弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主    文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
     2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴の趣旨
  (1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,原判決別紙物件目録1記載の各土地について,福岡法務局久
留米支局平成9年4月18日受付第7970号の所有権移転登記の各抹消登
記手続をせよ。
  (3) 被控訴人は,久留米市高良内財産区に対し,原判決別紙物件目録1記載の
各土地を明け渡せ。
(4) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁
主文と同旨。
第2 事案の概要
   事案の概要は,原判決1頁17行目の「別紙物件目録」を「原判決別紙物件
目録」(以下,原判決中に「別紙物件目録」とあるは,すべて「原判決別紙物
件目録」と改める。)と,同18行目の「地方自治法242条の2第1項4
号」を「平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項
4号(以下,同法を引用する場合は,上記改正前のものとする。)と,同2頁
5行目の「その代表者は」を「その平成9年3月24日当時の代表者は」と,
同8行目の「その財産管理者は」を「その平成9年3月24日当時の財産管理
者は」とそれぞれ改め,同11行目の「条例(」の次に「昭和39年3月17
日久留米市条例第1号。」を加え,原判決3頁14行目の「被告助役A」を
「当時の被告の助役であるA」と,原判決5頁2行目の「反対決議」を「反対
である旨の決議(以下「反対決議」という。)」と,原判決17頁9行目の
「されるのであある」を「されるのである」と,原判決18頁9行目から10
行目にかけての「本件交換契約契約」を「本件交換契約」とそれぞれ改めるほ
かは,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」に記載のとおりである
から,これを引用する。
 [当審における当事者の主張]
控訴人ら及び被控訴人(以下,本件事案の事実関係の説示等においては「久
留米市」と,その余の場合は「被控訴人」と表記する。)は,当審において,
前記2の争点における主張に付加,補足して,次のとおり主張した。
(1) 本件財産区の総意等に基づくことなく締結された本件交換契約は無効であ
るか。
 (控訴人らの主張)
ア 本件財産区の入会地としての歴史的経緯と本件交換契約の効力について
  江戸時代においては,本件財産区所有地を含む当時の高良内村(部落)
の山林原野(以下「本件土地」という。)は,柴などの採集のために周辺
の多数村落が関係する共同入会山であり,明治11年3月1日には,村持
惣代Bら3名名義で地券が交付されたもので,これは本件土地が町村制施
行前の生活共同体としての高良内村(以下「旧高良内村」という。)の村
民の総有として認められたことの証左である。その後,本件土地の登記名
義は,明治22年の町村制施行後の福岡県三井郡高良内村(以下「高良内
村」という。)を経て,本件財産区となっているが,本件土地は,前記の
とおり,旧高良内村が有していた入会地であったという歴史的経緯を有す
るものである。
 昭和26年6月,高良内村が久留米市と合併する際,本件財産区が設置
されたが,これは,久留米市との合併に高良内村が反対していたことか
ら,本件土地を久留米市長において自由に処分することができないように
する目的で,財産区を設置し,財産区が保有する財産についてはその管理
処分を久留米市に委ねず,自らの手中においてコントロールするものとし
て財産区固有の意思決定機関である財産区議会を置いたのであり,久留米
市もこのような経緯や本件土地が旧高良内村の村民の総有たる財産である
ことは認識していたものである。したがって,本件財産区は,入会地とし
ての歴史的経緯を有する本件土地を保有し,財産区総会や議会において,
その保有する山林等の財産について管理,処分するという権利主体たる地
位を保障されているのであり,本件財産区が保有する財産の管理,処分等
は,本件財産区の総意に基づき決せられるべきものであるところ,その総
意を決する機関として,本件財産区議会が設置されたというべきである。
 そして,本件においては,原審においても主張したとおり,本件財産区
議会は,本件財産区所有地に被控訴人が計画する本件処分場の設置,建設
をすることに反対する旨の決議をしており,本件財産区所有地等を被控訴
人に譲渡ないし交換により提供すること(以下,まとめて「譲渡等」とい
う。)についても反対していたところ(反対決議の存在)である。このよ
うに本件財産区の総意は,本件財産区所有地等の譲渡等に反対の意思を示
していたにもかかわらず,C市長は,本件交換契約を締結したのであるか
ら,本件交換契約は,本件財産区が設置された前記のような経緯,すなわ
ち,高良内村が久留米市と合併するに当たって,本件財産区所有地等の管
理及び処分を,財産区固有の意思決定機関によって決することとして,本
件財産区議会が設置されたこと,本件土地が入会地としての歴史的経緯を
有することを無視するものであり,本件交換契約は,本件財産区の総意に
反するものとして,無効である。
イ 本件財産区の総意による反対決議に反した本件交換契約の効力について
 財産区は,市町村等から独立してその所有する財産又は公の施設の管理
及び処分を行う権能を有する特別地方公共団体であり,法が,財産区に独
立した権利主体性を保障していることに照らしても,財産区の管理者は,
その財産の管理に関する事務を遂行するに当たっては,財産区のためにす
るべきであり,財産区の利益を害する行為を行うことは許されないところ
である。そして,市町村等と財産区の利害が対立する場合には,財産区の
利益が害されることを防止するために,財産区議会を設置することができ
るとされている(法295条)から,財産区議会が設置されている場合に
は,前示利害が対立する場合にあっては,財産区の管理者の決定によるべ
きでなく,財産区議会が決定権を有するというべきである。したがって,
財産区の管理者は,その権限を無制限に行使することが許容されていると
解することはできず,民法644条を類推適用して,財産区に対して善良
なる管理者としての責任と注意義務をもってかかる権限を行使しなければ
ならないという制約を負っているというべきである。そして,前記説示の
とおり,財産区議会が設置されている場合には,財産区議会の議決に従う
ことが上記善管注意義務の内容となり,上記議決に反する権限の行使が許
されないことはいうまでもない。
 この点,被控訴人も,法295条の趣旨について,「財産区の事務が複
雑であるため又は極めて一部局のため,あるいは財産区と市町村等の利害
が相反する等の場合で,市町村等の議会が財産区の事務を議決することは
適当ではなく,財産区固有の意思決定機関を設ける必要があると認めると
きは,・・・財産区の議会を設けて,これを財産区の議決機関とすること
ができるとしたもの」としており,高良内村と久留米市との合併に際し
て,本件財産区について,財産区固有の意思決定機関を設置する必要があ
るとして,財産区議会が設置されたことを認識している。したがって,本
件財産区の管理者である久留米市長が本件財産区の利益を害する行為をす
る場合に,本件財産区議会が本件財産区の管理者の行為に反対である旨の
意思を表明し,これを阻止することができないとすれば,法が,財産区制
度及び財産区議会の設置を定めた趣旨に反することになる。本件財産区議
会は,本件処分場を建設することに反対し,被控訴人への本件財産区所有
地等の譲渡等について反対していた(反対決議の存在)のであるから,C
市長が本件財産区議会の意思に反して本件交換契約を締結することは,本
件財産区の管理者としての前記義務に反し,許されるものではなく,本件
交換契約は,本件財産区議会の反対決議に反するものとして無効なもので
ある。
(被控訴人の主張)
ア 本件財産区所有地等は,高良内村の所有に属し,高良内村が植林し,撫
育して管理してきたものであり,本件財産区設置後は,本件財産区の所有
に承継され,本件財産区が植林し,撫育して管理してきたもので,その
間,地元住民が本件財産区所有地内で柴などの採集行為をするなど入会稼
ぎをしてきた事実は存しない。また,地元住民が何らかの採集行為をして
いたとしても,入会権者の団体が存し,入会慣行が存在していたか不明で
あるし,現在,本件財産区所有地等において,地元住民による入会稼ぎが
ないことは明らかであるから,本件財産区所有地等の利用方法について,
財産区住民の総意に基づいて決定されるべきものであるとはいえない。
イ 財産区議会の権限は,財産区に関し,市町村の議会で議決すべき事項を
議決すること(法295条)であり,控訴人らが主張する,平成7年12
月25日の財産区議会における「高良内町杉谷地区ごみ埋立地建設反対決
議」は,財産区議会の権限に属することとされている事項ではなく,ごみ
埋立地の建設という久留米市の議会が議決すべき事項ないし環境問題につ
いての決議であって,法的効力を有しない。また,その後にされた本件財
産区の全員協議会における決議は,正式な財産区議会の決議ではないか
ら,これをもって本件財産区議会が反対決議をしたものと評価することは
できない。
 控訴人らの主張によると,時々の財産区議会の決議で,法令や本件条例
で定められた管理者である久留米市長と本件財産区議会の権限分配の基準
が左右され,一般取扱準則を定めた本件条例の効力が変動して,法的安定
性を害することになる。
  (2) 本件条例は,法295条及び本件財産区議会設置条例に抵触するか。
(控訴人らの主張)
 被控訴人は,本件条例に従って本件交換契約を締結したとするが,本件条
例は,法295条の趣旨を潜脱し,財産区議会設置条例に抵触するものであ
るから,無効である。すなわち,本件財産区が保有する本件財産区所有地等
は,前記のとおり,入会地としての歴史的経緯を有しており,住民の自治に
より先祖から受け継いできた財産として守られてきたところである。久留米
市も,高良内村が承継した本件財産区所有地等に対する自治を保障するとし
て,高良内村との合併を推進したところであるから,本件財産区所有地等に
ついては,このような歴史的経緯を踏まえて,住民の利益が保障されるべき
である。加えて,財産区議会設置条例は,財産区の財産と自治を守るために
その条例制定権が都道府県知事に専属的に付与されているのであるから,本
件財産区の財産を巡って,その財産区と利害が対立し,住民が処分,譲渡等
を強く反対する中で,本件財産区の意思に反しても,財産区の管理者に対し
て,本件財産区所有地等の財産を処分する権限を付与することを是認する本
件条例は,法によって設置された財産区議会の権限を縮小するもので,法等
が予想しないところであるから,法等の趣旨に照らしても,無効であるとい
わざるを得ない。さらに,被控訴人は,本件条例は本件財産区議会が議決し
て成立した条例であるとするが,そもそも財産区には,条例を制定する権限
が付与されておらず,本件財産区は独自に条例を制定することができないの
であるから,本件条例は,元々本件財産区の条例として制定されたものでは
ないというべきである。したがって,本件財産区が,本件財産区所有地等の
処分に反対する場合には,他の自治体の条例である本件条例に拘束されるこ
とはなく,原則にかえって,財産区議会の議決によるべきである。殊に,本
件財産区においては,前記のとおり,本件財産区が設置された経緯等に照ら
しても,本件財産区が保有する財産については,本件財産区の利益が保障さ
れるべきことは明らかである。
 仮に,本件財産区議会が本件条例を制定したとしても,次のとおり,本件
条例は,本件財産区議会設置条例に抵触するものである。すなわち,福岡県
知事は,本件財産区が入会地としての歴史的経緯を有することから,このよ
うな本件財産区の財産と自治を守るために,本件財産区を置くとともに,本
件財産区議会を設置したのであるから,本件財産区が保有する財産につい
て,本件財産区と地方公共団体である久留米市との利害が対立するような場
合においても,本件財産区の管理者に対して,無条件でその財産を処分する
ことができる権限を付与するとする本件条例は,本件財産区議会設置条例の
予定するところでなく,同条例に反するものとして,無効である。
(被控訴人の主張)
 財産区に財産区議会が設置された場合は,当該財産区が保有する財産の管
理及び処分については,財産区議会の議決によるところ,本件においては,
本件財産区には本件財産区議会が設置され,本件財産区議会の議決を経て,
本件財産区が保有する財産等の管理及び処分に関する条例(本件条例)が制
定され,本件財産区区有財産の管理及び処分については,本件条例の定める
ところによるとされたのであるから,本件条例は,法の定める手続に従って
設置された本件財産区議会によって議決された条例としての効力を有すると
いうべきである。したがって,本件条例が,法の趣旨を潜脱し,本件財産区
議会設置条例に抵触するとする控訴人らの主張は,いずれも理由がない。
(3) 本件交換契約は,本件条例3条の定めに反し,無効か。
   ア 本件財産区議会は,本件財産区所有地等の処分について,反対する旨の
決議をしたか。
(控訴人らの主張)
 本件財産区は,平成7年12月25日に開催された高良内財産区議会
定例会において,本件財産区所有地に本件処分場を建設することに反対
する旨の決議(以下「平成7年の決議」という。)をしており,また,
その後も,久留米市が提案するごみ処分場建設に関する計画について
も,本件財産区の全員協議会等で反対する旨の決議をしていたのであ
る。また,平成9年3月25日に開催される本件財産区議会定例会にお
いては,本件財産区所有地等を譲渡又は交換等によって処分することを
反対する旨の決議案を提出する予定であった。本件財産区の全員協議会
は,本件財産区議会議員が出席して開催されるものであるから,前記全
員協議会における決議は,本件財産区議会における決議と同様の効力を
有すると解すべきである。
(被控訴人の主張)
 本件交換契約は,本件条例に基づいて締結されたものであり,本件財
産区議会の議決を経ることなく締結することができるところであり,本
件において,本件財産区議会は,本件交換契約に至るまで,本件財産区
所有地等の処分等について,何らかの決議をしたことはない。控訴人ら
が主張する本件財産区の全員協議会における決議は,本件財産区議会の
議決ではない。
イ 本件交換契約は,本件条例3条に定める「公共性」を有しているか。
(被控訴人の主張)
(ア) 被控訴人は,本件交換契約により本件処分場事業用地の約6割を占
める本件財産区所有地を取得し,直ちに保安林解除等の手続のため福岡
県と協議を開始し,平成10年6月12日に保安林解除申請に伴う事前
相談申出書を福岡県知事に提出したところ,事前相談の段階である同年
10月に,林野庁から,事業実現の可能性が見込まれず,今の段階での
保安林解除は難しい旨の意向が福岡県を通じて示されたものであり,控
訴人らが主張するような,本件処分場建設の公共性が保安林を守る公益
性よりも上回るためには,本件処分場の建設用地として本件財産区所有
地のほかには適地がないこと,つまり代替性がないことが必要であるの
に,本件財産区所有地はこの要件を欠くため保安林解除が困難とされた
というものではない。被控訴人としては,今後,事業実現の可能性が見
込まれれば,保安林指定の解除がされるものと考えている。
 保安林指定解除の要件は,指定理由の消滅及び公益上の理由があるこ
ととされており(森林法26条1項,2項),後者である公益上の理由
による場合は,森林を保安林として存続させ,森林の保全的機能を十分
に発揮させるという公益上の必要性と,他の公益目的に供することの必
要性とを比較衡量して,保安林の指定を解除するかどうかを判断するこ
とになるから,保安林指定目的に優先する公益上の理由があれば,指定
は解除されうるものであり,上記公益上の理由があることは,後記(イ)
ないし(キ)で主張するとおりである。また,本件財産区所有地の山林が
保安林に指定されたのは,土砂流出防備目的であるから,上記目的の達
成に支障がないような代替施設設置等の措置が講じられれば,当該保安
林としての目的は達成されるのである。したがって,本件財産区所有地
に本件処分場を建設することが,直ちに,保安林の公益性及び公共性を
否定し侵害するものであるとはいえない。
(イ) 市町村は,当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理を行う責任があ
るところ(廃棄物処理法6条1項,6条の2第1項),一般廃棄物の処
理は,当該市町村の自地域内処理が原則であり,長期的なごみ処理体制
を構築し,安定的最終処分を行うための埋立地は,清掃行政に不可欠な
基幹的公用施設であるから,本件処分場建設は,以下のとおり,公共の
必要性を有するものであり,その用地取得のための本件交換契約は,本
件条例3条1項に定める「公共性」の要件を具備するものである。
   (ウ) 久留米市は,久留米市高良内町内野地区に一般廃棄物の最終処分場
(以下「内野処分場」という。)を有し,昭和47年からごみ焼却場か
ら出る焼却灰及び不燃ごみ等を埋め立ててきた。内野処分場の当初の使
用期間は昭和57年3月31日までであったが,久留米市は,使用期限
の更新を重ね,平成8年3月31日まで使用期限の延長を図ってきたと
ころ,平成8年の時点で,今後,リサイクルの推進による一般廃棄物の
減少を考慮したとしても,内野処分場は,平成11年前半には満杯にな
ると予測されていた。
   (エ) 久留米市は,後記(オ)ないし(キ)のとおり,内野処分場に代わる新
処分場の建設事業を進めていたから,内野処分場を平成8年4月1日か
ら新処分場の供用開始予定まで継続して使用できるよう関係地元地区等
と交渉したが,同意が得られず,同日以降は,事実上,内野処分場への
埋立てを続けていたものの,埋立容量の物理的限界を迎えたため,平成
12年3月31日をもって閉鎖し,埋立てを終了することになった。そ
こで,久留米市は,安定的なごみ処理を継続するため,内野処分場の閉
鎖に引き続き,平成12年4月には新処分場の供用を開始することがど
うしても必要であった。
   (オ) 久留米市は,昭和60年ころから新処分場建設事業に取り組み,市
内唯一の山間部である耳納山地の南側斜面に所在する本件財産区内の杉
谷地区を,地形や交通等の立地条件に照らし適地であるとして,新処分
場建設用地に選定し,平成3年に新処分場建設の基本計画を策定して環
境影響調査(いわゆる環境アセスメント)を実施し,平成5,6年こ
ろ,今後3期計画で,50年分,予想埋立容量を200万立方メートル
とする建設計画(以下「旧計画」という。)を立案し,第1期計画(1
5年分,埋立容量50万立方メートル)について実施設計を行った。
   (カ) しかしながら,地元住民らの反対が強いことから,その後,久留米
市は,C市長のもと,新処分場建設予定地の選定を原点に戻って再検討
することとし,平成7年7月に,建設用地選定等のごみ処理問題につい
て,ごみ問題協議会を設置して協議を重ね,同年11月に,同協議会か
ら久留米市に対し,内野処分場の限界が迫っており,市民生活の危機打
開のため,市が立地を選定し早急に新処分場を建設すること及び処分場
の使用期間は1か所15年に限り,市内に順次整備をしていくことの提
言がされた。これを受けて久留米市は,平成8年2月に,旧計画の設置
規模を大幅に縮小し,埋立期間15年,埋立面積約3.1ヘクタール,
埋立容量約46.8万立方メートルとすること,建設予定地について
は,内野処分場の容量限界が迫っている時間的制約の下で,実施設計を
完了している前記杉谷地区が最適であるとして,同地区を再度建設用地
に選定することを内容とする建設計画(以下「新計画」という。)を発
表した。その後,同年11月に,新計画により本件処分場を建設するた
め厚生省(当時。以下同じ。)に対し,補助事業申請にあたる平成9年
度廃棄物処理施設整備計画書の提出を行った。
   (キ) 久留米市は,ごみ減量・リサイクル政策として,事業系ごみ手数料
値上げ等を行ってきたが,平成9年度から,粗大ごみ戸別単品有料収
集,事業系ごみ有料指定袋制度の導入を行い,平成10年からはごみの
17種分別収集を実施したことなどにより,平成10年度の可燃ごみ及
び不燃ごみ処理量が平成4年度の78パーセントに減少し,リサイクル
率も19パーセントに達した。そこで,久留米市は,将来のごみ量推計
の見直しを行った結果,17種分別収集の実施,中間処理施設整備方針
の確定及び事業系不燃ごみ受入れの先送りにより,さらにごみ減量,埋
立量減容が見込まれることから,平成11年8月に,新計画の設置規模
を大幅に縮小し,埋立面積1.7ヘクタール,埋立容量20.6万立方
メートルとする本件処分場建設計画(以下「見直し計画」という。)を
発表した。その後,同年10月に,見直し計画に係る平成12年度廃棄
物処理施設整備計画書を厚生省に提出したが,その際,再度ごみ量の推
計を行い,埋立容量を20.4万立方メートルに縮小修正した。
   (ク) 久留米市は,見直し計画の実施設計において,本件処分場施設の安
全性確保に最大限の配慮をすることとし,貯留構造物には,地質調査の
結果,下流側に重力式コンクリート擁壁,谷部に逆T型コンクリート擁
壁を建設し,埋立地底部は,より充実した複合遮水構造とし,多重構造
シート,不透水性改良地盤,コンクリート版を施すこととしたほか,埋
立物の安全性の向上のため,焼却灰から重金属が溶け出さないようにす
るための灰固形化施設を建設し,安全監視体制も充実することとし,地
元住民を中心とする監視機関を発足させた。
   (ケ) 久留米市は,新計画におけるごみ量推計を,将来の人口予測,排出
抑制及び集団回収等によるごみ減量効果,自家処理等の見込み,他の市
町村からの搬入,又は他の市町村への排出等を勘案し,ごみの種類ごと
に行い,過去5年以上の実績を基礎として算定する等の,厚生省の通知
に示された指針に従い,過去10年間の実績値を使用して行った。
   (控訴人らの主張)
 本件条例3条1項には,「区有財産は,本財産区,国または地方公共
団体において公用または公共用に供する必要がある場合には,これを他
の同一種類の財産と交換することができる。ただし,価格の差額が,そ
の高価なものの価額の6分の1をこえるときは,この限りでない。」と
定められているところ,本件交換契約は,以下の(ア)及び(イ)のとお
り,上記条項に定める「公共性」に関する要件を具備するものではない
から,同条項の適用がなく,本件財産区議会の議決を要するところ,こ
れを欠くため無効である。
(ア) 本件財産区所有地等の保安林としての公共性について
 財産区の管理者は,財産区が保有する財産または公の施設の管理及び
処分または廃止については,その住民の福祉を増進するとともに財産区
の所在する市町村等との一体性を損なわないように務めなければならな
いところ,本件財産区所有地等の一部は,保安林の指定を受けており,
未だその指定が解除されていない状況にある。そうすると,本件財産区
所有地等は,単に本件財産区のためだけでなく,久留米市民を始め,周
辺住民の公益のために存在しているのである。したがって,C市長は,
久留米市長の立場としても,財産区の管理者の立場としても,このよう
な保安林を住民のために保全するべき義務を負っていることは明らかで
ある。保安林を破壊して,本件処分場を建設することは,保安林の公益
性及び公共性を否定し,侵害するものであり,財産区の管理者としての
前記義務に反することとなる。本件財産区議会は,平成7年12月25
日,本件財産区所有地に本件処分場を建設することについて,高良川の
水源汚染及びその周辺環境を破壊するおそれのある行為であり,広大な
る保安林の伐採による水源の枯渇と土砂崩壊と土砂流出による自然環境
を破壊するおそれのある行為であるとして,本件処分場の建設に反対す
る旨の決議(平成7年の決議)をした。
 したがって,本件処分場の設置が必要であるというだけで,保安林と
しての本件財産区所有地について,これを本件処分場設置を目的として
被控訴人に譲渡等することは,久留米市のいう公益性のみを求めるもの
で,財産区が市町村等とは独立した主体性を有することを考慮しないと
ころであるし,本件財産区所有地等の保安林としての公益性を害するも
のである。財産区管理者としてのC市長は,保安林としての本件財産区
所有地等の公益性を検討することなく,本件財産区所有地等につき本件
交換契約を締結したのである。しかも,本件においては,本件財産区所
有地等の保安林部分について,保安林指定が解除されるという見通し
も,担保もない状況にある。すなわち,保安林指定解除に関する権限を
有する林野庁がこれに応じなければならず,本件処分場建設計画は正に
無謀なバクチであり,保安林指定解除を前提とする賭けであるといわな
ければならない。
 したがって,本件交換契約は,本件財産区所有地等の保安林としての
公共性の検討をすることなく締結されたものとして,無効である。
    (イ) 本件財産区所有地に本件処分場を建設する他には適切十分な代替地
が存在しないのかについて
 本件交換契約の直近である平成8年2月に発表された新計画は,以下
の①ないし③のとおり,設置時期,設置規模及び設置場所のいずれにつ
いても,本件財産区所有地に本件処分場を設置すべき必要性を認められ
ないから,同計画による本件処分場建設用地取得のための本件交換契約
は,本件条例3条1項に定める「公共性」の要件に該当しておらず,そ
の締結については,財産区議会の議決を経る必要があった。
 しかし,本件交換契約は,財産区議会の議決を経ていないから,無効
である。
   ① 設置時期については,平成12年3月に内野処分場の埋立てが終了
し,これに代わる新処分場の供用開始がされていない現状において,
久留米市内にごみが溢れる事態には陥っていない。これは,久留米市
が排出する不燃ごみ及び焼却灰について,自地域内処理をせず,熊本
県菊池市内の民間廃棄物処理場に持ち出して,埋め立て処分している
からであるが,ごみの自地域内処理は,地方自治体の清掃行政の原則
であるというにすぎず,環境省は,むしろ,ごみ処理の大型化,広域
化の方針を進めているのであり,自地域内処理の原則も絶対なもので
はない。そうすると,平成8年2月の時点において,ごみを他地域持
出しにより暫定的に処分することにより対処することも考慮の上,慎
重に建設用地の選択をすることが可能であったというべきであるか
ら,平成12年4月までに内野処分場に代わる新処分場の供用を開始
することが不可避であったとは言えない。
   ② 設置規模については,新計画に沿って作成された平成9年度廃棄物
処理施設整備計画書において,久留米市は,今後15年間に排出され
るごみ量を推計し,本件処分場の施設規模を,埋立面積3.2ヘクタ
ール,埋立容量50万立方メートルとした。しかし,上記推計は,本
件財産区有地において本件処分場の建設を推し進めるため,故意に,
ごみの資源化量を少なめに,処分量を多めに算定したものである。ま
た,久留米市は,ごみ減量対策を実施すれば,ごみ量が減少すること
は予想されるにもかかわらず,ごみ処分場建設計画を優先して立案
し,ごみ減量対策の実施を故意又は重過失により,後回しにしていた
ものである。
 このことは,平成11年8月の見直し計画に沿って作成された平成
12年度廃棄物処理施設整備計画書において,本件処分場の規模が埋
立面積1.7ヘクタール,埋立容量20万立方メートルに大幅に縮小
されたことからも明らかである。
   ③ 設置場所については,上記設置時期及び設置規模の検討を踏まえる
と,埋立容量20万立方メートルの処分場であれば,平地でも十分建
設可能であり,水源地であり保安林を有する本件財産区有地を避け,
水質等環境に対する悪影響を少なくできる,筑後川大堰よりも下流の
地盤がしっかりした用地を選択した上,建設に当たり,環境影響調査
から着手することも十分可能であった。
  (4) 本件交換契約には,民法108条が類推適用されるべきであり,双方代理
として無権代理になるか。
(控訴人らの主張)
ア 本件財産区所有地は,もともと入会山であり,生活共同体としての旧高
良内村(部落)の総有であったが,町村制施行後に高良内村の村有林とさ
れていたところ,久留米市と高良内村が合併する際に,高良内村が保有す
る財産については,財産区を置いて,その住民の意思に基づいて,管理及
び処分をすることとし,本件財産区議会を設置したのであるから,本件財
産区と久留米市との間には,本件財産区が設置された当初から本件財産区
が保有する財産の管理及び処分等については,利害の対立が存したのであ
り,本件においては,前記主張のとおり,本件財産区は,平成7年の決議
によって,本件財産区所有地に本件処分場を建設することについては絶対
に反対するとしており,その後,本件財産区の全員協議会において,本件
財産区所有地を本件処分場建設のために久留米市に譲渡等をすることにつ
いて反対していたところである。したがって,本件財産区所有地を本件処
分場の建設用地として処分することについては,本件財産区と久留米市と
の間には,利害の対立があったというべきであり,本件交換契約は,民法
108条に反する契約として無効である。
イ 原判決は,本件財産区と久留米市との間に,以上のような具体的な利害
の対立関係があるのに,対立する一方である久留米市が主張する「本件財
産区と久留米市との一体性」,「本件処分場建設に関する久留米市の公共
性」に関する理論だけを採用して,控訴人らの主張については何らの判断
を示していない。
(被控訴人の主張)
ア 国と地方公共団体,地方公共団体相互間の法律関係においては,法律に
よる行政の原理が適用されるのであり,民法の類推適用がされる余地はな
いものである。すなわち,民法の類推適用が問題となるのは,国又は公共
団体と私人との間の法律関係について,私人の法律関係の安定性や信頼保
護,当事者間の衡平の観点から,利益衡量上私人を保護すべき要求がある
場合であって,行政主体間においては,上記のような要求はないから類推
適用もないというべきである。
イ 仮に,民法108条の類推適用の余地があるとしても,本件交換契約に
おいては,本件財産区をC市長が代表し,久留米市をA助役が代表して締
結されており,双方の代表者が異なるから,双方代理の場合には該当しな
い。また,A助役は,久留米市長であるC市長から,法153条1項に基
づき,久留米市の財産処分権限の一部の委任を受けたものであり,委任を
受けた事務については,受任者が専ら自己の責任において処理するもので
あって,委任をしたC市長は自らこれを処理する権限を失うとされている
から,C市長がA助役に対し,一般的指揮監督権を有していても,これを
通じて,C市長と実質的に同一人物が被控訴人の代表者として行為すると
いう関係は生じない。
ウ 仮に,民法108条の類推適用の余地があるとしても,本件交換契約
は,本件条例3条に基づいて行われたものであり,その場合は,改めて本
件財産区議会の個々の議決を要しない趣旨であるから,本件交換契約が本
件条例3条に定める要件に合致する限り,本件財産区議会が管理者の財産
処分に対する事前の包括的同意を付与しているものと解することができ
る。このように本件条例3条は,「国または公共団体が,公用または公共
の用に供する」という要件を定めて,公共団体である久留米市と本件財産
区との間で,区有財産の処分行為があることを前提とする一方で,上記要
件を満たす限り,双方代理行為について本件財産区議会の事前の同意を与
えているのである。
(5) 本件交換契約は,民法57条の適用又は類推適用により,利益相反行為と
して,無権代理に該当するか。
(控訴人らの主張)
 本件においては,高良内村と久留米市が合併するに当たって,既に,本件
財産区と久留米市との間には,利害の対立が存したのであり,しかも,本件
財産区所有地は,保安林としての指定を受けているのであるから,保安林と
しての公益性を保有しており,これをごみ処分場の建設用地とすることは,
高良川の水源及びその周辺環境の破壊,広大な保安林の伐採による水源の枯
渇,土砂の流出という自然破壊を招くおそれがあるとして本件財産区所有地
における本件処分場の建設に強く反対していたところであり,このような本
件財産区所有地を処分することについては,久留米市と本件財産区との利害
は,相反していたのであるから,C市長が,本件財産区のこのような意思に
反して,対立関係にある久留米市との間で,本件交換契約を締結したこと
は,利益相反行為として無権代理に該当する。
(被控訴人の主張)
ア 本件交換契約について,民法57条の適用ないし類推適用の余地がない
ことは前記主張のとおりである。
イ民法57条の利益相反とは,本件においては,管理者の持つ利益と本件
財産区の持つ利益が相容れない場合をいうが,控訴人らは,相反する関係
にある管理者の利益と本件財産区の利益の具体的内容を主張していない。
 いずれにしろ,C市長は,本件交換契約につき,個人的利害を有するも
のでないから,本件財産区との間に利益相反関係は存在しない。
(6) 本件財産区の管理者であるC市長が,久留米市との間で締結した本件交換
契約は,本件財産区が保有する財産の管理及び処分権限を濫用するものであ
り,無効であるか。
(控訴人らの主張)
 本件財産区は,平成9年2月5日,本件財産区議会の全員協議会におい
て,本件財産区所有地等の久留米市への譲渡を反対する旨の決議を行うとと
もに,譲渡に応じなかった場合に,久留米市所有の他の土地と交換すること
も反対する旨の決議を行った。しかるに,C市長は,同年3月25日に本件
財産区議会定例会の開催が予定されており,同定例会において,「高良内村
杉谷地区ごみ処分場建設反対に関する決議」を行うことが予定されているこ
と,本件交換契約が本件財産区の意思に反するものであることを知りなが
ら,前記決議を潜脱するために,前記定例会が開催される前日にあえて本件
交換契約を締結したのであるから,C市長には,その権限を濫用した違法が
ある。
(被控訴人の主張)
ア 地方公共団体の長は,統一的で円滑かつ迅速な行政を推進する責務があ
るところ,法は,その独断的執行に対して一定の統制を及ぼすために,財
産の交換,贈与,無償貸付け等を行う場合に「条例又は議会の議決」を要
するとしたものである(法237条2項,96条1項)。以上は,本件財
産区における財産処分についても同様であり(法294条1項,237条
2項,96条1項),本件条例によって財産処分等に関する一般的取扱準
則を定めた場合には,管理者の権限で財産の処分等を行えるが,本件条例
の規定がない場合には,長は議会の議決を得て財産の処分等を行うことと
なる。
イ 久留米市は,本件処分場用地の取得について,最初から売買のみを予定
していたわけではなく,予定を変更したものでもない。平成8年12月2
5日に,本件財産区議会の議員各位に本件財産区所有地等の所有権を譲渡
することについて打診したところ,平成9年2月25日の本件財産区の全
員協議会において,上記譲渡には協力できないとの立場を明確にされたた
め,この時点において,売買による久留米市への所有権移転は不可能に近
いと判断したものである。そして,交換という用地取得方法は,本件財産
区の基本財産を維持したいという本件財産区住民の要望に合致するとも
に,将来的にも,本件財産区の安定的な運営管理に資するもので,財産区
住民の福祉にも役立つものと判断したものである。
ウ 本件条例上,本件財産区所有地等を譲渡する方法は,売買,交換,譲与
等があり,それぞれの要件が定められているところ,どの方法を採用する
かは管理者の権限に属しており,売買を優先的に選択しなければならない
とする規定はない。したがって,管理者であるC市長が本件条例3条に規
定する交換の方法により,本件財産区所有地等を譲渡したことは,何ら潜
脱目的によるものではなく,管理者の権限の濫用にも該当しない。
第3当裁判所の判断
 1(1) 原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の「2 争点」に摘示の
争点(1)についての同判決の判断部分は,後記「2 当審における当事者の主
張について」の(1)のとおり補足するほかは,原判決「第3 当裁判所の判
断」の1に記載のとおりであるから,これを引用する。
(2) 原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の「2 争点」に摘示の
争点(2)についての同判決の判断部分(同21頁4行目から同27頁4行目ま
で)を次のとおり改める。
「2 争点(2)(本件交換契約が本件条例3条1項ただし書に違反し,又は土
地の評価が違法であることにより無効であるか)について
 (1)ア 本件条例3条1項ただし書が,交換の対象となる財産の価格の差
額がその高価なものの価額の6分の1を超えないことを要件として
いる趣旨は,財産区議会の議決を要しない交換契約を,区有財産と
価格的に同等性のある財産との交換の場合に制限することにあると
解されるから,交換の対象となる財産の価額を算定するについて
は,当該財産の市場価格を基準としつつ,その余の具体的事情をも
考慮した上で,共通の基準により算出された客観的に公正と認めら
れる価格によって判断されるべきである。
  イ これを本件について見るに,まず立木については,証拠(甲2
9,乙64,65,70ないし76,原審証人D)及び弁論の全趣
旨によれば,以下の事実が認められる。
   (ア) 被控訴人が公共用地の取得の際の用地買収又は土地収用にお
ける損失補償額等を算定する際に使用する,福岡県土木部発行の
「測量・調査・設計業務委託共通仕様書」と題する書面(乙6
5)には,立木の調査方法が記載されている立竹木調査積算要領
(以下「本件調査要領」という。)が添付されているところ,被
控訴人は,コンサルティング会社に依頼して,本件財産区所有地
上及び被控訴人所有地上の立木について,本件調査要領に従い,
平成6年に,立木の種類,立木本数,胸高直径等につき毎木調査
をし,更に,平成8年に,平成6年に調査した立木の約1割(倒
木を除く。)を調査して,胸高直径の伸びの平均値を算出した。
   (イ) そして,上記コンサルティング会社は,上記調査を基にし
て,用対連が定め,被控訴人等用対連の会員が公共用地の取得の
際の用地買収又は土地収用における損失補償額等を算定する際に
使用する,本件標準書所定の評価方法に従い,上記立木の価格を
算定した。そして,本件標準書が示す立木評価の方法とは,原判
決別紙「立木評価の考え方について」記載のとおりの内容であ
る。
   (ウ) 上記算定の結果,本件財産区所有地上の立木の合計価格は1
483万2400円,被告所有地上の立木の合計価格は2441
万1700円とされた。
ウ 次に,土地については,証拠(甲29,乙66ないし69,7
9,80)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
   (ア) 被控訴人が公共用地を取得するにあたっては,損失補償基準
及び損失補償基準細則に準拠しているが,これによると,土地の
評価は事務処理要領により行われるとされ,事務処理要領では,
林地の評価を林地価格比準表に従って算定すべきとしている。上
記事務処理要領及び林地価格比準表によると,林地の価格は,①
まず林地地域の地域区分を確定し,②次に,基準となる地(基準
地)を選定してその価格を求め,③その基準地の価格に,地域要
因の格差率を乗じ,④さらに,個別要因の格差率(<ア>交通・接
近条件(交通及び林産物搬出の便否),<イ>自然的条件(積雪等
の気象,標高・傾斜等の地勢及び土壌の状態),<ウ>宅地化条件
(宅地化等の影響の程度),<エ>行政的条件(行政的規制の程
度),<オ>その他)を乗じることとされている。そして,被控訴
人は,不動産鑑定士に依頼して,被控訴人所有地及び本件財産区
所有地の評価を,上記事務処理要領及び林地価格比準表に従っ
て,①被控訴人所有地及び本件財産区所有地をいずれも都市近郊
林地地域と認定し,②基準地として,被控訴人所有地及び本件財
産区所有地内に,低丘陵地で用材林及び雑木等が生育している土
地をそれぞれ1か所ずつ選定し,③取引事例比較法により上記各
基準地と同一需給圏内の類似地域に所在するそれぞれ3土地の取
引事例を抽出し,上記各3土地がいずれも選定された基準地とは
同一地域外にあることから,専ら地域的要因の格差率を乗じて,
基準地の価格を算定し,それをもとにして,更に不動産鑑定士の
意見等を踏まえて補正をした上で,被控訴人所有地及び本件財産
区所有地の価格を算定した。
(イ) 上記算定の結果,本件財産区所有地の価格は5131万94
60円,被控訴人所有地の価格は3947万8060円とされ
た。
  エ 以上によれば,本件財産区所有地等及び被控訴人所有地等の価格
は,被控訴人が公共用地を取得する際の用地買収価格や,土地収容
における損失補償額を算定する際に使用されている評価方法に従
い,その市場価格を基準としつつ,具体的事情をも考慮し,不動産
鑑定士等の意見を踏まえた上で算出されたもので,客観的に公正で
あり,その評価の手法も合理性があると認められる。そして,本件
財産区所有地等の価格は,上記本件財産区所有地上の立木の合計価
格1483万2400円と本件財産区所有地の価格5131万94
60円との合計6615万1860円,被控訴人所有地等の価格
は,上記被控訴人所有地上の立木の合計価格2441万1700円
と上記被控訴人所有地の価格3947万8060円との合計638
8万9760円であるから,その価格の差額(226万2100
円)が,その高価なものの価額の6分の1(本件財産区所有地等の
価額の6分の1である1102万5310円)をこえるときには当
たらないので,本件交換契約は,本件条例3条1項ただし書の場合
には該当しない。
 (2)ア これに対し,控訴人らは,被控訴人が本件交換契約時にその価格
を算出していた被控訴人所有地の立木合計8890本のうち,現在
でもその価値を有している生木は5677本,すなわち,約63.
86パーセントしか存在しないところ,被控訴人は,上記立木の価
格を2441万1700円と見積もっているが,実際はこれに上記
約63.86パーセントを乗じた約1558万9312円の価値し
かないことになり,他方,控訴人らが本件財産区所有地において生
木数の立入調査をした結果によると,本件財産区所有地の生木の残
存率は90.82パーセントないし97.85パーセントであるか
ら,被控訴人が見積もった上記立木の価格1483万2400円に
上記割合を乗じた1347万0786円ないし1451万3503
円の価値が残存していることになるので,被控訴人所有地等の価格
は,土地の価格3947万8760円を合計しても5506万80
72円しかないことになるのに対し,本件財産区所有地等の価格は
6479万0246円ないし6583万2963円として残存して
いることになるところ,被控訴人所有地と,本件財産区所有地にお
ける,上記のような生木の残存率の相異は,土地の評価においても
反映させるべきであるから,その場合は被控訴人所有地等の価格と
本件財産区所有地等の価格の差額が,本件財産区所有地等の価額の
6分の1を超えることになるのは明らかであり,本件交換契約は,
本件条例3条1項ただし書の場合に該当し,財産区議会の議決を経
ることが必要となるところ,これを経ていないのであるから無効と
なる旨主張する。そして,証拠(甲43ないし45,76)中に
は,控訴人らが本件財産区所有地等及び被控訴人所有地等について
調査を行った結果,被控訴人所有地上の立木のうち,3864本が
立ち枯れ又は倒木しており,生木は5677本である旨の記載があ
り,他方,本件財産区所有地上の立木のうち,杉の生木数は237
3本であり,桧の生木数は2623本であり,これを被控訴人の調
査結果である,杉の立木数2218本,桧の立木数2888本(乙
70)と比較すると,桧についての残存率は90.82パーセント
であり,杉及び桧の平均残存率は97.85パーセントであるとの
記載がある。しかし,上記控訴人らの調査は,上記証拠によれば,
被控訴人所有地上の立木については平成11年2月16日に開始さ
れ,本件財産区所有地上の立木については平成14年12月5日に
開始されたものであり,本件交換契約の約2年ないし4年後にされ
たものであるところ,本件条例3条1項ただし書の適用の有無は,
本件交換契約時において判断されるべきであって,控訴人らの主張
は時点の異なるものを比較するものであって,失当である。
  イ(ア) 次に,控訴人らは,被控訴人は,被控訴人所有地上の立木に
つき,平成6年に調査を行い,次に平成8年にその1割程度を再
調査して,再調査した立木が平成6年に比べてどの程度成長して
いるかを胸高直径から算出し,その平均値を被控訴人所有地上の
立木全体の成長率として,上記立木全体の価格の評価をしたが,
被控訴人の上記評価方法は,平成8年の時点で倒木し,又は立ち
枯れとなって無価値となっている立木についても一律に成長した
ものと評価している点で誤りである旨主張する。
     この点,上記控訴人らの調査結果があるほか,証拠(乙63)
によれば,被控訴人の調査結果によっても,上記平成6年の調査
時において,被控訴人所有地の一部の木のうち,倒木は合計27
本,立ち枯れは合計40本であったのに対し,平成11年8月の
調査時においては,倒木が合計135本,立ち枯れが78本とな
っていることが認められるが,そもそも平成8年の調査時点で倒
木及び立ち枯れがどの程度あったかは明らかでないし,仮に平成
8年に倒木又は立ち枯れとなっている立木が存在したとしても,
被控訴人は,被控訴人所有地上の立木及び本件財産区所有地上の
立木の双方について,平成8年に上記方法によって立木全体の価
格を評価したものであるから,価格の差額の程度を把握するにつ
いて,上記評価方法を不当なものということはできない。
   (イ) また,控訴人らは,被控訴人の,被控訴人所有地の立木につ
いての評価方法は,立木の胸高直径のみを考慮しているが,同じ
胸高直径でも,育成年数により年輪の幅が密であったり粗かった
りし,それによって立木の価格も異なり,また,立木の高さも当
然その価格に影響するのであるから,被控訴人の上記方法は不当
である旨主張するが,これについても,被控訴人は,被控訴人所
有地上の立木及び本件財産区所有地上の立木の双方について,同
様の方法により評価をしたのであるから,上記評価方法も不当な
ものということはできない。
   (ウ) さらに,控訴人らは,被控訴人は,被控訴人所有地等及び本
件財産区所有地等の評価において,基準地を被控訴人所有地及び
本件財産区所有地内に各1か所ずつ選定しているが,このように
基準地を2か所設けることは不合理であるし,立木の搬出費用に
ついて全く考慮されていない点も不当である旨主張し,これに沿
う証拠(甲46,47,54,77)もあるが,基準地は,本件
財産区所有地及び被控訴人所有地の価格を算定する基準となるも
のであるから,それぞれの土地から代表的な土地を1か所ずつ選
定したことは何ら不合理なものではないし,立木の搬出費用につ
いては,証拠(乙66ないし69)によれば,被控訴人の本件財
産区所有地及び被控訴人所有地の価格算定において,個別的要因
の格差率の交通・接近条件として考慮されていることが認められ
る。
   (エ) そうすると,上記(ア)から(ウ)までの控訴人らの主張は,そ
もそも本件財産区所有地等及び被控訴人所有地等の価格評価の不
当性が直ちに本件交換契約の無効に結びつくものとは解されない
ことに加え,これをもって,被控訴人が採用した評価方法が客観
的に公正さを欠くものということはできないし,本件交換契約
は,本件財産区所有地等と被控訴人所有地等の価格の差額が,そ
の高価なものの価額の6分の1をこえるときには当たらないとの
認定を覆すものではなく,ほかにこの認定を覆すに足りる証拠は
ない。」
 (3) 原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の「2 争点」に摘示の
争点(3)についての同判決の判断部分である同27頁5行目から同28頁16
行目までを削除する(なお,同争点に対する判断は,後記「2 当審におけ
る当事者の主張について」の(4)に記載のとおりである。)。
(4) 原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の「2 争点」に摘示の
争点(4)ないし(6)についての同判決の判断部分は,原判決「第3 当裁判所
の判断」の4ないし6に記載のとおりであるから,これを引用する。
2 当審における当事者の主張について
(1) 本件財産区の総意等に基づくことなく締結された本件交換契約の効力につ
いて
ア 本件財産区の入会地としての歴史的経緯と本件交換契約の効力について
 証拠(甲5ないし9,10の1ないし3,24,28の1ないし3,4
9,50,56ないし58,60,66,乙9,100,102ないし1
05,121,当審における被控訴人代表者)によると,以下の事実が認
められる。
(ア) 旧高良内村(部落)は,江戸時代から,広大な山林原野を有する山
村であり,高良川の両岸や,本件財産区所有地が位置する耳納山地の尾
根より南側などには,旧高良内村(部落)の住民のみならず,周辺の多
数村落の住民が関係する共同入会山が設けられ,住民各自が共同入会山
に入り,燃料となる柴のほか,緑肥ないし牛馬の飼料となる草などを採
集して生活の糧としていた。
(イ) 明治22年に町村制が施行される以前である明治11年3月1日に
は,旧高良内村の村持惣代3名の名義で地券が交付され,上記共同入会
山は「高良内村持ち」とされたが,その後も,関係諸村は,旧高良内村
と秣柴条約を結んで入会を続けていたところ,町村制施行後の明治24
年ころから,当時の高良内村村長らが村の基本財産造成のため植林を提
唱したことから,広大な地域に松や杉を植えるようになり,明治40年
ころから大正初期にかけて,高良内村が苗木等を調達し,村民が労務を
提供するなどして,盛んに杉や桧の植林を行い,村有林を増やしていっ
た。他方,燃料や肥料の製造方法が発達したため,燃料や肥料として柴
や草を用いることが次第に少なくなり,従前の柴や草を採集していた原
野の入会状況は,衰退していった。
(ウ) 高良内村は,昭和26年6月,久留米市と合併したが,その際本件
財産区が設置され,福岡県知事は,同年8月,法295条に基づいて,
本件財産区に議会を置く旨の久留米市高良内財産区議会設置条例(昭和
26年久留米市条例第61号)案を久留米市議会に提出し,同市議会の
議決を経て,同条例は,同年9月1日に公布され,同条例に基づいて,
高良内財産区議会が設置された。その後,久留米市高良内財産区区有財
産の管理および処分に関する条例(昭和32年久留米市条例第3号)が
制定され,本件財産区区有財産の管理及び処分については,法令または
他の条例に特別の定めがある場合を除くほか,上記条例の定めるところ
によるとされた。その後,前記昭和32年久留米市条例第3号は,昭和
39年久留米市条例第1号(本件条例)により廃止された。
(エ) ところで,本件財産区所有地は,前記合併当時,樹齢70年ないし
80年の高額で取り引きされる立木を多数保有管理しており,これらを
伐採,売却して収入を上げ,財産区の潤沢な財政を維持していたが,昭
和40年以降,次第に国産木材の需要が落ち込み,林業の採算性が悪化
する傾向にあり,本件財産区においても,平成2年ころから売却して利
益を確保できる樹齢の立木が大変少なくなっており,立木の撫育等の山
林の管理も外部委託によっており,このままでは管理費用の調達にも不
足を生じかねない状況に至っている。
 上記認定のとおり,本件財産区所有地は,耳納山地の南側斜面に位置し
ているもので,江戸時代には,共同入会山としての実態を備えており,明
治22年の町村制施行後は,高良内村の村有地とされ,高良内村の管理の
もとで,盛んに植林が行われ,入会原野は杉,桧,松等の立木を保有する
山林に変貌し,その反面,柴や草を採集していた地元住民の入会稼ぎの実
態は次第に失われていったが,久留米市との合併までは,高良内村に存す
る「高良内村持ち」の山林として,村民による管理,利用が行われていた
こと,久留米市との前示合併に際して,法の定めるところに従い久留米市
高良内財産区議会設置条例が制定されて,本件財産区に議会が置かれたこ
と,また,本件財産区区有財産の管理及び処分に関しては,久留米市高良
内財産区区有財産の管理および処分に関する条例(本件条例)の定めると
ころによることが定められたことが認められる。そうすると,本件財産区
については,共同入会山としての歴史的な経緯が存したことが認められな
いわけではないが,久留米市との合併に当たって,本件財産区は,法の定
める財産区として設置され,法の定めるところによって財産区議会が設置
されたのであるから,本件財産区が保有する財産についても,法によって
定められた条例等に従って管理及び処分が行われるというべきである。ま
た,本件財産区設置後は,本件財産区所有地等の財産区の財産は,実際
も,法や本件条例に従い,本件財産区議会の議決を経るなどして,その管
理及び処分が行われており,立木の売却代金による収益と,山林の管理費
用等の支出を中心とする,その収支もすべて本件財産区の会計により管理
されていることが認められる。また,本件財産区が設置された当時におい
ては,すでに,本件財産区所有地に対する入会の実態は,前記認定のとお
り,使用収益の慣行の存在の点においても,入会山の管理処分を統制する
団体の存在の点においても衰退していたのであるから,本件財産区が設置
され,法に従って,その管理又は処分がされるに至った後においても,本
件財産区が入会地としての歴史的経緯を有するとして,本件財産区区有財
産の管理及び処分は本件財産区の総意によって決せられるべきであるとす
る控訴人らの主張は採用することができないし,本件財産区所有地等が入
会地としての歴史的経緯を有することを前提とする控訴人らのその余の主
張も,いずれも理由がなく,採用できない。
イ 本件財産区の総意による反対決議に反した本件交換契約の効力について
財産区議会は,財産区に関し,その所在する市町村等の議会の議決すべ
き事項を議決することができるところ(法295条),財産区について,
その財産等の管理及び処分又は廃止については,地方公共団体の財産の管
理及び処分又は廃止に関する規定によるとされており(法294条1
項),同条により法237条2項によることとなり,財産区の財産は,条
例又は議会の議決による場合でなければ,交換等をすることができないと
ころ,本件財産区区有財産の管理及び処分については,本件条例の定める
ところによるとされており,本件条例2条には,予定価格700万円以上
の不動産の売払いについては,法96条1項7号(本件条例制定当時)の
規定により議会の議決に付さなければならない旨が,本件条例3条1項に
は,「区有財産は,本財産区,国または公共団体において公用または公共
用に供する必要がある場合には,これを他の同一種類の財産と交換するこ
とができる。」旨がそれぞれ定められている。したがって,本件条例は,
管理者に対して,本件財産区議会の議決に付することなく,一定の要件の
下に区有財産を他の同一種類の財産と交換する権限を付与したものであ
る。このように,本件条例は,本件財産区が保有する財産の管理及び処分
について定める。本件においては,本件交換契約は,本件財産区議会の議
決を経て制定された本件条例の定めるところに従って締結されたのである
から,本件財産区議会が控訴人らが主張するような決議をしたとしても,
これによって,本件条例の効力が左右されるものではない。
(2)本件条例は,法295条及び本件財産区議会設置条例に抵触するか
本件条例の効力について,控訴人らは,本件条例は,福岡県知事が法2
95条に基づいて設定した久留米市高良内財産区議会設置条例によって
付与された財産区議会の権限を縮小し,管理者に一定の権限を付与する
ものであるから,法295条の趣旨を潜脱するものとして,法的効力を
有しないし,仮に,本件条例が法的効力を有するとしても,特別地方公
共団体である財産区には条例制定権が認められていないのであり,本件
条例は,もともと本件財産区の条例ではないから,財産区議会が反対決
議を行えば,原則に戻って財産区議会の議決なくしては区有財産の交換
ができないこととなると解するべきである旨主張するので,検討する。
 法295条は,財産区の財産等に関し必要があると認めるときは,都道
府県知事は,議会の議決を経て当該市町村等の条例を設定し,財産区の議
会又は総会を設けて,財産区に関し市町村等の議会が議決すべき事項を議
決させることができる旨を定め,本件財産区については,福岡県知事は,
同条の定めるところに従って,「久留米市高良内財産区議会設置条例」を
設定し,同条例に基づいて本件財産区議会が設置され,同議会の議決を経
て本件条例が制定された。そうすると,本件条例は,久留米市の条例とし
て制定されたものであり,本件財産区が保有する財産等については,本件
財産区議会において久留米市の議会が議決すべき事項について議決するこ
とができ,その反面,久留米市の議会は,本件財産区の財産等に関して
は,議決することができなくなると解される(法295条)。本件におい
ては,前記説示のとおり,久留米市高良内財産区議会設置条例によって設
置された本件財産区議会の議決を経て,本件財産区に関して本件条例が制
定され,本件財産区所有地等の管理及び処分等については,本件条例によ
ることが定められたのである。本件条例は,本件財産区議会の議決を経る
などして,適正の手続に従って制定されたのであり,その内容も,前示の
とおり,本件財産区の財産等の管理及び処分に関するもので,これが福岡
県知事の権限を逸脱し,前記権限に反するものとして制定されたと認める
ことはできないし,本件条例が法295条の趣旨を潜脱すると認めること
もできない。また,控訴人らは,本件条例は,久留米市高良内財産区議会
設置条例によって本件財産区議会に付与された権限を縮小するものである
から,無効であると主張する。しかしながら,本件条例は,本件財産区議
会が,本件財産区の財産等の管理及び処分に関する条例を制定するとし
て,その内容を審議した上,これを可として議決したのであるから,控訴
人らが主張する前示事由をもって,本件条例の効力を否定することはでき
ないといわざるを得ない。従って,この点に関する控訴人らの主張は,採
用しない。
 さらに,控訴人らは,財産区には,条例制定権が認められていないし,
本件において,本件財産区所有地等について,入会地としての歴史的経緯
が存したことから,福岡県知事も,このような財産区の財産と自治を守る
ために本件財産区議会を設置したのであり,久留米市も,高良内村と久留
米市との合併に当たっては,高良内村が承継した本件財産区所有地等に対
する自治を保障するとしたのであるから,本件財産区が保有する財産につ
いて,本件財産区と地方公共団体との利害が激しく対立するような場合に
まで,管理者に本件財産区が保有する財産の処分権限を付与するとする本
件条例は,本件財産区議会の権限を縮小するものであり,久留米市高良内
財産区議会設置条例に反するものであると主張する。久留米市高良内財産
区議会設置条例が制定されたことにより,本件財産区に関し久留米市が議
決すべき事項については,本件財産区議会において議決することができる
のであり,これに基づいて本件条例が制定され,本件交換契約は,本件条
例の定めに基づいて締結されたところである。控訴人らの主張するところ
は,本件財産区は,久留米市が計画する本件処分場の設置を前提とする本
件財産区所有地等の譲渡等に反対する旨の意思を表明しているにもかかわ
らず,このような財産区の意思に反して,本件条例に基づいて本件交換契
約が締結されたことから,本件条例が,前示財産区設置条例に反するとい
うものであり,前記説示のとおり,本件財産区は,本件財産区に関する事
項については,本件財産区議会において議決することができるのであり,
本件条例の改廃等も本件財産区議会の議決によるところであるから,その
限りにおいて本件財産区の意思は,本件財産区議会により決し得るところ
である(なお,本件条例については,実際,本件財産区議会の平成11年
3月31日の議決により,改正されるとともに,本件条例3条は,廃止さ
れるに至っている(乙83))。したがって,控訴人らの前記主張は,理
由がない。
 なお,本件条例は,上記のとおり,本件財産区の管理者である久留米市
長に本件財産区の財産に関する管理及び処分に関する権限を付与し,本件
条例3条に定める要件を具備する場合には,本件財産区議会の議決を経る
ことなく本件財産区の財産等を他の同一の財産と交換することもできると
定めたのであるから,本件において,本件財産区が本件処分場の建設及び
本件処分場建設のために本件財産区の財産等を処分すること等に反対して
いるとしても,かかる事由をもって,本件条例が上記財産区議会設置条例
に抵触すると解することは困難であり,本件財産区が本件条例に拘束され
ることは不当であるとする控訴人らの主張は,採用できない。
(3) 本件交換契約は,本件条例3条の定めに反し,無効かについて
ア 控訴人らは,本件財産区議会において,本件財産区所有財産等の処分等
に反対する旨の決議をしたと主張するので,以下検討する。
 証拠(甲18及び19の各1,2,20,23,29ないし31,35
ないし37,38の1,2,48ないし50,54,乙24,25,5
4)によると,本件財産区議会は,C市長のもと,平成7年7月に設置さ
れたごみ問題協議会の協議を通じて,久留米市が内野処分場に代わる新処
分場用地として,本件財産区内の杉谷地区も選択肢の一つであるとの見解
を有していることが判明したことから,平成7年12月25日に開催され
た同年度第3回高良内財産区議会定例会において,「1 高良川の水源汚
染及びその周辺環境を破壊するおそれのある行為,2 広大なる保安林の
伐採による水源の枯渇と土砂崩壊と土砂流出による自然環境を破壊するお
それのある行為,すなわち,杉谷地区のごみ埋立地建設については絶対反
対するものである。」旨決議したこと(平成7年の決議),その後,久留
米市は,平成8年2月に上記杉谷地区を新処分場建設予定地として,旧計
画の規模を大幅に縮小した新計画を発表し,同月,高良内町の7町内会の
各町内会長により構成する高良内町運営委員会において新計画について説
明したところ,同委員会は新計画に反対する意思を表明したこと,これを
受けて,本件財産区も,同年9月に全員協議会を開催し,新計画に反対で
ある旨を決議したこと,他方,久留米市は,同年7月から本件処分場用地
周辺地域の住民や市民に対する説明会を60回以上に亘って実施したほ
か,市政広報や上記周辺地域住民に対するビラの配布等により,本件処分
場の構造や埋立物の安全性を向上させること,地域振興政策及びごみ減量
施策の推進をはかることなどについて訴え,同年9月末に公聴会を開催し
て理解を求めたこと,そこで久留米市は,同年12月25日,本件財産区
の全員協議会の場において,本件処分場建設の事業区域として,財産区有
地につき,埋立地部分については譲渡(買収)により,緩衝緑地部分につ
いては借地により取得したいとの提案をしたこと,C市長は,その後,平
成9年1月23日,本件条例に基づき,本件財産区の議決を経ずに,久留
米市との間で,本件財産区所有地につき,本件処分場建設の測量のための
一時借地契約を締結し,久留米市は,これを受けて同月24日から測量を
開始したこと,本件財産区は,同年2月5日,全員協議会において,平成
8年12月の前記提案に対し,譲渡,借地のいずれについても反対である
旨及び本件財産区が久留米市に対する譲渡に応じなかった場合に,久留米
市が本件財産区議会に相談せずに,他の土地と交換することで用地取得を
図ることについても反対である旨の決議をし,あわせて,本件財産区が新
計画に反対の意見を表明しているのに上記一時借地契約をしたC市長に対
し,本件財産区管理者としての不信任を決議したこと,本件財産区議会の
定例会が同年3月25日に予定されており,その議事日程に,発議第1号
議案として,高良内町杉谷地区ごみ埋立地建設反対に関する決議を行うこ
とが予定されていたところ,本件交換契約は,その前日である同月24日
に締結されたこと,本件財産区議会は,上記定例会において,新計画にか
かる本件財産区所有地における本件処分場建設に反対する旨の決議をした
ことが認められる。
 以上のとおり,本件財産区議会は,平成7年の決議により,本件財産区
所有地に本件処分場を建設することに反対である旨の意思を明示している
ことが認められるところ,平成7年の決議は,ごみ問題協議会における新
処分場の建設用地選定に関する協議内容を通じ,久留米市が本件財産区所
有地を新処分場用地として選択し,本件財産区所有地である杉谷地区につ
いて用地取得を図ることの立案がされることを踏まえてなされたものであ
り,平成7年の決議には,本件処分場建設に反対するのみならず,その手
段として,久留米市が本件財産区所有地を本件処分場の用地として取得す
ることに対する反対の意思も含まれていると解されないではないが,上記
決議は,久留米市が本件財産区所有地に本件処分場を建設する旨の新計画
を発表する以前に行われたものであり,久留米市は,上記決議後,従前の
旧計画の内容を大幅に縮小するとともに,本件処分場建設については,そ
の構造及び埋立物の安全性を向上させることや地域振興策等を推進させる
こと等を内容とする新計画を提示して,周辺地域の住民等に対する説明会
の開催や市政広報等の配布を通じて,上記建設方針や政策等の周知に力を
注ぎ理解を求めた経過が存するのみならず,本件財産区も,平成7年の決
議後も,ごみ問題協議会等を通じて,上記新計画に関する説明を受け,ご
み処分場の設置等について,久留米市との間で協議を重ねていたものであ
るし,平成7年の決議を受けて,本件財産区の財産の管理及び処分等を定
める本件条例の改正や本件条例に基づく処分等に関して格別の協議をした
等という経緯は存しないところである。そうすると,平成7年の決議がさ
れたことをもって,直ちに本件条例に定める処分等に関して議会の議決が
されたと認めることは,困難である。
 また,上記認定のとおり,本件財産区の全員協議会の決議により,その
後も,本件財産区所有地に本件処分場を建設することにつき反対の意思が
表明されており,平成9年2月25日に開催された全員協議会において
は,本件処分場の建設用地として,久留米市に本件財産区所有地を譲渡す
ること及び本件財産区議会に相談することなく交換することについて,反
対する旨の決議をしているが,本件財産区における全員協議会は,久留米
市高良内財産区議会設置条例に基づいて設置された機関ではないし,法あ
るいは条例等により本件財産区議会が議決する事項等について,本件財産
区議会とは別に議決する権限が付与されているとか,本件財産区の全員協
議会が決議したとする上記各決議について,本件財産区議会から議決する
に必要な権限等が負託されたという経緯も存しないから,本件財産区の全
員協議会が行った上記各決議は,これを本件財産区議会の議決と同視する
ことはできない。
 したがって,本件財産区が本件財産区所有地の処分に関し反対決議を行
ったことを前提とする控訴人らの前記主張は,理由がない。
イ 本件交換契約の「公共性」について
 (ア) 控訴人らは,C市長は,平成7年の決議のとおり,本件処分場建設
は,保安林としての本件財産区所有地等の公益的機能と自然環境を破壊
する行為であるとして反対の意思を表明している本件財産区の管理者と
しても,久留米市の代表者としても,上記保安林を住民のため保全する
べき義務を負っているのであり,本件財産区所有地等を破壊して,本件
財産区所有地等に,久留米市のため,ごみ処分場を建設する必要性は乏
しく,また,前記ごみ処分場は,本件財産区所有地等以外の地に建設す
ることも可能なのであるから,保安林を破壊して本件処分場を建設する
とする本件交換契約を締結することは,本件条例3条の定める「公共
性」に欠けるものであると主張するので,検討する。
 本件条例3条1項は,本件財産区所有の財産は,本件財産区,国また
は公共団体において,公用または公共用に供する必要がある場合に,こ
れを同一種類の財産と交換できる旨を定め,管理者が,財産区議会の議
決を経ることなく,本件財産区所有の財産を交換することを認めてい
る。
 証拠(甲15の1,2,16,18の1,2,19,32,71,7
3の1,2003,2004,2006,乙9ないし13,15ないし
20,26,27,29,89ないし91,121,当審における被控
訴人代表者)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
① 市町村は,当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理を行う責任があ
るところ,一般廃棄物の処理は,当該市町村の自地域内処理が原則と
されており,一般廃棄物の処理を長期的,安定的に行うためには,そ
の基幹的公用施設である最終処分場を整備することが必要である。
② 久留米市は,一般廃棄物の最終処分場として,内野処分場を有し,
昭和47年からごみ焼却場から出る焼却灰及び不燃ごみ等を埋め立て
てきたが,平成8年の時点で,今後,リサイクルの推進による一般廃
棄物の減少を考慮したとしても,内野処分場は,平成11年前半には
満杯になると予測されていた。
③ 久留米市は,昭和60年ころから新処分場建設事業に取り組み,市
内で唯一の山間部である耳納山地の南側斜面に所在する本件財産区所
有地内の杉谷地区を,地形や交通等の立地条件に照らし適地であると
して,新処分場建設用地に選定し,平成3年に新処分場建設の基本計
画を策定して環境影響調査(いわゆる環境アセスメント)を実施し,
平成5,6年ころ,今後3期計画で,50年分,予想埋立容量を20
0万立方メートルとする旧計画とを立案し,第1期計画(15年分,
埋立容量50万立方メートル)について実施設計を行った。これに対
し,平成2年ころから高良内町の住民らによる建設反対運動が起き
た。
 久留米市は,上記のとおり,内野処分場に代わる新処分場の建設事
業を進めていたが,平成8年の時点で未だ新処分場の建設着手にさえ
至っていなかったため,内野処分場の使用期間は平成8年3月31日
で満了していたものの,同日以降も,事実上,内野処分場への埋立て
を続けていた。しかし,埋立容量の物理的限界を迎えたため,平成1
2年3月31日をもって内野処分場を閉鎖し,埋立てを終了すること
になった。そこで,久留米市は,自地域内処理の原則に沿って,安定
的なごみ処理を継続するため,内野処分場の閉鎖に引き続き,平成1
2年4月までには新処分場の供用を開始することがどうしても必要で
あるとの方針で,新処分場建設事業を進めていた。
④ このような状況で,久留米市は,平成7年1月の久留米市長選挙に
より就任したC市長のもと,新処分場建設予定地の選定を原点に戻っ
て再検討することとし,同年7月に,建設用地選定等のごみ処理問題
について,市民及び市民団体の参加による,ごみ問題協議会を設置し
て協議を重ね,同年11月に,同協議会から久留米市に対し,内野処
分場の埋立の限界が迫っており,市民生活の危機打開のため,市が立
地を選定し早急に新処分場を建設すること及び処分場の使用期間は,
厚生省の示した指針に沿って,1か所15年に限り,市内に順次整備
をしていくことの提言がされた。これを受けて久留米市は,平成8年
2月に,旧計画の設置規模を大幅に縮小し,埋立期間15年,埋立面
積約3.1ヘクタール,埋立容量約46.8万立方メートルとするこ
と,建設予定地については,市内全域から6か所の候補地を選んで調
査分析をした上,内野処分場の容量限界が迫っている時間的制約の下
で,実施設計を完了している前記杉谷地区が最適であるとして,同地
区を再度建設用地に選定する内容の新計画を発表した。その後,同年
11月に,新計画により本件処分場を建設するため厚生省に対し,補
助事業申請にあたる平成9年度廃棄物処理施設整備計画書を提出し
た。
⑤ 久留米市は,ごみ減量・リサイクル政策として,家庭ごみ有料指定
袋制度の導入,古布の回収,事業系ごみ手数料値上げ等を行ってきた
が,平成9年度から,粗大ごみ戸別単品有料収集,事業系ごみ有料指
定袋制度の導入を行い,平成10年からはごみの17種分別収集を実
施したことなどにより,平成10年度の可燃ごみ及び不燃ごみ処理量
が平成4年度の78パーセントに減少し,リサイクル率も19パーセ
ントに達した。そこで,久留米市は,将来のごみ量推計の見直しを行
った結果,17種分別収集の実施,中間処理施設整備方針の確定及び
事業系不燃ごみ受入れの先送りにより,さらにごみ減量,埋立量減容
が見込まれることから,平成11年8月に,新計画の設置規模を大幅
に縮小し,埋立面積1.7ヘクタール,埋立容量20.6万立方メー
トルとする見直し計画を発表した。その後,同年10月に,見直し計
画に係る平成12年度廃棄物処理施設整備計画書を厚生省に提出した
が,その際,再度ごみ量の推計を行い,埋立容量を20.4万立方メ
ートルに縮小修正した。
⑥ 久留米市は,平成12年7月に,見直し計画の実施設計を完了した
が,同実施設計においては,本件処分場施設の安全性確保に最大限の
配慮をすることとし,貯留構造物は,地質調査の結果,下流側に重力
式コンクリート擁壁,谷分に逆T型コンクリート擁壁を建設し,埋立
地底部は,より充実した複合遮水構造とし,多重構造シート,不透水
性改良地盤(厚さ50センチメートル),コンクリート版(厚さ50
センチメートル)を施すこととしたほか,埋立物の安全性の向上のた
め,焼却灰から重金属が溶け出さないようにするための灰固形化施設
を建設し,安全監視体制も充実することとし,地元住民を中心とする
監視機関を発足させた。
⑦ 久留米市は,新計画におけるごみ量推計を,将来の人口予測,排出
抑制及び集団回収等によるごみ減量効果,自家処理等の見込み,他の
市町村からの搬入,又は他の市町村への排出等を勘案し,ごみの種類
ごとに行い,過去5年以上の実績を基礎として算定する等,厚生省の
通知に示された指針に従い,過去10年間の実績値を使用して行っ
た。
 そこで,検討するに,廃棄物処理法6条1項,6条の2第1項は,市
町村は,当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画を定め,
同計画に従って,その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支
障が生じないうちに収集し,これを運搬し,及び処分しなければならな
いと規定していることに照らすと,久留米市は,一般廃棄物について,
原則として自地域内において,長期的,安定的に処理するごみ処理体制
を構築すべき責任を負っているところ,上記認定事実によると,平成8
年の時点で,今後,リサイクルの推進による一般廃棄物の減少を考慮し
たとしても,内野処分場は平成11年前半には満杯になることが予測さ
れており,さらに平成12年3月には内野処分場を閉鎖することとなっ
たため,ごみ処理行政に空白を生じさせないためには,新たな一般廃棄
物の最終処分場を早急に確保し,平成12年4月には供用を開始する差
し迫った状況にあったこと,一般廃棄物について自地域内処理が原則で
あるとされていたことに照らし,久留米市内において,最終処分場を確
保するべく用地選定をすべきところ,本件財産区所有地は,山間部に位
置し,約50万立方メートルの埋立容量を確保できるなど立地条件が最
適であり,旧計画において建設用地とされ,実施設計がされていた経緯
から,他の候補地と異なり,時間的にも平成12年4月から埋立てを開
始しうる用地であると判断されたこと,新計画に沿った廃棄物処理施設
整備計画書を厚生省に提出したことが認められる。そして,久留米市
は,本件処分場建設用地として,本件財産区所有地を選定するに当たっ
ては,本件財産区所有地とともに,他の地をも,その候補地として検討
した結果,上記のような理由から,本件財産区所有地に本件処分場を建
設するとの結論に至ったのであり,このような久留米市の検討の経緯等
に照らすと,本件財産区所有地に本件処分場を建設することが相当であ
るとした久留米市の判断は,相当であり,その裁量を著しく逸脱してい
るとは認められないし,その判断の手法等にも格別に不合理であると認
める事由も存しない。
 したがって,久留米市が,本件処分場の建設用地として,本件財産区
所有地を選定したことは相当である。
 ところで,控訴人らは,本件処分場の建設地としては,筑後川大堰よ
りも下流の地盤がしっかりした地についても,環境影響調査等を行っ
て,検討し,選択すべきであるとするが,控訴人らの前記主張も具体的
な候補地を指摘して主張するものでないし,上記の地について,本件処
分場の建設用地として適切であり,円滑かつ迅速な建設が実現するとい
う保証があるとは認められないこと,久留米市は,本件処分場建設用地
として本件財産区所有地の他の候補地についても,比較,検討した上
で,本件財産区所有地が本件処分場建設用地として適切であると判断
し,選定するに至ったものであること,本件処分場建設に関する久留米
市の前示のとおりの必要性及び緊急性等の諸事情にかんがみると,本件
処分場を建設するについては,本件財産区所有地の他に適切な代替地が
存する等とする控訴人らの主張は,採用できない。また,久留米市は,
前示のような規模と安全性を具備するものとして本件処分場を建設する
としており,前記安全性については,相応の科学的知見に基づいた建設
計画であり,これが直ちに著しい危険性を有する不適切なものであると
は認め難いし,控訴人らの主張するところによっても,本件財産区所有
地を本件処分場の建設予定地として取得することの必要性及び公共性が
左右されるものではない。
 そうすると,久留米市が本件処分場を建設用地として取得すること
は,公共性が存
.するものと認められるし,本件財産区所有地については,本件条例3
条に定める「公用または公共用に供する必要」がある場合に該当すると
認められる。
(イ) また,控訴人らは,本件財産区所有地は,保安林に指定されてお
り,保安林の指定解除がされていないし,前記指定解除の見通しもない
のであるから,このような状況で,本件財産区所有地に本件処分場を建
設するという計画は,保安林の指定解除を前提とする賭けであり,財産
区管理者であるC市長が,本件処分場を建設するという公共性が存する
として,久留米市との間で,本件財産区所有地に関する本件交換契約を
締結することは,保安林としての本件財産区所有地の公共性を検討しな
いもので,公共性を欠くものといわざるを得ないと主張する。しかしな
がら,本件処分場建設の計画は,前示のとおり,久留米市にとって,緊
急性のある計画であり,その実現の必要性が存するところであり,本件
処分場を本件財産区所有地に建設するとしたことは,相当で,これを違
法とする事由が認め難いところである。前記保安林の指定解除について
は,現時点においては,本件処分場の用地の確保が未だ不明確であるこ
と等から,事業実現の確実性が見込まれないとして,現段階での保安林
指定の解除は困難であることから,その指定解除の手続が未だ了されて
いないというに止まり,保安林としての指定解除に関する申請が,森林
法に定める保安林の指定解除に関する要件を具備していないとして,棄
却され,これが確定したという経緯は存しないのであるから,本件財産
区所有地について,保安林の指定がされており,現在,その指定解除が
されていないとしても,久留米市が,本件財産区所有地に本件処分場を
建設するとする計画に従って,本件財産区と久留米市との間で,本件財
産区所有地について本件交換契約を締結することが,直ちに本件条例3
条に定める「公共性」に反すると解することはできない。加えて,本件
において,本件財産区所有地に関する保安林指定解除がされなければ,
久留米市が,本件処分場建設のために必要な建設用地を取得することが
できないとする特段の事由も存しない。
 以上のとおりであるから,本件交換契約について,本件条例3条に定
める「公共性」がないことを前提とする控訴人らの主張はいずれも理由
がない。
 なお,控訴人らは,本件財産区議会において,上記「公共性」に関す
る判断がされるべきであると主張するが,本件財産区の管理者は,公共
団体等において公用または公共用に供する必要がある場合については,
財産区議会の議決を経ることなく,区有財産を同一種類の財産と交換す
ることができるのであるから,本件において,本件交換契約の締結前
に,その締結の要否及びその可否等について本件財産区議会の議決を要
すると解することは困難であるし,本件財産区所有地に本件処分場を建
設することについて,公共性があることは,前記説示のとおりであるか
ら,控訴人らの前記主張も採用できない。
(ウ) 上記のとおりであるから,本件交換契約は公共性等を欠くとする控
訴人らの前記主張は,いずれも理由がない。
(4) 本件交換契約が,民法108条の類推適用により,双方代理として無権代
理になるかについて
 控訴人らは,本件財産区は,久留米市と合併するに当たって,本件財産区
が保有する本件財産区所有地は,入会地としての歴史的経緯が存し,高良内
村の村有林であったことから,これを本件財産区の総意で管理及び処分する
こととして,本件財産区を置き,本件財産区議会を設置したのであり,本件
財産区は,本件処分場の建設に反対しており,そのために本件財産区所有地
を処分することにも強く反対していたのであるから,本件財産区所有地の処
分を巡っては,本件財産区と久留米市との間には,利害の対立がある。した
がって,本件財産区所有地等の処分等については,上記のような歴史的経緯
をも踏まえるべきであるところ,C市長は,本件財産区の総意に反して,本
件処分場の建設用地として本件財産区所有地を久留米市に譲渡するべく本件
交換契約を締結することとしたのであるから,本件交換契約は,民法108
条に抵触すると主張する。
 福岡県知事は,高良内村が本件財産区所有地等を財産として保有していた
ことから,法に基づいて本件財産区を置き,法の定めに従って本件財産区議
会が設置されたこと,本件財産区議会は,本件財産区所有地に本件処分場を
建設することについては絶対反対する旨の平成7年の決議をしたこと,ま
た,平成9年2月25日に開催された全員協議会においても,本件財産区所
有地の譲渡に反対する旨の決議をしたことは,前記認定のとおりである。控
訴人らは,久留米市との合併の当初から,久留米市と本件財産区との間に
は,利害の対立が存したところであり,本件財産区所有地等の管理及び処分
については,本件財産区の総意によるべきであるなどとするが,本件財産区
が,法によって置かれ,法の定めるところに従って本件財産区議会が設置さ
れ,本件財産区議会の議決を経て,久留米市高良内財産区区有財産の管理お
よび処分に関する条例(本件条例)が制定されたのであるから,本件財産区
所有地等が入会地としての歴史的経緯を有し,また久留米市との合併に際し
て控訴人らが主張するような事由が存したとしても,本件財産区有地等の管
理及び処分は,専ら本件条例の定めるところによることとなったというべき
である。したがって,本件財産区所有地等の歴史的経緯等を前提とする控訴
人らの主張は,採用することはできない。
 ところで,本件においては,平成7年の決議及び本件財産区の全員協議会
における決議等が存することは,前記のとおりである。このうち,平成7年
の決議は,本件財産区議会においてなされた決議であるが,これが本件条例
に定める本件財産区の財産等の管理及び処分等に関してなされた議決である
と認め難いことは,前記説示のとおりであるし,本件財産区の全員協議会の
決議が,本件財産区議会の議決として認められないことも,前記説示のとお
りである。そうすると,本件財産区の管理者であるC市長は,本件財産区議
会の議決を経て制定された本件条例の定めるところによって,本件財産区所
有地等の管理及び処分を行うこととなり,C市長は,本件条例の定めるとこ
ろに従って本件交換契約を締結したのであるから,本件交換契約が,直ちに
民法108条に反する契約であると解することは困難である。すなわち,本
件財産区については,本件交換契約締結当時,固有の意思決定機関である財
産区議会が設置されており,その場合,管理者が区有財産について交換契約
を締結するには,条例または財産区議会の議決によることが必要であるとこ
ろ(法294条1項,237条2項,96条1項),本件交換契約は,本件
条例3条に基づいて行われているから,同条例所定の要件に該当する限り,
財産区議会の議決がされたと同様に財産区固有の意思が本件交換契約に反映
されているというべきである。
  (5) 本件交換契約は,民法57条の適用又は類推適用により,利益相反行為と
して無権代理に該当するかについて
   控訴人らは,本件においては,本件財産区と久留米市と間には,合併当時
から利害の対立が存したのであり,しかも,本件財産区は,本件財産区所有
地は保安林としての公益性を保有しているとして,本件財産区所有地をごみ
処分場の建設用地とすることについて強く反対していたところであり,この
ように,本件財産区所有地を処分することについては,久留米市と本件財産
区との利害は,相反していたのであるから,C市長が,久留米市との間で締
結した本件交換契約は,利益相反行為として,無権代理に該当すると主張す
る。しかしながら,控訴人らが主張するところは,要するに,本件財産区
が,本件財産区所有地に本件処分場を建設することについて反対しているに
もかかわらず,本件財産区所有地を本件処分場建設用地として処分等をする
とする本件交換契約を締結することが,利益相反行為に該当するというので
あるから,本件財産区の管理者であるC市長の利益と本件財産区の利益が相
反するというものではないし,また,前記説示のとおり,本件交換契約は,
本件条例の定めるところにより締結されたのであり,本件財産区議会が,本
件財産区所有地の処分等に関して格別の議決をしていないところであること
に照らしても,本件財産区と久留米市の本件財産区所有地の交換契約の締結
について,これが本件財産区の意思に反するものであり,両者の間に利益相
反が存するとして,民法57条に関する規定が類推されると解することはで
きない。
 (6) 本件交換契約がC市長の権限濫用行為として無効であるといえるかについ

 前記説示したとおり,本件においては,C市長が自己又は第三者の利益を
図るために本件交換契約を締結したという利害対立の問題はないから,本件
交換契約が民法93条但書の規定の類推適用により無効となることはない。
また,前記認定のとおり,本件交換契約は,被控訴人の一般廃棄物最終処理
場建設用地取得のため締結されたもので,公共の必要性が認められる契約で
あり,公序良俗に反するということもない。
 控訴人らは,C市長が,本件財産区議会が平成9年2月5日の全員協議会
において,本件財産区所有地等の被控訴人への譲渡に反対する旨の決議を行
うとともに,譲渡に応じなかった場合に,被控訴人所有の他の土地と交換す
ることも反対する旨の決議を行い,さらに同年3月25日に開催予定の本件
財産区議会において「高良内村杉谷地区ごみ処分場建設反対に関する決議」
を行うことが予定されていることを知りながら,その前日である同月24日
に本件交換契約を締結したもので,本件交換契約が,本件財産区の意思に反
するものであることを知りながら,前記決議を潜脱するためにあえて本件交
換契約を締結したのであるから,C市長には,その権限を濫用した違法があ
ると主張するところ,本件交換契約に至る経緯について,証拠(甲16,2
0,33ないし37,38の1,2,69,乙50ないし53,92ないし
94,113ないし121,当審における被控訴人代表者)によると,次の
とおり認められる。
(ア) 久留米市は,平成8年11月,厚生省に対し,新計画による平成9年
度産業廃棄物処理施設整備計画書を提出したが,同計画書においては,本
件処分場を平成12年4月までに供用開始することを目指して,平成8年
度中に建設用地を取得し,平成9年度には建設工事に着手することを予定
していた。他方,本件財産区所有地に本件処分場を建設するについては,
地元住民らの反対運動があり,前記認定のとおり,本件財産区議会も,平
成7年の決議により,本件処分場の建設に反対する意思を表明している状
況であったことから,久留米市は,上記計画書で予定する用地取得,工事
着工を実現するため,本件財産区所有地周辺住民をはじめ,市民全体に新
計画の概要を説明して理解を求め,同年12月25日には,本件財産区の
全員協議会において,C市長が新計画の概要を説明し,好ましい解決策と
して,自然環境保護のため,本件処分場の事業区域周辺一帯を環境保全林
とし本件財産区区有財産を保持しつつ環境保全を図るとともに開発区域周
辺に緩衝緑地を設けること,本件財産区から譲渡により取得する建設用地
を開発区域中の約6ヘクタールに限定すること等を説明し,本件財産区所
有地の譲渡及び賃借について提案したが,本件財産区の回答は,平成9年
2月5日に開催される全員協議会まで持ち越されることとなった。
(イ) 久留米市は,平成8年度中に本件処分場建設用地を取得するために
は,上記回答を待たずに,用地取得の準備のために本件財産区所有地等の
測量調査及び立木調査に着手する必要があったことから,その立入りのた
め,本件財産区有地につき,本件財産区との間で,借地期間を平成8年度
末までとする一時借地契約を締結することとし,本件財産区管理者である
C市長も,これに応じ,平成9年1月23日,本件条例5条の定めるとこ
ろに従い,本件財産区議会の議決を経ることなく,久留米市との間で,上
記借地契約を締結した。
(ウ) 久留米市が,上記調査等に着手したところ,本件処分場建設に反対す
る地元住民らは,久留米市職員が上記調査のため本件財産区所有地に立ち
入ることなどを実力で妨害するに至ったため,久留米市は,福岡地方裁判
所久留米支部に対し,通行妨害禁止,立入禁止等の仮処分を申請し(同支
部平成9年(ヨ)第4号,同第13号,同第22号),いずれも仮処分命令
を得たことから,地元住民らの妨害行為は,同年3月11日以降にようや
くなくなった。そこで久留米市は,同日以降,連日,上記調査等を実施
し,同月21日にこれを完了した。
(エ) C市長は,前記のとおり,平成8年12月25日開催の本件財産区の
全員協議会において,好ましい解決策を提案したが,本件財産区議会議員
らの承諾を得ることができなかったことから,本件処分場建設用地として
本件財産区所有地等を取得する方法としては,本件財産区議会の議決を経
て,譲渡を受けること(買収)が最良であるとしつつも,これが困難な場
合には,平成8年度中に用地取得を完了するために,上記譲渡以外の方法
によることも検討することとし,C市長が,平成8年12月2日開催の久
留米市議会定例会で,譲渡以外の方法として,本件条例に基づき,財産区
議会の議決を経ることなく行う交換,借地等の方法があること等を答弁す
るなどした。そして,本件財産区は,平成9年2月5日,全員協議会を開
催し,本件財産区所有地の譲渡及び久留米市が本件財産区議会との協議を
経ることなく本件財産区所有地と他の土地とを交換することについても反
対する旨の決議をするとともに,本件財産区の管理者であるC市長が本件
財産区の反対決議にもかかわらず前記一時借地契約を締結したとして,C
市長に対する不信任決議を行った。C市長は,本件財産区のこのような対
応から,久留米市が本件財産区議会の議決を経て本件財産区所有地等の譲
渡を受けることは困難であるし,本件財産区の管理,運営が財政的に逼迫
していること,本件財産区は,本件財産区の存続と区有財産の保持,本件
処分場用地周辺の自然環境維持などに関する強い意向があることを考慮す
ると,本件財産区所有地等と一体性のある周辺地区の久留米市所有地等と
本件財産区所有地等を交換することにより,区有財産の質的転換がなく,
久留米市が相応の財政的負担をすることにより本件財産区の財政上も有利
であることから,本件財産区所有地等と一体性のある周辺地区の久留米市
所有地等と本件財産区所有地等を交換することとした。
 以上認定した事実によれば,久留米市は,本件処分場建設用地として本件
財産区所有地を取得する方法として,本件財産区議会の議決を経て譲渡を受
けることが最も望ましいとして,本件財産区議会議員等や地元住民に対し,
理解を求めたが,本件処分場を平成12年4月までに供用開始するために
は,平成8年度中に本件処分場建設用地を取得する必要があるという状況に
おいて,本件財産区議会の議決を経て譲渡を受ける方法により,本件財産区
所有地を取得することが困難になったことから,本件交換契約によることと
したもので,譲渡以外の方法について,久留米市においても平成8年12月
当時から念頭におき,市議会等にも説明していたものであること,交換の方
法によることについては,本件財産区の財産の保持,周辺の自然環境の維持
についても考慮できると判断されたこと,久留米市は,交換の方法により本
件財産区所有地を取得することとし,用地取得のために必要な測量調査等の
準備作業に着手したが,本件処分場建設に反対する地元住民らによる妨害行
為を受けたため,本件財産区所有地への立入りができずに作業が遅れ,同年
3月21日にようやく上記調査等を完了したこと,その後の同月24日に,
本件交換契約を締結したが,同日は,本件財産区議会が本件処分場建設及び
本件財産区所有地等の移転について反対決議を予定している平成9年3月2
5日の定例会の前日であったことが認められる。そうであるとすれば,久留
米市は,本件財産区所有地を本件処分場の建設用地としたが,本件財産区の
全員協議会の反対が強く,本件財産区議会の議決による譲渡の方法によって
は本件財産区所有地を取得することが困難な状況となったことから,久留米
市及び本件財産区の管理者であるC市長は,本件条例の定める交換によって
これを取得することを考慮することとし,平成8年12月に開催された久留
米市議会定例会においてもその旨を言及し,その後,平成9年2月5日に開
催された本件財産区の全員協議会において,本件財産区所有地の譲渡等に反
対する決議及びC市長に対する不信任決議がされたことから,本件条例によ
って交換することとにより本件財産区所有地を取得することとし,同月21
日本件財産区所有地に対する測量調査等がようやく終了したのを受けて,本
件交換契約を締結するに至ったのであるから,本件処分場の建設及びその建
設用地の確保が緊急の課題であった久留米市において,本件財産区所有地を
交換によって取得するとしたことが,不合理であると認めることはできない
し,本件財産区の管理者であるC市長は,前記説示のとおり,本件条例の定
めるところに従って本件交換契約を締結したのであり,本件財産区の管理者
であるC市長が,本件財産区議会が,同月25日に開催される定例会におい
て,本件処分場建設及び本件財産区所有地の移転について反対決議をする予
定であることを知っていたとしても,本件交換契約に至る前記経緯等にかん
がみると,前記C市長が本件財産区議会定例会が開催される前日に本件交換
契約を締結したことが,不合理であり,その権限を濫用し,裁量を著しく逸
脱する不相当なものであったと認めることもできない。また,本件条例によ
ると,本件財産区が有する財産等の処分については,本件条例により,売
買,交換及び譲与等が定められているが,どの方法によって処分するかの判
断は,管理者の権限に属しているのであって,本件において,財産区議会の
議決を経て本件財産区所有地等を売買することが原則であるということはで
きないし,上記認定のような事情に照らすと,C市長が,本件財産区所有財
産を譲渡によることなく交換によることを選択したことが,権限を濫用する
等その裁量を著しく逸脱するものでないことも,前記説示のとおりである。
第4 結語
   よって,控訴人らの控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することと
し,主文のとおり判決する。
     福岡高等裁判所第4民事部    
裁判長裁判官   星   野   雅   紀
            裁判官   近   下   秀   明
            裁判官   野   島   香   苗

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