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平成18年(行ケ)第10255号審決取消請求事件
平成19年2月15日判決言渡,平成19年1月25日口頭弁論終結
判決
原告日本エコシステム株式会社
訴訟代理人弁理士福岡要
被告特許庁長官中嶋誠
指定代理人鈴木明,杉山務,小池正彦,田中敬規
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
「特許庁が不服2003−23590号事件について平成18年4月10日にし
た審決を取り消す。」との判決。
第2事案の概要
本件は,拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消しを求める事
案である。
1特許庁における手続の経緯
(1)原告は,平成12年6月30日,発明の名称を「複数情報提供方法」とする
特許出願(請求項の数4)をしたところ,平成15年9月24日付の拒絶査定を受
けたので,同年10月31日,拒絶査定に対する審判を請求し(不服2003−2
3590号事件として係属),さらに,同年12月1日,手続補正書により明細書
の特許請求の範囲を補正(以下「本件補正」という。)した(甲1,3,6,7)。
(2)特許庁は,平成18年4月10日,「本件審判の請求は,成り立たない。」
との審決をし,同年5月1日,その謄本を原告に送達した。
2特許請求の範囲の請求項1の記載(請求項2以下の記載は省略)
(1)平成15年6月10日付手続補正書による補正後のもの(甲2)
【請求項1】サーバー側からインターネットを介して情報を提供する情報提供方
法であって,案件情報と求人情報とを同時に提供できるようにしたものであり,次
の段階からなる。
(1)企業等が端末に入力した案件情報と求人情報から前記サーバー側でデータベ
ースを作成する段階,
(2)該作成したデータベースからサーバー側でホームページを作成して記憶する
段階,とを備える一方,
(3)外注企業等や求職者等の端末に対しては,案件情報と求人情報を表示して所
望する情報の選択を促す段階,
(4)該選択した情報を前記サーバー側で読み出す段階,
(5)該読み出された情報を求職者等や外注企業等の端末に出力する段階,とを備
えた,
ことを特徴とする複数情報提供方法。
(2)本件補正後のもの(甲3,下線部が補正個所である。)
【請求項1】サーバー側からインターネットを介してパーソナルコンピュータ等
の端末(クライアント)に対して情報を提供する情報提供方法であって,案件情報
と求人情報とを同時に提供できるようにしたものであり,次の段階からなる。
(1)前記サーバー側に記憶された案件情報と求人情報に基づいて,案件情報と求
人情報とを表示して,外部に仕事を委託する企業等のパーソナルコンピュータ等の
端末(クライアント)に対して,案件情報と求人情報の入力を促す段階と,
(2)前記サーバー側で,上記外部に仕事を委託する企業等がパーソナルコンピュ
ータ等の端末(クライアント)に対して入力した案件情報と求人情報からデータベ
ースを作成する段階と,
(3)サーバー側で,該作成したデータベースからホームページを作成して入力さ
れた案件情報と求人情報から作成されたデータベースを記憶する段階と,
を備える一方,
(4)サーバー側で,外注企業等や求職者等のパーソナルコンピュータ等の端末
(クライアント)に対して,案件情報と求人情報を表示して,所望する対象の案件
情報と求人情報の選択を促す段階と,
(5)前記サーバー側で,外注企業や求職者等等のパーソナルコンピュータ等の端
末(クライアント)にて選択した情報を読み出す段階と,
(6)前記サーバー側で読み出された情報を外注企業等や求職者等のパーソナルコ
ンピュータ等の端末(クライアント)にて出力する段階と,
を備えた,
ことを特徴とする複数情報提供方法。
3審決の理由の要旨
審決の理由は,以下のとおりであるが,要するに,本件補正後の請求項1に係る
発明(以下「本願補正発明」という。)は,特許法29条2項の規定により特許出
願の際,独立して特許を受けることができるものではなく,特許法17条の2第5
項で準用する同法126条4項の規定に違反するから,本件補正は,平成15年改
正前特許法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下すべきもので
あり,本件補正前の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,特許法
29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項
について検討するまでもなく,本願は特許を受けることができない,というもので
ある。
()本件補正についての補正却下の決定1
[補正却下の決定の結論]
平成15年12月1日付の手続補正を却下する。
[理由]
ア引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開平11−259566号公報(平成11年9月24日出願公開。
本訴甲8,以下「引用例1」という。)には,次のような発明が記載されているものと認められる。
「ネットワーク上において,仕事の発注元に備えられた発注元クライアントから仕事の発注要求を
受信し,仕事の請負先に備えられた請負先クライアントから,発注された仕事の受注申込みを受信す
ることにより仕事の仲介を行う仕事仲介装置であって,発注元クライアントからの発注要求を受信し
た場合に,仕事の請負先となり得る請負先候補に備えられた請負先クライアントに対して,仕事の発
注を通知する発注通知手段と,前記発注通知手段の通知に対応した受注申込みを受信した場合に,受
注を申し込んだ請負先候補の中から,実際に仕事を請け負う請負先を決定する請負先決定手段と,前
記請負先決定手段が請負先を決定した場合に,発注元クライアント及び前記発注通知手段が発注を通
知した請負先クライアントに対して,請負先が決定した旨を通知する請負先決定通知手段とを含む仕
事仲介装置。」
イ対比
本願補正発明と引用例1に記載された発明を対比すると,
引用例1に記載された発明の「仕事情報」は,本願補正発明の「案件情報」に相当し,引用例1に
記載された発明の「WWWサーバを用いたブローカー300」は,本願補正発明の「サーバー」に相
当し,引用例1に記載された発明の「発注元」及び「発注元クライアント100」は,それぞれ,本
願補正発明の「外部に仕事を委託する企業等」及び「外部に仕事を委託する企業等のパーソナルコン
ピュータ等の端末(クライアント)」に相当し,引用例1に記載された発明の「請負先」及び「請負
先クライアント200」は,それぞれ,本願補正発明の「外注企業等」及び「外注企業等のパーソナ
ルコンピュータ等の端末(クライアント)」に相当し,引用例1に記載された発明の「インターネッ
ト等のネットワーク500」は,本願補正発明の「インターネット」に相当することは,明らかであ
る。
そして,引用例1には,WWWサーバを用いたブローカー300(サーバーに相当)側からインタ
ーネット等のネットワーク500(インターネットに相当)を介して発注元クライアント100(外
部に仕事を委託する企業等のパーソナルコンピュータ等の端末に相当)及び請負元クライアント20
0(外注企業等のパーソナルコンピュータ等の端末に相当)に対して仕事情報(案件情報に相当)及
び請負先情報を提供することが記載されているから,本願補正発明と引用例1に記載された発明とは,
「サーバー側からインターネットを介してパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対
して情報を提供する」
点において差異はない。
引用例1には,
()「【0034】図3は,本実施の形態において発注元クライアント100からブローカーにi
対して,翻訳の仕事の仲介を依頼する場合に,発注元クライアントに備えられているディスプレイ装
置等の出力手段に表示される画面の一例を模式的に示す図である。同図の画面は,具体的には,発注
元クライアント100からブローカー300のサイト(以下,「ブローカーサイト」ともいう。)の
発注ページにアクセスする際に表示される。
【0035】同図に示されるように,本実施の形態では,まず,発注元クライアント100から,
翻訳の文字数,仕事の締切日及び報酬を入力して仕事の仲介を依頼する。具体的には,必要な情報を
入力した後,同図に示される「発注」のボタンをマウス等の入力手段を用いてクリック等することに
より,ブローカー300に対して,上記の各情報(以下,上記のように発注する仕事の内容に関する
情報を「仕事情報」という。)が転送される。尚,実際に転送される仕事情報には,上記の各情報に
加えて発注元の識別子(以下,「発注元ID」という。)及び発注元の電子メールアドレスが含まれ
る。発注元IDとしては,例えば,発注元が発注元クライアント100にログオンする際に入力する
識別子を利用することができる。また,電子メールアドレスについては,転送する情報に含めずに,
例えばブローカー300に発注元IDと電子メールアドレスとの対応関係を保持するようにしてもよ
い。」
()「【0036】ブローカー300に仕事情報が転送されると,ブローカープログラムが起動ii
される。本実施の形態のブローカープログラムは,請負先選定部320の機能により転送された仕事
情報に仕事の識別子(以下,「仕事ID」という。)を付与し,仕事情報データベースに格納する。
【0037】図4は,本実施の形態の仕事情報データベースの内容の一例を示す図である。同図に
示されるように,本実施の形態の仕事情報データベースには,仕事IDの他,発注元ID,発注元の
電子メールアドレス,文字数,締切日,及び報酬が格納される。」
との記載がなされており,これらの記載からみるに,引用例1には,ブローカー300側が,発注
元クライアント100に対して仕事情報の入力を促す段階と,ブローカー300側が,発注元におい
て発注元クライアント100に対して入力した仕事情報から仕事情報データベースを作成する段階
と,ブローカー300側が,該仕事情報データベースを記憶する段階とを備えていることが記載され
ているから,本願補正発明と引用例1に記載された発明とは,
「(1)外部に仕事を委託する企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対し
て,案件情報の入力を促す段階と,
(2)前記サーバー側で,上記外部に仕事を委託する企業等がパーソナルコンピュータ等の端末(ク
ライアント)に対して入力した案件情報からデータベースを作成する段階と,
(3)サーバー側で,入力された案件情報から作成されたデータベースを記憶する段階と」
を備えている点で差異はない。
引用例1には,
()「【0041】発注通知を受けた請負先クライアント200では,ブローカーサイトにアクiii
セスして,発注された仕事の内容を画面を通じて参照し,請負の申し込みを行うか否かを決定する。
図6は,仕事の発注があった場合に請負先クライアント200に表示される画面の一例を模式的に示
す図である。同図に示される画面は,図3で示した画面とほぼ同一であるが,情報の書き込みができ
ない点,及び画面右下のボタンが「請負」となっている点が異なっている。
【0042】請負先の業者は,同図のような画面において,「請負」のボタンを押すことにより仕
事の請負を申し込むことができる。「請負」のボタンが押されると,請負を申し込む旨の通知がブロ
ーカー300へと転送される。本実施の形態では,請求を申し込む旨の通知を受けたブローカー30
0においては,必要な情報の仕事仲介データベースへの格納がなされる。
(中略)
【0045】請負先選定部320により請負先の選定が終了すると,情報送信部330は,請負先
選定の結果を電子メール等の通信手段を利用して,選定された請負先,他の請負先,及び発注元に通
知する。以下,請負先が決定した旨の通知を「請負先決定通知」という。この通知により,他の請負
先は自己が請負先として選定されなかったことを知ることができ,また,発注元は請負先が決定した
ことを知ることができる。」
との記載がなされており,この記載からみるに,引用例1には,ブローカー300側が,請負先ク
ライアント200に対して,仕事情報を表示して,対象の仕事情報を請け負うか否かの選択を促す段
階を備えていることが記載されているから,本願補正発明と引用例1に記載された発明とは,
「(4)サーバー側で,外注企業等や求職者等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)
に対して,案件情報を表示して,対象の案件情報を請け負うか否かの選択を促す段階」
を備えている点で差異はない。
そうすると,本願補正発明と引用例1に記載された発明とは,
(一致点)
「サーバー側からインターネットを介してパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対
して情報を提供する情報提供方法であって,
案件情報を提供できるようにしたものであり,
(1)外部に仕事を委託する企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対して,
案件情報の入力を促す段階と,
(2)前記サーバー側で,上記外部に仕事を委託する企業等がパーソナルコンピュータ等の端末(ク
ライアント)に対して入力した案件情報からデータベースを作成する段階と,
(3)サーバー側で,入力された案件情報から作成されたデータベースを記憶する段階と,を備える
一方,
(4)サーバー側で,外注企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対して,案
件情報を表示して,対象の案件情報を請け負うか否かの選択を促す段階と,を備えた,情報提供方法」
である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明は,クライアントに対して案件情報と求人情報とを同時に提供しているのに対して,
引用例1に記載された発明は,クライアントに対して仕事情報を提供している点。
(相違点2)
本願補正発明においては,サーバー側は,外部に仕事を委託する企業等のパーソナルコンピュータ
等の端末(クライアント)が入力した案件情報を受け付けてデータベースに格納し,その後該データ
ベースからホームページを作成し外注企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に
対して案件情報を閲覧させ,そして,外注企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアン
ト)は,該ホームページに掲載されている所望の案件情報を選択し,サーバ−側では,外注企業等の
パーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)が選択した情報を読み出し,該読み出された情報
を外注企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に出力しているのに対して,
引用例1に記載された発明は,発注元クライアント100が,ブローカー300に対して仕事の仲
介を依頼し,依頼を受けたブローカー300は,仕事情報を仕事情報データベースに格納し,その後
ブローカー300は,適切な請負先クライアント200を選択し依頼された仕事の発注を行い,発注
通知及び仕事情報とを受け取った請負先クライアント200は,その仕事を請け負うか否かを決定し
その決定をブローカー300に返送している点。
ウ判断
(相違点1について)
前記相違点1について判断するに,
(ア)引用例1には,
「【0003】そのような目的を,インターネット等の外部に開かれたネットワーク環境の下で達
成する技術として,例えば,企業が人材を募集しようとする場合に,人材を募集する仕事に関する情
報をサーバに登録し,求職者が自己の能力等を示す履歴書情報を登録することにより求人活動を行う
インターネット上のサイトが実用化されている。この方法では,企業は募集する仕事に適した人材の
候補を,また,求職者は自己が応募することが可能な仕事をそれぞれ見つけることができる。このよ
うなシステムでは,企業が予め登録しておいた仕事に適した人材が登録された場合や,求職者が予め
登録しておいた希望に添う仕事が登録された場合に,電子メール等を用いた通知や,ホームページ上
での通知を行うサービスも実現している。」
との記載がなされており,この記載からみるに,インターネットを介してホームページを開設し求
人情報を閲覧可能にし,この求人情報を閲覧した求職者が,所望の求人情報を選択して応募するシス
テムは,本件出願前既に実現されていた。
(イ)また,クライアントに案件情報(仕事情報)を提供するにあたっても,仕事に関する複数の
情報を提供していることは明らかであり,そして必要ならば仕事以外の異種の複数の情報を提供する
ことも可能であることは当業者の技術常識程度のことである。
したがって,本願補正発明の如く,クライアントに案件情報と求人情報とを同時に提供すること
は,当業者が適宜なし得ることである。
(相違点2について)
前記相違点2について判断するに,
(ウ)まず,データベースからホームページを作成し,不特定のユーザに対してインターネット等
を介して所定の情報を閲覧可能とすることは,例えば,
1.特開平11−259486号公報
2.特開平10−269297号公報
3.特開平10−289206号公報
4.特開平11−017678号公報
5.特開2000−101632号公報
等にその旨の記載のある如く当業者には周知な技術事項である。
(エ)また,インターネットによる電子商取引は,例えば,
1.特開平11−213083号公報
2.特開平11−167595号公報
3.特開平11−219389号公報
4.特開2000−113056号公報
5.特開2000−132596号公報
6.特開2000−148854号公報
等にその旨の記載があるように当業者には周知であり,取引対象を案件(外注する仕事)とすれば,
本願補正発明の如き技術思想及び構成となることは,自明である。
(オ)そして,一般に,インターネットを通じて情報を提供しまた応募情報を収集することは,例
えば,
1.特開平10−307783号公報
2.特開2000−172705号公報
3.特開2000−101635号公報
4.特開平11−161631号公報
等にその旨の記載のある如く当業者には周知であり,この提供・応募情報を案件情報(仕事情報)と
すれば,本願補正発明の如き技術思想及び構成となることも自明である。
(カ)しかも,引用例1には,
「【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の人材募集サイトでは,
発注元が希望する人材や求職者が希望する仕事を検索したり,予め登録しておいた条件に添う人材又
は仕事が新たに登録された際の通知は行われていたが,実際に仕事を請け負うか否かの交渉をサイト
上でそのまま行うことはできないという問題点を有していた。即ち,実際に仕事を請け負うか否かの
交渉については電子メールその他の通信手段を用いて改めて行う必要があり,仕事自体に要する時間
よりも交渉に要する時間の方が大きくなるということも生じていた。また,仕事の請負の現状を鑑み
ると,上記のようなシステムで見つけた請負先に対して交渉を行っても,請負先のスケジュールの都
合や突発的事情,他の仕事を既に請け負っていた等の理由から契約に至らない場合も多く,複数の請
負先との交渉を重ねることによりやっと請負先を見つけることができるといった場合がほとんどであ
る。
【0006】また,特開平9−190469号公報に開示されている技術は,請負先のスケジュー
ル情報を取得した上,実行可能であると思われる請負先を選んで仕事を発注する機能を持ってはいる
ものの,当該機能を実際に利用するためには常時請負先のスケジュールを管理するシステムが起動し
ており,かつ,そのシステムによるスケジュールの管理が常に正確なものでなくてはならないという
問題点があった。企業内LAN等を用いた環境であれば,正確なスケジュール管理が可能な場合もあ
ろうが,例えばインターネット等の外部に開かれたネットワークを用いた環境において,外部の業者
に仕事を発注するような場合に,完全に正確なスケジュール管理を行うことは現状では不可能に近
い。結局,外部の業者に仕事を発注する場合には,発注元が請負先と個別に交渉を重ねることが必要
となる。
【0007】さらに,特開平9−282068号公報に開示されている技術では,請負先の仕事の
処理能力等に応じて適切に仕事を発注することは可能であるが,その適用範囲は,発注元が特定の企
業であり,かつ請負先が交渉の不要な特定の協力会社であるような場合に限られると考えられ,不特
定の発注元が不特定の請負先に対して仕事を発注するような場合に適用することは困難である。
【0008】本発明は,上記の問題点に鑑み,インターネット等の外部に開かれたネットワーク環
境の下において,不特定の発注元と不特定の請負先との間で,煩雑な交渉を行うことなく仕事の仲介
を行うことを可能とする仕事仲介装置及びそれを実現するプログラムを記録した記録媒体を提供する
ことを目的とする。」
との記載がなされており,先の記載(ア)及びこの記載(カ)からみるに,インターネットを介してホー
ムページを開設し,企業が外注したい案件情報(仕事情報)をホームページ上に閲覧可能に表示し,
仕事を受注したい企業が,ホームページに掲載されている案件情報(仕事情報)を閲覧し,所望の案
件情報(仕事情報)を選択し応募することは,本件出願前既に当業者には周知であった。そして,引
用例1に記載された発明は,さらに進んで,従来のシステムが,仕事を請け負うか否かの交渉をサイ
ト上でそのまま行うことができない問題を解決し,インターネット等の外部に開かれたネットワーク
環境の下において不特定の発注元と不特定の請負先との間で煩雑な交渉を行うことなく仕事の仲介を
行うことを可能とするものである。
以上(ア),(ウ)∼(カ)に示される技術事項に鑑みれば,引用例1に記載された発明に,前記周知技術
事項を適用して本願補正発明の如く構成することは,当業者が適宜なし得ることである。
エむすび
以上のとおり,本願補正発明は,特許法29条2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受
けることができるものではなく,特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反
するものであるから,平成15年12月1日付の手続補正は,平成15年改正前特許法159条1項
で準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
()本願発明について2
ア引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例及びその記載事項は,前記()アに記載したとおりである。1
イ対比・判断
本願発明は,前記()で検討した本願補正発明からその限定事項である1
()「パーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対して」a
()「前記サーバー側に記憶された案件情報と求人情報に基づいて,案件情報と求人情報とを表示b
して,外部に仕事を委託する企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対して,
案件情報と求人情報の入力を促す段階と,」
()「前記サーバ側で上記外部に仕事を委託する」「パーソナルコンピュータ等の」「(クライアc
ント)」「対して」
()「サーバー側で,」「入力された案件情報と求人情報から作成されたデータベースを」d
()「サーバー側で,」「パーソナルコンピュータ等の」「(クライアント)」「案件情報と求人」e
()「前記サーバー側で,外注企業や求職者等等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアンf
ト)にて」
()「前記サーバー側で」「や求職者等のパーソナルコンピュータ等」「(クライアント)」g
を省いたものである。
そうすると,本願発明を特定する事項をすべて含み,さらに他の特定する事項を付加したものに相
当する本願補正発明が,前記()エに記載したとおり,引用例1に記載された発明及び周知技術とに1
基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,
引用例1に記載された発明及び周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので
ある。
ウむすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発
明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないもの
であるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は特許を受けることができない。
第3当事者の主張の要点
1原告主張の審決取消事由
(1)取消事由1(本願補正発明と引用例1に記載された発明との対比の誤り)
審決は,「引用例1に記載された発明の「仕事情報」は,本願補正発明の「案件
情報」に相当し,引用例1に記載された発明の「WWWサーバを用いたブローカー
300」は,本願補正発明の「サーバー」に相当し,引用例1に記載された発明の
「発注元」及び「発注元クライアント100」は,それぞれ,本願補正発明の「外
部に仕事を委託する企業等」及び「外部に仕事を委託する企業等のパーソナルコン
ピュータ等の端末(クライアント)」に相当し,引用例1に記載された発明の「請
負先」及び「請負先クライアント200」は,それぞれ,本願補正発明の「外注企
業等」及び「外注企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)」に
相当し,引用例1に記載された発明の「インターネット等のネットワーク500」
は,本願補正発明の「インターネット」に相当することは,明らかである。」と認
定判断したが,誤りである。
ア引用例1に記載された発明は,クローズドシステムであるため,既登録の発
注元クライアントからの発注要求のみを受信するとともに,発注要求に応じて情報
の送信先をブローカー300が選択して一定範囲の既登録の仕事の請負先となり得
る請負先候補である請負先クライアントに対してのみ,その都度発注通知手段(メ
ール通信等)によってそれぞれに仕事の発注があった旨を通知し,発注通知手段の
通知に対応した受注申込みを受信した場合に,数値化した評価値によりブローカー
300の請負先選定部により選定する。これに対し,本願補正発明は,オープンシ
ステムであるため,会員の案件情報と求人情報のみに限られることなく,非会員の
案件情報と求人情報をも受信し,既登録の情報にのみ限られることなく,最新の情
報によってホームページを作成して,端末(クライアント)に対して案件情報と求
人情報とを表示して通知することにより,所望する対象の案件情報と求人情報の選
択を会員に限られることなく,希望者全員に促す段階と,募集企業の端末(クライ
アント)で選択した最新の情報を出力して審査し,既登録の数値化した評価値に限
られることなく,熱意や活気等の数値化できない最新の情報その他のものについて
も評価して,広範囲のものにつき適切に審査して最適なものを決定し,通知手段
(メール通信等)によってそれぞれ通知する。
このように,引用例1に記載された発明と本願補正発明とは,情報の発信者の範
囲,情報の受信者の範囲,情報の受信方法,情報の選択者の範囲及び選択者の審査
方法において差異がある。
イまた,上記アのとおり,引用例1に記載された発明は,発注通知手段の通知
に対応した受注申込みを受信した場合に,数値化した評価値によりブローカー30
0の請負先選定部により選定するものであって,ブローカー300は,数値化した
評価値により一定範囲のものについてのみ,その都度発注通知手段によりメール通
信によってそれぞれ通知するのであるから,引用例1に記載された発明の「WWW
サーバを用いたブローカー300」が本願補正発明の「サーバー」に相当するとし
た審決の認定は,「発注要求に応じて情報の送信先をブローカー300が選択して
送信する」という点で誤りである。
ウしたがって,本願補正発明と引用例1に記載された発明との対比における審
決の上記認定判断は,誤りである。
(2)取消事由2(相違点1についての判断の誤り)
審決は,本願補正発明と引用例1に記載された発明との相違点1について,「本
願補正発明の如く,クライアントに案件情報と求人情報とを同時に提供すること
は,当業者が適宜なし得ることである。」と判断したが,誤りである。
ア引用例1には,仕事や求人があった場合に通知するサービスは開示されてい
るが,開示された情報に対する対処方法については開示されていないから,求人情
報を閲覧した求職者が所望の求人情報を選択して応募するシステムが,本件出願前
に既に実現されていたということはできない。
イまた,引用例1には,本願補正発明のような,相互に密接に関係する複数の
情報(案件情報と求人情報)をリンク(連結)させて同時に提供できるようにする
ことにより,企業と外注企業と求職者の三者の要求を同時に満たすとともに,業務
を迅速かつ効率的に遂行し,従来の業務遂行の煩雑さを解消するという技術につい
て開示も示唆もないから,審決が説示するように,「仕事以外の異種の複数の情報
を提供することも可能であることは当業者の技術常識程度のことである」というこ
とはできない。
ウしたがって,「クライアントに案件情報と求人情報とを同時に提供すること
は,当業者が適宜なし得ることである。」とした審決の判断は,誤りである。
(3)取消事由3(相違点2についての判断の誤り)
審決は,本願補正発明と引用例1に記載された発明との相違点2について,「引
用例1に記載された発明に,前記周知技術事項を適用して本願補正発明の如く構成
することは,当業者が適宜なし得ることである。」と判断したが,誤りである。
ア上記第2の3(1)ウ(ウ)掲記の各公報は,いずれも,単なるホームページの作
成方法に関するものであって,本願補正発明の構成やこれを示唆する記載はなく,
上記各公報から,直ちに本願補正発明を想到することはできないから,本願補正発
明が自明であるということはできない。
また,上記第2の3(1)ウ(エ)掲記の各公報は,いずれも,単なるインターネット
による電子商取引に関するものであって,本願補正発明の構成やこれを示唆する記
載はなく,上記各公報から,直ちに本願補正発明を想到することはできないから,
本願補正発明が自明であるということはできない。
さらに,上記第2の3(1)ウ(オ)掲記の各公報は,いずれも,単なるインターネッ
トによる情報提供又は情報収集方法であり,本願補正発明の構成やこれを示唆する
記載はなく,上記各公報から,直ちに本願補正発明を想到することはできないか
ら,本願補正発明が自明であるということはできない。
イしかも,引用例1には,本願補正発明のような,相互に密接に関係する複数
の情報(案件情報と求人情報)をリンク(連結)させて同時に提供できるようにす
ることにより,企業と外注企業と求職者の三者の要求を同時に満たすとともに,業
務を迅速かつ効率的に遂行し,従来の業務遂行の煩雑さを解消するという技術につ
いて開示も示唆もないから,引用例1に記載された発明に,上記各公報に記載され
た事項を適用して本願補正発明のように構成することは,当業者が適宜なし得るも
のではない。
ウしたがって,「引用例1に記載された発明に,前記周知技術事項を適用して
本願補正発明の如く構成することは,当業者が適宜なし得ることである。」とした
審決の判断は,誤りである。
2被告の反論
(1)取消事由1(本願補正発明と引用例1に記載された発明との対比の誤り)
に対して
ア本願補正発明に係る特許請求の範囲の請求項1には,①オープンシステムで
あるため,会員の案件情報と求人情報のみに限られることなく,非会員の案件情報
と求人情報をも受信するという構成,②既登録の情報にのみ限られることなく,最
新の情報によってホームページを作成するという構成,③所望する対象の案件情報
と求人情報の選択を会員に限られることなく希望者全員に促すという構成,④募集
企業の端末(クライアント)で選択した最新の情報を出力して審査し,既登録の数
値化した評価値に限られることなく,熱意や活気等の数値化できない最新の情報そ
の他のものについても評価して,広範囲のものにつき適切に審査して最適なものを
決定し,通知手段(メール通信等)によってそれぞれ通知するという構成は,いず
れも記載されていないから,原告の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないもの
である。
イそして,引用例1には,仕事の発注元となる,例えば,それぞれの企業に備
えられている発注元クライアント100は,インターネット等のネットワーク50
0に接続され,発注元が発注したい仕事をブローカー300に登録するものである
と記載されているから,引用例1に記載された発明の「発注元」及び「発注元クラ
イアント100」は,それぞれ,本願補正発明の「外部に仕事を委託する企業等」
及び「外部に仕事を委託する企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライア
ント)」に相当する。
引用例1には,仕事の請負先となるそれぞれの業者に備えられている請負先クラ
イアント200は,インターネット等のネットワーク500に接続されており,ブ
ローカーサイトにアクセスして,発注された仕事の内容を取得して画面を通じて参
照し,請負の申込みを行うか否かを決定するものと記載されているから,引用例1
に記載された発明の「請負先」及び「請負先クライアント200」は,それぞれ,
本願補正発明の「外注企業等」及び「外注企業等のパーソナルコンピュータ等の端
末(クライアント)」に相当する。
引用例1に記載された発明の「仕事情報」は,ブローカーに登録した発注する仕
事の内容に関する情報であるから,本願補正発明の「案件情報」に相当する。
引用例1には,ブローカー300は,インターネット等のネットワーク500に
接続されており,WWWサーバーを用いて,ブローカーの300の機能が実現され,
ブローカーサイトにアクセスした発注元クライアントは発注ページを取得し,必要
な情報を入力することにより,発注する仕事の内容に関する情報である仕事情報を
作成し,ブローカーに転送し,仕事情報データベースに格納し,請負先クライアン
トは,ブローカーサイトにアクセスして,該仕事情報を参照できるものと記載され
ているから,引用例1に記載された発明の「WWWサーバを用いたブローカー30
0」は,サーバー側からインターネットを介してパーソナルコンピュータ等の端末
(クライアント)に対して情報を提供する,本願補正発明の「サーバー」に相当す
る。
引用例1に記載された発明の「インターネット等のネットワーク500」は,本
願補正発明の「インターネット」に相当する。
ウしたがって,本願補正発明と引用例1に記載された発明との対比における審
決の認定判断に誤りはない。
(2)取消事由2(相違点1についての判断の誤り)に対して
ア引用例1の段落【0003】の記載によれば,サーバに登録された情報を用
いて,インターネットを介してホームページを開設している構成があることが明ら
かであり,また,段落【0005】の記載によれば,引用例1の人材募集サイトは
検索可能なサイトであるので,人材を募集する仕事に関する情報である求人情報が
閲覧可能であり,求職者がサーバに登録されている複数の求人情報を検索すること
により,自己が応募することが可能な仕事を見つけることができるのは明らかであ
る。さらに,自己が応募することが可能な仕事を見つけたならば,募集を行ってい
る企業に何らかの手段により応募することは明らかであって,引用例1の段落【0
005】には,「実際に仕事を請け負うか否かの交渉については電子メールその他
の通信手段を用いて改めて行う」と電子メールを用いたシステムが記載されている
から,所望の求人情報を選択して応募するシステムが実現されていたということが
できる。
イ引用例1に記載された発明は,クライアントに,対象の案件情報を請け負う
か否かの選択を促す際に,案件情報を提供しているが,提供する情報を,仕事に関
する複数の情報とすることは,ビジネスの分野において,普通に考え得ることであ
って,例えば,引用例1の段落【0013】には,「ここで,前記発注された仕事
の条件に関する情報には,仕事量と,締切日と,報酬に関する情報とを含み,」
と,仕事に関する複数の情報を提供する構成が開示されている。そして,伝えたい
複数の異なる情報を同時に提供することも,一般にごく普通に行われていることで
あって,技術的に何ら困難を伴うものではない。
引用例1の段落【0008】には,複数の発注元と複数の請負先がネットワーク
でつながり,仕事情報である案件情報を提供する構成が示されているが,この構成
は,当然に,従来例として記載されている求人情報に適用可能であることは明らか
であり,このように閲覧可能に複数の求人情報を提供する構成が引用例1の従来例
に示されているから,案件情報や求人情報を提供する構成は,引用例1に示唆され
ているのである。企業が仕事を依頼するに当たり,依頼する仕事の対象が企業なら
外注する仕事である案件情報となり,対象が個人なら求人情報となるのであって,
案件情報と求人情報は,発注元である企業が仕事の内容に応じて適宜選べるものに
すぎない。
ウしたがって,引用例1に記載された発明の案件情報と引用例1の従来例に記
載の求人情報とを同時に提供する構成とすることは,当業者が適宜なし得ることで
あるから,「本願補正発明の如く,クライアントに案件情報と求人情報とを同時に
提供することは,当業者が適宜なし得ることである。」とした審決の判断に誤りは
ない。
(3)取消事由3(相違点2についての判断の誤り)に対して
ア上記第2の3(1)ウ(ウ)ないし(オ)掲記の各公報は,それぞれの技術思想が周
知な技術思想であることを示すために引用したものであって,本願補正発明の用途
等を特定するために掲げたものではない。
イ上記(2)イのとおり,引用例1に記載された発明の提供する案件情報を,関
連する異種の情報を含めた複数の情報として,案件情報と求人情報とすることに格
別の困難はない。
ウそして,上記(2)アのとおり,引用例1には,サーバに登録された情報,す
なわち,データベースからホームページを開設して閲覧可能にする技術や求職者が
サーバに登録されている複数の求人情報を検索することにより,自己が応募するこ
とが可能な仕事を見つけることができる技術が開示されている。ここで,サーバに
登録されている複数の求人情報を検索するとは,端末(クライアント)がサーバ内
の情報を閲覧し,端末(クライアント)が所望の情報を選択し,サーバ側では,端
末(クライアント)が選択した情報を読み出し,その読み出した情報を端末(クラ
イアント)に出力するという構成であることは,当業者に自明である。
そうであれば,引用例1に記載された発明に,前記周知技術事項を適用して相違
点2に係る構成を本願補正発明のようにすることは,当業者が適宜なし得ることで
あるということができるから,審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断
1取消事由1(本願補正発明と引用例1に記載された発明との対比の誤り)に
ついて
(1)原告は,引用例1に記載された発明はクローズドシステムであり,本願補
正発明はオープンシステムであって,引用例1に記載された発明と本願補正発明と
では,情報の発信者の範囲,情報の受信者の範囲,情報の受信方法,情報の選択者
の範囲及び選択者の審査方法において差異があると主張する。
ア引用例1(甲8)には,「【従来の技術】近年,いわゆるSOHO(Small
OfficeHomeOffice)と呼ばれる仕事の形態が一般化しつつある。そのような形態
において,予め特定しない請負先に仕事を発注するためには,まず,当該仕事の請
負が可能な請負先を見つける作業が必要である。そのような目的を,インターネッ
ト等の外部に開かれたネットワーク環境の下で達成する技術として,例えば,企業
が人材を募集しようとする場合に,人材を募集する仕事に関する情報をサーバに登
録し,求職者が自己の能力等を示す履歴書情報を登録することにより求人活動を行
うインターネット上のサイトが実用化されている。この方法では,企業は募集する
仕事に適した人材の候補を,また,求職者は自己が応募することが可能な仕事をそ
れぞれ見つけることができる。このようなシステムでは,企業が予め登録しておい
た仕事に適した人材が登録された場合や,求職者が予め登録しておいた希望に添う
仕事が登録された場合に,電子メール等を用いた通知や,ホームページ上での通知
を行うサービスも実現している。」(段落【0002】,【0003】)との記載
がある。
上記記載によれば,上記の人材募集サイトは,インターネット等の外部に開かれ
たネットワーク環境の下で,登録できる者を会員に限定しないものであるから,引
用例1には,人材募集サイトがオープンシステムであることも記載されているとい
うことができる。
イまた,本願補正発明がオープンシステムであるとしても,引用例1に記載さ
れた発明と本願補正発明とに差異があるとの原告の主張は,以下のとおり,特許請
求の範囲の記載に基づくものではない。
(ア)情報の発信者の範囲について
本願補正発明に係る特許請求の範囲の請求項1は,「前記サーバー側に記憶され
た案件情報と求人情報に基づいて,案件情報と求人情報とを表示して,外部に仕事
を委託する企業等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対して,
案件情報と求人情報の入力を促す」というのであって,会員の案件情報と求人情報
のみに限られることなく,非会員の案件情報と求人情報をも受信することは規定し
ていない。
(イ)情報の受信者の範囲について
本願補正発明の請求項1は,「外注企業等や求職者等のパーソナルコンピュータ
等の端末(クライアント)に対して,案件情報と求人情報を表示して,所望する対
象の案件情報と求人情報の選択を促す」であって,所望する対象の案件情報と求人
情報の選択を会員に限られることなく,希望者全員に促すことは規定していない。
(ウ)情報の受信方法について
本願補正発明の請求項1は,「該作成したデータベースからホームページを作成
して入力された案件情報と求人情報から作成されたデータベースを記憶する段階」,
「外注企業等や求職者等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対
して,案件情報と求人情報を表示して,所望する対象の案件情報と求人情報の選択
を促す段階」であって,既登録の情報にのみ限られることなく,最新の情報によっ
てホームページを作成することは規定していない。
(エ)情報の選択者の範囲
上記(イ)のとおり,本願補正発明の請求項1は,「外注企業等や求職者等のパー
ソナルコンピュータ等の端末(クライアント)に対して,案件情報と求人情報を表
示して,所望する対象の案件情報と求人情報の選択を促す」であって,所望する対
象の案件情報と求人情報の選択を会員に限られることなく,希望者全員に促すこと
は規定していない。
(オ)選択者の審査方法
本願補正発明の請求項1は,「前記サーバー側で,外注企業や求職者等等のパー
ソナルコンピュータ等の端末(クライアント)にて選択した情報を読み出す段階
と,前記サーバー側で読み出された情報を外注企業等や求職者等のパーソナルコン
ピュータ等の端末(クライアント)にて出力する段階」であって,募集企業の端末
(クライアント)にて,選択した最新の情報を出力して審査し,既登録の数値化し
た評価値に限られることなく,熱意や活気等の数値化できない最新の情報その他の
ものについても評価して,広範囲のものにつき適切に審査して最適なものを決定す
るということは規定していない。
ウそうすると,引用例1に記載された発明と本願補正発明とが,情報の発信者
の範囲,情報の受信者の範囲,情報の受信方法,情報の選択者の範囲及び選択者の
審査方法において差異があるということはできないのであって,原告の上記主張
は,採用の限りでない。
(2)原告は,ブローカー300は,数値化した評価値により一定範囲のものに
ついてのみ,その都度発注通知手段によりメール通信によってそれぞれ通知するの
であるから,引用例1に記載された発明の「WWWサーバを用いたブローカー30
0」が本願補正発明の「サーバー」に相当するとした審決の認定は,「発注要求に
応じて情報の送信先をブローカー300が選択して送信する」という点で誤りであ
ると主張する。
しかしながら,審決の説示によれば,審決は,引用例1に記載された発明の「W
WWサーバを用いたブローカー300」が本願補正発明の「サーバー」に相当する
とした上,相違点2の中において,本願補正発明の「サーバー側は,・・・その後
該データベースからホームページを作成し外注企業等のパーソナルコンピュータ等
の端末(クライアント)に対して案件情報を閲覧させ,」との点と引用例1に記載
された発明の「その後ブローカー300は,適切な請負先クライアント200を選
択し依頼された仕事の発注を行い,」との点を相違点としているのである。
原告の上記主張は,審決の説示を正解しないものであるといわなければならない
から,採用することができない。
(3)したがって,原告主張の取消事由1は,理由がない。
2取消事由2(相違点1についての判断の誤り)について
(1)原告は,引用例1には,仕事や求人があった場合に通知するサービスは開
示されているが,開示された情報に対する対処方法については開示されていないか
ら,求人情報を閲覧した求職者が所望の求人情報を選択して応募するシステムが,
本件出願前に既に実現されていたということはできないと主張する。
しかしながら,上記1(1)アのとおり,引用例1に記載された従来の人材募集サ
イトはオープンシステムであって,求職者が希望する仕事を検索することができる
のであるから,引用例1には,情報の受信者の範囲について,会員のみに限ること
なく希望者全員とすることが示唆されているということができる。そして,情報の
選択者とは情報の受信者であるから,引用例1には,情報の選択者の範囲について
も,会員のみに限ることなく希望者全員とすることも示唆されているいうことがで
きる。そうすると,求人情報を閲覧した求職者が所望の求人情報を選択して応募す
るシステムは,引用例1の従来の人材募集サイトとして,本件出願前既に実現され
ていたと認められる。
原告の上記主張は,採用することができない。
(2)原告は,引用例1には,本願補正発明のような,相互に密接に関係する複
数の情報(案件情報と求人情報)をリンク(連結)させて同時に提供できるように
することにより,企業と外注企業と求職者の三者の要求を同時に満たすとともに,
業務を迅速かつ効率的に遂行し,従来の業務遂行の煩雑さを解消するという技術に
ついて開示も示唆もないから,「仕事以外の異種の複数の情報を提供することも可
能であることは当業者の技術常識程度のことである」ということはできないと主張
する。
ア本願明細書(甲1,3,4)には,案件情報と求人情報について,次の記載
のみがある。
「【請求項1】サーバー側からインターネットを介してパーソナルコンピュータ
等の端末(クライアント)に対して情報を提供する情報提供方法であって,案件情
報と求人情報とを同時に提供できるようにしたものであり,次の段階からなる。
(1)前記サーバー側に記憶された案件情報と求人情報に基づいて,案件情報と求
人情報とを表示して,外部に仕事を委託する企業等のパーソナルコンピュータ等の
端末(クライアント)に対して,案件情報と求人情報の入力を促す段階と,(2)
前記サーバー側で,上記外部に仕事を委託する企業等がパーソナルコンピュータ等
の端末(クライアント)に対して入力した案件情報と求人情報からデータベースを
作成する段階と,(3)サーバー側で,該作成したデータベースからホームページ
を作成して入力された案件情報と求人情報から作成されたデータベースを記憶する
段階と,を備える一方,(4)サーバー側で,外注企業等や求職者等のパーソナル
コンピュータ等の端末(クライアント)に対して,案件情報と求人情報を表示し
て,所望する対象の案件情報と求人情報の選択を促す段階と,(5)前記サーバー
側で,外注企業や求職者等等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)
にて選択した情報を読み出す段階と,(6)前記サーバー側で読み出された情報を
外注企業等や求職者等のパーソナルコンピュータ等の端末(クライアント)にて出
力する段階と,を備えた,ことを特徴とする複数情報提供方法。」(【特許請求の
範囲】)
「【従来の技術】従来より,社員やアルバイト等を募集する求人情報は,公共職
業安定所(ハローワーク)や求人情報誌や新聞の募集広告又はインターネット上の
求人情報等により,求職者等に提供されている。また,ソフト業界や建設業界等の
仕事が繁忙又は専門的である場合,仕事をアウトソーシングすることがあり,イン
ターネット上の案件情報等により,外注企業等へ提供されている。しかしながら,
求職者や企業等は,相互に関連のある案件情報と求人情報が別々に提供されるより
も,同時に提供されるほうが便利な場合があるが,現在このようなものは存在しな
い為に,情報収集が煩雑であるという問題点があった。」(段落【0002】ない
し【0004】)
「【発明が解決しようとする課題】このような従来技術の問題点に鑑み,本発明
の主な目的は,情報機器の機能を生かして,相互に関連のある案件情報と求人情報
とを同時に提供することで,求職者や企業等の利便性を高め,求人と案件とを可及
的速やかに解決できるようにした複数情報提供方法を提供することにある。」(段
落【0005】)
「【課題を解決するための手段】このような目的は,本発明によれば,インター
ネットにより情報を提供する方法であって,求人情報と案件情報とを同時に提供で
きるようにした,ことを特徴とする複数情報提供方法,を提供することにより達成
される。」(段落【0006】)
「【作用】本発明にあっては,インターネットにより求人情報と案件情報とを同
時に提供できるようにしたので,印刷物のように検索に時間をかけることなく,パ
ーソナルコンピュータ等の情報機器の機能を生かして情報を迅速に提供できると共
に,企業や求職者等は相互に関連のある案件情報と求人情報の両者を同時に得るこ
とができるので縦横自在に吟味することができて便利であると共に,時間や場所を
選ぶことなく,しかもパーソナルコンピュータ等の情報機器に不慣れなものでも簡
単かつ容易に扱うことができるので,誰でも迅速に多様な情報を得ることができ
る。」(段落【0007】)
「【発明の実施の形態】次に,本発明の実施の形態の一実施例について詳述す
る。すなわち,本発明は,インターネットにより求人情報と案件情報とを同時に提
供できるようにしたものであり,印刷物のように検索に時間をかけることなく,情
報機器の機能を生かして案件情報と求人情報の両者の情報を迅速に提供でき,外注
企業と求職者等の利便性を高めることができる。そして,該複数情報提供方法1
は,インターネットにより情報を提供する方法であって,案件情報2と求人情報3
とを同時に提供できるようにしたものである。該案件情報2は,企業等が外部に委
託する仕事を外部(外注企業等)に向かって募集する情報であり,多数の案件記録
が記録された案件情報から任意の記録を選択抽出して表示手段に出力処理して見る
ことができる。また,上記求人情報3は,企業又は外注企業等が採用すべき人を外
部(求職者等)に向かって募集する情報であり,多数の求人記録が記録された求人
情報から任意の記録を選択抽出して表示手段に出力処理して見ることができる。こ
れら案件情報2と求人情報3とは,インターネットにより提供される情報であり,
ホームページによって特定のサーバーによって提供できるようにしたものである。
これら上記案件情報2と求人情報3とは,多数の情報を画面に出力表示させて,そ
の中から,希望の情報を選択抽出して,表示手段に出力処理して見ることができる
ようになっている。」(段落【0011】ないし【0017】)
「(1)「複数情報の検出」
まず,本発明方法の情報検出の動作を図1に示すフローチャートに基づいて説明
する。まず,パーソナルコンピュータ等の情報機器の電源をONする。次に,イン
ターネットに接続して,検索サービスサイト(ヤフー(登録商標)その他)によっ
て,検索画面を出力し,複数情報(案件情報求人情報)を表示手段に表示する(図
7)。次に,情報検索画面を表示させて,複数情報の内,案件情報2又は求人情報
3の一方を選択する(図8)。これら案件情報2と求人情報3とは,ホームページ
によって特定のサーバーによって提供できるようにしたものである。該案件情報2
は,企業等が外部に委託する仕事を外部(外注企業等)に向かって募集する情報で
ある。該多数の案件記録が記録された案件情報2から任意の記録を選択抽出して
表示手段に出力処理して見ることができる。また,上記求人情報3は,企業又は外
注企業等が採用すべき人を外部(求職者等)に向かって募集する情報である。該
多数の求人記録が記録された求人情報3から任意の記録を選択抽出して表示手段に
出力処理して見ることができる。この際,案件情報2を選択した場合には,さら
に,会員(会員用案件情報)又は非会員(非会員用案件情報)の何れかを選択す
る。」(段落【0019】ないし【0026】)
「(2)「会員用案件情報の検出」
次に,本発明方法の内,会員用案件情報の検出の動作を図2に示すフローチャー
トに基づいて説明する。この際,まず,案件情報2を表示手段に表示すると,多数
の案件(仕事を委託する外注企業等の募集)記録が記録された案件情報が表示され
るので,スクロールしながら,希望に合致した単数又は複数の案件情報を選択抽出
する(図9)。次に,該選択抽出した案件情報をクリックして,その詳細画面を表
示させる。」(段落【0026】ないし【0028】)
「(3)「非会員用案件情報の検出」
次に,本発明方法の内,非会員用案件情報の検出の動作を図3に示すフローチャ
ートに基づいて説明する。この際,まず,案件情報2を表示手段に表示すると,多
数の案件(仕事を委託する外注企業等の募集)記録が記録された案件情報が表示さ
れるので,スクロールしながら,希望に合致した単数又は複数の案件情報を選択抽
出する。次に,該選択抽出した案件情報の中に,応募して良いと思った案件がある
場合には,該案件に応募する。」(段落【0032】ないし【0034】)
「(4)「求人情報の検出」
次に,本発明方法の内,求人情報の検出の動作を図4に示すフローチャートに基
づいて説明する。この際,まず,求人情報3を表示手段に表示すると,多数の求人
(企業又は外注企業等が採用すべき人を求職者等に対して募集するものである)記
録が記録された求人情報が表示されるので,スクロールしながら,希望に合致した
単数又は複数の求人情報を選択抽出する(図10)。次に,該選択抽出した求人情
報の中に,応募して良いと思った求人がある場合には,該求人に応募する。」(段
落【0038】ないし【0040】)
「(5)「ホームページの作成」
本発明方法の複数情報提供方法のホームページは,通常のホームページ作成方法
により作成して,インターネットと接続する。例えば,図5に示すフローチャート
と,図6に示す構成図に示すようにして,本発明方法の複数情報提供方法のホーム
ページを作成して,インターネット4と接続する。この際,まず,案件情報2と求
人情報3のデータベースを作成すると共に,サーバー5を設置して,HTMLによ
ってホームページを作成する。・・・このようにして,本発明方法の複数情報提供
方法のホームページを作成して,インターネット4と接続することができる。従っ
て,ィンターネット4を介して,企業等や求職者等の利用者(クライアント)9と
ホームページ(案件情報2と求人情報3の複数情報)とが,接続される。」(段落
【0045】ないし【0051】)
「【発明の効果】このように,本発明によれば,インターネットにより求人情報
と案件情報とを同時に提供できるようにしたので,求職者や企業等の利便性を高
め,求人と案件とを可及的速やかに解決できる効果がある。すなわち,(1)イン
ターネットにより求人情報と案件情報とを同時に提供できるようにしたので,印刷
物のように検索に時間をかけることなく,パーソナルコンピュータ等の情報機器の
機能を生かして多様な情報を迅速に提供できる効果がある。(2)企業等は,相互
に関連のある案件情報と求人情報の両者を同時に得ることができるので縦横自在に
吟味することができて便利であるという効果がある。・・・
一方,本発明によれば,求人情報と案件情報とを同時に利用することが出来るの
で,企業等や求職者の企業活動や求職活動等の利便性を高め,業務遂行を効率良く
行うことができる効果がある。すなわち,(1)元請け企業等は,仕事を遂行する
ためには,人の採用と下請け企業の募集とが必要であり,従来それらを個々に捜す
必要があったが,本発明によれば,求人情報と案件情報とを同時に利用することに
よって効率的に求人と下請け募集とを成すことができる。(2)下請け企業等は,
仕事を捜すには,従来元請け企業に対して営業活動が必要であり,また仕事を請け
たときには仕事を遂行するために求人活動が必要であったが,本発明によれば,求
人情報と案件情報とを同時に利用することにより,営業活動や求人活動を要するこ
となく,効率的に営業と求人とを遂行することができる。(3)求職者は,仕事を
捜すには,従来企業や職安等に対して求職活動が必要であったが,本発明によれ
ば,求人情報と案件情報とを同時に利用することにより,希望する仕事や自己のス
キルに合った仕事の具体的内容を確認した上で,適合した仕事に効率的につくこと
ができる。(4)下請け企業等は,従業員を増やして企業の規模を拡大したい場
合,従来仕事を捜してからでないと求人に踏み切れないという問題点があったが,
本発明によれば,求人情報と案件情報とを同時に利用することにより,効率的に仕
事を捜すことと人を採用することを同時平行的に遂行することができる。(5)元
請け企業等や下請け企業等や求職者は,下請け企業の募集や仕事を捜すときや人を
採用するとき或いは職を捜すときには,従来それらを個々に活動する必要があり,
手間が掛かるという問題点があり,さらにインターネットを利用して情報を得る場
合にも,必要とする情報に辿り着くには検索が煩雑で手間が掛かるという問題点が
あったが,本発明によれば,求人情報と案件情報とを同時に利用することによっ
て,それらのことを同時平行的に行うことができ,効率的かつ簡易に目的を達成す
ることができる。(6)元請け企業等や下請け企業等は,近年仕事の繁閑に応じて
派遣社員や契約社員やアルバイトを採用することで賃金負担の抑制と雇用調整する
ことが行われており,また近年求職者は,仕事につく場合,適性に合致した仕事を
希望し,短期的に仕事につく場合があり,企業等と求職者のマッチングが必要とな
るが,従来両者の希望を適える手段に欠けていたが,本発明によれば,求人情報と
案件情報とを同時に利用することにより,企業等は仕事量に応じてその仕事に適し
た人を採用すると共に,求職者は希望する仕事や自己のスキルに合った仕事の具体
的内容を確認した上で,適合した仕事に効率的につくことができるので,求職者の
適性に合った仕事と企業等の能率的雇用とを同時に実現することができ,効率的に
業務遂行をすることができる。」(段落【0053】ないし段落【0056】)
「【図2】本発明方法の内,会員用案件情報の検出方法の実施の形態の一実施例
を示すフローチャートである。【図3】本発明方法の内,非会員用案件情報の検出
方法の実施の形態の一実施例を示すフローチャートである。【図4】本発明方法の
内,求人情報の検出方法の実施の形態の一実施例を示すフローチャートである。
【図9】本発明方法の内,案件情報の実施の形態の一実施例を示す表示画面であ
る。【図10】本発明方法の内,求人情報の実施の形態の一実施例を示す表示画面
である。」(【図面の簡単な説明】)
【図1】には,複数情報の検出動作の実施の形態の一実施例を示すフローチャー
トとして,「複数情報」から「案件情報2」と「求人情報3」に分岐することが図
示され,【図8】には,複数情報の検索の実施の形態の一実施例を示す表示画面
に,「案件情報」と「求人情報」が「種別」の選択項目として図示されている。
イこれらの記載によれば,本願明細書には,案件情報と求人情報についての具
体的な実施例として,複数情報の検索画面を表示し,表示された複数情報のうちか
ら案件情報2又は求人情報3の一方を選択し,選択された案件情報又は求人情報の
一方だけの検出を行うことが開示されているだけであり,また,作成された案件情
報2と求人情報3のデータベースの具体的な構成は開示されていない。
そうすると,本願補正発明は,それぞれ独立した案件情報の検索システムと求人
情報の検索システムを単に寄せ集めてホームページを作成することにより複数情報
の検索を実現するという態様をも含むものである。
ウそして,引用例1に記載された発明は,クライアントに対して仕事情報,す
なわち案件情報を提供しているから,引用例1に記載された発明が案件情報の検索
システムを具備していることは明らかである。
エ上記(1)のとおり,求人情報を閲覧した求職者が所望の求人情報を選択して
応募するシステムは,引用例1の従来の人材募集サイトとして,本件出願前既に実
現されていたと認められるから,引用例1に記載された発明の案件情報の検索シス
テムと求人情報を閲覧した求職者が所望の求人情報を選択して応募するシステムを
単に寄せ集めてホームページを作成する程度のことは,当業者が容易に想到し得た
ものである。そして,上記イのとおり,本願補正発明は,それぞれ独立した案件情
報の検索システムと求人情報の検索システムを単に寄せ集めてホームページを作成
することにより複数情報の検索を実現するという態様をも含むのであるから,クラ
イアントに案件情報と求人情報とを同時に提供することは,当業者が適宜なし得る
ものであるといわなければならない。
原告の上記主張は,採用することができない。
(3)したがって,原告主張の取消事由2は,理由がない。
3取消事由3(相違点2についての判断の誤り)について
(1)原告は,①上記第2の3(1)ウ(ウ)掲記の各公報は,いずれも,単なるホ
ームページの作成方法に関するものであって,本願補正発明の構成やこれを示唆す
る記載はなく,上記各公報から,直ちに本願補正発明を想到することはできない,
②上記第2の3(1)ウ(エ)掲記の各公報は,いずれも,単なるインターネットによ
る電子商取引に関するものであって,本願補正発明の構成やこれを示唆する記載は
なく,上記各公報から,直ちに本願補正発明を想到することはできない,③上記
第2の3(1)ウ(オ)掲記の各公報は,いずれも,単なるインターネットによる情報提
供又は情報収集方法であり,本願補正発明の構成やこれを示唆する記載はなく,上
記各公報から,直ちに本願補正発明を想到することはできないと主張する。
しかしながら,審決の説示によれば,審決は,上記第2の3(1)ウ(ウ)掲記の各公
報については,データベースからホームページを作成し,不特定のユーザに対して
インターネット等を介して所定の情報を閲覧可能とすること,上記第2の3(1)ウ
(エ)掲記の各公報については,インターネットによる電子商取引をすること,上記
第2の3(1)ウ(オ)掲記の各公報については,一般に,インターネットを通じて,情
報を提供し又は応募情報を収集することが,それぞれ当業者には周知であることを
示すために引用したものであって,本願補正発明の構成やこれを示唆し,これらの
各公報から直ちに本願補正発明を想到することについてまでも示すために引用した
ものではない。
原告の上記主張は,審決の説示を正解しないものであるといわなければならない
から,採用することができない。
(2)原告は,引用例1には,本願補正発明のような,相互に密接に関係する複
数の情報(案件情報と求人情報)をリンク(連結)させて同時に提供できるように
することにより,企業と外注企業と求職者の三者の要求を同時に満たすとともに,
業務を迅速かつ効率的に遂行し,従来の業務遂行の煩雑さを解消するという技術に
ついて開示も示唆もないから,「仕事以外の異種の複数の情報を提供することも可
能であることは当業者の技術常識程度のことである」ということはできないと主張
するが,原告の上記主張を採用することができないことは,上記2(2)のとおりで
ある。
(3)したがって,原告主張の取消事由3は,理由がない。
第5結論
以上のとおりであって,原告主張の審決取消事由はすべて理由がないから,原告
の請求は棄却されるべきである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
塚原朋一
裁判官
高野輝久
裁判官
佐藤達文

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