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平成25年10月23日判決言渡
平成25年(行コ)第224号源泉所得納税告知処分取消等請求控訴事件
主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2渋谷税務署長が控訴人に対し平成20年6月30日付けでした,
(1)平成1
5年10月分から平成19年10月分までの各月分の源泉徴収に係る所得税
(以下「源泉徴収所得税」という。)の各納税告知処分,及び,(2)これらに
係る不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,上記(1)及び(2)のいずれについ
ても,平成20年11月27日付け異議決定及び平成21年12月15日付け
裁決により一部取り消された後のもの。
以下,
この一部取消しの前後を問わず,
上記(1)の各納税告知処分を総称して「本件各納税告知処分」といい,上記(2)
の各賦課決定処分を総称して「本件不納付加算税各賦課決定処分」という。)
をいずれも取り消す。
3渋谷税務署長が控訴人に対して平成20年6月30日付けでした,
(1)控訴
人の平成16年9月1日から平成17年8月31日までの課税期間(以下「1
7年8月課税期間」という。)に係る消費税の更正処分のうち納付すべき消費
税額679万7200円を超える部分,
(2)上記課税期間に係る地方消費税の
更正処分のうち納付すべき地方消費税額171万5600円を超える部分,並
びに,(3)上記(1)及び(2)の各更正処分(以下,これらを総称して「17年8
月課税期間更正処分」といい,消費税と地方消費税を併せて「消費税等」とい
う。)に係る過少申告加算税賦課決定処分(以下「17年8月課税期間賦課決
定処分」という。)をいずれも取り消す。
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4渋谷税務署長が控訴人に対して平成20年6月30日付けでした,
(1)控訴
人の平成17年9月1日から平成18年8月31日までの課税期間(以下「1
8年8月課税期間」という。)に係る消費税の更正処分のうち納付すべき消費
税額598万1200円を超える部分,
(2)上記課税期間に係る地方消費税の
更正処分のうち納付すべき地方消費税額149万5300円を超える部分,並
びに,(3)上記(1)及び(2)の各更正処分(以下,これらを総称して「18年8
月課税期間更正処分」という。)に係る過少申告加算税賦課決定処分(以下「1
8年8月課税期間賦課決定処分」という。)をいずれも取り消す。
5渋谷税務署長が控訴人に対して平成20年6月30日付けでした,
(1)平成
18年9月1日から平成19年8月31日までの課税期間(以下「19年8月
課税期間」という。)に係る消費税の更正処分のうち納付すべき消費税額63
2万9100円を超える部分,
(2)上記課税期間に係る地方消費税の更正処分
のうち納付すべき地方消費税額158万2200円を超える部分,並びに,(3)
上記(1)及び(2)の各更正処分に係る過少申告加算税賦課決定処分(ただし,上
記(1)ないし(3)のいずれについても,平成21年12月15日付け裁決により
一部取り消された後のもの。
以下,
この取消しの前後を問わず,
上記(1)及び(2)
の各更正処分を総称して「19年8月課税期間更正処分」といい,上記(3)の各
過少申告加算税賦課決定処分を「19年8月課税期間賦課決定処分」という。)
をいずれも取り消す。
第2事案の概要
1控訴人は,民間教育機関や公的教育機関(以下,併せて「教育機関等」とい
う。)から講師による講義等の業務及び一般家庭から家庭教師による個人指導
の業務をそれぞれ受託し,かつ,これらの業務に係る講師又は家庭教師として
控訴人と契約を締結して当該業務を行った者に対し,当該契約所定の金員(た
だし,交通費を除く。以下「本件各金員」という。)を支払っていた(以下,
控訴人との間の契約に基づき教育機関等における講師として講義等の業務を行
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う者を「本件塾講師」,一般家庭における家庭教師として個人指導の業務を行
う者を「本件家庭教師」,両者を併せて「本件講師等」といい,控訴人に対し
て講師による講義等の業務を委託した教育機関等を「本件教育機関等」,控訴
人に対して家庭教師による個別指導の業務を委託した一般家庭を
「本件会員」

両者を併せて「本件各顧客」という。)。
控訴人は,
(1)本件各金員が給与所得
(所得税法28条1項に規定する給与
等に係る所得)に該当しないものとして,平成15年10月分から平成19年
10月分までの各月分(以下「本件各月分」という。)に係る本件各金員につ
き,源泉所得税の源泉徴収をせず,また,(2)本件講師等から本件各金員を対
価とする役務の提供を受けたことが消費税法(平成24年法律第68号による
改正前のもの。以下同じ。)2条1項12号に規定する課税仕入れに当たるも
のとして,同法30条1項の規定に従い,これに係る消費税額を同法45条1
項2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から控除した上で,17年8月課
税期間,18年8月課税期間及び19年8月課税期間(以下,これらを併せて
「本件各課税期間」という。)の消費税等の申告をした。
渋谷税務署長
(処分行政庁)
は,
(1)本件各金員が給与所得に該当し,
また,
(2)本件各金員を対価とする役務の提供を受けたことは課税仕入れに該当し
ないとして,前記第1の2ないし5の各処分(以下,これらを併せて「本件各
処分」といい,17年8月課税期間更正処分,18年8月課税期間更正処分及
び19年8月課税期間更正処分を併せて「本件各更正処分」,17年8月課税
期間賦課決定処分,18年8月課税期間賦課決定処分及び19年8月課税期間
賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定処分」という。)をした。
本件は,控訴人が,本件各金員は給与所得に該当しないなどと主張して,被
控訴人に対し,本件各処分(ただし,本件各更正処分については,控訴人の申
告額又は本件各更正処分前にされた減額更正処分に係る納付すべき税額を超え
る部分)の取消しを求めた事案である。
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2原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人は,これを不服とし
て,本件控訴を提起した。
関係法令の定め,前提事実,本件各処分の根拠及び適法性に関する被控訴人
の主張,争点及びこれに関する当事者の主張の要点は,後記3のとおり当審に
おける控訴人の主張を付加するほかは,
原判決の
「事実及び理由」

「第2事
案の概要等」の2ないし6に記載のとおりであるから,これを引用する。
3当審における控訴人の主張
(1)本件各金員に係る所得が給与所得に該当しないこと
ア給与所得該当性の判断枠組み
以下のとおり,従属性は,給与所得に該当することの必要要件である。
(ア)判例及び通説
従属性は,最高裁昭和56年判決,最高裁平成13年判決,最高裁平
成17年判決及び下級審の裁判例)並びに通説(甲37,39〔東京地
裁昭和43年4月25日判決・行集19巻4号763頁〕,56〔京都
地裁平成11年(行ウ)第27号・平成14年9月20日判決〕,57,
60~62,65,乙21)において,給与所得の必要要件であるとさ
れている。
原判決は,これを否定する点で誤りであり,かつ,本件講師等が直接
的又は少なくとも間接的に控訴人の監督下に置かれ,
控訴人から空間的,
時間的な拘束を受けているとして,不要とした従属性を検討し,しかも
間接的な監督という曖昧な評価をする点で,判断枠組みが極めて不明瞭
かつ不適切である。
(イ)当事者の認識(意思)が重視されるべきこと
租税は,
私法関係
(当事者間で締結された私法契約に基づく法律関係)
を前提とする課税要件事実の認定によって発生するから,給与所得の判
定においても当事者の認識(意思)が重視されるべきである。
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控訴人と本件講師等が,
雇用契約又はこれに類する原因とは異なる
「外
注」であるとの認識で業務委託契約を締結し,これに基づいて本件各金
員が支払われていたにもかかわらず,原判決が,雇用契約に類する原因
があるとするのは,私法契約を著しく軽視する誤りがある。裁判例は,
契約当事者の認識を重視しており(甲26〔福岡地裁昭和62年7月2
1日判決・訟務月報34巻1号187頁〕,48〔福岡高裁昭和63年
11月22日判決・税務訴訟資料166号505頁〕),複数の本件講
師等は,税務職員の指導等により,本件各金員に係る所得を事業所得又
は雑所得として申告している(甲63の1・2の1~4,80,81)
のであって,本件各金員が労務の対価でないことは明らかである。
(ウ)労働契約と従属性
従属性,すなわち,使用者からの指揮及び命令を受けるという指揮命
令関係は,給与所得における本質的な要素であり,契約書の形式(文言)
が,請負や委任・準委任であっても,契約関係の実態が使用されて労働
し,賃金が支払われる関係であれば,労働契約(雇用契約)に該当し得
る(民法623条。甲64)。
判例及び通説が,使用者の指揮命令関係(労務提供の従属性)を給与
所得に該当するための必要要件とするのは,給与所得の本質である雇用
に類する原因の具体的内容として指揮命令関係を除外し得ないからであ

(歳費を受ける国会議員や報酬を受ける裁判官も職務専念義務を負い,
指揮命令関係も認められる。)。
イ控訴人の事業形態及び契約関係等
(ア)控訴人の事業形態(ビジネスモデル)等
a控訴人は,①委託者である本件各顧客との間で,本件講師等によ
る講義及び指導についての業務委託契約
(以下
「受託契約」
ともいう。

を締結し,②控訴人を委託者とする業務委託基本契約(甲2。以下
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「基本契約」ともいう。)を締結している本件講師等との間で,個別
業務委託契約(甲5~8。以下,併せて「個別契約」ともいう。)を
締結することにより,控訴人が本件各顧客から受領する委託料金及び
契約金(以下,併せて「受託料」ともいう。)と控訴人が本件講師等
に支払う業務委託代金及び指導料金(以下「支払報酬」ともいう。)
との差額を売上総利益とする薄利の事業を運営している。
b控訴人は,なるべく小さいコストでレベル・性質の異なる本件各顧
客に対して本件講師等の役務を提供するという事業の性質上,登録さ
れた様々なレベルの本件講師等(甲76)と協議し,そのレベルに応
じた顧客についての個別契約を締結しているから,研修は必ずしも必
要ではない。また,控訴人は,相当程度の専門性が必要な研修のノウ
ハウ・能力・態勢がなく,ビジネスモデルもそのような研修等にコス
トを掛けないことを前提としているから,自らのコストで様々なレベ
ルの本件講師等に研修を実施することは不可能である。
c控訴人は,受託契約に基づく一定の受託料収入(受託料の増減や不
払はまれである。)を前提として,支払報酬の額及びその算定基礎と
なる講義等の単価の額を決定しており,支払報酬の増減規定がないの
は自然である(控訴人が個別契約による役務の提供中に本件講師等の
指導内容の優劣に応じて支払報酬のみを増加するという経営的に不合
理な契約を締結するはずはない。)。
(イ)本件講師等の決定権及び支払報酬等
以下の諸点は,本件講師等の独立性を肯定し,その従属性及び支払報

(本件各金員)
に係る所得の給与所得該当性を否定すべき事情である。
a本件講師等の決定権及び交渉権等
本件講師等は,雇用契約の被用者と異なり,個別契約の諾否の自由
を有し,また,個別契約の締結に当たって,基本契約に基づく複数の
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契約の締結を前提として,どの個別業務をいくらで受託するかの決定
権及び単価その他の契約条件についての交渉権を有しているほか,一
切の制限を受けずに,控訴人のライバル会社を含む他社との契約を締
結し,他の業務を兼業することができる。
なお,本件講師等は,前の個別契約における指導内容の優劣や生徒
の合否判定等を受けて次の個別契約における単価を交渉できるから,
前の個別契約中の単価交渉は重要ではない。
b支払報酬
支払報酬額は,基本契約に具体的な定めがなく,個別業務の依頼を
受けた本件講師等の判断により,場合によっては単価交渉及び本件教
育機関等との合意を経て,個別契約の都度決定される講義等の単価に
指導時間(業務の従事時間)を乗じて算定される。控訴人における業
務の成果は,本件講師等による実際の指導時間であり,報酬は指導時
間に応じて支払われ,本件講師等が予定された時間の業務に従事しな
ければ報酬も支払われないから,支払報酬は具体的な成果の程度に応
じて増減する。支払報酬は,個別契約ごとに異なり,顧客によって単
価が相違し,支払報酬が受託料と連動し(甲19,20,47の1~
6),受託契約が解約されると個別契約も解約される(甲3,4,6
~8)。支払報酬に生活給的な要素はなく,設定されたコースに応じ
た経験や技能がなければ,本件講師等が受け取る報酬は増加しない。
本件講師等は,業務の受託や遂行いかんによって収入が増減する危
険を負担し,冬季・夏季等の休暇がなく,休講等の場合は報酬を受領
し得ず,個別契約の期間中でも,本件各顧客からの講師変更依頼によ
って契約を中途解約されるリスクを負い,控訴人も同様に本件各講師
から契約を中途解約されるリスクを負う(甲74の1~9)。
これらの点からすれば,本件は,電力計検針員の独立性を肯定し,
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手数料を事業所得とした裁判例(甲26〔福岡地裁昭和62年7月2
1日判決・訟務月報34巻1号187頁〕,48〔福岡高裁昭和63
年11月22日判決・税務訴訟資料166号505頁〕)の事案に極
めて類似する(甲21〔大阪高裁昭和57年11月18日判決・行集
33巻11号2316頁〕,22〔京都地裁昭和56年3月6日判決・
行集32巻3号342頁〕の裁判例及び甲71〔東京高裁昭和47年
9月14日判決・判例タイムズ289号355頁〕,72〔最高裁昭
和53年8月29日第三小法廷判決・訟務月報24巻11号2430
頁〕の裁判例とは事案を異にする。)。
(ウ)本件講師等の費用負担等
費用負担の有無は,危険負担という独立性の重要な判断要素であると
ころ,本件講師等は費用を負担している。
すなわち,本件講師等は,事前準備や指導のために使用する教師用テ
キスト,問題集及び参考書の費用,事務手数料1000円及び報酬振込
手数料をいずれも負担する義務を負い(甲2,19,20),筆記具,
通信費,その機材,問題作成のためのパソコンやソフトの費用等も負担
しており(甲63の1,証人A,証人B,証人C),費用負担を義務付
ける規定がなくても本件講師等が受託業務について危険を負担していな
いことにはならない。
また,受託契約に係る本件登録規約(甲3)5条2項は,本件教育機
関等が本件講師等に物を貸与する(本件講師等は返還義務を負う〔甲2
の本件塾講師基本契約書10条1項〕。)旨定めるが,これは,控訴人
と本件教育機関等との間の契約であって,控訴人と本件講師等との間の
契約ではない。なお,本件教育機関等は,本件講師等の指導時間確認表
(乙7)の控訴人への送付費用を負担し,使用テキストを貸与ないし負
担することがあり,本件会員は,交通費を負担している。
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(エ)空間的・時間的拘束の不存在
控訴人は,本件講師等に対し,役務提供の時間(指導時間)以外の報
告を求めておらず(本件講師等は,控訴人の了解を得ずに,本件各顧客
と相談して指導の場所や時間を変更することがままある。),通常の文
理における本件講師等の空間的・時間的拘束は存在しない。
ウ本件講師等の業務の独立性
業務の独立性は,営利を目的として継続的に行われる役務提供が所得税
法上の事業所得となる要件である(指揮命令に基づく役務として従属性が
要件となる給与所得との対比において用いられる。)が,以下のとおり,
本件講師等の業務は,独立性の有無の判断基準(事業所得を生ずべき事業
の範囲,課税実務における取扱い及び裁判例によって導かれる。)に照ら
し,独立性があると評価できるから,本件各金員に係る所得は,所得税法
上の事業所得又は雑所得及び消費税法上の課税仕入れに該当し,源泉徴収
の対象である給与所得とはならない。
(ア)事業所得を生ずべき事業
所得税法の改正経緯,通達及び課税実務の取扱い(甲66,67),
同法27条1項,
同法施行令63条各号の定め及び日本標準産業分類
(甲
68)等によれば,家庭教師は,事業所得を生ずべき事業に当たる。し
たがって,家庭教師の所得は,事業所得であり(甲69〔名古屋地裁昭
和60年4月26日判決・行集36巻4号589頁〕),塾講師につい
ても同様である。
(イ)課税実務における取扱い及び判断要素
課税実務上,事業所得に分類される事業であっても,一定の者に専属
して役務を提供(以下「専属的役務提供」という。)する者(職業野球
選手,保険外交員及び集金人等)が取得する報酬その他の利益について
は,その役務提供状況が給与所得者と類似するから,給与等とされる経
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済的利益の取扱いに準じて源泉徴収をすることとされている(所得税基
本通達204-3〔甲70〕)。事業所得と給与所得との区別は,以下
の点を総合的かつ慎重に考慮して判断すべきである。
a報酬の決定方法
本件講師等に対する支払報酬は,単価に指導時間を乗じて計算され
る点では取扱金額(数量)に応じて決定される保険外交員の報酬と同
じであるが,本件講師等は,職業野球選手等と同様に,個別業務を受
注するかどうかの決定権及び単価その他の契約条件についての交渉権
を有している。報酬の計算方法のみによって支払報酬(本件各金員)
に係る所得を給与所得とするのは誤りである(甲66)。
b実際の費用負担の有無
専属的役務提供が事業であるというためには,役務提供のための費
用の自己負担が必要である(甲66,67。ただし,その多寡は無関
係である〔甲39〔東京地裁昭和43年4月25日判決・行集19巻
4号763頁〕,71〔東京高裁昭和47年9月14日判決・判例タ
イムズ289号355頁〕,72〔最高裁昭和53年8月29日第三
小法廷判決・訟務月報24巻11号2430頁〕)が,本件講師等は
教材費その他各種の費用を負担している(前記イ(ウ))。費用負担義
務の有無のみを判断要素とするのは誤りである。
c労働基準法の適用の有無
その者の地位や役職に応じて受ける報酬等(国会議員,公務員及び
会社役員等の受ける歳費及び報酬等)については,事業所得との相違
は問題とならないが,地位や役職から所得区分が明らかとならない場
合は,当該報酬等について労働基準法の適用の有無を判断要素とする
ことが有用である(甲66)ところ,本件講師等及び本件各金員には
同法の適用がない。
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d源泉徴収との関係
所得税基本通達204-21は,デパート等で常時役務を提供し,
かつ,その役務提供の状態が当該デパート等の職員の勤務状態に類似
するマネキン等の報酬等について,給与等として源泉徴収をして差し
支えないとしているが,「差し支えない」との規定ぶりからすれば,
マネキン等の報酬等が事業所得又は雑所得であることを前提として,
徴税の便宜上源泉徴収を認めただけで,その本質が給与所得となるも
のではない。
e雑所得との関係
事業所得と雑所得は,独立性を有する活動が社会通念上事業と認め
られるか否かによって区分され(甲37,65),独立性を有する活
動であっても社会通念上事業と認められない場合の所得は,雑所得と
なり,独立性のない給与所得とはなり得ない。
エ指揮監督及び従属性
(ア)役務提供契約における監督関係及び裁量
一定の役務の提供契約においては,全ての場合に,役務を提供される
者と提供する者との間の一定の監督関係及び役務提供者の一定の裁量が
認められるから,このような監督関係及び裁量があることにより,本件
講師等が直接的又は間接的に控訴人の監督下に置かれているとすること
はできない。
(イ)本件講師等に対する研修等の不存在
控訴人は,本件講師等ないし希望者に対し,サービスとしての外部講
師による講演会等は行ったことはあるが,体系的な研修や指導を行って
おらず,研修等を受けることを義務付けたり,必要に応じてこれを行っ
たりしていない。
aホームページの記載
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控訴人の学習塾等向けのD事業及び家庭教師事業であるE事業の各
ホームページには,引用に係る原判決の「第2事案の概要等」中の
3(前提事実)の(2)ウ及び(3)ウのような記載が存在する(前者につ
き甲16,乙2~4の2,33,後者につき乙10~13,16,3
4)。
しかし,本件各処分に係る平成15年ないし平成19年当時,控訴
人のD事業部には教育経験のない2~3名の事務スタッフしかおらず,
受託案件に関わる多数の本件講師等に指導を行うことは能力的・態勢
的に不可能であった(コーディネーターが受託案件について本件講師
等を選考して業務委託の打診などだけを行っていた〔証人C〕。)。
家庭教師事業についても同様である。
実態と異なるかのような控訴人のホームページの記載は,その性質
上,これが外から見られた際の印象を高めるための営業的かつ広告的
な観点から行われたものであり,通常よくある広告表現における実際
の事業活動との一定の相違(虚偽広告・誇大広告のレベルに至らない
もの)にすぎず,特段不合理なものではない。また,仮にホームペー
ジの記載が妥当性を欠き,又は虚偽であったとしても,指揮命令に基
づく業務の対価としての性質がない以上,本件講師等に対する支払報
酬(本件各金員)に係る所得が給与所得となるものではない。
なお,控訴人は,ビジネスモデル上,本件講師等に対する研修等が
全く不要であるため,平成25年8月からホームページにおいて,本
件講師等ないしその希望者に対して研修や指導を行っている旨の従前
の記載の一部修正ないし削除を順次実施している(甲77)。
b本件アンケートの結果
本件講師等の大部分は,本件アンケート(甲46の1~4)におい
て,
控訴人の研修を受けたことはないと回答しており,
有効回答率
(2
-13-
6%)を考慮しても,研修等が実施されていなかったといえる。
控訴人の監督関係を肯定するには少なくとも本件講師等の過半数を
研修等に参加させる必要がある(一部の希望者に対する研修は,本件
講師等の能力に関係せず,控訴人がその能力を管理しているとはいえ
ない。)が,控訴人は,本件講師等に対し,希望者に対するものを含
め,教授法のノウハウを伝達するような研修等を実施していない。
c研修の不必要性及び不可能性
控訴人のビジネスモデル及び能力等によれば,本件講師等に対する
研修等を実施する必要はなく,控訴人がこれを行うことは不可能であ
る(前記a及びイ(ア)b)。
d研修の義務付けがないこと
控訴人は,
本件講師等の教育内容について関心を有していないから,
研修を義務付けていない。
eマニュアル等の不使用
控訴人は,本件講師等に対し,各教科の教育内容や授業の進め方等
のノウハウについての研修を行っておらず,本件講師等は,控訴人が
作成したカリキュラムに従った統一的かつ同一内容の授業や控訴人が
開発したノウハウに基づくスタイルの授業は全く行っていない。本件
授業マニュアル及び本件講師研修資料(乙9,13)は,上記内容の
研修には全く不十分である上,
本件講師等にほとんど渡されていない。
オ本件各金員と源泉徴収制度が予定する所得
源泉徴収制度が支障なく機能するためには,ある所得が源泉徴収手続の
予定する所得に該当するか否かの観点からも検討する必要があり,本件各
金員に係る所得が給与所得に当たるか否かも同様の観点から検討すべきで
ある(甲56〔京都地裁平成11年(行ウ)第27号・平成14年9月20
日判決〕)。そして,同制度が予定する所得は,それが源泉徴収の対象と
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なるかどうか及び徴収納付すべき税額が一義的で明確に,かつ,容易に認
定判断され得るものであることが望ましいところ(甲51〔東京高裁昭和
55年10月27日判決・訟務月報27巻1号217頁〕),本件各金員
に係る所得は,給与所得に該当するか否かの争いが生じ得るから,同制度
の予定する所得には該当しない。
(2)控訴人には正当な理由があること
控訴人は,本件各処分より前の20年間にわたり,本件講師等に対する支
払報酬(本件各金員)を業務委託契約に基づく外注費として支払い,渋谷税
務署は,税務調査(重点的な精査)の際にも,控訴人に対し,その問題点を
指摘せず,本件各金員が給与所得ではないとの見解に基づく指導をしてきた
(甲75)。
このような状況で,控訴人が,渋谷税務署の採用した見解を信頼し,源泉
徴収をしなかったことなどは,やむを得ない事情によるものというべきであ
る。したがって,仮に本件各金員が給与所得に該当するとしても,控訴人に
は通則法65条4項にいう「正当な理由」及び同法67条1項ただし書にい
う「正当な理由」がある。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由
は,
後記2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,
原判決の「事実及び理由」中「第3当裁判所の判断」に記載のとおりである
から,これを引用する。
2当審における控訴人の主張に対する判断
(1)本件各金員に係る所得の給与所得該当性
ア控訴人は,
前記第2の3(1)のとおり,
本件各金員に係る所得は給与所得
(所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得)に該当しない旨主張
する。
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上記主張の大部分は原審における同旨の主張の繰り返しであり,これが
採用し得ないものであることは引用に係る原判決の「第3当裁判所の判
断」中の1に説示のとおりであるが,以下に若干補足して検討する。
イ給与所得該当性の判断枠組み
(ア)控訴人は,従属性が給与所得に該当することの必要要件である旨主
張する(前記第2の3(1)ア)。
しかし,最高裁昭和56年判決(弁護士の顧問料収入による所得が事
業所得に当たるとした最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決・民
集35巻3号672頁),最高裁平成13年判決(民法上の組合の組合
員が組合の事業に係る作業に従事して支払を受けた収入に係る所得が給
与所得に当たるとした最高裁平成13年7月13日第二小法廷判決・裁
判集民事202号673頁)及び最高裁平成17年判決(米国法人の子
会社である日本法人の代表取締役が親会社である米国法人から付与され
たストックオプションを行使して得た利益が給与所得に当たるとした最
高裁平成17年1月25日第三小法廷判決・民集59巻1号64頁)
は,
当該所得が給与所得に該当するかどうかに関し,これを一般的抽象的に
分類すべきものではなく,その支払(収入)の原因となった法律関係に
ついての当事者の意思ないし認識,当該労務の提供や支払の具体的態様
等を考察して客観的,実質的に判断すべきことを前提として,それぞれ
の事案に鑑み,いわゆる従属性あるいは非独立性などについての検討を
加えているものにすぎず,従属性が認められる場合の労務提供の対価に
ついては給与所得該当性を肯定し得るとしても(したがって,そのよう
な観点から従属性を示すものとされる点の有無及び内容について検討す
るのは何ら不適切なものではない。),従属性をもって当該対価が給与
所得に当たるための必要要件であるとするものではない(最高裁昭和5
6年判決及び最高裁平成17年判決の各判示につき引用に係る原判決の
-16-
「第3当裁判所の判断」中の1(1)のア及びイ)。そして,給与所得に
該当することが明らかな国会議員の歳費や会社の代表取締役の役員報
酬・役員賞与などは,それらの者の労務の提供が従属的なものとはいい
難く,従属性を必要要件とする解釈は,歳費及び賞与を給与所得として
例示列挙する所得税法28条1項の解釈として採り得ない(控訴人が挙
げる職務専念義務などによって従属性における指揮命令関係を直ちに肯
定することはできない。)。
控訴人が引用する下級審の裁判例及び学説等(甲37,39〔東京地
裁昭和43年4月25日判決・行集19巻4号763頁〕,56〔京都
地裁平成11年(行ウ)第27号・平成14年9月20日判決〕,57,
60~62,65,乙21)の中には,従属性が給与所得に該当するた
めの必要要件であるかのように説くものがあるが,それらは上記各最高
裁判決を正解しないものといわざるを得ない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(イ)上記に関し,控訴人は,私人間の契約に基づく当事者の認識(意思)
が重視されるべきである旨主張する(前記第2の3(1)ア(イ))。
しかし,前記(ア)のとおり,当該所得の給与所得該当性等の検討に当
たって,当事者の認識(意思)をも考慮すべきであるが,これを他の要
素よりも格別重視しなければならないとする根拠はない。例えば,実質
が雇用契約であるにもかかわらず,業務を行う側にとって労務提供等の
対価を事業所得とし,支払をする側にとって外注費に当たるような形式
の契約を締結したからといって,
雇用契約に基づく報酬としての収入
(支
払)が給与所得でなくなるものではなく,このように解したからといっ
て,私人間の契約を著しく軽視することにはならない。また,本件講師
等が本件各金員に係る所得を事業所得等として申告したことがあったと
しても,そのことから直ちに本件各金員に係る所得が給与所得でないこ
-17-
とになるものでもない。なお,控訴人が挙げる電力会社の検針員の所得
に関する裁判例(甲26〔福岡地裁昭和62年7月21日判決・訟務月
報34巻1号187頁〕,48〔福岡高裁昭和63年11月22日判決・
税務訴訟資料166号505頁〕)は,委託検針契約の性質,委託手数
料の性格及び検針員の行う業務の具体的内容などをも総合して考慮し,
委託手数料が事業所得に該当すると判断した(当該事件の原告らの給与
所得に該当するとの主張を否定した。)事案であって,当事者の意思を
重視して給与所得該当性を否定したものではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
ウ控訴人の事業形態及び契約関係等
(ア)控訴人は,自らの事業形態(ビジネスモデル),本件講師等の個別
業務を受託するか否かの決定権及び単価その他の契約条件についての交
渉権並びに本件講師等の費用負担等の点を挙げて,本件講師の業務の独
立性が肯定され,その従属性が否定される旨主張する(前記第2の3(1)
イ)。
しかし,これらの点については,前記イ(ア)及び引用に係る原判決の
「第3当裁判所の判断」中の1の(2)及び(3)において本件の事実関係
(原判決の前記部分記載の前提事実及び証拠によって認定できる事実)
に基づいて詳細に説示しているとおりであり,控訴人が受託料と支払報
酬との差額を売上総利益とする薄利の事業を営んでいること,本件各顧
客との間の受託契約並びに本件講師等との間の基本契約及び個別契約を
締結していること,コストを小さくする必要があること,控訴人に登録
された本件講師等には様々なレベルの者がいることなどは,いずれも控
訴人の支払報酬(本件各金員)に係る所得が給与所得に該当することを
否定する根拠となるものではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
-18-
(イ)上記に関連して,控訴人は,本件講師等が現実に費用負担をしてい
ることを挙げて,本件講師の独立性が肯定される旨主張する(前記第2
の3(1)イ(ウ))。
しかし,
引用に係る原判決の
「第3当裁判所の判断」
中の1(2)イ(イ)
に説示のとおり,本件講師等が基本契約又は個別契約において負担する
ことを義務付けられている費用(基本契約3条に定める講師等の登録に
必要な事務手数料1000円及び本件各金員の振込手数料を負担すべき
義務に係る費用)があることをもって,その労務の提供等に当たって必
要な費用を負担する義務を負っているということはできないし,それ以
外に本件講師等が労務の提供等に当たって必要な費用を義務として負担
していることを認めるに足りる客観的な証拠はない。また,本件講師等
が義務なくして上記費用を負担したことがあったとしても,そのことに
よって本件各金員が給与所得に該当しなくなるものではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(ウ)また,控訴人は,本件講師等は,時間的・空間的拘束を受けていな
い旨主張する(前記第2の3(1)イ(エ))。
しかし,本件講師等は,講義等ないし個人指導に従事した時間数に応
じて本件各金員の支払を受けることができるところ,その場所及び時間
は控訴人と本件講師等との間の契約においてあらかじめ定められている
のであって,仮に本件講師等が控訴人の了解を得ずに本件顧客と相談し
て指導の場所や時間を変更することがあるとしても,そのことによって
本件講師等の空間的・時間的拘束が存在しないことになるものではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
エ本件講師等の業務の独立性
(ア)控訴人は,
本件講師等の業務には,
事業所得を生ずべき事業の範囲,
課税実務における取扱い及び裁判例によって導かれる独立性の有無の判
-19-
断基準に照らし,独立性があると評価できるから,本件各金員に係る所
得は,給与所得に該当しないなどと主張する(前記第2の3(1)ウ)。
しかし,家庭教師が事業所得を生ずべき事業の1つであり,実際に家
庭教師として得た所得が事業所得と認定されることがあるとしても,そ
のことによって本件講師等に支払われた本件各金員が事業所得に該当す
ることになるものではない(なお,控訴人が引用する甲69〔名古屋地
裁昭和60年4月26日判決・行集36巻4号589頁〕の裁判例は,
会社役員の先物取引による所得に関するものであり,控訴人の主張の根
拠となるものではない。)。また,本件講師等の個別業務を受託するか
否かの決定権及び単価その他の契約条件についての交渉権並びに費用負
担の点が,その独立性を肯定し,給与所得に該当することを否定する根
拠となるものでないことは,前記イ(イ)及び引用に係る原判決の「第3
当裁判所の判断」中の1の(2)及び(3)に説示のとおりである。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(イ)上記に関し,控訴人は,本件講師等及び本件各金員には労働基準法
の適用がないことを挙げて,
給与所得該当性が否定される旨主張する
(前
記第2の3(1)ウ(イ)c)。
しかし,労働基準法の適用がないことによって,直ちに本件講師等の
本件各金員に係る所得が給与所得に該当しないことになるものではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(ウ)また,控訴人は,マネキン等の報酬等に関する所得税基本通達20
4-21が,給与等として源泉徴収をして「差し支えない」としている
ことを挙げて,本件各金員に係る所得の本質が給与所得ではないかのよ
うに主張する(前記第2の3(1)ウ(イ)d)。
しかし,本件講師等とは異なるマネキンに関する上記通達の文言によ
って,本件各金員に係る所得が給与所得に該当することが否定されるも
-20-
のではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
オ指揮監督及び従属性
(ア)控訴人は,本件講師等に対する研修及び指導は実際に行われておら
ず,これを行う必要はなく,また,控訴人がこれを行う能力等もないか
ら,本件講師等が直接的又は間接的に控訴人の監督下に置かれていると
することはできない旨主張する(前記第2の3(1)エ)。
しかし,引用に係る原判決の「第2事案の概要等」中の3(前提事
実)の(2)ウ及び(3)ウの前提事実並びに同「第3当裁判所の判断」中
の1(2)ウに説示のとおり,控訴人の行う業務の内容,控訴人のホームペ
ージ等の記載及び本件アンケート
(甲46の1~3)
の結果等に照らし,
控訴人においては,本件講師等ないしその希望者に対し,研修や指導を
受けることを義務付け,必要に応じてこれを行っているものと認められ
る。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(イ)この点に関し,控訴人は,自らのホームページの記載が実際と異な
るとして,平成25年8月からこれを修正ないし削除する作業を実施し
ているなどと主張する(前記第2の3(1)エ(イ))。
しかし,仮に控訴人が平成25年8月からホームページにおいて,本
件講師等ないしその希望者に対する指導を行っている旨の従前の記載の
一部修正ないし削除をする作業を実施しているとしても,そのことによ
って,本件各月分(平成15年10月分から平成19年10月分までの
各月分)に本件講師等が支払を受けた本件各金員に係る所得が給与所得
に該当することを否定する根拠となるものではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
カ本件各金員と源泉徴収制度が予定する所得
-21-
控訴人は,源泉徴収制度の予定する所得は,それが源泉徴収の対象とな
るかどうか及び徴収納付すべき税額が一義的で明確に,かつ,容易に認定
判断され得るものであることが望ましいところ,本件各金員に係る所得は
給与所得に該当するか否かの争いが生じ得るから,これを給与所得に該当
するとすることはできない旨主張する(前記第2の3(1)オ)。
しかし,引用に係る原判決の「第3当裁判所の判断」中の1(3)エに説
示のとおり,上記主張は,所得税法28条1項及び183条1項の規定を
無視した議論というべきである。なお,控訴人が挙げる裁判例(甲56〔京
都地裁平成11年(行ウ)第27号・平成14年9月20日判決〕)は,控
訴人の主張するような結論を導く判示をするものではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(2)控訴人には正当な理由があること
控訴人は,通則法65条4項にいう「正当な理由」及び同法67条1項た
だし書にいう「正当な理由」がある旨主張する。
しかし,引用に係る原判決の「第3当裁判所の判断」中の2に説示のと
おり,渋谷税務署の職員が,控訴人と本件講師等の間の契約の内容等を具体
的に検討した上で,本件各金員に係る所得が事業所得に該当するとの判断を
積極的に示したと認めることはできず,
控訴人による不納付及び過少申告が,
上記各正当な理由に当たる真に納税者の責めに帰すことのできない客観的事
情がある場合であるとはいえない。この点に関し,甲75(控訴人の顧問税
理士F作成の陳述書)には,控訴人の主張に沿う記載もあるものの,本件各
処分の前の税務調査において,渋谷税務署の調査担当者が本件各金員は事業
所得に該当し源泉徴収をする必要がない旨の指導をしたとの事実を認めるに
足りる客観的な証拠はない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
3以上によれば,
控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであって,
-22-
これと同旨の原判決は相当である。
よって,控訴人の本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとし,主
文のとおり判決する。
東京高等裁判所第15民事部
裁判長裁判官井上繁規
裁判官笠井勝彦
裁判官木太伸広

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