弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人鍛冶利一の上告趣意第一点は違憲をいうが、記録を精査しても、所論Dの
検事調書及び証人尋問調書が強制による任意性なきものとは認められず、所論違憲
の主張は前提を欠く。
 同第二点は違憲をいうが、記録を精査するとき、所論Eの検事調書及び証人尋問
調書が任意性なき供述であると確認するに足る証拠はなく、又それが不当に長く拘
禁された後の自白といえないとする原判示は肯認できるから、所論違憲の主張は前
提を欠く。
 同第三点のうち違憲をいう点については、刑訴二二七条二二八条により弁護人の
反対尋問の機会を与えないで作成された所論証人尋問調書を証拠とすることが憲法
三七条二項に違反するものでないことは当裁判所判例(昭和二五年一〇月四日大法
廷決定、刑集四巻一〇号一八六六頁以下参照)に照らし明らかであつて採るを得ず、
その余は事実誤認の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第四点は量刑の非難で刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 弁護人鍛治利一、同鈴本惣三郎連名の上告趣意は違憲をいうも、所論各証人尋問
調書は刑訴二二七条、二二八条によるものであつて、その証人尋問につき、被告人、
被疑者は弁護人の立会を任意にした同二二八条二項の規定が憲法三七条二項に違反
しないこと及び刑訴二二八条二項により被疑者、弁護人等に反対尋問の機会を与え
ないで作成された証人尋問調書を証拠とすることが憲法三七条二項に違反しないこ
とは当裁判所の判例(昭和二七年六月一八日大法廷判決、刑集六卷六号八〇〇頁以
下及び前掲大法廷決定参照)とするところである。従つて所論は採るを得ない。
 弁護人鈴木惣三郎、同本間大吉連名の上告趣意Aその一は違憲をいうが、刑訴二
二七条により共犯者を他の共犯者の証人として尋問しても、同証人は自己に不利益
な供述を拒み得るもので、これを強制されないものであるから、憲法三八条一項違
反の前提を欠くものであり、
 同Aその二は違憲をいうが、所論は右Aその一での主張乃至は単なる刑訴法違反
の主張を前提とするものであり、且つ刑訴二二七条、二二八条の証人尋問に立会う
檢察官には同一五七条三項の準用により証人尋問権があると解されるから、所論は
前提を欠くものであり、
 同Aその三は違憲をいうも、刑訴二二七条、二二八条による証人尋問は憲法八二
条にいわゆる裁判の対審に当らぬこと当裁判所判例(昭和二二年一一月八日大法廷
決定、刑集二巻一二号一四九八頁以下参照)の趣旨に徴し明らかであるから、所論
違憲の主張は前提を欠く。
 同Bは単なる刑訴法違反の主張、同Cは事実誤認の主張であつて、いずれも刑訴
四〇五条の上告理由に当らない。
 弁護人本間大吉の上告趣意(1)、(2)は違憲をいうが、所論各供述調書が(
1)所論の様に強制、脅迫により作成されたものであると確認するに足る資料はな
く、又(2)所論の様に供述者が被告人の仕打に憤慨した事実があつたとしても、
捜査官においてこれを利用して供述と強いたと認めるに足る証拠はなく、又これに
よつて直ちに被告人を共犯者とする右各供述調書の任意性にまで影響を来すものと
は認め得ない。従つて所論は前提をく。
 同(3)は違憲をいうが、記録に徴すると、所論Eの供述調書の供述を以て不当
に長く勾留された後の自白といい得ないとする原判示に肯認でき、所論違憲の主張
は前提を欠く。その余の論旨は単なる訴訟法違反の主張に過ぎない。被告人本人の
上告趣意は事実誤認の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は弁護人鍛治利一の上告趣意第三点、弁護人鍛冶利一、同鈴木惣三郎連
名の上告趣意について裁判官奥野健一の補足意見がある外、全裁判官一致の意見に
よるものである。
 裁判官奥野健一の前記論点に対する補足意見は次のとおりである。
 憲法三七条二項において「すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ
……」とは反面被告人の反対尋問にさらされない証人の供述によつて有罪とされな
いことを保障するものであり、その反対尋問とは証人の供述の際に被告人を立ち会
させ審問する機会を与えることを要するのが原則であると解する。従つて、証人尋
問当時被告人に審問の機会を与えなかつた尋問調書に証拠とすることは原則として
許されないものと解すべきであるが、たゞ後の公判期日において右の供述者を証人
として尋問し、被告人にその供述者に対し前記供述部分について充分反対尋問の機
会が与えられた場合には結局反対尋問の機会が与えられたものということができる
からこれを証拠とすることは違憲とはいえないと考える。
 本件において各所論の刑訴二二七条、二二八条による証人尋問調書の供述者D、
Eは一審公判で証人として尋問され、その際右証人尋問調書の内容に亘つても、弁
護人等より反対尋問にさらされていることは記録上明白であるから、この意味で又
このように運用されることにおいて、所論違憲の主張を排斥する結論に賛成する。
  昭和三六年二月二四日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
 裁判長裁判官小谷勝重は退官につき署名押印することができない。
            裁判官    藤   田   八   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛