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平成17年(ワ)第24941号 不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成18年1月25日
判決
原       告     株式会社伊勢丹
同訴訟代理人弁護士     武田仁
同             中野明安
同             太田大三
同             豊福一
被       告     有限会社伊勢丹商事
主文
1 被告は,「有限会社伊勢丹商事」の商号を使用してはならない。
2 被告は,別紙登記目録記載の商号の抹消登記手続をせよ。
3 被告は,その営業上の施設又は活動に「有限会社伊勢丹商事」その他
の「伊勢丹」の文字を含む商号,標章又は別紙標章目録記載の標章を使用してはな
らない。
4 被告は,原告に対し,金400万円及びこれに対する平成17年12
月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は被告の負担とする。
6 この判決は,第4項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 請求原因
1 不正競争
(1) 原告の商品等表示
原告は,東京都新宿区に本店を有し,「株式会社伊勢丹」の商号(以下
「原告商号」という。)並びに「伊勢丹」及び「ISETAN」の各表示(以下,
「伊勢丹」の表示を「原告表示1」と,「ISETAN」の表示を「原告表示2」
といい,原告表示1及び2を総称して「原告表示」という。)を使用して,百貨店
業を行っている。
(2) 原告の商品等表示の著名性
原告は,設立以来,その販売物品の高い品質及び充実したサービスによ
り,着実に高い評価を獲得してきた。新聞や雑誌等に多数の記事が掲載され,原告
自らが行う活発な宣伝広告活動とあいまって,平成16年度の総売上額は,434
4億0400万円に上り,百貨店業界において5位を占めている。平成17年11
月現在の原告の総従業員数は4023名に上り,国内の本支店は7店,百貨店業に
おける関係会社は3社である。企業集団としては,国内に原告を含めて6社,海
外,特に東アジア地域に7社ある。このように,原告は,我が国屈指の百貨店とし
て揺るぎない地位を築いている。
原告商号及び原告表示は,「CanCam(キャンキャン)」,「JJ
(ジェイジェイ)」,「marie claire(マリ・クレール)」等の女性
向け雑誌のファッション関連の商品等の特集記事において,毎月のように掲載され
ている。
また,原告は,「http://www.isetan.co.jp」を
含むドメインネームを用いた自らのホームページにおいて,「Isetan」又は
「伊勢丹」の文字を自らの商品等表示として用いて営業を行っている。原告のホー
ムページには,全国から毎月約40万件のアクセスがあり,その大部分が,原告商
号又は原告表示を検索してアクセスしているものと考えられる。
さらに,原告は,ホームページ以外でも,独自に費用を負担して,「Og
gi(オッジ)」等の雑誌に,原告商号及び原告表示の更なる周知徹底のための宣
伝広告活動を行うこともある。
このような活動とあいまって,原告商号及び原告表示は,日本国内で極め
て広く認識され,原告の著名な商品等表示となっている。
(3) 被告の行為
被告は,平成3年5月22日に設立の登記がされた会社である。
被告は,残土処理,販売代理業を営んでいるほか,インターネットを通じ
て,国有地の確保(大型工場から小店舗まで),中国投資企業のあっせん,中国国
内でのビジネスコンサルタント業務のあっせん,投資会社設立の代行,人民銀行や
その他の銀行の紹介,同国内での税金対策,同国内においての金銭トラブルや商品
トラブルに関する事務の代行,同国内での裁判の代行,企画商品をバックアップす
る工場の紹介から契約までに関する事務,通関業務困難な物に関する事務の代行,
建設機械の輸出,結婚パートナーの紹介業務等を行っている。
被告は,「有限会社伊勢丹商事」の商号(以下「被告商号」という。)並
びに「伊勢丹商事」及び「isetansyoji.co.ltd」の各表示(以
下,「伊勢丹商事」の表示を「被告表示1」と,「isetansyoji.c
o.ltd」の表示を「被告表示2」といい,被告表示1及び2を総称して「被告
表示」という。)を,インターネットのホームページ上で自らの商品等表示として
用いて営業を行っている。
(4) 商品等表示の同一性又は類似性
ア 被告商号
被告商号のうち,「有限会社」の部分は,会社の種類を示す一般名詞で
あり,「商事」の部分は,単に商社という会社の事業分野を示す一般名詞であり,
識別機能を有しないから,被告商号は,「伊勢丹」の部分が要部である。また,原
告商号のうち,「株式会社」の部分は,会社の種類を示す一般名詞であり,被告商
号と同様,「伊勢丹」の部分が要部である。
そうすると,被告商号は,その要部において,原告商号の要部及び原告
表示1と同一であり,被告商号と原告商号及び原告表示1とは,全体として類似す
る。
イ 被告表示1
被告表示1のうち,「商事」は,会社の事業分野を示す一般名詞である
から,被告表示1の要部は「伊勢丹」である。
したがって,被告表示1は,原告表示1と同一又は類似である。
ウ 被告表示2
被告表示2のうち,「syoji.co.ltd」は,会社の事業分野
及び種類を示す一般名詞(略称)であるから,被告表示2の要部は,「iseta
n」である。
したがって,被告表示2は,原告表示2と同一又は類似である。
(5) したがって,被告の行為は,不正競争防止法2条1項2号の不正競争
に該当する。
2 営業上の利益の侵害
被告の上記1(3)の行為により,原告が今日まで地道な活動により形成し
てきた,原告商号及び原告表示の品質保証機能,出所表示機能及び宣伝広告機能を
減少させられているから,原告は,営業上の利益を現実に侵害されており,今後も
侵害されるおそれがある。
3 故意又は過失
被告は,上記1(3)の行為が不正競争に該当するものであることを知りな
がら,当該行為を行い,営業を行っている。
4 損害
(1) 被告は,上記1(3)の行為により,少なくとも年間3000万円以
上の売上げを上げている。そして,被告の利益率が3分の1以上であることからす
れば,被告が不正競争により得た利益の額は,1000万円を下らない。この額
は,不正競争防止法5条2項により,原告が受けた損害の額と推定される。
(2) 本件は,不正競争の有無に関する高度の技術的な紛争であり,原告
は,専門知識を有する弁護士である原告訴訟代理人らに本件訴訟の提起を依頼し,
弁護士報酬として100万円を下らない金額を支払う旨を約したから,原告は,同
額の損害を被った。
5 よって,原告は,被告に対し,不正競争防止法2条1項2号及び3条に基づ
き,被告商号の使用の停止,被告商号の抹消登記手続及び被告の営業上の施設又は
活動における被告商号その他の「伊勢丹」の文字を含む商号,標章又は別紙標章目
録記載の標章の使用の停止を求め,同号及び同法4条に基づき,被告の不正競争に
よって生じた損害1100万円のうち,一部請求として,400万円及びこれに対
する訴状送達の日の翌日である平成17年12月25日から支払済みまで民法所定
の年5分の割合による遅延損害金の賠償を求める。
第3 当裁判所の判断
1 被告は,適式の呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書そ
の他の準備書面を提出しないから,請求原因事実を争うことを明らかにしないもの
として,これを自白したものとみなす。
2 以上の争いのない事実によれば,原告商号及び原告表示は著名であること並
びに原告商号及び原告表示1と被告商号及び被告表示1とは類似し,原告表示2と
被告表示2とは類似していることが認められるから,被告の行為は,不正競争防止
法2条1項2号の不正競争に該当するということができる。また,上記争いのない
事実によれば,被告は,被告商号及び被告表示の使用により年間3000万円以上
の売上げを計上し,被告の利益率は3分の1以上であるから,被告が不正競争によ
り得た利益の額は少なくとも1000万円であり,この額は,不正競争防止法5条
2項により,原告が受けた損害の額と推定される。そして,本件訴訟に現れた一切
の事情を考慮すると,被告の不正競争と相当因果関係のある弁護士費用は,100
万円と認めるのが相当である。
よって,原告の請求は,いずれも理由があるからこれを認容し,主文第1及
び第3については,相当でないので仮執行宣言を付さないこととして,主文のとお
り判決する。
     東京地方裁判所民事第29部
          裁判長裁判官    清  水     節
             裁判官    山  田  真  紀
             裁判官    東  崎  賢  治
(別紙)
登記目録
広島法務局
会社法人番号 2400-02-001205
商号 有限会社伊勢丹商事
本店 広島市南区〈以下略〉
会社成立の年月日 平成3年5月22日
資本の総額 金300万円
(別紙)
標章目録
1 伊勢丹
2 isetan

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