違
法がある。
 3 取消事由2(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)
   審決の認定するとおり,本願商標より「ティーバック」の称呼が生じ,引用
商標より「テイパック」の称呼が生ずるが,両者は,互いに聞き間違えるおそれが
なく,明らかに聴別可能であるから,称呼上非類似である。すなわち,審決は,
「ティー」と「テイ」の音感の近似性をいうが,「ティー」は,舌先を上前歯の根
元に付けて発音する破擦音「ティ」(ti)に長音「ー」を付することにより,英単
語「tea」と同じく滑らかに「ティー」(ti:)と発音されるのに対し,「テイ」
は,子音「t」に二重母音「ei」が付帯し,舌先よりやや内端部を上前歯の根元に当
てて発音する破裂音「テ」に比較的に明瞭に発音される単母音「イ」を付した音で
あり,「ティ」(ti)と「テ」(te)において調音の位置,方法を異にする上,長
音が付されることによってほぼ一音のごとく滑らかに(ti:)と発音される「ティ
ー」と,比較的明りょうに発音され「イ」が付されることによって二音節に「tei」
と発音される「テイ」とは調音方法を異にしており,「ティー」と「テイ」とは明
らかに音調,音感を異にし,明りょうに聴別可能である。また,審決は,欧文字の
「T」が片仮名表記では「ティー」又は「テイ」と表されるとするが,「T」を片
仮名表記する場合,英語のアルファベットでは「ティー」,ドイツ語のアルファベ
ットでは「テー」であり,「テイ」とは表記しない。現在の英語の普及率から見
て,欧文字「T」に接した場合は「ティー」と発音し,片仮名表記する場合は「テ
ィー」と記すのが常識である。次に,審決は,両者の音構成中程の「バッ」と「パ
ッ」も清音と半濁音の差であり,ともに撥音を伴っており近似の音であるとする
が,「バッ」と「パッ」の比較ではなく,本願商標の後半部「バック」と引用商標
の後半部「パック」を比較すべきであり,その場合には,前者は「背。背中。背
後」を意味する英文字「back」に通じ,後者は「包装すること。包装したもの」を
意味する英文字「pack」に通じ,いずれも親しみのある英単語の表音表記として,
明りょうに聴別可能である。加えて,引用商標は,その商標権者である帝国製薬株
式会社の頭文字「帝」を表音表記した「テイ」と「包装すること。包装したもの」
を意味する「パック」とを結合した造語商標として認識可能であるのに対し,本願
商標は,「ティー-バック【Tback】脇のくりが大きく,後部がT字形をなす極小
化された下着や水着などのパンツ」(広辞苑第5版)に由来する造語商標であり,
「ティーバック」という一連の称呼に接した場合において,これを引用商標の「テ
イパック」と聞き誤るおそれは皆無というべきであり,また,観念及び外観におい
て両者が互いに非類似であることは明白であるから,審決には本願商標と引用商標
の類否判断を誤った違法がある。
第4 被告の反論
 1 審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
 2 取消事由1(拒絶理由通知の不備)について
   審査における拒絶理由通知は,拒絶査定不服審判においてもその効力を有し
(商標法56条1項,特許法158条),また,商標法55条の2第1項の規定に
基づき審判段階において査定の理由と異なる新たな拒絶理由通知が発せられたから
といって,これにより,審査における拒絶の理由が否定されるとする同法上の規定
は存在しないから,本願商標が同法4条1項11号に該当する旨の審査における拒
絶理由通知は,審判においてもその効力を有するものである。原告は,当該拒絶理
由通知については,審査段階において,意見書を提出する機会を与えられており,
審決に原告主張のような手続上の違法はない。
 3 取消事由2(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)について
   本願商標から生ずる「ティーバック」の称呼と,引用商標から生ずる「テイ
パック」の称呼は,前半の音構成において「ティー」と「テイ」,後半の音構成に
おいて「バッ」と「パッ」にその差異を有する。前半の音構成について対比する
と,「ティー」の音は,子音(t)と母音(i)よりなる「ティ」の音に長音が付さ
れていることから,その長音部分は「ティ」の母音(i)を伸ばすように発音され,
「ティイ」のように聴取されるのに対し,「テイ」の音における「イ」の音は,前
音である破裂音「テ」(te)の音と,後続音である促音を伴う破裂音「パッ」との
狭間にあり,かつ,前音「テ」(te)の帯有する  母音(e)と二重母音を構成す
る関係上,単音としての音の響きは必ずしも明りょうではなく,「イ」の音が,語
頭部にあって明確に発音される前音「テ」(te)の母音に吸収するように発音さ
れ,その結果として,「テイ」の部分が「テー」と一音節のように聴取される。次
に,後半の音構成における「バッ」と「パッ」は,ともに母音(a)を共通にする破
裂音の「バ」あるいは「パ」に促音を伴っているものであって,その違いは濁音と
半濁音にすぎないことから,全体の音質,音調が近似する。したがって,本願商標
から生ずる「ティーバック」の称呼と,引用商標から生ずる「テイパック」の称呼
をそれぞれ一連のものとして聞いたときは,その語調,語感が近似したものとな
り,互いに聞き誤るおそれがあるというべきである。また,原告は,本願商標が
「ティー-バック【Tback】脇のくりが大きく,後部がT字形をなす極小化された
下着や水着などのパンツ」に由来する造語商標であると主張するが,平成10年2
月20日付け京都新聞朝刊(乙4),平成11年4月22日付け朝日新聞埼玉版
(乙5),平成12年6月19日付け(乙6),同年12月13日付け(乙7),
平成13年3月7日付け(乙8),平成14年3月8日付け(乙9)各日本食糧新
聞及びインターネットのホームページ(乙10~12)には,「ティーバック」の
語を「小袋入りの茶」を表す商品として紹介する記事が掲載されており,他方,
「テイパック」の語も,平成8年11月18日付け日本食糧新聞(乙13)及びイ
ンターネットのホームページ(乙14~17)において,同様に「小袋入りの茶」
を表す商品として紹介する記事が掲載されているとおり,両者は,観念においても
類似する。外観上は,いずれも片仮名文字よりなり,「テ」「ッ」「ク」の文字を
共通にするものであって,その相違は,「イ」の文字の大小,長音記号の有無,
「バ」と「パ」の違いにすぎず,称呼,観念上の紛らわしさをしのぐとはいえない
微差にとどまる。したがって,本願商標と引用商標が全体として類似の商標である
とした審決の判断に誤りはない。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由1(拒絶理由通知の不備)について
   当事者間に争いのない事実及び証拠(甲3~9)によれば,原告は,平成1
1年1月27日に本願商標の登録出願をした後,指定商品中「茶こし袋」につき商
標法6条1項の要件を具備せず,かつ,本願商標が引用商標外1の登録商標と同一
又は類似であって,その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用す
るものであり,同法4条1項11号に該当することを理由とする平成12年2月2
8日付け拒絶理由通知を受けたので,同年4月19日付け意見書及び手続補正書を
提出し,指定商品に係る前者の拒絶理由を解消するとともに,後者の拒絶理由につ
いて反論したが,本願商標は引用商標と称呼上類似し,指定商品も同一又は類似の
商品であるから,商標法4条1項11号に該当するとして,同年5月29日付けで
拒絶査定がされたこと,そこで,原告は,同年7月3日,本件拒絶査定不服審判の
請求をしたところ,本願商標は,その指定商品中「茶」に使用するときは同法3条
1項3号に該当し,「小袋入りの茶」以外の「茶」に使用するときは商品の品質に
ついて誤認を生じさせるおそれがあるから同法4条1項16号に該当し,また,指
定商品中「袋状の茶こし」に使用するときは同法3条1項3号に該当する旨の平成
14年4月15日付け拒絶理由通知を受けたので,同年5月27日付け手続補正書
を提出し,指定商品の「第30類 茶」及び「第21類 袋状の茶こし」を削除す
る補正をして,上記の拒絶理由をいずれも解消したこと,しかし,特許庁は,同年
7月25日,本願商標は引用商標と称呼上相紛らわしい類似の商標であり,その指
定商品中には引用商標の指定商品と同一又は類似の商品が含まれているから,同法
4条1項11号に該当するとして,本件審判請求を不成立とする審決をしたことが
認められる。
   原告は,拒絶査定不服審判における新たな拒絶理由通知は,審査における拒
絶の理由を否定する判断が示された後にされるものであって,商標法55条の2第
1項にいう「審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」とは,
「査定の理由では拒絶できないが審判段階で発見した新たな拒絶の理由によって拒
絶しようとする場合」という趣旨であると主張する。しかし,商標法56条1項に
おいて準用する特許法158条によれば,審査においてした手続は,拒絶査定不服
審判においてもその効力を有するから,本願商標が引用商標外1の登録商標と同一
又は類似であって商標法4条1項11号に該当する旨の審査における拒絶の理由
は,審判においてもその効力を有するというべきである。商標法55条の2第1項
は,同法15条の2の規定を準用して,拒絶査定不服審判において審判官が原査定
の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合には,出願人に対し,新たな拒絶の理由
を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならない
ことを定めたものであって,更に進んで,原告主張のように,査定の理由と異なる
審判での新たな拒絶理由通知が,審査における拒絶の理由を否定する判断が示され
た後にされるものであるとか,当然に査定の理由を否定する判断をも含む趣旨であ
ることまで規定したものではない。原告は,また,審判段階における新たな拒絶理
由通知に法的拘束力を持たせなければ出願人が一方的に負担を強いられる不合理な
結果を生ずる旨主張するが,商標登録拒絶査定に対する不服審判では,原査定の当
否を判断するために,審査手続の続行として,当該商標登録出願について更に審理
を行い,事実の認定及び法令の解釈適用をやり直して,最終的な結論に至るもので
あるから,その審理の過程において,原査定の理由と異なる拒絶理由につき出願人
に意見陳述の機会を与えたからといって,審決が当然に当該拒絶理由に拘束される
わけのものではなく,また,審査段階で出願人に通知して既に意見陳述の機会を与
えている拒絶理由について再度審判において同様の機会を与えなければならない法
律上の根拠もない。
   したがって,原告の取消事由1の主張は,その前提において失当というほか
はなく,採用することができない。
 2 取消事由2(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)について
  (1) 本願商標「ティーバック」と引用商標「テイパック」は,いずれも片仮名
文字を横書きしてなるものであり,本願商標より「ティーバック」の称呼が生じ,
引用商標より「テイパック」の称呼が生ずることは当事者間に争いがない。そこ
で,両称呼の類否について検討するに,両称呼の前半の音構成は,本願商標が「テ
ィー」であるのに対し,引用商標は「テイ」であるが,前者は,「ティ」の音に長
音が付されていることから,「ティイ」のように聴取 され,また,後者の「テ
イ」の音における「イ」の音は,前音である破裂音「テ」の音と,後続音である促
音を伴う破裂音「パッ」との間にあり,かつ,前音「テ」の帯有する母音と二重母
音を構成するところから,単音としての音の響きは必ずしも明りょうではなく,
「イ」の音が,語頭部にあって明確に発音される前音「テ」の母音に吸収するよう
に発音される結果として,「テイ」の部分が「テー」又は「ティ」と一音節のよう
に聴取されるものと認められる。原告は,「ティー」と「テイ」とは明らかに音
調,音感を異にし,明りょうに聴別可能であると主張するが,「ティー」の語義に
ついて,昭和51年4月1日小学館発行「日本國語大辞典第十四巻」(乙2)に
「(英T,t)《テー》英語のアルファベットの第20字」との記載が,平成5年1
2月25日三省堂発行「大辞林」(乙1)に「【T・t】英語のアルファベットの第
20字。テー」との記載があるとおり,欧文字「T」は「ティー」のほか「テー」
と表記されることもあり,また,そのように発音される場合もあることは,「こと
ばをめぐるひとりごとTとDの発音」に関するインターネット情報(乙3)からも
うかがい知られるところである。加えて,本願商品の指定商品中には引用商標の指
定商品と同一又は類似の商品が含まれているところ,称呼の類否は,このような同
一又は類似の商品の一般的な取引者,需要者の平均的な注意力を基準として,経験
則により判断し,その一般的,恒常的な取引の実情も考慮すべきであって,以上の
ような視点から見ると,原告主張のように,本願商標の前半部分の称呼「ティー」
と,引用商標の前半部分の称呼「テイ」とが明りょうに聴別可能であるということ
は困難である。
    次に,後半の音構成における「バック」と「パック」は,末尾の音「ク」
が同一であり,ともに母音を共通にするに破裂音の「バ」ないし「パ」に促音を伴
っている3音からなり,その違いは濁音と半濁音にすぎないから,全体の音質,音
調が近似する。原告は,「バック」は「背。背中。背後」を意味する英文
字「back」に通じ,「パック」は「包装すること。包装したもの」を意味する英文
字「pack」に通じ,いずれも親しみのある英単語の表音表記として,明りょうに聴
別可能であると主張し,「バック」と「パック」が,語義それ自体として,その主
張のような意味を有することは,広辞苑第5版(甲12,13)の記載からも明ら
かであるが,そうであるからといって,これらを上記商品の一般的な取引者,需要
者が聴取した場合に,聞き誤るおそれのあることは,否定することができない。
    そうすると,本願商標と引用商標をそれぞれ一連に称呼したときは,その
全体の語調,語感が近似したものとなり,互いに聞き誤るおそれがあるものという
べきである。
  (2) 原告は,引用商標は,その商標権者である帝国製薬株式会社の頭文字であ
る「帝」を表音表記した「テイ」と「包装すること。包装したもの」を意味する
「パック」とを結合した造語商標として認識可能であるのに対し,本願商標は,
「ティー-バック【Tback】脇のくりが大きく,後部がT字形をなす極小化された
下着や水着などのパンツ」(広辞苑第5版)に由来する造語商標であり,その一連
の称呼に接した場合において,これを引用商標の「テイパック」と聞き誤るおそれ
は皆無であるとも主張する。
    しかし,原告主張のように,引用商標が,その商標権者である帝国製薬株
式会社の頭文字「帝」を表音表記した「テイ」と「包装すること。包装したもの」
を意味する「パック」とを結合した造語商標であることを上記の一般的な取引者,
需要者において認識可能であったことを認めるに足りる証拠はない。また,本願商
標の構成文字である「ティーバック」の語について,広辞苑第5版(甲18)に上
記の記載が,自由国民社発行「現代用語の基礎知識1997」(甲19)には,「ティ
ーバック(T-back)後ろ姿がTの字のように見える露出度の高いパンティー」との
記載があり,「Tバック」の語について,平成6年9月10日三省堂発行「コンサ
イスABC略語辞典」(甲39)には「ピップラインがT字型に切れ込んだショーツ」
の記載があるほか,その他の辞典類(甲37,38,40~44),新聞(甲57
~68),書籍,雑誌(甲45~56)にも同旨の記載があり,下着メーカー等
も,新聞,雑誌,インターネットのホームページ等において,そのような商品の販
売宣伝広告(甲20~23)を展開している。他方において,「ティーバック」の
語については,平成9年3月25日小学館発行「例文で読むカタカナ語の辞典第二
版」(甲42)には,「紅茶や緑茶の葉を1~2杯分ずつ薄い紙袋につめたもの」
との記載があり,その他の辞典類(甲40),新聞(乙4~9),インターネット
のホームページ(乙10~12)には,「ティーバック」の語を「小袋入りの茶」
を表す商品として紹介する記事が掲載されており,そのような商品の販売宣伝広告
(甲24)も広く行われているほか,「テイパック」の語も,日本食糧新聞(乙1
3)及びインターネットのホームページ(乙14~17)において,上記「ティー
バック」と同様,「小袋入りの茶」を表す商品として紹介する記事が掲載されてい
る。このように,「ティーバック」の語は,全く異なった二様の意味で広く一般的
に使用され,認識,理解されているものと認められる上,「テイパック」の語は,
「ティーバック」の語の有する二つの語義のうちの一つと全く同じ意味で使われる
場合もあるのであるから,本願商標の一連の称呼に接した上記商品の一般的な取引
者,需要者において,これを引用商標と聞き誤るおそれがあるというべきであり,
そのおそれが皆無であるとする原告の主張は採用することができない。そして,他
に,上記(1)認定に係る両者の称呼上の類似性を左右するに足りる証拠はない。
  (3) 以上の認定判断に照らせば,本願商標と引用商標は,称呼のみならず,観
念においても類似するものと認められ,また,外観上は,いずれも片仮名文字より
なり,前者は長音符を含む6文字,後者は5文字から構成されているところ,全構
成文字中,「テ」「ッ」「ク」の3文字を共通にするものであって,外観の相違は
「イ」の文字の大小,長音記号の有無,「バ」と「パ」の違いにすぎず,称呼及び
観念上の紛らわしさをしのぐものとはいえない。そうすると,以上のような称呼,
観念及び外観を総合し,取引の実情も参酌して全体的に考察するときは,両商標が
同一又は類似の指定商品に使用された場合に,商品の出所混同を生ずるおそれがあ
り,本願商標は引用商標に類似する商標というべきであるから,これが商標法4条
1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはない。
    したがって,原告の取消事由2の主張は,採用することができない。
 3 以上のとおり,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を
取り消すべき瑕疵は見当たらない。
   よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 岡  本     岳
    裁判官 長  沢  幸  男

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◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
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残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
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71期修習生 72期修習生 求人
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職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
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