弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人貞家克己、同仙田富士夫、同岩渕正紀、同村長剛二、同上野至、同末
永進、同大井邦夫、同桜井勇、同荒井正吾、同高島等、同多田博英、同佐藤吉三の
上告理由第一点について
 一般自動車運送事業の免許に付された期限の変更を許すかどうかは、道路運送法
(以下「法」という。)一二〇条二項の趣旨に従い、これを許すことが公衆の利益
に反しないかどうかを基準として審査すべきものであるとした原審の判断は、正当
として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、諭旨は、独自の見解に
立つて原判決を論難するものであつて、採用することができない。
 同第二点について
 一 原審の確定した本件の事実関係は、おおむね次のとおりである。
 1 被上告人は、昭和四一年七月八日、上告人から、一般乗用旅客自動車運送事
業(ただし、一人一車制のいわゆる個人タクシー事業)の免許(以下「本件免許」
という。)を受けた。右免許には、当初、昭和四四年七月一五日までとの期限が付
されていたが、被上告人からの申請に基づき、同月七日、右期限は、昭和四七年七
月一五日までと変更された。
 2 被上告人は、同年六月一九日、上告人に対し、再度、本件免許期限の変更を
申請をしたところ、上告人は、同年七月一四日、被上告人に対し、右期限の変更を
許さない旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。右処分の理由は、要する
に、被上告人は後記(三参照)の罪を犯して刑罰に処せられた者であるから、本件
免許期限の変更を許すことは法六条一項四号、五号所定の免許基準に適合しない、
というのである。
 二 ところで、免許期限の変更の許否が、法一二〇条二項の趣旨に従い、これを
許すことが公衆の利益に反しないかどうかを基準として審査すべきものであること
は、既に説示したとおりであるから、本件免許期限の変更の許否も右の基準に照ら
して審査すべきものであり、上告人が法六条一項を基準としてこれを審査したこと
は、誤りであるといわなければならないが、上告人は、原審において、予備的主張
として、仮に免許期限の変更の許否は、法一二〇条二項の趣旨に従い、これを許す
ことが公衆の利益に反しないかどうかを基準として審査すべきものであるとしても、
被上告人の本件免許期限の変更を許すことは公衆の利益に反し、右基準に適合しな
いから、いずれにしても、本件処分は適法であると主張した。これに対し、原審は、
本件処分は法六条一項を審査基準としてされたものであるから、裁判所としては、
上告人主張のような審査基準の転換を是認して本件処分の適否を判断することは許
されないとして、右予備的主張を主張自体失当として排斥した。
 しかしながら、一般に、取消訴訟においては、別異に解すべき特別の理由のない
限り、行政庁は当該処分の効力を維持するための一切の法律上及び事実上の根拠を
主張することが許されるものと解すべきであるところ、本件においては、右特別の
理由があるものとは認められない。原審は、審査基準の転換が許されない理由とし
て、審査基準を異にする処分は別個の処分と考えられること、及び上告人が行政庁
として依拠していない審査基準によつて裁判所が本件処分の適否を判断することは
司法審査権の及ばない事項について判断することになるおそれがあること、を挙げ
ている。しかし、本件処分は、被上告人からの本件免許期限の変更を求める申請に
対する応答としてされたものであり、しかも、本来、法一二〇条二項の趣旨に従い、
免許期限の変更を許すことが公衆の利益に反しないかどうかを基準としてその許否
を審査すべきところを、誤つて、法六条一項を基準としてこれを審査したものにす
ぎないのであるから、いま、裁判所が、法一二〇条二項の趣旨に従い、免許期限の
変更を許すことが公衆の利益に反しないかどうかを基準として本件処分の適否を判
断したからといつて、これによつて本件処分と別個の新たな処分をしたことになる
とはいえないし、また、司法審査権の限界を逸脱したものであるともいえない。原
審は、また、上告人が依拠していない審査基準によつて裁判所が本件処分の適否を
判断することは、被上告人から本件免許の期限変更についての法律の定める行政手
続の保障をはく奪することになり許されないとするが、法一二〇条二項の趣旨に従
い、公衆の利益に反しないかどうかを基準として免許期限の変更の許否を審査する
場合について、法六条一項を審査基準とする新免許の付与の場合よりも一層丁重な
手続を踏むことが法律上要求されているわけではないから、いま、裁判所が、法一
二〇条二項の趣旨に従い、本件免許期限の変更を許すことが公衆の利益に反しない
かどうかを基準として本件処分の適否を判断したとしても、被上告人から法律の定
める行政手続の保障をはく奪することにはならないものといわなければならない。
それゆえ、原審が上告人の前記予備的主張を主張自体失当として排斥したことは、
法律の解釈適用を誤つたものというべく、右の違法は、判決の結論に影響を及ぼす
ことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
三 そこで、すすんで、右予備的主張の当否について検討するのに、原判決によれ
ば、(1) 被上告人が昭和四六年一二月二二日小樽簡易裁判所において普通乗用自
動車による業務上過失傷害罪により罰金四万円の略式命令を受けたこと、(2) 被
上告人はまた、(イ)売春防止法違反、(ロ)北海道青少年保護育成条例違反及び
(ハ)暴行の各罪を犯し、同年七月三〇日札幌地方裁判所小樽支部において右(イ)
及び(ハ)の罪につき懲役一年、右(ロ)の罪につき罰金二万円の判決を受け、控
訴したが、昭和四七年三月二八日札幌高等裁判所において右(ロ)の罪については
控訴棄却、右(イ)及び(ハ)の罪については原判決を破棄のうえ懲役八月の判決
を受け、更に上告したが、本件処分後の同年九月一九日右上告を取り下げたこと、
(3) 右各罪のうち、(1)の罪はタクシー営業中に犯したものであり、(2)(イ)
の罪は被上告人のタクシー営業車両を利用して犯したものであり、同(ハ)の罪は
第三者の車両内で犯したものであることは、当事者間に争いのない事実であり、ま
た、右(2)(ロ)の罪は、被上告人が、そのタクシー営業終了後その営業車両に被
害者を同乗させてドライブをした後、犯行場所である旅館「P」から約二〇〇メー
トル離れたところに同車を駐車し、他で食事を共にしてから徒歩で右旅館に連れて
行つて犯したものであることは、被上告人の自認するところである。以上の事実に
よれば、被上告人は遵法精神に欠け反社会性の強い罪を犯し懲役刑にも処せられた
者であり、しかも、右犯罪にはいずれも車両が関係し、かつ、そのうちにはタクシ
ー営業中に犯したもの及びその営業車両を利用して犯したものさえ含まれているこ
とが明らかであるから、被上告人は旅客の輸送にあたるいわゆる個人タクシー事業
を経営する者としては著しく不適当であるというべく、被上告人の本件免許期限の
変更を許すことは公衆の利益に反するものといわなければならない。そうすると、
右免許期限の変更を許さないとした本件処分は、結局、正当というべきであるから、
右処分の取消しを求める被上告人の本訴請求を棄却した一審判決はその結論におい
て相当であり、本件控訴はこれを棄却すべきものである。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、九六
条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    高   辻   正   己
            裁判官    服   部   高   顯
            裁判官    環       昌   一

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