弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
徳島税務署長が原告に対し平成21年5月29日付けでした,原告の平成2
0年1月28日から同年3月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」と
いう。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の更正処分
(以下「本件更正処分」という。)並びに過少申告加算税の賦課決定処分(以
下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件更正処分等」と
いう。)を取り消す。
第2事案の概要等
本件は,Aセンター(以下「本件施設」という。)の整備,運営等の事業
(以下「本件事業」という。)に関する業務を行うことを目的として設立され
た株式会社である原告が,設立後の最初の事業年度に係る本件課税期間の消費
税等について,消費税法30条(平成23年法律第82号による改正前のもの。
以下同じ。)1項の課税標準額に対する消費税額から控除する同項の課税仕入
れに係る消費税額(以下「控除対象仕入税額」という。)を同条2項1号に規
定する方法により計算するに当たり,本件課税期間中に行った原告の課税仕入
れ等(以下「本件課税仕入れ」という。)が同号イに規定する「課税資産の譲
渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されるとした内容の確定申告書を提出し
たところ,徳島税務署長から,本件課税仕入れは同号ロに規定する「課税資産
の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分される
等として,本件更正処分等を受けたため,それらの取消しを求めた事案である。
1関係法令等の定め
別紙1「関係法令等の定め」に記載したとおりである(なお,同別紙で定め
る略称等は,以下においても用いることとする。)。
2前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者に
おいて争うことを明らかにしない事実である。以下「前提事実」という。)
(1)原告
ア原告は,本件事業に関する設計・整備業務,維持管理業務及び運営業務
並びにこれらに附帯する一切の業務を行うことを目的として平成20年1
月28日に設立された株式会社である。
イ原告は,設立後の最初の事業年度(本件課税期間に係るもの)につき基
準期間がなく,当該事業年度開始の日における資本金の額が1000万円
以上であって,新設法人に当たるため,その行った本件課税期間における
課税資産の譲渡等については,小規模事業者に係る納税義務の免除を定め
た消費税法9条1項本文の規定は,適用されない。
(2)本件契約
原告は,民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律
9条の定める議会の議決である徳島県議会の議決がされた平成20年3月1
8日,徳島県との間で「Aセンター整備運営事業契約」(この契約を,以下
「本件契約」といい,これに係る契約書〔甲2〕を「本件契約書」とい
う。)を締結して,本件事業に関する業務を行っている。
本件契約書の要旨は,別紙2「本件契約書(要旨)」に記載したとおりで
ある。
(3)本件課税仕入れ
原告は,本件課税期間において,以下のアないしカの各支払をした(これ
らの各支払に係る取引については,以下,次のアのものから順に「本件課税
仕入れ1」のようにいう。)。
ア株式払込金の取扱手数料8万0550円
原告は,平成20年1月23日,株式会社B銀行(以下「B銀行」とい
う。)に対し,原告の設立に係る株式払込金の取扱手数料として,8万0
550円を支払った。
イ司法書士事務所に対する報酬等27万3185円
原告は,平成20年3月11日,C司法書士事務所に対し,原告の設立
の登記の手続に関する報酬のうち課税仕入れに係る支払対価に当たるもの
として22万1685円を,公証人の認証料として5万1500円を,そ
れぞれ支払った。
ウ印鑑代等4万2065円
原告は,平成20年1月16日,Dに対し,印鑑代及びゴム印代として,
合計4万2065円を支払った。
エ保証料の送金の手数料840円
原告は,平成20年3月17日,株式会社E銀行(以下「E銀行」とい
う,)との間で別紙2記載5の契約保証金の納付に代わる金融機関の保証
として支払保証委託契約を締結し,同銀行に対してその保証料(166万
9299円。以下「本件保証料」という。)を支払うに当たり,B銀行に
対し,送金の手数料として,840円を支払った。
オ融資スキームの構築に関する手数料1659万円
原告は,平成20年3月31日,B銀行との間で,金銭消費貸借契約
(貸出実行日平成22年3月1日,貸出金額8億6000万円。この契約
を,以下「本件融資契約」といい,この契約による原告への融資を「本件
融資」ともいう。)を締結し,その際,①本件融資の資金使途を,本件契
約に基づき原告が行う独立採算事業以外の事業に係る契約保証金の支払及
び本件契約に基づき原告が実施する本件施設の設計・施工・建設等に係る
建設代金(諸費用等を含む。)の支払とすること(乙8の特約書の2条)
や,②原告が,B銀行に対し,本件融資契約の締結日に本件融資契約及び
これについての特約(以下「本件特約」という。)に基づく融資スキーム
の構築に関する手数料として,1659万円(消費税等を含む。)を支払
うこと(乙8の特約書の10条)等を内容とする本件特約を締結し,平成
20年3月31日,B銀行に対し,上記の融資スキームの構築に関する手
数料として,1659万円を支払った。
カ法律顧問業務に関する報酬等441万0840円
原告は,平成20年3月31日,F総合法律事務所に対し,本件融資契
約等に係るB銀行のための法律顧問業務に関する報酬として,367万円
(報酬額420万円及びこれに係る消費税等相当額21万円の合計額であ
る441万円から源泉徴収税額である74万円を控除したもの)を支払う
とともに,B銀行に対し,その送金の手数料として,840円を支払った。
(4)本件更正処分等及び不服申立て
ア原告は,本件課税期間の消費税につき,別表1の「確定申告」欄記載の
とおり,控除対象仕入税額を個別対応方式により計算するに当たり,本件
課税仕入れが消費税法30条2項1号イに規定する「課税資産の譲渡等に
のみ要する課税仕入れ」に区分されるとした内容の平成20年5月28日
付けの確定申告書(甲3。以下「本件確定申告書」という。)を提出し,
徳島税務署長は,同別表の「更正処分」欄記載のとおり,本件更正処分等
をした
イその後の本件更正処分等についての異議申立て,異議決定,審査請求及
び審査裁決の経緯は,別表1の「異議申立て」欄,「異議決定」欄,「審
査請求」欄及び「同上裁決」欄に,それぞれ記載されているとおりである。
(5)本件訴えの提起
原告は,平成23年3月24日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な
事実)。
3本件更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張
後記4に掲げるほか,別紙3「本件更正処分等の根拠及び適法性」に記載し
たとおりである。
4争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は,本件更正処分等の適法性であり,具体的には,本件課税仕入
れが消費税法30条2項1号イに規定する「課税資産の譲渡等にのみ要する課
税仕入れ」又は同号ロに規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等
に共通して要する課税仕入れ」のいずれに区分されるかが争われているところ,
この点に関する当事者の主張の要点は,以下のとおりである。
(被告の主張の要点)
(1)本件課税仕入れが「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して
要する課税仕入れ」に区分されること
ア本件施設の整備に関する対価には課税資産の譲渡等の対価である本件割
賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利が含まれること
本件事業に関する業務は,本件施設の施設整備,維持管理・運営等の業
務をその内容とするものであるところ,原告の本件事業に関する業務によ
る売上げは,別紙2記載1のとおり,本件施設の整備に関する対価や維持
管理に関する対価等の合計となっている。
そして,本件施設の整備に関する対価の額である10億5098万60
00円については,同別紙記載3のとおり,徳島県は,原告に対し,平成
22年4月を初回とし平成30年1月を最終回とする予定で毎年度四半期
ごとの32回の元利均等払いにてこれを支払うこととされており,本件施
設の整備に関する対価は,本件割賦元本と本件割賦金利により構成されて
いるところ,本件割賦金利に係る取引は,消費税法施行令10条3項10
号に該当することから,消費税法6条1項の規定により消費税を課されな
い非課税取引に該当する。
したがって,本件施設の整備に関する対価は,課税資産の譲渡等の対価
である本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利と
が一体となったものといえる(本件割賦元本と本件割賦金利は,消費税の
課税標準としてはそれぞれ課税資産の譲渡等の対価とその他の資産の譲渡
等の対価に該当するが,消費税法上の役務の提供の対価としては,一体と
なったものといえる。)。
イ本件課税仕入れは「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通し
て要する課税仕入れ」に区分されること
(ア)原告の設立に要した費用等
本件課税仕入れ1ないし3は,原告の設立に当たって支払った費用等
に係る取引であり,いずれも課税仕入れに該当する(ただし,本件課税
仕入れ2のうちの公証人の認証料5万1500円に係る部分の取引は,
消費税法別表第1の5号ハに該当する非課税取引であるから,これを除
く。)。
しかし,これらの課税仕入れは,いずれも原告が設立後に事業活動を
行うために要した課税仕入れであるところ,原告の目的は,いわゆる法
人登記上,本件事業に関する業務及びこれに附帯する一切の業務を行う
こととされている上,別紙2記載4のとおり,原告は本件施設の運営業
務の一環として独立採算事業を行うことができるとされている。
そのため,原告の設立に要した費用等に係る取引である本件課税仕入
れ1ないし3は,原告の事業全体に要するものであり,前記アで述べた
とおり,原告の事業活動によって生ずる売上げには,課税資産の譲渡等
の対価及びその他の資産の譲渡等の対価があることから,これらの課税
仕入れは,いずれも消費税法30条2項1号ロにいう「課税資産の譲渡
等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分される
というべきである。
(イ)融資スキームの構築に係る費用等
本件課税仕入れ4ないし6は,融資スキームの構築に係る費用等に係
る取引であるところ,前提事実(3)オのとおり,本件特約においては,
本件融資契約に基づく原告の借入金の資金使途は,本件契約に基づき原
告が行う独立採算事業以外の事業に係る契約保証金の支払及び本件契約
に基づき原告が実施する本件施設の設計・施工・建設等に係る建設代金
の支払とされている。そして,別紙2記載5及び前提事実(3)エのとお
り,原告は,契約保証金の納付に代えて,E銀行との間で支払保証委託
契約を締結し,同銀行に対し本件保証料として166万9299円を支
払った。
そうすると,融資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件
課税仕入れ4ないし6については,本件施設の整備に関する対価を得る
ために必要とされるものであって,本件施設の整備に関する対価の全体
に対応するものと認められる。
そして,本件施設の整備に関する対価は,前記アのとおり,課税資産
の譲渡等の対価である本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価であ
る本件割賦金利とで構成されるから,融資スキームの構築に係る費用等
に係る取引である本件課税仕入れ4ないし6は,いずれも消費税法30
条2項1号ロにいう「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通
して要する課税仕入れ」に区分されるというべきである。
(2)原告の主張について
ア(ア)原告は,本件施設の整備に関する対価は本件割賦元本からのみ成り,
本件割賦金利は本件施設の整備に関する対価に含まれない単なる利息で
あるから,本件課税仕入れはいずれも「課税資産の譲渡等にのみ要する
課税仕入れ」に区分される旨をいうものと解される主張をする。
しかし,別紙2記載3及び6のとおり,徳島県は,本件施設等の引渡
しを受けた場合,原告に対し,本件施設の整備に関する対価として,本
件契約書の別紙8に記載する金額を支払うこととされているところ,こ
の別紙8の1項には,別紙2記載6のとおり,本件施設の整備に関する
対価の内容として,「<ク>上記<ア>ないし<キ>の合計に対する徳島県の割
賦支払に係る利息」との旨の記載があるのであるから,本件割賦金利が
本件施設の整備に関する対価の構成要素であることは明らかであり,こ
のことは,本件施設の整備に関する対価の額である10億5098万6
000円が本件割賦元本の額と本件割賦金利の額との合計額であること
(別紙2記載3)からも裏付けられる。
(イ)また,原告は,本件割賦金利に係る取引は,消費税法施行令10条3
項10号により,当該賦払に係る契約において明示されて初めて非課税
取引であるその他の資産の譲渡等とされるのであるから,利子に相当す
るものとして賦払に係る契約において明示された本件割賦金利は本件割
賦元本と一体となるものではなく,両者を区別して考えることができ,
その場合,本件割賦金利に対応する役務の提供に要する課税仕入れは存
在しないから,原告の設立に要した費用等に係る取引を含めた本件課税
仕入れは,全て課税資産の譲渡等にのみ要するものとして区分されるべ
きである旨をいうものと解される主張をする。
しかし,本件割賦金利が,利子に相当するものとして賦払に係る本件
契約において明示されることによりそれに係る部分を対価とするその他
の資産の譲渡等として扱われることは,本件割賦金利に係る上記の部分
が非課税取引であるその他の資産の譲渡等となることを意味するにすぎ
ず,個別対応方式における課税仕入れの区分の判断において本件割賦元
本と本件割賦金利とを区別すべきことの根拠となるものではないから,
原告の主張は,その前提を欠いている。
(ウ)このほか,原告は,本件施設の整備に関する対価の内容とされる別紙
2記載6の<ア>ないし<ク>の費用について,同<ア>ないし<キ>が本件割賦元
本に係るもので,同<ク>が本件割賦金利に係るものであって,両者はそ
の性質を異にする旨を主張するが,このような性質の差異は,個別対応
方式における課税仕入れの区分の判断に影響するものではない。
イ(ア)原告は,本件施設の整備に関する対価の内容とされる別紙2記載6の
<ア>ないし<ク>の各費用のうちの<ク>が本件割賦金利に係るもので,その
他の資産の譲渡等の対価に当たり,これを除いた同<ア>ないし<キ>が本件
割賦元本に係るもので,課税資産の譲渡等の対価に当たるとした上で,
原告の設立に要した費用等に係る取引である本件課税仕入れ1ないし3
が同別紙記載6の<オ>の「事業者の開業に伴う費用」に係るものに,融
資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕入れ4ない
し6が同別紙記載6の<キ>の「融資組成手数料その他整備に関する初期
費用と認められる費用等」に係るものに,それぞれ当たるから,本件課
税仕入れはいずれも「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区
分される旨をいうものと解される主張をする。
しかし,個別対応方式における課税仕入れの区分は,当該課税仕入れ
がいかなる取引に対応するものであるかを客観的に判断するものであっ
て,当事者の契約内容によって自由に決定し得る性質のものではないか
ら,本件契約書における別紙2記載6の<オ>の記載は,原告の設立に要
した費用等に係る取引である本件課税仕入れ1ないし3が「課税資産の
譲渡等にのみ要する課税仕入れ」であることの根拠となるものではない。
この点,原告は,原告がいわゆる特別目的会社であることを主張する
が,消費税法上,特別目的会社を他の法人と区別する規定はないし,別
紙2記載4のとおり,原告は独立採算事業を行うことができ,預金利息
を収受すること等もあるのであるから(現に,本件課税期間の末日にお
いて,原告の売上げは,非課税取引〔その他の資産の譲渡等〕により得
た預金利息のみであった。),本件事業のみを行うための法人であると
いい切ることもできない。仮に,原告が本件事業及びその一環としての
独立採算事業に関する業務のみを行う法人であったとしても,それらに
よりその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利を含めた割賦代金
を収受することとされている上,その他の資産の譲渡等である預金取引
により預金利息を収受し得るのであるから,課税資産の譲渡等以外の取
引が発生しない法人であるとはいえない。なお,個別対応方式により課
税仕入れを区分する場合の当該区分の判断は,課税仕入れを行った日の
状況によりそれがいかなる資産の譲渡等に「要する」ものであるかにつ
き行うべきものであるから,本件において,本件課税仕入れ1ないし3
が行われた時点でいまだ預金利息が存在しておらず,また,原告が現に
本件事業の附帯業務や独立採算事業を行っていなかったとしても,その
ことは本件課税仕入れの区分の判断を左右するものではない。
また,融資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕
入れ4ないし6についても,これらが課税資産の譲渡等の対価とその他
の資産の譲渡等の対価から成る本件施設の整備に関する対価の全体を得
るために必要とされる費用に係るものであることは,既に述べたとおり
であり,本件契約書における別紙2記載6の<キ>の記載は,融資スキー
ムの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕入れ4ないし6が
「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」であることの根拠となる
ものではない。
(イ)次いで,原告は,融資スキームの構築に関する手数料に係る取引であ
る本件課税仕入れ5について,「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕
入れ」に区分される本件施設の設計・施工・建設等に係る建設代金と本
質を同じくするものである旨を主張する。
しかし,本件課税仕入れ5に係る融資スキームの構築に関する手数料
は,原告が,前提事実(3)オのとおり,資金使途を限定した本件融資を
受けるに当たって支払うこととされた手数料であり,本件融資に対する
返済は,本件契約に基づき原告に生ずるキャッシュフローを原資とする
ものである。
そうすると,融資スキームの構築に関する手数料は,原告が本件融資
を受けるために必要な費用であり,その返済原資となるキャッシュフロ
ーは,本件割賦元本と本件割賦金利とが一体となった本件施設の整備に
関する対価の全体から生ずるものとなる。また,本件融資の資金使途が,
本件保証料及び本件施設の建設代金の各支払とされていることからすれ
ば,上記の手数料は,本件施設の整備に関する対価の全体を得るための
ものといえる。
そして,本件施設の整備に関する対価が,課税資産の譲渡等の対価で
ある本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利と
が一体となったものであることは,前記(1)アで述べたとおりであるか
ら,融資スキームの構築に関する手数料に係る取引である本件課税仕入
れ5が「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課
税仕入れ」に区分されることは,明らかである。
ウ原告は,本件事業にとって本質的ではない金利の存在をもって,原材料
費にすぎない本件課税仕入れの段階の消費税の控除を認めないとすること
は,消費税の本質に反するものであり,二重課税の非難を免れないもので
ある旨を主張するが,既に述べたとおり,本件課税仕入れは,原告の設立
後の事業活動全体のために要した原告の設立費用に係る取引や本件施設の
整備に関する対価の全体を得るために要した融資スキームの構築に係る費
用等に係る取引であって,本件施設を建設するための原材料費や設計手数
料等に係る取引ではないから,原告の上記の主張は,その前提を欠いてい
る。
この点をおくとして,原告の本件課税期間における控除対象仕入税額が
0円となったのは,課税売上割合が0パーセントであったからである。原
告が個別対応方式を選択した以上,「課税資産の譲渡等とその他の資産の
譲渡等に共通して要する課税仕入れ」について,課税売上割合の限度でし
か仕入れに係る消費税額を控除することができないのは,消費税法の予定
するところであって,消費税の本質に反するものではない(なお,原告が
ある課税期間において課税仕入れに係る消費税を支払ったとしても,その
消費税の納付義務者は,原告ではなく,原告から消費税の支払を受けた仕
入先であるから,原告が二重に消費税を納付することになるものではなく,
「二重課税」の問題が生ずる余地はない。)。
エ原告は,国税庁が公表している質疑応答事例(甲7。以下「本件質疑応
答事例1」という。)において,いわゆる所有権移転外ファイナンスリー
ス取引におけるリース資産の賃貸人(いわゆるリース会社)によるリース
資産の取得に要した費用が,据付工事費や運賃等も含めて,専ら「課税資
産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されるものと扱われているこ
ととの対比を主張する。
しかし,リース取引には,租税法上,リース資産の売買として扱われる
ものと,金融取引として扱われるものとがあるのであるから,必ずしもリ
ース取引であることをもって「本質的に金融取引」であるとまではいえな
いし,本件質疑応答事例1は,あくまで,売買取引として扱われる所有権
移転外ファイナンスリース取引に関して,リース資産の取得費用は原材料
の仕入れに相当するものであることを理由に,リース資産の取得費用は個
別対応方式において「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分
される旨を回答したものにとどまる。また,リース資産の賃貸人が支払う
据付工事費及び運賃等がリース資産の取得費用に含まれ,「課税資産の譲
渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されるのは,これらの費用が,課税
対象の資産に係る運送費や支払加工賃(別紙1記載2(1)の③参照)とい
えるからにすぎず,他方,本件課税仕入れに係る支払は,既に述べたとお
り,原告の設立に要した費用等や融資スキームの構築に係る費用等である
から,ファイナンスリース取引におけるリース資産の取得費用と同視する
ことはできないものである。
なお,原告は,本件契約のような取引において,割賦金利の部分を利子
として明示するか否かという形式的な違いで仕入れに係る消費税額の控除
の可否が決せられるのは不合理である旨も主張するが,そのような差異が
生ずるのは,消費税法等の予定する当然の結果というべきである。
オ原告は,平成20年4月1日から平成21年3月31日までの課税期間
(以下「平成21年3月期」という。)の消費税について,原告が本件施
設の設計業務委託料として建築事務所等に支払った3045万円(以下
「本件施設設計料等」という。)が「課税資産の譲渡等にのみ要する課税
仕入れ」に係る支払に区分されると徳島税務署長が判断していることから
すれば,融資スキームの構築に係る費用等である本件課税仕入れ4ないし
6に係る支払についても,同じく「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕
入れ」に係るものに区分されるものと判断されるべきであり,本件更正処
分の判断と他の課税期間の判断とには判断の矛盾がある旨をいうものと解
される主張をする。
しかし,本件施設設計料等については,本件施設を建設・整備するため
にのみ要する費用であることから,それに係る取引は「課税資産の譲渡等
にのみ要する課税仕入れ」に区分されると判断されたものであり,他方,
融資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕入れ4ない
し6が,本件施設の整備に関する対価の全体を得るための課税仕入れであ
り,「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕
入れ」に区分されることは,既に述べたとおりである。
したがって,本件施設設計料等に係る取引が「課税資産の譲渡等にのみ
要する課税仕入れ」に区分されることと,本件課税仕入れ4ないし6が
「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入
れ」に区分されることには,何ら矛盾はない。
カ原告は,本件質疑応答事例1とは別に国税庁が公表している質疑応答事
例(甲9。以下「本件質疑応答事例2」という。)における国税庁の見解
を根拠に,課税仕入れが実質的にどのような売上げや利益と主たる対応関
係があるかどうかを判断しないでは,最終的な付加価値に課される税とし
ての消費税を正当に徴収することは困難である旨を主張する。しかし,そ
の主張は,国外における資産の貸付けのみを行う法人の預金に関するもの
以外の業務をその親会社に委託した場合における業務代行手数料に係る取
引の課税仕入れの区分に関する取扱いについての本件質疑応答事例2にお
ける国税庁の見解を誤って理解した上でのものであり,失当といわざるを
得ない。
(原告の主張の要点)
(1)本件課税仕入れが「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分さ
れること
以下のアないしウに述べるところに照らせば,本件課税仕入れは,消費税
法30条2項1号イにいう「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に
区分されるというべきである。
ア本件事業と本件課税仕入れの本質
(ア)本件事業は,専ら本件事業を受託するために設立された特別目的会社
である原告が,本件施設の整備及び運用を実現するために必要なサービ
スの給付を行い,徳島県がこれに対する対価を支払うことをその取引の
本質とするもので,その具体的内容は,本件契約書(甲2)のとおりで
ある。そして,本件契約における各当事者の給付の対価的関連性は,本
件施設の整備という原告のサービスの給付と徳島県の対価(本件割賦元
本)の支払にあり,このことは,別紙2記載1の契約金額の点からも明
らかである。
また,本件施設の整備に関する対価の具体的な内容は,同別紙記載6
の<ア>ないし<ク>のとおりであり,そこには,後に述べるような原告の本
件事業におけるいわゆる道具性を受けて,同<オ>の「事業者の開業に伴
う費用」及び同<キ>の「融資組成手数料その他整備に関する初期費用と
認められる費用等」が含まれており,本件課税仕入れは,全てこれらと
密接不可分な費用である。
さらに,本件割賦金利については,本件施設を整備する事業が公共団
体の事業としても相当に大規模であり,かつ,公共団体としての予算の
支出の公的な制約の中で,合理的な分割払いとすることがほぼ当初から
必然的に予定・計画されていたことから生じたものにすぎず,原告によ
る本件施設の整備との間に対価的な関連性はない。本件割賦金利は,徳
島県に期限の利益が生ずる反面,原告に分割を余儀なくされる不利益が
生ずることから,これらを相殺し,公平を確保するために定められた利
息でしかなく,仮に,徳島県が本件施設の整備に関する対価を一括で支
払い,本件割賦金利が生じなかったとしても,本件課税仕入れは本件施
設の整備のために必要であったものであり,本件課税仕入れと本件割賦
金利とは,本来的に関係がない。
以上のように,原告の本質的な事業は,本件施設の整備に関する対価
と維持管理に関する対価を得るためのものであり,本件割賦金利を得る
ためのものではない。本件課税仕入れに係る支払は,本件割賦元本を産
出するに当たっての原価部分であり,全て本件施設の整備のために必要
不可欠なものであって,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れであ
る。たまたま,取引相手の都合で割賦払いとしたことに伴い金利という
収入が別途生ずることになっても,それと本件課税仕入れとは実質的な
対応関係がないと判断されるべきものである。
(イ)本件課税仕入れは,全て,原告による本件施設の整備という本質的な
サービスを給付するための最低限かつ必要不可欠な前提となるものであ
り,製造業でいえば必要不可欠な原材料の仕入れに相当する。
すなわち,本件課税仕入れ1ないし3は,原告の設立に要した費用等
であるところ,原告は,本件事業を受託するために設立された特別目的
会社であり,法的に合理的な整理をするための受け皿として,いわば本
件事業を円滑に運営するための法的仕組みのためにのみ設立された道具
的な法人にすぎないのであって,その設立の費用自体,本件施設の整備
のための直接の仕入れに当たるというべきである。
本件課税仕入れ4ないし6については,まさに,本件施設を整備する
事業に係る資金の調達のための制度設計及び制度の仕組み構築のための
費用といえるものであり,このような資金の調達を必要とすることは,
原告のような特別目的会社を用いる取引では取引慣行的・定型的に予定
されているのであって,いわば金融組成費用たる融資スキームの構築に
係る費用が取得資産である設備ないしその対価との関係で原価性を有す
ることは税法上の常識といえる。後に改めて述べるように,徳島税務署
長は,平成21年3月期の消費税について,原告が設計事務所等に支払
った本件施設設計料等が「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」
であると認めているところ,これと別異に扱う合理的根拠はない。
本件課税仕入れが全て課税仕入れであることは,前記(ア)で述べたよ
うに,本件施設の整備に関する対価の支払の対象となる業務に係る費用
の具体的な内容に,「事業者の開業に伴う費用」及び「融資組成手数料
その他整備に関する初期費用と認められる費用等」が含まれていること
からも裏付けられる。
(ウ)我が国の消費税は,各取引段階の付加価値を課税標準として課される
一般消費税であり,最終的な付加価値財に対する最終的な消費支出に課
税されることをその本質的要素とするものであるところ,これを本件に
ついてみれば,本件課税仕入れは,原告による本件施設の整備にとって
の原材料ともいうべき「仕入れ」であることは明らかである。
本件更正処分のように,本件事業に係る取引にとって本質部分ではな
い本件割賦金利の存在をもって,結果的に,原材料費にすぎない本件課
税仕入れに係る消費税額の控除を認めないとすることは,消費税の本質
に反した二重課税との非難を免れないものである。
イファイナンスリース取引との対比
仮に,本件割賦金利が,原告による本件施設の整備に対する対価として
の意味も有するとしても,いわゆるファイナンスリース取引の消費税法上
の取扱いと対比すれば,本件において本件課税仕入れに係る消費税額の控
除を否定することは,実質的な公平を害するものとして違法を免れないと
いうべきである。
すなわち,本件質疑応答事例1においては,ファイナンスリース取引に
係るリース契約において利子相当額が明示されている場合,そのリース料
は「課税取引とされる資産の譲渡に対する対価の額」と「非課税取引とさ
れる利子相当額を対価とする役務の提供に係る対価の額」の両者を含むも
のであるにもかかわらず,そのファイナンスリース取引に不可欠なリース
資産の取得費用(据付工事費及び運賃等を含めたもの)は,全て前者の
「課税取引とされる資産の譲渡に対する対価の額」と扱うこととされてい
る。このような取扱いとされる実質的な理由は,リース資産の賃貸人がリ
ース資産を取得することは,ファイナンスリース取引にとって主要かつ不
可欠の原材料の「仕入れ」というべきものであるところ,リース資産の取
得からリース料の取得までの間に時間的な間隔が生ずることやリース料に
は課税部分と金利相当の非課税部分が混在すること等から,リース資産の
取得時の課税期間における課税売上割合が100分の95に満たないこと
や,たまたま課税資産の譲渡等による売上げがないことがあり,そのよう
な場合に,リース資産の賃貸人が取得するリース料に係る課税仕入れを消
費税法30条2項1号ロに規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の
譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分されるとして取り扱い,偶然
的な要素によって課税仕入れに係る消費税額の控除がされない事態等が生
ずることが,消費税の付加価値税の本質に反し,公平を失するからにほか
ならない。
ファイナンスリース取引の性格は,リース資産の賃借人に対するリース
資産取得のための資金融資としての金融取引としての側面と,リース資産
の使用収益の賃料的対価を取得する賃貸借的側面とを併有する取引であり,
一般的にも,通常の賃貸借契約と異なり,むしろ融資資金の分割返済とし
ての側面が強く,金融取引であることが強調されている。それにもかかわ
らず,消費税法における仕入れに係る消費税額を控除する場面においては,
ファイナンスリース取引にとって不可欠な「課税仕入れ」であるリース資
産の取得については,ファイナンスリース取引の非課税取引である金融取
引の側面を無視して,専ら「課税取引とされる資産の譲渡に要する費用」
として柔軟に扱われている。
こうしたこととの対比からすれば,本件課税仕入れが全て原告による本
件施設の整備という本質的なサービスを給付するための最低限かつ必要不
可欠な原材料の仕入れに相当するものであることは,当然に配慮されてし
かるべきである。
ファイナンスリース取引と比べても,本件割賦金利における金融サービ
スの対価という性格は著しく希薄といえるのであって,にもかかわらず,
本件事業の本質を理解せずに,軽々に本件割賦金利を利息として明示する
かしないかについての形式的な判断で課税部分を増やそうとした本件更正
処分は,違法であるといわざるを得ない。
ウ原告の平成21年3月期の消費税に係る徳島税務署長の課税判断との矛

本件課税仕入れは,いずれも「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入
れ」に区分されるべきものであり,とりわけ,本件課税仕入れ4ないし6
については,いかなる意味でも「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入
れ」に区分されるべきものである。
すなわち,原告の平成21年3月期の消費税について,原告が設計事務
所等に支払った本件施設設計料等が「課税資産の譲渡等にのみ要する課税
仕入れ」であると徳島税務署長により認められたことは,前記ア(イ)で述
べたとおりであって,徳島税務署長の対応は,一貫性を欠いた著しく不公
正なものというべきである。
エその他の例との対比
本件質疑応答事例2では,国外における資産の貸付けだけを行うために
設立され,その業務の一切の代行を親会社に委託して業務代行手数料を支
払う一方,資本金を預金していることから毎期の収入として預金利息があ
る会社が支払う上記の業務代行手数料について,「課税資産の譲渡等にの
み要する課税仕入れ」に区分される旨の国税庁の見解が示されている。
この見解の理由は,必ずしも明快に理解できるものではないが,実質的
には,資本金の預金利息の発生と親会社が代行する主たる業務との対価関
係が相対的に希薄である点が考慮されたものと考えられる。そうすると,
国税庁のこの見解は,ある課税仕入れ費用が実質的にどのような売上げや
利益と主たる対応関係があるのかを判断しないでは,最終的な付加価値に
課される税としての消費税を正当に徴収することが困難であることを示す
ものということができ,本件においても,そのような洞察と配慮が必要と
いうことができる。
(2)被告の主張について
ア被告は,本件施設の整備に関する対価は課税資産の譲渡等の対価である
本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利とが一体
となったものである旨を主張する。
しかし,本件施設の整備に関する対価は,本件割賦元本と本件割賦金利
とで構成されてはいるものの,利子部分が明示されているからこそ割賦利
息はその他の資産の譲渡等の対価になり得る(消費税法施行令10条3項
10号参照)のであるから,両者は一体となったものではない。両者は,
その発生において本質を異にし,本件契約書の記載はこのような取引の実
態を明示しているものであり,その本質に従って線引きされるべきもので
あって,両者を区分して考える必要がある。そして,明示されたがために
その他の資産の譲渡等の対価とされた本件割賦金利を対価とする役務の提
供に要する課税仕入れはなく,本件割賦元本を産出する基となる設立費用
等を含めた本件課税仕入れは,「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入
れ」に区分されるものである。
イ(ア)被告は,原告の設立に要した費用等に係る取引である本件課税仕入れ
1ないし3について,原告の事業全体に要するものであり,原告の事業
活動による売上げには課税資産の譲渡等の対価とその他の資産の譲渡等
の対価とがあるから,本件課税仕入れ1ないし3は,「課税資産の譲渡
等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分される
旨を主張する。
しかし,本件割賦金利及び預金利息は,本件事業に伴い結果として発
生するものであり,これを得るために支出する仕入れは存在しない。
また,本件割賦元本を産出する基となる原価の部分は,本件施設の整
備に関する対価の内容とされる別紙2記載6の<オ>の「事業者の開業に
伴う費用」や同<キ>の「融資組成手数料その他整備に関する初期費用と
認められる費用等」で構成されているところ,これらはいずれも本件割
賦元本に当たるもので,かつ,原告の設立に要した費用等を含む本件課
税仕入れはいずれも上記の<オ>は<キ>の費用等に当たるから,本件課税仕
入れはいずれも「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分さ
れるべきものということができる(なお,被告は,課税仕入れの区分は
客観的に判断されるものであって,契約内容によって自由に決定し得る
ものではない旨を主張するが,契約の趣旨及び内容を社会通念に従って
判断することが否定されるものでないことは明らかであり,その契約の
主体がどのような種類の法人であるかをある程度参酌しないで当該契約
の内容の本質を正当に評価することは,不可能である。)。
(イ)この点,被告は,原告が本件事業及びこれに附帯する一切の業務を行
うこととされていることや独立採算事業を行うことができるとされてい
ること,原告が預金利息を収受し得るものであること等からすれば,原
告の設立に要した費用等に係る取引は「課税資産の譲渡等とその他の資
産の譲渡に共通して要する課税仕入れ」に区分される旨を主張する。
しかし,本件契約の内容に照らし,特別目的会社である原告がそれら
の業務を現実に営むことはまずあり得ないところであって,仮に営んだ
としても,本件契約書において定められている内容に照らしてそれらが
「その他の資産の譲渡等」に該当しない取引であることは明白であるし,
この点をおくとしても,本件課税仕入れがされた時点で現に行われてい
ない附帯業務や独立採算事業を引き合いに出すのは,正当な判断を誤ら
せるものというべきである。また,預金利息についても,預金利息は本
件事業に伴い結果として発生するものであるから,当初からその発生が
予定されていたであるとか,それ自体が1つの業務であるかのようにい
うことは誤りというべきであり,それが発生したとしても原告の本件事
業における道具性の本質を無視し得るものではなく,預金利息を収受す
ることもあるからという類推で課税仕入れの判断を行うべきでもない。
そもそも,被告の上記の主張は,法人の設立費用等がその法人の設立
後の事業全体のために要する費用であるとの一般論を,地方公共団体と
の間に締結された公共事業を担うためだけに設立された特別目的会社で
ある原告について,その法人としての道具性を無視して当てはめるもの
である上,昨今のほとんど0に近い預金利息の発生と原告の本来の目的
とを同列に論じるものであって,常識とかけ離れた議論であるといわざ
るを得ず,不当である。
(ウ)また,融資スキームの構築に係る費用等である本件課税仕入れ4ない
し6についても,同様に,本件割賦元本を産出するに当たっての原価の
部分を構成するものといえるから,「課税資産の譲渡等にのみ要する課
税仕入れ」に区分される。
さらに,本件融資契約に基づく原告の借入金の資金使途が本件施設の
建設代金の支払に限定されていることからすれば,融資スキームの構築
に係る費用等である本件課税仕入れ4ないし6は,「課税資産の譲渡等
にのみ要する課税仕入れ」に区分される本件施設の建設代金と本質を同
じにするものといえるから,この観点からも,本件課税仕入れ4ないし
6は,「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されるべき
ものということができる。
ウ被告は,本件課税仕入れに係る消費税額の控除を認めないことが二重課
税の非難を免れないとの原告の主張が失当である旨を主張する。
しかし,法人の設立直後の事業年度における課税売上割合は,その法人
の本来の事業から想定される課税売上割合とかい離することが考えられる
のであるから,設立費用を「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に
共通して要する課税仕入れ」に区分することは,設立直後の売上げのタイ
ミングのズレという偶然の事情により高くもなり低くもなる課税売上割合
に左右されて本来還付されるべき仕入れに係る消費税額が還付されないと
いった事態を招くものであって,消費税の本質に反するものというほかな
い。
この点,被告は,本件課税仕入れに係る消費税額の控除を認めないこと
はそもそも二重課税に当たらない旨も主張するが,被告は,課税期間ごと
の計算を許容することを奇貨として,1つの付加価値について,原告の仕
入先からと原告の本件課税期間以降の課税期間における売上げからと,ま
さに消費税を二重取りできるのであって,このような弊害を二重課税と評
することは決して的外れなものではない。
エ(ア)被告は,ファイナンスリース取引との対比をいう原告の主張が失当で
ある旨を主張する。
しかし,本件質疑応答事例1では,リース資産の据付工事費及び運賃
等も含めたリース資産の取得費用について,非課税取引となる利子相当
額を対価とする役務の提供に要する費用でなく,課税取引となる課税資
産の譲渡等に要する費用に当たることから,控除対象仕入税額を計算す
るに当たっては,「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分
されるとの国税庁の見解が示されている。
そして,ファイナンスリース取引における取引の法的性格は,リース
資産の売主と賃貸人との売買契約及びリース資産の賃貸人と賃借人との
リース契約という各契約が一体的に結合した3者の複合的契約関係とい
うものであり,ファイナンスリース取引における契約の法的性格は,本
質として金融取引であって,リース資産の賃貸人が取得する対価として
のリース料の中に本質的に金利部分を含むものであるところ,ファイナ
ンスリース取引におけるリース資産の取得費用は,その金融取引という
性格から必然的にリース料に含まれることとなる「利子」の取得のため
の仕入れとしての性格を強く持つものであり,そうであれば,リース資
産の取得費用は,「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通し
て要する課税仕入れ」に当たるはずである。しかし,本件質疑応答事例
1は,リース資産の取得費用を「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕
入れ」に区分すべきものとしているのであって,その理由は必ずしも首
肯し得るものではないが,これをあえて法的に説明するならば,前記
(1)イのとおりに考えるほかないものである。
「所得」を課税対象とする所得税法及び法人税法において,政策的判
断から,ファイナンスリース取引をリース資産の賃貸人と賃借人との間
の売買と擬制することがされているとしても,課税対象等を異にする消
費税法においては,その取引の正確は経済的実態に即して判断されるべ
きである。
このように,本件割賦金利と本件課税仕入れは必然的な対応関係には
なく,本件においては,ファイナンスリース取引以上に実質的な配慮が
必要であって,少なくともファイナンスリース取引と同様の配慮がされ
るべきである。
被告の主張は,一応の指針にすぎない消費税法基本通達にとらわれて,
形式的な判断に終始したものというべきであって,法の精神を見失った
ものというほかない。
(イ)この点,被告は,ファイナンスリース取引の賃貸人が支払う据付工事
費用及び運賃等が,リース資産の取得費用として「課税資産の譲渡等に
のみ要する課税仕入れ」に区分されるのは,これらの費用が課税対象資
産に係る運送費や支払加工賃といえるからである旨を主張する。
しかし,このような形式的なことは被告の主張を待つまでもなく自明
のことであって,問題は,なにゆえ,金利を生み出す「仕入れ」である
リース資産の上記以外の費用も含めての取得費用が「課税資産の譲渡等
にのみ要する課税仕入れ」に区分できるのかというその理由である。
被告は,原告の主張はファイナンスリース取引の租税法上の取扱いを
正解しないものである等と主張するが,被告の主張は,仮にファイナン
スリース取引におけるリース資産の賃貸人と賃借人との間の取引が売買
であると評価するとしても,なにゆえその取得費用が契約上生ずる金利
部分とは対応しないとされるのかという根本的な問題に対して,明確な
説明や反論を主張しておらず,その正当な法的根拠を何ら明らかにする
ものではない。このように,被告の主張を前提としても,本件との均衡
を失するというべきである。
オ被告は,原告の平成21年3月期の消費税について,徳島税務署長が本
件施設設計料等を「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分さ
れるものと判断したことに関し,本件施設設計料等と融資スキームの構築
に係る費用等である本件課税仕入れ4ないし6は,その性質を異にする旨
を主張する。
しかし,既に述べたように,本件融資の資金使途が本件施設の建設代金
の支払に限定されていることからすれば,融資スキームの構築に係る費用
等である本件課税仕入れ4ないし6を本件施設設計料等と別異に取り扱う
合理的根拠はなく,同じく本件施設を建設・整備するためにのみ要する費
用として取り扱うことが矛盾のない一貫性のある税務対応というべきであ
る。
カ被告は,本件質疑応答事例2における国税庁の見解に対する原告の理解
が預金に関する業務の委託の有無等を考慮していない点において誤ってい
る旨を主張する。
しかし,本件質疑応答事例2における国税庁の見解についての被告の理
解は,その記載に係る客観的な日本語の文章構造の理解を誤り,また,
「前提」と「評価」ないし「結論」をすり替えたものであって,失当とい
うほかない。
なお,付言すれば,本件質疑応答事例2では,「業務の一切」について
の業務代行手数料について,「預金に関する業務を特に委託している事実
がない場合」には,利息収入があっても,「課税資産の譲渡等にのみ要す
る課税仕入れ」に区分されるとされており,預金に関する業務については,
特にこれを委託する旨の合意をしなければ,「業務の一切」に含まれない
と評価されている。また,親会社が行う「業務の一切」としては,会社の
設立業務等が含まれている可能性も考えざるを得ず,被告の判断が恣意的
なものであると疑われてもやむを得ないところである。
第3当裁判所の判断
1争点(本件課税仕入れが消費税法30条2項1号にいう「課税資産の譲渡等
にのみ要する課税仕入れ」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に
共通して要する課税仕入れ」のいずれに区分されるか)について
(1)控除対象仕入税額の計算等について(甲8,乙12,弁論の全趣旨)
消費税は,広く公平な税負担を求めるという観点から,ほとんど全ての国
内において行われる取引を課税の対象として,その最終的な税負担をいわゆ
る最終消費者に求める税であるが,納税義務者は,生産や流通等の各段階に
おいて課税資産の譲渡等を行う各事業者であり,消費者は,こうした各事業
者が生産や流通等の各段階で物品やサービスの価格に順次転嫁していった消
費税の税額に相当する額を最終的に負担することとなる。そこで,生産や流
通等の各段階における取引で二重,三重に税が課されて税に相当する負担が
累積することがないように,消費税法は,国内において課税仕入れを行った
日の属する課税期間中の課税標準額に対する消費税額から当該課税期間中に
国内において行った課税仕入れに係る消費税額(控除対象仕入税額)を控除
するものとしている(同法30条1項)。
そして,この控除対象仕入税額の計算に当たっては,原則として当該課税
期間中の課税仕入れに係る消費税額の全額を控除することができるとされる
(同項)ところ,これは,課税仕入れに係る消費税額を控除する趣旨が上記
に述べたとおりいわゆる課税の累積を排除することにあることからすれば,
課税仕入れに対応する売上げに係る取引がその他の資産の譲渡等に当たるも
のであるときには課税の累積が生じないため当該課税仕入れに係る消費税額
を控除の対象とする必然性はないものの,納税義務者の納税関係の事務の負
担への配慮等といった観点から,課税売上割合が95パーセント以上である
場合は,課税仕入れと売上げに係る取引との個別的な対応関係を問うことな
く,当該課税期間中の課税仕入れに係る消費税額の全額の控除を認めたもの
であると解される。
他方,課税売上割合が95パーセントに満たない場合は,同法30条2項
1号に規定する個別対応方式又は同項2号に規定する方式のいずれかの方法
により控除対象仕入税額を計算するものとされるところ,これは,課税売上
割合が95パーセントに満たず,売上げに係る取引の大部分が課税資産の譲
渡等に当たるといえない場合については,上記に述べた原則のとおりに,そ
の他の資産の譲渡等に要する課税仕入れに係る消費税額は控除の対象とはな
らないとの前提に立って控除対象仕入税額を計算すべきであるとしたもので
あると解される。
そして,国内において行われた課税仕入れについて個別対応方式により控
除対象仕入税額を計算するときは,「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕
入れ」の税額(同号イ)に「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共
通して要する課税仕入れに課税売上割合を乗じて計算した金額」(同号ロ)
を加算する方法によるものとされるところ,その課税仕入れの区分の判断に
ついては,同号の文言等に即して,当該課税仕入れが行われた日の状況に基
づいてその取引が事業者において行う将来の多様な取引のうちのどのような
取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきものと解するのが相当で
ある。
(2)本件課税仕入れの区分について
ア本件課税仕入れ1ないし3について
本件施設の整備に関する対価は,別紙2記載3のとおり,本件割賦元本
と本件割賦金利とから成るところ,本件割賦元本の合計額である9億49
50万円及び本件割賦金利の合計額である1億0148万6000円は,
いずれも本件契約において明示されており,徳島県は原告に対してこれら
を約8年間にわたり,かつ,32回に分割していわゆる元利均等払いの方
法で支払うこととされていたものである。
そうすると,本件割賦金利は,「資産の譲渡等の対価の額を2月以上の
期間にわたり,かつ,3回以上に分割して受領する場合におけるその受領
する賦払金のうち利子の額に相当する額で当該賦払に係る契約において明
示されている部分」に当たり,これを対価とする本件契約に係る役務の提
供は,消費税法施行令10条3項10号に掲げる取引に当たるから,当該
役務の提供は,消費税法別表第1の3号に掲げるものに当たり,同法6条
1項により,非課税取引とされる結果,同法30条2項1号のその他の資
産の譲渡等に当たることとなる。
そして,本件課税仕入れ1ないし3の具体的な内容は,前提事実(3)ア
ないしウのとおりであって,これらは,いずれも,原告の設立のために支
払がされた費用等に係る取引であり,設立された原告が事業として行う各
種の資産の譲渡等を含むその事業活動を成す取引全体のために要するもの
であったと認められる(ただし,本件課税仕入れ2のうち公証人の認証料
として支払われた5万1500円は,消費税法別表1の5号ハに規定する
公証人法7条1項の手数料であり,これを対価とする役務の提供は同法6
条1項により非課税取引であるその他の資産の譲渡等に当たるから,これ
を除く。以下同じ。)ところ,上記に述べたとおり,原告が本件契約に基
づいて行う事業活動により徳島県から対価として得ることとなる本件施設
の整備に関する対価には,課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本と
その他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利とがあるというのである
から,本件課税仕入れ1ないし3が同法30条2項1号ロに規定する「課
税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に
区分されるべきものであることは明らかということができる。
イ本件課税仕入れ4ないし6について
(ア)本件課税仕入れ4は,前提事実(3)エのとおり,本件保証料の支払に
当たって要した送金の手数料に係る取引であり,別紙2記載5の契約保
証金の納付に代えてされたE銀行との間の支払保証委託契約の締結に要
した費用である本件保証料の支払のために支出された費用に係るもので
あるところ,同別紙記載5に照らせば,本件契約を締結するに当たって,
契約保証金の納付又はこれに代わる支払委託保証契約の締結は必要不可
欠なものであったということができることからすれば,本件保証料の支
払に要した手数料に係る本件課税仕入れ4は,本件契約に基づいて原告
が行う事業活動を成す取引全体のために要するものであったと認めるの
が相当である。
そして,原告が本件契約に基づいて行う事業活動により得ることとな
る本件施設の整備に関する対価に,課税資産の譲渡等の対価である本件
割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利とがあるこ
とは,前記アで述べたとおりであるから,本件課税仕入れ4は,消費税
法30条2項1号ロに規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲
渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分されるべきものということが
できる。
(イ)前提事実(3)オ及びカのとおり,本件課税仕入れ5は本件融資契約及
び本件特約の締結を内容とする融資スキームの構築に関する手数料に係
る取引であり,本件課税仕入れ6は本件融資契約等に係るB銀行のため
の法律顧問業務に関する報酬等に係る取引であって,いずれも本件融資
契約を要素とする融資スキームの構築に関して生じた費用に係るもので
あるところ,前提事実(3)オのとおり,本件融資契約に基づく原告の借
入金である本件融資の資金使途が別紙2記載5の契約保証金及び本件施
設の建設代金の各支払とされていることからすれば,本件課税仕入れ5
及び6は,いずれも,本件契約の締結に当たってその締結が必要であっ
た契約保証金の納付に代わる支払委託保証契約に係る保証料(本件保証
料)及び本件施設の建設等に係る建設代金の各支払のための資金の調達
に要した費用に係るものであるということができる。
そして,本件課税仕入れ5及び6のうち本件保証料に係る資金の調達
のために要した費用の部分に係るものについては,前記(ア)で述べたと
ころに照らせば,本件保証料の支払に当たって要した手数料に係るもの
と同じく,本件契約に基づいて原告が行う事業活動を成す取引全体のた
めに要するものであったと認めるのが相当であるところ,本件融資契約
は本件保証料及び本件施設の建設代金の各支払のための資金を調達する
ために締結された契約であり,これを要素とする融資スキームの構築に
関して生じた費用は当該融資スキームの構築全体について一体として支
払われるものであることからすれば,本件課税仕入れ5及び6は,本件
契約に基づいて原告が行う事業活動を成す取引全体のために要するもの
であったというべきであって,本件課税仕入れ4と同様に,同法30条
2項1号ロに規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共
通して要する課税仕入れ」に区分されるべきものと認めるのが相当であ
る。
(3)原告の主張について
ア原告の主張は,前記第2の4(原告の主張の要点)のとおりであり,こ
れを要すれば,①本件割賦金利は,徳島県の地方公共団体としての公的な
制約のために必然的に生じた単なる利息であって,原告がその設立の目的
に沿って主たる事業として行う本件施設の整備との間に対価的な関連性は
ないし,本件割賦元本と本件割賦金利とは本質的に異なるもので,両者は
一体であるということもできないから,本件課税仕入れは「課税資産の譲
渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分される,②本件施設の整備に関する
対価の具体的な内容は別紙2記載6の<ア>ないし<ク>のとおりで,そのうち
同<ア>ないし<キ>が課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本に,同<ク>
がその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利にそれぞれ当たるとこ
ろ,本件課税仕入れは,いずれも同<オ>又は<キ>に当たるから,いずれも
「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分される,③原告は,
専ら本件事業を受託することを目的として,本件事業に関する法的な仕組
みを整理するために便宜上設立された特別目的会社にすぎず,このことか
らすれば,原告の設立に要した費用等又は本件施設を整備する事業に係る
資金の調達のための仕組みの構築に要した費用である本件課税仕入れは,
製造業における原材料の仕入れに相当するものとして,「課税資産の譲渡
等にのみ要する課税仕入れ」に区分される,④法人の設立直後の課税売上
割合の程度は偶然の事情によって左右されるものであるところ,課税売上
割合の程度によっては,本来還付されるべき仕入れに係る消費税額が還付
されなくなり,課税期間の制度と相まって,1つの付加価値について消費
税が二重に課されることともなるのであって,こうした事態は,消費税の
本質に反しており,実質的な二重課税に当たるというべきである,⑤金融
取引としての側面が強いと考えられているファイナンスリース取引におい
てさえ,妥当な結果への配慮から,リース資産の取得費用は「課税資産の
譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されるものと柔軟に扱われている
ことからすれば,上記③に述べたような性格の本件課税仕入れについても
同様の配慮がされてしかるべきである,⑥徳島税務署長は,原告の平成2
1年3月期の消費税について,原告が設計事務所等に支払った本件施設設
計料等が「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されるもの
であることを認めており,このことからすれば,本件更正処分等において
も,これと同様の取扱いがされるべきである,⑦本件質疑応答事例2にお
いて示された国税庁の見解は,課税仕入れと売上げとの主たる対応関係を
実質的に判断すべきことを示すものであり,そうであれば,本件において
も,これと同様な洞察と配慮の上で,本件課税仕入れの区分を判断すべき
である旨を,それぞれ主張する。
しかし,前記(1)及び(2)に述べたところを前提に検討すれば,以下に述
べるとおり,このような原告の主張は,いずれも採用することができない
ものというべきである。
イすなわち,前記ア①の点については,本件課税仕入れが「課税資産の譲
渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に当たること
及びその理由は,前記(2)に述べたとおりであって,そこで指摘した本件
課税仕入れの内容及び本件契約の内容や前記(1)において述べた課税仕入
れの区分の判断についての枠組みに照らせば,原告の指摘する事情は,上
記の判断で示された結論を左右するものには当たらないというべきである。
ウ前記ア②の点については,控除対象仕入税額を個別対応方式により計算
するに当たっての課税仕入れの区分の判断に関しては,前記(1)で述べた
とおり,当該課税仕入れが行われた日の状況に基づいてその取引が事業者
において行う将来の多様な取引のうちのどのような取引に要するものであ
るのかを客観的に判断すべきものであるから,本件契約書において本件施
設の整備に関する対価の具体的な内容について別紙2記載6のとおりの記
載があるからといって,そのことのみによって,直ちに前記(2)に述べた
当裁判所の判断が左右されるものではない。
エ前記ア③の点については,本件課税仕入れ1ないし3が,設立された原
告が行う事業活動を成す取引全体のために要するものであり,本件課税仕
入れ4ないし6が,本件契約に基づき原告が行う事業活動を成す取引全体
のために要するものであったことは,前記(2)アで述べたとおりであって,
このような本件課税仕入れが製造業における原材料の仕入れと同視され得
るものでないことは明らかというほかないから,原告の主張はその前提を
欠いている(なお,消費税法又は消費税法施行令等にいわゆる特別目的会
社についての特段の規定がないことからすれば,原告が専ら本件事業に関
する業務を行うことを目的として設立された特別目的会社であることは,
原告と他の株式会社等の法人との間で法的な取扱いを異にすべき根拠とな
るものではない。)。
オ前記ア④の点については,控除対象仕入税額が課税期間ごとに課税売上
割合に従って定まることは,前記(1)で述べたとおりであって,法のもと
より予定するところというべきものであるから,課税売上割合の程度によ
って控除対象仕入税額が異なることをもって,消費税の本質に反する等と
いうことは困難というほかない。この点に関する原告の主張は,結局のと
ころ,現行法の解釈を離れた制度論ないしは立法論をいうものというべき
である。
カ前記ア⑤の点については,原告の指摘する本件質疑応答事例1は,所得
税法及び所得税法上リース資産の売買があったものとして取り扱うものと
される所有権移転外リース取引について(所得税法67条の2第1項,法
人税法64条の2第1項),消費税法上もこれと整合的な取扱いをするこ
とを前提として示されたものと解され,本件課税仕入れに係る取引をもっ
てこれと同列には論じ難いことは,前記(1)で述べたところから明らかと
いうべきである。
キ前記ア⑥の点については,本件施設設計料等に係る取引が「課税資産の
譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されると判断されたのは,これが
当該取引の内容に照らして本件施設の建設等にのみ要するものであると評
価されたことをその理由とするものと解されるから,既に述べたとおりこ
れとは前提が異なる本件課税仕入れに関し,同様の取扱いがされるべきも
のということはできない。
ク前記ア⑦の点については,本件質疑応答事例2において,国外での資産
の貸付けのみを行うために設立され,その業務の一切の代行を親会社に委
託して業務代行手数料を支払う一方,資本金を預金していることから毎期
の収入として預金利息がある会社が支払う上記の業務代行手数料について,
それに係る取引が「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分さ
れる旨の国税庁の見解が示されていることは,原告の指摘のとおりである
ものの,この見解が,上記の会社の設立後の業務に関するもので,その内
容を特定のものに単純化した上,「その預金に関する業務を特に委託して
いる事実がない場合」を前提としたものであることは,その回答要旨に示
された理由(甲9)に照らして明らかであること等からすると,本件質疑
応答事例2に示された国税庁の見解をもって,既に述べたように前提とな
る事情を異にする本件課税仕入れが「課税資産の譲渡等にのみ要する課税
仕入れ」に区分されるべきことの根拠となるということはできない。
(4)小括
以上述べたところによれば,当事者のその余の主張を考慮したとしても,
本件課税仕入れについては,いずれも,消費税法30条2項1号に規定する
「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」
に区分されるべきものということができる。
2本件更正処分等の適法性について
前記1に述べたとおり,本件課税仕入れはいずれも消費税法30条2項1号
に規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税
仕入れ」に区分されるところ,原告が本件課税期間中に国内において行った資
産の譲渡等の対価の額の合計額及び課税資産の譲渡等の対価の額の合計額が,
それぞれ165円及び0円であって,本件課税期間に係る原告の課税売上割合
が0パーセントとなることは,当事者間に争いがない。
したがって,本件課税仕入れに係る控除対象仕入税額は0円であり,このこ
とと当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨を併せれば,本件更正処分等
については,別紙3のとおり,いずれも適法なものと認められる。
第4結論
以上の次第であって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却す
ることとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官八木一洋
裁判官田中一彦
裁判官塚原洋一
(別紙1)
関係法令等の定め
1消費税法の定め
(1)ア消費税法2条1項9号は,課税資産の譲渡等とは,資産の譲渡等(事業
として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう。
同項8号参照。以下同じ。)のうち,同法6条1項の規定により消費税を
課さないこととされるもの(消費税を課さないこととされる資産の譲渡等
を,以下「非課税取引」ということがある。)以外のものをいう旨を定め
ている。
そして,①同項は,国内において行われる資産の譲渡等のうち,同法別
表第1に掲げるものには,消費税を課さない旨を定め,②同別表3号は,
利子を対価とする貸付金等の資産の貸付け等その他これに類するものとし
て政令で定めるものを掲げ,③消費税法施行令10条3項10号は,同別
表3号に掲げる資産の貸付け等に類するものとして同号に規定する政令で
定めるものとして,資産の譲渡等の対価の額又は当該対価の額に係る金銭
債権の額を2月以上の期間にわたり,かつ,3回以上に分割して受領する
場合におけるその受領する賦払金のうち利子又は保証料の額に相当する額
で当該賦払に係る契約において明示されている部分を対価とする役務の提
供(同項9号に掲げる役務の提供を除く。)を掲げている。
イ消費税法2条1項12号は,課税仕入れとは,事業者が事業として他の
者から資産を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供を受けること
(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し,若しくは貸し付け,又は
当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとな
るもので同法7条1項各号〔輸出免税等〕に掲げる資産の譲渡等に該当す
るもの等以外のものに限る。)をいう旨を定めている。
(2)ア消費税法5条1項は,事業者は,国内において行った課税資産の譲渡等
につき,同法により,消費税を納める義務がある旨を定めている。
イ消費税法12条の2(平成22年法律第6号による改正前のもの)は,
その事業年度の基準期間(法人についてはその事業年度の前々事業年度
をいう。同法2条1項14号参照。以下同じ。)がない法人のうち,当
該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1000万円
以上である法人(以下「新設法人」という。)については,当該新設法
人の基準期間がない事業年度における課税資産の譲渡等については,同
法9条1項本文(小規模事業者に係る免税義務の免除)の規定は,適用
しない旨を定めている。
(3)ア消費税法30条1項は,事業者が,国内において行う課税仕入れについ
ては,同項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課
税期間(法人にあっては事業年度をいう。同法19条1項2号参照。以下
同じ。)の同法45条1項2号に掲げる課税標準額に対する消費税額(以
下「課税標準額に対する消費税額」という。)から,当該課税期間中に国
内において行った課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払
対価の額に105分の4を乗じて算出した金額をいう。以下同じ。)を控
除する旨を定めている。
そして,同法30条1項1号は,国内において課税仕入れを行った場合
について,当該課税仕入れを行った日と定めている。
イ消費税法30条2項は,同条1項の場合において,同項に規定する課税
期間における課税売上割合が100分の95に満たないときは,同項の規
定により控除する課税仕入れに係る消費税額は,同項の規定にかかわらず,
同条2項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める方法により計算
した金額とする旨を定めている。
そして,同項1号は,当該課税期間中に国内において行った課税仕入れ
につき,課税資産の譲渡等にのみ要するもの,課税資産の譲渡等以外の資
産の譲渡等(以下「その他の資産の譲渡等」という。既に述べたとおり,
非課税取引ということもある。)にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等
とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされ
ている場合について,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに係る消
費税額(同号イ)に,課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通し
て要する課税仕入れに係る消費税額に課税売上割合を乗じて計算した金額
(同号ロ)を加算する方法(この方法を,以下「個別対応方式」ともい
う。)による旨を定めている。
ウ消費税法30条6項は,同条1項に規定する課税仕入れに係る支払対価
の額とは,課税仕入れの対価の額をいう旨を定め,同条2項に規定する課
税売上割合とは,当該事業者が当該課税期間中に国内において行った資産
の譲渡等の対価の額(同法28条1項に規定する対価の額をいう。以下ウ
において同じ。)の合計額のうちに当該事業者が当該課税期間中に国内に
おいて行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合として政
令で定めるところにより計算した割合をいう旨を定めている。
2消費税法基本通達(平成7年12月25日付け課消2-25(例規)ほか国
税庁長官通達)の定め(甲5,6,弁論の全趣旨)
(1)消費税法基本通達11-2-12は,消費税法30条2項1号に規定する
課税資産の譲渡等にのみ要するものとは,課税資産の譲渡等を行うためにの
み必要な課税仕入れ等をいい,例えば,①そのまま他に譲渡される課税資産,
②課税資産の製造用にのみ消費し,又は使用される原材料,容器,包紙,機
械及び装置,工具,器具,備品等並びに③課税資産に係る倉庫料,運送費,
広告宣伝費,支払手数料又は支払加工賃等の課税仕入れ等がこれに該当する
旨を定めている。
(2)消費税法基本通達11-2-20は,個別対応方式により控除対象仕入税
額を計算する場合において,課税仕入れを課税資産の譲渡等にのみ要するも
の,その他の資産の譲渡等にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他
の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分は,課税仕
入れを行った日の状況により行うこととなる旨を定めている。
以上
(別紙2)
本件契約書(要旨)
1契約金額(本件契約書の冒頭部分)
契約金額は,17億8050万円(消費税等を含む。以下本別紙において同
じ。)に本件契約書の別紙8を基に算定した増減額(以下「別紙8に基づく増
減額」という。)を加算した額とし,契約金額の内訳は,①施設整備に関する
対価(以下「本件施設の整備に関する対価」という。)として10億5098
万6000円,②維持管理に関する対価として2億5320万4472円に別
紙8に基づく増減額を加算した額,③緊急修繕に関する対価420万円,④光
熱水費及び通信費に関する対価1億0274万3544円に別紙8に基づく増
減額を加算した額,⑤徳島市中央公民館地下駐車場部分に係る警備等に関する
対価277万2000円に別紙8に基づく増減額を加算した額及び⑥運営に関
する対価3億6659万3984円に別紙8に基づく増減額を加算した額とす
る。
2事業者の資金の調達(5条)
本件事業の実施に関する費用は,本件契約で特段の定めがある場合を除き全
て原告が負担する。本件事業に関する原告の資金の調達は全て原告の責任にお
いて行う。
3施設等整備の割賦代金等の支払(35条)
徳島県は,本件施設及び備品等の引渡しを受けた場合,本件契約書の別紙8
に記載する金額,方法に従い,施設等整備の割賦代金及びこれに係る支払利息
相当分を,原告より提案のあった金利を用い,維持管理・運営期間にわたり,
平成22年4月(予定)を初回,平成30年1月(予定)を最終回に毎年度四半
期ごとの32回の元利均等払いにて支払う。
なお,本件契約書の別紙8の2項(1)には,本件施設の整備に関する対価の
うち割賦金利として支払われる部分(以下「本件割賦金利」という。)につい
て,割賦金利は所定の基準金利と原告が提案したいわゆるスプレッドの合計と
する旨の記載があり,同別紙の4項(1)には,本件施設の整備に関する対価の
うち割賦元本として支払われる部分(以下「本件割賦元本」)に係る支払金額
の合計額を9億4950万円とし本件割賦金利に係る支払金額の合計額を1億
0148万6000円とする旨の記載がある。
4独立採算事業の総則(60条1項)
原告は,本件施設の運営業務の一環として,自らの責任及び費用において,
独立採算事業を行うことができる。
なお,独立採算事業とは,運営業務のうち①施設の有効活用業務(講座・イ
ベント・講演会・催事等の企画運営),②自由提案施設(飲食物販等の施設及
び自動販売機の設置運営)及び③広告宣伝業務に関する事業をいう(1条1項
32号)。
5保証(74条1項)
原告は,施設整備期間(平成20年4月1日から平成22年1月31日まで
の期間をいう。1条1項27号)中,整備費等相当額の100分の30に相当
する金額以上の契約保証金を本件契約締結時に納付する。
なお,契約保証金の納付は,国債証券及び地方債証券のほか,銀行その他徳
島県が確実と認める金融機関の保証等をもって,これに代えることができる。
6本件施設の整備に関する対価の内容(本件契約書の別紙8の1項)
本件施設の整備に関する対価は,その支払の対象となる業務を設計業務,整
備業務及び工事監理業務とし,その具体的な内容を,<ア>本件施設の整備に係
る設計・整備費用,<イ>什器・備品整備費,<ウ>情報システム整備費,<エ>本件
工事に係る工事監理料,<オ>事業者の開業に伴う費用,<カ>建中金利,<キ>融資
組成手数料その他整備に関する初期費用と認められる費用等及び<ク>これら<ア>
ないし<キ>の合計に対する徳島県の割賦支払に係る利息とする。
以上
(別紙3)
本件更正処分等の根拠及び適法性
1本件更正処分の根拠及び適法性
(1)本件更正処分の根拠
被告が本件訴えにおいて主張する原告の本件課税期間の消費税の課税標
準額及び納付すべき消費税等の額の合計額は,別表2のとおりであり,各項
目の金額の根拠は,次のとおりである(なお,この別紙において,以下に掲
げる順号は,別表2のものである。)。
ア課税標準額(順号①)0円
上記金額は,本件確定申告書に記載された金額と同額である。
イ課税標準額に対する消費税額(順号②)0円
上記金額は,前記アの金額に消費税法29条に規定する100分の4の
税率を乗じて算出した金額である。
ウ控除対象仕入税額(順号③)0円
原告が本件課税期間中に行った資産の譲渡等の対価の額である165円
のうち課税資産の譲渡等の対価の額は0円であるから,課税売上割合は0
パーセントであり100分の95に満たない。そして,原告は,控除対象
仕入税額の計算について,個別対応方式によりすることとしているところ,
本件課税仕入れは,消費税法30条2項1号ロに規定する「課税資産の譲
渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分される。
したがって,控除対象仕入税額は,本件課税仕入れに係る消費税額に課税
売上割合を乗じて計算した0円となる。
エイからウを控除した残額に相当する消費税額(順号④)0円
前記イの金額から前記ウの金額を控除すると,残額に相当する消費税額
は0円となる。
オ既に還付の確定した消費税額(順号⑤)△81万5153円
上記金額は,本件課税期間の本件確定申告書の提出により還付の確定し
た消費税額である。
カ差引納付すべき消費税額(順号⑥)81万5100円
上記金額は,前記エの金額から前記オの金額を控除した後,国税通則法
119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた金額である。
キ地方消費税の課税標準となる消費税額(順号⑦)0円
上記金額は,地方消費税の課税標準として地方税法72条の82に規定
する金額で,前記エの金額である。
ク譲渡割額(順号⑧)0円
上記金額は,前記キの金額に地方消費税法72条の83に規定する10
0分の25の税率を乗じて算出した金額である。
ケ既に還付の確定した譲渡割額(順号⑨)△20万3788円
上記金額は,本件確定申告書の提出により還付の確定した譲渡割額であ
る。
コ差引納付すべき譲渡割額(順号⑩)20万3700円
上記の金額は,前記クの金額から前記ケの金額を控除した後,地方税法
20条の4の2第3項の規定に基づき100円未満の金額を切り捨てた金
額である。
サ消費税等の合計額(順号⑪)101万8800円
上記金額は,前記カの金額と前記コの金額の合計額である。
(2)本件更正処分の適法性
被告が本件訴えにおいて主張する本件課税期間における原告の納付すべき
消費税額及び地方消費税の譲渡割額は,前記(1)で述べたとおり,消費税額
が81万5100円,地方消費税の譲渡割額が20万3700円であるとこ
ろ,本件更正処分における原告の納付すべき消費税額及び地方消費税の譲渡
割額は,いずれもこれらと同額であるから,本件更正処分は適法である。
2本件賦課決定処分の根拠及び適法性
(1)本件賦課決定処分の根拠
前記1(2)で述べたとおり,本件更正処分は適法であるところ,本件更正
処分により新たに納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうち,本件
更正処分より前における税額の計算の基礎とされなかったことについて,
国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」があると認められるもの
はない。
したがって,過少申告加算税の額は,地方税法附則9条の9第1項及び3
項の規定により本件更正処分によって原告が新たに納付すべきこととなった
消費税額及び地方消費税の譲渡割額の合計額101万円(ただし,国税通則
法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下
同じ。)に同法65条1項の規定に基づき100分の10を乗じて計算した
金額10万1000円と,同条2項の規定に基づき原告が新たに納付すべき
こととなった消費税額及び地方消費税の譲渡割額の合計額101万円のうち
50万円を超える部分に相当する金額である51万円に100分の5を乗じ
て計算した金額である2万5500円との合計額である12万6500円と
なる。
(2)本件賦課決定処分の適法性
被告が本件訴えにおいて主張する原告に課されるべき消費税等の過少申告
加算税の額は,前記(1)のとおりであり,本件賦課決定処分における金額と
同額であるから,本件賦課決定処分は適法である。
以上

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〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
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職種 事務職
時給 当社規定による
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シフトは週40時間以上
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