弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役6年に処する。
未決勾留日数中340日をその刑に算入する。
本件公訴事実中平成19年3月27日付け起訴状記載の公訴事実第1同,(
年6月12日付け訴因変更請求書による変更後の訴因)の窃盗の点について
は,被告人は無罪。
理由
(罪となるべき事実)
(各事実の番号の後の括弧内は,対応する起訴状の日付及び公訴事実である。い
ずれも本文中の「同年「同月」の記載とは無関係とする)」,。
被告人は,
第1(平成19年3月8日付け)
分離前の相被告人A,同B,C及びDと共謀の上,パチンコ店景品交換所の
景品交換用の金員を強取しようと企て,平成18年10月5日午前10時15
分ころ,大阪府東大阪市<略>所在のEパチンコ店南側路上において,同所に
勤務する財団法人F協会事務員G当時59歳及び上記パチンコ店店員H当()(
),,「,時54歳に対し被告人が上記Hの胸部に手にしたガス銃を突きつけ金
金と脅迫し上記Dが上記Gに向けて手にした催涙スプレーを構えて脅迫し。」,
て,上記H及び上記Gの反抗を抑圧し,上記H及び上記Gが所持していた財団
法人F協会理事長Iが管理する現金794万3500円,文鎮等108点在中
のアラーム付き防犯バッグ1個(時価合計9万6900円相当)及び上記G所
有の巾着袋(時価合計500円相当)を強取した。
第2(平成19年3月27日付け公訴事実第2)
,,,前記A前記B及び前記Dと共謀の上同年11月4日午前1時30分ころ
同市<略>所在のJモータープールにおいて,同所に駐車中のKが所有する普
通乗用自動車1台(時価30万円相当)を窃取した。
第3(平成19年2月6日付け)
前記A,前記B及び前記Dと共謀の上,パチンコ店景品交換所の景品交換用
の金員を強取しようと企て,同月8日午前10時22分ころ,同市<略>所在
のL産業株式会社経営のMパチンコ店の景品交換所前において,同所に勤務す
る財団法人F協会事務員N(当時53歳)及び上記パチンコ店店員O(当時3
6歳)に対し,被告人が上記Nの右腕を強く引っ張った上,その腹部付近に手
にしたガス銃を突きつける暴行,脅迫を加え,上記Dが上記Oの顔面に手にし
た催涙スプレーを噴射するなどの暴行を加え,上記N及び上記Oの反抗を抑圧
し,上記景品交換所内にあった財団法人F協会理事長Iが管理する現金49万
3800円,防犯アラーム機等3点在中の防犯バッグ1個(時価合計7050
円相当)を強取し,その際,上記暴行により,上記Oに加療約7日間を要する
顔面化学熱傷の傷害を負わせた。
<略>(証拠の標目)
(予備的訴因・罰条の追加を不許可とした理由)
検察官は,別紙第1記載の窃盗の訴因・罰条について,別紙第2記載の盗品第1
等運搬の訴因・罰条の予備的訴因・罰条追加以下予備的訴因追加という(,「」
ことがあるを請求したが当裁判所は権利濫用に当たるとしてこれを許。),,,
,,,可しなかったところ検察官は当裁判所の決定が違法である旨主張するので
以下この点についての判断を示す。
第2前提事実
一件記録によれば,本件訴訟の経過は以下のとおりである。
なお,平成19年の出来事については,月日のみ示すことがある。
1第1回公判前の状況
①1月17日,被告人は,強盗致傷罪の被疑事実で逮捕され,同月18日,
同事実により勾留され,2月6日,強盗致傷の公訴事実(判示第3)で起訴
された。
②同月15日,被告人は,強盗の被疑事実で逮捕され,同月17日,同事実
により勾留され,3月8日,強盗の公訴事実(判示第1)で起訴された。
③同月27日被告人は平成18年8月31日Bと共謀の上自動車を,,「,,
窃取したとの公訴事実以下ブルーバード窃盗事件という及び同。」(,「」。)「
年11月4日BAらと共謀の上自動車を窃取したとの公訴事実判,,,。」(
示第2。以下「ステップワゴン窃盗事件」という)で起訴された。,。
2本件予備的訴因追加請求までの状況
,,,,,①4月17日第1回公判期日において被告人は起訴事実中強盗致傷
強盗,窃盗(判示第2のステップワゴン窃盗事件)の各事実についてはいず
れも認めたがブルーバード窃盗事件については私は車を盗みに行った,,「,
のではなく用意されていた車を引き取りに行ったのですと陳述し弁護,。」,
人は,ブルーバード窃盗事件については,被告人には,窃盗の共謀及び故意
がなく,無罪である旨主張した。当該期日において,被告人,B及びAの弁
論は分離された(なお,Bは,ブルーバード窃盗事件を含め公訴事実をいず
れも認めた。。)
②弁護人は,ブルーバード窃盗事件について,検察官が第1回公判で請求し
た証拠をすべて同意し,5月22日,第3回公判期日(被告人との関係では
第2回にあたるにおいてこれらの証拠が取り調べられたなおブルー。),。,
バード窃盗事件に関して,弁護人は,被告人及び共犯者とされているBの検
察官調書に同意したが,窃盗の犯意に関する記載部分について,信用性を争
う旨の意見を述べた。同期日において,次回公判期日に,情状証人の尋問と
被告人質問を行うものとして,期日指定がされた。
③6月12日,検察官は,ブルーバード窃盗事件について,共犯者にPを加
えるとの訴因変更を請求した。
④7月19日第7回公判期日被告人との関係では第3回にあたるにお,(。)
いて,上記訴因変更につき,弁護人は異議がないとの意見を述べ,当裁判所
。,,は同訴因変更を許可した訴因変更後の事実について被告人及び弁護人は
従前と同様のこれを争う陳述をした。検察官が,Pの検察官調書並びにBの
検察官調書及び同人の公判における供述調書(甲42ないし44)を証拠調
,。,,請求したところ弁護人が不同意との意見を述べたこれに対し検察官が
Pの証人尋問を請求し,次回公判期日に尋問が行われることとなった。この
ため,同期日においては,被告人質問は施行されず,被告人の母及び妻のみ
が情状証人として取調べられるにとどまった。同期日において,公判審理の
予定として,9月18日にPの証人尋問及び被告人質問,10月9日に被告
人質問(続行分)を行うものとして,期日指定がされた。
⑤9月18日の第8回公判期日被告人との関係では第4回にあたるにお(。)
いて,Pの証人尋問が行われた(なお,被告人の窃盗の共謀に関して,Pの
証言内容はBの依頼・指示によって本件ブルーバード事件に関与したもの,「
,。」。)。,で被告人とは面識がないという趣旨のものであった同期日において
検察官は,Bの証人尋問を請求し,次回公判期日に尋問が行われることとな
った。
⑥10月9日の第9回公判期日被告人との関係では第5回にあたるにお(。)
いてBの証人尋問が行われた同人は犯行に際し被告人に車を盗み,(,「,「
に行くと明確に告げた今日車盗りに行く今から盗難車を盗りに行。」。「。」,「
くなどと捜査段階の供述調書に記載されているのは捜査段階では警察。」,,
官から,被告人が先にそう供述しているからと言われ,押し付けられたもの
である」旨証言した。。。)
⑦同月25日の第10回公判期日被告人との関係では第6回にあたるに(。)
おいて,被告人質問(主質問)が行われた。
⑧11月8日の第11回公判期日被告人との関係では第7回にあたるに(。)
おいて,被告人質問(反対質問,補充質問)が行われた。当事者双方はこれ
以上の立証はないとして,検察官は,Pの検察官調書並びにBの検察官調書
及び同人の公判における供述調書(甲42ないし44)の請求を撤回し,同
月22日に論告弁論期日が指定された。
(。)⑨11月22日の第12回公判期日被告人との関係では第8回にあたる
において,検察官は,写真撮影報告書等書証4点(うち2点は,共犯者とさ
れている者の判決書)を証拠調請求した。そのうち,犯行現場の状況を立証
趣旨とする写真撮影報告書は弁護人が不同意との意見を述べて撤回され,そ
の余の証拠は弁護人の同意を得て採用され,取り調べられた。同期日におい
て検察官は追加立証を予定しており論告まで更に2週間程度いただき,,「,
たい」と意見を述べ,12月13日に論告弁論期日が指定された。。
⑩11月28日,検察官は,警察官と共に,事件現場の実況見分を行い,同
月30日付けで写真撮影報告書を作成した甲50また警察官は同月()。,,
29日,事件現場の状況について捜査をし,同日,報告書を作成した(甲5
1。)
(。),⑪12月13日の第13回公判期日被告人との関係では第9回にあたる
論告弁論が予定されていたが,同日付けで,検察官は訴因・罰条の追加請求
書を提出して本件予備的訴因追加を請求したこれに対し弁護人は時,。,,「
機に遅れ,被告人の防御権を著しく侵害するもので,刑事訴訟規則1条の趣
旨に反し異議がある旨の意見を述べた同期日において検察官はブ,。」。,,
ルーバード窃盗事件及び予備的訴因を立証するため,書証4点(甲50ない
し52,乙28)を証拠調請求したところ,弁護人は,そのうち,甲号証2
点(前記期日間の補充捜査により作成されたもの)は同意し,Bの警察官調
書(甲52。刑事訴訟法328条により取調済みの弁36と同一のものを罪
体認定の証拠として請求したもの)については不同意,被告人の警察官調書
(乙28)については,不同意で任意性を争う旨の意見を述べた。これに関
し,検察官は,Bの再度の証人尋問及び被告人の取調べにあたった警察官の
証人尋問を請求する意向である旨釈明した。
3その後の状況
①同月17日,検察官は,本件予備的訴因・罰条の追加請求及びこれに関す
る証拠の必要性について,同月14日付けの意見書を提出した。
同意見書において,検察官の主張は,要するに,被告人は,少なくとも,
主位的訴因(ブルーバード窃盗事件)にかかる被害車両が盗品である旨の認
識を有していたもので,その重要な根拠は,甲52及び乙28におけるB及
び被告人の「事件当日,Bが,被告人に対し「盗難車を盗りに行く」と告,。
げた旨の供述であり前記弁護人の主張に対する反論としては結審に至。」,,
っていないこと,主位的訴因と予備的訴因では事実関係・証拠関係が重複・
共通しており,更に必要な証拠調べは乙28及び甲52又はBの証人尋問の
みであることから,時機に遅れた訴因等の追加請求ではないというものであ
った。
(。),②同月19日の第14回公判期日被告人との関係では第10回にあたる
弁護人は,本件予備的訴因・罰条の追加請求及びこれに関する証拠の必要性
について,意見書を提出した。
同意見書において弁護人は主に被告人において窃盗の故意共謀があ,,「,
ったか否かが争点となっており,その点に絞って防御活動を行ってきたので
あり,予備的訴因を念頭に置いた防御活動を何ら行ってきたものではなかっ
たとして被告人の防御権の行使に著しい不利益が生じるまた時機に遅。」,,
,。れた訴因等追加請求であるなどと主張し検察官の前記意見書に再反論した
③同期日において,検察官は,Bの再度の証人尋問を請求し,被告人の取調
官については,乙28には任意性が認められることが明らかであるから証人
請求はしない旨釈明した。
同期日において,当裁判所は,本件予備的訴因追加請求は不適法と認め,
予備的訴因・罰条の追加を許可しない旨決定した。検察官は,同決定に対し
異議を申し立てたが,当裁判所は,これを棄却し,更に,Bの再度の証人尋
問請求も却下した。なお,検察官は,乙28及び甲52は撤回した。
同期日,すでに指定されていた平成20年1月7日に論告・弁論が行われ
ることになった。
④平成20年1月7日の第15回公判期日(被告人との関係では第11回に
あたるにおいて検察官はいったん撤回していた被告人の警察官調書乙。),,(
28)を乙29として再度証拠請求し,弁護人は不同意で任意性がない旨意
見を述べ,当裁判所は,乙29を却下した。
⑤同期日において,検察官は,論告期日の延期を求め,同月10日が論告弁
論期日として指定された。
⑥同月10日の第16回公判被告人との関係では第12回にあたるにお(。)
いて,論告弁論が行われ,本件は結審した。
第3当裁判所の判断
1予備的訴因追加請求までの訴訟経過について
本件公判審理の経過をみると,被告人側は,第1回公判期日から「被告人の
認識は「用意されていた車を引き取りに行った」というもので,窃盗の共謀,。
。」,,ないし故意を争う旨具体的な主張を明示ししかも後述のとおり被告人は
捜査段階から「共犯者Bは車両の持ち主から車両の提供を受けたが,強盗に利
用するためのものであるからあえて盗まれた体裁をとったという趣旨の供,。」
述をしていたもので,検察官は,その弁解のポイントが,被告人が窃盗の実体
はないと思っていたという点にあることを十分認識しつつ審理に臨み,共犯者
2名の証人尋問及び被告人質問(しかも,被告人質問について,検察官の反対
質問は弁護人の主質問と別期日になされたを経て不同意書証を撤回し当。),,
事者双方これ以上の立証はないとして,論告弁論の期日指定に応じたと認めら
れる。
それにもかかわらず,検察官は,同期日に至って,ブルーバード窃盗事件に
ついて,追加立証の予定があるとして,論告の期日について2週間の猶予を求
め,これが容れられて再度の論告弁論期日に至るや,今度は本件予備的訴因追
加及び共犯者Bの警察官調書(検察官は,同期日,弁護人の不同意の証拠意見
を受け,進行についての求釈明に対し,Bの再度の証人尋問等を予定している
旨答え,翌第14回公判において,予備的訴因追加不許可の決定に先立ち,同
証人の尋問を請求している)等の請求に及んだものである。。
以上の経過や被告人の弁解内容にかんがみると,本件ブルーバード窃盗事件
(主位的訴因)と予備的訴因は,その外形的事実に実質的にはほとんど差異は
なく,もっぱら被告人の認識に違いがあるのみで,しかもこれを推認させる証
拠は,共犯者Bの供述等共通であって,検察官には,既に実質的に予備的訴因
を意識した攻撃(立証)の機会が与えられていたというべきである。そうする
と,本件予備的訴因追加請求は,もし当初の共犯者Bの尋問等の結果,すでに
その請求にかかる事実の存在が裏付けられていたというのならばこれを許容す
る余地があるというべきであるが,同請求に伴い,再度同じ証人に,実質的に
同一の事項について尋問を求めることは,まさに予備的訴因の追加に名を借り
て,失敗した尋問をやり直すのと異ならないし,被告人側に重複した防御の負
担を強いるものに他ならない。
その上,検察官は,一旦はこれ以上立証はないとして論告弁論の期日指定に
応じながら,同期日に論告期日の2週間の猶予を申し出,ようやく迎えた再度
の論告弁論期日において予備的訴因の追加及び供述調書等の新たな証拠調べを
請求し,さらなる審理の続行を求めたもので(なお,その後の第3次論告弁論
期日も,検察官の都合により延期された,いたずらに期日の空転を繰り返し。)
たと評するほかなく,誠実にその権限を行使したものとはいい難い。
(,,,平成15年7月16日に裁判の迅速化に関する法律特に1条2条1項
7条1項が施行されなお刑事訴訟法281の6第2項参照更に裁判)(,),,
員制度の実施を目前に控え,充実かつ迅速な計画審理が強く要請されている昨
今の時勢を踏まえれば,本件予備的訴因追加請求は,容易に看過し難い重大な
瑕疵があるものといわざるを得ない。
2予備的訴因追加許可によって得べかりし公益について
さらに,本件公訴事実中,判示の強盗致傷,強盗等他の事実については争い
がなく,ブルーバード窃盗事件についてのみ,被告人は争っているところ,被
告人に対する量刑は,結局,重大事犯である強盗及び強盗致傷によってその大
要が決定されるといえ,これらに比すと軽微なものといわざるを得ない窃盗な
いし盗品等運搬の罪1件(しかも検察官の主張からも,被告人が従属的な立場
。),。であったことがうかがわれるが被告人の量刑に及ぼす影響は極めて小さい
したがって,被告人に対する適正な科刑という見地からみても,本件予備的
訴因追加を許可することによって得られるであろう公益が,大きいものとはい
えない。
3結論
,,以上検討したところを総合考慮すれば検察官の本件予備的訴因追加請求は
迅速かつ公正な裁判の見地から,誠実な権利行使とはいえず,権利の濫用に当
たるといわざるを得ないのであって,刑事訴訟規則1条に反し不適法なものと
して,これを不許可としたものである。
(平成19年3月27日付け起訴状記載の公訴事実第1(同年6月12日付け訴因
変更請求書による変更後の訴因)について無罪とした理由)
第1公訴事実及び争点等
1本件公訴事実(平成19年6月12日付け変更後の訴因に基づくもの)は,
別紙第1の1記載のとおりである。
2検察官は,被告人には窃盗の故意・共謀があり,前記公訴事実が認められる
と主張する。これに対し,弁護人は,被告人は,本件駐車場までBと一緒に行
ったが,Bの知り合いが用意してくれた車を引取りに行くためだと思っていた
もので,窃盗の故意・共謀がないと主張し,被告人もこれに沿う供述をする。
そこで,以下,検討する。
第2証拠上認められる事実
被告人証人P及び同Bの各公判供述被告人の検察官調書乙23Bの,,(),
検察官調書(乙26,P作成の被害届謄本(甲20,盗品等発見報告書謄本))
(甲21)及び盗難被害品確認書謄本(甲22)等関係各証拠によれば,以下
の事実が認められる。
なお,平成18年の出来事については,月日のみ示すことがある。
1ブルーバード窃盗事件計画までの状況
①Bは,現金輸送車を襲って現金を強奪する計画を持ち,Aら仲間を集めつ
つ,前記強盗計画を進め,8月上旬ころ,当時定職に就いていなかった被告
人を誘い,強盗のメンバーに加えた。
②8月中旬ころ,Bらは,Q信用金庫の現金輸送車を強盗する計画を立て,
,,,Bは被告人を連れて下見に行ったり被告人に催涙スプレーやスタンガン
特殊警棒等を買いに行かせたりして,同強盗計画の準備をした。
2ブルーバード窃盗事件に至る経緯
①8月中旬ころ,Bは,前記現金輸送車強盗計画において,犯行の発覚を避
,,。けつつ移動手段として利用するため他人の自動車を利用しようと考えた
②このため,Bは,被告人に対し「お前,どっかで車パクってこいや」な,。
どと何度も言った。被告人は,盗む技術がない旨答えて拒絶したが,Bはコ
ンビニに止めてある車を盗むように指示したりもした。
③8月21日ころ,Bは,知人でR中古車販売会社に勤務するPに対し,電
話で車欲しいねんけど車検切れ若しくは金融流れの車はないか盗,「,,。」,「
難車みたいなのないかなどと執拗に自動車の入手を依頼したが当初P。」,,
はこれを拒絶した。
④更に,そのころ,Bは,Pに対し,かつてBがPから代車として借りたこ
とがあり,9月か10月に車検切れになるブルーバード(以下「本件ブルー
バード」という)を「回して欲しい」などと要求し,また,ナンバープレ。。
ートの交付も求めたが,Pは,ナンバープレートについては,渡す旨返答し
たものの,ブルーバードについては確答しなかった。
⑤Pが,ブルーバードを交付すると明確に答えなかったため,8月23日,
Bは,電話のみならず,R中古車販売会社近くの駐車場まで赴いてPと面会
し,現金輸送車を強盗する計画に利用する旨を明かしてブルーバードを渡す
ことを要求したところ,Pはこれを承諾した。
⑥本件ブルーバードは,所有者であるR中古車販売会社から,Pが使用する
ことを許されており,仕事のほか,私用に使うこともあった。
⑦Bの依頼に対しPはこれを承諾したものの会社に発覚するとクビに,,,「
なるので,盗まれた形にして欲しい」旨,Bに頼んだ。。
,,「,。」⑧その際Bは車を盗む技術がないのでスペアキーを用意して欲しい
旨,Pに依頼し,Pはこれを引き受けた。
⑨Pは,本件ブルーバードのスペアキーを作成した上,同月25日ころ,B
に対し,電話で,スペアキーを準備したことを伝えた。
⑩スペアキーができたというPのBへの電話を,被告人は聞いていた。
⑪Bは,Pとの電話の際には「車をとりにいく」という表現を使用してい,。
た。
⑫同スペアキーは,通常の合い鍵の店で作成されたもので,外観上は正規の
鍵と区別が付かないものであった。
3ブルーバード窃取事件の状況
①8月30日,Pは,Bに,電話で,スペアキーを車のマフラー内に入れて
おく旨伝えた。
②そこで,同日夕方ころ,Bは,現場に行く車を運転する者として被告人を
連れて行くことにし,被告人に電話をして,同日夜に車のことで一緒に来る
ように伝えた(その際の具体的事情には争いがある。被告人は,Pとは面。)
,,。識がなくまたブルーバードを用意したのがPであることも知らなかった
③被告人及びBは,Bの運転するオルティアで,本件現場となるR中古車販
売会社近くの駐車場に赴いた。オルティアは,本件駐車場外に停車した。本
件駐車場は出入りが自由な月極駐車場であった。
④Bは,上記行為に先立ち,被告人に対し,自分が運転するブルーバードの
後から,車間距離を空けてついてくるように指示した。
(その具体的状況については,争いがある)。
⑤Bは,ブルーバードを盗む具体的方法は,被告人に説明しなかった。
⑥同月31日午前1時30分ころ,Bは,1人で車外に出て,本件駐車場に
入り,スペアキーを利用してブルーバードに乗り込み,これを運転して,同
駐車場から出た。Bが駐車場に入ってから出てくるまで,1分も経たない程
度であった。その間,被告人は,オルティアの車内で待機していた。
⑦Bがブルーバードを運転し,被告人がオルティアを運転して,両名は同駐
車場から立ち去った。
⑧同日,Pは,本件ブルーバードについて,被害届を提出した。
⑨9月に入ってから,Bは,Pに連絡し「車持っていったで」と言った。,。
4ブルーバード窃盗事件後の状況
①その後,B及び被告人らは,9月下旬ころ,前記Q信用金庫の現金輸送車
を強盗しようとしたが,実行に移せず,更に,郵便局の強盗を計画したが果
たせず,パチンコ店の景品交換所を強盗することになった。
②B及び被告人らは,10月5日,Eパチンコ店における強盗事件(判示第
)。,。1に及んだ同犯行の際本件ブルーバードが移動手段として利用された
③その後,B及び被告人らは,さらに犯行を企図し,11月4日未明に,強
盗の移動手段とするため,普通乗用自動車1台(ステップワゴン)を窃取す
る事件に及んだ(判示第2のステップワゴン窃盗事件。)
④同月8日,B及び被告人らは,Mパチンコ店における強盗致傷事件(判示
第3)に及んだ。
第3当裁判所の判断
1窃盗の共謀ないし故意の有無について
被告人の供述は要するに本件ブルーバードは持ち主の承諾を得て入手,,「,
,,,するものであるが強盗に供される車を調達するに際しその車を端緒として
自己やBの強盗への関与が発覚することを防止する必要があると認識してお
り,そのために本件ブルーバードは盗まれたかのように仮装すると考えてい
た」というものである。。
そこで,上記供述の信用性を検討するに,以下の諸点にかんがみれば,被告
人の上記供述は排斥し難いものである。
(1)被告人はそれまでも強盗に使用する車を盗むという話をBから聞かされ,
ていたが本件当時Bが車の入手先の相手に対しお前の車を回して欲,,,,「
しい「どうせ車検が切れたら廃車にするんやろ」などと言って,車の交。」,。
付を要求していた会話をわきで聞いていた。
お前の車車検切れで廃車にするなどという表現は相手方が自由に「」,「。」,
処分できる車であることを前提とするものである。
,,,したがってこのようなやり取りを聞いていた被告人が手に入れた車を
強盗計画に使用するにあたり,その車の出所が判明しても,その後の捜査機
関の追及を防ぎ,自己やBの関与が発覚しないようにするため,盗まれたか
のように仮装しつつ,所有権ないし処分権限のある相手方の承諾を得て,車
の交付を受けるものであると誤解することもあり得るものといえる。
(2)被告人は車の入手相手がスペアキーを用意してくれると聞いており他,,
方,窃取の具体的方法はBから知らされていなかった。
スペアキーの作成ができるということは,当該自動車のキーを事実上管理
していると考えられ,そのような相手方に車の処分権限があると考えること
は不自然とはいえない。
そうすると,被告人は,Bが,被害会社の従業員であるPを抱き込んで,
同人が事実上使用していた車を窃取することに関与させたという本件のから
くりを認識していなかった以上,被告人において,持ち主は同車の交付を承
諾していたが,盗んだ体裁を取り繕うため,持ち主が準備したスペアキーを
利用して,夜間,人目をはばかりつつ,同車を引き取るものであると誤解す
ることもあり得るものといわざるを得ない。
,「,,「,,(3)Bは当公判廷において8月30日被告人に対し今日の夜時間
空けといてくれ。車を盗みに行くから「本件駐車場へ向かうオルティア。」,(
の車内で)車を盗みに行って,おれが盗んだ車を運転するから,オルティア
。,。」で運転してくればれたらあかんからちょっと距離を離して走ってくれ
。」,,「。」と言ったなどと供述するがこの点同人の捜査段階の車を盗りに行く
「。」,,盗難車を盗りに行くといった供述からも表現が変遷しておりそもそも
このような会話にもなっていない指示文言について,Bが細部まで正確に表
現を記憶しているかは疑問であって,Bの上記供述は信用性が高いものとは
いえない。
(4)BがPとの約束で盗難の体裁をとったことは証拠上明らかで被告人の弁,
解はこれに沿うものであるところ,深夜わざわざ遠方まで車をとりに行くこ
,「」と自体盗難の体裁をとるためと被告人が見ていたとすれば仮にBが盗む
という表現を用いたとしても,これも体裁の一環として聞き流した可能性も
充分あるといえる。
(5)そもそも被告人は本件公訴事実中強盗強盗致傷及びもう1件の窃,,,,
盗(ステップワゴン窃盗事件)は何ら争っていないところ,強盗や強盗致傷
が重大犯罪であることは被告人にも容易に理解し得るものであって,窃盗1
件(しかも,被害額の少ないブルーバード窃盗事件)についてのみ殊更否認
しても,ほとんど罪責軽減にはつながらないのであるから,量刑を決する強
盗や強盗致傷という重い事実を認めながら,軽微な窃盗1件についてのみ虚
偽供述をするかについては慎重な考慮が必要である。
2窃盗の共謀または故意の基礎として問題となる事実について
(1)これに対し被告人らは深夜遠方まで車をとりに行きしかも犯行に,,,,
先立ち,Bが,被告人に対して「距離を離して後ろを付いてくるように」,。
と指示していることは,被告人の窃盗の共謀ないし故意の存在をうかがわせ
る事情ではある。
しかし,前述のとおり,被告人らが盗難の体裁をとろうとしていたことは
明らかである上,被告人は,入手したブルーバードは強盗に供される予定で
あることを知っていたのであるから,このブルーバードの盗難届を端緒とし
て,自己やBの強盗への関与が発覚することを防止する必要があると認識し
ていたとみるのが合理的であり,Nシステムにブルーバードと当時被告人が
よく使用していたオルティアが一緒に写らないように距離を離したとの弁解
も不自然とはいえない。
したがって,上記事実から,被告人に車を盗みに行っているという認識が
あったということはできない。
(2)また,B及び被告人の捜査段階の供述調書には「盗」という文字を使用,
して「盗りに行く」との記載がある。。
しかし,調書上使用されている文字がどうあれ,実際にBが被告人に言っ
,,「。」,「」た言葉は音声言語としてはとりにいくというものにすぎないし盗
の文字が用いられたことには,供述録取者である捜査官の主観が多分に反映
されたことがうかがわれ,窃盗の故意を裏付ける供述として信用性が高いも
のとはいえない。
(3)検察官は被告人が犯行の見張りをしたこと乙23を窃盗の犯意を,(),
推認させる事実として挙げるが,車両窃盗の体裁を取るためであっても,そ
の実行の際,警ら中の警察官や通行人による通報等に注意するのは自然であ
るし,B及び自己とブルーバードの結び付きが明らかになると,後にこれを
端緒として強盗事件への関与が発覚すると考えて見張りを行ったともみら
れ,検察官調書記載の見張り行為があったからといって,被告人が,Bはブ
ルーバードを窃取していると認識していたと推認することはできないという
べきである。
3結論
以上によれば,被告人には,窃盗についてのBとの共謀があったとも,窃盗
の故意があったとも認定することはできない。
よって,刑事訴訟法336条により,本件公訴事実中,別紙第1の1記載の
窃盗の訴因については,被告人に対して,無罪の言い渡しをする。
(法令の適用)
罰条
第1の事実につき刑法60条,236条1項
第2の事実につき刑法60条,235条
第3の事実につき刑法60条,240条前段
刑種の選択
第2の罪につき懲役刑
第3の罪につき有期懲役刑
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い第3の罪
の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入刑法21条
訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
(有罪部分についての量刑の理由)
本件は,被告人が,共犯者と共謀の上,ガス銃や催涙スプレーで脅迫するなどし
てパチンコ店の景品交換所から金品を強奪した強盗の事案判示第1同様の手,(),
口で金品を強奪し,その際パチンコ店店員の顔面に催涙スプレーを噴射して傷害を
負わせた強盗致傷の事案判示第3同強盗致傷事件に先立ち移動手段とするた(),,
め自動車を盗んだ窃盗の事案(判示第2)である。
本件強盗及び強盗致傷についてみると,前記のとおり,ガス銃や催涙スプレーを
使って脅迫し,強盗致傷事件では,被害者の顔面に催涙スプレーを噴射するなどし
て,いずれもパチンコ店の景品交換所から金品を強奪しており,犯行の態様は凶悪
なものである。被害額も850万円以上と多額である。
窃盗についても,強盗の際に利用するために行ったもので,犯情は悪質であり,
被害額は約30万円と少なくない。
被告人は,当時定職がなく,また,交際女性(現在の妻)の出産費用にも事欠く
有様であって,金欲しさから,Bに誘われるまま犯行グループに加わったものとみ
られ,動機は短絡的で酌むべき余地は乏しい(被告人は,Bに対し自ら仕事を辞め
るつもりだと伝え,また,ガス銃の入手は,暴力団員であるという友人の知人から
入手しようとしたというのであって,当初からBを畏れていたとは認め難く,Bか
らの脅迫のみによって犯行に関与し続けたとの被告人の弁解は採用できない。被。)
告人は,自らガス銃を手に実行犯を務め,強盗の犯行に不可欠の役割を果たしてい
るばかりか,下見を繰り返し,ノートに記載してBに報告し,ガス銃や催涙スプレ
ー等の凶器も,被告人が実働して入手しており,一連の犯行に深く関与している。
以上の諸点にかんがみると,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。
しかし,他方,強盗致傷事件の被害者の負傷は,加療約7日間と重傷とまではい
えないこと,本件は,Bが,強盗計画を立てて共犯者を集め,催涙スプレーやガス
銃を使用するなどの具体的方法や各人の役割,犯行手順を定め,Aがパチンコ店の
襲撃を考案したもので,被告人はこれら上位者に指示されるままに犯行に及んでお
り,被告人自身は,犯行に乗り気でなかったこともうかがわれ,Bの暴力的な言動
もなかったとはいえず(Pも,Bに暴行を受けた旨供述している,さらに,Bは。)
200万円以上,Aは250万円以上,Cは130万円,同じく実行犯のDも12
2万円の利益配分に与っているにもかかわらず,被告人は32万円の利得を得てい
るにとどまり,共犯者間における被告人の地位は低いものであったとみられ,被告
人の本件各犯行における地位・役割は従属的なものといわざるをえないこと,被告
人側が,合計72万円を支払い,強盗致傷事件の負傷被害者,強盗関係の保険金を
支払った保険会社及び窃盗被害者との間でそれぞれ示談を成立させ,寛大な処分を
求める書面が提出されていること,前科がなく,現在21歳と若年であること,被
告人の母及び妻が出廷し,いずれも被告人の更生に協力する旨述べていること,元
アルバイト先等から今後の雇用を約する上申書が提出されていること,被告人の帰
りを待つ妻と1歳になったばかりの幼い子がいることなど,被告人のために酌むべ
き事情も認められる。
そこで,これらの事情を総合考慮し,主文の刑に処するのが相当と判断した。
(求刑懲役9年)
平成20年2月12日
大阪地方裁判所第8刑事部
横田信之裁判長裁判官
内田貴文裁判官
大伴慎吾裁判官
(別紙)
第1本件公訴事実・罰条等
1訴因
,,,被告人はB及びPと共謀の上平成18年8月31日午前1時30分ころ
兵庫県伊丹市<略>南側駐車場において,同所に駐車中の有限会社R中古車販
売会社代表取締役S管理に係る普通乗用自動車1台(時価10万円相当)を窃
取したものである。
2罪名及び罰条
窃盗刑法235条,60条
第2検察官が追加を請求した予備的訴因・罰条等
1訴因
被告人は,Bらとともに,平成18年8月31日午前1時30分ころ,同人
らが窃取した普通乗用自動車1台(時価10万円相当)を,それが盗品である
ことの情を知りながら,兵庫県伊丹市<略>南側駐車場から大阪市淀川区<略
>T駐車施設まで運転して運び,もって盗品の運搬をしたものである。
2罪名及び罰条
盗品等運搬刑法256条2項

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