弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主      文
       本件控訴を棄却する。
理      由
 本件控訴の趣意は,検察官南部義廣作成の控訴趣意書記載のとおりであり,
これに対する答弁は,弁護人山田幸彦作成の答弁書記載のとおりであるから,
これらを引用する。論旨は,被告人を懲役15年に処した原判決の量刑が軽過
ぎて不当である,というものである。
 そこで,原審記録を調査し,当審における事実取調べの結果も併せて検討す
る。
 本件は,被告人が,(1)当時22歳の被害者(以下,「傷害被害者」ということが
ある。)に傷害を加えようと企て,殺人の故意をもったA及び傷害の故意をもった
共犯者5名と共謀の上,Aにおいて,三徳包丁で被害者の腹部を突き刺し,共
犯者Bにおいて,頭部,顔面を殴るなどして,全治約1か月間を要する傷害を負
わせた(原判示第1),(2)当時28歳の被害者(以下,「死亡被害者」ということが
ある。)から金品を強取しようと企て,強盗殺人の故意をもったA及び強盗の故
意をもった共犯者5名と共謀の上,Aにおいて,三徳包丁で被害者の背部を突
き刺すなどしてその反抗を抑圧した上,その所持金品を強取し,さらに,同人の
自宅において手提げバッグなども強取した後,犯行の発覚を防ぐなどのため
に,被告人と他の共犯者全員が被害者の殺害を謀り,雑木林付近に掘った穴
に被害者を引き入れ,ナイフで背部を刺したり,ゴルフクラブで頭部を殴打する
などし,その上から土砂をかぶせるなどして,生き埋めにして窒息死させて殺害
した(原判示第2),(3)法定最高速度が60キロメートル毎時の道路を,43キロメ
ートル越える103キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転した(原判
示第3),という事案である。
原判決は,強盗殺人及び傷害について,被告人がそのきっかけを作っている
こと,被告人の殺害動機は,安易かつ身勝手であること,死亡被害者に対して
は,殴る蹴るだけでなく,包丁やナイフで突き刺したり,スタンガンを押し当てて
放電するなどした上,掘った穴に入れ,さらにナイフで刺し,ゴルフクラブで殴打
し,遂には,生き埋めにして窒息死させるなど,犯行態様は執よう,冷酷,残忍
であること,強盗についても当初からこれをもくろむなど計画的で,かつ,所持品
を奪うだけでなく,自宅にある物まで奪うなど執ようであること,傷害被害者に対
する犯行も,包丁で腹部を突き刺すなど,死亡する危険もあったこと,被告人
は,金品強取については積極的であり,被告人ら7名の中では,B及びAに次い
で主導的な立場にあったこと,死亡被害者の受けた肉体的精神的苦痛は極め
て大きく,遺族の被害感情,処罰感情はしゅん烈であり,極刑を望んでいること
などの諸事情を考慮すると,被告人の刑事責任はまことに重大であるとしつつ
も,被告人には酌むべき事情も多く認められるとして,酌量減軽をした上で,被
告人を懲役15年に処した。 
 これに対して所論は,本件犯行中最も重い罪である強盗殺人の法定刑の最
下限は無期懲役刑であり,これを下回る刑で処断すべき理由は皆無であるの
に,被告人を懲役15年に処した原判決の量刑は軽過ぎて不当である,という。
 しかしながら,原判決の量刑は,結論において正当というべきである。これを
所論に即しつつ補足的に説明すると,以下のとおりである。
第1 犯行の発端について
  本件各犯行中,道路交通法違反を除いた強盗殺人及び傷害(以下,これら
を一括して「本件各犯行」ということがある。)については,死亡被害者らが,
その仲間とともに,被告人にいわゆる「追い込み」をかけようとしたことが発端
となっていることは明らかであるが,所論は,死亡被害者らが被告人に「追い
込み」をかけるに至ったそもそものきっかけは,被告人が,返済期限が過ぎて
も借金を返さなかったり,個人間での売買の代金を支払わないばかりか,お
れは殺人未遂をやって今ふけている,何をやっても怖くないなどと,被告人自
身が周りから乱暴者と見られる状況を作り出していたことにあり,これに対し
て死亡被害者らは,やむを得ず「追い込み」をかけたものであるから,死亡被
害者側の事情を重くみるのは相当ではない,という。
  関係証拠によれば,被告人は,死亡被害者から借りた金を返済期限を過ぎ
ても返さなかったり,傷害被害者からカーオーディオを買ったもののその代金
を支払わず,また,傷害被害者の知人の車のガラスを割ったり,その知人を
殴ったりするなどしていたことから,死亡被害者らが被告人を捕まえようとして
いたこと,しかし,死亡被害者らは,被告人に逃げられたことなどから,日頃
被告人と行動をともにしていた被告人の後輩を見つけ出して,入れ墨を見せ
ながら,被告人と連絡をとれ,被告人を絶対にやってやる,マグロ漁船に乗せ
る,殺すなどと脅したが,後輩からこの話を聞いた被告人は,このままでは本
当に殺されるかもしれないと思い,東京へ逃亡することを考えたというのであ
る。こうした死亡被害者らのとった言動等にかんがみると,死亡被害者らの被
告人に対する「追い込み」は,相当に過激なものであったといわざるを得な
い。したがって,このような死亡被害者側の事情を,被告人のために酌むべき
事情のひとつとして評価すること自体は決して不当ではない。そして,原判決
は,他方では,この点に関連して,死亡被害者らの「『追い込み』の原因は被
告人にあるのであって,被告人が本件の発端となったことに変わりはない。」
と指摘しており,この指摘にかんがみると,原判決も,このような死亡被害者
側の事情を特に重視して酌量減軽したとは考えられない。
第2 被告人の地位及び果たした役割について
 1 まず,犯行に至った経緯をみると,被告人が,A及びBに追従して本件各犯
行に及んだことは否定できない。
   すなわち,関係証拠によれば,上記のとおり,死亡被害者らから「追い込
み」をかけられたことを知った被告人は,このままでは殺されるかもしれな
いと思い,父親が働いている東京へ逃げることにし,東京に行くのであれ
ば,Bから借りていた車も返さなくてはいけないと考え,Bに電話したこと,
その際,Bは被告人からそれまでの経過を聞き被告人を助けなければなら
ないと考え,Aとともに詳しい話を聞くため被告人と会ったこと,そこで,被
告人は,「追い込み」をかけられるに至った経過などを話し,東京へ逃げよ
うと思っているなどと告げたこと,これに対して,BやAは,逃げる必要はな
い,やられる前にやってしまおう,などと提案し,その提案を受けて,被告
人も,いずれ名古屋に戻ったとき死亡被害者らから逃げ回るより,この際,
「追い込み」を断念させようと考えるに至り,Bらの提案に賛同したこと等の
各事実が認められる。
   これらの事実に照らすと,被告人は,当初から,死亡被害者らへの攻撃を
もくろんでいたわけではなく,当初は,死亡被害者の「追い込み」から身を
守るために東京へ逃げようとしていたのであるが,Bらの提案に賛同する
形で,死亡被害者らに先制攻撃を加える話へと発展していったものと認め
られる。そして,その後の状況をみても,当初から殺意をもっていたAが,
終始積極的に振る舞い,Bも,他の共犯者らを指示するなど,被告人に比
してより積極的に犯行を主導したというべきである。
   たしかに,強盗の企ては,死亡被害者が日頃から大金を持ち歩いている旨
被告人がAらに伝えたことがきっかけとなっているし,死亡被害者の自宅に
まで行って家の中にある金品を奪うことを提案したのも被告人であるなど,
金品強取のきっかけを被告人自身が作っていることは所論指摘のとおりで
あるが,事件全体の中での主導性や積極性の観点からは,A及びBとは同
列にみることはできないといわざるを得ない。
  また,この点に関連して,所論は,被告人が死亡被害者殺害を決意したの
は,森林公園においてであるのに,原判決が,それより後の時点である死
亡被害者の自宅から殺害現場である原判示の雑木林に向かう時点で殺害
を決意したとして,被告人は,それ以前から殺害を決意していたA及びBに
追従した面が強いとしたのは誤っている,という。
   そこで,被告人が死亡被害者の殺害を決意した時点をみるに,関係証拠に
よれば,Aは当初から相手方を殺害する意図を抱いていたところ,最初の
犯行現場となった居酒屋の駐車場から守山区内の森林公園に移動し,そ
こで,Aが自分1人でも殺すと言ったことから,これを聞いたBも,A1人に殺
害を行わせるわけにはいかないと考え,死亡被害者の殺害を決意したこ
と,その後,BとAが,殺害方法を話し合い,「殺す。」「埋める。」などといっ
た言葉が飛び交うのを被告人を含めた他の共犯者らも聞いていたが,被
告人自身は,自分だけ手を引くわけにはいかないし,このまま死亡被害者
を帰せば,後でやくざに仕返しされるかもしれないなどと考えたものの,た
めらい,殺害を決意するまでには至らなかったこと,しかしながら,森林公
園から死亡被害者宅へ向かい,そこで死亡被害者の財物を奪った後,被
告人がBに,「これからどないすんねん。」と言ったのに対し,Bが,「今から
埋めに行く,殺して埋めに行く。」などと答えたこと等から,被告人は,それ
までに死亡被害者のキャッシュカードで金を引き出そうとしたり,同人宅か
ら財物を奪うなどしていたこともあって,もはや後戻りはできない,Bたちも
自分のためにここまでやってくれたのだから今更やめようとは言えないなど
と考え,この時点で,被告人自身も死亡被害者殺害を決意したことが認め
られる。他方,本件全証拠を子細に検討しても,所論がいうように,被告人
が森林公園において殺害を決意したと認めるに足りる証拠はない。
   そうすると,被告人は,死亡被害者宅を出てから,死亡被害者の殺害を最
終的に決断したと認定し,A及びBより遅れて殺意を形成したとする原判決
の説示は正当である。
 2 次に,犯行態様の観点から,特にA及びBと対比しつつみると,関係証拠
によれば,Aは他の共犯者を誘い入れていること,当初から被害者らを自
分1人でも殺害する意図で,最初の犯行現場である居酒屋の駐車場に赴く
際に三徳包丁を準備していたばかりか,現場では,死亡被害者に対しては
背部を,傷害被害者に対しては腹部を,それぞれ殺意をもってその三徳包
丁で突き刺していること,死亡被害者の自宅に行き,バッグなどを強取した
こと,死亡被害者を埋めるための穴をBとともに率先して掘った上,しゃが
み込んだりするなどして抵抗する死亡被害者をBとともに引きずる等して穴
に投げ入れていること,その後,「ここが心臓かな。」と言いながらナイフで
その背中を突き刺し,さらにスコップで頭を叩くなどしたばかりか,被告人,
Bに続いてゴルフクラブで死亡被害者の頭部を何度も殴打し,とどめを刺
そうとしたこと,共犯者らと一緒に死亡被害者を生き埋めにし,さらには,土
から出ていた死亡被害者の右足を力任せに折るなどしたことが認められ
る。
   また,Bは,居酒屋の駐車場において,被害者らにいきなり催涙スプレーを
噴射して先制攻撃を仕掛け,その後,傷害被害者の顔面を鉄筋棒で殴打
していること,Aが死亡被害者を殺害するつもりでいることに気付くや,自ら
も即座に殺害の決意を固めたこと,死亡被害者の自宅まで行き,バッグな
どを強取していること,死亡被害者を穴に埋めることを提案し,Aとともに率
先して穴を掘り,一緒に死亡被害者を穴に投げ入れていること,死亡被害
者の頭部をゴルフクラブで殴打していること,その後,共犯者らと一緒に死
亡被害者の上に土をかけて生き埋めにしたことが認められる。
   これに対して,被告人は,森林公園で,車内にいた死亡被害者を鉄筋棒が
曲がるほど強打したこと,死亡被害者から強取したキャッシュカードを使っ
てコンビニエンスストアで現金を引き出そうとしたが,失敗したため,死亡被
害者の自宅から金品を奪うことを提案し,これを実行したこと,穴を掘るた
めのスコップを探し出してきたこと,穴に座った状態の死亡被害者の頭部を
ゴルフクラブで1回殴打していること,共犯者と一緒に死亡被害者の上に土
をかけて生き埋めにしたことが認められる。
   以上のとおり,本件各犯行の態様は,あらかじめ凶器を準備した上で,無
防備な被害者らを集団で襲ったもので,甚だ悪質であり,特に死亡被害者
殺害方法は,いかにも執ようで,残忍かつ冷酷であって,その凄惨さは正
視できないほどであるが,被告人自身が行った加害行為は,その態様及び
回数などにおいて,A及びBとは明らかな差異があるというべきである。
   ところで,所論は,被告人が死亡被害者の頭部をゴルフクラブで殴打した
のは1回であるが,それに先立って2回空振りをしたのは,死の恐怖に直
面している死亡被害者を前にして,ふざけ,あるいはもてあそんだものであ
り,殺害について積極的であったことが明らかであるとして,被告人が殺害
について積極的であったとまではいいがたいとした原判決を論難する。
   たしかに,関係証拠によれば,被告人は,Bからゴルフクラブを手渡され,
穴の中でしゃがんだ状態の死亡被害者と向かい合う位置に立ち,クラブを
持った左手を地面と水平になるように伸ばし,クラブを垂直に立てて構える
という,プロ野球選手のイチローの真似をしたこと,その後,右手の人差し
指をなめて自分の顔の前に立て,風向きを確認するかのような仕草をした
後,クラブを両手で握り,死亡被害者の頭をゴルフボールに見立てて,ゴル
フスイングの方法で殴打しようとしたが,2回空振りをし,3回目に死亡被害
者の左側頭部にクラブのヘッドを命中させたことが認められる。このように
被告人は,死亡被害者の頭部を殴打するに当たって,あろうことか,その
頭部をゴルフボールに見立てて,ゴルフスイングの方法をとっているだけで
はなく,死亡被害者が死の恐怖に直面していることを知りながら,あえてプ
ロ野球選手の真似をしたり,風向きを確認するかのような仕草をするなどし
ているのであって,かかる被告人の行為は,死亡被害者を愚ろうし,かつ,
もてあそんだものという他なく,掛け替えのない人の生命を余りにも軽視し
た非人間的で非道な行為といわざるを得ない。被告人がこのような行為に
及んだのには,共犯者らに対する見栄ないし虚勢などの影響があったこと
は否定できないにしても,あえてこのような非人間的で残忍な行為にまで
及んでいる被告人が,2回空振りしている点をとらえて,原判決が,「死亡
被害者の殺害について積極的であったとまではいいがたい。」と説示した
点は首肯することができない。
   しかしながら,既に述べたように,A及びBがした死亡被害者に対する殺害
行為は,その態様の残虐さや回数の多さ等の点で,被告人自身の行った
殺害行為と比較して格段に悪質であり,被告人の刑事責任は,AやBと同
列にみることは相当でない,というべきである。したがって,原判決の上記
説示は,被害者ら,特に死亡被害者に対する犯行が,その態様や回数等
において,AやBほどではない,という趣旨の限度では正当ということがで
きる。
 また,傷害事件についてみると,被告人は,傷害現場にはおらず,したがっ
て傷害被害者に対してはなんらの危害も加えていないことが明らかであ
る。
   所論は,被告人が傷害現場にいなかったのは,犯行への関与をできる限り
回避しようとしたためではなく,現場への到着が遅れた結果に過ぎないか
ら,被告人が犯行現場にいなかったことを被告人に有利な事情とみるのは
失当であり,また,Aが傷害被害者に対して包丁を使って腹部を突き刺し,
腹部刺傷などによる全治約1か月間を要する傷害を負わせたことは被告
人にとって予想し得たことであるのに,その結果は予想より重大であったと
して,これを被告人に有利な事情と評価した原判決は誤りである,ともい
う。
   たしかに,関係証拠によれば,他の共犯者らは,死亡被害者及び傷害被
害者に対し,いわゆる「焼き入れ」をするつもりでいたもので,そのことは被
告人も了解していたこと,襲撃に用いるための道具として,共犯者らが,ゴ
ルフクラブ,鉄パイプ,鉄筋棒,スタンガンなどの凶器を準備したことを被告
人も知っていたこと,当日,Aが三徳包丁を準備し,持っていたのを見てい
ること,Aが喧嘩早い性格であることを後輩などから聞き及んでいたことな
どが認められ,こうした事実を踏まえると,Aらが傷害被害者に対して加え
た暴行,殊に,Aが,その腹部を三徳包丁で1回突き刺し,相手に重傷を負
わせたという態様及び結果は,被告人にとっても決して予想不可能なもの
ではなかったというべきである。したがって,その結果が被告人の予想より
も重大であったとして,これを被告人に有利な事情と評価した原判決の判
断は,正当とはいいがたく,これまた首肯できない。
   しかしながら,被告人が傷害の実行行為に及ばなかった経緯やその理由
の如何はともあれ,結果として,被告人は,傷害被害者に対しては全く手出
しをしていないのであるから,傷害現場において,傷害被害者に対し積極
的に危害を加えたAやBに比べ,この点を量刑上有利に解し,あるいは酌
量減軽の一事情として考慮すること自体はなんら不当ではないというべき
である。
 3 さらに,本件各犯行によって被告人が得た利益について,所論は,被告人
は,AやBを利用して,死亡被害者らからの「追い込み」を封じようとして,
現実にこれらの利益を得ているのであるから,本件各犯行により最も利益
を得たのは被告人であり,被告人の立場がAやBと同じではないとした原
判決の判断は誤っている,ともいう。
   しかしながら,既に検討したように,本件各犯行は,被告人が死亡被害者
らから「追い込み」をかけられていることを知ったB及びAが,「追い込み」か
ら逃げようと考えていた被告人の思惑を超えて,殊に,Aにおいては,被告
人から「追い込み」の話を聞いた段階では,死亡被害者とは面識すらない
のに,相手がやくざであると聞き,やくざは大嫌いであるから殺すしかない
と決意するなど,極めて先鋭的な態度をとり,より過激な行動に出た結果と
いうべきである。
   なお,死亡被害者の死によって,被告人は,その「追い込み」から逃れるこ
とはできたのであるが,本件全証拠によっても,被告人が積極的にそうした
意図をもってAやBを利用しようとしたものとまでは認められない。
 4 以上の検討を踏まえ,全体的・総合的に被告人の地位及びその果たした
役割についてみると,本件各犯行全体を通じてみると,被告人は,A及びB
ほどには主導的ではなかったというべきである。
第3 結 論
  本件各犯行は,所論がいうように,仲間を募って行った集団犯行であり,あら
かじめ凶器を準備するなど計画的であること,態様は,執よう,残虐かつ冷酷
で,殊に死亡被害者に対するものは,その人間性を無視する非道なものであ
ったこと,無慈悲にもその命までも奪った結果はこの上なく重大であること,
死亡被害者が死に至るまでに受けた苦痛,恐怖や絶望感は想像を絶するも
のがあり,遺族らは被告人に対し極刑を望むなどその処罰感情はまことに激
しいこと,傷害被害者の受けた肉体的苦痛はもとより,精神的打撃も大きいこ
と等が認められ,これらの事情を踏まえて検討すると,犯情は甚だ悪く,本件
各犯行を犯した被告人や共犯者らの刑事責任はまことに重大であるといわざ
るを得ない。
  また,本件各犯行のきっかけを被告人が作り出していることなどからも明ら
かなように,被告人の生活歴に問題がなかったとはいえないことや被告人に
自己の刑事責任を軽減しようとする態度が見受けられることなど,原判決が
酌量減軽事由として挙げているところには首肯できない点があることは,所論
指摘のとおりである。しかも,当審における事実取調べの結果によると,死亡
被害者の遺族らの処罰感情は依然として極めてしゅん烈である。
  しかしながら,先に検討した本件各犯行の罪質,各犯行に至る経緯,犯行態
様,特に共犯者相互間における被告人の地位及びその果たした役割などを
考慮しつつ,被告人の刑事責任を全体的・総合的に検討すると,その刑事責
任を,A及びBと同列視するのは相当ではないというべきである。また,殺害
された被害者は1人であり,他の被害者は重傷を負わされたものの,幸い致
命傷には至らなかったこと,さらには,被告人は一貫して本件各犯行を認め
るとともに,遺族に謝罪の手紙を送っていること,被告人には前科のないこと
やその年齢等をも併せ考慮して総合的に判断すると,無期懲役刑を選択した
上で,酌量減軽し得る事情が認められるとして,被告人を酌量減軽をした刑
期の最上限である懲役15年に処した原判決の量刑が軽過ぎて不当であると
まではいえない。
 結局のところ,論旨は理由がないことに帰着する。
よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,主文のとおり判決する。
  平成16年1月20日
    名古屋高等裁判所刑事第2部
       裁判長裁判官   川   原       誠
          裁判官   村   田   健   二
          裁判官   堀   内       満

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