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判決 平成14年8月30日 神戸地方裁判所 平成13年(わ)第28号 殺人,
銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
主文
被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中480日をその刑に算入する。
押収してあるバタフライナイフ1本(平成13年押第31号の1)を没収
する。
理由
(犯行に至る経緯)
 被告人は,平成13年1月1日午前零時ころ,当時の婚約者であるM(当時22
歳)とともに,神戸市中央区のメリケンパークで開催されたミレニアムの花火を5
分間ほど見物した後,Mとともに神戸市東灘区北青木にある被告人の自宅に向か
い,阪神電車元町駅から同石屋川駅行きの普通電車に乗車して,同三宮駅でいった
ん下車し,同日午前零時51分ころ,同駅から梅田駅行き普通電車の先頭車両に乗
車した。
 当時,阪神電車は終夜運転を実施しており,車内は初もうで客等で混雑してい
た。本件被害者V(当時19歳)は,被告人とMらに続いて同じ車両に乗車した
が,その際,手にした携帯電話の画面を見つめながら,そのボタン操作に熱中して
いたため,後続の乗客の乗車の妨げとなっていた。
 これを見た被告人は,Vの左の肩口をつかみ,Vを進行方向左側の扉のある奥の
方に押して,他の人が入れないので,もっと奥に入るよう言った。Vは,被告人の
言動に立腹し,被告人に「何で押すねん。」等と不平を言いながら,今にも被告人
につかみかかりそうな気勢を示すなどした。
 その後,被告人とVは,同じ車両内に乗車していたものの,両者間に若干距離が
開いたため,以後車内で口論をすることはなかった。
 同日午前1時過ぎころ,被告人らの乗車する電車は,被告人の自宅の最寄り駅で
ある神戸市東灘区Aa丁目b番所在の阪神電気鉄道株式会社O駅に到着し,被告人
とMはそろって下車した。
 そうしたところ,Vは,自己の下車駅ではないにもかかわらず,続けて自らも下
車し,被告人らの後ろを歩いて追い,被告人とMが,下り階段の踊り場を過ぎたあ
たりにさしかかるや,突如,Mに対し,「彼女,どいてくれるか。」と声をかけ,
被告人の肩あたりを両手で押した。そのため,被告人は,階段下の通路まで落ち
て,階段下の床にうつぶせに寝転がるような格好で転倒し,Vは,階段を駆け下り
て,うつぶせの状態から起きあがろうとしていた被告人の顔面を1発殴りつけ,さ
らに,よろめきながら通路北側の壁に寄りかかった被告人の顔面や腹を,数回,一
方的に殴ったり,膝蹴りしたりした。さらに,Vは,被告人にしがみつくようにし
て,両者の間に割って入ったMの頭越しに被告人の顔を殴りつけるなどしていた
が,「おれは女は殴らへんからどいとって。」と言いながら,その肩口をつかんで
引っ張っても離れようとしないMに対しても,その右頬を手拳で数回殴った。
 その後,被告人は,Mを被告人の右側に押し出し,Vと一対一でつかみ合う形と
なり,そのうち,被告人とVの位置関係は逆転し,Vが壁に背を向けるような状況
となり,両者の胸が密着するような体勢となった。
 このような状況下,被告人は,前日の平成12年12月31日に自宅を出た際,
護身用にコートの右ポケットに忍ばせて携帯していたバタフライナイフを,右手で
取り出し,刃を出した。
(犯罪事実)
 被告人は,平成13年1月1日午前1時10分ころ,前記阪神電気鉄道株式会社
O駅構内において,
第1 前記のとおり,Vから,階段中程から下に突き落とされ,さらに顔面等を殴
打,膝蹴りされた上,なおも左腕をつかまれるなどされたので,自己の身体を防衛
するため,防衛の程度を超え,とっさにVが死に至るもやむを得ないと決意し,携
帯していたバタフライナイフ(刃体の長さ約7.9センチメートル,平成13年押
第31号の1)を右手に持ち,Vの左前胸下部及び上腹部等を少なくとも2回突き
刺し,よって,同日午前1時15分ころ,同所において,Vを心臓刺創による心嚢
タンポナーデにより死亡させ,もって,人を殺害した。
第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,上記バタフライナイフ1本
(折りたたみ式のナイフであって,刃体の幅約1.7センチメートル,刃体の厚み
約0.3センチメートル,開刃した刃体をさやに固定させる装置を有する。)を携
帯した。
(証拠の標目)
省略
(事実認定の補足説明)
 弁護人は,判示第1の殺人の犯行において,被告人は,被害者Vに対する殺意を
有していなかった旨主張し,被告人もこれに沿う供述をするので,以下検討する。
 関係証拠によれば,本件犯行に使用された凶器は,刃体の長さ約7.9センチメ
ートル,刃体の幅約1.7センチメートル,刃体の厚み約0.3センチメートル,
開刃した刃体をさやに固定させる装置を有する片刃の先鋭な折りたたみ式ナイフ
で,バタフライナイフと称されるものであって,高い殺傷能力を有していること,
被告人は,10年ほど前に上記バタフライナイフを購入して以来,自ら研磨するな
どしていたことから,上記バタフライナイフの形状,能力を十分認識していたこ
と,被告人は,上記バタフライナイフを右手に順手に持ち,自らと相対し,頭と頭
を付き合わせて押し合うような形でもみ合っていたVに対し,自らの右腕を振り子
のようにして,少なくとも2回突き刺しており,このような位置関係及び状況下に
おいては,当然,前胸部から上腹部にかけての身体の枢要部に上記バタフライナイ
フが刺入するものであること,現にVは,被告人の上記刺突行為によって,致命傷
となった左前胸下部の刺創(刺創管の深さ約7センチメートルないし12センチメ
ートル)や,上腹部刺切創(刺創管の深さ約8センチメートルないし9センチメー
トル)等の傷害を負っていることからすると,本件当時,上記バタフライナイフの
刃をストッパーで固定していなかったとはいえ,上記バタフライナイフが相当な勢
いで刺突されたであろうことなどが認められ,これらの凶器の形状,性能,被告人
のこれに対する認識,犯行態様,傷害の部位,程度等の諸事情を総合すると,被告
人がVに対して殺意を有していたことは,優に認定することができる。
(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は刑法199条に,判示第2の所為は銃砲刀剣類所持等
取締法32条4号,22条にそれぞれ該当するところ,各所定刑中判示第1の罪に
ついては有期懲役刑を,判示第2の罪については懲役刑をそれぞれ選択し,以上は
刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第1
の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人
を懲役3年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中480日をその刑に算入
し,押収してあるバタフライナイフ1本(平成13年押第31号の1)は,判示第
1の殺人の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,
2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書
を適用して被告人に負担させないこととする。
(弁護人の主張に対する判断)
1 弁護人は,①被告人の判示第1の犯行は,被害者Vからの急迫不正の侵害に対
する過剰防衛に該当する,②判示第1の犯行当時,被告人は心神耗弱の状態であっ
た旨主張し,被告人もこれに沿う供述をするので,以下順に検討する。
2 ①過剰防衛の主張について
被告人が判示第1の犯行に至った経緯は判示のとおりであり,Vの被告人に対
する暴行は,被告人の予期しなかったものであり,このようなVの攻撃は,被告人
に対する急迫不正の侵害というべきである。
そして,被告人のVに対する攻撃は,Vから一方的に殴る蹴るの攻撃を受けた
ことに対応してなされたものであり,被告人がVに対して積極的に加害行為に出た
と認めるに足りる証拠はないから,被告人のVに対する攻撃は,Vの攻撃から自己
の身体を防衛する意思の下になされた反撃行為であったと認められる。
しかしながら,被告人のVに対する反撃行為は,判示のとおりであり,Vの攻
撃が素手でなされていることからすると,Vの被告人への攻撃に対する防衛行為と
しては,その防衛に必要な程度を逸脱しているものといわざるを得ない。
したがって,被告人の判示第1の犯行は,過剰防衛行為と認められ,弁護人の
この点に関する主張は理由がある。
3 ②心神耗弱の主張について
(1) 本件犯行前後の状況等
被告人の供述は,供述態度が誠実であって,その内容に若干記憶の変遷があ
るもののおおむね一貫しており,関係証拠から認められる事実と格別異なる点はな
いことなどから,おおむね信用できるものであるところ,このような被告人の供述
を含む関係証拠によれば,先に判示した事実に加え,本件犯行前後の状況等に関し
て,おおむね次のような事実が認められる。
ア 被告人の通院歴等
被告人は,専門学校を卒業した後,数度の転職を経て,平成10年7月こ
ろから,家屋の補修をする会社に勤務していたが,抑うつ症状を訴え,平成12年
9月から,Sメンタルクリニックに通院し,うつ病あるいはそううつ病の診断を受
け,抗うつ剤,抗不安剤等の投与を受け,同年11月ころからは,会社を休職して
いた。
イ 本件犯行前の状況等
被告人は,本件犯行前日である平成12年12月31日,朝から自宅で赤
ワインを300ミリリットルほど飲み,同日午後3時過ぎころ,自宅を出た。
被告人は,自宅を出る際,護身用として,ふだん自宅の台所の柱に掛けて
あった本件犯行の凶器のバタフライナイフを,着用していた黒色革製ハーフコート
の右外ポケットに入れて携帯することとした。
被告人は,同日午後5時ころ,知人の経営する洋服店「B」に行き,同店
経営者らとともに缶ビールを3本くらい飲んだ後,以前注文してあったトレーナー
を受け取って,同日午後8時ころ同店を出た。
その後,被告人は,Mの勤務先であるショットバー「C」に行き,同店で
酒を飲みながら,Mの勤務が終わるのを待ち,同日午後9時にMが勤務を終えた後
も,同日午後11時45分ころまで,Mとともに,同店で,飲酒を続けた。被告人
は,「C」において,カンパリホット2杯,リキュール1杯,ラム酒お湯割り1杯
の合計4杯を飲むとともに,抗不安剤であるレキソタンを服用した。
ウ 本件犯行後の状況等
被告人は,本件犯行直後である平成13年1月1日午前1時10分ころ,
本件犯行現場に臨場した警察官の問いに対し,凶器のナイフは自分のものである,
Vがかかってきて,彼女の前で恥をかかされて腹が立って何回も刺した,ナイフ
は,絡まれたときの護身用に所持していた旨答えた。
加えて,このとき,被告人は,警察官に対して,免許証を提示し,住居変
更の点を含めて,自分の氏名,住居等を冷静に説明した。
(2) Y鑑定の要旨及びその信用性
ア 被告人の責任能力について鑑定した,医師Y作成の精神保健診断書(捜査
段階における簡易鑑定,弁護人請求証拠番号3はその写し。)及びY医師の公判廷
における供述の要旨(以下,両者をまとめて「Y鑑定」という。)は以下のとおり
である。
Y医師は,平成13年1月15日午後2時から午後3時30分までの間,
被告人と面接し,その際,被告人から,被告人は,本件犯行前から継続的に通院し
ていた精神科の薬を飲むと,やたら気が大きくなることを問題に思っていたこと,
本件犯行前日である平成12年12月31日には,缶ビール4本,カンパリ3杯,
ホットラム3杯,ボトル3分の1くらいのワインを飲んでいたこと,阪神電車三宮
駅では自分でも信じられないくらい気が大きくなっていたこと,本件前日に自宅を
出るとき,厄介なことに巻き込まれるかもしれないと思って,バタフライナイフが
目に付いたからポッとポケットに入れたこと,本件犯行時,何となく右手があいて
いると気付いたこと,本件犯行後に取調べを受けたことはある程度覚えているこ
と,刺したというよりは刺さったという感じであったこと,視界に入ったのはたる
んだセーターだったこと,本件犯行前に最後に飲んだ薬は抗不安剤であるレキソタ
ンだけだったことなどの供述を得た。
Y医師は,おおむね以上のような被告人との面接の結果に基づいて,被告
人は,処方された抗不安剤等の薬を服用しており,本件犯行時,薬物が被告人の血
中に残存していたこと,また,精神医学的に,抗そう作用のあるテグレトールを処
方されるようになっていたこと及び被告人との面接の状況から,被告人は,事件前
日,当日は軽そう状態であったこと,被告人は,本件犯行当時,その飲酒量から異
常酩酊の状態にあったとは考えられないが,アルコールと抗不安剤との相乗効果に
より,種々の精神変調,特に意識障害と脱抑制を来す可能性があること,本件犯行
当時,被告人に意識障害はなかったが,本件犯行は,被告人にとって例外的なでき
ごとであり,電車内でのけんかは脱抑制による行動と考えられること,被告人が本
来小心であることから,本件犯行は抑制の欠如した行為であること,被告人は,妄
想や幻覚に支配された状態ではなかったことなどから,本件犯行は,軽そう状態の
脱抑制と,抗不安剤とアルコール併用による脱抑制が加わった状態での犯行であ
り,本件犯行当時,被告人の理非弁識及び行動制御能力が完全に失われていたとは
考えられず,理非を弁識する能力よりも,弁識に基づいて行動を制御する能力がよ
り侵されていたが,いずれも,その程度は,「著しく」というより軽いものと判断
した。
イ このようなY鑑定の信用性について検討すると,Y医師は精神科を専門と
し,これまで多数の精神鑑定の経験を有すること,Y鑑定の依拠する事実は,前記
(犯行に至る経緯)及び(1)の当裁判所の認定事実と,飲酒量の点等について細かい
食い違いがあるものの,特段異なる点はないこと,その判断過程及び内容に格別不
自然・不合理な点はないことなどから,Y鑑定は十分信用することができる。
(3) 結論
そうすると,本件犯行状況,本件犯行に至る経緯,本件犯行前後の状況,信
用できるY鑑定の結果等を総合すると,被告人は,判示第1の犯行当時,理非弁識
能力及び行動制御能力は相当侵されていたものの,心神耗弱の状態に至る程度まで
侵されていなかったものと認められるから,弁護人の心神耗弱である旨の主張は理
由がない。
(量刑の理由)
1 本件は,被告人が,混雑した電車内で,携帯電話の操作に熱中して,他の乗客
の乗車の妨げとなっていた被害者Vにその旨注意したところ,下車後,それを逆恨
みした被害者から突如,一方的に殴る蹴るの暴行を受け,所持していたバタフライ
ナイフで被害者を刺して死亡させた殺人の事実(判示第1),及びその際バタフラ
イナイフを所持していたという銃砲刀剣類所持等取締法違反の事実(判示第2)か
らなる事案である。
2 被告人は,被害者Vに対し,自ら研磨していた鋭利なバタフライナイフを用い
て,その上半身を少なくとも2回突き刺し,そのうち1回がVの心臓右心室に刺入
して,致命傷となったものであり,被告人の判示第1の犯行態様は危険かつ悪質で
ある。
Vは,高校中退後,大学入学資格検定に合格して,本件被害当時大学1回生で
あり,その前途に大きな希望を持っていたと思われるのに,本件によって,駅の地
下通路で,ほぼ即死の状態で19年の人生を終えることになり,本件によって生じ
た結果は極めて重大であるばかりか,このときVが抱いたであろう苦痛,無念さは
大きかったものと推測される。
さらに,被告人は,いとも安易に危険性の高い本件バタフライナイフを家から
持ち出して所持していたものであり,そのことが本件殺人の結果に結びついている
ことを考えると,その犯情はまことに悪く,この点は,被告人の刑事責任を検討す
るに当たり,大きな要素と考えざるを得ない。
このような諸事情に加え,本件が,元日の未明に,住宅地の駅構内で発生した
殺人事件であり,周辺住民を含めた社会全体に相当の恐怖感,不安感をもたらした
であろうことなどに照らすと,被告人の刑事責任には重いものがある。
3 他方,本件は,被告人が,混雑した電車内で他の乗客の迷惑になっていたVに
対し,奥に詰めるよう社会的に相当な注意を加えたところ,それに逆上したVが,
被告人らに対し挑発的な言動を取ったことに端を発したものであり,しかも,この
ときには他の乗客の仲裁などによって口論は収まったにもかかわらず,その後,V
は,下車する必要のないO駅で被告人らに続いて下車し,駅構内で突如,被告人へ
の判示暴行に及んでいることからすると,被害者は,被告人からの注意を逆恨み
し,被告人に仕返しをするためにわざわざ必要のない駅で下車したものと認められ
るのであって,こうした本件犯行の経緯をみると,Vが本件犯行の原因を作った面
が大きいことは明らかである。
次に,前記のとおり,本件犯行は過剰防衛に当たるところ,いま少しその詳細
をみると,Vの被告人への暴行は,突如,被告人を階段から突き落とした上,階段
下に転倒した被告人に対し,更に一方的に殴る蹴るの暴行を加えたものであって,
凶器こそ使用していないものの,その攻撃は手加減のない強度なものであったこ
と,被告人は,Vからこうした攻撃を加えられることは予期しておらず,いわれの
ないVの攻撃に対し,強い恐怖を感じ自己の身体を防衛するため反撃することは無
理もないといえること,被告人がVともみ合いの状態になっていたのみならず,暴
行を止めに入った婚約者のMに対してまでVが暴行を加えたこと,さらに,同駅に
は駅員はおらず,他の乗降客もかかわり合いになるのを恐れて行き過ぎる状況下で
は,被告人に対し,反撃することなく現場から逃げ出したり,第三者に助けを求め
るといった他の手段を期待するのは,現実的には容易とはいえなかったことなどが
指摘しうるのであって,防衛の程度を超えたとはいえ,本件犯行状況において,被
告人に同情すべき点は少なくない。
そして,前記の本件犯行の経緯や犯行状況からすると,本件においてVの落ち
度は相当大きい。
また,被告人は,前述のとおり,心神耗弱の状態ではなかったものの,薬物及
びアルコールの影響により,犯行時,少なからず責任能力が減じていたと認めら
れ,被告人に対する責任非難に当たっては,この点を考慮せざるを得ない。
4 しかしながら,被告人は,被害者に反撃するにしても,まず,ナイフを示して
被害者を威嚇するとか,その腕や足に切りつけてひるませるとか,他に取るべき手
段があったことは否定できず,被告人は,被害者ともみ合った体勢の中で,少なく
とも,右手で本件バタフライナイフを取り出し,その刃を開いて準備する余裕があ
ったのであるから,それらの手段を取ることを全く期待できる状況になかったとは
いえない。ところが,被告人は,被害者が被告人の攻撃を認識するいとまを全く与
えないまま,いきなり被害者の胸部等を鋭利なナイフで突き刺すという致命的な行
為に及び,その結果,被害者を即死に近い状態で死亡させたものであるから,その
点において,強い非難を免れない。
また,本件では,被告人側から被害者の遺族に対して3320万円が支払われ
て示談が成立しており,この点は,被告人側としてなし得る限りの慰謝の措置を講
じたものとして,高く評価することができるが,未だ19歳の青年であった被害者
を失った遺族の嘆きが,全ていやされるものでもなく,遺族らは,依然,被告人に
対し,処罰を望んでいる。
5 以上のとおり,本件においては,被害者の落ち度が大きな要因となっているこ
とは明らかであるとはいえ,被害結果の重大性に加え,被告人は,あえて危険な刃
物を携帯していて,それが本件の重大な結果を引き起こしたこと,被告人には,本
件犯行当時,なお他の行為を期待し得たことなどに照らすと,すでに指摘した有利
な情状の他,被告人は,約1年8か月に及ぶ身柄拘束期間中に,自らの犯行の重大
性について認識を深め,心から反省していること,本件犯行に至るまで相応の社会
生活を送ってきたもので,さしたる前科はないことなど,被告人のために酌むべき
情状を十分考慮しても,相応の処罰は免れない。
そこで,以上の諸事情を総合考慮し,主文の刑を定めた。
(求刑・懲役6年及びバタフライナイフの没収)
平成14年8月30日
神戸地方裁判所第4刑事部
裁判長裁判官   笹野明義
裁判官   浦島高広
裁判官   谷口吉伸

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