弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成20年12月25日判決言渡
平成20年(行ケ)第10148号審決取消請求事件
平成20年10月9日口頭弁論終結
判決
原告X
訴訟代理人弁理士戸島省四郎
被告スミスメディカル・ジャパン株式会社
訴訟代理人弁理士福田伸一
同福田賢三
同加藤恭介
同本田昭雄
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2007−800107号事件について平成20年3月18日
にした審決を取り消す。
第2争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は,考案の名称を「医療用針」とする考案につき,平成5年10月20
日に実用新案登録出願(実願平5−61428号)をし,平成11年5月14
日,実用新案権の設定登録を受けた(実用新案登録第2597672号。以下
「本件実用新案」という。請求項の数は2であった。。)
被告は,平成19年5月31日,本件実用新案の請求項1及び2について無
効審判を請求し(無効2007−800107号,原告は,平成19年8月)
31日,実用新案登録明細書の訂正請求をした(以下,この訂正請求に係る訂
正を「本件訂正」という。本件訂正後の請求項の数も2である。。)
特許庁は,平成20年3月18日「訂正を認める。実用新案登録第259,
7672号の請求項1ないし2に係る考案についての実用新案登録を無効とす
る」との審決(以下「審決」という)をした。。。
2実用新案登録請求の範囲
本件訂正後の実用新案登録請求の範囲は,次のとおりである(下線部は訂正
箇所を示す。以下,請求項1記載の考案を「本件考案1,請求項2記載の考」
案を「本件考案2」という。。)
請求項1
硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と,同硬麻針に挿入される脊麻針
本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において,前記硬麻
針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとする
とともにどの挿入位置でも硬麻針の把持部に固定できる固定手段を講じたこと
を特徴とする医療用針。
請求項2
硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と,同硬麻針に挿入される脊麻針
本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において,前記硬麻
針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとする
とともにどの挿入位置でも硬麻針に固定できる別体の固定具を前記把持部に脱
着自在に設けたことを特徴とする医療用針。
3審決の理由
()別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件考案1及び2は,その1
出願前に頒布された刊行物である欧州特許出願公開第0564859号明細
書(以下「引用例」という。甲3)に記載された考案(以下「引用考案」と
いう)に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたもので。
あり,実用新案法3条2項の規定に違反してされたものであるから,平成5
年法律第26号附則4条1項の規定によりなお効力を有するとされ,同条2
項(平成15年法律第47号附則12条による改正後のもの)の規定により
読み替えられた実用新案法37条1項1号に該当し,無効とすべきものであ
る,とする。
()審決が,本件考案1及び2に進歩性がないとの結論を導く過程において2
認定した引用考案の内容,本件考案1及び2と引用考案の相違点は,次のと
おりである。
ア引用考案の内容
硬膜外カニューレ(111)の基端に接続部(116)を備えた硬膜外
カニューレ(111)と,硬膜外カニューレの穴を通って前に押し出すこ
とが可能な脊髄カニューレ(30)に注射器を接続するカニューレ連結部
品(33)を設けた麻酔器具において,突起部が内肩部に当たるまで平坦
面のどの挿入位置でも,脊髄カニューレを回転させることによって硬膜外
カニューレ内において固定することが出来るように,カニューレ連結部品
(33)に形成した突起部(40)が接続部(116)の連結領域(12
2)上で固定される構成を備えた麻酔器具(審決11頁)。
イ本件考案1及び2と引用考案の相違点
硬麻針に挿入された脊麻針に関し,本件考案1及び2は「その針先が,
馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも」固定で
きるのに対し,引用考案は「突起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの,
挿入位置でも,脊髄カニューレを回転させることによって硬膜外カニュー
レ内において固定することが出来る」構成を備えているものの,その針先
が馬尾神経に到達する充分な長さであるかが不明である点(相違点1」「
審決12頁。なお,本件考案2も,引用考案と相違点1において相違する
とされている。審決13頁。)
第3原告主張の取消事由
審決は,次に述べるとおり,引用考案の認定の誤り(取消事由1,引用考)
案と本件考案1及び2との相違点を看過した誤り(取消事由2,顕著な作用)
効果を看過した誤り(取消事由3)があるので,違法として取り消されるべき
である。
1引用考案の認定の誤り(取消事由1)
審決が,引用考案について「突起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの挿,
入位置でも,脊髄カニューレを回転させることによって硬膜外カニューレ内に
おいて固定することが出来るように,カニューレ連結部品(33)に形成した
()()()」突起部40が接続部116の連結領域122上で固定される構成
を備えると認定したことは誤りである。その理由は,次のとおりである。
()引用例における「直ぐに」との文言の意味等について1
審決は,引用例に「使用者は脊髄カニューレを,硬膜を貫通したら直ぐに
左あるいは右へ回転させることによって硬膜外カニューレ内で固定すること
が出来る」という記載があること,並びに引用例の図3,図6及び図7に。
示された構成から,引用例を「突起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの,
挿入位置でも,脊髄カニューレを回転させることによって硬膜外カニューレ
内において固定することが出来る」ものと認定している(審決11頁。)
しかし,引用例の「直ぐに」との文言は「どの位置でも」という意味で,
はなく「挿入距離が少ない位置で」という意味である。また,引用例の図,
,,,3図6は未だ回転されていない非固定の挿入途中の状態の図面であるし
図7は,回転して固定されている状態を示すのみであり,これらの図面は,
挿入中のどの位置でも固定できることを示すものではない。したがって,審
決の上記認定は誤りである。
()カニューレの固定位置について2
ア審決は,引用例の「」を「連結領域122」と訳していSperrbereich122
,「」。,()るが移動遮断領域122と訳すべきであるそして突起部Nase
,()()40はガイドレーン121上のスライド方向軸方向Führungsspur
(,),と直角方向回転方向円周方向の二方向しか動きの可能性がないので
「移動遮断領域122」とは,直角方向の回転の動きを遮断したという意
味となる。また,引用例の「(121;21」は「ガイドFührungsspur),
レーン121,21」と訳すべきであって,突起部()40の軸方向Nase
のスライドのガイドを意味する。さらに,審決は「,,」Kanülenansatz115
「」の「」を「カニューレ連結部品」と訳しKanülenansatz33Kanülenansatz
,「」「」,「」ているがに連結の意味はないからカニューレ連結部品ansatz
との訳は適切ではなく「カニューレ基部「カニューレ延長部」などと,」,
訳すべきである。
イ引用例の要約(,特許請求の範囲()AnästhesiebesteckPatentansprüche)
の請求項1には「ガイドレーン((121;21)の内終,)Führungsspur
端には,広い移動遮断領域((122;22)が接続しておSperrbereich)
,()(),()りまた突起部40は該両カニューレ延長部NaseKanülenansatz
(115ないし33;15ないし33)を相対的に回転させることにより
該移動遮断領域()との相互作用によってロックされるようSperrbereich
になっている」旨の記載がある。この記載によれば,突起部()40Nase
の移動遮断領域()122,22への回転による移動が,ガSperrbereich
イドレーン()121,21の内側終端()の絡ぎFührungsspurinnerEnde
部分の作用によることは明らかであり,また,二つのカニューレが回転に
より固定状態となるのは,このガイドレーン()121,2Führungsspur
1の終端の位置のみであることが明らかである。
ウ引用例には,突起部()40と平坦部()121との間NaseAbflachung
隔はほとんど遊びがない大きさとなっていると記載されているので,突起
部()40を平坦部()121より径の大きいシリンダーNaseAbflachung
状の円周位置にある移動遮断領域()122へ回転させようSperrbereich
としても,径の差のために回転できない。
エ引用例においては,請求項4が請求項1を引用していることから,メイ
ンクレームである請求項1は,図1ないし7の実施例と図8ないし14の
実施例の二つの実施例を含むものであり,図8ないし14の実施例は,突
(),()()起部40がガイドレーンであるレッグNaseFührungsspurSchenkel
21の終端でしか固定しないから,引用考案は,すべて,突起部()Nase
40がガイドレーン((121,21)の終端でしか固定しFührungsspur)
ないものである。
オ引用例の図1ないし7の実施例に対応した請求項3では,平坦部
()121は内肩部()128のところで終わAbflachunginnerenSchulter
っているから,内肩部()128は,ストッパーの作用をinnerenSchulter
,()()果たすものではなく突起部40を移動遮断領域NaseSperrbereich
122へ移行させるものである。
カ仮に審決が認定したように脊髄カニューレについてどの挿入位置突,,(
)()()出位置でも突起部40を回転して移動遮断領域NaseSperrbereich
122に移行できるのであれば,図1ないし7の実施例において,肩部
()128は不要となるはずであり,また,図8ないし1innerenSchulter
4の実施例において,溝()20で形成されたガイドレーンNut
()であるレッグ()21の内側終端でL字状に折FührungsspurSchenkel
れ曲がるレッグ()22を形成する必要はないはずであるが,引Schenkel
用例ではこれらの構造が強調されているから,引用考案は,どの挿入位置
でも突起部()40を回転できるものではない。Nase
キ前記アないしカによれば,引用考案の脊髄カニューレは,平坦面の最終
端においてのみ固定状態となるものであって,審決が引用考案について,
突起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの挿入位置でも固定されると認定
したことは,誤りである。
2引用考案と本件考案1及び2との相違点を看過した誤り(取消事由2)
前記1のとおり,引用考案の脊髄カニューレは,平坦面の最終端においての
み固定状態となるものであって,審決が引用考案について,突起部が内肩部に
当たるまで平坦面のどの挿入位置でも固定されると認定したことは,誤りであ
る。そうすると,本件考案1及び2を引用考案と対比すると,本件考案1及び
,「」,,2は脊麻針の針先がどの挿入位置でも固定できるのに対し引用考案は
「突起部が内肩部に当たる位置でのみ固定することができる」ものである点で
も相違する。しかし,審決は,この点を相違点と認定していないから,審決に
は,引用考案と本件考案1及び2の相違点を看過した誤りがある。
3顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由3)
本件考案1及び2は,脊麻針を,どの挿入位置でも(脊麻針本体の先端が硬
麻針本体の先端から突出する長さが,限界内であればどの長さでも)硬麻針に
固定できるようにしたことにより,次のとおり,顕著な作用効果を奏する。す
,,。なわち脊麻針の針先の位置の設定は麻酔の施術において重要な操作である
その針先が硬膜より長く突出して馬尾神経を傷めると,半身不随等の医療事故
等を生起し,また,硬膜の手前にとどまると麻酔は効かない。しかも,硬膜と
馬尾神経の間のくも膜下腔の長さは,性別,年齢,個人によってかなり差があ
り,その長さの範囲は,2ないし20mmに及び,また,麻酔科医師が硬麻針
を斜めに刺し込んだ場合にも針の挿入深さの過不足を生ずる。脊麻針本体は,
長さの異なるものが複数用意されているが,従来は,脊麻針本体を硬麻針本体
に固定する位置が一定であったため,脊麻針本体の長さを選択しても,脊麻針
の針先の位置を適切に設定することは困難であった。これに対し,本件考案1
及び2はどの挿入位置でも固定できるようにすることにより最適の位置実,,(
際は,脊麻針からの脊髄液の滴下を確認した位置)で脊麻針を硬麻針に固定す
ることができ,適切な施術を可能とすることができるという顕著な作用効果を
奏する。
審決は,本件考案1及び2のこのような顕著な作用効果を看過し,本件考案
1及び2は引用考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができ
たものであると判断したものであって,審決には,本件考案1及び2の顕著な
作用効果を看過した誤りがある。
第4被告の反論
原告主張の取消事由は,いずれも理由がない。
1引用考案の認定の誤り(取消事由1)に対し
引用例の記載からして,引用考案は,脊髄カニューレ(30)が硬膜外カニ
ューレ(111)の前縁部から突出し得る長さは最大10mmであるが,突起
部(40)をして平坦部(121)の上をスライドさせることによって,脊髄
カニューレ(30)の尖端を,硬膜外カニューレ(111)の前縁部から徐々
に突出させ,硬膜を貫通したならば,その突出長さが10mmに満たない長さ
であっても,直ぐに左又は右に回転させ,連結領域(被告のいう「移動遮断領
域(122)において突起部(40)を摩擦固定するものである。そして,」)
審決が,引用例の「」を「連結領域(122」と訳したことSperrbereich122)
は誤りではない。したがって,審決が,引用考案について「突起部が内肩部,
に当たるまで平坦面のどの挿入位置でも,脊髄カニューレを回転させることに
よって硬膜外カニューレ内において固定することが出来るように,カニューレ
連結部品33に形成した突起部40が接続部116の連結領域1()()()(
22)上で固定される構成」を備えると認定したことは誤りではない。
2引用考案と本件考案1及び2との相違点を看過した誤り(取消事由2)に対

前記1のとおり,審決が,引用考案について,突起部が内肩部に当たるまで
平坦面のどの挿入位置でも固定されると認定したことは誤りではないから,審
決が,本件考案1及び2と引用考案の相違点について,硬麻針に挿入された脊
麻針に関し,本件考案1及び2は「その針先が馬尾神経に到達する充分な長,
さとするとともにどの挿入位置でも」固定できるのに対し,引用考案は「突,
起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの挿入位置でも,脊髄カニューレを回転
させることによって硬膜外カニューレ内において固定することが出来る」構成
を備えているものの,その針先が馬尾神経に到達する充分な長さであるかが不
明である点と認定したことに誤りはない。
3顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由3)に対し
前記1のとおり,引用考案は,突起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの挿
入位置でも固定されるものであり,引用例に「脊髄カニューレが硬膜外カニュ
ーレ尖端の前縁部の前に位置し得る長さは,最大10mmである」と記載さ。
れていることから,引用考案は,脊麻針(脊髄カニューレ30)を硬麻針(硬
膜外カニューレ111)に対して最大10mmまで必要に応じた長さだけ突出
させることができる構成を備えるものであった。そうすると,脊麻針を,どの
挿入位置でも硬麻針に固定できるようにするという構成は,本件考案1及び2
のみならず引用考案も(引用考案では最大10mmまでの範囲内ではあるが)
備えていたものであり,そのような構成による作用効果は,引用考案も奏する
ものであり,本件考案1及び2のみが奏するものではなく,本件考案1及び2
の顕著な作用効果とは言い難いものである。したがって,審決には,本件考案
1及び2の顕著な作用効果を看過した誤りはない。
第5当裁判所の判断
1引用考案の認定の誤り(取消事由1)について
()引用例の記載について1
ア引用例には,別紙1(引用例〔甲3欧州特許出願公開第056485
9号〕訳,訳は甲19の1による)のとおりの記載がある。
別紙1の引用例の記載(特に下線部)及び引用例の図1ないし7(図6
A,7Aを含む。以下,同じ)によれば,引用例には,その請求項1な。
いし3,図1ないし7に対応する考案(引用考案)として「カニューレ,
延長部()33に形成された突起部()40が,肩部KanülenansatzNase
()128に当たるまで平坦面()121のどの位置でSchulterAbflachung
も,左又は右に回転させることによって,サポート()116の移Stutzen
()」動遮断領域122上に固定される構成を備えた麻酔器具Sperrbereich
が記載されているものと認められる。
審決は,引用考案について「突起部が内肩部に当たるまで平坦面のど,
の挿入位置でも,脊髄カニューレを回転させることによって硬膜外カニュ
,()ーレ内において固定することが出来るようにカニューレ連結部品33
に形成した突起部(40)が接続部(116)の連結領域(122)上で
固定される構成を備えた麻酔器具」と認定したが(前記第2,3()ア,2)
別紙1の引用例の記載及び引用例の図面に照らすと,審決の「接続部(1
16」は別紙1の「サポート()116」に,審決の「カニュー)Stutzen
レ連結部品(33」は別紙1の「カニューレ延長部()3)Kanülenansatz
」,「()」「()3に審決の連結領域122は別紙1の移動遮断領域Sperrbereich
122」に該当するものであって,審決の上記認定に誤りはないものと認
められる。
イ他方,別紙1の引用例の記載及び引用例の図面によれば,引用例には,
前記アの引用考案とは別に,請求項1,請求項4及びこれを直接又は間接
に引用する請求項,図8ないし14に対応する考案として「硬膜外カニ,
ューレ()11のカニューレ延長部()15のEpiduralkanüleKanülenansatz
サポート()16の外面に,L字型になっている直角の溝()StutzenNut
20が設けられ,溝()20の長いレッグ()21は,カニNutSchenkel
(),ューレ及びサポート16の長軸の方向にまっすぐ延伸しておりStutzen
長いレッグ()21の内側先端部には,溝()20の短いレSchenkelNut
ッグ()22が移動遮断領域()として直角に設けらSchenkelSperrbereich
,(),()れておりまたこの移動遮断領域はサポートSperrbereichStutzen
16の周囲90度以上にわたって延伸し,突起部((40)は,溝Nase)
()(),()NutNase20の中に通されスライドできるようになっており突起部
(40)は,長いレッグ()21の先端で90度回転されて短いSchenkel
レッグ((22)にスライドされたときにのみ固定される構成Schenkel)
を備えた麻酔器具」が記載されているものと認められる。
()原告の主張に対し2
ア引用例における「直ぐに」との文言の意味等について
原告は,引用例の「直ぐに」との文言は「どの位置でも」という意味,
ではなく「挿入距離が少ない位置で」という意味であること,引用例の,
図3,図6及び図7は,挿入中のどの位置でも固定できることを示すもの
ではないことから,審決の引用考案の認定は誤りであると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
,「」,「,()確かに引用例の直ぐにとは引用例のユーザーは硬膜Dura
貫通後直ちに硬膜外カニューレ()内で左ないし右に回せEpiduralkanüle
ば脊髄カニューレ()をロックすることができる(別紙1Spinalkanüle。」
③)という記載(この記載の「直ちに」という文言が「直ぐに」という,
文言に対応するものと認められる)から「硬膜貫通後の挿入距離が少な。,
い位置で」との意味に理解されるべきである。そして,審決には「オ),(
,()第3図には脊髄カニューレに注射器の接続部カニューレ連結部品33
,()()を設けた構成及び硬膜外カニューレ111の基端に接続部116
を備えた構成が図示されている。また,脊髄カニューレと硬膜外カニュー
レとは,上記(ウ)の『使用者は脊髄カニューレを,硬膜を貫通したら直
ぐに左あるいは右へ回転させることによって硬膜外カニューレ内で固定す
ることが出来る』という記載,第3図,第6図,及び7図に示された構。
成からみて,脊髄カニューレが硬膜外カニューレに対し,突起部が内肩部
に当たるまで平坦面のどの位置でも固定できる構成を備えているといえ
る(審決11頁)との記載部分がある。。」
しかし,審決は「使用者は脊髄カニューレを,硬膜を貫通したら直ぐ,
に左あるいは右へ回転させることによって硬膜外カニューレ内で固定する
ことが出来る」という記載,並びに引用例の図3,図6及び図7のみか。
ら引用考案の内容を認定したものではない。審決は,審決11頁に,上記
の記載に続けて「上記記載事項(ア)∼(オ)を総合すると,引用例に,
は,次の考案(以下『引用考案』という)が記載されているものと認め,。
られる」と述べていることに照らすならば,上記の「オ」の部分のみ。()
ではなく,引用例の他の記載部分(ア)1欄1ないし12行(イ)1欄(,
27ないし34行(ウ)4欄21ないし43行(エ)7欄37行ないし,,
8欄43行)並びに引用例の図3,図6及び図7を総合して,引用考案を
認定したことは明らかであって,結局審決の認定結果に誤りはない。した
がって,原告の上記主張は,採用することができない。
イカニューレの固定位置について
(ア)原告は,引用例の「」は「移動遮断領域122」とSperrbereich122
訳すべきであって,突起部()40の直角方向の回転の動きを遮断Nase
したものであると主張する。しかし「」を「移動遮断,Sperrbereich122
」,,()領域122と訳したとしても引用例には移動遮断領域Sperrbereich
122が突起部()40の直角方向の回転の動きを遮断したものでNase
あるとの記載はない。むしろ,別紙1の引用例の下線部の記載からする
と,突起部()40を回転させて移動遮断領域()1NaseSperrbereich
22に位置させると,脊髄カニューレの軸方法の動きが止められるもの
と認められる。したがって,移動遮断領域()122によSperrbereich
って突起部()40の直角方向の回転の動きが遮断されるとの原告Nase
の上記主張は,採用することができない。
また,原告は,引用例の「」は「ガイドレーン12Führungsspur121
1」と訳すべきであって,突起部()40の軸方向のスライドのガNase
イドを意味すること「「」の,」,Kanülenansatz115Kanülenansatz33
「」について「カニューレ連結部品」との訳は適切ではKanülenansatz,
なく「カニューレ基部「カニューレ延長部」などと訳すべきである,」,
ことを主張する。しかし,審決の訳語が誤りであるとは,にわかに認め
られないし,訳語に関する原告の上記主張を前提としても,前記()ア1
,。のとおり審決が行った引用考案の認定が誤りであるとは認められない
(イ)原告は,引用例の要約(,特許請求の範囲Anästhesiebesteck)
()の請求項1に「ガイドレーン((12PatentansprücheFührungsspur,)
1;21)の内終端には,広い移動遮断領域((122;Sperrbereich)
22)が接続しており,また突起部((40)は,該両カニューNase)
レ延長部((115ないし33;15ないし33)を相Kanülenansatz)
対的に回転させることにより該移動遮断領域()との相互Sperrbereich
」,作用によってロックされるようになっている旨の記載があることから
突起部()40の移動遮断領域()122への回転にNaseSperrbereich
,()()よる移動はガイドレーン121の内側終端FührungsspurinnerEnde
の絡ぎ部分の作用によるものであり,また,二つのカニューレが回転に
より固定状態となるのは,このガイドレーン()121のFührungsspur
最奥(終端)の位置のみであると主張する。
確かに,別紙1,甲19の1によれば,引用例の要約,特許請求の範
囲の請求項1には,上記の記載がある。しかし,上記の記載から,突起
部()40の移動遮断領域()122への回転によるNaseSperrbereich
移動が,ガイドレーン()121の内側終端()FührungsspurinnerEnde
の絡ぎ部分の作用によるとはいえないし,二つのカニューレが回転によ
り固定状態となるのが,このガイドレーン()121の最Führungsspur
奥(終端)の位置のみであるともいえない。また,引用例に「該平坦部
()は内肩部()までの10mmで終わってAbflachunginnerenSchulter
おり,しかも該突起部()が該内肩部()に当たるNaseinnerenSchulter
ため,脊髄カニューレ()は,硬膜外カニューレSpinalkanüle
()の先端部から最大10mm前方へ突出できるようにEpiduralkanüle
なっている(別紙1③)との記載があることから,肩部()。」Schulter
(,「()128別紙1によれば引用例の請求項3に内肩部innerenSchulter
()」,「()」128と記載されていることから上記の内肩部innerenSchulter
は「肩部()128」と同一であるものと認められる)は,,。Schulter
脊髄カニューレの挿入限界を規定する機能を有していると認められる
が,肩部()128が,その位置でのみ回転を可能にしているSchulter
と解すべき根拠はない。
したがって,原告の前記主張は,採用することができない。
(ウ)原告は,引用例には,突起部()40と平坦部()NaseAbflachung
121との間隔はほとんど遊びがない大きさとなっていると記載されて
いるので,突起部()40を平坦部()121より径のNaseAbflachung
大きいシリンダー状の円周位置にある移動遮断領域()1Sperrbereich
,。22へ回転させようとしても径の差のために回転できないと主張する
確かに,引用例には「カニューレ延長部()33のフ,Kanülenansatz
ード()35の開口部側エッジには,内壁面上に半径方向内側にKappe
(),(),向かって突起部40が形成されておりこの突起部はNaseNase
同突起部()と,硬膜外カニューレ()111のカNaseEpiduralkanüle
ニューレ延長部()115の平坦部()121KanülenansatzAbflachung
との間にはほとんど遊びができない大きさになっており,また前記平坦
部()121上を軸方向にスライドし肩部()128AbflachungSchulter
まで移動できるようになっている(別紙1⑤)と記載されており,同。」
記載によれば,突起部()40と平坦部()121とのNaseAbflachung
間は,ほとんど遊びがないものと認められる。しかし,ほとんど遊びが
ないことから,直ちに,突起部()40を回転することができないNase
とは認められない。かえって,別紙1の引用例の下線部の記載及び上記
の記載によれば,突起部()40は,肩部()128に当NaseSchulter
たるまで平坦面()121のどの位置でも,左又は右に回転Abflachung
させることができるものと認められる。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(エ)原告は,引用例において,請求項4が請求項1を引用していること
から,請求項1は,図1ないし7の実施例と図8ないし14の実施例の
二つの実施例を含むものであり,図8ないし14の実施例は,突起部
(),()()NaseFührungsspurSchenkel40がガイドレーンであるレッグ
,,,()21の終端でしか固定しないから引用考案はすべて突起部Nase
40がガイドレーン((121,21)の終端でしか固定Führungsspur)
しないと主張する。
別紙1の引用例の記載によれば,請求項1は,図1ないし7の実施例
と図8ないし14の実施例の二つの実施例を含むものとして記載されて
いると認められる。そして,請求項4が請求項1を引用していたとして
も,その故に,引用例に記載された考案のすべてが,請求項4に記載さ
(,()れた考案と同様のもの図8ないし14の実施例に対応し突起部Nase
(40)が長いレッグ()21の先端で90度回転されて短いSchenkel
レッグ()22にスライドされたときにのみ固定される)にSchenkel。
限られることはない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(オ)原告は,引用例の図1ないし7の実施例に対応した請求項3では,
平坦部()121は内肩部()128のとこAbflachunginnerenSchulter
ろで終わっているから,内肩部()128は,ストッパinnerenSchulter
ーの作用を果たすものではなく,突起部()40を移動遮断領域Nase
()122へ移行させるものであると主張する。Sperrbereich
引用例の請求項2,3は,別紙1の該当箇所記載のとおりであり,確
Abflachunginnerenかに請求項3には平坦部121は内肩部,,「()(),(
(128)のところで終わっている」と記載されている。しかSchulter)
し,同記載から,内肩部()128がストッパーの作用innerenSchulter
,()()を果たすものではなく突起部40を移動遮断領域NaseSperrbereich
122へ移行させるものであるということはできない。引用例の請求項
,,3は請求項2を引用しており引用例の請求項2に関する説明の部分に
「該平坦部()は内肩部()までの10mmAbflachunginnerenSchulter
,()()で終わっておりしかも該突起部が該内肩部NaseinnerenSchulter
に当たるため,脊髄カニューレ()は,硬膜外カニューレSpinalkanüle
()の先端部から最大10mm前方へ突出できるようにEpiduralkanüle
innerenなっている(別紙1③)と記載されていることから,内肩部(。」
)128は,脊髄カニューレの挿入限界を規定する機能を有しSchulter
ているものと認められるそして引用例の請求項12の記載及び突。,,「
起部()40を平坦部()121上に移動させると,脊NaseAbflachung
髄カニューレ()30のカット開口部32は,硬膜外カニSpinalkanüle
ューレ()111の,上方を向いたカット開口部113Epiduralkanüle
に対して90度回転する(図3,図4,図6A。このポジションにあ)
る脊髄カニューレ()30は,平坦部()121SpinalkanüleAbflachung
と突起部()40と噛み合うことにより,孔14を通り脊髄腔内まNase
でまっすぐ移動し,しかもその場合,垂直方向に延伸する硬膜繊維が切
断されることはほとんどない(別紙1⑤)との記載によれば,突起部。」
()40は平坦部((ガイドレーン()NaseAbflachungFührungsspur))
121上を移動するのであるから,内肩部()128がinnerenSchulter
平坦部((ガイドレーン()121の終端にAbflachungFührungsspur))
おいて突起部の移動を止めることにより,脊髄カニューレの挿入限界が
inneren規定されるものと認められる。他方,引用例において,内肩部(
)128が突起部()40を移動遮断領域()SchulterNaseSperrbereich
122へ移行させるものであることを裏付ける記載は認められない。し
たがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(カ)原告は,仮に審決が認定したように,脊髄カニューレについて,ど
の挿入位置(突出位置)でも突起部()40を回転して移動遮断領Nase
域()122に移行できるのであれば,図1ないし7の実Sperrbereich
,(),施例において肩部128は不要となるはずでありinnerenSchulter
また,図8ないし14の実施例において,溝()20で形成されたNut
ガイドレーン()であるレッグ()21の内側終FührungsspurSchenkel
端でL字状に折れ曲がるレッグ()22を形成する必要はないSchenkel
にもかかわらず,引用例ではこれらの構造が強調されていることに照ら
すならば,引用考案は,どの挿入位置でも突起部()40を回転でNase
きるものではないと主張する。
しかし,脊髄カニューレについて,どの挿入位置(突出位置)でも突
起部()40を回転して移動遮断領域()122に移NaseSperrbereich
,,()()行できるとしても前記(オ)のとおり内肩部肩部innerenSchulter
,,128は脊髄カニューレの挿入限界を規定する機能を有しているから
図1ないし7の実施例において,肩部()128が不要innerenSchulter
。,,,()となることはないまた前記()のとおり引用例には突起部1Nase
(40)が長いレッグ()21の先端で90度回転されて短いSchenkel
レッグ22にスライドされたときにのみ固定される考案図()(Schenkel
8ないし14の実施例に対応する)とともに,脊髄カニューレについ。
て,どの挿入位置(突出位置)でも突起部()40を回転して移動Nase
遮断領域()122に移行できるとの考案(図1ないし7Sperrbereich
の実施例に対応する)が記載されている。。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
()以上によれば,審決が行った引用考案の認定について誤りはなく,取消3
事由1は理由がない。
2引用考案と本件考案1及び2との相違点を看過した誤り(取消事由2)につ
いて
原告は,審決が,引用考案のカニューレについて,突起部が内肩部に当たる
まで平坦面のどの挿入位置でも固定されるとの誤った認定をした結果,引用考
案と本件考案1及び2との相違点を看過した誤りがあると主張する。
しかし,前記1()アのとおり,審決が,引用考案のカニューレについて,1
突起部が内肩部に当たるまで平坦面のどの挿入位置でも固定されると認定した
ことに誤りはないから,原告の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用
することができない。したがって,取消事由2は理由がない。
3顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由3)について
原告は,本件考案1及び2は,脊麻針を,どの挿入位置でも硬麻針に固定で
きるようにしたことにより,最適の位置で脊麻針を硬麻針に固定することがで
き,適切な施術を可能とすることができるという顕著な作用効果を奏すると主
張し,審決は,本件考案のそのような顕著な作用効果を看過した誤りがあると
主張する。
しかし,前記1()アのとおり,引用考案も,突起部が内肩部に当たるまで1
平坦面のどの挿入位置でも固定されるものであることから,最適の位置で脊麻
。,,針を硬麻針に固定することができるものと認められるそうすると脊麻針を
どの挿入位置でも硬麻針に固定できるようにしたことにより,最適の位置で脊
麻針を硬麻針に固定することができ,適切な施術を可能とすることができると
いう作用効果は,引用考案においても奏される作用効果であったものと認めら
れるから,本件考案1及び2の顕著な作用効果ということはできない。
したがって,審決に,本件考案1及び2の顕著な作用効果を看過した誤りは
なく,取消事由3は理由がない。
4結論
以上のとおり,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決にこれ
を取り消すべきその他の違法もない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官飯村敏明
裁判官中平健
裁判官上田洋幸
別紙1
引用例〔甲3欧州特許出願公開第0564859号〕訳
(訳は甲19の1による)
①1欄1ないし12行
本発明は,湾曲した先端部,及び上方へ向けられたカット開口部を備え,先端
(),部の湾曲部の外壁に孔が開けられている硬膜外カニューレとEpiduralkanüle
先端部が鋭利にカットされ,該硬膜外カニューレ()よりも長くEpiduralkanüle
て薄く,またその先端部は硬膜外カニューレ()の孔内をスライEpiduralkanüle
ドできるようになっている脊髄カニューレ()から成る麻酔具に係Spinalkanüle
るものであり,この場合,各該カニューレの末端部にはカニューレ延長部
(),(),KanülenansatzKanülenansatzが固定されまた該両カニューレ延長部には
軸方向にスライドして差し込み一体化できる同軸のアダプター()が設けPaßteil
られている。
②3欄53行ないし4欄18行
本発明ではこの課題を請求項1の特徴によって解決している。
一方のカニューレ延長部()のアダプター()に設けられKanülenansatzPaßteil
ているガイドレーン()が,もう一方のカニューレ延長部Führungsspur
()()()KanülenansatzPaßteilNaseのアダプターに設けられている半径方向の突起部
とともに作用することで,硬膜外カニューレ()の中をまっすぐEpiduralkanüle
通るガイドレーン()に沿って脊髄カニューレ()がスFührungsspurSpinalkanüle
ライドし,また同脊髄カニューレ()を,カット開口部の向きがあSpinalkanüle
らかじめ決められている(硬膜外カニューレ()のヘッド方向にEpiduralkanüle
向いているカット開口部に対して90度回転している)ため,硬膜外カニューレ
()の湾曲部にある孔から前方へ突出させ,硬膜()を切りEpiduralkanüleDura
取り,脊髄腔内へ進入できる(基本ポジション)ようになっている。脊髄カニュ
ーレ()が,必要な分−ただし,最大で10mm−硬膜外カニューSpinalkanüle
レ()から前方へ突出したら,直ちにカニューレ延長部Epiduralkanüle
()を回し,突起部()が,広い移動遮断領域()KanülenansatzNaseSperrbereich
の上を通るようにすると,脊髄カニューレ()のカット開口部の,Spinalkanüle
硬膜外カニューレ()のカット開口部に対する方向が変わり,まEpiduralkanüle
た両カニューレ延長部()の軸方向の動きがブロックされるため,Kanülenansatz
脊髄カニューレ()は,脊髄腔内でスライドできない状態(エンドSpinalkanüle
ポジション)になる。
③4欄21ないし43行
請求項2のように,ガイドレーン()が,シリンダー状の部分のFührungsspur
平坦部()として設置され,また隣接するエリアが突起部()用AbflachungNase
の移動遮断領域()になっている点が特徴となっている。また該シSperrbereich
リンダー状の部分は,硬膜外カニューレ()のサポート()EpiduralkanüleStutzen
になっており,また該突起部()は,該サポート()を覆い,かつ脊NaseStutzen
髄カニューレの延長部()のアダプター()になってSpinalKanülenansatzPaßteil
いるフード()の内面に設けられている。該平坦部()は内肩KappeAbflachung
部()までの10mmで終わっており,しかも該突起部()innerenSchulterNase
(),(),が該内肩部に当たるため脊髄カニューレはinnerenSchulterSpinalkanüle
硬膜外カニューレ()の先端部から最大10mm前方へ突出できEpiduralkanüle
るようになっている。ユーザーは,硬膜()貫通後直ちに硬膜外カニューレDura
()内で左ないし右に回せば脊髄カニューレ()をロEpiduralkanüleSpinalkanüle
ックすることができる。該突起部()は,各アダプター()の湾曲部NasePaßteil
上の平坦部()の隣に,摩擦力で固定されロックされる。神経繊維はAbflachung
カット開口部の前にあるため,ロック後に液体流が枯渇した場合でも,軸方向の
ロックを解除しなくとも脊髄カニューレ()をさらに回すか逆方向Spinalkanüle
に回転させれば,カット開口部の方向を変えられるようになっている。
④5欄52ないし57行
図7は,カニューレを挿入して二つのカニューレを結合しロックした状態の断
面図である。
図7Aは,図7のロック状態にある該両カニューレの,カット開口部の位置関
係を示した図である。
⑤7欄37行ないし8欄43行
図1から図7の実施例では,硬膜外カニューレ延長部()Epiduralkanülenansatz
(),,115のシリンダー状のサポート116の外面には円の弦の部分にStutzen
()。()傾斜のない平坦部121が設けられているこの平坦部AbflachungAbflachung
121は,カニューレ111及びサポート()116の長軸方向にまっすStutzen
。,()ぐ広がっているこの実施例の場合平坦かつ直線的に広がる平坦部Abflachung
121の長さは10mmほどになっており、その末端は肩部()128Schulter
になっている。平坦部()121に隣接し広い移動遮断領域Abflachung
()122は,サポート()116がシリンダー状の形状にSperrbereichStutzen
,()。なっているため湾曲しまた平坦部121より盛り上がっているAbflachung
場合によっては,脊髄カニューレ()30のインジェクションポジSpinalkanüle
ションに突起部()40を固定しておくために,図面では表示されていないNase
がサポート()116の,該平坦部()121に対して90度StutzenAbflachung
ずれた位置にある平坦部()を利用することも可能である。Abflachung
カニューレ延長部()33のフード()35の開口部側エKanülenansatzKappe
ッジには,内壁面上に半径方向内側に向かって突起部()40が形成されてNase
,(),(),()おりこの突起部は同突起部と硬膜外カニューレNaseNaseEpiduralkanüle
111のカニューレ延長部()115の平坦部()12KanülenansatzAbflachung
1との間にはほとんど遊びができない大きさになっており,また前記平坦部
()121上を軸方向にスライドし肩部()128まで移動でAbflachungSchulter
きるようになっている。脊髄カニューレ()30のカット開口部3Spinalkanüle
2を識別しやすくするため,突起部()40はフード()35のエッNaseKappe
ジから軸方向に突出している。平坦部()121は,硬膜外カニューAbflachung
レ()111のカット開口部113を横断する軸方向の面に対しEpiduralkanüle
て直角になっているのに対し,突起部()40は,脊髄カニューレNase
()30のカット開口部32の先端を通る軸方向の面内に位置してSpinalkanüle
いる。そのため,突起部()40を平坦部()121上に移動さNaseAbflachung
せると,脊髄カニューレ()30のカット開口部32は,硬膜外カSpinalkanüle
ニューレ()111の,上方を向いたカット開口部113に対しEpiduralkanüle
て90度回転する(図3,図4,図6A。このポジションにある脊髄カニュー)
レ()30は,平坦部()121と突起部()40とSpinalkanüleAbflachungNase
噛み合うことにより,孔14を通り脊髄腔内までまっすぐ移動し,しかもその場
合,垂直方向に延伸する硬膜繊維が切断されることはほとんどない。脊髄麻酔を
実施する場合には,脊髄カニューレ()30からマンドリンを引きSpinalkanüle
抜く。硬膜()を貫通した後,脊髄カニューレ()30のカッDuraSpinalkanüle
ト開口部32は,硬膜外カニューレ()111のカット開口部のEpiduralkanüle
場合と同様ほぼ上方を向いており,そのため,注入剤を上方に送り出すことが可
能となっている(図7A。注入剤を上方に向けて送り出せるようにするため,)
カニューレ延長部()33をカニューレ延長部()1KanülenansatzKanülenansatz
,(),()15から相対的に右ないし左に回転させ突起部40をサポートNaseStutzen
116のシリンダー状になっている移動遮断領域()122上でロSperrbereich
ックする(図7。硬膜外カニューレ()111のグリッププレー)Epiduralkanüle
ト118の,平坦部()121に関係するウイング上には,半径方向Abflachung
の突起127が設けられており,またこの突起は,サポート()116のStutzen
部分に,広い延長部127aを備え,またその場合,該延長部は,カット開口部
113の面の方向に延伸し,かつ硬膜外カニューレ()111にEpiduralkanüle
脊髄カニューレ()30を挿入し回転させる方向を医師に示していSpinalkanüle
。,()。るユーザーには硬膜を突刺する場面がよく見えるようになっているDura
カニューレ延長部()33に注入具を接続し注入する場合でも,脊Kanülenansatz
髄カニューレ()30が脊髄腔内で移動しないようになっている。Spinalkanüle
⑥9欄7行ないし10欄19行
図8から図14の実施例の場合,脊髄カニューレ()の構造は,Spinalkanüle
図1から図7の実施例と同一になっている。もっとも,硬膜外カニューレ
()()()EpiduralkanüleKanülenansatzStutzen11のカニューレ延長部15のサポート
16の外面に,L字型になっている直角の溝()20が設けられている。溝Nut
()(),()NutSchenkelStutzen20の長いレッグ21はカニューレ及びサポート
16の長軸の方向にまっすぐ延伸している。該レッグ()の後端部は開Schenkel
放されている。この長いレッグ()21の内側先端部には,溝()SchenkelNut
20の短いレッグ()22が移動遮断領域()として直角にSchenkelSperrbereich
,(),()設けられておりまたこの移動遮断領域はサポートSperrbereichStutzen
16の周囲90度以上にわたって延伸し,その末端には末端面23が設けられて
いる(図12及び図14。溝()20の短いレッグ()22の底面)NutSchenkel
は,図12及び図14からもわかるように,特定の形状になっている。この底面
は,溝()20の頂点()24から,外側に湾曲した湾曲部25を経NutScheitel
て凹部26まで続いており,また該凹部は,レッグ()22の末端が末Schenkel
端面23となっており,頂点()24とは90度ずれている。この凹部Scheitel
26は,後ほど詳述するように,固定エレメントとして機能する。
脊髄カニューレ延長部()33のフード()35の開SpinalKanülenansatzKappe
口部側に,半径方向内側に向けて設けられている突起部()40の形状は,Nase
硬膜外カニューレ()11のカニューレ延長部()1EpiduralkanüleKanülenansatz
5の平坦部()20との間にはほとんど遊びができず,かつその平坦Abflachung
部()20上を肩部()28までスライドする大きさになってAbflachungSchulter
いる。溝()20軸方向に延伸しているレッグ()21は,硬膜外NutSchenkel
カニューレ()11のカット開口部13を横断する軸方向の面にEpiduralkanüle
対して90度ずれているのに対し,突起部()40は,脊髄カニューレNase
()30のカット開口部32の先端部を通る軸方向の面内に位置しSpinalkanüle
ている。その結果,突起部()40を溝()20のレッグ()NaseNutSchenkel
21に入れると,脊髄カニューレ()30のカット開口部32の面Spinalkanüle
は,硬膜外カニューレ()11のカット開口部13面の方向を向Epiduralkanüle
くことになる(図8から図10。このポジションにある脊髄カニューレ)
()30は,溝()と突起部()が噛み合うことにより,孔SpinalkanüleNutNase
14を通り脊髄腔内までまっすぐ移動し,しかもその場合,垂直方向に延伸する
硬膜繊維が切断されることはほとんどない。脊髄麻酔を実施する場合には,脊髄
カニューレ()30からマンドリンを引き抜く。硬膜()を貫SpinalkanüleDura
通した後,脊髄カニューレ()30のカット開口部32は,硬膜外Spinalkanüle
カニューレ()11のカット開口部の場合と同様ほぼ上方を向いEpiduralkanüle
ており,そのため,注入剤を上方に送り出すことが可能となっている。注入剤を
上方に向けて送り出せるようにするため,カニューレ延長部()3Kanülenansatz
3をカニューレ延長部()15から相対的に右ないし左に回転させKanülenansatz
て,突起部()40を,溝()20のシリンダー状になっているレッグNaseNut
()22内に入れ,湾曲部25を通り凹部26(図14)に達するとエSchenkel
ンドポジションに入って固定されることになり,またこのエンドポジションに入
,,,っている場合カット開口部32は90度回転し図13で示されているような
硬膜外カニューレ()11のカット開口部13の位置に対応するEpiduralkanüle
位置を占めることになる。ユーザーには,硬膜()を突刺する場面がよく見Dura
えるようになっている。カニューレ延長部()33に注入具を接続Kanülenansatz
し注入する場合でも,脊髄カニューレ()30が脊髄腔内で移動でSpinalkanüle
きないようになっている。
脊髄麻酔を施した後は,脊髄カニューレ()30を左に90度回Spinalkanüle
して脊髄カニューレのロックを解除し,硬膜外カニューレ()1Epiduralkanüle
1から抜き取る。通常はこのような方法で硬膜外カテーテルを脊髄腔に挿入し,
その後,硬膜外カニューレ()11も引く抜く。Epiduralkanüle
⑦10欄26行ないし12欄12行
特許請求の範囲
1.湾曲した先端部(112)及び上方へ向けられたカット開口部(113)を
備え,先端部(112)の湾曲部の外壁に孔(114)が開けられている硬膜
外カニューレ()111と,その先端部が鋭利にカットされ,Epiduralkanüle
該硬膜外カニューレ()111よりも長くて薄く,またその先Epiduralkanüle
端部は硬膜外カニューレ()111の孔(114)内をスライEpiduralkanüle
ドできるようになっている脊髄カニューレ((30)から成る麻Spinalkanüle)
酔具であって,この場合,各該カニューレ(111;30)の末端部にはカニ
ューレ延長部((115;33)が固定されており,また該両Kanülenansatz)
カニューレ延長部((115;33)には,軸方向にスライドKanülenansatz)
して差し込み一体化できる同軸のアダプター()が設けられ,さらに,Paßteil
カニューレ延長部((115及び33;15及び33)のアダKanülenansatz)
プター((116及び35;16及び35)には,半径方向の突起部Paßteil)
()(),()NaseKanülenansatz40が設けられまたもう一方のカニューレ延長部
(33及び115;33及び15)のアダプター((116及び35Paßteil)
;16及び35)には,半径方向の該突起部((40)用の,軸方向にNase)
まっすぐ延伸するガイドレーン((121;21)が形成されてFührungsspur)
おり,その場合,カニューレ延長部()の一部になっている脊髄Kanülenansatz
カニューレ((30)に関係する軸方向のガイドレーンSpinalkanüle)
((121;21)及び突起部((40)は,脊髄カニュFührungsspurNase))
ーレ((30)のカット開口部(32)の先端部を通る軸方向のSpinalkanüle)
面内にあり,カニューレ延長部((111;11)に関係するKanülenansatz)
軸方向のガイドレーン121;21及び突起部4()()()(FührungsspurNase
0)は,そのカット開口部(113;13)を横断する軸方向の面に対して9
0度ずれており,さらに,ガイドレーン((121;21)の内Führungsspur)
,()(),終端には広い移動遮断領域122;22が接続しておりSperrbereich
また突起部((40)は,該両カニューレ延長部((11NaseKanülenansatz))
5ないし33;15ないし33)を相対的に回転させることにより該移動遮断
領域()との相互作用によってロックされるようになっているこSperrbereich
とを特徴とする麻酔具。
2.一方のカニューレ延長部((115及び33)のアダプターKanülenansatz)
((116及び35)はシリンダー状になっており,また円の弦に相Paßteil)
当する軸方向の部分には,ガイドレーン()を形成する平坦部Führungsspur
((121)が設けられており,またアダプター((11AbflachungPaßteil))
6及び35)の,該平坦部((121)に隣接する部分は,移動Abflachung)
遮断領域((122)になっていることを特徴とする請求項1記Sperrbereich)
載の麻酔具。
3.平坦部((121)は,内肩部((128)のAbflachunginnerenSchulter))
ところで終わっていることを特徴とする請求項2記載の麻酔具。
4.一方のカニューレ延長部((115及び33)のアダプターKanülenansatz)
((116及び35)には,直角の溝((20)が設けられておPaßteilNut))
り,末端部が開放されている軸方向の一方のレッグ((21)はガSchenkel)
イドレーン()になっており,もう一方の,移動遮断領域Führungsspur
()に形成されているレッグ((22)も,円周沿いにSperrbereichSchenkel)
90度以上のエリアにわたって延伸し,さらに,もう一方のカニューレ延長部
((33及び15)のアダプター((35及び16)のKanülenansatzPaßteil))
半径方向の突起部((40)は,該溝((20)の中に通されスラNaseNut))
イドできるようになっていることを特徴とする請求項1記載の麻酔具。
5.溝((20)はL字型になっており,その長いレッグ((2NutSchenkel))
1)は軸方向を向いていることを特徴とする請求項4記載の麻酔具。
6.突起部((40)は,移動遮断領域((122;22)NaseSperrbereich))
と接触し,基本ポジションに対して90度回転したエンドポジションの位置で
停止することを特徴とする請求項1から5の中のいずれか一つに記載の麻酔
具。
.()()()7脊髄カニューレ30のカニューレ延長部SpinalkanüleKanülenansatz
(33)には,そのガイドレーン((121;21)及び突起部Führungsspur)
((40)と向かい合う位置に,軸方向又は半径方向,若しくはその両Nase)
方向で外側へ突出した,方向を定める突出部(41)が設けられていることを
特徴とする請求項1から6の中のいずれか一つに記載の麻酔具。
8.硬膜外カニューレ((111;11)のカニューレ延長部Epiduralkanüle)
((115;15)には,グリッププレート(118;18)Kanülenansatz)
,,()が取り付けられておりこのグリッププレートのガイドレーンFührungsspur
(121;21)に関係するウイングの一つの面には,半径方向の突起(12
7;27)が設けられており,この突起は,広い延長部(127a;27a)
を備え,またその場合,該延長部は,硬膜外カニューレ((1Epiduralkanüle)
11;11)のカット開口部(113;13)を横断する軸方向の面の方向に
延伸していることを特徴とする請求項1から7の中のいずれか一つに記載の麻
酔具。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛