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平成26年5月21日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成25年(ワ)第31446号商標権侵害行為差止等請求事件
口頭弁論終結日平成26年3月26日
判決
原告エルメスアンテルナショナル
同訴訟代理人弁護士高松薫
同泉潤子
同石田晃士
被告株式会社DHScorp
主文
1被告は,別紙被告商品目録1ないし4記載の商品を輸入し,譲渡し,
引き渡し,又は譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。
2被告は,原告に対し,235万8400円及びこれに対する平成2
5年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
3原告のその余の請求を棄却する。
4訴訟費用は,これを8分し,その5を被告の,その余を原告の負担
とする。
5この判決は,第1項及び第2項に限り仮に執行することができる。
6原告につき,この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定
める。
事実及び理由
第1請求の趣旨
1主文第1項同旨
2被告は,原告に対し,382万3000円及びこれに対する平成25年12
月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は被告の負担とする。
4仮執行宣言
第2事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,被告が輸入販売する別紙被告商品目録1ない
し4記載の商品(以下,それぞれ「被告商品1」ないし「被告商品4」とい
い,併せて「被告各商品」という。)が,原告の有する商標権を侵害し,原
告の商品等表示として周知ないし著名な別紙原告商品目録記載の商品(以下
「原告商品」という。)の形態と類似し,誤認混同のおそれがあると主張し
て,(1)商標法36条1項ないし不正競争防止法(以下「不競法」という。)
2条1項1号,2号,3条1項に基づき,被告各商品の輸入・譲渡等の差止
め(請求の趣旨第1項),(2)商標法38条2項ないし不競法4条,5条2項
に基づき被告の得た利益に相当する原告の損害金82万3000円,民法7
09条に基づき信用毀損による無形損害200万円及び弁護士費用100万
円の,総合計382万3000円及びこれに対する平成25年12月14日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅
延損害金の支払(請求の趣旨第2項)を求めた事案である。
1前提となる事実等(認定事実の末尾に証拠等を摘示した。)
(1)当事者
原告は,バッグ,高級婦人服,アクセサリー等の製造,販売を業とするフ
ランス国の法人である。〔弁論の全趣旨〕
被告は,衣料品,装身具,履物,靴,アクセサリー,貴金属類,日用雑貨
品,家具,インテリア用品,スポーツ用品の販売及び輸出入業務等を業と
する株式会社であり,インターネットショッピングサイトにおいて商品を
販売している。〔甲1,弁論の全趣旨〕
(2)原告の商標権
原告は,別紙原告商品目録記載の原告商品の形状(以下「原告標章」とい
う。)につき,別紙商標権目録記載の立体商標についての商標権(以下
「原告商標権」といい,その商標を「原告商標」という。)を有している。
〔甲2〕
(3)被告による被告各商品の輸入・販売行為
被告は,被告各商品を輸入し,インターネットショッピングサイトを通じ
て,これを販売した。
被告各商品のそれぞれの形状(以下,併せて「被告標章」という。)に
ついては,サイズを除き,全て同一と認められる。〔甲1,34~36,弁
論の全趣旨〕
(4)仮処分命令の発令
原告は,被告に対し,被告各商品についての輸入,譲渡,引渡し,又は
譲渡若しくは引渡しのための展示等の差止めを求める仮処分命令の申立て
(当庁平成25年(ヨ)第22055号)をし,当庁は,平成25年10月
10日,上記申立てを認容する決定をした。〔甲39〕
(5)本件訴えの提起
原告は,被告に対し,平成25年11月28日付けで,本件訴えを提起し
た。〔当裁判所に顕著〕
2原告の主張する請求原因事実
(1)原告標章についての商標権侵害行為及び不競法2条1項1号,2号該当性
ア原告標章の商品等表示性及び周知著名性
(ア)原告は,1837年ティエリ・エルメスによりフランス共和国(以下
「フランス」という。)にて創業され,バッグ,高級婦人服,アクセサ
リー等で知られる高級ブランドを有するフランス法人である。昭和31
年(1956年)には,モナコ公国の王妃であるグレース・ケリーが愛
用していた原告製のバッグを持った姿が写真雑誌「LIFE」の表紙を
飾ったことなどをきっかけとして,そのバッグが「ケリー・バッグ」と
称されるなどして有名となった。
原告商品は,昭和59年(1984年)に発売され,フランスの女優
であるジェーン・バーキンが愛用したことから,「バーキン」の名称で
世界的に広く知られることとなった。
(イ)原告の製造・販売する商品(以下,原告商品を含めた原告が販売する
商品を総称して「エルメス商品」という場合がある。)は,日本におい
ても戦前から知られていたが,原告が昭和39年(1964年)に訴外
株式会社西武百貨店と提携し,渋谷,池袋を始め,名古屋,大阪,札幌
等,全国に合計15店舗の専門店を出店してからは,その高い品質及び
ファッション性がより広い顧客層に知られることとなった。
特に,昭和58年(1983年)に原告の日本子会社であるエルメス
ジャポン株式会社(以下「エルメスジャポン」という。)が設立された
後は,同社による積極的な販売活動がされたこともあって,エルメス商
品は不動の名声を獲得するに至った。
現在では,原告は,直営店及び特約店を合わせて我が国に計45の店
舗を有する。
(ウ)原告標章は,台形状で脇にまちが入り,蓋部に鍵穴状の切込みがあり,
本体背面部から正面部に延在する一対のベルトを有している点等におい
て独特の特徴を有し,需要者に特別な印象を与える。このため,原告商
品は他の商品と明確に識別され得るものである。
また,原告商品は,そのほとんどが1個100万円を超える高級バッ
グである(甲11,12等)にもかかわらず,「世界中の女性が憧れる
バッグの最高峰」(甲28)として年々売上げを伸ばしている。平成1
0年(1998年)には,その販売個数は年間3000個を超え,以降
さらに売上げを伸ばし,平成15年(2003年)には販売個数が前年
の倍近い年間8000個超となり,その後も現在に至るまで急激に売上
げを伸ばしている。売上高でいえば,平成9年(1997年)には10
億円を突破し,平成19年(2007年)には100億円を超え,平成
21年(2009年)には192億円と,200億円に迫る勢いである
(甲4)。
また,原告は,多数の雑誌を通じて原告商品の販売促進を図っており,
昭和60年(1985年)から平成8年(1996年)までに原告商品
に費やした広告宣伝費は6200万円にも及ぶ。
(エ)原告商品を含むエルメス商品は,現在我が国で極めて高い人気を誇り,
エルメス商品のみを特集した女性誌すら存在するほどであり,その中で
も,原告商品は,上記ケリー・バッグと並んでエルメス商品を代表する
商品である(甲32)。
このため,原告商品は,原告自らによる広告宣伝に加えて,その主な
需要者である女性を購読者層とする女性誌において頻繁に特集されてお
り(甲5~31),その中で,「究極の定番バッグ」(甲11),「最上
のデザイン×最上の素材」(甲11),「名品」(甲14,28,30),
「ベストオブ名品」(甲23)などと称されたうえ,「エルメス」の
「バーキン」として,原告の商品であることが強く印象付けられる記載
がされた上で,その立体的形状がカラー写真で紹介されている。
(オ)このように,原告による長年の販売活動及び広告宣伝活動によって,
原告標章は,著名性を有し,原告の出所標識として独立して自他商品識
別力を獲得しているとして,平成23年9月,商標登録が認められた
(甲33)。
(カ)以上のとおり,原告が原告商品の販売を20年以上にわたり継続し,
かつ,原告商品が強力に広告宣伝されてきた結果,原告標章は,平成9
年(1997年)には,それ自体が原告の商品等表示として,周知の域
を越え,著名性を獲得するに至ったものである。
イ被告各商品の販売行為
被告は,前記1(3)のとおり,被告各商品を輸入し,インターネット
ショッピングサイトを通じて,これを販売した。
ウ原告標章と被告標章の類似性
(ア)被告が使用する被告標章及び被告の商品等表示
被告が被告標章又は被告各商品について使用している商品等表示は,
別紙被告商品目録1ないし4記載のとおりであり,かばんの全体的形状
及びハンドル部分から成る立体的形状と,本体正面及び背面に付された
図形から成る平面標章の結合により構成された結合標章である。
その特徴は,以下のとおりである(被告標章及び被告の商品等表示は
同一の特徴を有するため,以下,併せて「被告標章」という)。
ⅰ全体的形状が,本体正面が底辺がやや長い台形状,本体各側面が縦
長の二等辺三角形状をなす立体的形状であり,
ⅱ本体正面上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,
横方向に略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みを二箇所有する
蓋部が表示され,
ⅲ前記蓋部上に,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面中央
まで延在する左右一対のベルトが表示され,
ⅳ前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中
央にて同時に固定することができる位置に,先端にリング状を形成し
た固定具が表示され,
ⅴ前記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と
前記各ベルトとを同時に固定する左右一対の補助固定具が表示され,
ⅵ本体正面上端及び背面上端に,円弧状をなす一対の実ハンドルが縫
合され,
ⅶ本体正面上部及び背面上部に円弧状をなす一対のハンドルを視認し
得るように,前記正面上端及び背面上端に縫合された実ハンドルまで
延在するハンドルの一部が本体正面及び背面に表示され,かつ,前記
本体正面のハンドルの一部が前記鍵穴状の切込みを通るように表示さ
れている。
(イ)原告標章と被告標章の特徴の同一性
a被告標章は,以下の①ないし⑥の点において,原告標章と同一の特
徴を有する(以下,それぞれ「共通点①」ないし「共通点⑥」とい
う。)。
・全体的形状(輪郭)として,
①本体正面及び背面の形状が底辺がやや長い台形状であり,各側面
が縦長の二等辺三角形状をなす立体的形状である点。
・本体正面及び背面に付された図形(平面標章)として,
②本体正面上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,
横方向に略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みを二箇所有す
る蓋部が表示されている点。
③前記蓋部上に,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面中
央まで延在する左右一対のベルトが表示されている点。
④前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部
中央にて同時に固定することができる位置に,先端にリング状を形
成した固定具が表示されている点。
⑤前記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分
と前記各ベルトとを同時に固定する左右一対の補助固定具が表示さ
れている点。
⑥正面上部及び背面上部に,円弧状をなす一対のハンドルが表示さ
れ(その一部ないし全部が実ハンドル),前記正面側のハンドルは
前記鍵穴状の切込みを通るように表示されている点。
以上によれば,被告標章は,その全体的形状としての立体的形状にお
いて原告標章と同一であるだけでなく(共通点①),平面標章としての
本体正面及び背面に付された図形において原告標章の特徴と同一の特徴
を具備する(共通点②ないし⑥)ものであり,被告標章は原告標章と酷
似する。
bこの点,被告標章は,すべてが立体的形状により構成されているもの
ではなく,共通点②ないし⑥(うち,⑥については,正面上端及び背面
上端に縫合された実ハンドルまで延在するハンドルの一部が表示され,
かつ正面本体のハンドルが前記鍵穴状の切込みを通るように表示されて
いる点)は平面標章上の特徴である。しかしながら,平面標章も,立体
的形状も,共に視覚を通じて認識されるものであり,それにより両者が
類似することがあるのは明らかである。
これらを比較する場合に,立体的形状は,一時に全体の形状を視認す
ることができないのであるから,看者がこれを観察する場合に主として
視認するであろう一又は二以上の特定の方向(以下「所定方向」とい
う。)を想定し,所定方向からこれを見たときに看者の視覚に映る姿の
特徴によって,商品又は役務の出所を識別することができることとなる。
このため,当該所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面標章
と同一又は近似する場合には,当該立体的形状と当該平面標章との間に
外観類似の関係があるというべきである(東京高等裁判所平成13年1
月31日判決・平成12年(行ケ)第234号。以下「東京高裁平成1
3年判決」という。)。
ここで,原告標章は,ハンドバッグの形状であるところ,ハンドバッ
グは,物を中に収納するという目的から,正面,底面,背面,側面の複
数の面を有するところであるが,これを超えて,女性のファッション小
物の一つとして,使用者の外観を装うという機能も有する。このため,
とりわけ正面はハンドバッグのデザインの中心であり,看者がこれを観
察する場合には,正面方向が最もその特徴的な部分を視認し得るものと
なるから,所定方向は正面ということになる。これは,原告商品が紹介
された多くの雑誌において,正面の写真が掲載されている事実からも明
らかである。とするならば,被告標章は,原告標章と上記共通点②ない
し⑥の点において同一であり,原告標章を正面から見た場合に視覚に映
る特徴を全て捉えたものである。
なお,上記の類否判断の原則(東京高裁平成13年判決)は,平面商
標と立体商標が類似する場合について判断したものであるところ,被告
標章は,平面標章のみから構成されるものではなく,立体的形状及び平
面標章の結合標章であり,その立体的形状も原告標章と同一である。し
かも,「所定方向」たる正面以外の方向から見た場合にも,原告標章を
それぞれの方向から見た場合に視覚に映る特徴をすべて捉えたものであ
って,より類似性が高いことに留意すべきである。
c以上のとおりであり,被告標章は,平面標章及び立体的形状の両面に
おいて,原告標章の形態上の特徴と同一の特徴を具備するものであり,
原告標章と被告標章は外観上類似する。
エ誤認混同のおそれ
原告標章は,それ自体が原告の商品等表示として需要者に著名であると
ころ,被告標章は,上記のとおり,平面標章及び立体的形状の両面におい
て原告標章の形態上の特徴と同一の特徴を具備し,これに類似するバッグ
である。
したがって,需要者が被告各商品に接したときに,原告商品を想起する
ことが通常であり,少なくとも,原告標章と全く同一の形態上の特徴が看
取できる以上,原告と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に
係る商品と誤信されるおそれがある。
オ小括
したがって,被告による被告各商品の輸入・販売行為は,原告商標権の
侵害行為であり,かつ,不競法2条1項1号及び2号の不正競争行為に該
当する。
(2)被告の故意又は過失
原告が原告標章について商標権を有していることからすれば,商標法39
条,特許法103条により,被告には,原告商標権の侵害行為をなすにつき
過失がある。
また,被告が原告と同じくバッグ等の製造・販売を業とする会社であるこ
と,原告標章が原告商品を示す表示として広く認識されていたことからすれ
ば,被告が,原告標章が原告の商品等表示として周知であることを知ってい
たことは明らかであり,被告には,被告各商品の輸入及び販売行為をなすに
つき故意であるか,少なくとも過失がある。
(3)原告の損害
被告は,原告商品と酷似した被告各商品を販売し,もって原告の営業上の
利益を侵害したものである。したがって,被告にはその侵害により原告が受
けた下記損害金合計382万3000円を原告に対し賠償する責任がある。
ア利益相当損害金
(ア)被告商品1の税抜き販売価格は1万4900円(甲34),仕入価
格は1万1200円であり(原告が被告に対し,被告商品の販売中止
を求めた平成24年10月当時の為替レートである1ドル約80円に
て換算した。以下同様である。甲35),その差額3700円が被告
商品1の1個当たりの利益額となる。そして,被告によれば,平成2
3年頃から平成24年末頃までの1年余りの間に,被告が販売した被
告商品1の総数は24個である(甲36)。
したがって,被告は,被告商品1の販売により少なくとも8万880
0円の利益を得た。
(イ)被告商品2の税抜き販売価格は1万5600円(甲34),仕入価
格は1万2000円であり(甲35),その差額3600円が被告商
品2の1個当たりの利益額となる。そして,被告によれば,平成23
年頃から平成24年末頃までの1年余りの間に,被告が販売した被告
商品2の総数は45個である(甲36)。
したがって,被告は,被告商品2の販売により少なくとも16万20
00円の利益を得た。
(ウ)被告商品3の税抜き販売価格は1万6900円(甲34),仕入価
格は1万2400円であり(甲35),その差額4500円が被告商
品3の1個当たりの利益額となる。そして,被告によれば,平成23
年頃から平成24年末頃までの1年余りの間に,被告が販売した被告
商品3の総数は106個である(甲36)。
したがって,被告は,被告商品3の販売により少なくとも47万70
00円の利益を得た。
(エ)被告商品4の税抜き販売価格は2万0800円(甲34),仕入価
格は1万5200円であり(甲35),その差額5600円が被告商
品4の1個当たりの利益額となる。そして,被告によれば,平成23
年頃から平成24年末頃までの1年余りの間に,被告が販売した被告
商品4の総数は17個である(甲36)。
したがって,被告は,被告商品4の販売により少なくとも9万520
0円の利益を得た。
(オ)以上によれば,商標法38条2項ないし不競法5条2項により,上
記合計82万3000円が被告の行為により原告が受けた損害となる。
イ信用毀損による無形侵害
(ア)原告は200年近くの歴史を持つフランスの高級ブランドである。
エルメス商品に対しては,その最高の品質により顧客から絶大な信頼
が寄せられており,古くから多くの著名人に愛されてきた。
特に原告商品は,エルメス商品を代表する高級バッグであり,それを
持つことは多くの女性にとって一つのステータスとなっている。
原告は,その高級ブランドとしての価値,名声を維持すべく,フラン
スで専門の職人が製造した商品のみをその日本子会社であるエルメス
ジャポンが輸入し,これを直営店及び一部の特約店においてのみ販売
する手法により商品の品質保護に努めているほか,直営店及び特約店
には原告の販売方針について教育を受けた販売スタッフを配置してい
る。さらに,原告は,このようなブランドイメージの維持のため多年
にわたり多大な広告宣伝費用を費やしている。
(イ)他方,被告各商品は,原告商品に使用されることのない安価なナイ
ロンを素材とし,一個約1万5000円から2万円前後という遥かに
廉価で販売されている(甲34)。
このように,原告商品の形状に酷似した質の低い被告各商品が廉価
で販売されることにより,原告の高級ブランドとしてのイメージ及び
原告商品に対する顧客の信用が著しく毀損された。加えて,被告は,
インターネットショッピングサイトを通じて被告各商品を販売してお
り,その購入者は日本全国に及んでいる。
(ウ)以上のとおり,被告の被告各商品の輸入・販売行為により原告商品に
対する信用が低下させられた被害は甚大であり,これによる無形損害
は少なくとも200万円を下らない。
ウ弁護士費用
原告は,本件紛争解決のため,代理人弁護士に対して訴訟委任を行い,
その報酬として100万円の支払を約した。
(4)小括
よって,原告は,被告に対し,商標法36条1項ないし不競法2条1
項1号,同2号及び3条1項に基づき,別紙被告商品目録1ないし4記
載の被告各商品の輸入,譲渡,引渡し,又は譲渡もしくは引渡しのため
の展示の差止めを,商標法38条2項ないし不競法5条2項,並びに民
法709条に基づき,382万3000円及びこれに対する平成25年
12月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の支払を求める。
3被告の答弁
被告は,本件口頭弁論期日に出頭しないが,陳述したものとみなされた答弁
書では,請求の趣旨に対する答弁として,原告の請求を棄却する旨の裁判を求
めるとし,「弊社の答弁の分」として,「HERMES社から連絡を受けてから事実
確認のため,直ぐに弊社ネットからGINGERBAGの販売を中止しました。」,
「HERMES社の要求によって販売を中止し,すべての在庫を韓国gingerBag本社
へ返しました。」,「デザインは写真として似てるかもしれませんが素材や価
格などが明確に違うことが分かるし,copyブランドとは,極めて考えにくいし,
まったく違う商品と考えてます。(ネット上でもきちんと説明で示しておりま
した。)」,「デザインが本当に類似なもので問題になるのであればHERMES社
はHERMESKOREAに通じてgingerBag韓国本社へ意義を示さなければならない
と思う。(国際基準として)」「DHScorpは,ginerBag韓国本社から正式的に
手続きに従って輸入販売したAgencyに過ぎません。」,「HERMES社が賠償を請
求したいのであれば,弊社ではなく,gingerBag本社へ請求するのが正しいの
であると思います。改めて申しますと,弊社として商標権侵害行為に対して初
めから侵害する気は全くありませんでしたし,むしろ弊社も被害者として韓国
の国内で法的に争い続けてます。」等としている(上記括弧内はいずれも原文
のまま)。
第3当裁判所の判断
1証拠(甲1ないし40,検証の結果)によれば,以下の事実が認められ,同
認定を覆すに足る証拠はない。
(1)被告は,平成23年ころから,韓国所在の別会社から被告各商品を輸入し
て,楽天市場におけるインターネットのウエブサイト上においてこれを販売
していた。同サイトにおいては,「香港発ユニークブランド『GINGERBAG
(ジンジャーバッグ)』公式販売店」とし,被告各商品につき,「ユニーク
さと実用性を取り揃えたナイロン素材のラグジュアリーなGingerBag(ジン
ジャーバッグ)はアンディ・ウォーホル(AndyWarhol)のキャンベルスープ
(CampbellSoup)のようなウィットのあるポップアート(PopArt)アイディア
で誕生しました。有名なシグニチャバッグコレクションを面白くツイストし
た香港ブランドでクラシックなバッグのイメージをファブリックの上にデジ
タルプリントで表現し,様々なカラーで普通のナイロンバッグとは違ってラ
グジュアリーで楽しい商品を披露します。」,「ナイロン素材に本革表面柄
をプリントし,リアリティを生かしたユニークなだまし絵デザインのバッ
グ!!様々なファッション誌にも掲載や多数のモデルさん愛用の香港発ブラン
ド!!!」等と記載されている。〔甲1〕
(2)原告は,原告代理人弁護士を通じ,被告に対し,平成24年10月3日付
け内容証明郵便において,被告各商品の販売中止と,被告各商品の販売期間,
販売数量及び販売価格等の開示を求め,同郵便は同月11日に被告に到達し
た。〔甲37の1,2〕
これに対し被告は,原告代理人弁護士に対し,同月22日,従業員Aを通
じて,被告各商品の販売を継続しない意向である旨のみを電話で連絡したが,
その余についての回答等を行わなかった。そこで,原告代理人は,被告に対
し,同年11月19日付け内容証明郵便において,再び上記同旨の回答を求
めるとともに,仕入れ先からの納品書等の写しの送付等を求め,同郵便は同
月21日に被告に到達した。〔甲38の1,2〕
(3)被告は,平成24年12月25日,原告代理人弁護士に対し,被告各商
品の販売期間は1年間余りであること,被告各商品を総計330個仕入れ,
うち50個余りは不良品であったこと,販売価格は,サイズXL(被告商品
4)は2万0800円,サイズL(被告商品3)は1万6900円,サイズ
M(被告商品2)は1万5600円,サイズS(被告商品1)は1万490
0円であることを回答するとともに,輸入先から330個輸入した際の平成
23年6月8日付けインボイスに当たるとする韓国の「SUWAUNIT
EDINC.」作成の書面(ただし,製品の内訳とそれらの輸入数量のみ
が記載され,その余の輸入価格等については一切記載がないもの)を送信し
た。〔甲34〕
(4)被告は,平成25年1月17日,原告代理人弁護士に対し,被告各商品
の販売数量は192個であり,その仕入価格はサイズXL(被告商品4)は
190ドル,サイズL(被告商品3)は155ドル,サイズM(被告商品
2)は150ドル,サイズS(被告商品1)は140ドルであることを回答
し,「不良品と在庫分に関しては,むしろ韓国SUWA社へ返還しようとし
ても不良品さえ受け取ってくれない悪質な業者で現在,裁判にかけるため,
弊社の社長が直接持っていてまして,裁判の証拠物として提出して行くこと
になってます。」(原文まま)と記載したメールを送信した。〔甲35〕
さらに被告は,同年1月28日,原告代理人弁護士に対し,被告各商品の
販売数量192個の内訳に関し,サイズXL(被告商品4)は17個,サイ
ズL(被告商品3)は106個,サイズM(被告商品2)は45個,サイズ
S(被告商品1)は24個である旨回答した。〔甲36〕
2被告による被告各商品の輸入・販売行為が,商標法に違反するか否かにつ
いて
(1)商標と標章の類否は,対比される標章が同一又は類似の商品・役務に使用
された場合に,商品・役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否
かによって決すべきであるが,それには,そのような商品・役務に使用され
た標章がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記
憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品・役務の取引の
実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきも
のである。そして,商標と標章の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を
使用した商品・役務につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準
にすぎず,したがって,これら3点のうち類似する点があるとしても,他の
点において著しく相違することその他取引の実情等によって,何ら商品・役
務の出所の誤認混同をきたすおそれの認め難いものについては,これを類似
の標章と解することはできないというべきである(最高裁昭和39年(行
ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399
頁,最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・
民集51巻3号1055頁参照)。
原告商標は立体商標であるところ,上記類否の判断基準は立体商標にお
いても同様にあてはまるものと解すべきであるが,被告標章は一部に平面標
章を含むため,主にその立体的形状に自他商品役務識別機能を有するという
立体商標の特殊性に鑑み,その外観の類否判断の方法につき検討する。
立体商標は,立体的形状又は立体的形状と平面標章との結合により構成さ
れるものであり,見る方向によって視覚に映る姿が異なるという特殊性を有
し,実際に使用される場合において,一時にその全体の形状を視認すること
ができないものであるから,これを考案するに際しては,看者がこれを観察
する場合に主として視認するであろう一又は二以上の特定の方向(所定方
向)を想定し,所定方向からこれを見たときに看者の視覚に映る姿の特徴に
よって商品又は役務の出所を識別することができるものとすることが通常で
あると考えられる。そうであれば,立体商標においては,その全体の形状の
みならず,所定方向から見たときの看者の視覚に映る外観(印象)が自他商
品又は自他役務の識別標識としての機能を果たすことになるから,当該所定
方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似する場合
には,原則として,当該立体商標と当該平面商標との間に外観類似の関係が
あるというべきであり,また,そのような所定方向が二方向以上ある場合に
は,いずれの所定方向から見たときの看者の視覚に映る姿にも,それぞれ独
立に商品又は役務の出所識別機能が付与されていることになるから,いずれ
か一方向の所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又
は近似していればこのような外観類似の関係があるというべきであるが,お
よそ所定方向には当たらない方向から立体商標を見た場合に看者の視覚に映
る姿は,このような外観類似に係る類否判断の要素とはならないものと解す
るのが相当である。
そして,いずれの方向が所定方向であるかは,当該立体商標の構成態様に
基づき,個別的,客観的に判断されるべき事柄であるというべきである。
(2)これを本件について検討するに,原告標章,被告標章はいずれも,内部に
物を収納し,ハンドルを持って携帯するハンドバックに係るものであるから,
ハンドルを持って携帯した際の下部が底面となり,この台形状の底面の短辺
と接続し,ハンドルが取り付けられていない縦長の二等辺三角形の形状を有
する面が側面となることはそれぞれ明らかである。そして,その余の面のう
ち,蓋部,固定具が表示されている大きな台形状の面が正面部に該当し,か
つこの正面部には,その対面側に相当する背面部とは異なり,装飾的要素を
も備えた蓋部,ベルト,固定具が表示されており,ハンドルを持って携帯し
た際に携帯者側に向かって隠れる背面部とは異なって外部に向き,他者の注
意を惹くものであるから,この正面部は,少なくとも所定方向の一つに該当
するものと解される。
これは,被告の開設したインターネットショッピングサイトにおいて,い
ずれもこの正面部を含む写真が表示されていることのほか,各商品の紹介に
おいては,全てこの正面部のみが表示されていることも,正面部が所定方向
であることを裏付けるものであるということができる。〔甲1〕
そして,この正面部から観察した場合,原告標章と被告標章とは,本体正
面の形状において底辺がやや長い台形状であり,上部に,略凸状となるよう
に両サイドに切り込みを有し,横方向に略三等分する位置に鍵穴状の縦方向
の切込みを二箇所有する蓋部が表示されていること,前記蓋部上に,前記略
凸状の両サイドの切り込みから本体正面中央まで延在する左右一対のベルト
が表示されていること,前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本
体正面の上部中央にて同時に固定することができる位置に,先端にリング状
を形成した固定具が表示されていること,前記鍵穴状の切込みの外側の位置
において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを同時に固定する左右一対
の補助固定具が表示されていること,上部に円弧状をなす一対のハンドルが
表示され,前記正面側のハンドルは前記鍵穴状の切込みを通るように表示さ
れていること,以上の点においていずれも共通しており,原告標章と被告標
章とは,所定方向である正面から見たときに視覚に映る姿が,少なくとも近
似しているというべきであり,両者は外観類似の関係にあるということがで
きる。
被告標章は,原告標章では立体的構成とされている蓋部,左右一対のベル
トとこれを固定する左右一対の補助固定具,先端にリング状を形成した固定
具,ハンドルの下部(正面部と重なりベルト付近まで至る部分)について,
これらの質感を立体的に表現した写真を印刷して表面に貼付した平面上の構
成とされているところ,これを正面から見た場合に上記共通点に係る視覚的
特徴を看取できるものというべきである。
一方,上部及び側面方向から被告標章を観察した場合には,原告標章では
立体的に表現された上記蓋部等が立体的でないことは看て取れるものの,上
部及び側面は,いずれも所定方向には該当せず,上記所定方向から観察した
場合の外観の類否に影響するものではない。
(3)そして,原告商標ないし被告標章において,何らかの観念ないし称呼が生
じ,これらが著しく相違するものとも認められない。
(4)以上によれば,被告標章は原告商標と類似しているということができ,被
告につき,過失の存在の推定を覆すに足る事情も認められない(商標法39
条,特許法103条)。
(5)この点に関して被告は,被告各商品につき,そのデザインは写真として似
ているかもしれないが,素材や価格などで明確に区別できる等と主張するが,
本件全証拠によっても,上記所定方向である正面から観察した場合に,被告
標章が原告標章と類似するとの判断を覆すに足る事実は何ら認めることがで
きないし,商品の出所の誤認混同をきたすおそれがないものとも認められな
い。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
3被告各商品を輸入・販売する被告の行為の不競法2条1項1号及び2号該
当性について
(1)原告標章の著名性,被告標章との類似性及び被告が自己の商品等表示と
して用いたかについて
ア原告商品は,別紙原告商品目録記載の形態(原告標章)を有しており,
本体正面及び背面において底辺がやや長い台形状,本体各側面が縦長の
二等辺三角形状をなし,本体正面上部に,略凸状となるように両サイド
に切り込みを有し,横方向に略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込
みが二箇所設けられた蓋部が正面上部に存し,本体背面上部に端部が縫
合され,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面の上部に伸びる
ベルトが設けられ,前記蓋部の凸型部分と前記ベルトとを本体正面の上
部中央にて同時に固定することができる先端にリングを形成した固定具
が設けられ,さらに,前記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記
蓋部の凸型部分と前記ベルトとを同時に固定することができる左右一対
の補助固定具が設けられ,本体正面上部及び背面上部に,円弧状をなす
一対のハンドルが縫合され,前記正面側のハンドルは前記鍵穴状の切込
みを通るように設けられることを特徴としているところ,この台形状で
脇にまちが入り,蓋部に鍵穴状の切込みがあり,本体背面部から正面部
に延在する一対のベルトを有している点等において独特の特徴を有して
おり,需要者に特別な印象を与える形態であるということができる。
イ証拠によれば,この原告商品は,昭和59年(1984年)に原告か
ら発売され,フランスの女優ジェーン・バーキンが愛用したとされるこ
とから,「バーキン」の名称で知られることとなった。フランス法人で
ある原告は,我が国においても,昭和39年(1964年)から大手百
貨店と提携し,渋谷,池袋のほか,全国に合計15店舗の専門店を出店
しており,その高い品質及びファッション性が知られるところとなった。
昭和58年(1983年)に原告の日本子会社であるエルメスジャポン
が設立された後は,更なる積極的な販売活動がされ,現在では,原告は,
直営店及び特約店を合わせて我が国に計45の店舗を有するに至ってい
る。〔甲3〕
原告商品は,色や表面素材により種類があるものの,そのほとんどが
1個100万円を超える高級バッグであり,雑誌にも「世界中の女性が憧
れるバッグの最高峰」などと紹介されている。〔甲11,12,28〕
原告商品の我が国における販売個数は,平成10年(1998年)に
は年間3000個を,平成15年(2003年)には年間8000個を,
平成21年(2009年)には年間1万7000個をそれぞれ超えるに
至っている。〔甲4〕
原告は,多数の雑誌を通じて原告商品の販売促進を図っており,昭和
60年(1985年)から平成8年(1996年)までに原告商品に費
やした広告宣伝費は6200万円にも及び,原告商品を写真入りで取り
上げた雑誌も多数に上るところ,その中にはエルメス商品のみを特集し
た女性誌も存在し,原告商品はエルメス商品を代表する商品として,前
記のとおり台形状で脇にまちが入り,蓋部に鍵穴状の切込みがあって,
本体背面部から正面部に延在する一対のベルトを有しているその特徴的
な形態がカラー写真で強く印象付けられるように紹介されている。〔甲
5~32〕
以上によれば,原告による販売,広告宣伝活動を通じ,原告標章は,
遅くとも平成23年5月までには,原告の出所標識として著名なものと
して,独立して自他商品識別力を獲得したものというべきである。
ウそして,前記2で検討したとおり,被告各商品の形態である被告標章
は,看者が観察する場合に主として視認するであろう所定方向である正
面において同一の特徴を備えており,上部及び側面方向からの観察を含
めても,その全体的形状は上記原告標章と類似するものというべきであ
るから,被告は原告標章を自己の商品等表示としてこれを使用したもの
ということができる(不競法2条1項2号)。
(2)原告標章の周知性及び被告標章が原告標章と誤認混同を生じさせるおそ
れがあるかについて
ア周知性につき
上記(1)によれば,原告商品の形態に係る原告標章は,遅くとも平成2
3年5月には周知性を優に獲得していたものと認められる。
イ誤認混同のおそれにつき
上記(1)ウで検討したとおり,被告標章は,原告標章と類似するもので
あり,誤認混同のおそれがあることが認められる。
(3)被告の故意ないし過失の有無について
前記2で検討したとおり,被告各商品は,周知・著名な原告標章と類似
する被告標章の形態を有しており,前記(1)イで認定した原告商品に係る原
告標章の周知ないし著名性獲得の経緯に鑑みれば,被告各商品の輸入・販
売に係る不競法違反の点につき,被告には少なくとも過失が認められると
いうべきである。
4損害の発生の有無及びその額について
(1)前記1で認定した事実によれば,被告による被告各商品の販売価格は,被
告商品1が1万4900円,被告商品2が1万5600円,被告商品3が1
万6900円,被告商品4が2万0800円であるものとそれぞれ認められ,
その仕入価格(輸入価格)は,原告が被告に対し輸入価格等の開示を求めた
時点である平成24年10月当時の換算レートであると認められる1米ドル
80円(弁論の全趣旨)で計算すると,被告商品1につき1万1200円,
被告商品2につき1万2000円,被告商品3につき1万2400円,被告
商品4につき1万5200円であることが認められる。
そして,本件における全事情に鑑みると,商標法38条2項ないし不競法
5条2項にいう被告が侵害の行為により受けた利益の額である限界利益は,
上記販売価格から仕入価格を控除した額の80%に相当する金額であると認
められる。
そうすると,被告各商品についての上記限界利益額は,それぞれ,被告商
品1が2960円,被告商品2が2880円,被告商品3が3600円,被
告商品4が4480円であるとそれぞれ認められ,被告による被告各商品の
販売数量は被告商品1が24個,被告商品2が45個,被告商品3が106
個,被告商品4が17個であるから,これらを以下のとおり乗じる。
2960円×24個=7万1040円
2880円×45個=12万9600円
3600円×106個=38万1600円
4480円×17個=7万6160円
上記合計65万8400円が,被告が賠償すべき被告利益の額となる。
(2)上記認定のとおり,被告は,原告標章の特徴的な部分を構成する蓋部やベ
ルト等につき,質感を表現した写真を貼付し,原告標章と類似する形態の被
告各商品を販売しているものであり,原告商品が1個100万円程度の価格
を維持しているのに比して著しく粗悪な商品というべきであるから,被告各
商品のインターネットを通じた販売により,原告は原告商品に係る信用を毀
損されたものというべきであり,本件の全事情を総合すると,原告の信用毀
損に基づく損害額は150万円を下らないというべきである。
(3)また,被告による商標権侵害ないし不正競争の不法行為に基づいて,原告
は上記損害を被り,本件訴訟提起を余儀なくされたところ,被告の不法行為
と相当因果関係にある弁護士費用として20万円を認めるのが相当である。
(4)以上によれば,被告は,原告に対し,損害賠償として合計235万840
0円の支払義務があることになる。
5結論
以上によれば,原告の請求は,被告に対し,商標法36条1項ないし不競法
2条1項1号,1項2号,3条1項に基づき,被告各商品の輸入,譲渡,引渡
し,又は譲渡若しくは引渡しのための展示の差止め(主文第1項),並びに,
商標法38条2項,不競法5条2項及び民法709条に基づき合計235万8
400円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年12月14日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(主文第2
項)を求める限度で理由があり,その余は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
東海林保
裁判官
今井弘晃
裁判官
実本滋
(別紙)
被告商品目録1
①全体的形状が,本体正面が底辺がやや長い台形状,本体各側面が縦長の二等辺三
角形状をなす立体的形状であり,
②本体正面上端及び背面上端に,円弧状をなす一対の実ハンドルが縫合され,
③(a)本体正面上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,横方向に
略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みを二箇所有する蓋部,(b)前記蓋部上
に,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面中央まで延在する左右一対のベ
ルト,(c)前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央に
て同時に固定することができる位置に,先端にリング状を形成した固定具,(d)前
記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを
同時に固定する左右一対の補助固定具がそれぞれ表示され,(e)本体正面上部及び
背面上部に円弧状をなす一対のハンドルを視認しうるように,正面上端及び背面上
端に縫合された実ハンドルまで延在するハンドルの一部が本体正面に表示され,か
つ,前記本体正面のハンドルの一部が前記鍵穴状の切込みを通るように表示されて
いることを特徴とする写真4ないし6の形状の,商品名「ジンジャーバッグサイ
ズS」,価格1万4900円(税抜)のかばん。
被告商品目録2
①全体的形状が,本体正面が底辺がやや長い台形状,本体各側面が縦長の二等辺三
角形状をなす立体的形状であり,
②本体正面上端及び背面上端に,円弧状をなす一対の実ハンドルが縫合され,
③(a)本体正面上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,横方向に
略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みを二箇所有する蓋部,(b)前記蓋部上
に,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面中央まで延在する左右一対のベ
ルト,(c)前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央に
て同時に固定することができる位置に,先端にリング状を形成した固定具,(d)前
記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを
同時に固定する左右一対の補助固定具がそれぞれ表示され,(e)本体正面上部及び
背面上部に円弧状をなす一対のハンドルを視認しうるように,正面上端及び背面上
端に縫合された実ハンドルまで延在するハンドルの一部が本体正面に表示され,か
つ,前記本体正面のハンドルの一部が前記鍵穴状の切込みを通るように表示されて
いることを特徴とする写真4ないし6の形状の,商品名「ジンジャーバッグサイ
ズM」,価格1万5600円(税抜)のかばん。
被告商品目録3
①全体的形状が,本体正面が底辺がやや長い台形状,本体各側面が縦長の二等辺三
角形状をなす立体的形状であり,
②本体正面上端及び背面上端に,円弧状をなす一対の実ハンドルが縫合され,
③(a)本体正面上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,横方向に
略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みを二箇所有する蓋部,(b)前記蓋部上
に,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面中央まで延在する左右一対のベ
ルト,(c)前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央に
て同時に固定することができる位置に,先端にリング状を形成した固定具,(d)前
記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを
同時に固定する左右一対の補助固定具がそれぞれ表示され,(e)本体正面上部及び
背面上部に円弧状をなす一対のハンドルを視認しうるように,正面上端及び背面上
端に縫合された実ハンドルまで延在するハンドルの一部が本体正面に表示され,か
つ,前記本体正面のハンドルの一部が前記鍵穴状の切込みを通るように表示されて
いることを特徴とする写真4ないし6の形状の,商品名「ジンジャーバッグサイ
ズL」,価格1万6900円(税抜)のかばん。
被告商品目録4
①全体的形状が,本体正面が底辺がやや長い台形状,本体各側面が縦長の二等辺三
角形状をなす立体的形状であり,
②本体正面上端及び背面上端に,円弧状をなす一対の実ハンドルが縫合され,
③(a)本体正面上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,横方向に
略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みを二箇所有する蓋部,(b)前記蓋部上
に,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面中央まで延在する左右一対のベ
ルト,(c)前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央に
て同時に固定することができる位置に,先端にリング状を形成した固定具,(d)前
記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを
同時に固定する左右一対の補助固定具がそれぞれ表示され,(e)本体正面上部及び
背面上部に円弧状をなす一対のハンドルを視認しうるように,正面上端及び背面上
端に縫合された実ハンドルまで延在するハンドルの一部が本体正面に表示され,か
つ,前記本体正面のハンドルの一部が前記鍵穴状の切込みを通るように表示されて
いることを特徴とする写真4ないし6の形状の,商品名「ジンジャーバッグサイ
ズXL」,価格2万0800円(税抜)のかばん。
写真4
写真5
写真6
(別紙)
原告商品目録
①本体正面及び背面が底辺がやや長い台形状,本体各側面が縦長の二等辺三角形状
をなし,②本体正面上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,横方
向に略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みが二箇所設けられた蓋部が正面上
部に存し,③本体背面上部に端部を縫合され,前記略凸状の両サイドの切り込みか
ら本体正面の上部に伸びるベルトが設けられ,④前記蓋部の凸型部分と前記ベルト
とを本体正面の上部中央にて同時に固定することができる先端にリング状を形成し
た固定具が設けられ,さらに,前記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋
部の凸型部分と前記ベルトとを同時に固定することができる左右一対の補助固定具
が設けられ,⑤本体正面上部及び背面上部に,円弧状をなす一対のハンドルが縫合
され,前記正面側のハンドルは前記鍵穴状の切込みを通るように設けられることを
特徴とする写真1ないし3の形状のかばん。
写真1(正面外観図)
写真2(背面外観図)
写真3(側面外観図)
(別紙)
商標権目録
登録番号第5438059号
出願日平成20年3月6日
登録日平成23年9月9日
商品区分第18類
指定商品ハンドバッグ
登録商標

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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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