弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中昭和二三年一月一一日から同二四年一月一〇日までの事業年度
の所得金額に関する被上告人の審査決定の取消を求める請求に関する控訴を棄却し
た部分を破棄し、これに関する事件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
     その余の部分に関する上告を棄却する。
     前項に関する訴訟費用は、上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人窪田稔及び上告本人の上告理由について。
 一、 元年計算における所得金額に関する論旨について。
 原判決を検討するに、
 (イ) 原判決理由中二の(一)の判示は、上告人が製造工程に半年以上を要す
る醤油(上告人のいう普通醤油)のみを製造していたことを前提とするものである
ことは明らかである。しかし、本件に現われた証拠のうちには、上告人がこれより
製造工程のはるかに短かい醤油(上告人のいう代用醤油)を製造していたことを認
めるに足りる証拠は一、二(例えば乙第二一号証、同第二二号証等)にとどまらな
い。されば原審が、これらの証拠について上告人が普通醤油以外の代用醤油を製造
していたかどうかの点を審理判断することなく、漫然上告人が普通醤油のみを製造
していたことを前提として原判決の如く判示したのは、審理不尽のそしりを免れな
い。
 (ロ) 原判決理由二の(二)、(三)の判示は、乙第一八号証(昭和二三年度
仕込調書)に掲げられた仕込物の桶番号のうちに現存の腐敗モロミの桶番号が一つ
もないことをもつて現存の腐敗モロミが昭和二三年度の仕込物の腐敗物でないこと
の認定の一つの根拠としようとしたものと解される。しかし、同号証は、これに掲
げられた仕込原料等からみても、正規の製造工程による普通醤油の仕込状況のみを
掲げたもので、代用醤油の仕込状況は、これに記帳もれとなつているものとも解さ
れないではないにかかわらず、原審がこの点につき審理判断した形跡はない。され
ば、原審が、漫然、同号証は代用醤油を含むすべての醤油の仕込状況をもれなく記
帳しているものであることを前提とし、これを基礎として現存の腐敗モロミが昭和
二三年度の仕込物の腐敗物でないとの推論を下したことは違法というべきである。
 (ハ) 原判決理由二の(四)の判示中乙第二一号証及び同第七号証に関する判
示は、乙第二一号証に掲げられた原料塩の合計量と製造された醤油の合計量との比
率が乙第七号証によつて証明された原料塩と製造醤油との比率に符合する等のこと
から、昭和二三年度中に投下された原料塩は全部有効に製品化したものと認むべき
であるとの趣旨と解される。
 しかし、乙第二一号証における原料塩と製造醤油との比率が乙第七号証における
同様の比率に単純に符合するとは計算上認めがたいので、この点に関する原判示も
首肯するに足りない。
 (ニ) 原判決理由二の(六)の判示中「大量の腐敗の運命にあつた不良な仕込
物に昭和二三年中に三千百八十五瓩なる大量の塩が投下され腐敗の為め浪費に終つ
たというようなことはなく従つて特段の反証なき限り此の塩は醤油製造に効果的に
使用され且販売されたものと認めるのが相当である」との判示は、現存の腐敗モロ
ミが期首引継当時においてすでに全部腐敗に帰すべきことが明らかな状態にあつた
ということを前提として、かかる状態のものに三、一八五瓩という大量の塩を無駄
に投下することは常識上考えられないとの趣旨と解される。しかし、現存の腐敗モ
ロミが期首引継当時においてすでに全部腐敗に帰すべきことが明らかな状態にあつ
たということは、本件において当事者間に争があるにかかわらず、「原判決及びそ
の引用する一審判決中いずれの箇所にも、右争ある事実を証拠により確定した箇所
は見当らない。されば、原審が、漫然、現存の腐敗モロミが期首引継当時すでに全
部腐敗に帰すべきことが明らかな状態にあつたとの事実を前提として原判示の如き
推論を下したことは違法といわねばならない。
 以上を要するに、問題の記帳もれ塩三、一八五瓩が昭和二三年度中に有効に醤油
の仕込に使用されて醤油の売上を生じたとの原審の推認は、上告人が普通醤油のみ
を製造していたこと、乙第一八号証の記帳が代用醤油を含むすべての醤油の仕込状
況をもれなく記載しているものであること、乙第二一号証に示された原料塩による
製造効率が乙第七号証のそれに符合すること、及び現存の腐敗モロミが期首引継当
時すでに全部腐敗に帰すべきことが明らかな状態にあつたことを前提とするもので
あり、もし、これらの前提が覆えれば、問題の塩三、一八五瓩が現存の腐敗モロミ
に投入され無駄に帰したとの認定に到達する可能性もないではない。してみると、
原審が漫然右諸前提を基礎として、問題の塩三、一八五瓩が昭和二三年度中に有効
に使用され醤油の売上を生じたとの推論を下したことは、審理不尽乃至理由不備の
そしりを免れず、この点に関する上告論旨は、理由があるものというべきである。
されば、原判決中、元年計算における所得(昭和二三年一月一一日から同二四年一
月一〇日までの事業年度の所得)金額に関する被上告人の審査決定の取消を求める
請求に関する控訴を棄却した部分は、その他の論旨の判断にまつまでもなく、右述
の点において破棄を免れない。
 二、 半年計算における所得金額に関する論旨について。
 論旨は、すべて、原判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背を主張するも
のと認められない。
 よつて、民訴四〇七条、三九六条、三八四条、九五条、八九条を適用し、裁判官
全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛