弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人前川信夫、同井戸田侃の上告理由第一、二点について。
 原判決の認定した事実は、原判決挙示の証拠によりこれを肯認しうるところ、右
事実によると、上告人らと被上告人との間には、所論の売買契約の成立を認めがた
いとする旨の原判決の判断は、正当である。
 原判決には、所論のように判断遺脱または理由不備ないし理由そごの違法はなく、
所論は、結局、採用しがたい。
 同第三点について。
 本件納品当時、従業員との取引が被上告人において当然公認される状況にはなか
つた旨の原判決の判断は、その挙示の証拠である上告人A本人の供述によつて肯認
しえないわけではない。
 原判決には、所論のような虚無の証拠による認定をした違法はなく、所論は、結
局、採用しがたい。
 同第四点について。
 原判決は、所論のごとく、当時従業員との取引が被上告人において当然公認され
る状況にはない旨を判示し、しかも本件各取引については、一般的に出入商人等の
決定などについて被上告人を代理する権限を有する厚生課長の承認すらもなかつた
旨説示しているのであり、原判決には、所論のように理由不備ないし理由そごの違
法があるものとはいえない。
 所論は、原判決を正解しないことにもとづくものであつて、採用しがたい。
 同第五点について。
 原判決挙示の証拠によると、所論の点についての原判決の説示は、当審も正当と
して支持しうる。
 所論は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨・選択、事実の認定を非難するに
帰し、採用しがたい。
 同第六点について。
 原判決が適法に認定したところによると、所論の厚生課給食係長(本件契約当時
D)の権限は、被上告人のB製作所の給食用食品について相手方すなわち出入商人
の決定等比較的重要事項を除いた日常の買付事務についてのみ被上告人を代理する
権限を有していたにすぎないというのである。それゆえ、同係長は被上告人から日
常の買付事務に関してのみ商法四三条にいう委任を受けた使用人に該当するにすぎ
ない。したがつて、原判決が、本件各売買について同係長の承認をえていても、買
い入れるべき出入商人について決定する権限のない同係長がした承認にすぎず、結
局、本件各売買の効力が被上告人に及ばないとした原判決の判断は正当である。
 そして、右D係長は、日常の買付事務についてのみ被上告人から適法に権限を委
任されているのみで、買入について相手方すなわち出入商人の決定など比較的重要
な事項についてはもともと委任されていないというのであり、したがつて、右のよ
うな事項について代理の権限自体が付与されていなかつたのであるから、このよう
な事実をもつて同係長の代理権に制限を加えたと解することはできない。また、出
入商人の決定について権限のある厚生課長(当時E)が適法に決定したのちにD係
長のした日常の買付事務については被上告人において責任を取るのはもとよりであ
るが、原判決の判示するところによると、右出入商人の決定は適法にされていない
というのであるから、かりに本来本件食料品の買入が日常の買付事務にあたるもの
であつたとしても、被上告人において、右売買としての責任を負ういわれはないの
は当然であり、原判決には、所論のような違法はない。
 所論は、失当として排斥を免れない。
 同第七、八点について。
 本件一件記録その他訴訟の経過に徴すれば、原審が所論の点について釈明権を行
使しないとしても、所論のような違法があるとはいえず、論旨は失当として排斥を
免れない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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