弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
     被上告人が昭和三三年九月一六日上告人に対してした関税賦課処分は無
効であることを確認する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人押谷富三、同田宮敏元の上告理由第一点および第二点について。
 合衆国軍隊の構成員が自己若しくは家族の私用に供するために輸入する自動車は、
昭和二七年法律第一一二号関税法等の臨時特例に関する法律六条によつて関税を免
除されるが、合衆国軍隊の関係人以外の者がこれを日本国内において譲り受けよう
とするときは、同法一二条一項によつてその譲受行為が輸入とみなされ、関税法の
適用を受ける。そして、本件に適用される旧関税法(明治三二年法律第六一号、但
し、昭和二七年法律第一九八号による改正後のもの。以下同じ。)八三条の規定に
よれば、犯罪貨物は犯人または悪意の取得者から没収し(一項、二項)、没収不能
のときは、犯人からその原価を追徴する(三項)とともに、「犯則当時ノ貨物ノ所
有者」から当該貨物の関税を国税徴収法の例によつて徴収する(四項)こととなつ
ている。ところで、輸入申告、関税納付、輸入免許等の事前手続を経ないで免税自
動車を譲り受け、これを引き取れば、その引取時において、直ちに、右関税法七五
条一項の関税逋脱犯が成立することは、当小法廷昭和四〇年九月四日決定(刑集一
九巻六号六一〇頁)の示すところであり、また、同法八三条三項にいう「犯則」と
は、必ずしも逋脱犯に限られるわけではないが(昭和三三年一月三〇日第一小法廷
判決、刑集一二巻一号九四頁参照)、犯罪貨物の運搬、寄蔵、収受、故買、牙保等
同条一項所掲の犯罪でなければならない、と解するのが相当である。
 原判決(およびその引用にかかる第一審判決) の確定した事実によれば、本件
自動車は、もと合衆国軍隊の構成員が私用に供するために輸入した免税自動車であ
つて、通関手続未了のまま、D、Eへと順次譲渡され、右Eにおいて所有していた
が、上告人会社の代表取締役Fが昭和二八年初め頃同人からこれを買い受け、その
頃引渡しを了したものであり、右Fは同年一二月初め頃いわゆる自動車ブローカー
Gらに通関手続を依頼したところ、右Gらは同月二五日通関書類を偽造して兵庫県
陸運事務所に提出行使し、Hなる虚無人名義で新規の登録を受け、即日上告人会社
名義に登録換えを行ない、その頃までに本件自動車の所有権も、右Fから上告人会
社に移転されていた、また、その後、右Gは、本件自動車に関する関税逋脱の罪に
問われた、というのである。以上の事実関係の下においては、前記Gが税関貨物取
扱人法(明治三四年法律第二八号)にいう正規の税関貨物取扱人であつたとしても、
同人の前示所為は、刑法上の文書偽造等の罪を構成するのは格別、関税逋脱等前記
関税法八三条一項所掲の犯罪に該当せず、したがつて、上告人会社は、同条四項に
いう「犯則当時ノ貨物ノ所有者」にあたらないといわざるを得ない。
 されば、論旨は、理由があり、原判決およびこれと同趣旨に出た第一審判決は、
その余の上告理由について判断を加えるまでもなく、破棄または取消を免かれない。
そして、上告人の本訴第一次的請求は、これを認容すべきものとする。
 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、第三八六条、九六条、八九条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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