弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被上告人Bの請求に関する部分及び同被上告人を除くその余の
被上告人らの請求に関し上告人ら敗訴部分を破棄する。
     被上告人Bを除くその余の被上告人らの請求に関する右部分につき、本
件を東京高等裁判所に差し戻す。
     本件訴訟のうち被上告人Bの請求に関する部分は、昭和五〇年八月三〇
日同被上告人の死亡により終了した。
         理    由
 上告代理人中村護、同三浦喜代治、同小野允雄、同石川隆、同榎本孝芳の上告理
由第一点について
 原審の確定した事実関係及び本件記録に現われた本件訴訟の経過によれば、被上
告人らが本件土地の売買契約締結についての違法、代金支払の違法を指摘して是正
措置を求めた本件監査請求については、その代金調達の違法及びその是正措置をも
合わせて対象としていると解しえないことはない。したがつて、本件利息の違法な
支払を理由とする上告人らに対する損害賠償請求につき、被上告人らが監査請求を
経ているといえないことはなく、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用するこ
とができない。
 同第二点について
 原審の確定した事実関係のもとにおいて、本件利息の支払が違法であるとした原
審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨
は、採用することができない。
 同第五点及び第七点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審
の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用するこ
とができない。
 同第六点について
 原審の確定した事実関係によれば、a町は本件土地の売買代金支払にあてるため、
昭和三八年三月一一日から同年一二月二七日までの間に訴外D信用金庫から総額一
億二三八四万五〇〇〇円を利息日歩二銭一厘ないし二銭三厘の約定で借り入れ、借
入時から昭和四二年三月二三日までの利息を同信用金庫に支払つたというのであり、
右消費貸借及びこれに附随する利息支払の約定は、昭和三八年法律第九九号地方自
治法の一部を改正する法律の施行(昭和三九年四月一日)前に成立しているのであ
るから、本件利息の支払に伴う上告人Aの賠償責任については、同法律附則一二条
の規定により、改正後の地方自治法二四三条の二の規定にかかわらず、なお従前の
例によるものと解するのが相当である。したがつて、同条の規定の適用のあること
を前提とする論旨は理由がなく、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用するこ
とができない。
 同第三点について
 原審が確定した事実の要旨は、(1) a町は、昭和三八年一〇月一日、訴外E株
式会社から本件土地を公共用地として取得するについて、町議会の議決を経たうえ、
これを買受ける旨の売買契約を締結した、(2) a町は、購入代金の支払にあてる
ため、D信用金庫から総額一億二三八四万五〇〇〇円を利息日歩二銭一厘ないし二
銭三厘の約定で借り入れ、これを同年一二月二七日までにE株式会社に支払つて本
件土地を取得した、(3) a町は、借入時から昭和四二年三月二三日までの利息合
計三二六三万九七一九円(以下「本件利息額」という。)を同信用金庫に支払つた、
(4) 本件借入れは、地方自治法に定める地方債又は一時借入金の方法によるもの
ではなかつた、というのである。
 原審は、右の事実関係のもとにおいて、本件借入れは地方自治法に定める地方債
又は一時借入金のいずれの方法にもあたらない違法な措置であり、右違法な借入れ
に基づく本件利息の支払も違法であるから、a町は本件利息額相当の損害を受けた
旨判断した。
 ところで、右の事実関係によれば、a町は本件土地の購入代金支払のため会計年
度を超える長期資金の借入れを必要としていたところ、a町が地方債を起こし資金
を調達したとしても利息等の費用の負担を余儀なくされるのであるから、本件利息
額の全額をa町が受けた損害と解すべきではなく、地方債の発行に伴いa町が通常
負担するであろう利息等の費用に相当する額は、損害にあたらないものと解するの
が相当である。したがつて、前記の事実関係から直ちに、a町が本件利息額相当の
損害を受けたと判断した原判決は、法令の解釈適用を誤り、ひいては審理不尽の違
法があるといわざるをえず、右違法は原判決中判決の結論に影響を及ぼすことが明
らかであるから、その余の点について判断するまでもなく論旨は理由があり、原判
決中上告人ら敗訴部分は破棄を免れない。そして更に審理を尽くさせる必要がある
から、被上告人Bを除くその余の被上告人らの請求に関する右部分につき、本件を
原審に差し戻すのが相当である。
 職権をもつて調査するに、記録によれば、被上告人Bは昭和五〇年八月三〇日死
亡していることが明らかである。地方自治法二四二条の二に規定する住民訴訟は、
原告が死亡した場合においては、その訴訟を承継するに由なく、当然に終了するも
のと解すべきであるから、本件訴訟中同被上告人の請求に関する部分は、その死亡
により当然に終了しているのであり、これを看過してなされた原判決は破棄を免れ
ない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    塚   本   重   頼
            裁判官    鹽   野   宜   慶

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