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平成26年12月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請求事件
(口頭弁論の終結の日平成26年10月23日)
判決
東京都千代田区〈以下略〉
原告株式会社NTTドコモ
同訴訟代理人弁護士大野聖二
同小林英了
同本橋たえ子
同訴訟代理人弁理士田中久子
ドイツ連邦共和国プラッハツークシュピッツシュトラーセ15
被告アイピーコムゲゼルシャフト
ミットベシュレンクテル
ハフツングウントコンパニー
コマンディートゲゼルシャフト
同訴訟代理人弁護士片山英二
同服部誠
同中村閑
同牧恵美子
同黒田薫
同岩間智女
同村田真一
同補佐人弁理士相田義明
主文
1原告が別紙1物件目録記載の通信サービスを提供したことについて,
被告が原告に対して特許第4696179号の請求項9及び22に係
る特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権又は不当利得返還請求権
を有しないことを確認する。
2訴訟費用は被告の負担とする。
3この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1請求
主文第1項,第2項同旨
第2事案の概要
本件は,「FOMA」という名称の携帯電話通信サービスを提供する原告
が,主文第1項掲記の特許権を有する被告に対し,上記サービスを提供した
行為は上記特許権を侵害するものではないと主張して,不法行為に基づく損
害賠償債務又は不当利得返還債務の不存在確認を求める事案である。
1前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により
容易に認定することができる事実)
当事者
原告は,携帯電話による通信サービスの提供等を業とする株式会社である。
被告は,携帯電話による通信に関する特許権の買収及びそのライセンス活
動を業とするドイツ連邦共和国法人である。
被告の特許権
ア被告は,次の特許権(以下「本件特許権」という。また,その特許出願
の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」という。)の特許権
者である。
特許番号特許第4696179号
出願日平成22年9月17日(特願2010-209728)
登録日平成23年3月4日
発明の名称アクセス権限を通信網の少なくとも1つの移動局に設
定する方法,移動局,移動局として構成された通信網
の作動方法,および,通信システム
イ本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項9の記載は,次のとおりで
ある(以下,当該発明を「本件発明1」という。また,ランダム数又は
擬似ランダム数を併せて「ランダム数等」ということがある。)。
「少なくとも1つの基地局(100)を備える,移動無線網として構成され
た通信網の作動方法であって,
前記基地局は,少なくとも2つの移動局(5,10,15,20)の存
在する無線セルを展開し,
前記基地局(100)は,前記少なくとも2つの移動局(5,10,1
5,20)に情報信号と,当該情報信号とともにアクセス権限データ(5
5)を送信し,
当該情報は,どの移動局(5,10,15,20)に対して,複数の移
動局により共通に使用可能通信チャネル(30)上で基地局に送信するた
めの権限が割り当てられているかという情報を含んでいる方法において,
前記アクセス権限データ(55)は,アクセス閾値(S)に対するアク
セス閾値ビット(S3,S2,S1,S0)と,複数の移動局(5,10,
15,20)のユーザクラスに対するアクセスクラス情報(Z3,Z2,
Z1,Z0)を含んでおり,
前記アクセス権限データ(55)は,共通に使用可能な通信チャネル
(30)への移動局(5,10,15,20)によるアクセスを,次のよ
うに許可するよう作成されており,すなわち所属のアクセスクラスビット
が第1の値を有するユーザクラスに所属する移動局が,アクセス閾値
(S)に関係なく通信チャネルにアクセスすることができるように作成さ
れており,
所属のアクセスクラスビットが第2の値を有するユーザクラスに所属す
る移動局は,通信チャネルへの当該移動局のアクセス権限を検出するため
に,前記アクセス閾値(S)がランダム数または擬似ランダム数(R)と
比較されるアクセス閾値評価を実行しなければならず,少なくとも1つの
移動局(5,10,15,20)の通信チャネルへのアクセス権限が比較
結果に依存して割り当てられることを特徴とする方法。」
ウ本件発明1は,以下の構成要件に分説される(以下,各構成要件を「構
成要件A」などという。)。
A少なくとも1つの基地局(100)を備える,移動無線網として構成
された通信網の作動方法であって,
B前記基地局は,少なくとも2つの移動局(5,10,15,20)の
存在する無線セルを展開し,
C前記基地局(100)は,前記少なくとも2つの移動局(5,10,
15,20)に情報信号と,当該情報信号とともにアクセス権限データ
(55)を送信し,
D当該情報は,どの移動局(5,10,15,20)に対して,複数の
移動局により共通に使用可能通信チャネル(30)上で基地局に送信す
るための権限が割り当てられているかという情報を含んでいる方法にお
いて,
E前記アクセス権限データ(55)は,アクセス閾値(S)に対するア
クセス閾値ビット(S3,S2,S1,S0)と,複数の移動局(5,
10,15,20)のユーザクラスに対するアクセスクラス情報(Z3,
Z2,Z1,Z0)を含んでおり,
F前記アクセス権限データ(55)は,共通に使用可能な通信チャネル
(30)への移動局(5,10,15,20)によるアクセスを,次の
ように許可するよう作成されており,すなわち
F1所属のアクセスクラスビットが第1の値を有するユーザクラスに
所属する移動局が,アクセス閾値(S)に関係なく通信チャネルに
アクセスすることができるように作成されており,
F2所属のアクセスクラスビットが第2の値を有するユーザクラスに
所属する移動局は,通信チャネルへの当該移動局のアクセス権限を
検出するために,前記アクセス閾値(S)がランダム数または擬似
ランダム数(R)と比較されるアクセス閾値評価を実行しなければ
ならず,少なくとも1つの移動局(5,10,15,20)の通信
チャネルへのアクセス権限が比較結果に依存して割り当てられる
Gことを特徴とする方法。
エ本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項22の記載は,次のとおりで
ある(以下,当該発明を「本件発明2」といい,本件発明1と併せて「本
件各発明」という。)。
「移動無線網として構成された通信網と,無線セルを展開する少なくとも1
つの基地局(100)と,シグナリングチャネル(25)とを有する通信シ
ステムであって,
前記シグナリングチャネル(25)を介して基地局(100)が,前記
無線セル内に存在する移動局(5,10,15,20)に情報信号を送信
し,
これにより1つのユーザクラス(35,40)に所属する個々の移動局
(5,10,15,20)には,複数の移動局により共通に使用可能な通
信チャネル上で送信するために,どの権限が対応するユーザクラス(35,
40)に割り当てられているかが情報通知される通信システムにおいて,
基地局は情報信号とともにアクセス権限データ(55)を送信し,
該アクセス権限データは,アクセス閾値(S)に対するアクセス閾値ビ
ット(S3,S2,S1,S0)と,複数の移動局(5,10,15,2
0)のユーザクラス(35,40)に対するアクセスクラス情報(Z3,
Z2,Z1,Z0)を含んでおり,
前記アクセス権限データ(55)は,所属のアクセスクラスビットが第
1の値を有するユーザクラスに所属する移動局が,アクセス閾値(S)に
関係なく通信チャネルにアクセスすることができるよう作成されており,
所属のアクセスクラスビットが第2の値を有するユーザクラスに所属す
る移動局は,通信チャネルへの当該移動局のアクセス権限を検出するため
に,前記アクセス閾値(S)がランダム数または擬似ランダム数(R)と
比較されるアクセス閾値評価を実行しなければならず,少なくとも1つの
移動局(5,10,15,20)の通信チャネルへのアクセス権限が比較
結果に依存して割り当てられることを特徴とする通信システム。」
オ本件発明2は,以下の構成要件に分説される(以下,各構成要件を「構
成要件A」などという。また,本件発明1の構成要件と併せて摘示すると
きに「各構成要件A」などということがある。)。
A移動無線網として構成された通信網と,無線セルを展開する少なくと
も1つの基地局(100)と,シグナリングチャネル(25)とを有す
る通信システムであって,
B前記シグナリングチャネル(25)を介して基地局(100)が,前
記無線セル内に存在する移動局(5,10,15,20)に情報信号を
送信し,
Cこれにより1つのユーザクラス(35,40)に所属する個々の移動
局(5,10,15,20)には,複数の移動局により共通に使用可能
な通信チャネル上で送信するために,どの権限が対応するユーザクラス
(35,40)に割り当てられているかが情報通知される通信システム
において,
D基地局は情報信号とともにアクセス権限データ(55)を送信し,
E該アクセス権限データは,アクセス閾値(S)に対するアクセス閾値
ビット(S3,S2,S1,S0)と,複数の移動局(5,10,15,
20)のユーザクラス(35,40)に対するアクセスクラス情報(Z
3,Z2,Z1,Z0)を含んでおり,
F前記アクセス権限データ(55)は,
F1所属のアクセスクラスビットが第1の値を有するユーザクラスに
所属する移動局が,アクセス閾値(S)に関係なく通信チャネルに
アクセスすることができるよう作成されており,
F2所属のアクセスクラスビットが第2の値を有するユーザクラスに
所属する移動局は,通信チャネルへの当該移動局のアクセス権限を
検出するために,前記アクセス閾値(S)がランダム数または擬似
ランダム数(R)と比較されるアクセス閾値評価を実行しなければ
ならず,少なくとも1つの移動局(5,10,15,20)の通信
チャネルへのアクセス権限が比較結果に依存して割り当てられる
Gことを特徴とする通信システム。
原告の行為
ア原告は,遅くとも平成23年3月4日(本件特許権の設定登録日)以降,
別紙1物件目録記載の通信サービス(以下「原告サービス」という。)を
提供している。
イ原告サービスは,W-CDMA(WidebandCodeDivisionMultiple
Access)方式に準拠した携帯電話を使用することができるネットワークを
提供するものであり,第3世代携帯電話システム等の普及促進と付随する
仕様の世界標準化を目的とする複数の団体のプロジェクトである3GPP
(ThirdGenerationPartnershipProject)に準拠している。
ウ3GPPは,ある基地局の配下の無線セル内に存在する複数の移動局
(携帯電話,無線電話等の端末。以下同じ。)がランダムアクセスチャネ
ル(RACH。複数の移動局と基地局の間で共通に使用され,複数の移動
局によりランダムにアクセスされるチャネル。)にアクセスする際のアク
セスの衝突による過負荷を制御する仕様を,次のとおり定めている。
移動局は,優先度の高い五つの特別なアクセスクラスAC11~15
に割り当てられるものがあるほかは,0~9のACにランダムに割り当
てられており,これらの数値は,各移動局のSIM又はUSIM(以下,
これらを併せて「SIM等」という。)に記憶されている。
基地局は,配下の無線セル内に存在する各移動局に対し,複数のシス
テム情報ブロックSIBで構成されるシステム情報を送信する。SIB
5には,AC-to-ASCマッピング及び持続スケーリングファクタ
ーsⅰが,SIB7には動的持続レベルNがそれぞれ含まれている。
AC-to-ASCマッピングは,ACとアクセスサービスクラスA
SCとの対応付けを示す情報であり,具体的には,下記のようにSIB
5における七つの情報要素IEによって示され,移動局は,受信したA
C-to-ASCマッピングから,SIM等に記録されたACに対応す
る自局のASCを求める。ASCには,0~7の八つが存在し,ASC
=0が最高の優先度に,ASC=7が最低の優先度に対応する。
Nは,ASCの値に対応するPi(i=1~7)を求めるための持続
値P(N)に用いられる代数であり,1~8の値をとる。P(N)は,
P(N)=2-(N-1)
によって求められるところ,ASCとPiとの関係
は,次の表のとおりである。
上記のとおり,ASC=0のとき,Pi(=P0)は常に1となる。他
方,ASC=1のとき,Pi(=P1)は,送信されるNに基づき,P
(N)=2-(N-1)
により求められる。ASC=2~7のときは,Pi
(=P2~7)は,sⅰ及びNに基づきPⅰ=sⅰP(N)=sⅰ×2-(N-
1)
により算出される。sⅰは,0.1~1の値で表され,sⅰが送信さ
れていない場合には,sⅰの値が1であることを意味する。
移動局におけるRACHへのアクセスの可否は,次のフローチャート
のとおり判断される。
すなわち,移動局は0以上1未満のランダム数Rを発生させ,移動局
のASCに対応するPiの値が当該Rと比較され(上記図の②),Rが
Pi以下である場合に,移動局から「PHY-ACCESS-Req」
という信号が送信されてRACH送信手続が開始され(上記図の③),
移動局のRACHへのアクセス権限が付与されることになる。
i(=P0)は,Nの値にか
かわらず常に1となるので,P0は常にRより大きくなり,移動局はN
の値とは無関係にRACHへのアクセス権限が付与される。
また,ASC=1のときは,Pi(=P1)は,P(N)=2-(N-1)
により求められ,Nの値によって0~1の値となる。ASC=2~7の
ときは,Pi(=P2~7)は,sⅰP(N)=sⅰ×2-(N-1)
により求め
られ,sⅰ及びNの値によって0~1の値となる。移動局のRACHへ
のアクセス権限は,これらのP1~7とRとの比較により判断される。
以上によれば,3GPPの下では,ASC=0のときは,PiがNの
値にかかわらず常に1となり,移動局はNの値とは無関係に常にRAC
Hへのアクセス権限が付与される。
また,ASC=1の場合において,●(省略)●
他方,ASC=2の場合において,●(省略)●
(乙7~9)
エ原告は,RACHへのアクセス制御に関する原告サービスの通信網の作
動方法(以下「原告方法」という。)又は通信システム(以下「原告シス
テム」といい,原告方法と併せて「原告方法等」という。)が別紙2「原
告サービスの構成目録」記載のとおりであると主張している。また,原告
方法等においては,SIB5に含まれるsⅰの値としては0.5が送信さ
れている。
仮に原告方法等の構成が別紙2記載のとおりのものであるとすると,原
告方法等の下では●(省略)●
他方,原告方法等において●(省略)●また,原告方法等において●
(省略)●
確認の利益
被告が,原告に対し,原告サービスの提供が本件特許権の侵害に当たると
主張して実施料相当額の支払ないし損害賠償を求めているのに対し,原告は
これを争っている。ただし,被告は具体的な請求金額を明らかにしていない。
2争点
被告は,主位的には,仮に原告方法等の構成が別紙2記載のとおりのもの
であるとしても,●(省略)●から,原告方法等は本件各発明の構成要件を
充足する旨主張する(以下,この主張を「主位的主張」という。)。これに
対し,原告は,●(省略)●ような構成は,各構成要件C~F2を充足しな
いと主張する(その余の各構成要件の充足性は争っていない。)。
また,被告は,予備的主張として,仮に各構成要件C~F2の解釈が原告
の上記主張のとおりであるとしても,原告方法等の下では,●(省略)●よ
うな構成とはいえないから各構成要件C~F2を充足する旨主張し(以下,
①及び②の主張をそれぞれ「予備的主張1」及び「予備的主張2」という。
なお,いずれの主張においても,原告方法等のその余の構成は別紙2のとお
りであることが前提とされている。),原告はこれを争っている。
したがって,本件の争点は,次のように整理することができる。
充足論(各構成要件C~F2の充足性)
ア主位的主張の当否
イ予備的主張1の当否
ウ予備的主張2の当否
損害論
3争点に関する当事者の主張
充足論(各構成要件C~F2の充足性)
ア主位的主張の当否
(被告の主張)
別紙2の原告サービスの構成を前提とすると,別紙3「被告の主位的主
張」のとおり,原告方法等は各構成要件C~F2を充足する。
なお,原告は後記(原告の主張)のとおり,各構成要件●(省略)●を
限定的に解釈するが,●(省略)●は特許請求の範囲において限定されて
おらず,これを●(省略)●構成も排除されていない。
そのことは,①本件特許権の特許請求の範囲の請求項19に,本件発明
1の従属項として,「共通に使用可能な通信チャネル(30)へのアクセ
スは,移動局の特定のユーザクラスに対してだけ一時的にまたは持続的に
優先して許可される請求項9から18までのいずれか1項に記載の方
法。」が開示されており,●(省略)●構成が開示されていること,②本
件明細書には,アクセス閾値はインターバル{0,1...n+1}から成
り,ランダム数等はインターバル{0,1...n}から成る構成(段落
【0027】),すなわち,●(省略)●構成が開示されていること,③
本件明細書に「優先クラスに所属しない移動局が優先閾値Pとの比較を実
行せずに,RACH30へのアクセスを許可するために単に,アクセス閾
値Sより大きいか,または等しいランダム数または擬似ランダム数Rを引
き算することも可能である。」との記載があり(段落【0029】),●
(省略)●構成が開示されていること,④本件明細書には,ランダム数等
がアクセス閾値より大きいか等しい場合にアクセスが許容され,そうでな
い場合はアクセスが許容されないことが記載されているところ(段落【0
039】),●(省略)●こと,⑤本件明細書の実施例(段落【004
2】及び図4)において,評価ユニット60が図4のフローチャートに従
って作動した結果,アクセス閾値評価を実行するプログラム点215
(「ランダム数等≧アクセス閾値?」の判断が実行される。)で●(省
略)●ことからも明らかである。
(原告の主張)
●(省略)●
別紙2の原告方法等の構成によれば,原告方法等の下では,●(省
略)●されているとはいえない。
したがって,原告方法は,本件発明1の構成要件●(省略)●をいず
れも充足しない。また,原告システムは,本件発明2の構成要件●(省
略)●をいずれも充足しない。
イ予備的主張1の当否
(被告の主張)
原告方法等においては,●(省略)●することができる。そのことは,
①原告が原告方法等において●(省略)●ことを示すものとして行った実
験(甲16)が不適切な実験であり,原告は●(省略)●ことを示す証拠
を何一つ提出していないこと,②後記(原告の主張)のドメイン特定アク
セス制御(DSAC)が●(省略)●必要性がないとはいえないことから
も明らかである。したがって,原告方法等においては,●(省略)●こと
となり,各構成要件C~F2を充足する。
(原告の主張)
原告方法等においては,別紙2の5項のとおり,●(省略)●DSA
Cと呼ばれる技術(SIB3中に,音声とパケットというドメイン別に,
0~15の各ACが発信可であるか発信不可であるかを示すリストを含
ませて報知することにより,各移動局において音声又はパケットの発信
のための手順を開始させない技術)●(省略)●
ウ予備的主張2の当否
(被告の主張)
原告方法等においては,●(省略)●スケーリングファクターとしては
s2=0.5が送信されており,●(省略)●ことができる。そのことは,
①スケーリングファクターとしてs2=0.5が送信されていることは,
●(省略)●ことを推認させること,②原告は●(省略)●している合理
的理由を説明していないことからも明らかである。したがって,原告方法
等において●(省略)●こととなるから,原告方法等は各構成要件C~F
2を充足する。
(原告の主張)
原告方法等においては,●(省略)●
3GPPにおいて,ASC=0は緊急通報の場合又は同等の優先度を有
する理由での使用が予定されている●(省略)●
損害論
(被告の主張)
上記のとおり,原告方法等は本件各発明の技術的範囲に属するから,被
告は,原告に対し,本件特許権の侵害に基づく損害賠償請求権又は不当利
得返還請求権を有する。
(原告の主張)
争う。
第3当裁判所の判断

被告は,仮に原告方法等の構成が別紙2のとおりのものであるとしても,
●(省略)●から,原告方法等は各構成要件C~F2を充足する旨主張する。
しかしながら,各構成要件F2における●(省略)●に当たるとすること
はできないものと解するのが相当である。したがって,別紙2の原告方法等
を前提とすると,原告方法等は各構成要件●(省略)●を充足しないから,
被告の主位的主張は採用することができない。
その理由は,次のとおりである。
証拠(甲2)によれば,次の事実が認められる。
ア本件各特許の特許請求の範囲の記載をみると,本件発明1(移動無線
網として構成された通信網の作動方法に関する発明)及び本件発明2
(通信システムに関する発明)の各構成要件F・F1・F2は,無線セ
ル内の全ての移動局を,所属のアクセスクラスビットが第1の値を有す
るユーザクラス(以下「第1のユーザクラス」という。)に属する移動
局(以下「第1の移動局」という。)と,第2の値を有するユーザクラ
ス(以下「第2のユーザクラス」という。)に属する移動局(以下「第
2の移動局」という。)の二つに大別し,第1の移動局はアクセス閾値
に関係なく通信チャネルにアクセスすることができるようにされている
のに対し,第2の移動局が通信チャネルにアクセスするためには,アク
セス閾値がランダム数等と比較されるアクセス閾値評価を実行してその
比較結果に依存した割り当てがされなければならないという●(省略)
●ことが必須の構成とされている点で共通する。
なお,本件特許権に係る特許請求の範囲には,本件各発明以外の独立
項として請求項1の発明(アクセス権限を通信網の少なくとも一つの移
動局に設定する方法に関する発明)及び請求項6の発明(移動局に関す
る発明)が記載されているところ,これらの発明も,本件各発明と同様
に,移動局の所属するユーザクラスを二つに分け,●(省略)●ことが
必須の構成とされている。
イ本件明細書の発明の詳細な説明には,次の趣旨の記載がある。
本発明が解決しようとする課題は,移動通信網で作動する多数の移
動局が,遠隔通信チャネルを介して基地局に情報を送信する際,種々
の移動局からの通信が通信チャネル上で衝突する危険があることから,
そのような衝突を避け,移動局が基地局と通信できるようにするため,
移動局の通信チャネルへのアクセスが効率的に行えるようにするとこ
ろにある(段落【0004】)。
上記課題を解決するため,移動局の所属するユーザクラスを二つに
区分し,●(省略)●(段落【0005】~【0008】)。そして,
少なくとも一つの移動局の評価ユニットで,アクセス権限データが,
少なくとも一つの所定のユーザクラスに対するアクセスクラス情報を
備えるアクセス権限情報を含んでいるか否かが検査され,含んでいる
場合には,少なくとも一つの移動局が少なくとも一つの所定のユーザ
クラスに所属することを前提にして,少なくとも一つの移動局の通信
チャネルへのアクセスを,当該ユーザクラスに対するアクセスクラス
情報に依存して許可する。このようにして,移動局がアクセス閾値を
用いたランダム分配に基づき,当該通信チャネルへのアクセスが認め
られない場合であっても,所定のユーザクラスの移動局自体は遠隔通
信チャネルの使用が許可される。このようにして例えば,警察,消防
等の非常サービスの移動局をこのような所定のユーザクラスに割り当
てることができる。このユーザクラスはランダム分配に依存しないで
遠隔通信チャネルに優先的にアクセスすることができる(段落【00
11】)。
RACHの過負荷は,ネットワークプロバイダがRACHへのアク
セスを個々の移動局に対して所期のように制限することによって回避
することができる。ここでRACHへのアクセスは,例えば移動局の
所定のユーザクラスに対してだけ一時的に又は持続的に優先して許容
される。ネットワークプロバイダは,個々の移動局に対し,一つ又は
二つのユーザクラスへのその所属性に依存して,RACHへのアクセ
スをイネーブルすることができる(段落【0022】)。
上記認定事実を基に,被告の主位的主張の当否を判断する。
ア●(省略)●(広辞苑第5版),●(省略)●(情報・通信新語辞典
2002年版)をいうものとされている(甲3,4)。
そうすると,各構成要件F2の●(省略)●という用語が用いられて
いるものと解することができる。
イある通信方法又はシステムが,●(省略)●に当たるか否かは,各構
成要件F2の文言のみからでは,必ずしも定かではない。
上記の場合,各構成要件F2の文言に着目する限り,形式的には●
(省略)●とする解釈も成り立ち得ないものではない。
て構成された通信網の作動方法又は通信システムに関する発明である
ところ,いずれも,移動局の所属するユーザクラスを二つに分け,第
1の移動局はアクセス閾値に関係なく通信チャネルにアクセスするこ
とができるようにされているのに対し,第2の移動局が通信チャネル
にアクセスするためには,アクセス閾値がランダム数等と比較される
アクセス閾値評価を実行してその比較結果に依存した割り当てがされ
なければならないという●(省略)●ことを必須の構成としている。
このような構成要件の記載に照らすと,各構成要件F2の記載は,そ
の技術的意義を考慮に入れつつ,各構成要件F1との対比の下に解釈
ような解釈は採用することができないものというべきである。
まず,当該通信方法又はシステムにおいて,●(省略)●上記のよう
な場合を技術的範囲に含むとすれば,本件各発明は技術的意義を有し
ないと解される。
他方,当該方法等において,●(省略)●したがって,このような
場合も技術的範囲に含むとすれば本件各発明はやはり技術的意義を有
しないと解される。
そうすると,第1のユーザクラスと第2のユーザクラスとを区別し,
かつ,●(省略)●とする本件各発明の構成が技術的意義を有するの
は,●(省略)●場合に限られることとなる。
このような解釈は,上記アの●(省略)●とも整合するものと解さ
れる。

とができる。
すなわち,前記認定事実によれば,本件各発明の課題は,種々の移動
局からの通信が通信チャネル上で衝突する危険を避け,移動局の通信チ
ャネルへのアクセスが効率的に行えるようにするところにある。そして,
本件明細書は,上記の課題を解決するために,●(省略)●警察,消防
等の非常サービスの移動局を第1のユーザクラスに割り当てることがで
き,このユーザクラスはランダム分配に依存しないで遠隔通信チャネル
に優先的にアクセスできるとの解決手段を開示しており,この点に本件
各発明の本質的な部分があるということができる。
そうすると,●(省略)●になる。なお,本件明細書中に,上記のよ
うな各構成が本件各発明の技術的範囲に属することを開示ないし示唆す
る記載は見当たらない。
エ以上のとおり,各構成要件F2における●(省略)●に当たるとする
ことはできないものと解するのが相当である。
オ別紙2記載の原告方法等においては,●(省略)●(前
エ)。したがって,原告方法等において●(省略)●というべきである
から,原告方法等は各構成要件●(省略)●を充足しないものと解する
のが相当である。
よって,被告の主位的主張は理由がないものと解される。
これに対し,被告は,①本件特許権の特許請求の範囲の請求項19には,
●(省略)●構成が開示されている,②本件明細書(段落【0027】)
には,●(省略)●構成が開示されている,③本件明細書(段落【002
9】)に●(省略)●構成が開示されている,④本件明細書(段落【00
39】)には,●(省略)●⑤本件明細書の実施例(段落【0042】及
び図4)のアクセス閾値評価(「ランダム数等≧アクセス閾値?」の判断
が実行される。)で●(省略)●と主張する。
しかし,次のとおり,これらの主張はいずれも失当である。
ア上記①の主張について
本件特許権の特許請求の範囲の請求項19には,本件発明1の従属項
として,「共通に使用可能な通信チャネル(30)へのアクセスは,移
動局の特定のユーザクラスに対してだけ一時的にまたは持続的に優先し
て許可される請求項9から18までのいずれか1項に記載の方法。」と
の発明が記載されているところ,これは,本件明細書中の「RACHへ
のアクセスは例えば移動局の所定のユーザクラスに対してだけ一時的に
または持続的に優先して許容される。」との記載(段落【0022】)
本件各発明における第1のユーザクラスに割り当てられた第1の移動局
に対して,一時的に又は持続的に,通信チャネルへのアクセスを許可す
るというものであるから,●(省略)●構成が本件各発明の技術的範囲
に含まれるか否かに直接関わりのある記載とはいえない。
イ上記②の主張について
証拠(甲2)によれば,本件明細書に,「アクセス閾値Sはインター
バル{0,1...n+1}からなり,ランダム数または擬似ランダム数R
はインターバル{0,1...n}からなることが当てはまる。このことに
よりRACH30の使用をアクセス閾値S=n+1により,全ての移動
局5,10,15,20に対して制限することができる。すなわちRA
CH30へのアクセスが阻止される。ランダム数または擬似ランダム数
Rが同じように分布されたランダム関数により相応のインターバル{0,
1...n}から引き算されれば,RACH30へのアクセスの確率は全て
の移動局5,10,15,20に対して等しい。」との記載(段落【0
027】)があることが認められる。
すなわち,本件明細書の上記段落に記載されているのは,●(省略)
●ような構成を開示するものではないと解される●(省略)●ことを前
提とする記載と解することはできない。)。このことは,本件明細書に
おいて●(省略)●ことからもうかがわれるところである。
ウ上記③~⑤の主張について
次のとおり,被告の指摘する箇所に所論の記載があることは,いずれ
も,本件明細書において●(省略)●構成が排除されていないとする被
告の主張の裏付けとなるものではないと解される。
すなわち,上記③の主張につき,証拠(甲2)によれば,本件明細書
に,「優先クラスに所属しない移動局が優先閾値Pとの比較を実行せず
に,RACH30へのアクセスを許可するために単に,アクセス閾値S
より大きいか,または等しいランダム数または擬似ランダム数Rを引き
算することも可能である。」との記載(段落【0029】)があること
が認められるものの,これは,本件明細書において●(省略)●(段落
【0027】,【0042】等参照)を前提とする記載にすぎないもの
と解される。また,上記④の主張につき,被告の引用する本件明細書
(段落【0039】)の記載(ランダム数等がアクセス閾値より大きい
か等しい場合にアクセスが許容され,そうでない場合はアクセスが許容
されない旨の記載)は,単に各構成要件F2の構成を説明するものとい
うことができる。さらに,上記⑤の主張につき,被告の指摘するプログ
ラム点215におけるアクセス閾値評価の記載されている図4a及びこ
れを説明する本件明細書の記載(段落【0042】)は,単に本件各発
明の実施形態の流れをフローチャートとして説明するものと解される。
2的主張1の当否)について
被告は,原告方法等においては●(省略)●することができると主張す
る。
等の各構成要件C~F2の充足性を主張する以上,被告は原告方法等にお
いて●(省略)●ことを立証する必要があると解される。
ところで,原告方法等においてSIBとして●(省略)●送信されてい
るかは,3GPPテストプログラムがインストールされた端末を使用し,
原告に割り当てられた地上波公共移動通信ネットワークから発信された通
信信号を受信して,そのデータを信号解析ソフトウェアで解析する手法に
より,第三者において日時・場所を問わず調査することができるものであ
る。
証拠(乙4,19)によれば,実際,被告は,本件提訴の約半年前であ
る平成23年9月13日及び本件訴訟係属中の平成25年9月27日,上
記手法により原告サービスにおいて送信されているSIBを受信する実験
を行い,その解析をしたが,●(省略)●ことが認められる。
したがって,●(省略)●との被告主張事実を認めることはできない。
これに対し,被告は,①原告が原告方法等において●(省略)●こと
を示すものとして行った実験(甲16)は不適切な実験である,②原告
の主張するようなDSACが●(省略)●必要性がないとはいえないと
主張する。
しかしながら,原告が行った実験は,●(省略)●ことを示すものであ
り,その限度では実験の過程及び結果に不合理なところは見当たらない。
しかも,●(省略)●ことは被告において立証すべき事項であり,原告に
よる上記実験結果の提出は反証にすぎないから,仮にそれが適切さを欠く
実験であったとしても,そのことにより直ちに被告の主張事実が認められ
ることとなるものではない。したがって,上記①の主張は失当である。
また,原告は,原告方法等において●(省略)●ことを主張したにすぎ
ないところ,被告は,DSAC●(省略)●における必要性を主張するも
のにすぎず,原告方法等において●(省略)●ことを裏付ける主張として
不十分であるといわざるを得ない。したがって,上記②の主張も理由がな
い。

被告は,原告方法等においては,●(省略)●スケーリングファクターは
s2=0.5が送信されており,●(省略)●と主張する。
しかしながら,被告は原告方法等において●(省略)●ことを立証する必
において立証可能であるところ,被告が行った前記2回の実験においては,
●(省略)●ことが認められる(乙4,19)。
したがって,被告主張事実を認めることはできないから,原告方法等が
●(省略)●を充足するということはできないものと解される。
これに対し,被告は,①スケーリングファクターとしてs2=0.5が送
信されていることは,●(省略)●ことを推認させる,②原告は●(省略)
●している合理的理由を説明していないと主張する。
そこで判断するに,原告は,上記①の点に関し,原告方法等において●
(省略)●と主張している。そして,証拠(甲6,7,12,13)によれ
ば,3GPP標準の仕様書に,●(省略)●旨の記載があることが認められ
る。これらによれば,原告方法等において●(省略)●のであるから,原告
の上記主張には合理性が認められ,被告の上記①の主張は採用することがで
きない。
また,証拠(甲6)によれば,3GPP標準の仕様書に,ASC0は緊急
通報の場合又は同等の優先度を有する理由で使用するとの記載があることが
認められる。これによれば,原告方法等において●(省略)●との原告主張
には合理性が認められ,上記②の主張も採用することができない。
4文書提出命令の申立てについて
被告は,①原告方法等の構成が原告の主張するとおりのものであること
は示されていない,②原告の行った前記実験(甲16)には信用性が認め
られないなどとして,予備的主張1及び予備的主張2に係る事実を立証す
るため,特許法105条1項に基づき,原告の所持する●(省略)●等の
提出を求める申立て(以下「本件申立て」という。)をする。
しかしながら,既に説示したとおり,上記各事実は被告において立証す
べき事実であり,また,仮に上記実験に信用性が認められないとしても,
それにより直ちに上記各事実が認められることになるものでもないから,
上記①及び②の主張はいずれもそれ自体文書提出命令の必要性を基礎付け
るものではない。
被告は,既に説示したとおり,原告方法等においてSIBとして●(省
略)●が送信されているかを,原告からの情報開示によることなく,独自
に調査・解析することができるのであり,そのための実験は,遅くとも被
告による最初の実験(乙4)が行われた平成23年9月以降3年以上の間,
日本全国のいずれの地域においても行う機会が存在したものである。しか
るに,被告が証拠として提出した実験結果は2通にすぎず(乙4,19。
前説示のとおり,これらの実験結果は,原告方法等が別紙2のとおりであ
ることを裏付けるものであった。),これ以外に実験が行われたのか否か
すら定かではない。
弁論の全趣旨によれば,被告は,本件提訴に先立つ平成23年11月の
原告との面談において,原告に対し,上記実験結果(乙4)を示して原告
方法等が本件各発明の技術的範囲に属する旨を主張した事実が認められる
ところ,仮に上記実験結果のみに基づいて上記主張をしたのであれば,確
たる根拠もなく特許権侵害の主張をした結果,原告による本件提訴を招来
したと評価されてもやむを得ないところである。しかも,被告は,本件提
訴後,予備的主張1及び予備的主張2の立証としては,上記2通の実験結
果を提出したにすぎず,また,自ら反訴を提起したり損害額又は不当利得
額の主張をしたりしようともしない。
このような被告の応訴態度は,自ら行うべき立証の機会を放棄して原告
の反証や●(省略)●を求め続けてきたと評価せざるを得ないものであっ
て,被告は,原告方法等において予備的主張に係る事実が存在しないと推
測しながら探索的に本件申立てをしたものと推認されてもやむを得ないと
ころである。したがって,本件申立ては証拠調べの必要性を欠くものであ
るから,当裁判所は本件申立てを却下する。
なお,特許法105条1項ただし書の「正当な理由」の有無は,当該書
類を開示することによりその所持者が受ける不利益と,これが提出されな
いことにより申立人が受ける不利益とを比較衡量して判断すべきところ,
はその性質上いずれも原告の営業秘密に当たると認められることを考慮す
れば,本件において原告がその提出を拒むことには正当な理由があると解
すべきである。
よって,本件申立ては,この点からも理由がない。
5結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理
由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官長谷川浩二
裁判官清野正彦
裁判官植田裕紀久
(別紙1)
物件目録
「FOMA」の名称で原告により提供されているW-CDMA方式を使った第3
世代携帯電話通信サービス
(別紙2)
原告サービスの構成目録
1別紙1の物件目録記載の通信サービスを提供する原告のシステム(以下,「FOM
A通信システム」という。)は,基幹網であるコアネットワーク(CN:Core
Network)と,無線技術を制御して移動端末(UE:UserEquipment)を接続するため
の無線アクセスネットワーク(UTRAN:UMTSTerrestrialRadioAccess
Network)とから構成される。UTRANは,無線基地局(BTS:BaseTransceiver
Station)と,無線ネットワーク制御装置(RNC:RadioNetworkController)とを
含む。
2UTRANは,UEへシステム情報を報知する(3GPPTS25.331V8.6.0の「Figure
8.1.1-1:Broadcastofsysteminformation」を参照)。システム情報は,複数のシ
ステム情報ブロック(SIB:SystemInformationBlock)から構成され,このうち,
システム情報ブロックタイプ5(SIB5)には,3GPP規格上「AC(アクセス
クラス)-to-ASC(アクセスサービスクラス)マッピング」と呼ばれる情報要
素が含まれる(3GPPTS25.331V8.6.0の「8.5.13MappingofAccessClassesto
AccessServiceClasses」を参照)。
BTS
RNC
BTS
…CN
UE
UE
UTRAN
FOMA通信システム
移動端末
●(省略)●
3UTRANからUEへ報知されるシステム情報のうち,システム情報ブロックタイ
プ7(SIB7)には,3GPP規格上「動的持続レベル(DynamicPersistence
Level)N」と呼ばれる情報要素が含まれる(3GPPTS25.331V8.6.0の「8.5.12
EstablishmentofAccessServiceClasses」を参照)。
●(省略)●
●(省略)●なお,RACHへのアクセスに関するUEの動作として,3GPP規格
により定められているのは,UEは,持続値Piに基づいて,RACHへのアクセスが
許可されるか否かを判断するということだけである*1

ここで,UEにおいて,0以上1未満の範囲で乱数Rを発生し,R≦Piが成立する
場合にRACHへのアクセスが許可されると判断する構成(3GPPTS25.321V6.5.0の
「Figure11.2.2.1:RACHtransmissioncontrolprocedure(UEside,Informativ
●(省略)●
また,ASC=0は,3GPP規格上,最高の優先度であって,緊急通報又は同等
の優先度を有する場合に使われなければならないところ*2
,●(省略)●
4●(省略)●
以上
*13GPPTS25.321V6.5.0の「11.2.2ControlofRACHtransmissionsforFDDmode」にあ
る「BasedonthepersistencevaluePi,theUEdecideswhethertostarttheL1PRACH
transmissionprocedureinthepresenttransmissiontimeintervalornot.」という記載を参
照(本記載中の、レイヤ1の物理RACH送信手順を開始してよいか否かを判断するというこ
とが、RACHへのアクセスが許可されるか否かを判断するということを意味するものとす
る)。
*23GPPTS25.331V8.6.0の「8.5.12EstablishmentofAccessServiceClasses」にある
「ASC0=highestpriority.…ASC0shallbeusedincaseofEmergencyCallorforreasons
withequivalentpriority.」という記載を参照。
(別紙3)
被告の主位的主張
1原告方法について
別紙2の原告サービスの構成を前提とすると,原告方法は次のように分説さ
れる(以下,それぞれの構成を「構成a」などという。)。
a移動無線網として構成された基地局を備える通信網の作動方法であって,
b前記基地局は,複数の移動局の存在する無線セルを展開し,
c前記基地局は,前記複数の移動局に,N及びAC-to-ASCマッピン
グを含むシステム情報を送信し,
d・e当該情報は,Rよりも大きい場合に通知チャネルへのアクセスが可能
となる閾値P(N)を導くための情報であるNと,複数の移動局のSIM等
に記憶されているACとASCとの対応付けをする情報であるAC-to-
ASCマッピングを含んでいる方法において,
f前記N及びAC-to-ASCマッピングは,RACHへの移動局による
アクセスを,次のように許可するよう作成されており,すなわち
f1移動局のSIM等に記憶されているACと受信したAC-to-AS
Cマッピングに基づき得られる●(省略)●
f2移動局のSIM等に記憶されているACと受信したAC-to-AS
Cマッピングに基づき得られる●(省略)●
gを特徴とする方法。
原告方法は,次のとおり,本件発明1の構成要件C~F2を充足する。
アアクセス閾値とは,ランダム数等と比較され,その比較結果に依存して通
信チャネルへのアクセス権限が割り当てられるものであり,アクセス閾値ビ
ットとは,アクセス閾値に対応するビットであるから,原告方法のP(N)
がアクセス閾値に,Nを表現するビットがアクセス閾値ビットに該当する
(構成d・e,f2)。また,アクセスクラス情報とは,ユーザクラスに対
応した,通信チャネルへのアクセスの可否に関連した情報であり,複数のユ
ーザクラスに対応するアクセスクラスビットで構成されるものであるから,
原告方法におけるAC-to-ASCマッピングがアクセスクラス情報に,
これを構成する個々の情報要素であるIEがアクセスクラスビットに,それ
ぞれ該当する(構成f1,f2)。また,基地局から移動局へのN及びAC
-to-ASCマッピングを含むシステム情報であるアクセス権限データの
送信が情報信号により行われるから,原告方法は,構成要件Cを充足する。
イNは,Rとの比較に使用されるP(N)を特定するものであり,P(N)
がRよりも大きい場合にはRACHへのアクセスが可能となる。また,AC
-to-ASCマッピングは,ACとASCとの対応付けをする情報であり,
ACと受信したAC-to-ASCマッピングに基づき得られる●(省略)
●原告方法の構成dにおける「当該情報」は,どの移動局に対して,RAC
Hの基地局にアクセスするための権限が割り当てられているかという情報を
含んでいる。したがって,原告方法は,構成要件Dを充足する。
ウ上記アのとおり,原告方法のNは,「アクセス閾値に対するアクセス閾値
ビット」に,AC-to-ASCマッピングは,「ユーザクラスに対するア
クセスクラス情報」に,それぞれ該当し,これらの送信は,アクセス権限デ
ータの送信に該当するから,原告方法は,構成要件Eを充足する。
エ原告方法は,●(省略)●から(構成f1),構成要件F1を充足する。
また,原告方法は,●(省略)●から(構成f2),構成要件F2を充足す
る。
2原告システムについて
別紙2の原告サービスの構成を前提とすると,原告システムは次のように
分説される。
a移動無線網として構成された通信網と,無線セルを展開する基地局と,シ
グナリングチャネルとを有する通信システムであって,
b前記シグナリングチャネルを介して基地局が,前記無線セル内に存在する
移動局にシステム情報を送信し,
cこれにより一つのACに所属する個々の移動局には,RACH上で送信す
るために,Rよりも大きい場合に通知チャネルへのアクセスが可能となるP
(N)を導くための情報であるNと,複数の移動局のSIM等に記憶されて
いるACとASCとの対応付けをする情報であるAC-to-ASCマッピ
ングが情報通知される通信システムにおいて,
d基地局はN及びAC-to-ASCマッピングを含むシステム情報を送信
し,
e前記Nは,Rよりも大きい場合に通信チャネルへのアクセスが可能となる
P(N)を導くための情報であり,前記AC-to-ASCマッピングは,
複数の移動局のSIM等に記憶されているACとASCとの対応付けをする
情報であって,
f前記N及びAC-to-ASCマッピングは,
f1移動局のSIM等に記憶されているACと受信したAC-to-AS
●(省略)●
f2移動局のSIM等に記憶されているACと受信したAC-to-AS
●(省略)●
gを特徴とする通信システム。
原告システムにおいては,「アクセス閾値」,「アクセス閾値ビット」,
「アクセスクラス情報」,「アクセスクラスビット」及び「アクセス権限デー
原告システムは本件発明2の構成要件C~F2を充足する。

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