弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人津島宗康の上告理由第一点および第三点について。
 論旨は、要するに、上告人主張の登記官の指示は、不動産登記法一〇五条一項の
規定の解釈、ひいては同法七条二項の規定の解釈を誤つてした違法な行為であり、
さらに同法一〇五条一項が、同法一四六条一項の規定を準用することにより、仮登
記名義人が本登記を申請するには第三者の承諾書等の添付を要する旨規定したのは、
仮登記名義人に不必要、不可能、困難な行為を要求するもので、憲法二九条に違反
するにもかかわらず、不動産登記法一〇五条一項の規定の成立、解釈、適用に関与
した公務員の措置に違法がないとした原判決(その引用する第一審判決を含む。以
下同じ。)には、憲法二九条、国家賠償法一条、不動産登記法一〇五条一項、七条
二項の解釈適用を誤つた違法があると主張する。
 思うに、仮登記は、実体上ないし手続上の理由から終局登記である本登記が得ら
れない場合において、不動産登記法二条所定の要件を具備したときに、登記簿上記
入を許容される予備登記であるところ、仮登記に基づく本登記がされた場合には、
同法七条二項によつて、その本登記の順位は仮登記の順位によるものとされている
結果、仮登記後本登記がされるまでの中間に本登記義務者の処分行為によつて第三
者が権利を取得しても、その権利は、本登記内容の実現と牴触する範囲でその効力
を失うことになるわけである。ところで、昭和三五年法律第一四号不動産登記法の
一部を改正する等の法律(以下改正法という。)によつて不動産登記法一〇五条の
規定が新設されるまでは、仮登記に基づく本登記が申請され、これが記入される際、
右のような中間処分によつて取得された権利に基づく登記が存在する場合、この登
記をどのように整理するかについての具体的な手続規定を欠いていたものであると
ころ、登記実務の取扱いとしては、仮登記名義人と本登記義務者の双方から仮登記
に基づく本登記の申請があつた場合には、その本登記の申請を受理してさしつかえ
なく、右のような中間処分によつて取得された権利に基づく登記があつても、本登
記申請自体には影響がないものとされていた。しかし、かかる登記実務のもとでは、
同一不動産につき登記簿上所有名義が二重に併存する等の混乱が生じ、公示制度と
して好ましくない結果を招来したので、かかる公示の混乱を避けて不動産取引の安
全を保護するため、改正法によつて新設された不動産登記法一〇五条は、同条一項
で同法一四六条一項の規定を準用することにより、所有権に関し仮登記に基づく本
登記を申請する場合には、その申請書に登記上利害の関係を有する第三者の「承諾
書」または第三者に「対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本」を添付することを要する
旨を定め、同法一〇五条二項により、登記官は、本登記を登記簿に記入するにあた
り第三者の登記を職権をもつて抹消することを要する旨を定めたのである。すなわ
ち、右規定の新設により、本登記が記入される際に、同時に第三者の登記が抹消さ
れることになつた反面、形式的審査権を有するにとどまる登記官にその登記が抹消
されるべきものであるか否かの実質的判断をさせることなく、第三者の「承諾書」
または第三者に「対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本」を添付させることにしたので
ある。そのため、仮登記名義人が本登記を申請しようとする際に、本登記が記入さ
れるに必要な実体法上の原因がすでに生じていて、本登記義務者との間では本登記
を申請するに足りる手続上の要件が具備していても、なお、登記上利害の関係を有
する第三者があるときは、当該第三者の「承諾書」等の添付を要することとなつた
から、改正法施行前の登記実務の取扱いに比較すれば、同条一項は、仮登記名義人
の本登記申請権の行使に、ある程度の制約を加える結果をもたらしたことは否定す
ることができない。
 しかしながら、財産権の内容が公共の福祉に適合するように法律で定められるべ
きものであることは、憲法二九条二項が明文をもつて規定するところであるから、
公共の福祉を実現しまたは維持するため必要がある場合に、法律により、財産権の
行使につき合理的な範囲内の制約を加えることがあるのは、憲法の予定するところ
であつて、憲法二九条に違反するものではない(当裁判所昭和三一年(オ)第三二
六号同三五年二月一〇日大法廷判決、民集一四巻二号一三七頁参照)。登記申請の
手続上の要件を如何に定めるかは、立法政策に属する問題といいうるのであるから、
前記規定の新設の結果として、従前の取扱いに比較し、仮登記名義人の本登記申請
権の行使に前述のような制約が加えられることとなつたとしても、それは、公示制
度を整備することにより公示の混乱を避けて不動産取引の安全を保護しようという
前叙の立法趣旨に徴し、公共の福祉の実現をはかるための必要かつ合理的な制約で
あり、仮登記名義人において受忍すべきものと解さなければならない。してみれば、
改正法によつて新設された不動産登記法一〇五条一項の規定は、憲法二九条に違反
するものではないというべきである。
 そしてまた、すでに説示したところに照らして、原判決の確定する登記官の指示
には、不動産登記法一〇五条一項、七条二項の解釈適用を誤つた違法のないことは
明らかである。したがつて、公務員の措置が違法であることを前提とする上告人の
本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がない旨判示した原判決は、
正当として是認することができる。論旨は、ひつきよう、独自の見解を主張するも
のにすぎず、すべて採用することができない。
 同第二点について。
 所論は、立法論をいうにすぎないから、原判決がこの点について判断しなかつた
ことにつきなんらの違法はない。したがつて、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    石   田   和   外
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    飯   村   義   美
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    小   川   信   雄
            裁判官    下   田   武   三

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