弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 本件上告の理由は別紙「上告理由書」の通り、これにたいする当裁判所の判断は
次の通りである。
 第一、二、三点について、
 原判決理由の文章は相当混乱しているから、原判決を攻撃しようとすれば、所論
のごとく主張してみることになろうが、原判示をよく読んでみれば所論は結局原判
示の誤解もしくは曲解であつて、採用に値しないのである。しかし、それはとにか
くとして原判決は、本件(ロ)の建物が本件交換契約当時上告人Aの所有名義でな
かつたということのほかに、本件交換契約当時右建物は上告人Aの所有ではなく、
当時同上告人は所有者Bにたいして右建物の買受申込をしてあつただけで、まだ売
買契約は成立していなかつたとの事実を証拠によつて確定し、本件交換契約は全く
他人の物の所有権を交換の目的としたものであり、上告人Aはこの所有権を取得し
て被上告人に移転すること能わざる場合であるとして、民法第五百六十一条、第五
百五十九条によつて契約解除をなし得べきものであると説示している。従つて、上
告人の所論が、かりに、原判示の誤解ないし曲解でないとしても、被上告人の交換
契約解除の主張は理由あることになり、原判決の主文にさしひびきを与えるもので
はない。であるから上告人所論の誤れることを説明する手数は省略する。
 上告理由第四点について。
 論旨引用の原判示に明かなごとく、本件の契約は、上告人Aが原判決目録(ロ)
の建物の所有権を被上告人に移転することを約し、これにたいして被上告人は原判
決目録(イ)の建物の所有権を上告人Aに移転することを約し、右(イ)(ロ)の
建物の価額の差を埋めあわせるために、上告人Aから被上告人にたいして金六万五
千円を支払うことを約したこと、当事者間に争のないところである。即ち本件契約
は、建物の所有権を互に相手方に移転すべき旨を約した民法上の交換契約である。
しかして、交換契約において一方の当事者が他の権利と共に金銭の所有権を相手方
に移転すべき旨約すること、本件契約のごときも民法の予想するところであ<要旨>
つて(民法第五百八十六条第二項参照)かような場合に売買の目的物に関する民法
の規定を準用する場合の交換の目的物は金銭の所有権以外の権利のみを意味
するものと解するのが相当である。従つて右(ロ)の建物の所有権が上告人Aに属
せず、被上告人に移転することができないと確定された本件については、民法第五
百六十三条を準用すべきではなく同法第五百六十一条を準用すべきものである。こ
れに反する本論旨はとうてい採用することができない。
 上告理由第五点について。
 上告理由第四点について説明した通り、本件については民法第五百六十一条を準
用すべく、同法第五百六十三条を準用すベきものでないから、この第五百六十三条
を準用すべきことを前提とする本論旨は理由なきこと特に説明を要しない。
 以上の通り、各論点いずれも採用しがたいから本件上告は理由なきものと認むべ
く、よつて民事訴訟法第四百一条第八十九条に従い、主文の通り判決する。
 (裁判長判事 中島登喜治 判事 小堀保 判事 藤江忠二郎)

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