弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人佐々波与佐次郎の上告理由第一点および第三点(二)について。
 原判決が、その理由中に、上告人(控訴人)の「Dが被控訴会社の取締役、支配
人兼E支店長としてそのE支店に関する一切の事項を処理する権限があつた」との
主張に対し、「Dの被控訴会社における地位が控訴人の右主張のとおりであること
は右に認定したところである」と判示していることは、所論のとおりである。しか
し、原判決は、さらに、右Dの代理権の範囲は、「酒類の醸造販売を主目的とする
被控訴会社の東京方面における販売を営むE支店の支配人として、該支店の営業の
範囲内においてのみ包括的な代理権を有するにとどまるものといわなければならな
い」と認定しており、右認定は、挙示の証拠に照らし首肯できる。しからば、原判
決がDを被上告会社の支配人であると判示したことは、所論のように、ひろく被上
告会社本店の支配人であることを認めた趣旨のものでないことは、判文上明らかで
ある。所論は、右原判示に副わない事実関係を前提として原判決の違法をいうもの
であつて、前提を欠き採るを得ない。
 同第二点および第三点(一)について。
 被上告会社の上告人に対する本訴請求については、訴状で、初め論旨のように「
無効なることの確認を求める」としたが(記録二六丁)、その後訂正の申立あり、
最後の訴状訂正申立書を陳述した第一審第三回口頭弁論調書には「右申立書中訂正
の事実と題する項の第一項の『偽造無効ナルコトヲ確認ス』とあるのは、『偽造ナ
ルコトヲ確認ス』との意味である。又本訴においては……右証書が偽造なることを
求めているものである」(同四丁)と記載されている。右によると、被上告会社代
理人は、裁判長の釈明に対しこのように陳述しているのであつて、所論のように、
本訴中に本件証明書の無効確認請求を包含しているものとは到底認められない。の
みならず、確認の訴は、民訴二二五条の証書真否確認の訴以外は、権利または法律
関係の確認しか許されないのであるから、本件のような証明書のいわゆる無効の確
認請求はなし得ないことは明らかである。されば、本訴請求が、本件証明書の偽造
であることの確認を求めるものであることは、本件記録に徴し明白であつて、原判
決には所論の違法は認められない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   朔   郎
            裁判官    長   部   謹   吾

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