弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人川井信明、同小川剛の上告理由第一点について。
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審
が適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は右判断に直接関係の
ない事実についての判断遺脱、審理不尽をいうにすぎず、採用することができない。
 同第二点について。
 原審の確定するところによれば、訴外Dは、昭和三一年初めころから訴外Eより
数回にわたり元本合計約五〇〇万円を借り受け、右債務を担保するため、その所有
にかかる本件土地(原判決添付目録記載の土地)ほか数筆の土地につき大阪法務局
中野出張所昭和三三年二月一一日受付第二七六一号をもつてEのため同年二月五日
売買予約を原因とする所有権移転請求権保全仮登記をしたが、同年七月一日Eに対
する債務金額を完済したので同人の債権と右仮登記上の権利はすべて消滅に帰した
ところ、その後、被上告人らの先代Fに対する補償全債務のうち五〇〇万円を担保
するため、Fとの間にDが右債務の支払をしないときは、代物弁済として本件土地
を含む五筆の土地の所有権をFに移転する旨を約し、そのためにはFのために新た
に担保権の設定登記をすべきであるのに、たまたま前記債務を弁済した際Eから交
付を受けていた本件土地等の前記仮登記の抹消登記に必要な権利証、印鑑証明書、
白紙委任状を利用して、本件土地につき大阪法務局中野出張所昭和三三年七月九日
受付第一八六四一号をもつてFのため同年七月七日権利譲渡を原因とする仮登記移
転の附記登記をしたというのであつて、原審の挙示する証拠によれば、原審の右認
定はこれを是認することができる。そうすると、本来ならば、Eに対する債務の担
保のためにされていた前記仮登記を抹消してFに対する新債務のための所有権移転
請求権保全の仮登記をすべきであるのに、いわば、旧仮登記を権利移転の附記登記
により新仮登記として流用したという事案であるとみられるのであり、しかも、F
において五〇〇万円の補償金債権とその担保としての代物弁済の予約又は停止条件
付代物弁済契約上の権利を有する目的不動産は本件土地であるから、Fを権利者と
する本件仮登記移転附記登記は現在の実体上の権利関係と一致するものであるとい
うことができる。
 このような経緯及び内容をもつた事案にあつては、たとえ不動産物権変動の過程
を如実に反映していなくとも、仮登記移転の附記登記が現実の状態に符合するかぎ
り、当事者間における当事者はもちろん、右附記登記後にその不動産上に利害関係
を取得した第三者は、特別の事情のないかぎり、右附記登記の無効を主張するにつ
き正当な利益を有しないものと解するのが、相当である。
 ところで、原審の確定するところによれば、上告人は、昭和三三年一〇月二四日
Dに対し、一五〇万円を弁済期日同三四年四月三〇日、利息年六分の約で貸し付け、
右債務を担保するため、Dとの間に同人が弁済期日に債務の履行を遅滞したときは、
代物弁済として本件土地及び他の一筆の土地の所有権が上告人に移転する旨の契約
をし、大阪法務局中野出張所昭和三四年一月一〇日受付第四一三号をもつて上告人
のため売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記をしたが、Dにおいて
弁済期日を過ぎても弁済をしなかつたため同出張所同年六月八日受付第一六三四六
号をもつて上告人のため所有権移転登記をしたというのであるから、上告人はFの
前記仮登記移転附記登記後に本件土地に利害関係を取得した第三者であることは明
らかであり、かつ、特別の事情の存することは原審の認定しないところであるから、
右附記登記の無効を主張するにつき正当な利益を有しないものといわなければなら
ない。
 したがつて、この点に関する原審の判断は、正当であり、原判決に所論の違法は
ない。論旨は、ひつきよう、独自の見解を主張し、原審の専権に属する証拠の取捨
判断、事実の認定を非難するに帰し、採用することができない。
 同第三点について。
 いわゆる仮登記担保権者は、債務者が債務を履行しないときは、これにより取得
した目的不動産の処分権の行使による換価手続の一環として、債務者に対しては仮
登記の本登記手続の請求を、後順位の仮登記担保権者に対しては本登記の承諾請求
をすることができるが、この場合、後順位の仮登記担保権者が独自の抗弁として、
債務者(又は第三取得者)に対する清算金の支払との引換給付の主張をすることが
できる場合のあることは格別、右承諾を求められた仮登記担保権者が直接自己に対
する清算金の支払との引換給付の主張をするのは許されないものと解すべきである
ことは、当裁判所の判例に徴し明らかである(最高裁昭和四六年(オ)第五〇三号
同四九年一〇月二三日大法廷判決参照)。所論引用の判例は、右に述べたところと
牴触する限度で改められたものである。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用す
ることができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    高   辻   正   己

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