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平成23年3月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成22年(行ケ)第10170号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成23年2月17日
判決
原告アベンテイスフアルマ
ソシエテアノニム
同訴訟代理人弁理士深浦秀夫
小嶋勝
被告特許庁長官
同指定代理人平田和男
加々美一恵
北村明弘
豊田純一
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのた
めの付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2007−20372号事件について平成22年1月4日にした審
決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の本件出願に対する拒
絶査定不服審判の請求について,特許庁が,特許請求の範囲の記載を下記2の(1)
から(2)へと補正する本件補正を却下した上,同請求は成り立たないとした別紙審
決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消
事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯
(1)出願手続(甲5∼8)及び拒絶査定(甲9)
発明の名称:組換えウイルス,製造方法および遺伝子治療での使用
出願番号:特願平8−500419号
出願日:平成7年5月22日(甲6)
優先権主張日:平成6年(1994年)6月2日(フランス)
拒絶査定:平成19年4月17日付け(甲9)
(2)審判手続及び本件審決
審判請求日:平成19年7月23日(不服2007−20372号)
手続補正日:平成19年8月20日(甲4。以下,同日付け手続補正書による補
正を「本件補正」といい,同補正に係る明細書(甲4,6。なお,同補正の前後を
通じて,明細書中の発明の詳細な説明の記載に変更はない。)を「本願明細書」と
いう。)
審決日:平成22年1月4日
審決の結論:本件審判の請求は,成り立たない。
審決謄本送達日:平成22年1月25日
2本願発明の要旨
本件補正前及び本件補正後の各特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとお
りである。以下,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本
願発明」,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本件補正
発明」という。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(甲5)
リポタンパク質リパーゼ(LPL)またはその誘導体をコードする核酸配列を含
んでなる欠陥組換えウイルスであって,該誘導体は天然の配列に関して1以上のア
ミノ酸が置換,付加或いは削除されたアミノ酸配列を有し且つリポタンパク質リパ
ーゼ活性を有する,上記欠陥組換えウイルス
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(甲4)
リポタンパク質リパーゼ(LPL)をコードする核酸配列を含んでなる欠陥組換
えウイルス
3本件審決の理由の要旨
(1)本件審決の理由は,要するに,本件補正発明は,下記アないしウの引用例
に記載された発明(以下,その順に従って,「引用発明1」ないし「引用発明3」
という。)に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,独
立特許要件を満たさないとして,本件補正を却下し,本件出願に係る発明の要旨を
本願発明のとおり認定した上,本願発明は引用発明1ないし3に基づいて,当業者
が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明は,特許を受けること
ができない,というものである。
ア引用例1:JournalofInternalMedicine,Vol.231(甲1。平成4年発
行)
イ引用例2:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.83(甲2。昭和61年9月発
行)
ウ引用例3:国際公開第94/11506号パンフレット(甲3。平成6年5
月26日発行)
(2)なお,本件審決が認定した引用発明1並びに本件補正発明と引用発明1と
の一致点及び相違点は,次のとおりである
ア引用発明1:リポタンパク質リパーゼ欠損による家族性高カイロミクロン血
症症候群の遺伝子治療の可能性
イ一致点:リポタンパク質リパーゼに関するものである点
ウ相違点:引用発明1には,「リポタンパク質リパーゼ(LPL)をコードす
る核酸配列を含んでなる欠陥組換えウイルス」についての記載がない点
4取消事由
本件補正発明の進歩性に係る判断の誤り
第3当事者の主張
〔原告の主張〕
(1)引用例1について
引用例1には,単にトリグリセリド血症を発病した患者の遺伝的研究が記載され
ているにすぎず,リポタンパク質リパーゼ(LPL)遺伝子の機能を回復する手段
については何ら記載も示唆もされていない。
本件審決が引用する「LPL又はapoC-IIどちらかの欠損に導く遺伝子の欠陥の
解明は,この症候群によってひどく冒されている個人における,未来の遺伝子治療
の可能性の基礎を与えるであろう。」という記載は,将来,遺伝子治療の可能性の
基礎がもたらされるであろうこと,すなわち,現時点では時期尚早であることを示
唆するものにすぎず,かかる記載から,LPL遺伝子を遺伝子治療に用いようとす
ることが動機付けられるものではない。
(2)本件補正発明の効果について
ア本件出願の優先日当時の技術水準について
本件出願に係る優先権主張日(以下「本件優先日」という。)である平成6年
(1994年)6月2日時点では,遺伝子治療は予測不可能な分野であり,いかな
る遺伝子治療による処置が有効で,疾患を治癒に導くのかを予測することは困難で
あった。実際,引用例2に記載された実験には,レトロウイルスベクターが患者に
おいて機能することは示されていない。
したがって,LPLをコードする核酸配列を含んでなる欠陥組換えウイルスによ
る遺伝子治療が成功するという本件補正発明の効果は,従来技術からは全く予想で
きないものであった。
本件優先日当時,種々の疾患に対する遺伝子治療が仮定的に検討されていたが,
本件補正発明に基づいて開発された遺伝子治療製品(以下「本件製品」という。)
のように,実際に医療的に成功することは,当時としては画期的なことであった。
イ本願明細書の実施例について
本件審決は,本願明細書の実施例5においてプラスミドを293細胞に導入する
ことによって得た培養物の上澄液が活性を有することは示されているものの,実施
例7のマウスを用いた実験においては,その結果や具体的効果が明らかにされてい
ないから,本件補正発明の欠陥組換えウイルスが,引用例1ないし3の記載から予
測できない効果を奏するものとは認められないとする。
しかしながら,本願明細書の実施例5には,生物学的に活性なLPLが発現する
ことを確認するための,LPL量の測定方法及びLPL活性の測定方法が記載され
ており,同明細書表1には,CosI細胞への「pRC−CMV−LPL」,「p
XLRSV−LPL」又は「pXLCMV−LPL」のトランスフェクション
によりLPLが発現することを示す試験結果が,同表2には,293細胞への「p
cDNA−LPL」又は「pcDNA−LPLc」のトランスフェクションにより
LPLが発現することを示す試験結果が,それぞれ記載されている。
また,実施例6には,実施例1による「pXL2418」又は実施例3による
「pXLCMV−LPL」を用い,CMVプロモーター制御下にある本件補正発
明の欠陥組換えアデノウイルスAd.CMV.LPLが作成されたことが記載され,
さらに,同様の方法により,実施例2による「pXL2419」,実施例3による
「pXLRSV−LPL」,実施例4による「pXLRSV−LPLc」のい
ずれかを用い,LTR制御下にある本件補正発明の欠陥組換えアデノウイルスAd.
RSV.LPL又はAd.RSV.LPLcが作成されたことが記載されている。
そして,実施例7には,これらのCMV又はLTR制御下にある本件補正発明の
アデノウイルスAd−CMV.LPL及びAd.LTR.LPLを,C57B1/
6マウス中に尾静脈等を使用して静脈注射し,実施例5に記載された条件下で測定
することにより,LPLの活性型の発現が示されたことが記載されている。実施例
7の実験は,マウスを用いた動物モデルによる前臨床試験であり,遺伝子治療によ
る療法が成功するであろうことを実質的に示すものであって,具体的な実験データ
を開示するものではないが,効果が確認された化合物が具体的に特定されているこ
と,実験条件が詳細かつ具体的に記載されていることに鑑みれば,本件補正発明の
遺伝子治療の効果が実際に確認されていることを実質的に示すものである。
確かに,被告が指摘するとおり,実施例5の測定結果はベクターを用いたもので
あり,実施例7には本件補正発明の欠陥組換えウイルスを用いて活性を確認した具
体的な試験結果は記載されてはいないが,上記実施例5ないし7の記載は,少なく
とも本件補正発明の欠陥組換えウイルスを用いた遺伝子治療の概念実証を示すもの
であり,本件補正発明によってLPL遺伝子を用いた遺伝子治療が達成されるとい
う効果が奏されることを裏付けるに足りるものである。
かかる概念実証は,被告が指摘する各種文献によっても開示されているものでは
なく,実施例5ないし7に実質的に開示されている本件補正発明の効果は,引用例
1ないし3の記載からは予想できないものである。
したがって,遺伝子治療により,処置できるかもしれない幾つかの疾患が公知で
あったとしても,本願明細書の実施例7に示されているように,遺伝子治療が成功
するという効果は予測できないものというべきである。
ウ本件補正発明の効果に係る文献について
本件補正発明が,遺伝子治療に実際に有効であるのみならず,その後の様々な研
究の先駆的な発明であることは,甲15ないし19の文献(以下「甲15文献」な
いし「甲19文献」といい,総称して「本件文献」という。)からも明らかである。
(ア)甲15文献(平成9年1月発行のHumanGeneTherapy,Vol.8)には,R
SV−LTRの制御下で発現するヒトLPL遺伝子を含む欠陥アデノウイルスベク
ターの使用に関する実験結果によれば,かかるベクターに感染したヒト肝細胞が生
物学的に活性なLPLを発現して,超低密度リポタンパク質中に運ばれるトリグリ
セリドを50%以上加水分解できることが開示されている。
(イ)甲16文献(平成9年11月発行のArterioscler.Thromb.Vasc.Biol,
Vol.17)には,欠陥アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療の効果,すなわち,
LPL遺伝子を有するベクターを静脈内に注射されたマウスの肝臓中でLPLが発
現し,統計的に有意な血漿トリグリセリドの減少が見られたことが開示されている。
同文献には,LTRプロモーターの制御下にあるLPL遺伝子をコードするアデ
ノウイルス(Ad−LPL)が実験に使用されていることが記載されているのみな
らず,本願明細書の実施例5ないし7と同様の条件における実験により,遺伝子治
療の効果を示す種々の実験結果が得られたことが記載されており,その中には,実
施例7の実験結果に相当する,Ad−LPLを投与したマウスにおけるLPLの活
性型の発現についても明記されている。
(ウ)甲17文献(平成10年10月発行のClin.Invest.Med,Vol.21)には,
甲15文献及び甲16文献の知見を確認する実験結果,すなわち,肝臓及び血漿の
LPL活性の上昇と血漿VLDL/キロミクロン画分中での著しい減少に結びつく
正常フェノタイプのマウスにおけるAd−LPLの効率的な肝変換について開示さ
れている。
(エ)甲18文献(平成12年1月発行のHumanGeneTherapy,Vol.11)には,
LPL遺伝子が,CMVの制御下にあるアデノウイルスベクターを使用して,ネコ
の肝臓等の組織で発現されたことが開示されている。
(オ)甲19文献(平成9年11月発行のHumanGeneTherapy,Vol.8)には,
アデノウイルスベクターにより,マウスにおいてLPL遺伝子が発現され,コレス
テロールとトリグリセリドの血漿レベルが低下したことが開示されている。
(3)小括
以上からすると,本件補正発明は,引用発明1ないし3の記載からは予想できな
い効果を奏する先駆的な発明であって,当業者が,引用発明1に基づいて,相違点
の構成について引用例2及び3により開示された技術知見である欠陥ウイルスベク
ターとを組み合わせることによって,容易に想到し得るものということはできない。
したがって,本件補正発明の進歩性を否定した本件審決の判断は誤りであって,
取消しを免れない。
〔被告の主張〕
(1)引用例1について
ア遺伝子治療の技術開発状況について
(ア)本件審決は,本件優先日当時の周知技術に関する文献として,平成2年7
月発行のBlood,Vol.76(標題「ヒトの遺伝子治療に向けての進歩」。甲12。以
下「甲12文献」という。),平成4年発行のEur.J.Biochem,Vol.208(標題
「ヒト遺伝子治療のコンセプトとストラテジー」。甲13。以下「甲13文献」と
いう。),平成5年発行のCurrentOpinioninGeneticsandDevelopment,
Vol.3(標題「遺伝子治療:アデノウイルスベクター」。甲14。以下「甲14文
献」という。)を指摘しているが,そのほか,本件優先日に近接した遺伝子治療の
技術水準を開示する文献として,平成5年11月発行のMolecularMedicine,
Vol.30(乙1。以下「乙1文献」という。)がある。
(イ)乙1文献には,遺伝子治療の技術を紹介した以下の4つの論文が掲載され
ている。
a「遺伝子治療実施への課題」と題する論文には,「必然的に今度は遺伝子を
ターゲットとした治療を,誰でも考えるようになるわけです。それは,これまでの
医学の進歩の歴史から見ても,自然な流れだろうと思います。…病気の原因が遺伝
子にあれば,その遺伝子に対する治療,遺伝子レベルでの治療を考えるようになる
わけです。」「1990年になって,アデノシンアミナーゼ(ADA)の欠損症…
の治療に初めて遺伝子治療が行われることになったわけです。」と記載されている。
b「遺伝子治療の技術的基盤」と題する論文には,「任意の遺伝子を哺乳動物
細胞に発現させる方法は,ウイルス学的手段,物理的手段,化学的手段…に分けら
れる。各方法とも1980年代後半より確立,改良が行われてきたことが,遺伝子
治療が現実のものとなってきた大きな理由の1つである」と記載されている。
c「遺伝子治療−世界の現状」と題する論文には,遺伝子治療において,不足
している遺伝子の機能を補充する方法は,細胞に外来遺伝子を導入し,疾患の原因
となっている遺伝子を置き換える方法と比較して,技術的に容易であり,対象細胞
として体細胞を選択できる点で汎用されている旨が記載されている。
さらに,同論文には,遺伝病における遺伝子治療が紹介されており,様々な疾患
に対して,モデルとしてのマウス,ウサギのみならず,例えば,アデノシンデアミ
ナーゼ欠損症,家族性高コレステロール血症,血友病において,ヒトに対する遺伝
子治療の臨床試験が行われたことが記載されている。
d「遺伝子病」と題する論文にも,上記cと同様の試験状況が記載されている。
(ウ)遺伝子治療とは,「細胞になんらかの外来遺伝子を導入し,疾患の原因と
なっている遺伝子を置き換える(correctiontherapy)か,あるいは不足している
遺伝子の機能を補充(supplementtherapy)することによって治療効果を得ようと
するものである」(乙1文献)ところ,前記各文献によると,本件優先日当時,か
かる遺伝子治療の基礎技術が開発され,周知技術となっていたことは明らかである。
イ引用例1について
本件優先日当時の遺伝子治療に係る技術水準を前提とすると,引用例1には,
「未来の遺伝子治療の可能性の基礎を与えるであろう」と記載されているとおり,
LPL遺伝子による遺伝子治療に関する可能性が開示され,遺伝子治療について示
唆されていたのであるから,通常の技術開発意欲を有する当業者であれば,LPL
遺伝子の遺伝子治療に関して基礎研究をすることについて動機付けられるのはむし
ろ自然である。
また,直ちに遺伝子治療を行うことができなかったとしても,基礎研究を行う動
機付けが妨げられる事情はないから,引用例1の知見に接した当業者が,当然に家
族性高カイロミクロン血症症候群の遺伝子治療やその基礎研究をしてみようと動機
付けられるものとする本件審決の判断に誤りはない。
なお,乙1文献によると,ヒトに対する遺伝子治療には,ターゲットの選定,発
現のコントロール等の技術的課題が存在するため,本件補正発明が対象とするLP
L遺伝子に関しても,本件優先日において解決すべき様々な問題があり,直ちにヒ
トに対する遺伝子治療を実施できるような状況にはなかった可能性は否定できない。
しかしながら,新しい治療法の開発において,一般に,試験管内の細胞やモデル
動物に適用した基礎研究の段階から,ヒトに適用した臨床研究へと段階的に進行す
るのが通常であって,種々の疾患で遺伝子治療の試験研究が行われていた状況から
すれば,LPL遺伝子に由来する疾患に対して,まず周知の遺伝子治療の技術を用
いて,当該遺伝子による遺伝子治療の基礎研究を試みることは自然の発想である。
そして,引用例1には,LPL遺伝子による遺伝子治療の可能性が記載されてい
るのであるから,その記載に接した当業者であれば,LPL遺伝子が遺伝子治療に
用い得るか否かを確認してみることを強く動機付けられるというべきである。原告
の主張は,本件優先日当時における遺伝子治療の技術水準を不当に低く解するもの
であって,失当である。
(2)本件補正発明の効果について
ア本件優先日当時の技術水準について
先に述べたとおり,本件優先日当時,遺伝子治療技術とその成果は周知であり,
いかなる遺伝子治療による処置が機能するのか等について予測することは,不可能
ではなかったものである。
そして,遺伝子治療のために体組織に遺伝子を導入する手段として,引用例2及
び3により開示された方法を使用することができるのであるから,LPL遺伝子に
関して作成された本件補正発明の欠陥組換えウイルスによる遺伝子治療の可能性は,
引用例1ないし3の各記載から予測し得るものにすぎない。
イ本願明細書の実施例について
(ア)本願明細書によると,本件補正発明の効果は,欠陥組換えウイルスによっ
て「生物学的に活性なリパーゼが生体内で安定にかつ有効に発現されることを示し
たこと」であるが,同明細書には,本件補正発明の欠陥組換えウイルスによって具
体的にその効果が発現することを確認した記載や,「生体内で安定にかつ有効に発
現されること」や「遺伝子治療を成功する」との有用な知見を裏付ける記載もない。
かかる効果を確認するためには,当該ウイルスによるLPLの発現を測定した結
果を確認する必要があるところ,本願明細書には,実施例5及び7において,LP
L発現の測定に関する記載があるにすぎない。
(イ)実施例5の測定結果は,ベクターを動物細胞(「CosI細胞」,「29
3細胞」)に導入(トランスフェクション)したものを用いてLPL活性を測定し
ており,組換えウイルスを試験対象としていない。
また,実施例7には,LPL遺伝子を含む欠陥組換えアデノウイルスをマウスに
静脈注射することが記載されているものの,注入量,注射箇所の詳細について特定
されておらず,試験結果についても,「LPLの活性型の発現は実施例5に記載の
条件下で示される。」と記載されているにすぎない。したがって,当該記載は,L
PL遺伝子の生体内移送について試験方法の概要を例示するにとどまり,実際に遺
伝子治療を行った上で,その結果が示されているわけではないから,本件補正発明
の遺伝子治療の効果が実際に確認されていることを実質的に示すものであるとの原
告主張は明らかに誤りである。
以上からすると,本願明細書の記載によっても,本件補正発明の欠陥組換えウイ
ルスが,引用例1ないし3の記載から予測できない効果を有しているとは認められ
ないとした本件審決の判断に誤りはない。
ウ本件補正発明の効果に係る文献について
(ア)特許出願時に発明の効果を把握することができなかった以上,特許出願後
の文献等によって,明細書の記載内容を補足することは,発明の十分な公開を前提
に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し,許されるものではない。
したがって,本件出願後に開発された本件製品や,本件出願後に開示された本件
各文献に基づいて,本件補正発明の効果を裏付けることはできない。
(イ)原告が主張する本件製品は,その詳細が明らかではないし,その開発経緯
自体も,本件補正発明の効果を裏付ける根拠にはなり得ない。
また,本件各文献のリファレンス(参考文献)欄には,本件出願に係る国際公開
番号又はそれに相当する内容が引用されていない以上,各文献において,LPL遺
伝子の遺伝子治療に関する研究結果が記載されていたとしても,本件補正発明との
関係は明らかではない。
(ウ)先に指摘したとおり,本願明細書には,本件補正発明の欠陥組換えウイル
スを用いて遺伝子治療に成功したことを裏付ける記載はなく,実施例の記載からは,
実施例5記載の測定方法により,実施例7において欠陥組換えウイルスをマウスに
注入してLPL発現量の測定を行うことが明らかになるにすぎず,これらの測定方
法等によって得られる結果は,周知の遺伝子治療技術から予想し得る範囲の作用効
果にとどまり,当業者にとって予想できないほど有利な知見は開示されていない。
したがって,本件補正発明の欠陥組換えウイルスによって「遺伝子治療に成功す
る」という効果は,本願明細書に記載された事項ではなく,本件製品及び本件各文
献をもってしても,当該効果が本願明細書に記載されているとすることはできない。
(3)小括
以上からすると,本件補正発明は,引用例1ないし3の記載からは予想できない
効果を奏する先駆的な発明であるということはできず,当業者が,引用発明1に基
づいて,引用例2及び3により開示された技術知見である欠陥ウイルスベクターと
を組み合わせることによって,容易に想到し得るものというべきである。
したがって,本件補正発明の進歩性を否定した本件審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断
1本件補正発明について
(1)本願明細書の記載
本願明細書(甲4,6)の記載を要約すると,以下のとおりである。
ア本件補正発明は,ウイルス起源の組換えベクター,それらの製造方法及び使
用,特に異リポタンパク血症に関連する疾患の治療及び,又は予防のための使用に
関する発明であって,リポタンパク質代謝に関与するリパーゼをコードするDNA
配列を含有する組換えウイルスのベクターの製造,それらを含有する医薬組成物や
遺伝子治療における使用に関する発明である。
イ異リポタンパク血症は,血液及び末梢液中のコレステロール及びトリグリセ
リドのような脂質の生体膜輸送をもたらすリポタンパク質の代謝に関する疾患であ
って,梗塞,突然死,心臓代謝障害,発作などの極めて重症な心臓血管疾患をもた
らす。本件補正発明は,異リポタンパク血症に関連する疾患について,遺伝子治療,
すなわち,リポタンパク質代謝に関与するリパーゼをコードする遺伝子の生体内移
送及び発現によって治療する可能性を示すことによって,従来技術の欠点に対する
有利な治療方法を提供するものである。本件補正発明は,これらの疾患の特異的か
つ有効な治療を可能にする簡単な手段を提供する。本件補正発明によって,リポタ
ンパク質代謝に関与するリパーゼをコードするDNA配列を含有する組換えウイル
スを構築し,生体内に投与することが可能であること,投与によって,細胞病理学
的影響なしで,生物学的に活性なリパーゼが生体内で安定にかつ有効に発現される
ことは,特に有利な効果である。
本件補正発明は,また,アデノウイルスが,遺伝子の移入及び発現のために特に
有効なベクターを構成するという実証の成果でもあって,このようなベクターを使
用することにより,遺伝子発現の水準を,所望の治療効果を得られる程度に高める
ことが可能となる。
したがって,本件補正発明の第1の目的は,異リポタンパク血症に関連する心臓
血管性及び神経学的疾患の治療及び予防について新規な方法を提供することであり,
第2の目的は,心臓血管性疾患の治療及び,又は予防を目的とした製薬組成物の製
造のために,かかる欠陥組換えウイルスを使用することにある。
ウ本件補正発明のためのリポタンパク質代謝に関与するリパーゼとして,LP
Lが挙げられる。本件補正発明は,LPLをコードするDNA配列をウイルス性ベ
クター中に取り込むことが可能であること,これらのベクターによって,生物学的
に活性な二量体の成熟形態のLPLが発現され,効果的に分泌されること,活性な
LPLの生体内発現がアデノウイルスの直接投与等によって遺伝子的に変異された
細胞の移植によって得られることを明らかにしている。
本件補正発明のベクターは,特に,LPL遺伝子中の突然変異によるLPL欠失
を矯正するために使用することができる。本件補正発明によれば,このようなタン
パク質の発現によって通常は影響されない器官中で有害な効果が誘発されることな
く,調節されているLPLの発現を可能にするため,特に有利である。
エ本件補正発明のベクターは,種々のウイルスから製造することができる。
本件補正発明によるウイルスは不完全であり,標的細胞中で自己複製することが
できない。そのため,一般的に,本件補正発明の文脈において使用された欠陥ウイ
ルスのゲノムは,少なくとも標的細胞でウイルスの複製に必要な配列を欠く。これ
らの領域は,全部又は部分的に除去されるか,非機能的にされるか,他の配列,特
にリパーゼをコードする核酸配列によって置換されることができる。ウイルス粒子
の被包化に必要であるゲノムの配列を保持している欠陥組換えウイルスが好ましい。
本件補正発明による欠陥組換えアデノウイルスは,当業者に周知であるいずれかの
技術によっても製造することができる。
本件補正発明は,1つ又はそれ以上の欠陥組換えウイルスを含む医薬組成物に関
するものである。これらの医薬組成物は,局所,経口等による投与を考慮して製剤
することができる。注射に使用される場合におけるウイルスの用量は,種々のパラ
メータ,特にウイルスベクター,使用される投与方法,対象とする疾患,治療の所
要期間に従って適用することができる。また,本件補正発明は,欠陥組換えウイル
スを感染させた哺乳類細胞等の移植片にも関するところ,かかる移植片は,身体の
種々の部位に移植することができる。
オ実施例
(ア)実施例1:サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターの制御下に
あるLPLをコードする遺伝子を有するベクターpXL2418の構築(図1)
実施例1は,サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターよりなるプロモ
ーターの制御下にあるLPLをコードするcDNA配列,相同的組換えを可能にす
るAd5アデノウイルスのゲノムの領域を含んでなるベクターの構築に関するもの
である。
(イ)実施例2:ラウス肉腫ウイルスLTR(RSVLTR)のプロモーター
の制御下にあるLPLをコードする遺伝子を有するベクターpXL2419の構築
(図2)
実施例2は,ラウス肉腫ウイルスLTR(RSVLTR)のプロモーターの制
御下にあるLPLをコードするcDNA配列,相同的組換えを可能にするAd5ア
デノウイルスのゲノムの領域を含んでなるベクターの構築に関するものである。
(ウ)実施例3:ベクターpXLRSV−LPL及びpXLCMV−LPL
の構築
実施例3は,pRCMV−LPLからLPLcDNA及びウシ成長ホルモンの
ポリアデニル化部位を抽出し,得られたフラグメントを,ベクターpXL2418
(実施例1)及びpXL2419(実施例2)中にクローン化し,それぞれベクタ
ーpXLCMV−LPL(図3)及びpXLRSV−LPL(図4)を生成し
たことに関するものである。
(エ)実施例4:ベクターpXLRSV−LPLcの構築
実施例4は,LPLをコードする短いcDNAを含有する組換えウイルスを生成
するのに使用できるベクターの構築に関するものであり,短cDNAをヒト脂肪組
織のRNAからクローン化し,LPLcDNAを含有するClaI−SalIフ
ラグメントを最終的に同一の部位でプラスミドpXLRSV−LPL(実施例
3)中にクローン化し,シャトルプラスミドpXLRSV−LPLc(図5)を
生成するものである。
(オ)実施例5:本件補正発明のベクターの機能性:LPL活性の証明
細胞培養物中で生物学的活性型のLPLを発現する本件補正発明のベクターの能
力は,293CosI細胞の一時的トランスフェクションによって開示された。か
かる目的のために,細胞(10cm径の皿当たり2×106
細胞)をトランスフェ
クタムの存在下でトランスフェクトした(8μgのベクター)。LPLをコードす
る配列の発現及び生物学的活性なタンパク質の産生は,免疫酵素試験を使用するマ
ス(mass)又はリパーゼ活性によって,開示される。
LPL活性の測定は,25μlの標準ヒト血漿のエマルジョンからなる基質で測
定する。一般的に,活性は,トランスフェクトされた細胞の上澄液の100μl又
はヘパリン後血漿の50μlで測定する。
37℃で1時間インキュベートした後,反応を停止させ,有機相を計数し,遊離
した脂肪酸量を決定する。
LPLに特異的に関連する活性を決定するためには,肝性リパーゼ活性の測定を,
1M濃度のNaCl(LPLを阻害する)の存在下で行い,全活性から引算する。
プラスミドpXLRSV−LPL及びpXLCMV−LPLを,CosI細
胞中へのトランスフェクションによって,プラスミドpRCCMV−LPLと比
較して試験した結果は,表1のとおりである。
表1
発現ベクター上澄液中の活性
1日
pRC−CMV−LPL24.5
pXLRSV−LPL15.1
pXLCMV−LPL22.9
プラスミドpcDNA−LPLcを,293細胞中へのトランスフェクションに
よって,ベクターpRC−CMV−LPLと同一のcDNAを含有する発現ベクタ
ーpcDNA3と比較して試験した結果は表2のとおりである。
表2
発現ベクター上澄液中の活性上澄液中の活性
1日2日
pcDNA−LPL106.4mU/ml106.7mU/ml
pcDNA−LPLc114mU/ml109.6mU/ml
(カ)実施例6:LPLリパーゼをコードする配列を含有する組換えアデノウイ
ルスAd−CMV.LPLの構築
実施例6は,実施例1ないし4で製造したプラスミドを線形化して,欠陥アデノ
ウイルスによる組換えのために,アデノウイルスのE1(E1A及びE11B)領
域によってコードされた機能をイントランスで提供するヘルパー細胞(株293)
中にコトランスフェクトする。
アデノウイルスAd.CMV.LPLは,アデノウイルスAd.RSVβgal
及びプラスミドpXL2418又はpXLCMV−LPLとの間の生体内の相同
的組換えによって,以下のプロトコールに従って得られる。すなわち,線形化され
たプラスミドpXL2418又はpXLCMV−LPL及びClaIで線形化さ
れたアデノウイルス標識Ad.RSVβgalを,細胞株293中に,相同的組換
えを可能にするリン酸カルシウムの存在下でコトランスフェクトする。このように
して生成された組換えアデノウイルスを,プラーク精製によって選択する。組換え
アデノウイルスを単離した後,細胞株293中で増幅して,約1010
pfu/ml
の力価を有する未精製組換え欠陥アデノウイルスを含有する培養上澄液を得る。
次に,ウイルス粒子を精製する。アデノウイルスAd−CMV.LPLは20%
グリセロール中において,−80℃で貯蔵することができる。
同一のプロトコールを,プラスミドpXL2419,PXLRSV−LPL,
pXLRSV−LPLcのいずれかを用いて再現して,組換えアデノウイルスA
d.RSV.LPL又はAd.RSV.LPLcを得る。
(キ)実施例7:組換えアデノウイルスによるLPL遺伝子の生体内移送
実施例7は,本件補正発明によるアデノウイルスベクターによるLPL遺伝子の
生体内移送に関するものである。
注射されたアデノウイルスは,実施例5で製造され,食塩リン酸溶液(PBS)
中で精製された形態(3.5×106
pfu/ml)で使用されたアデノウイルス
Ad−CMV.LPL及びAd.LTR.LPLである。これらのウイルスを,C
57B1/6マウス中に,尾静脈,眼窩後方洞又は門静脈を使用して静脈注射する。
LPLの活性型の発現は実施例5に記載の条件下で示される。
(2)本件補正発明の技術内容
ア以上の本願明細書の記載によると,本件補正発明は,LPLをコードするD
NA配列を含有する組換えウイルスベクターに関連する発明であって,同ウイルス
ベクターを遺伝子治療における治療的使用に有効的に活用することをその目的とす
るものである。
そして,本件補正発明のウイルスは不完全,すなわち標的細胞中で自己複製する
ことができないものであることから,「欠陥組換えウイルス」とされているもので
ある。
したがって,本件補正発明は,LPLをコードする核酸配列を含んでなる欠陥組
換えウイルスに関する発明であり,当該欠陥組換えウイルスは,遺伝子治療に使用
するウイルスベクターとして有用なものであるということができる。
イ本願明細書の実施例5には,実施例3で作成されたプラスミドpXLRS
V−LPL及びpXLCMV−LPLを,CosI細胞中にトランスフェクショ
ンし,また,実施例4で作成されたプラスミドpcDNA−LPLを,293細胞
中にトランスフェクションしたものに関するLPL活性が示されている。
しかしながら,実施例5において使用されたプラスミドは,実施例6に「実施例
1∼4で製造したプラスミドを,線形化して,欠陥アデノウイルスによる組換えの
ために,アデノウイルスのE1(E1AおよびE11B)領域によってコードされ
た機能をイントランス(intrans)で提供するヘルパー細胞(株293)
中にコトランスフェクトする。」と記載されていることからすると,欠陥組換えウ
イルスを製造する前のプラスミドであって,欠陥組換えウイルスではない。
したがって,実施例1ないし5に記載されたベクターは,組換えウイルスではあ
るものの,欠陥組換えウイルスではない。
そして,実施例6において,本件補正発明に係る欠陥組換えウイルスの製造方法
が記載されているが,同実施例には,欠陥組換えウイルスを具体的に製造できたこ
とまでは記載されてない。
さらに,実施例7において,上記欠陥組換えウイルスの使用例として,同ウイル
スをマウスに注射する方法が記載されている(なお,本願明細書には,実施例7に
おいて,実施例5で製造されたウイルスを使用する旨の記載があるが,先に述べた
とおり,実施例5では,欠陥組換えウイルスが製造されているものではないことか
ら,当該記載は誤記であり,実施例6に記載の製造方法により製造される欠陥組換
えウイルスが使用されるものと解される。)が,同実施例には,LPLの活性型の
発現については,実施例5に記載の条件において確認することができる旨が記載さ
れているものの,欠陥組換えウイルスを注射した結果について記載されておらず,
マウスの体内で目的とする遺伝子が発現したか否かは明らかではない。
ウ以上からすると,本件補正発明に係る欠陥組換えウイルスは,本願明細書に
おいて,その製造方法及び使用方法については開示されているものの,当該ウイル
スを具体的に製造できたこと及び当該ウイルスが遺伝子治療に使用するウイルスベ
クターとして有用であることを示す具体的な結果も記載されていないから,本件補
正発明は,LPLが関与する疾患の遺伝子治療のウイルスベクターとして使用する
ために,自己複製できないように改変されたウイルスにLPLをコードする核酸配
列を導入するという着想を示したことをその技術内容とするものにすぎないという
べきである。
2引用発明について
(1)引用発明1
ア引用例1の記載
引用例1(甲1)の記載を要約すると,以下のとおりである。
(ア)高中性脂肪血症は,一般的な異常リポ蛋白血症であるが,根本的な病態生
理学のメカニズムは雑多であり,ほとんどの場合不完全にしか理解されないところ,
家族性高カイロミクロン血症症候群は,常染色体の劣性形質として遺伝し,深刻な
空腹時高中性脂肪血症や,血漿中のカイロミクロンの大量の蓄積及び膵臓炎の周期
的な発作で特徴付けられる症状を示す。
家族性高カイロミクロン血症症候群の主な原因は,LPL又はその共同因子(ア
ポリポ蛋白質(apo)C−II)の欠損である。これらの2つのタンパク質は,カ
イロミクロンと超低密度リポ蛋白質の中にあるトリグリセリドの加水分解を触媒す
る。過去十年間で,家族性高カイロミクロン血症に結びつく根本的な分子の欠陥に
ついての理解は,LPL及びapoC−IIのための遺伝子中の突然変異の同定に
よって非常に増強された。これらの欠陥の特性化は,apoC−II及びLPLの
構造,機能に対する新しい知見を提供しており,これらの2つのタンパク質が正常
なトリグリセリド代謝の中で果たす重要な役割を確立した。
(イ)LPLは肝外での組織で合成され,LPLmRNAは乳腺と同様に脂肪
細胞,副腎の組織,心臓及び骨格筋の中に豊富に存在する。これらのmRNAは,
27アミノ酸からなるシグナルペプチドに続いて,約8%の炭水化物量でグリコシ
ル化された448残基の成熟タンパク質をコードしている(参考文献39)。
(ウ)LPL又はapoC−IIのいずれかの欠損に導く遺伝子の欠陥の解明は,
この症候群によってひどく冒されている個人における,未来の遺伝子治療の可能性
の基礎を与えるであろうと思われる。
イ引用発明1の技術内容
以上からすると,引用例1には,家族性高カイロミクロン血症症候群は遺伝病で
あって,その主な原因の1つはLPLの欠損であり,治療法として遺伝子治療の可
能性に関する知見が開示されているものということができる。
また,引用例1の参考文献39(昭和62年発行のScience,Vol.235。甲20。
以下「甲20文献」という。)には,LPLをコードする核酸配列が記載されてい
るものである。
(2)引用発明2
ア引用例2の記載
引用例2(甲2)は,「レトロウイルスにより媒介される遺伝子転移による,培
養ヒトT及びB細胞におけるアデノシンデアミナーゼ欠損の補正」と題する学術論
文であって,その記載を要約すると,以下のとおりである。
(ア)アデノシンデアミナーゼ(ADA)のクローン化されたヒトcDNAを含
んでいる,SAXと呼ばれるレトロウイルスベクターが構築され,ADA欠損症の
患者に由来した,培養されたT-リンパ細胞及びB-リンパ細胞へADA遺伝子を導
入するために使用された。DNA分析は,SAXベクターがT及びB細胞へ完全で,
1つの細胞当たりおよそ1つのコピーに挿入されたことを示した。扱われた細胞は,
正常なT及びBリンパ細胞に似ているレベルに人間のADAの特有のアイソザイム
を生産した。
(イ)ADAが不十分なリンパ細胞がハイレベルの2'-デオキシアデノシンに異
常に敏感であることは知られているところ,これは,ADA欠損症に生体内で関連
した選択的なリンパ細胞毒性の基礎となると考えられるメカニズムである。
(ウ)導入されたADA遺伝子の発現は2'-デオキシアデノシンの毒性へのこれ
らの遺伝学的に不十分なリンパ細胞の過敏さを逆にするのに十分だった。これらの
結果は,レトロウイルスベクター遺伝子運搬システムが人間の遺伝子治療への適用
のための見込みを示す提案を支援するものである。
イ引用発明2の技術内容
以上からすると,引用例2には,ADA欠損症の遺伝子治療のために,欠陥レト
ロウイルスベクターを使用する方法に関する知見が開示されているものということ
ができる。
(3)引用発明3
ア引用例3の記載
引用例3(甲3)の記載を要約すると,以下のとおりである。
(ア)本発明は,心筋又は血管平滑筋細胞において機能を制御するためにアデノ
ウイルス介在遺伝子転移を使用することに関する。遺伝子産物をコードするDNA
配列を含む組換えアデノウイルスは,心筋又は血管平滑筋細胞に送達される。細胞
は,遺伝子産物が発現するまで維持される。送達は,筋細胞に直接注射するか,又
はアデノウイルスベクター構築物を含む医薬組成物を脈管内に注入する方法による。
(イ)実施例1には,遺伝子産物(β−gal)をコードするDNA配列を含む
組換え複製欠陥アデノウイルスの製造方法が,実施例2には,同1の方法で調製さ
れたアデノウイルスベクターを兎に注射したところ,冠血管平滑筋及び心筋細胞に
おいて,目的とする遺伝子産物(β−gal)が発現していることが確認されてい
る。
イ引用発明3の技術内容
以上からすると,引用例3には,遺伝子を体内に送達する方法における遺伝子治
療のために,複製欠陥アデノウイルスを使用し,目的とする遺伝子(β−gal)
を体細胞に導入する方法に関する知見が開示されているものということができる。
3本件優先日当時の技術水準について
(1)本願明細書に記載された遺伝子治療に関する先行技術
本願明細書(甲6)には,遺伝子治療に関する先行技術について,以下のとおり
記載している。
遺伝子治療は,欠失又は異常(突然変異,異常発現等)を矯正すること,感染細
胞,器官中に遺伝子情報を導入することによって治療上重要性をもつタンパク質の
発現を提供することにあるが,この遺伝子情報は,生体外で器官から抽出された細
胞中に導入し,次いで変異された細胞を体内に再導入するか,又は直接に生体内の
適切な組織中に導入することができる。第2の場合,DNAとDEAE−デキスト
ランの複合体等を含むトランスフェクションの種々の技術を含む各種の技術がある。
さらに最近,遺伝子移送のためのベクターとしてウイルスを使用することは,これ
らの物理的トランスフェクション技術に対する有望な代替方法であることが判明し,
種々のウイルスが,ある一定の細胞集合体を感染させる能力について試験された。
この試験は,特にレトロウイルス(RSV,HMS,MMS等),HSHウイルス,
アデノ関連ウイルス及びアデノウイルスに適用される。
(2)本件優先日当時の遺伝子治療に関する先行技術
ア平成2年発行のHumanGeneTherapy,Vol.1(甲11)には,平成2年9月
14日,アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の患者に対し,遺伝子治療が行
われたことが記載されている。
イ甲12文献(甲12)は,遺伝子導入の潜在的な目標としての異なった体細
胞組織に注目して,人間の疾病を治療するために遺伝子治療の使用への進歩を要約
する文献であるが,同文献には,遺伝子治療は,疾病を治療するために組織の細胞
中への遺伝物質(1から数個の遺伝子)の転移として定義されること,多くの遺伝
病が単一の遺伝子の欠陥によって引き起こされるので,かかる技術については,人
間の疾病の治療に対し,多くの潜在的な応用があること,人間の生殖細胞系あるい
は体細胞のいずれかに遺伝子治療を向けることができるかもしれないが,倫理性及
び実践性から,体細胞治療だけが現在考慮されていること,遺伝子治療の場合の主
要な問題は,適切な体細胞中における効率的な遺伝子導入と持続的な遺伝子発現が
達成されるか否かであることが記載されている。
ウ甲13文献(甲13)は,治療における遺伝子導入の生体外・生体内の応用
のために続いている戦略の幾つかについて議論し,体細胞遺伝子治療に関連した技
術的コンセプトの障害について要約する文献であるところ,同文献には,現代の分
子遺伝学の方法において,ヒト及び他の哺乳類体細胞中で,外来の遺伝子の安定し
た転移と発現とを可能にする開発がされていること,このような方法において,遺
伝的欠陥を補足し,疾病表現型を正す試みが適用されたことは驚くことではないこ
と,20年間の研究が,遺伝的欠陥によって少なくとも部分的に引き起こされた疾
病を治療するために,ヒトへ遺伝的に改造した細胞を導入する最初の臨床的な応用
の試みに結びついたことが記載されている。
エ甲14文献(甲14)には,これまで,遺伝子治療の実験的モデルとして,
組換えの複製欠陥アデノウイルスの使用が急増していること,入手可能な組換えア
デノウイルスにおいて,その高力価と遺伝子導入の高い効率に併せて,細胞を分け
る必要がなく,アデノウイルスがほとんどの細胞の種類に感染するという事実によ
り,生体内におけるヒトの遺伝子治療のための有望なシステムになることが記載さ
れている。
オ乙1文献(乙1)は,雑誌に掲載された「特集遺伝子治療とは?」と題す
る特集記事であるところ,同文献には,以下の記載がある。
(ア)「遺伝子治療実施への課題」と題するインタビューには,「遺伝子」が分
子生物学や遺伝子工学の技術によって明らかになってくると,遺伝子の異常による
病気が幾つも同定されるようになり,遺伝子診断という意味でもそれが利用される
ようになってきたことに伴い,必然的に今度は遺伝子を対象とした治療を誰でも考
えるようになるが,これは,これまでの医学の進歩の歴史から見ても,自然な流れ
であると考えられること,かかる治療は,対症療法ではなく,原因療法であり,病
気の原因が遺伝子にあるならば,当該遺伝子に対する治療,すなわち遺伝子レベル
での治療を考えるようになること,遺伝子治療が理論的に可能だろうということは,
誰もが考えたこと,昭和55年(1980年)に,カルフォルニアにおいて,サラ
セミアの患者に対して最初の遺伝子治療が行われたこと,平成2年(1990年)
になって,アデノシンアミナーゼ(ADA)の欠損症の治療に初めて遺伝子治療が
行われたことが記載されている。
(イ)「遺伝子治療の技術的基盤」と題する論文には,任意の遺伝子を哺乳動物
細胞に発現させる方法は,ウイルス学的手段,物理的手段,化学的手段に分けられ
ること,各方法とも1980年代後半より確立,改良が行われてきたことが,遺伝
子治療が現実のものとなってきた大きな理由の1つであること,現在行われている
遺伝子治療の多くはレトロウイルスベクターにより行われているが,1980年代
後半により,ベクター系の改良が行われ,より安全かつ効率的に遺伝子導入が可能
になったことが大きな要因であることが記載されている。
(ウ)「遺伝子治療−世界の現状」と題する論文には,遺伝子治療とは,細胞に
何らかの外来遺伝子を導入し,疾患の原因となっている遺伝子を置き換えるか,あ
るいは不足している遺伝子の機能を補充することによって治療効果を得ようとする
ものであること,前者の方法は,特定の遺伝子を選択的に置換しようとするもので,
今のところ現実的な治療法とはなっていないが,後者の方法は,正常なタンパク質
が適当量発現しさえすれば目的が達せられるので,前者と比較して技術的にも容易
であり,対象細胞として体細胞を選択できる点で汎用されていること,アデノウイ
ルスベクターは,ヒトに対する病原性が少なく,染色体外で複製するという特徴を
有していること,ラットやマウスに対し,遺伝子治療に係る実験が行われているの
みならず,ヒトに対する臨床試験としては,平成2年(1990年),米国国立衛
生研究所で,SCID患者から採取した末梢リンパ球にADA遺伝子を導入し,体
内に戻すという世界初の遺伝子治療試験が成功したこと,平成4年(1992年),
イタリアにおいて,骨髄幹細胞にADA遺伝子を導入し,SCIDの5歳児に再移
植する遺伝子治療が行われたこと,ミシガン大学において,同年,家族性高コレス
テロール血症に対してLDLレセプター遺伝子を導入する遺伝子治療を開始したこ
と,上海では,血友病Bの遺伝子治療が開始されていることなどが記載されている。
(エ)「遺伝子病」と題する論文には,遺伝子治療がこれほど注目されるに至っ
た理由の1つは,近年の分子生物学の進歩により,めざましい数の遺伝病の原因遺
伝子が突き止められるようになったこと,血友病B,ADA欠損症,家族性高コレ
ステロール血症で遺伝子治療の臨床試験が行われたことが記載されている。
カ上記アないしオの各文献によれば,本件優先日当時,遺伝病の原因遺伝子が
解明される等の技術の進歩により,遺伝子治療の有力な治療対象として遺伝病が検
討されており,細胞レベルや動物を対象とした様々な基礎的実験が行われ,また,
一部の遺伝病(血友病B,家族性高コレステロール血症,ADA欠損症)において
は,人間を対象にした成功治験例が報告されるとともに,各種細胞導入法,ウイル
スを使用した細胞導入法におけるウイルスベクターの作成法といった遺伝子治療に
関連する各種の技術開発が行われていたものということができる。
4引用発明1に引用発明2及び3を組み合わせることについて
(1)本件優先日当時,遺伝子治療は,遺伝病に対する原因療法として有力な手
段であり,かつ,成功治験例が存在することは周知であったところ,引用例1には,
遺伝病の一種であるLPL欠損による家族性高カイロミクロン血症症候群について,
遺伝子治療の可能性が示唆されているのであるから,引用例1に接した当業者は,
当然,かかる疾患について遺伝子治療を試みるものということができる。
そして,家族性高カイロミクロン血症症候群の原因であるLPLをコードする核
酸配列も,本件審決が指摘するとおり,引用例1において参照文献として記載され
た甲20文献や,昭和62年(1987年)登録のデータベース(甲21)に収録
されていること,引用例2には,ADA欠損症の遺伝子治療のために,欠陥レトロ
ウイルスベクターを使用する方法に関する知見が,引用例3には,遺伝子を体内に
送達する方法における遺伝子治療のために,複製欠陥アデノウイルスを使用し,目
的とする遺伝子(β−gal)を体細胞に導入する方法に関する知見がそれぞれ開
示されていること,欠陥レトロウイルスや欠陥アデノウイルスを使用して,目的と
する遺伝子を体細胞に導入する方法も公知技術であったことからすると,引用例1
に接した当業者が,家族性高カイロミクロン血症症候群の遺伝子治療の実現のため
に,引用例2及び3により開示された知見を組み合わせて,相違点の構成,すなわ
ち「リポタンパク質リパーゼ(LPL)をコードする核酸配列を含んでなる欠陥組
換えウイルス」の創製を着想し,具体化に向けた努力を行うことは,当業者におけ
る通常の創作能力の発現というべきである。
したがって,本件補正発明は,引用例1ないし3に基づいて,当業者が容易に想
到し得るものということができる。
(2)この点について,原告は,引用例1は,遺伝子治療に関する将来の可能性
を示唆するにとどまり,本件優先日当時,LPL欠損症の遺伝子治療は時期尚早と
されていたのであるから,引用例1の記載からは,LPL遺伝子を遺伝子治療に用
いようとすることを動機付けられるものではない,本件優先日当時,遺伝子治療は
予測できない分野であり,いかなる遺伝子治療による処置が有効であるのか等につ
いては予測困難であった,本件優先日当時,種々の疾患の遺伝子治療が仮定されて
はいたが,本件補正発明を基礎として開発された本件製品のように実際に成功する
ことは画期的であった,本願明細書の実施例7は,本件補正発明の遺伝子治療の効
果が実際に確認されたことを実質的に示すものであるところ,従来技術からは,本
件補正発明に係る欠陥組換えウイルスを使用した遺伝子治療が成功するという効果
は予測できないなどと主張する。
しかしながら,確かに引用例1の文言自体は,「未来の遺伝子治療の可能性の基
礎を与えるであろう」とするにとどまるもので,短期間において遺伝子治療に係る
技術が確立することが期待できないかのように解する余地はあるものの,先に指摘
したとおり,本件優先日当時,欠陥組換えウイルスを用いた遺伝子治療の研究が進
められており,一部の遺伝病(血友病B,家族性高コレステロール血症,ADA欠
損症)においては,人間を対象にした成功治験例が報告されていたのであるから,
かかる技術水準を前提とすると,引用例1に接した当業者が,上記文言から,将来
における実現に係るLPL遺伝子を使用した遺伝子治療の実現可能性を期待するも
のということができるから,引用例1の上記文言自体は,LPL遺伝子を遺伝子治
療に用いることの阻害要因となるものではない。
同様に,本件優先日当時,遺伝子治療による有力な対象として遺伝病が指摘され
ており,人間に対する成功治験例が複数報告されていた以上,引用例1において治
療の可能性が指摘されているLPL欠損による家族性高カイロミクロン血症症候群
は遺伝病の一種であることから,いかなる遺伝子治療による処置が有効であるのか
等については予測困難であったものということはできない。
また,本件補正発明は,欠陥組換えウイルスに係る発明であるところ,本願明細
書の実施例7においては,同ウイルスの使用例として,同ウイルスをマウスに注射
する方法が記載されてはいるが,実施例7には,LPLの活性型の発現については,
実施例5に記載の条件において確認することができる旨が記載されているにすぎず,
マウスの体内で目的とする遺伝子が発現したか否かすら,明らかではない。したが
って,同ウイルスを人間に用いた場合に治療効果が発揮されるか否かについても,
当然不明であるから,同実施例において,本件補正発明の遺伝子治療の効果が実際
に確認されたことを実質的に示すものであるということもできない。本件補正発明
に係る欠陥組換えウイルスは,先に述べたとおり,本願明細書において,その製造
方法及び使用方法については開示されているものの,当該ウイルスを具体的に製造
できたこと及び当該ウイルスが遺伝子治療に使用するウイルスベクターとして有用
であることを示す具体的な結果も記載されていない以上,本件補正発明は,LPL
が関与する疾患の遺伝子治療のウイルスベクターとして使用するために,自己複製
できないように改変されたウイルスにLPLをコードする核酸配列を導入するとい
う着想を示したにすぎないものであって,同発明が,従来技術からは予測不可能な
効果を有するものであるということもできない。
なお,本件製品については,その詳細が明らかではなく,本件補正発明の実施品
であるか否か自体,不明であるし,本件各文献についても,本件補正発明との関連
性は不明である。しかも,本願明細書には,特定の有効な効果を発揮する欠陥組換
えウイルスが具体的に製造されたことに関する記載がない以上,本件製品は,本件
優先日後に判明した特定の欠陥組換えウイルスが存在する可能性をうかがわせるも
のにすぎない。したがって,本件優先日後の研究開発によって製品化が実現し,ま
た,本件優先日後の文献に,欠陥組換えウイルスに関連する記載があったとしても,
そのことをもって,直ちに本件補正発明が顕著な効果を有していることが裏付けら
れるものではない。原告の主張は採用できない。
5本件審決の当否について
(1)以上のとおり,本件補正発明は,引用発明1ないし3に基づいて,当業者
が容易に想到し得るものというべきである。
したがって,本件補正発明について特許法29条2項により特許出願の際独立し
て特許を受けることができないとして本件補正を却下した本件審決の判断に誤りは
ない。
(2)なお,本願発明は,本件補正発明の構成(リポタンパク質リパーゼ(LP
L)をコードする核酸配列を含んでなる欠陥組換えウイルス)を択一的に含むもの
であるところ,その余の構成を含めて,本願発明も,本件補正発明と同様に,引用
例1ないし3に基づいて,当業者が容易に想到し得るものいうべきである。したが
って,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
(3)よって,原告の本件審判の請求が成り立たないとした本件審決の判断に誤
りもない。
6結論
以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官滝澤孝臣
裁判官本多知成
裁判官荒井章光

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独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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職種 事務職
時給 当社規定による
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応募方法
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