弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人柳沼八郎ほか八名の上告趣意のうち、地方公務員法三七条一項につき憲法
二八条違反をいう点及び地方公務員法六一条四号につき憲法二八条、一八条、三一
条違反をいう点は、当裁判所の判例(最高裁昭和四四年(あ)第一二七五号同五一
年五月二一日大法廷判決・刑集三〇巻五号一一七八頁、最高裁昭和四三年(あ)第
二七八〇号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻四号五四七頁)に徴して理
由がなく、行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為
を処罰することが憲法三九条に違反する旨をいう点は、そのような行為であっても、
これを処罰することが憲法の右規定に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁
昭和二三年(れ)第二一二四号同二五年四月二六日大法廷判決・刑集四巻四号七〇
〇頁、最高裁昭和二九年(あ)第一〇五六号同三三年五月二八日大法廷判決・刑集
一二巻八号一七一八頁、最高裁昭和四七年(あ)第一八九六号同四九年五月二九日
大法廷判決・刑集二八巻四号一一四頁)の趣旨に徴して明らかであり、判例違反を
いう点は、所論引用の判例は所論のような趣旨を判示したものではないから、前提
を欠き、その余は、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張
であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
被告人本人の上告趣意のうち、地方公務員法三七条、六一条四号につき憲法二八
条違反をいう点は、その理由がないことは前記のとおりであり、その余は、事実誤
認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
よって、刑訴法四〇八条により、裁判官河合伸一の補足意見があるほか、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
裁判官河合伸一の補足意見は、次のとおりである。
私は、被告人の行為が、行為当時の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべきも
のであったとしても、そのような行為を処罰することが憲法に違反するものではな
いという法廷意見に同調するが、これに関連して、若干補足して述べておきたい。
判例、ことに最高裁判所が示した法解釈は、下級審裁判所に対し事実上の強い拘
束力を及ぼしているのであり、国民も、それを前提として自己の行動を定めること
が多いと思われる。この現実に照らすと、最高裁判所の判例を信頼し、適法である
と信じて行為した者を、事情の如何を問わずすべて処罰するとすることには問題が
あるといわざるを得ない。しかし、そこで問題にすべきは、所論のいうような行為
後の判例の「遡及的適用」の許否ではなく、行為時の判例に対する国民の信頼の保
護如何である。私は、判例を信頼し、それゆえに自己の行為が適法であると信じた
ことに相当な理由のある者については、犯罪を行う意思、すなわち、故意を欠くと
解する余地があると考える。もっとも、違法性の錯誤は故意を阻却しないというの
が当審の判例であるが(最高裁昭和二三年(れ)第二〇二号同年七月一四日大法廷
判決・刑集二巻八号八八九頁、最高裁昭和二四年(れ)第二二七六号同二五年一一
月二八日第三小法廷判決・刑集四巻一二号二四六三頁等)、私は、少なくとも右に
述べた範囲ではこれを再検討すべきであり、そうすることによって、個々の事案に
応じた適切な処理も可能となると考えるのである。
この観点から本件をみると、被告人が犯行に及んだのは昭和四九年三月であるが、
当時、地方公務員法の分野ではいわゆるB教組事件に関する最高裁昭和四一年
(あ)第四〇一号同四四年四月二日大法廷判決・刑集二三巻五号三〇五頁が当審の
判例となってはいたものの、国家公務員法の分野ではいわゆるC警職法事件に関す
る最高裁昭和四三年(あ)第二七八〇号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七
巻四号五四七頁が出され、B教組事件判例の基本的な法理は明確に否定されて、同
判例もいずれ変更されることが予想される状況にあったのであり、しかも、記録に
よれば、被告人は、このような事情を知ることができる状況にあり、かつ知った上
であえて犯行に及んだものと認められるのである。したがって、本件は、被告人が
故意を欠いていたと認める余地のない事案であるというべきである。
このように、被告人は、私見によっても処罰を免れないのであり、被告人に地方
公務員法違反の犯罪の成立を認めた原判決に誤りはなく、刑訴法四一一条一号に当
たるとすることはできないのである。
平成八年一一月一八日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官河合伸一
裁判官大西勝也
裁判官根岸重治
裁判官福田博

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