弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 被告は,原告に対し,金1502万0889円及び内金1302万0889円に対する平成14年6月18日から
支払済みまで年6分の割合による金員,内金200万円に対する同年9月8日から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。
2 原告は,被告に対し,金281万6540円及びこれに対する平成14年11月30日から支払済みまで年5分の
割合による金員を支払え。
3 原告のその余の本訴請求及び被告のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,本訴,反訴を通じ,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
5 本判決は第1,第2項に限り,仮に執行することができる。
       事実及び理由
第1 請求
1 本訴
 被告は,原告に対し,金1758万4891万円及び内金1378万6166円に対する平成14年6月18日か
ら,内金300万円に対する同年9月8日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 反訴
 原告は,被告に対し,金895万6215円及びこれに対する平成14年11月30日から支払済みまで年5分の割
合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件本訴請求は,被告の従業員であった原告が,被告を退職したとして,被告に対し,退職金,未払賞与,未払給
与,未精算金など合計1458万4891円の支払を求めるとともに,被告の違法行為により退職を余儀なくされたこ
となどにより精神的損害を被ったとして不法行為に基づき慰謝料300万円の支払を求めたのに対し,被告は,原告に
は懲戒解雇事由が存在し,同人を懲戒解雇したのであるから,被告には何らの支払義務はないなどと反論している事案
である。本件反訴請求は,被告が,原告に対し,原告の職務懈怠行為により被告の顧客に対する債権が回収不能になっ
たとしてこれによって被った損害813万9675円及び貸金(仮払金の未精算金)81万6540円の合計895万
6215円の支払を求めたところ,原告は支払義務はないとして争っている事案である。
1 争いのない事実等(証拠で認定した事実は,文末に認定に供した主要な証拠を掲記した)
(1) 当事者
 被告は, 各種機械設備の設計・製作・施工を業とする株式会社である。
 原告は,昭和47年3月27日,被告に入社し,遅くとも平成11年以降,被告東京本社営業1部営業3課長の地位
にあった(但し,営業3課は原告1人しか配置されておらず,原告の下に部下はいなかった)。
(2) 原告の待遇等
 原告は,平成14年6月10日時点で勤続30年3か月であり,本給は月額34万4500円であった。
(3) 退職の申入れ,懲戒解雇処分
ア 原告は,平成14年5月31日,被告に対し,同年6月10日付で退社する旨の意思表示をした。
イ 被告の就業規則94条2号(以下「本件就業規則」という)は,従業員が,再三注意したにも拘わらず業務に対す
る熱意誠意がなく怠慢な者に該当するときは,懲戒解雇に処する旨規定している(乙2)。
ウ 被告は,平成14年6月6日,原告に対し,「在職中,売掛金の早期回収・滞留売掛金の処理促進について,再三
注意を受けていたにもかかわらずに実行せず,多大な損害を会社に与えたと同時に,会社の信用を著しく失墜した」と
して本件就業規則94条2号に該当することを理由に,同日をもって懲戒解雇とする旨の意思表示をした(以下「本件
懲戒解雇」又は「本件懲戒解雇処分」という)。
(4) 退職年金規約,従業員退職金支給規程
ア 被告の退職年金規約31条,従業員退職金支給規程8条2号(以下,それぞれ「退職年金規約」,「退職金支給規
程」という)によれば,被告は,懲戒解雇された従業員に対しては,退職年金の一時金,退職金を支払う必要がない旨
規定している(甲1,2,乙36)。
イ 中途退職年金の一時払金の規定,金額
(ア) 退職年金規約13条によれば,①加入者が勤続満25年以上で退職したときは,退職者に対し中途退職年金を
支給する,②中途退職年金の給付月額は,勤続期間に応じ,退職時の基準給与に規約添付の別表2,別表3及び別表5
に定める給付率をそれぞれ乗じた額の合計額とする旨規定している。平成14年6月時点での,勤続30年3か月の退
職者の給付率は,退職年金規約添付の別表2で16.28%,別表3,5で各16.32%であった。(乙36,3
7)
(イ) 退職年金規約15条によれば,①被告は年金の給付を受けるべき者が年金の一時払を希望する場合は,年金に
かえて一時金を支給することができること,②一時払金の給付額は,年金月額に保証期間の残余期間に見合う規約添付
別表7に定める年金現価率を乗じた額とする旨規定している。そして,退職年金規約9条2項によれば,退職年金の給
付期間は全期間保証付10年有期と規定しているところ,規約添付別表7によれば,平成14年6月時点での10年の
年金現価率は92.70960と規定している。(乙36)
(ウ) 退職年金規約33条によれば,退職年金算出における基準給与とは会社の賃金規則による本給の2分の1と規
定しており,原告の平成14年6月の基準給与は17万2250円(34万4500円÷2=17万2250円)であ
った(甲1,11,12,乙36)。
(エ) 以上(ア)ないし(ウ)によれば,原告が平成14年6月10日に被告を退職したとすると(本件懲戒解雇さ
れることなく),原告の受領すべき中途退職年金一時払金は,次のとおり781万2083円となる。
a 中途退職年金の給付月額(退職年金規約13条2項)
i 別表2につき
17万2250円×0.1628=2万8042円
ⅱ 別表3につき
17万2250円×0.1632=2万8111円
ⅲ 別表5につき
17万2250円×0.1632=2万8111円
b 一時払による場合の給付額(退職年金規約15条2項)
i 別表2につき
2万8042円×92.70960=259万9763円
ⅱ 別表3につき
2万8111円×92.70960=260万6160円
ⅲ 別表5につき
2万8111円×92.70960=260万6160円
c 一時払による場合の給付合計額
781万2083円(259万9763円+260万6160円+260万6160円=781万2083円)
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ウ 退職金の規定,金額
(ア) 退職金支給規程4条によれば,被告は退職する従業員に対し基本退職手当を支給すること,基本退職手当は退
職時の本給の2分の1に勤続年数を乗じた金額とする旨規定している(甲2)。
(イ) 退職金支給規程5条によれば,10年以上勤続の退職者には,基本退職手当と同額の特別加給金を支払う旨規
定している(甲2,以下,中途退職年金一時払金,基本退職手当,特別加給金を併せて「本件退職金」という)。
(ウ) 退職金支給規程14条によれば,①退職年金規約により退職年金の給付を受ける者については,その給付額(
年金の場合は年金現価相当額)を本規程により計算される退職金総額より控除して支給すること,②ただし,退職年金
規約から支給される規約添付の別表1及び別表2に基づく給付についてはこの限りではない旨規定している(甲2)。
(エ) 前記イ及びウの(ア)ないし(ウ)によれば,原告が平成14年6月10日に被告を退職したとすると(本件
懲戒解雇されることなく),原告の受領すべき基本退職手当及び特別加給金の合計額は,次のとおり520万8806
円となる。
a 基本退職手当(退職金支給規程4条)
34万4500円×0.5×30年3か月(30.25)=521万0563円
b 特別加給金(退職金支給規程5条)
34万4500円×0.5×30年3か月(30.25)=521万0563円
c 控除,合計額(退職金支給規程14条)
521万0563円×2-260万6160円×2=520万8806円
(5) 請求
 原告は,平成14年6月17日,被告に対し,退職に伴う本件退職金の支払を請求した(甲9の1及び2)。
2 争点
(1) 争点1 本件懲戒解雇は有効か(本件退職金支払請求権の有無一本訴請求の抗弁)。
【被告の主張】
ア 原告は,遅くとも平成11年以降,被告東京本社営業1部営業3課営業課長の職にあった者であるが,別紙「営業
一部営業三課客先別未請求及び回収不能額内訳表」(以下「別表」という)記載のとおり,同表「客先」欄記載の顧客
18社が被告に発注した工事(その明細は同表付属資料記載のとおり)につき,同表「請求金額」欄記載の2134万
1500円の請負代金請求を怠り,その結果,被告は,同表「回収金額」欄記載の1320万1825円しか回収でき
なかったことにより,同表「回収不能金」欄記載のとおり813万9675円の損害を被った。
イ 被告が前記アのような損害を被ったのは,原告がその担当する顧客先18社に対し,請求書の提出を怠ったことが
原因である。もとより,被告は,原告担当案件の請負代金回収率が極端に悪かったことから,原告に対し,再三にわた
り請負代金の回収を急ぐように督促し続けていた。これに対し,原告は,その都度,現在交渉中であるとか,平成○○
年××月△△日までには入金予定であるとか虚偽の弁明を続けていた。
ウ 前記ア,イの原告の行為は,本件就業規則94条2号に規定する「再三注意したにも拘わらず業務に対する熱意誠
意がなく怠慢な者」に該当するので,被告は,平成14年6月6日,原告を懲戒解雇に処した。
エ 本件懲戒解雇処分が懲戒権の濫用であるとの原告の主張は争う。
【原告の主張】
ア 被告の主張のうち,被告が原告を懲戒解雇するとの意思表示をしたことは認めるが,その余の事実は否認する。
イ 被告は,原告に著しい職務懈怠があったことをもって懲戒解雇事由とするが,原告にはそのような著しい怠業はな
かった。原告は,一人の部下もいない被告東京本社営業1部営業3課の課長として,契約の受注活動,新規及び修理費
用の見積,それらの価格交渉,設備仕様の決定をして設計又は施工を担当する部署につなぎ,更に工事完了書が出てき
た後に再度の価格交渉,代金の請求及び回収を行うという過重な業務を単独で行ってきた。ことに毎年3月期には,被
告自身の決算期と顧客である官公庁等の決算期が集中することもあり,原告は一時期に大量の事務処理を余儀なくされ
る。こうした中で,原告が時機を失したり失念したりして顧客に対する請求漏れを生じさせたことは事実であるが,そ
れは業務上のミスではあっても,決して被告が主張するような懲戒解雇処分の対象となるような職務懈怠や怠業には当
たらない。
ウ 原告は,本件懲戒解雇を受けるまで被告から何らの懲戒処分を受けたことがないこと,原告は被告から被告の主張
する顧客に対する請求及び集金漏れが懲戒解雇事由となる旨の警告を受けたことがないこと,被告は原告をリストラし
その退職金によって未収金損失を填補することを企図していたこと等の事実に照らすと,本件懲戒解雇処分は懲戒権の
濫用というべきである。
(2) 争点2 被告は原告に対し回収不能となった債権について損害賠償請求をすることができるか(反訴請求原
因)。
【被告の主張】
ア 争点1についての【被告の主張】ア記載のとおり,被告は,別表記載のとおり813万9675円の債権が回収不
能になり,同額の損害を被った。
イ 原告は被告の従業員として,業務遂行の必要から被告が原告に発する指示・命令に従う義務がある。本件に即して
いうならば,原告は被告が予め示した手順(工事が完了したら,速やかに,被告に対しては受注伝票を作成して売上げ
を計上しつつ,顧客に対しては請求書を発行して請負工事代金の請求を行うこと)に従って,顧客に対し,請負工事代
金の請求を行う義務を負っている。しかるに,原告は,かかる義務に違反して,顧客に対し,請負工事代金の請求手続
を怠った。
ウ 前記アの債権回収不能の事態は,原告の前記イの債務不履行により発生したものであるから,原告はこれを賠償す
る義務を負っている。
【原告の主張】
ア 被告の主張アは争う。債権回収が不能になったのは,被告が顧客に対し大幅な値引きをしたからである。被告は,
原告が退職した後,原告に対し,値引き分を損失として損害賠償請求する方針を固めたことにより,初めて顧客に対し
このような大幅な値引きをしたのである。
イ 被告の主張イは争う。
 原告には被告の主張するような職務懈怠はない。原告は,被告に対し,雇用契約に基づき,顧客に対する請負工事代
金を完全に回収する義務までは負っていない。顧客からの債権回収が難行したのは,多くの場合,工事完了後も顧客が
値引きを求め,原告が独断でそれに応じる権限がなく,上司であるP1取締役部長(以下「P1部長」という)に相談
すると,値引きは認めない,どうしても顧客が支払わないのであれば値引分は自分で負担しろ等いわれたからである。
被告が今回顧客に対して行った大幅な値引きを原告に認めていれば,入金の遅滞など生じていなかった。
ウ 被告の主張ウは争う。
(3) 争点3 原告は被告に対し退職を余儀なくされたこと等により精神的損害を被ったとして300万円の慰謝料
請求をすることができるか(本訴請求原因)。
【原告の主張】
 原告は,被告によるいわれのない本件懲戒解雇処分,被告自身の未収売上債権を一従業員に過ぎない原告に肩代わり
させようとする被告の態度,原告がストレスによる冠状動脈不全狭心症(冠攣縮性狭心症)を発症するほどの過重労働
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を課し,原告の生命すら危うくさせ,それにもかかわらず原告が出社すると偽病を疑い,まだ病気が完治したわけでも
ない原告をいたわるでもなく,再び過重勤務を強いた被告の対応等により,原告は多大な精神的損害を被った。原告が
被った精神的損害の額は300万円を下るものではあり得ない。
【被告の主張】
ア 原告の主張は争う。
イ 本件懲戒解雇処分は相当であり,また,被告は原告に対し過重な労働を課していないし,原告も過重な労務に服し
ていない。原告は,冠攣縮性狭心症には罹患していないか,罹患していたとしても,およそ,会社を休まなければなら
ないほどのものではなく,ましてや,会社を退職せざるを得ないほどの重篤なものではなかった。
(4) 争点4 従業員の営業活動経費に関し,原告は被告に対し未精算金を請求することができるか,逆に,被告は
原告に対し,仮払金の返還を請求することができるか(本訴請求原因,反訴請求原因)。
【原告の主張】
ア 原告は,被告から,平成13年度における営業活動経費として57万5900円の仮払を受けた。
イ しかし,原告が,平成14年5月末日(退職)までの間に実際に費やした営業活動経費は60万5425円であっ
た。したがって,原告は,被告に対し,被告の営業のために立て替えたまま精算を受けていない未精算金2万9525
円(60万5425円-57万5900円=2万9525円)の支払請求権を有している。なお,原告は,病気のた
め,平成14年3月末日までに同13年度の営業活動経費の仮払金の精算をすることができず,同年5月に出社した
際,その精算を申し出たが,被告は,申告期限を経過していることを理由に,精算を拒否した。原告の病気欠勤を考慮
すると,被告は,平成14年5月の時点で,原告の同13年度の営業活動経費の仮払金の精算に応じる義務を負ってい
た。
ウ 被告の主張イ,ウは認める。
【被告の主張】
ア 原告の主張のうち,アは認めるが,イは否認する。
イ 被告においては,従業員の営業活動経費は,各年度ごとに予め一定額を各従業員に仮払しておき,各従業員は後に
実際にかかった経費につき領収証を添えて当該年度内に精算する取扱いになっている。従業員が当該年度内に精算を行
わない場合,実際には経費がかからなかったことになるため,当該従業員は既受領の仮払金を被告に返還しなければな
らない。なお,被告は,その場合,会計上は短期貸付金として処理している。
ウ 被告は,原告に対し,営業活動経費として,平成12年度(同12年4月1日から同13年3月31日まで)は5
6万5640円を,同13年度(同13年4月1日から同14年3月31日まで)は57万5900円をそれぞれ仮払
したが,原告は,いずれも当該年度内に精算をしなかった。もっとも,原告は,その後,被告に対し,平成12年度分
56万5640円の内,32万5000円を返還している。
エ したがって,被告は,原告に対し,平成12年度及び同13年度の営業活動経費の仮払金81万6540円(56
万5640円+57万5900円-32万5000円=81万6540円)の返還を求める。
(5) 争点5 原告は被告に対し平成14年度夏季賞与の支払を請求することができるか(本訴請求原因)。
【原告の主張】
ア 被告は,毎年,従業員に対し,前年11月から当年4月までの査定期間の稼働状況に応じた夏季賞与を6月に支給
していた。
イ 原告は,平成13年12月には,被告から48万円の賞与の支給を受けた。原告は,被告において,平成13年1
1月から同14年4月まで稼働していたが,同期間中の原告の成約実績等に鑑みれば,同14年6月にも同13年12
月の支給額と同額かそれ以上の賞与が支給されるはずであった。
ウ したがって,原告は,被告に対し,平成14年度夏季賞与として,少なくとも48万円の支払請求権を有してい
る。
【被告の主張】
ア 原告の主張アのうち,被告の夏季賞与の支給時期が6月であることは否認し,その余は認める。夏季賞与の支給時
期は毎年7月である。
イ 原告の主張イのうち,原告が平成13年12月に被告から48万円の賞与の支給を受けたこと,同人が同年11月
から同14年4月までの間稼働していたことは認めるが,その余は否認する。
ウ 原告は,平成14年6月6日をもって被告から本件懲戒解雇されており,同年度夏季に支給される賞与の受給権を
有していない。
(6) 争点6 原告は被告に対し平成13年度の給与減額分の支払を請求することができるか(本訴請求原因)。
【原告の主張】
ア 被告は,平成11年4月以降,管理職従業員の給与を一律10%カットし,また,同12年4月以降は7%カット
しているが,この月々の給与のカット分は翌年8月に各従業員に対してまとめて支給するのが慣例となっていた。
イ 原告の平成13年の本給は月額金34万4500円であったが,前記アのカット率に従って月々の支給額は32万
0400円であった。この結果,平成13年度1年分である28万9200円{(34万4500円-32万0400
円)×12=28万9200円}が未払のままである。
ウ よって,原告は,被告に対し,給与減額分28万9200円の支払請求権を有している。
【被告の主張】
 被告が,過去に,管理職従業員の給与の一部をカットしたこと,カットしつつもその分を翌年増額支給したことがあ
ることは認めるが,被告にそのような慣例があるわけではない。
 なお,平成13年度の給与のカット分を翌14年8月に支給したということも事実としてない。
第3 争点に対する判断
1 争点1ないし3について
 争点1ないし3(本件懲戒解雇処分の有効性の有無,被告の原告に対する損害賠償請求の成否,原告の被告に対する
慰謝料請求の成否)は,相互に関連しており,重複する認定事実も多いので,一括して検討することにする。
(1) 認定事実
 前記争いのない事実等,証拠(甲3の1ないし7,同4,5,7,8,13,17,18,乙3,4の1及び2の各
1,2,同5の1,同5の2及び3の各1,2,同6の1及び2の各1,2,同7の1及び2の各1,2,同8,9の
1及び2,同13の3及び4,同14ないし26,32の1及び2,同32の3の2,同33,35,証人P1,原告
本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(なお,認定に供した主要な証拠等は各項の末尾に掲記し
た)。
ア 被告の組織,原告の職務内容
(ア) 被告は,船舶及び陸上の冷凍設備,空調設備を設計,施工している資本金1億円の株式会社であり,従業員数
は約230名である。被告には東京本社(現在は東京事務所)があり,そこでは約40名が働き,全体をP2専務が統
括し,取締役としてP1部長が営業1部を,P3部長が営業2部を担当していた。東京本社営業1部は営業1ないし4
課,営業サービス課から構成されており,P1部長は,平成11年10月ころ東京本社営業1部長に就任した。(乙3
5,証人P1【1ないし3頁,60頁】,弁論の全趣旨)
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(イ) 原告は,昭和47年3月27日,被告に入社し,遅くとも,P1部長が東京本社営業1部長に就任する前(遅
くとも平成11年10月前)から,営業1部営業3課長の地位にあった。原告の下に部下はおらず,原告は一人で,営
業職として,請負契約の受注活動,新規及び修理費用の見積,それらの価格交渉,設備仕様の決定をして設計又は施工
を担当する部署につなぎ,更に工事完了書が出てきた後に顧客との価格交渉,代金の請求及び回収を行うという業務に
従事していた。(乙35,証人P1【7ないし11頁,30,31頁】,原告本人【2頁】)
イ 被告における受注から代金回収までの仕事の流れ
(ア) 被告における受注から代金回収に至るまでの一般的な仕事の流れは,以下のとおりとなっている(乙35,証
人P1【7ないし11頁】,弁論の全趣旨)。
① 被告営業担当者の受注活動
② 顧客において被告営業担当者に注文・「注文仕様書」提出
③ 被告営業担当者において「見積原稿」作成,被告に提出
④ 被告において「見積原稿」承認
⑤ 被告営業担当者において「見積書」作成,顧客に提出
⑥ 顧客と被告との間において請負契約締結
⑦ 被告において工事の施工
⑧ 工事終了後,被告の施工管理課で工事完了書を作成し,これを被告営業担当者に交付
⑨ 被告営業担当者において「請求書」及び「受注伝票」を作成し,顧客に対し「請求書」を提出し,被告に対し「受
注伝票」を提出
⑩ 被告において売上計上
⑪ 被告営業担当者は顧客から請負代金を回収
(イ) 原告は,前記仕事のうち,①,②,③,⑤,⑥,⑨,⑪を担当していた(乙35,証人P1【7ないし11
頁,30頁】,弁論の全趣旨)。
ウ 請負代金回収作業の遅滞
(ア) 被告では,各部署ごとの月次の「営業成績表」を作成し,営業担当者の営業成績の管理を行うとともに,各部
署の担当者にもこれを交付し,かつ,必要な指示を与えることによって,請負代金回収の促進を図ってきた。特に,被
告東京本社営業1部においては,従来からの取扱いとして,月次の「営業成績表」の中で工事完了から1年以上未入金
となっている案件及び同6か月以上未入金となっている案件をマーキングした上,そのマーキングした「営業成績表」
を各部署の担当者に交付することにより,請負代金回収に向けた更なる奮起を促してきた。(乙14ないし26,3
5,証人P1【11,23頁】)
(イ) 原告の平成13年1月分以降の「営業成績表」は,以下のとおりであり,他の担当者に比べ,請負代金の回収
率が悪く,長期未入金案件の多さが目立っていた(乙14ないし26,弁論の全趣旨)。
a 平成13年1月分の「営業成績表」は,同年2月27日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件では,未
入金案件が27件,そのうち工事完了後1年以上未入金案件が2件,6か月以上未入金案件が17件にのぼった。(乙
14)
b 平成13年2月分の「営業成績表」は,同年3月23日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件では,未
入金案件が23件,そのうち工事完了後1年以上未入金案件が2件,6か月以上未入金案件が18件にのぼった。(乙
15)
c 平成13年3月分の「営業成績表」は,同年5月11日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件では,未
入金案件が125件と急増し,そのうち同年3月に工事完了とされている案件が100件にのぼった。前記イの手続の
流れによれば,被告が売上げに計上するためには原告から被告業務部に対し「受注伝票」を交付する取扱いであった
が,メモの提出で済ました(業務部も了解)。100件もの案件が平成13年3月に一度に工事が完成することはない
ことから,P2専務は,原告に対し,今後,このような取扱いをしないように注意をした。(乙16,証人P1【1
2,13,16,37頁】,弁論の全趣旨)
d 平成13年4月分の「営業成績表」は,同年6月7日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件では,未入
金案件が124件,そのうち工事完了後1年以上未入金案件が5件,6か月以上未入金案件が15件にのぼった。(乙
17)
e 平成13年5月分の「営業成績表」は,同年6月25日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件では,工
事完了後2年以上未入金案件が2件,1年以上未入金案件が5件,6か月以上未入金案件が9件にのぼった。(乙1
8)
f 平成13年6月分の「営業成績表」は,同年7月30日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件では,工
事完了後2年以上未入金案件が2件,1年以上未入金案件が7件,6か月以上未入金案件が5件にのぼった。(乙1
9)
g 平成13年7月分の「営業成績表」は,同年8月23日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件では,工
事完了後2年以上未入金案件が2件,1年以上未入金案件が8件,6か月以上未入金案件が3件にのぼった。(乙2
0)
h 平成13年8月分の「営業成績表」は,同年9月21日に出来上がったが,同年7月分とほぼ同様の状況であっ
た。(乙21)
ⅰ 平成13年9月分の「営業成績表」は,同年10月18日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件では,
未入金案件が100件,そのうち工事完了後2年以上未入金案件が1件,1年以上未入金案件が8件,6か月以上未入
金案件が69件にのぼった。6か月以上未入金の案件は,平成13年3月に工事完了として計上した案件100件のう
ち回収ができていない案件であり,約7割も回収できていないというのはかなり異常な未回収率の数値であった。(乙
22,弁論の全趣旨)
j 平成13年10月分の「営業成績表」は,同年11月26日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件で
は,未入金案件が98件,そのうち工事完了後2年以上未入金案件が1件,1年以上未入金案件が11件,6か月以上
未入金案件が66件にのぼった。(乙23)
k 平成13年11月分の「営業成績表」は,同14年1月8日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件で
は,未入金案件が97件,そのうち工事完了後2年以上未入金案件が1件,1年以上未入金案件が11件,6か月以上
未入金案件が67件にのぼった。(乙24)
l 平成13年12月分の「営業成績表」は,同14年1月25日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件で
は,未入金案件が98件,そのうち工事完了後2年以上未入金案件が1件,1年以上未入金案件が11件,6か月以上
未入金案件が72件にのぼった。(乙25)
m 平成14年1月分の「営業成績表」は,同年2月25日に出来上がった。これによれば,原告の担当案件では,未
入金案件が96件,そのうち工事完了後2年以上未入金案件が1件,1年以上未入金案件が11件,6か月以上未入金
案件が81件にのぼった。(乙26)
エ 被告の対応等
(ア) 被告では過去にも営業職員が顧客に対し請求書を提出するのを失念し,顧客からの債権回収が不能になったと
ページ(4)
して従業員を懲戒解雇したことがあった。すなわち,営業経験約20年の被告従業員であったP4は,東京本社営業1
部営業1課,被告α支店に在職中,顧客に対し請求書を交付していなかったことから顧客先からの債権回収不能になっ
たとして,平成11年5月ころ,被告から懲戒解雇の処分を受けた。(甲13,弁論の全趣旨)
(イ) 被告では,前記(ア)の事件もあってか,平成13年当時は「営業成績表」で各従業員の請負代金の回収状況
を管理していた。前記ウでみてきたとおり,原告の請負代金回収状況は悪かったことから,原告の上司であるP1部長
は,原告に対し,長期未回収案件の回収を督促し,回収が遅れている原因と今後の見通しを聞いた。これに対し,原告
は,顧客先との価格交渉中である等,いろいろ弁明した。これに対し,P1部長は,平成13年12月ころまでは,原
告に対し,それ以上の指導等は行わず,長期未回収案件については,回収できないのであれば,自腹を切るように述べ
るなどしたが,原告はこれには従わなかった。(乙14ないし26,35,証人P1【23,33,34,56頁】,
原告本人【9,10頁】,弁論の全趣旨)
(ウ) 原告が担当していた東京都観光汽船株式会社(以下「観光汽船」という)から,平成13年12月21日こ
ろ,被告に対し,同年9月以降の請求書が出ていないので,年内に出してほしいとの電話連絡があり,少なくとも,被
告の取締役であるP3部長はこのことを知らされている。また,原告が担当していた航海訓練所からも,平成13年1
2月26日,被告に対し,同年9月の修理代金の請求がないので,至急請求書を出してほしいとの電話連絡があり,P
1部長はこの事実を知っていた。したがって,被告では,少なくとも,平成13年12月末ころには,原告が担当して
いる顧客先に対し,請求書の提出を怠り,そのことが債権回収の遅れになっているのではないかとの認識を有していた
か,認識することができる状況にあった。しかるに,被告のP1部長は,原告に対し,顧客先への請求書の作成交付,
債権回収について特段の指示を出した形跡は認められない。(乙13の3及び4,証人P1【57,58頁】,弁論の
全趣旨)
(エ) 前記ウ(イ)1のとおり,平成14年1月25日に同13年12月分の営業成績表が出来上がったが,これを
みたP1部長は,一向に債権回収の実の上がらない原告の成績をみて,原告に対し,各顧客ごとの未回収理由と今後の
見通しを問い質したが,原告は現在価格交渉中であると弁明した。しかし,P1部長は,原告の弁明を信じることがで
きず,とりあえず,株式会社アイ・エス・ビー(以下「ISB」という)に出向くので,同社に対する請求書を提出す
るよう命じたが,原告はこれを提出することができず,P1部長は,そのころ,原告が,ISBに対し,請求書を作成
交付していないことを知った。(乙25,証人P1【21頁】)
(オ) 前記ウ(イ)mのとおり,平成14年2月25日に同年1月分の営業成績表が出来上がったが,依然として債
権回収の実の上がらない原告の成績をみたP1部長は,同人において,原告の顧客先を訪問するので,顧客先に対する
請求書等を提出するように指示したが,原告はこれを提出することができなかった。そこで,P1部長は,工事番号帳
だけをコピーし,平成14年3月5日,原告の顧客先である小湊造船株式会社,ISBに調査,確認に出向いた。P1
部長は,前記両社の担当者から,両社は原告から請求書の提出を受けていないといわれた。(乙26,証人P1【1
6,22頁】)
(カ) 原告が平成14年3月11日から出社しなくなった(その原因等については後述する)ので,被告では,従業
員10名を動員して調査したところ,原告は,別表記載のとおり,その担当する顧客先18社に対し,153件,金額
にして2134万1500円について,被告に対しては売上げを計上しながら,顧客先には請求書を提出していないこ
とが判明した(乙3,33,35,証人P1【14ないし18頁,29,40頁】,弁論の全趣旨)。
オ 債権回収が遅れたことについての原告側の事情
(ア) 原告の被告での仕事内容は,前記アのとおり,請負代金の回収事務だけではなく,請負契約の受注活動,見
積,価格交渉等を一人でこなさなければならなかった。殊に,工事完了後,顧客先との価格交渉においては,殆どの顧
客先から,契約価格の値下げが持ち出され,代金回収は一筋縄でいくものではなかった。また,毎年3月期は,被告自
身の決算期と顧客先との決算期が重なることから,原告は一時的に大量な事務を一人でこなさなくてはならなかった。
(証人P1【36,37頁】,原告本人【8頁】,弁論の全趣旨)
(イ) また,原告は,平成13年ころには,P1部長から,自分の担当業務以外にも,P1部長の担当である三井造
船スーパーテクノライナー(以下「三井スパーテクノ」という)等の案件や,P5課長の担当であった日立造船(沖縄
漁取,保安庁大型高速巡視艇,保安庁小型高速巡視船,高知県漁取)の4案件も担当するように命じられた。三井スー
パーテクノについては,平成13年秋ころ,これまでのモデルが変更になり,再度資料を作成しなければならず,原告
の仕事量は急激に増加した。原告は,三井造船からの要請で,三井スーパーテクノの重量表,見積書,見積原稿,ダク
ト系統図,ダクト換算図,給排気ダクト図,温冷水の配管系統図等を作成した。設計図等は本来原告の業務ではなく,
被告の設計部門の仕事であったが,原告が作成を依頼しても応じてもらえなかったことから,原告において期日に間に
合うよう作成した。(甲18,証人P1【26,31,32頁】,原告本人【2,3,27,28頁】)
(ウ) 原告は,以上のような仕事をこなすため,午後11時ころまでの残業や,休日出勤などした。原告は,P1部
長に,しばしば仕事が忙しい旨述べたが,同人は,何らの対策も講じなかった。原告は,このような仕事をするなか
で,顧客先に対する請求書提出の時機を失したり,失念したりし,これが,前記エの顧客先への請求書未提出となっ
た。(甲18,証人P1【25,33頁】,原告本人【4,16,17,29頁】)
(エ) 原告は,前記のような仕事をしているうち,平成13年11月ころ,胸部疼痛及び喉の詰まり等の体調不良を
自覚するようになった。また,原告は,平成14年に入り,P1部長から顧客先の請求書等の提出を求められ,これを
提出することができないこと及び決算期の繁忙等も重なり,胸部疼痛により,同年3月9日,原告宅の近くにある,β
医院を訪れ診察を受けたが,原因不明であり,大病院の診察を受けるよう勧められた。(甲18,原告本人【1,5
頁】,弁論の全趣旨)
(オ) 原告は,週明けの平成14年3月11日,電話で有給休暇を取りたい旨申し入れたところ,P1部長からは出
社するようにいわれた。しかし,原告は,症状が思わしくないため,そのまま欠勤した。原告は,症状が思わしくない
ため翌12日も休み,13日に横浜南共済病院を訪れ診察を受けたところ,仕事上のストレスによる冠状動脈不全狭心
症(冠攣縮性狭心症)に罹患しており,同年4月22日まで自宅療養を要するとの診断が下された。
 原告は,上記診断に従って自宅療養のため有給休暇をとったが,平成14年3月30日,重篤な狭心症の発作に見舞
われ,緊急入院の上,同年4月2日まで集中治療室で治療を受けた。原告は,平成14年4月3日に一応退院したもの
の,右上動脈部痙攣・鼻血出血等の症状はなお続いていたため自宅療養を続け,症状がやや軽快した同年5月13日か
ら被告に出社した。(甲3の1ないし7,同4,17,18,乙9の2,同32の2,同32の3の2,証人P1【1
4頁】,原告本人【5頁,10ないし13頁】)
カ 原告欠勤中の被告の対応,債権回収作業等
(ア) 被告では,原告が平成14年3月11日から病気で出社しなかったため,従業員10名が手分けして原告の机
にあった書類等を整理し,原告担当の顧客先に対する請負代金回収作業にとりかかった。その結果,前記エ(カ)のと
おり,原告は,別表記載のとおり,顧客先18社に対し,153件,金額にして2134万1500円について,被告
に対しては売上げを計上しながら,顧客先には請求書を提出していないことが判明した。(乙3,8,33,証人P1
【18頁】)
(イ) P1部長らは,作成した請求書を持参して,原告の顧客先を回り,債権の回収に当たったが,支払に応じてく
れる会社もあれば,支払に応じてくれない会社もあった。
 大口の顧客先をみてみると,観光汽船に対する平成12年度の請求書未提出は24案件310万0125円,同13
ページ(5)
年度のそれは11案件330万8550円であったが,観光汽船の担当者は,同12年度の請求分についてはこんな古
いものは支払えないとの態度をとり,同13年度の請求分については約1割の値引きを要求し,結局,同12年度分は
約3分の2を減額した100万円,同13年度分は約1割を減額した300万円を支払うことで合意した。なお,被告
は,法的には,減額する必要はなかったが,請求書を提出していなかったこと,施工後の価格交渉で1割の範囲での値
引きはこれまで許容していたこと,今後の取引関係を考慮して,大幅な値引に応じた。
 ISBに対する平成12年度の請求書未提出は14案件296万3100円,同13年度のそれは16案件197万
5050円であったが,ISBの担当者は,同社は会社更生手続中の会社であり,平成12年度分について支払に応じ
るためには修正申告が必要であるところ決算終了後の修正は困難であること,株主への説明も必要であり基本的には支
払に応じられないが,同13年度分は決算が同年6月なので支払を検討するとの態度を示した。被告は,法的には減額
する必要がなかったが,ISBが会社更生手続中の会社であること,被告にも請求書を交付をしていなかった手続ミス
があることから,平成12年度分は約3分の2を減額した100万円の支払で合意をした。また,ISBは,平成13
年度分については,工事契約の確認がとれるものが約161万であるところ,2割の値引きを要求し,被告はこれを受
け入れ,130万円を支払うことで合意した。
 株式会社ポートサービス(以下「ポートサービス」という)に対する平成12年3月以前の請求書未提出は1案件1
万5750円,同12年度のそれは19案件198万2400円,同13年度のそれは13案件156万4600円で
あったが,ポートサービスの担当者は,同12年度の請求分は決算が終了していたため同13年度分として138万8
100円を支払い,同13年度分の156万4600円は満額に近い150万3700円を同14年度分として支払う
旨提示し,被告もこれに応じた。
 また,被告は,平成12年3月以前の請求書未提出分である,ポートサービスに対する1案件1万5750円,横浜
ヨット株式会社に対する2案件15万7500円,墨田川造船株式会社に対する1案件68万4750円,東京シップ
サービス株式会社に対する4案件66万1500円,東京汽船株式会社に対する1案件2万1000円に対する請求は
断念した。(乙3,4の1及び2の各1,2,同5の1,同5の2及び3の各1,2,同6の1及び2の各1,2,同
7の1及び2の各1,2,同8,35,証人P1【18ないし20頁,43,45,46頁】,弁論の全趣旨)
(ウ) 以上の債権回収の結果,原告が担当する顧客先に請求書を提出していなかったのは,別表記載のとおり,18
社,153案件,2134万1500円であったが,被告の前記のとおりの値引交渉等の結果,平成14年4月末日こ
ろには,10社に対する813万9675円が回収することができないことが確定した(乙3,4の1及び2の各1,
2,同5の1,同5の2及び3の各1,2,同6の1及び2の各1,2,同7の1及び2の各1,2,同8,弁論の全
趣旨)。
(エ) P1部長は,平成14年3月26日,出社した原告に対し,退職金で原告が請求書を提出していないために債
権回収が不能になった債権を弁済するようにいった。これに対し,原告は,P1部長の意に添うことはできないと答え
た。そして,原告は,平成14年4月9付の書面で,P1部長に対し,診断書を添付のうえ,①病気で被告に迷惑をか
けたが,退職する意思はなく,自分で債権を回収するつもりであること,②退職金で債権回収不能額を相殺することに
は応じられないこと,③平成14年4月11日まで年次有給休暇を取得したいこと,翌12日に出社予定であることな
どを通知した。しかし,原告は,平成14年4月23日になっても症状が軽快しなかったため,会社を休み続けた。P
1部長は,同人が原告に対し顧客先の請求書を提出するよう命じた直後から同人が出社しなくなったことから,原告が
真実病気に罹患しているのか否か疑った。そこで,P1部長は,平成14年4月24日,原告の主治医である横浜南共
済病院のP6医師を訪ね,原告の病状を尋ねた。P6医師は,P1部長に対し,①原告は平成14年3月30日から同
年4月3日まで入院したが,狭心症の検査のため入院は必要であったこと,②退院後原告が就労可能性があるか否かの
点については,原告の訴えを信じるのであれば不能であること,ただ発作の客観的な証拠はないが,原告の病態を考え
ると狭心症として対応するのが現実的であると説明した。ちなみに,P6医師は,原告の症状を狭心症の診断は確実と
判定している。(甲5,17,18,乙9の1,同32の1,同35,証人P1【23,24頁,53ないし54頁】

(オ) 原告は,平成14年5月13日から,再び被告に出社した。P2専務及びP1部長は,原告が出社するや,同
人を別室に呼び,同人の顧客に対する請求書未提出により被告は813万9675円の損害を被ったこと,原告はどの
ようか形で責任をとるのか,退職金で相殺するつもりがあるのかなど原告の責任を追及した。被告は,原告をP2専務
付課長(所属は東京業務部扱い)として働くように命じた。しかるに,原告は,翌14日には,元の職場である営業第
一部のP1部長に呼び出され,P2専務も了解済みであるとして,P1部長からまたしても大量の官公庁向け各種船見
積書・仕様書・見積原稿等を短期間に作成するように命じられた。(甲18,原告本人【1,13頁】)
(カ) 原告は,狭心症であるのに過重な業務を命じる被告の態度,退職金で債権回収不能額の相殺を迫る被告の態度
等から,このまま被告に勤務していると自己の健康のみならず生命までもが侵害される虞れがあると考え,また,被告
の原告に対する態度や勤務評価にも信頼をおくことができなくなった。そこで,原告は被告を退社することを決意し,
平成14年5月31日,被告に対し,有給休暇の残余を消化した後の同年6月10日付で退社する旨の退職届を提出し
た(甲7,18,原告本人【1,15頁】,弁論の全趣旨)。
 これに対し,被告は,平成14年6月6日,原告に対し,「在職中,売掛金の早期回収・滞留売掛金の処理促進につ
いて,再三注意を受けていたにもかかわらずに実行せず,多大な損害を会社に与えたと同時に,会社の信用を著しく失
墜した」として本件就業規則94条2号に該当することを理由に,同日をもって懲戒解雇とする旨の意思表示をした(
甲8)。
キ 原告の功績,処分歴,本件での関係者の処分等
(ア) 原告は勤続30年3か月の従業員であったところ,在職中は空調関係の仕事で功績もあり,平成13年から約
1年間で受注高1億円にものぼる成果を上げていた。また,原告は,被告在籍中懲戒処分は一度も受けておらず,今回
も,P1部長から,営業成績表等に基づき請負代金の回収率が悪く,長期未回収案件を解消するようにいわれていたも
のの,解消することができない場合には解雇のおそれがあることまでは告げられていなかった。(証人P1【50,6
0頁】,原告本人【14頁】,弁論の全趣旨)
(イ) 原告が懲戒解雇されることなく被告を退職した場合の本件退職金の額は前記のとおり1302万0889円で
あるところ,原告が原因で債権回収不能になったと主張する被告の損害額は本件退職金の額を下回る813万9675
円である。しかも,被告は,前記債権回収不能が判明した後も原告を懲戒解雇するとの態度をとらず,任意に退職しそ
の退職金で債権回収不能額を弁済するよう要求していた。被告が本件懲戒解雇に及んだのは,原告が退職届けを出した
後になってからである。のみならず,被告の組織からみて,被告に本件債権回収不能の事態が発生したのは,一人原告
のみの責任ではなく,直属の上司であるP1部長,P2専務の監督責任も問われて然るべきであるのに,本件債権回収
不能に関して処分されたのは,原告一人であり,本件懲戒解雇処分直後ころ,P1部長は常務取締役に,P2専務は代
表取締役社長にそれぞれ昇進している。(乙35,証人P1【1,49,50頁】,原告本人【14頁】,弁論の全趣
旨)
(2) 争点1(本件懲戒解雇の有効性)についての当裁判所の判断
ア 被告は,原告がその担当する顧客先18社,153案件,合計2134万1500円について請求書を作成交付す
ることを怠ったため,813万9675円が回収不能になったことを踏まえ,当該事実は「再三注意したにも拘わらず
業務に対する熱意誠意がなく怠慢な者」に当たり,懲戒解雇が相当であると主張する。
ページ(6)
イ 確かに,前記(1)によれば,原告には被告の主張する顧客先への請求書未提出行為が存在する。しかし,前記(
1)で認定した事実によれば,①請求書未提出が発生したのは,原告に対する平成13年秋以降の過重な労働環境にも
一因があること,②債権回収不能額はそのすべてが原告の請求書未提出と相当因果関係があるわけではないこと,すな
わち,債権回収不能額の約1割は価格交渉での通常の値引額と考えられること,被告は法的には顧客先に対し債権回収
不能額と主張する債権について支払を請求することができたのに,今後の取引関係への影響等を考えて値引きに応じた
ことも債権回収不能の一因になっていること,③原告は被告の従業員として30年3か月働き,その間一度も懲戒処分
を受けたことがなく,平成13年から約1年間で1億円もの受注高をあげていること,④原告が退職した場合の本件退
職金額は被告の主張する債権回収不能額を約500万円も上回る額であること,⑤被告では平成11年にも本件と同様
の事件が起きているのに,再発防止に適切な体制をとっているとはいい難いこと,⑥被告の主張する債権回収不能の事
態が発生したのは原告だけの責任ではなく,P1部長,P2専務の責任でもあるのに,これらの上司は何らの処分もな
く,かえって昇進していること等の事実が認められ,これらの事実に照らすと,被告の主張する前記請求書未提出等の
事実をもって,「再三注意したにも拘わらず業務に対する熱意誠意がなく怠慢な者」に当たると評価することは困難で
あり,少なくとも,懲戒解雇権の濫用であるというべきであり,被告の本件懲戒解雇が有効であるとの主張は採用する
ことができない。
ウ 小括
 以上の判断に,争いのない事実等(4)を併せ考慮すると,原告は,被告を退職し,被告に対し,本件退職金とし
て,合計1302万0889円(781万2083円+520万8806円=1302万0889円)の支払を請求す
る権利を有しているというべきである。
 なお,原告は,在職中,被告から年金信託契約変更契約書,退職年金規約(乙36)を示されていなかったことを理
由に,原告の手持資料の給付率を基礎に本件退職金の額を主張するが,独自の主張であり採用することができない。
(3) 争点2(被告から原告に対する損害賠償の成否)についての当裁判所の判断
ア 被告は,原告がその担当する顧客先18社,153案件,合計2134万1500円について請求書を作成交付す
ることを怠ったため,813万9675円が回収不能になったとを踏まえ,当該債権回収不能は,原告が債権回収業務
を怠ったために発生したとして,同額の損害賠償請求をする。
イ 確かに,前記(1)によれば,原告は,顧客先に対する債権回収も業務内容の一つであるところ,長期間にわたっ
てその担当する顧客先18社,153案件,合計2134万1500円について請求書を作成交付することを怠った行
為は,被告に対する債務不履行と評価することができ,当該債務不履行と相当因果関係のある損害のうちある部分(損
害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度で)については,使用者である被告に対し損害賠償義務
を負うと解するのが相当である(同旨 最判昭51.7.8判時827号52頁)。
ウ これを本件についてみるに,前記(1)で認定した事実によれば,①顧客先への請求書未提出が発生したのは,原
告に対する平成13年秋以降の過重な労働環境にも一因があること,②債権回収不能額はそのすべてが原告の担当する
顧客先への請求書未提出と相当因果関係があるわけではないこと,すなわち,債権回収不能額の約1割は価格交渉での
通常の値引額と考えられること,被告は法的には顧客先に対し債権回収不能額と主張する債権について支払を請求する
ことができたのに,今後の取引関係への影響等を考えて値引きに応じたことも債権回収不能の一因となっていること,
③被告では平成11年にも本件と同様の事件が起きているのに,再発防止のために適切な体制をとっているとはいい難
いこと,④被告の主張する債権回収不能の事態が発生したのは原告だけの責任ではなく,上司であるP1部長,P2専
務の監督責任でもあること,殊に,P1部長は,営業成績表等により,原告の長期債権未回収案件が数多く発生してい
るのに,早期に顧客先に照会したり調査をする等の適切な措置を採っていないこと,⑤P1部長は,平成13年12月
末には,原告が担当する顧客先に対し請求書を出しておらず,顧客先から被告に対し請求書未提出について苦情の電話
があったことを知っていたのに,同14年3月になるまで,直接顧客先等への調査をせず,そのため事案解明が遅れ,
損害の拡大に繋がったこと等が認められ,これらの事実に照らすと,被告の主張する損害額のうち,約4分の1である
200万円をもって,原告が被告に対し信義則上賠償しなければならない損害賠償額であると解するのが相当であり,
当該判断を覆すに足りる証拠はない。
エ 以上によれば,被告の原告に対する損害賠償請求は,200万円の支払を求める限度で理由があり,その余は理由
がないというべきである。
(4) 争点3(被告から原告に対する慰謝料請求の成否)についての当裁判所の判断
ア 原告は,被告に対し,退職を余儀なくされたこと等により多大な精神的損害を被ったとして300万円の慰謝料請
求をしている。
イ 原告が被告を退職するに至った経緯,本件懲戒解雇の有効性の有無については,前記(1),(2)で認定したと
おりであり,これらの事実及び弁論の全趣旨によれば,①被告は,懲戒解雇事由が存在しないのに,本件退職金の支払
を免れるため,原告を懲戒解雇に処し,同人はこれにより精神的苦痛を味わったこと,②被告は原告に対し同人の意思
を無視して退職金で債権回収が不能になった債権を弁済(相殺)するよう要求したこと(労働基準法違反),③原告は
狭心症に罹患し,被告も原告の主治医から原告の病態からみて同人に対しては狭心症として対応するのが現実的である
といわれたにもかかわらず,原告が出社するや,従前と同様の大量の官公庁向け各種船見積書・仕様書・見積原稿等を
短期間に作成するよう命じたこと,④その結果,原告は,このまま被告に勤務していると自己の健康のみならず生命ま
でもが侵害される虞れがあると考え,30年以上も勤務した被告を退職すること余儀なくされ多大な精神的損害を被っ
たこと等が認められ,これらの事実に照らすと,被告の原告に対する前記各行為は違法と評価することができ,これを
慰謝するためには,被告に200万円の支払を命じるのが相当であり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
ウ 以上によれば,原告の被告に対する慰謝料請求は200万円の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がな
いというべきである。
2 争点4(営業活動経費の請求の成否)について
(1) 原告は,被告に対し,平成13年度における営業活動経費として2万9525円の未精算金があるとしてその
支払を請求する。他方,被告は,原告に対し,平成12年度の営業活動経費の仮払金が精算されていないとして弁済済
みの一部を控除した24万0640円,同13年度のそれとして57万5900円の返還を請求するので,その成否に
ついて判断する。
(2) 被告における営業活動経費の取扱い
 被告においては,従業員の営業活動経費は,各年度ごとに予め一定額を各従業員に仮払しておき,各従業員は後に実
際にかかった経費につき領収証を添えて当該年度内に精算する取扱いになっている。かかる精算を行わない場合,実際
には経費がかからなかったこととして,当該従業員は既受領の仮払金を返還しなければならないとされている。なお,
その場合,被告は,会計上は短期貸付金として処理していた。(当事者間に争いがない)
(3) 平成12年度の営業活動経費
 被告は,原告に対し,平成12年度の営業活動経費として56万5640円を仮払したこと,原告は同年度内に前記
仮払金の精算をせず,被告に対し仮払金56万5640円の支払義務のあることを認めたこと,原告は被告に対し前記
56万5640円のうち一部である32万5000円を返済していることはいずれも当事者間に争いがない。そうだと
すると,被告は,原告に対し,平成12年度の営業活動経費の仮払金24万0640円(56万5640円-32万5
000円=24万0640円)の返還請求権を有しているということになる。
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(4) 平成13年度の営業活動経費
 被告は,原告に対し,平成13年度の営業活動経費として57万5900円を仮払したが,原告は当該年度内に前記
仮払金の精算をしなかったことは当事者間に争いがない。
 ところで,前記1(1)で認定したとおり,原告は平成13年3月11日以降狭心症により被告に出社することがで
きなったことが認められる。したがって,原告が被告に出社した平成14年5月に,真に営業活動経費として被告から
受領した仮払金を上回る額を支出したことを証する領収書等を提出したならば,原告の請求は認容する余地があるが,
本件全証拠を検討するも,原告は平成13年度に営業活動経費として支出したことを証する領収書等を提出していな
い。
 以上によれば,平成13年度に営業活動経費として支出したことを証するに足りる領収書等のない本件にあっては,
原告の営業活動経費の未精算額の支払請求は理由がなく,逆に,被告の原告に対する仮払金57万5900円の返還請
求は理由があるということになる。
(5) 小括
 以上によれば,原告の被告に対する営業活動経費の未精算額の請求は理由がなく,逆に,被告の原告に対する営業活
動経費の仮払額81万6540円(56万5640円+57万5900円-32万5000円=81万6540円)の
返還請求はすべて理由があるということになる。
3 争点5(平成14年度夏季賞与の支払請求権の成否)について
(1) 原告は,被告に対し,平成14年度夏季の賞与48万円が支払われていないとして,その支払を請求するの
で,その成否について判断する。
(2) 賞与は,一定期間の勤務の全体を評価して毎月1回以上支給する通常の給与に加えて支払われるものであるこ
と,賞与は就業規則によって支払が保障されているものではなく,労使交渉又は使用者の決定によって算定基準・方法
が定まり,算定に必要な成績査定を経て決まるものであること等を考慮すると,賞与請求権は,被告において人事考課
査定をし,個々人の支給額を決定したときに具体的請求権として発生するものであると解するのが相当である。これを
本件についてみるに,本件全証拠を検討するも,原告が被告を退職した日である平成14年6月10日の時点で,被告
において原告の人事査定を終え,その賞与支給額が確定していたと認めるに足りる証拠は存在しない。そうすると,原
告は,平成14年度夏季の賞与について具体的請求権が発生する前に,被告を退職しており,同年度夏季の賞与請求権
を有していない解するのが相当である。
(3) のみならず,証拠(乙31の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 被告では,これまで,賞与支給対象者は,賞与妥結日現在の在籍者としてきた。そして,被告では,例年,夏季賞
与は7月10日前後に支給していた。
イ 被告は,平成14年度夏季賞与については,被告労働組合との交渉が長期化したため,管理職に対して,組合員に
先駆けて平成14年8月8日に同年度夏季賞与を支払った。また,被告は,平成14年10月8日,被告労働組合との
間で,同年度夏季賞与について,組合員に対し組合員平均基準内賃金の0.8か月分を支払うことで妥結し,同月11
日に,組合員に対し,前記基準に従って同年度夏季賞与を支給した。
ウ 被告は組合との間で,平成14年度夏季賞与に関し,支給対象者は妥結日現在の在籍者であるとの協定を締結し
た。また,被告は,管理者についても,支給日現在(平成14年8月8日)の在籍者を支給対象者とした。
エ ところで,原告は,退職日(平成14年6月10日)当時,東京本社営業1部営業3課長という管理職の地位にあ
ったところ,前記ウによれば,平成14年8月8日には被告に在籍しておらず,同年度夏季賞与支給の対象者とはなっ
ていない。
オ 以上によれば,原告は,平成14年度夏季の賞与支給対象者となっておらず,原告は,被告に対し,同年度夏季の
賞与支払請求権を有していないというべきである。
(4) 小括
 以上によれば,いずれの観点からも,原告は被告に対し平成14年度夏季の賞与請求権を有しておらず,この点の原
告の請求は理由がない。
4 争点6(給与カット分の請求の成否)について
(1) 原告は,被告に対し,平成13年度1年間の給与カット分28万9200円の支払を請求するので,その成否
について判断する。
(2) 証拠(甲11,12)及び弁論の全趣旨によれば,原告の平成13年の本給は月額金34万4500円であっ
たが,管理職であったことから,本給の7%をカットされ,同年度1年分の給与カット額を積算すると,カット額の総
額は28万9200円であったことが認められる。
(3) ところで,弁論の全趣旨によれば,被告では,過去においてカットした管理職の給与を,翌年8月に支給した
こともあったが,そのような労働慣行があったとまで認めるに足りる証拠は存在しない。そして,本件全証拠を検討す
るも,被告において,平成14年8月に,カットした管理職の同13年度1年分の本給積算額を支給したと認めるに足
りる証拠はない。
(4) 小括
 以上によれば,原告の被告に対する平成13年度1年分の本給カット分の支払請求は,その余の点を判断するまでも
なく理由がない。
5 遅延損害金等について
(1) 前記争いのない事実等(5)及び前記1によれば,原告は,被告に対し,退職に伴い本件退職金1302万0
889円の支払請求を有しているところ,その支払を平成14年6月17日に請求している。そうだとすると,原告
は,被告に対し,1302万0889円及びこれに対する請求の日の翌日である平成14年6月18日から支払済みま
で商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払請求権を有していることになる。また,前記1によれば,原告
は,被告に対し,不法行為に基づき,慰謝料として200万円及びこれに対する不法行為の後であり請求のあった本訴
状送達の日の翌日である平成14年9月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求権
を有していることになる。
 以上によれば,原告は,被告に対し,1502万0889円及び内金1302万0889円に対する平成14年6月
18日から支払済みまで年6分の割合,内金200万円に対する同年9月8日から支払済みまで年5分の割合による遅
延損害金の支払請求権を有しているが,その余の請求部分は理由がない。
(2) 前記1及び2によれば,被告は,原告に対し,損害賠償請求権及び営業活動経費仮払金返還請求権として合計
281万6540円(200万円+81万6540円=281万6540円)の支払請求権及びこれに対する反訴状送
達の日の翌日である平成14年11月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求権
を有しているが,その余の請求部分は理由がない。
6 結論
 以上によれば,原告の本訴請求のうち,被告に対し,1502万0889円及び内金1302万0889円に対する
平成14年6月18日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金,内金200万円に対する同年9月8日から支
払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるのでこれを認容し,その余の部分はいず
れも理由がないのでこれを棄却することにする。また,被告の反訴請求のうち,原告に対し,281万6540円及び
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これに対する平成14年11月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があ
るのでこれを認容し,その余の部分は理由がないのでこれを棄却することにする。
東京地方裁判所民事第36部
裁判官 難波孝一
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