弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
     昭和二三年九月二日愛知県岡崎市長に対する届出によってされた上告人
と被上告人の婚姻は無効であることを確認する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人上野芳朗の上告理由について
 一 本件は、上告人が被上告人に対して、昭和二三年九月二日愛知県岡崎市長に
対してされた上告人と被上告人の婚姻の届出(以下「本件届出」という。)は上告
人の届出意思を欠くものであると主張して、本件届出に基づく婚姻の無効確認を求
めるものであるところ、原審の適法に確定した事実関係の概要は次のとおりである。
 1 上告人と被上告人は、大韓民国(以下「韓国」という。)の国籍を有する。
上告人と被上告人は、昭和二一年一月五日、愛知県瀬戸市所在の被上告人の実家で
韓国式の結婚式を行い、同国の風習に従い、同日とその翌日を被上告人の実家で過
ごし、その後三日間程度を愛知県岡崎市所在の上告人の実家で過ごした。上告人は、
当時親元を離れて政治運動に熱中しており、被上告人との面識もなかったが、結婚
式の前日に別の口実で呼び出されて双方の親が結婚を決めたことを初めて知らされ、
抗議したものの、両親の懇請に負けて不本意ながら挙式には応じた。上告人は、風
習による儀式終了後直ちに政治運動のため山形県鶴岡市に行き、その後は生活の本
拠を東京に置くようになり、被上告人は、上告人の実家で生活することになった。
上告人と被上告人は、上告人が上告人の実家を訪れることはあったが、継続的に同
居したことはない。
 2 上告人と被上告人の間には三人の子が生まれたが、一人は幼いころ死亡し、
残りの二人は既に成人している。被上告人は昭和四三年に上告人の両親と別居した
が、上告人はその後も、被上告人宅を訪れたり、生活費や養育費を送金したり、被
上告人との間の子の結婚式に父親として参列したりした。
 3 上告人の父は、上告人と被上告人の間に一人目の子が生まれたことから、被
上告人と相談の上、昭和二三年九月二日、愛知県岡崎市長に対して本件届出をした。
本件届出は上告人の意思に基づかないものであったが、被上告人は、上告人の父が
上告人の意向を受けて本件届出をしたものと思っていた。この時点において本件届
出に基づく婚姻は韓国当局に届け出られなかったので、平成元年までの間、韓国の
戸籍には上告人と被上告人の婚姻の事実は記載されておらず、上告人も本件届出が
されたことを知らなかった。
 4 上告人は、昭和五六年一月七日、韓国の国籍を有する 丙 との婚姻を韓国
当局に届け出た。上告人と 丙 の間には二人の子がいる。
 5 被上告人は、平成元年二月二三日、上告人に無断で本件届出に基づく上告人
との婚姻を韓国当局に届け出た。これにより韓国の戸籍に上告人と被上告人の婚姻
の事実が記載されたため、上告人は、戸籍上重婚状態となった。上告人は、平成元
年三月一六日に韓国の戸籍謄本を見て本件届出がされたことを初めて知り、同年六
月一六日に本件訴訟を提起した。
 6 韓国国民の法意識としては成婚儀式の挙行によって婚姻の成立を認める事実
婚の観念が根強く、上告人と被上告人もこのような法意識の影響を受けている。
 二 原審は、法例(平成元年法律第二七号による改正前のもの)一三条により婚
姻の方式については婚姻挙行地である我が国の法律が適用され、本件届出は上告人
の届出意思を欠くから上告人と被上告人の婚姻が有効に成立したとはいい難いとし
ながら、次の事情を考慮すると上告人が届出意思の不存在を主張することは信義則
に反し許されないとして、上告人の請求を棄却すべきものとした。
 1 上告人の都合で別居生活を常態としていたものの上告人と被上告人の間には
実質的婚姻関係が継続していた上、届出をしない合意も存在せず、被上告人として
は、上告人の父が上告人の意向を受けて本件届出をしたと思っても不合理ではなく、
上告人の正式の妻であるとの信頼の下に四〇年間過ごしてきたもので、その落ち度
は認め難い。
 2 上告人と被上告人は、韓国の事実婚重視の法意識の影響下にあり、韓国の風
習に従って結婚式等を行っているから、方式の不備による婚姻無効という結果は、
我が国における法意識を前提とする以上に、被上告人にとって苛酷である。
 3 上告人は、被上告人との実質的婚姻意思を有し、婚姻生活を継続していたか
ら、その態度には婚姻の届出をすることを被上告人に対して許容したとみられても
仕方がないものがあった。
 三 しかしながら、原審の信義則に関する判断は是認することができない。その
理由は次のとおりである。
  婚姻の無効確認請求訴訟につき言い渡された判決は第三者に対しても効力を有
することがあるから、婚姻の無効確認請求が信義則に照らして許されないかどうか
は、婚姻の効力の有無が当該当事者以外の利害関係人の身分上の地位に及ぼす影響
等をも考慮して判断しなければならない。これを本件についてみると、原審の適法
に確定した事実関係によれば、本件届出に基づく婚姻が無効でないとされた場合に
は、上告人と 丙 の婚姻が重婚に該当するとして取り消される等、利害関係人に
重大な影響を及ぼすおそれがあるのであって、そのことをも考慮すると、原審の説
示するところのみによっては、上告人が届出意思の不存在を主張して本件届出に基
づく婚姻の無効確認請求をすることが信義則に反するということはできない。
 四 以上によれば、原判決には法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法が
判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨はこの趣旨をいうものとして理由が
あり、原判決は破棄を免れない。そして、前記事実関係の下においては本件届出に
基づく婚姻は無効であるというべきであるから、上告人の請求を棄却した第一審判
決を取り消して、右請求を認容すべきである。
 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    福   田       博

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛