弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人両名に関する部分を破棄する。
     被告人Aを懲役三年三月に、同Bを懲役一年三月に各処する。
     一審における未決勾留日数中各三百日を右本刑にそれぞれ算入する。
     本件公訴事実中「金、銀又ハ白金ノ取引等取締ニ関スル件」違反の罪に
ついて被告人両名を免訴する。
         理    由
 被告人Aの弁護人佐藤元吉の上告趣意第一点は単なる訴訟法違反の主張であり、
同第二点は事実誤認、量刑不当の主張であり、被告人Bの弁護人中本照規の上告趣
意第二点は量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に該当しな
い。
 しかし、職権で調査すると被告人両名に対する本件公訴事実中「金、銀又ハ白金
ノ取引等取締ニ関スル件」違反の罪(原判決の引用した第一審判決の判示第十二の
(一)及び(二)の(い)の事実)は昭和二七年政令第一一七号大赦令一条三八号
により大赦があつたので、刑訴施行法二条三条ノ二刑訴四一一条五号旧刑訴四四八
条四五五条三六三条三号により主文第一、四項のとおり原判決中被告人両名に関す
る部分を破棄し、前記犯罪について被告人両名を免訴すべく、(前記中本弁護人の
上告趣意第一点はこの点に関するから別に判断を加えない。)原判決の確定した被
告人両名の犯罪事実中右大赦にかからない部分に法令を適用すると、被告人Aの判
示所為中旧券授受の点は各日本銀行券預入令七条八条二項一項に、証紙偽造の点は
各日本銀行券預入令ノ特例ノ件二条一項刑法六〇条に、偽造証紙交付の点は各日本
銀行券預入令ノ特例ノ件二条二項一項に、通貨偽造の点は各刑法一四八条一項六〇
条に、同幇助の点は各同法一四八条一項六二条一項に、偽造通貨行使の点は各同法
一四八条二項一項六〇条に各該当するところ、右各旧券授受、証紙偽造、偽造証紙
交付、偽造通貨行使及び判示第一(二)(ろ)(は)の各旧券と偽造証紙の一括交
付並びに判示第一(二)(い)(ろ)(は)(ほ)の各偽造証紙交付と通貨偽造幇
助の所為は一個の行為であつて数個の罪名に触れ、また、前記証紙偽造と各偽造証
紙交付、通貨偽造と偽造通貨行使とは各手段結果の干係があり、且つ、前記各旧券
授受、証紙偽造と通貨偽造、各偽造証紙交付と偽造通貨行使はいずれも犯意継続に
かかるものであるから、刑法五四条一項前段、後段、昭和二二年法律第一二四号附
則四項刑法五五条、一〇条を適用し、結局最も重い各通貨偽造幇助と偽造通貨行使
の罪の刑に従い、各所定刑中有期懲役刑を選択した上、原判決認定の前科があるか
ら刑法五六条一項五七条一四条に則り累犯加重し、通貨偽造幇助の罪については更
に同法六三条六八条三号に依り従犯減刑し、以上は同法四五条前段の併合罪である
から同法四七条本文一〇条一四条を適用して結局最も重い累犯加重した判示第四の
(五)の偽造通貨行使罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役三年
三月に処することとする。
 次に被告人Bの判示恐喝の所為は刑法二四九条一項五四条一項前段一〇条に該当
するから犯情の重いCから現金を恐喝した罪の刑に従い、原判決認定の前科がある
から同法五六条一項五七条に則り累犯加重した刑期範囲内で同被告人を懲役一年三
月に処することとし、同法二一条に従い被告人両名に対して一審における未決勾留
日数中各三百日を右各本刑に算入することとする。
 よつて裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。
 検察官 平出禾関与
  昭和二八年六月四日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎

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