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平成19年1月30日判決言渡同日判決原本領収裁判所書記官
平成16年(行ウ)第203号,同第241号,同第242号及び同第243号違法公金
()(「」「」「」「」支出金返還住民訴訟請求事件以下それぞれ甲事件乙事件丙事件丁事件
という)。
口頭弁論の終結の日平成18年10月31日
判決
主文
1本件訴えのうち,甲事件並びに乙事件に係る部分,及び丙事件のうち別紙(省
略)記載番号47から67までに係る部分を,いずれも却下する。
2被告は,I知事及びT特別秘書に対し,連帯して金5万8065円及びこれに
対する平成15年3月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求
せよ。
3被告は,I知事に対し,金34万1092円及びこれに対する平成15年6月
18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
4被告は,M秘書課長に対し,各上記2,3と同額の金員の賠償を命令せよ。
5原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
6訴訟費用はこれを78分し,その76を原告らの負担とし,その余を被告の負
担とする。
7補助参加に要した費用はこれを78分し,その76を原告らの負担とし,その
余を被告補助参加人の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1甲事件
被告は,I知事その他別紙記載番号1ないし17についての都側出席者欄記載の者
及び同資金前渡を受けた職員欄記載の者に対し,連帯して同飲食代金欄記載の金員及びこ
れに対する同支払年月日欄記載の年月日から支払済みまで年5分の金員を支払うよう請求
せよ。
2乙事件
被告は,I知事その他別紙記載番号18ないし46についての都側出席者欄記載の
者及び同資金前渡を受けた職員欄記載の者に対し,連帯して同飲食代金欄記載の金員及び
これに対する同支払年月日欄記載の年月日から支払済みまで年5分の金員を支払うよう請
求せよ。
3丙事件
被告は,I知事その他別紙記載番号47ないし70についての都側出席者欄記載の
者及び同資金前渡を受けた職員欄記載の者に対し,連帯して同飲食代金欄記載の金員及び
これに対する同支払年月日欄記載の年月日から支払済みまで年5分の金員を支払うよう請
求せよ。
4丁事件
被告は,I知事その他別紙記載番号71ないし78についての都側出席者欄記載の
者及び同資金前渡を受けた職員欄記載の者に対し,連帯して同飲食代金欄記載の金員及び
これに対する同支払年月日欄記載の年月日から支払済みまで年5分の金員を支払うよう請
求せよ。
第2事案の概要
1法令の定め等
()地方自治法(以下単に「法」ともいう)232条1項は,普通地方公共団体が1。
その事務を処理するために必要な経費その他法律又はこれに基づく政令により当該普通地
方公共団体の負担に属する経費を支弁する旨を規定している。
()東京都においては,東京都会計事務処理規則(昭和39年東京都規則第88号。2
以下「会計事務規則」という)76条1項22号に基づいて,各局の交際費に係る事務。
を所管する組織の課長等の職員の請求により,交際費にかかる資金前渡が行われ,資金前
渡を受けた職員が交際費の支払を行っている。なお,資金前渡を受けた者に対する契約事
務の委任に関する規則(昭和39年東京都規則第139号)に基づいて,その交付を受け
た資金の範囲内において処理する契約については,資金前渡を受けた職員が交際費に係る
契約に関する事務の委任を受けている(甲1,乙7。)
ところで,知事等の秘書に関する事務は平成12年7月31日までは総務局知事
,,室が所管していたところ同年8月1日に知事室は総務局から政策報道室に所属が変更し
平成13年4月1日に政策報道室は知事本部に所属変更し,それに伴い,知事室は秘書部
に組織変更したものである。したがって,平成12年7月31日までは東京都総務局知事
室が,同年8月1日から平成13年3月31日までは東京都政策報道室知事室が,平成1
3年4月1日から平成16年3月31日までは東京都知事本部秘書部秘書課が,別紙記載
(「」。)()。の交際費以下本件交際費というに係る事務を所管する組織である乙8∼10
また,会計事務規則6条1項1号は,局の予算事務を主管する課長又は担当課長
に対して,当該局に属する支出の命令に関する事務を委任しており,本件交際費に係る支
出命令権限は,平成12年7月31日までは総務局総務部総務課長に,同年8月1日から
平成13年3月31日までは政策報道室政策調整部総務課長に,平成13年4月1日から
平成16年3月31日までは知事本部企画調整部総務課長に委任され,各支出命令者が出
納長に対し支出命令をし,出納長が資金前渡受者に対して支出を行っている(地方自治法
232条の4第1項,232条の5第2項。)
()東京都においては,A前知事が平成8年2月にいわゆる「官官接待」を原則的に3
全廃する方針を表明し,同年4月16日,総務局長が各局(室,本部)長に対する「経費
を伴う会議の開催基準(甲第3号証)を通知し,飲食を伴う随時の協議・打合せは,原」
則として全廃し,例外として認められる随時の協議・打合せとしては,個別の事業に関わ
る具体的な課題等についての会議のうち,協議・打合せの相手方の都合等で日中,会議室
などでの開催が困難で,かつ時間帯等からも社会通念上も飲食を伴うことがやむをえない
と判断される場合に限り,その場合にあっても,出席者を厳選し,場所や単価も必要最小
限のものとするなど簡素化に努めなければならないこととしている。
()さらに,東京都は,平成10年7月の「交際費を考える会(座長・M中央大学4」
名誉教授)の報告に基づき「交際費支出基準」を改正した(甲4。これによれば,公,)
務員及び内部職員に対する支出は原則廃止し,また,接遇・懇談は,民間有識者や各種団
体との意見交換や情報収集を目的として知事等が特に必要と認めた場合に限り行うものと
し,目的,内容,相手方等を十分勘案し,適切な場所で,必要最小限の参加者となるよう
配慮し,支出額についても,社会通念上妥当と認められる範囲内でなければならないとさ
れている。
2争いのない事実等(証拠等により認定した事実は末尾に証拠等を挙げた)。
()原告らは,東京都民である。1
被告は,東京都知事である。
()特別秘書は,地方公務員法3条3項4号及び特別職の指定に関する条例(昭和22
6年東京都条例第14号)に基づき設置されている職である。その職務内容は,高度な政
策的判断を含め,一般的行政事務を超えて知事を補佐するとともに,知事からの特命事項
について連絡調整を行うことであり,そのうち特に重要なものは,知事が様々な政策の方
針を検討する段階において,情報収集や対外調整を必要とした場合,直接,知事の命を受
け,知事に代わりこれらの活動を行い,知事の政策立案をサポートすることであるとされ
ている(乙22。)
()I知事,H副知事,O出納長,H特別秘書,T特別秘書ら別紙都側出席者欄記載3
の出席者(ただし,被告は,別紙記載番号(以下単に「番号」ともいう)26,35,。
37,40,41の都側の出席者は,それぞれT特別秘書,T特別秘書,H副知事,H副
知事,T特別秘書であると主張している。また,番号71の都側出席者がT特別秘書のほ
かI知事であることは,当事者間に争いがない)は,別紙飲食場所欄記載の場所におい。
て,T参与,I参与その他別紙飲食者欄記載の者とともに飲食をし(ただし,被告は,番
号21は飲食によるものではなく,O国土交通大臣に対する大臣就任の慶賀として胡蝶蘭
を贈呈したものであると主張している,その費用である別紙飲食代金欄記載の金員が。)
各公金から支出された。
上記各支出は,いずれも総務局知事室副室長,政策報道室知事室副参事又は知事
,(「」本部秘書部秘書課長が交際費について資金前渡を受け支払を行った以下本件各支出
ないし「本件各支払」という)ものである(弁論の全趣旨。。)
()原告らは,平成16年3月10日,別紙記載の公金支出につき,東京都監査委員4
に対し,地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ,同年4月21日に,
東京都監査委員は,原告らに対し,上記監査請求が同条に定める住民監査請求としての要
件を欠いているものとして,同条4項に定める監査を実施しない旨の通知をした。
,,()。()原告らは平成16年5月19日本件訴えを提起した当裁判所に顕著な事実5
3争点
()別紙記載番号1ないし67に係る監査請求の期間経過の「正当な理由」の有無1
()本件各支出の違法性2
4争点に関する当事者の主張
()別紙記載番号1ないし67に係る監査請求の期間経過の「正当な理由」の有無1
(原告らの主張)
ア原告らは,新聞広告を契機として「サンデー毎日」2004年1月18日号の
「知事交際費』の闇」という記事を読んだ上で,平成16年1月13日に第三者の情報『
開示請求に応じて東京都が開示した「知事交際費現金出入簿」を見て,その支出の適法性
に疑問を持ち,その記載内容を精査し問題のある支出を抽出した上で,同年3月10日に
住民監査請求をしたものである。したがって,原告らについては,住民が相当の注意力を
もって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を
知ることができた時から相当な期間内に監査請求をしたといえる。
イ交際費執行状況で知ることができるのは,知事・副知事に係る交際費(接遇)
の支払件数及び総支払額という極めて抽象的な事柄にすぎない。接遇の目的・接遇の相手
方・接遇の内容・接遇にかかった個別の費用などが明らかになって,初めて違法・不当な
公金の支出があったことを一般都民は疑うことができ,調査しようと思うのである。しか
し,そのような事項は交際費執行状況の中では公表されていない。
ウ交際費の支出があったことを知った段階で,さらにその詳細な情報公開請求を
しなくてはならないというのは,原告らに過度の調査を強いるものである。一般都民は,
執行機関による違法行為についての疑いを持たない以上,その行為に係る書類の情報開示
請求をすぐに行わなかったからといって,責められるいわれはない。まして,被告は,税
。,金の無駄遣いをなくし都財政の赤字を解消することを公約としていたのである原告らが
被告の選挙公約を信じ,その交際費支出が違法ではないかという疑いを持たなかったのは
当然である。
エ交際費に係る文書の閲覧や情報開示請求等が可能であったとしても,当該支出
行為が違法との疑いを持つ前から,積極的にこれらの調査を尽くす義務が認められるもの
ではない。したがって,住民における積極的調査義務が「相当の注意力」をもってする調
査の前提となるわけではない。もし,かかる調査義務を一般住民に課すならば,東京都情
報公開条例1条の理念に反する結果となるとともに,住民監査請求の趣旨,すなわち普通
地方公共団体の財政の腐敗防止を図り,住民全体の利益を確保する見地から,住民訴訟の
前置手続として,まず当該普通地方公共団体の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る
事実について監査の機会を与え,当該行為又は当該怠る事実の違法,不当を当該普通地方
公共団体の自治的,内部的処理によって予防,是正させることを目的とする」趣旨(最高
裁昭和62年2月20日判決・民集41巻2号20頁,同平成10年12月18日判決・
民集52巻9号2039頁)に反することは明らかである。
オ一連の最高裁判例が「客観的にみて」と述べるのは,監査請求をした者の関心
の強弱や経験によって相当な期間の起算時を変えることはできないという趣旨である。も
し,住民の関心や日頃の活動に基づいて被告が主張するような差違を設けるなら,税金の
使い道に強い関心を持ち,その監視を行う形で地方自治に関与しようとする住民が却って
,()。監査請求を制限される結果となり地方自治の本旨住民自治の理念に反し不当である
(被告の主張)
ア法242条2項ただし書の「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,
普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をする
に足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間
内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁判所平成14年9月12
。「」。)。日判決・民集56巻7号1481頁以下最高裁平成14年9月12日判決という
イ東京都においては,平成12年以降,例年7月に前年度の交際費の支払件数,
支払額等を記載した「交際費執行状況」を都庁都民情報ルームで公衆閲覧に供しており,
交際費の支払状況が都民に周知されているのであるから,本件各支出が秘密裏に行われて
いた事実はない。そうすると,原告らは,本件各支出がなされた後であれば,随時,情報
開示請求を行うことにより必要な情報を入手して,監査請求をするに足りる程度に当該行
為の存在及び内容を知ることができ,これに基づき監査請求を行うこともできたにもかか
,,「」わらずこれを行わなかったのであるから監査請求期間を徒過したことに正当な理由
は認められない。
ウ別紙記載番号1ないし67に係る各支出についても,それぞれ平成13年7月
16日,平成14年7月16日及び平成15年7月16日に執行状況の概要が公衆閲覧に
供されており,どんなに遅くとも,この時点で原告ら住民が相当の注意力をもって調査す
れば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に各支出の存在及び内容を知ることができ
たということができる。にもかかわらず,原告らは,時期的に最も新しい平成14年度に
行われた同番号47ないし67に係る各支出について公衆閲覧に供された平成15年7月
16日からでも,約8か月を経て,平成12年度及び平成13年度に行われた同番号1な
いし46に係る各支出に至っては公衆閲覧に供されてから少なくとも1年8か月以上を経
て,本件監査請求を行っており,いずれも,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をも
って調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知
ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求が行われたとは認められない。
エ交際費執行状況の閲覧によって知ることができる情報は「知事・副知事」の,
交際費区分「接遇」の支払件数及び総支払額にすぎず,個別具体的な接遇の内容や各支払
額までは直ちに知り得ない。しかしながら「知事・副知事」の交際費区分「接遇」の支,
,,払件数及び総支払額を知ることができれば少なくとも接遇が何回程度行われているのか
どの程度の規模の接遇なのか等を推測しうる。また,これを端緒として,情報開示請求を
行うなどして,現金出納簿をはじめとする交際費の支払に付随する情報を入手し,より個
別具体的な接遇の回数や内容,各回の支払額まで知ることができる。したがって,交際費
執行状況が閲覧可能となり,さらに,それを端緒とする情報開示請求が事実上行いうる状
態になったことをもって,住民が「相当の注意力」をもって調査すれば「客観的に」み,
て監査請求をするに足りる程度に本件各支出の存在及び内容を知ることができたものとい
うことができる。このことは,原告らが主張する時期より以前に,第三者によって平成1
5年11月14日及び同年12月17日に交際費に係る情報開示請求が行われ,被告は,
知事交際費の現金出納簿等を開示していることからも明らかである。
オまた,最高裁判所平成14年10月15日判決(判例時報1807号79頁。
以下「最高裁平成14年10月15日判決」という)は,普通地方公共団体の一般住民。
が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて監査請求をするに足りる程度に財務
会計上の行為の存在又は内容を知ることができなくても,監査請求をした者が監査請求を
するに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される場合には,正
当な理由の有無は,そのように解される時から相当な期間内に監査請求したかどうかによ
って判断すべきであるとして,最高裁平成14年9月12日判決にいう「特段の事情」が
認められる場合を示した。最高裁平成14年10月15日判決の立場に立てば,仮に,一
般都民に対して,情報開示請求を行うことを要求することが酷といえる場合であっても,
原告らとの関係では別に捉えることができ「正当な理由」の存在を否定することができ,
る。
すなわち,原告らは「税金を監視する会」という団体名で活動し,昭和63,
年4月から平成2年6月までの東京都知事の交際費に関する現金出納簿等の情報公開を求
めて差戻審で係争中であるなど,交際費について従前より強い関心を有している。このよ
うな原告らであれば,交際費執行状況の閲覧によって直ちに知ることができる情報が「知
」「」,,事・副知事の交際費区分接遇の支払件数及び総支払額にすぎないとしても万が一
支払の適法性について疑われるものがあったならば,オンブズマンとして今まで培った経
験等から,交際費について特段関心を有していない一般都民とは異なる印象を受け,情報
。,,開示請求を行うきっかけになりうることは想像に難くないしたがって原告らの場合は
交際費執行状況の閲覧をきっかけとして,情報開示請求を行うなどして,監査請求をする
に足りる程度に本件各支出の存在及び内容を知ることができたと解される場合にも該当
し,この点からも,原告らが監査請求期間を徒過したことについて「正当な理由」の存在
を認めることができない。
()本件各支出の違法性2
(原告らの主張)
ア東京都の定めた支出基準等に違反していること
東京都は,平成8年4月16日に「経費を伴う会議の開催基準」を公表し,こ
の種の会議における社会通念上の儀礼の基準として「飲食を伴う随時の協議・打合せ」,
は原則として全廃し,例外として認められる「随時の協議・打合せ」としては,個別の事
業にかかわる具体的な課題等についての会議のうち,協議・打合せの相手方の都合等で日
中,会議室などの開催が困難で,かつ時間帯等からも社会通念上飲食を伴うことがやむを
得ないと判断される場合に限り,その場合にあっても,出席者を厳選し,場所や単価も必
要最小限度のものとするなど簡素化に努めなければならないこととした。この基準は,I
知事になってからも,何ら基準としての変更のないものである。
また,平成11年1月22日に公表された「交際費支出基準」は,A前知事の
際に,社会通念上の儀礼として交際費を支出するに当たり,公務員及び内部職員に対する
支出は原則廃止し,知事等の表意者は「支出の内容や相手方が社会通念上妥当と認めら,
れる範囲内で,かつ必要最小限度の金額となるよう常に努めなければならない」とし,接
遇・懇談は「民間有識者や各種団体との意見交換や情報収集を目的として,知事等が特,
に必要と認めた場合に限り行うもの」とし「目的,内容,相手方等を十分勘案し,適切,
な場所で,必要最小限の参加者となるよう配慮し,支出額についても,社会通念上妥当と
認められる範囲内でなければならない」としたものである。この「交際費支出基準」は,
()知事交際費における東京高等裁判所平成9年5月13日判決判例時報1604号39頁
をきっかけに,A前知事が,時代に適合した都民に納得の得られる交際費のあり方につい
て検討することを指示したのを受けて,有識者7名からなる「交際費を考える会」が知事
交際費と儀礼交際用経費について検討したものであり,正に,知事交際費等の支出の内容
や相手方において「都民から納得の得られる」社会通念上の基準を定立したものである。
別紙記載の各飲食は,上記「経費を伴う会議の開催基準」及び「交際費支出基
準」に違反するものである。とりわけ,T参与,I参与は,いずれも東京都における特別
職の公務員である参与でありいかなる意味においてもこの参与両名を相手方とする随,,「
時の協議・打合せ」と「交際費の支出」は避けられるべきであった。
イ個別の支出の違法性(別紙番号68ないし78の交際について)
被告は,上記各支出に係る交際は,羽田空港の国際化,横田基地軍民共用化,
東京大都市マラソンに向けた取組み,アジア大都市ネットワーク21の構築等の政策実現
のための交際であったと主張する。しかし,被告の主張は全て抽象的であり,かえってI
知事が,上記各施策の立案において何ら具体的には関与していないことを明らかにするも
のである。
被告主張の交際の目的,内容,相手方等を十分勘案したとしても,日時,場所
もふさわしいことや,また,必要最小限度となるよう配慮し支出額も社会通念上妥当と認
められる範囲内であることは,全く明らかでない。かえって,その金額からは,日時,場
所及び支出額が社会通念上妥当であると認められる範囲であるとはいえない。
以下の各支出は,そもそも被告が主張する目的との関連が不明であり,仮に,
被告の主張する目的に照らしたとしても,夜に高額な飲食を伴う打合せを行うことがやむ
を得ないといえる合理的根拠は全く存在しないしたがって本件各支出はいずれも経。,,「
費を伴う会議の開催基準」及び「交際費支出基準」に反し,社会通念上不相当なものであ
り,違法である。
(ア)番号68飲食代金1人当たり1万9355円
被告は,本件支出につき,平成15年2月27日午後7時より銀座にある割
烹・小料理屋において,I知事とT特別秘書が,東京MXテレビ放送の東京都提供の広報
番組である「Tokyo,Boy(以下「本件番組」という)の制作現場の担当プロ」。
デューサーである株式会社■■取締役SUを接遇した際のものであり,会合の目的につい
て,今後の同番組の政策方針についての打ち合わせであると主張している。
しかし,本件番組は,そもそも東京都の広報番組であって,番組の政策方針
について,I知事やT特別秘書が番組の制作プロデューサーと打ち合わせを行い,意見交
換をすることは,正に純粋な業務の遂行行為であり,わざわざ食事を伴う会合を行う必要
はない。しかも,I知事は本件番組の準レギュラーであり,その出演番組ごとに打ち合わ
せが予定されており,この番組のための打ち合わせは,通常の業務時間帯(昼間)に都庁
内で行えば足りる。I知事は,週に3日ほどしか都庁に登庁していないのであり,忙しく
て夜間に会合の時間をとらざるを得ないという理由自体,合理性を欠く単なる弁解にすぎ
ない。
仮に,会合を夜行うとしても,飲食を伴う必然性は全くなく,都庁内で夜の
時間帯に飲食を伴わない打合せを行えば足りるのである。
被告は,本件飲食場所を選んだ理由として,機密性の保持や警護のしやすさ
を挙げるが,これらの点では,不特定多数人がいる外部の飲食店などではなく,都庁内の
執務室等で行うのが最も適切であるといえる。
本件においては1人当たり1万9355円の飲食がなされているが,本件飲
食場所では1人当たり1万5000円から飲食が可能なのである。支出額も,当該飲食店
の平均飲食額を1人当たり5000円近く上回っており,交際費支払額を必要最小限にし
ようという配慮すらも窺われない。
本件打ち合わせの記録はおろか飲食の明細すら残っておらず,担当秘書課長
も,本件打ち合わせ後の報告書の取りまとめや確認すらしていない。したがって,そもそ
も,本件の会合が被告の主張する目的のために行われたものかすら明らかではなく,むし
ろ単なる懇親目的を推認させるものである。
(イ)番号69飲食代金1人当たり1万9198円
被告は,本件支出につき,平成15年3月18日午後6時半より「■■」,
において,T特別秘書が,在日米国大使館に勤務する政務補佐官のSI及び米国大使館員
1名を接遇した際のものであり,会合の目的は,横田基地軍民共用化に関する意見交換で
あると主張する。
しかしながら,当該飲食の際に具体的に話された内容が記録化されていない
上,これによりいかなる政策が実現したかも明らかではない。したがって,そもそも本件
会合が被告の主張する目的のために行われたか自体が不明である。
被告の主張するように,横田基地軍民共用化が知事の選挙公約の1つで,I
都政上最も重要な問題であるのであれば,最優先事項として昼間の時間帯に予定を入れ打
合せを行うべき事柄であるといえる。やむを得ず,夜に会合の時間をとるとしても,飲食
を伴う必然性は全くない。T特別秘書とSIとは,横田基地問題について意見交換や情報
収集を行うため以前から度々面会をしていたというのであるから,都庁内又は在日米国大
使館内において,飲食を伴わない,短時間で集中した打合せをすることで,横田基地軍民
共用化についての意見交換をすることは可能である。
被告は飲食場所を選んだ理由として,SIの勤務するアメリカ大使館に近い
場所であること,政治的な話になるため機密性が保たれる個室の取れる店ということを挙
げる。しかし,機密性の点では,都庁内や在日米国大使館内で会合を行うのが適切である
といえる。
仮に,やむを得ず外部の飲食店で会合をする必要があったとしても,1人2
万円近い飲食代金が必要ということにはならない。本件の飲食場所では,平均飲食額は1
,。,人当たり7000円であり8400円で個室での飲食が可能となっている本件飲食は
この金額を1人当たり1万2000円近く上回っており,飲食額を必要最小限度にしよう
という配慮も窺われない。
(ウ)番号70飲食代金1人当たり1万5807円
本件支出は,平成15年3月11日午後7時より,寿司店において,T特別
秘書が,株式会社■■のスポーツ局勤務のH部長を接遇した際のものであり,被告は,本
件会合の目的については,東京大都市マラソンの実施について意見交換をしたもので,新
聞社や日本陸上連盟等との調整事項について話し合ったと主張する。
しかし,東京大都市マラソンの実施についての意見交換なら,昼間に都庁で
行うか,Hの勤務先の■■の社内の会議室等で行えば足りるはずである。
仮に,Hの日程上,当該日時に飯田橋付近でしか打合せができなかったとし
ても,当然に1人1万5000円を超える飲食代金が必要ということにはならない。飯田
橋付近には他にも飲食店は多数あり1人1万円以内でも十分に飲食は可能である。
また,1人1万5000円を超える夕食を共にするとなると数時間はかかる
のであり,予定を入れるのが大変なほど職務多忙なのであれば,むしろ,飲食を伴わずに
短時間に集中して打合せをするのが合理的なはずである。それにもかかわらず,あえて寿
司店で1人1万5000円を超える飲食をしているということは,当初から夜に飲食を共
にすることを前提に日程調整をしていたと考えられる。加えて,本件飲食場所は,T特別
秘書から指定があったものであり,インターネットの口コミ情報等にわずかに店舗名が出
るような,知る人が知るといった飲食店である。このように,本件においては,当初から
夜に飲食を共にすることを前提に日程調整した上,T特別秘書ないしHが飲食をしたいと
希望する飲食店を指定したと考えるのが合理的であり,職務多忙でやむを得ず本件飲食を
伴う打合せをしたと認められる事情は全く認められない。
(エ)番号71飲食代金1人当たり1万7762円
被告は,本件支出につき,平成15年2月1日午後7時半より,代官山のイ
タリア料理店において,I知事,T特別秘書及びI参与が,I参与の知己である絵画,現
代芸術,映像分野における海外の芸術家4名を接遇した際のものであり,会合の目的につ
き,若手芸術家の支援等,文化芸術の発展のために都の文化行政が果たすべき役割と意義
につき意見交換をしたものであると主張する。
しかし,都の芸術文化施策についての意見交換なら,例えば,都立美術館の
館長や都の文化政策を直接担っている担当者等を交えて行うのが合理的であるし,場所に
ついても,都庁の知事の執務室等で行うことも十分可能である。また,本件飲食は土曜の
夜に行われているが,土曜の夜にあえて懇談をしなければならない必要性は何ら存在しな
い。
また,本件の海外の芸術家4名が,具体的にどのような分野でどのような活
躍をしているか明らかではなく,都の文化行政が果たすべき役割等について意見交換する
にふさわしい人物か否かをどのように判断したかも不明である。
さらに,本件会合の事後報告は存在せず,また,都の文化政策において生活
文化局の局長などが具体的指示を出したか否かについて担当秘書課長は分からないと述べ
ている。
加えて,I参与は,東京都から月額30万円をもらっている非常勤の都職員
であり,このような者に対する接遇は官官接待に当たり,到底許されるものではない。
また,被告は,当該意見交換で,初めて,アーティスト・イン・レジデンス
という事業を行っている国があると知ったとその意見交換の意義を強調するが,平成15
年2月当時,同事業は特に意見交換によらなければ得られない特殊な知識経験とはいえな
い。このような周知ともいうべきありふれた知識を初めて得たなどと強調しているにすぎ
ないことからみても,当該意見交換が,真実,文化芸術施策のために行われたものとは考
えられない。
また,本件飲食場所の平均飲食額は1人当たり1万円弱であり,この金額を
1人当たり8000円近く上回る1人当たり1万7762円の支出をみれば,支払額を必
要最低限にしようという配慮も窺われない。
(オ)番号72飲食代金1人当たり9226円
被告は,本件支出につき,平成15年4月22日午後7時から,自由が丘の
寿司店において,T特別秘書及びI参与が,I参与の知己であるアジアの芸術家3名を接
遇した際のものであり,会合の目的につき,アジア大都市ネットワークの中の「アジア芸
術・工芸・文化・観光ネットワーク」という共同事業について,都の文化行政がどのよう
にかかわっていけるかについて意見交換をしたものであると主張する。
しかし,上記のような文化交流事業の意見交換なら,昼間で都庁で行えば足
り,夜に1人1万円近い飲食を伴って打合せをしなければならない必要性はない。
また,本件についても,接遇の相手方であるアジアの芸術家3名が具体的に
どのような活動をしているかは不明である。加えて,T特別秘書から本件飲食場所で会合
を行いたいという要請があったというのである。
本件会合の際に,具体的にどのような意見が出たか等についての記録は全く
なく,事前の記録としても「接遇等開催伺」しか存在せず,これには相手方の芸術家の名
前のみならず,存在すら記載されていない。これでは,接遇の相手方が当該意見交換をす
るのに有効・適切な相手方であるかについて判断できず,また,客観的に会合の必要性の
有無を判断することも出席者を厳選することもできない。
さらに,前記のとおり,I参与は非常勤の都職員であり,このような者に対
する接遇は官官接待に当たり,到底許されるものではない。
本件飲食場所は寿司店であり,本件において寿司店で意見交換をしなければ
ならない理由はなんら存在しないにもかかわらず,一般的に飲食額が高額になる寿司店で
,。意見交換をするということからも支払額を必要最低限にしようという配慮も窺われない
(カ)番号73飲食代金1人当たり4万2636円
被告は,本件支出につき,平成15年5月29日午後7時15分より,築地
の料亭において,I知事,H副知事及びT参与が,航空関係者5名を接遇した際のもので
あり,会合の目的につき,羽田空港の国際化問題を中心に都の航空政策の推進策について
意見交換をしたものであり,この問題は関係自治体の利害が絡む難しい問題であると主張
する。
しかし,都の航空政策の推進策の意見交換であれば,都庁や相手方航空関係
者の会社で行うことはできる。そして,本件が都にとって重要な問題であるならば,最優
先事項として昼間の時間帯に予定を入れることが可能なはずである。仮に,やむを得ず外
部の飲食店で会合を行うとしても,1人当たり4万円を超える相当高額な飲食が必要な理
由は何ら見当たらない。
参加者のT参与は,非常勤の都職員であり,このような者に対する接遇は官
官接待に当たり,到底許されるものではない。本件会合が,意見交換でなく官官接待であ
ったことは,被告がT参与以外の相手方氏名を明らかにせず,当該飲食の際に具体的に話
された内容も記録化していないこと,及びこれによりいかなる政策が実現したか明らかで
はないことからも明らかである。
本件の飲食場所の平均飲食額は不明であるが,著名な老舗料亭であり,極め
て高額な支払が予想されることは公知の事実である。それにもかかわらず,当該場所を打
合せ場所としたことからも,支出基準に基づき支払額を必要最低限にしようという配慮す
ら窺われない。
(キ)番号74飲食代金1人当たり2万2294円
被告は,本件支出につき,平成15年6月13日午後7時より,代官山のイ
タリア料理店において,I知事が,N東北大学工学部教授及び航空関係者5名を接遇した
際のものであり,会合の目的につき,アジア大都市ネットワーク21の共同事業である中
小型ジェット旅客機の開発促進に関し,意見交換をしたものであると主張する。
しかし,ジェット機の開発促進の意見交換なら,昼間に都庁や大学の研究室
又は航空機関係者の会社で行えば足りる。被告は,本件は外交問題等があるので機密性の
高い会合をする必要があるというが,機密性を高めるなら都庁の知事の執務室等で行うの
が適切なはずである。
そして,仮に,夜に外部で打合せをしなければならない場合であったとして
も,1人2万円を超える飲食代金が必要ということにはならない。
本件においても,他の接遇と同様,会議の記録は存在せず,事前の記録とし
ても接遇等開催伺があるのみであり,本件会合が真に被告主張の目的のために行われたの
かは全く不明である。
,,,,また参加者のNは東北大学の教授であるから当時は国家公務員であり
,。,このような者に対する接遇は官官接待に当たり到底許されるものではない本件会合が
,,,意見交換ではなく官官接待であったことは被告がN以外の相手方氏名を明らかにせず
当該飲食の際に具体的に話された内容も記録化していない上,これによりいかなる政策が
実現したかもあきらかではないことからも明らかである。
本件飲食場所では1人当たり1万5000円で飲食が可能であるにもかかわ
らず,本件では,この金額を1人当たり7000円以上も上回っており,支払額を必要最
低限にしようという配慮も窺われない。
(ク)番号75飲食代金1人当たり3万5824円
被告は本件支出につき平成15年7月3日午後6時半より永田町の■,,,「
■」において,I知事及びH副知事が,T株式会社ITセンター最高顧問のEほかI知事
の顧問団8名を接遇した際のものであり,会合の目的につき,都の航空政策,東京都大都
市マラソンの実施,アジア大都市との交流事業,東京の治安回復など都政の重要課題に関
し,意見交換をしたものであると主張する。
しかし,まず,その意見交換は広範囲にわたり漠然としている。しかも,常
識的に見ても,料亭で1人当たり3万5000円を超える飲食をし酒を飲みながら,当該
重要課題について濃密な議論が行えるとは思えない。上記複数の重要課題を短時間で合理
的に話し合うなら,都庁の知事の執務室や会議室等で行うべきである。しかも,会合の相
手方がI知事の顧問団だというのであるから,当然,I知事等と定期的な打合せを行うこ
とは予定されているはずである。したがって,打合せの予定を昼間の時間帯で設定するこ
とは十分可能なはずである。
また,仮に夜に打合せを行わざるを得ないとしても,1万円以下で飲食でき
る場所は多数あるのであるから,1人3万5000円を超える飲食が必要ということには
ならないはずである。
加えて,本件においては,相手方であるE以外の顧問団の氏名が明らかでな
いのみならず,当該飲食の際に具体的に話された内容も記録化していない上,これにより
いかなる政策が実現したか明らかではない。
この顧問団というのは,そもそも法律上あるいは条例上の根拠などないもの
である。そして,E以外の構成員の数や氏名が全く明らかでなく,真実存在するか否かも
定かでない。仮に存在するとしても,顧問団の役割は,むしろI知事が知事として活動す
るための能力を補完する役割を担っていると解すべきであり,これらの者との飲食はI知
事個人が私費で負担すべきものである。
本件の飲食場所である■■のコースは夜でも1人当たり2万3000円で飲
食が可能で,この金額を1人当たり1万2000円以上も上回る本件支出をみれば,支払
額を必要最低限にしようという配慮も窺われない。
(ケ)番号76飲食代金1人当たり1万6816円
被告は,本件支出につき,平成15年7月10日午後7時より,日本橋人形
町の「■■」において,T特別秘書及び当時の知事本部の政策部政策課長I,同政策部副
参事Nが,■■スポーツ財団常務理事Fほか2名を接遇した際のものであり,会合の目的
につき,東京大都市マラソンの実施に関し,現行3大会を統合するための意見交換・調整
を行ったものであると主張する。
しかし,東京大都市マラソンの実施に関し,現行3大会を統合するための意
見交換・調整であれば,都庁の会議室や■■スポーツ財団の会議室等で行うことが可能で
ある。特に,本件は都の一般職員も同行していたのであるから,昼間の勤務時間帯に飲食
を伴わない打合せをすべきである。
被告は,本件会合において先方と重要な調整が図られると主張し,一般職員
の同席は説明要員であったという。しかし,説明要員として一般職員が同席しているのな
らば,どのような説明をしたのかを記録に残すのが飲食を伴う会議を原則禁止するという
都の接遇の基準に沿うはずであるし,本件会合において重要な調整が図られるというので
あればなおさら記録に残さなければならないはずである。しかし,本件においては,打合
せの記録は存在しないし,記録を取る必要もないと強弁する。このような都側出席者や支
出命令権者の態度は,経費を伴う会議の開催基準及び交際費支出基準を無視したものであ
る。
この打合せの際に具体的にどのような話がなされたかの記録はなく,また,
この打合せの結果としてどのような政策が実現したかも明らかではない。
■■の1人当たりの飲食額は平均9000円であり,この金額を1人当たり
7000円以上も上回る本件支出をみれば,支払額を必要最低限にしようという配慮も窺
われない。
(コ)番号77飲食代金1人当たり1万1576円
被告は,本件支出につき,平成15年8月13日午後6時半より,溜池山王
の「■■」において,T特別秘書が,米国国際戦略研究センター主任研究員のW,米国ジ
ャーナリストのU,米国政治問題アナリストY及び米国大使館員1名を接遇した際のもの
であり,会合の目的につき,横田基地軍民共用化問題について,米国側へのアプローチ方
法等について意見交換をしたものであると主張する。
しかし,当該意見交換も,都庁の会議室等で昼間の時間帯に行うことが可能
であるし,米国大使館の近くがよいのであれば,昼間に大使館近くの会議室等を利用する
。,,ということも可能である本件においても夜の飲食を伴う打合せが必要な具体的理由は
何ら示されていない。
また,仮に,やむを得ず飲食店を利用するとしても,1人1万円を超える飲
食代金が必要ということにはならないはずである。
飲食を伴う打合せについて,場所や単価を必要最小限にし,簡素化するとす
る「経費を伴う会議の開催基準」及び「交際費支出基準」に照らせば,やむを得ず夜に飲
食を伴う打合せを行う場合には,少なくとも1人当たり1万円程度で個室で飲食ができる
店舗を探すべきである。これは,公金を使用する以上当然のことであり,かつ,東京都の
,。財政が厳しい現状に照らしその改善を選挙公約とした都知事においてはなおさらである
本件飲食の際に具体的に話された内容も記録化していない上,この打合せの
結果としてどのような政策が実現したかも明らかではない。
(サ)番号78飲食代金1人当たり3万1484円
被告は,本件支出につき,平成15年11月19日午後6時半より,千代田
区紀尾井町にある日本料理店において,I知事が,米■■研究所のHを接遇した際のもの
,,,であり会合の目的につき横田基地軍民共用化の実現に資する最新情報を入手するため
意見交換をしたものであると主張する。
しかし,当該意見交換も,何ら,飲食を伴う必然性はなく,昼間に都庁の知
事の執務室で行えば足りる事柄である。また,夜でも,都庁の知事の執務室で意見交換す
ることは可能である。
仮に,夜の飲食を必要としても,インターネット等で検索することにより容
易に,夜に個室で1万円程度で飲食できる場所を探すことはできる。まして,本件飲食場
所でも,1人当たりの飲食額は平均1万円であり,1人3万円を超える飲食をする必要性
は全くないのであり,支払額を必要最低限にしようという配慮も全く窺われない。
また,本件においても他と同様に,当該打合せの際に具体的に話された内容
も記録化されていない上,この打合せの結果としてどのように政策が実現したか明らかで
はない。
ウ別紙記載番号1から67の交際も含む個別支出の違法性
上記交際における飲食は,番号1ないし78の一々について,被告において,
「」「」社会通念上の基準としての上記経費を伴う随時の協議・打合せ及び交際費支出基準
の例外的場合に該当することを主張立証しない限り「経費を伴う随時の協議・打合せ」,
及び知事等の接遇・懇談を廃止した原則にたち返り,職務と関連のない私的な飲食である
と推定すべきである。
番号1ないし78は,いずれも,目的・内容・相手方等は十分勘案されておら
ず(公務員及び内部職員に対しての支出もある,かつ,主として夕刻以降,必ずしも適)
切な場所といえない都庁外で(都庁にも適切な場所はある,必要最小限の参加者となる)
(,),よう配慮することなく13名に及ぶ宴会もあるようだが人数を公表しないものもある
支出額についても1人当たり1万円を超えて,およそ,目的・内容・相手方等の態様にお
いて社会通念上妥当と認められるものではない。
(ア)東京都の公務員との交際
(,,,,,,,,,,)T参与番号137810181927334473
及びI参与(同26,35,36,50,55,62,71,72)は東京都の参与であ
る。参与には,特別職公務員として給与(報酬)が支給されている。東京都知事,副知事
又は特別秘書と参与との交際は,都庁内における公務員間の交際,いわゆる官官接待であ
り,前記「経費を伴う会議の開催基準」及び「交際費支出基準」にも違反することが明ら
かである。
この他,K東海大学名誉教授(番号14,15)も平成14年7月1日から
参与であるから,飲食者についての表記の肩書にかかわらず,都知事と特別職公務員参与
との交際は官官接待であり,前記「経費を伴う会議の開催基準」及び「交際費支出基準」
にも違反する。
また,Y都教育委員(番号13,40)についても,都知事と特別職公務員
との交際であるから,前記「経費を伴う会議の開催基準」及び「交際費支出基準」に違反
する。
被告は,都知事側とこれらの者との交際についても,いずれも都における重
,,,大な政策を立案実現するために必要な専門家等との懇談である旨主張するがいずれも
懇談の趣旨・目的・内容は全く明らかでない上に,仮に被告主張のような懇談であるとし
ても,参与や特別職公務員として,知事交際費の支出によらずして公務の一環での懇談が
なされれば足りるし,また,そうしなければならないのであるから,知事部局の交際費と
しての支出は違法である。
(イ)東京都以外の公務員との交際
F■■党幹事長・衆議院議員(番号4,M公使(同6,T衆議院議員(同))
9,W衆議院議員(同16,SI米国大使館政務補佐官(同17,69,O国土交通)))
大臣(同21,K財務副大臣(同30,A衆議院議員(同31,N東北大学教授(同)))
54,74)は,いずれも都以外の公務員である。前記「経費を伴う会議の開催基準」及
び「交際費支出基準」は,これら都以外の公務員との接遇等の経費を伴う場合においても
適用されるものであり,会議の趣旨・目的・内容は十分に精査されなければならない。し
かし,東京都の保有文書においては,これらの者との会議の趣旨・目的・内容は全く不明
であり「経費を伴う会議の開催基準」及び「交際費支出基準」にも違反する。,
被告は,これらの者についても,都における重要な政策を立案・実現するた
めに必要な専門家等との懇談であるとか,都庁内では得ることのできないノウハウやサジ
ェスチョンを得るための懇談であるとか主張するのであるが,これらの者との会議によっ
て,一体,都におけるどのような分野の政策についての立案,ノウハウ,サジェスチョン
が得られるのかすら明らかでなく,その主張は全く合理的でない。
なお,被告は,O国土交通大臣に対する「その他」の科目の支出1万542
0円は,同大臣就任の慶祝として,胡蝶蘭を贈呈したものであると主張するが,仮にその
主張のとおりとすれば「その他」の科目ではなく「慶祝」と記載されるはずである。別紙
記載のとおり,被告は「接遇」を避けて「雑」や「その他」の科目に振分けて飲食を行,
い,都民に対し過度の飲食の事実を隠していることが明らかであるから,被告の主張は信
用できない。
(ウ)外国政府関係者の接遇
マレーシア首相(番号2,EU大使(同22,23,エクアドル大使(同))
28,元米国副大統領(同32,エクアドル大統領(同46,インド国防大臣(同5)))
2)は,外国からの表敬訪問に当たり接遇したものにすぎず,これらの者との会議によっ
て,一体,地方公共団体としての都におけるどのような分野の政策についての立案,ノウ
ハウ,サジェスチョンが得られるのかすら明らかではなく,その主張は全く合理的ではな
い。
(エ)民間人の接遇
H・■■建設社長(番号5,29,M・■■アクターズスクール校長(同)
,),(),(),(,,1112F・評論家同24S・評論家同34H・評論家同3949
78,Y・■■ジャパン代表(同48,E・■■会長(同51,60,75,O・タ)))
レント(同53,M・JR■■■社長(同56,S・■■リスク管理研究所代表取締))
役(同58,59,63,T・元記者(同64)らはいずれも民間人であるが,これら)
の者との会議によって,一体,地方公共団体としての都における,どのような分野の政策
についての立案,ノウハウ,サジェスチョンが得られるのかが明らかでない。
(オ)肩書・地位等が不明な相手方との交際
S(番号20,38,K(同25,O(同37,S(同41,O(同))))
45,N(同47,A(同61,T(同66,正確な外国名と肩書の記載がないM))))
(同42,J(同43,J(同57,K(同65,F(同67)などは,ホームペ))))
ージ上の検索等を用いて肩書・地位を調査しても,これが不明な者である。
,。,これらの者はおよそ各分野の専門家とは解することができないそもそも
被告が,各飲食者の肩書・地位を支払伺書等に記載せず,都の保有文書によっては,肩書
・地位さらにはどのような政策を立案・実現するために必要な懇談なのか,その趣旨・目
的も不明な交際である。
このような交際費の支出は「経費を伴う会議の開催基準」及び「交際費支,
出基準」に違反するばかりでなく,被告主張に係る目的・内容・相手方を十分勘案した上
で社会的立場,便宜並びに人数等に相応した懇談場所にて実施したものとは到底解するこ
とができない。
エ被告による情報隠し
被告は「交際費の支出について」と題する書面及び添付の領収書等,並びに,
接遇等開催伺のとおり,交際の目的・内容・相手方の特定等において,極めて不明確なも
のであって,およそ知事等の交際情報を隠している。特に,都側の出席者がI知事以外の
者(番号5,29,47のH副知事,番号17,20,25,38,48,50,66,
,,,,,,),67697071727677のT特別秘書ないしH特別秘書については
交際を必要とする特段の事情が明らかにされなければならないのに,この点も全く不明で
ある。
知事等の交際についてのこれ以外の書面は,都においては保有していないとい
うことであり,結局,被告は,知事等の交際の具体的内容を記録しないことにより,交際
情報を意図的に隠しているものというべきである。一般に,地方公共団体の首長らの交際
費の支出に関する明細として,当該飲食店の請求書等が保管されるが,本件においては,
各飲食店の請求明細すら廃棄し,意図的な情報隠しを行っているのである。
以上のような,被告による情報隠しの実態に照らしても,本件支出は違法とす
べきである。
(被告の主張)
ア別紙記載の各交際(以下「本件各交際」という)の違法性の判断基準。
(ア)最高裁が示した違法性判断基準
対外接遇費の支出に関しては,普通地方公共団体の長又はその他の執行機関
が,当該普通地方公共団体の事務を遂行し対外折衝を行う過程において,社会通念上儀礼
の範囲にとどまる程度の接遇を行うことは,当該普通地方公共団体も社会的実体を有する
ものとして活動している以上,右事務に随伴するものとして許容されることは,市川市長
接待費住民訴訟第二次上告審判決(最高裁判所昭和63年11月25日第二小法廷判決・
判例時報1298号109頁)以来,最高裁の一貫した判断である。
そして,最高裁判所平成元年9月5日第三小法廷判決(判例時報1337号
43頁,同・同年10月3日(同1341号70頁(以下「最高裁平成元年9月5日))
判決「最高裁平成元年10月3日判決」という)の2つの最高裁判例によれば,地方」。
公共団体が対外折衝等をする際に行った接遇が,その事務を遂行する過程で,社交儀礼の
範囲にとどまる程度の接待を行ったといえるか,客観的にみて,宴会による接待それ自体
をその主たる目的とするものとみられてもやむを得ないものであったかは,①当該接待が
行われるに至った経緯,②当該宴会に要した費用の総額,③相当高額な遊興費用(芸妓花
代・二次会費用)までも負担しているか,当該接待の態様・内容から判断すべきであると
しているものと解される。最高裁の判断を分けた(最高裁平成元年9月5日判決は違法,
最高裁平成元年10月3日判決は適法な公金の支出)のは,上記判断基準のうち①の点に
おいて,最高裁平成元年10月3日判決では,国係官の視察目的での来訪という機会を捉
えた行為であったことが,最高裁平成元年9月5日判決ではそのような経緯がなかったこ
とが結論を分けた原因であると考えられる。
また最高裁が問題にしているのはあくまで費用の総額であって1,,「」,「
人当たりの額」でないことにも着目する必要がある。最高裁は,あくまで,接待それ自体
をその主たる目的とするかどうかを判断する要素の1つとして「費用の総額」を挙げてい
るのであり,その趣旨からすれば,費用総額を構成する使途の内訳を問題としていると解
すべきである。したがって,芸妓花代等の寄与により費用の総額が増大した場合は,接待
それ自体をその主たる目的としていると判断されるであろうが,珍味・美酒を取りそろえ
たような場合は別として,1人当たりの料理代の単価が高いか安いかにより費用の総額が
変動することは問題としていないものと解されるのである。
そして,社会通念上,交際相手の社会的地位等により1人当たりの額は変動
するものであると考えられ,場合によっては4万円を超える必要が生じる場合もあること
は,最高裁長官の交際費の支出において,1人当たり約1万6000円の交際,約2万円
の交際,約4万円の交際等の例があり,それぞれが相当な交際と考えられていることから
も明らかである。
(イ)経費を伴う会議の開催基準及び交際費支出基準について
両基準は,いずれも都における会議経費及び交際費の支出に関する事務処理
の指針を定めたものであって,法規範性を有するものではないから,そもそも会議経費及
び交際費等支出の違法性判断の基準となるものではない。
,,,交際費支出基準はA前知事時代に都において交際費及び会議費を用いて
いわゆる官官接待(関係者の意思疎通円滑化や行事後の慰労を理由にした公務員同士の接
待)が過剰に行われていたことの反省に立ち,官官接待の抑制・禁止を目的として定めら
れたものであり,あくまで「良好な関係を築く」ことを目的とする以外に実質的な内容を
伴わない官官接待に対する交際費の支出を廃止すべきとしたのである。番号68ないし7
8の交際には,相手方の身分が公務員であるものも含まれているが,これらは相手方の専
門知識等に着目して行った交際であり,単に人間関係の強化や慰労を目的にしたものでは
ないから,上記制約の対象外である。
イ本件各交際の必要性
本件各交際は,すべて,被告の政策に基づいた都の施策を実現するために,I
知事及び特別秘書の対外調整活動として行われたものである。
(ア)I知事の政策の基本姿勢
I知事は,都知事就任以来,数々の独自の政策を打ち出し,実行してきた。
これらの政策の多くは,本来,国が先導して取り組むべきものである。I知事は,都知事
就任以来,国が放置してきた課題に果敢に取り組み「東京から日本を変える」という視,
点に立って,首都東京の潜在力を引き出し,全国へ波及させることに力を尽くしてきた。
I知事は,自らの発想力に基づいて斬新なアイデアを提起し,そのアイデアがI知事を支
持する多くのブレーンにより検証・強化され,その結果,国を突き動かす都独自の新たな
政策が次々と実行に移されてきた。国がI知事の政策の後を追って導入した外形標準課税
やディーゼル車規制は,I知事の先見性を示す象徴である。
(イ)都の重要施策と特別職の役割
知事の仕事は,放置されてきた課題の問題点を都民・国民に訴え,世論の支
持を背景に,国に都の施策の必要性を納得させ,施策実現に向けた協力への糸口をつける
。,,,,ことであるI知事は積極的に外部に出向き昼夜を問わず人と会い施策実現のため
解決策を模索するとともに賛同者を増やすという積極的な活動を行っている。
このような都知事としての政策が具体的に動いて結果につながるよう,有益
な意見と情報を提供し,実現への道筋を確かなものにしているのが顧問団である。顧問団
を構成するのは,I知事が国政を担当した当時からの知己であり,日本有数の経営者を含
む各界の著名人や一流の専門家である。
本件各交際の多くは,重要かつ慎重な扱いを必要とする事項について国政レ
ベルあるいは国際レベルでの政策調整のための会合として行われたものであり,単に儀礼
のためだけの目的で行われたものではない。特別職はI知事の命を受け,このような都庁
職員では困難な国政レベルでの調整を行っていたのである。
I知事は,重要と判断した事案については,相手方の社会的地位や役職とは
関係なく,実際に現場でその問題に遭遇している人と直接会い,生の声を聞き,政策を判
断するに当たっての材料としているのである。各特別職も,I知事の姿勢にならって,最
も効果的な相手から情報を入手するよう努めている。本件各交際は,そこで話し合われた
課題についての正にキーパーソンとの面会である。
(ウ)具体的内容を明らかにできない交際について
番号69,73,74,75及び77の交際は,国の基本政策及び外交問題
と関係し,かつ,米国の安全保障政策に関係する都の政策の検討のための会合である。こ
のような微妙な問題について,都の事業遂行のために必要な事項について関係者と内密に
協議を行う場合,当然に非公開ないし非公式に行うものであり,都が知事交際費について
任意に全部開示を行っているからといって,現金出納簿等の記載事項以上に会合の内容及
び相手方を明らかにすると,都の事業遂行に支障が生じるばかりでなく,相手方に不快,
,,,,不信の念を抱かせまた会合の内容等について様々な憶測等がなされ相手方が困惑し
迷惑が及ぶ事態となることが容易に予測される。しかも,このような事態が生ずれば,今
後,都が意見や協議を求めるべき相手方は,都の会合への参加を拒否し,あるいは都の会
合において率直な意見表明を控える等のことが相当の確実性をもって予測でき,都の情報
収集活動等に著しい支障が生じることとなる。
したがって,番号69,73,74,75及び77の交際については,相手
方との信頼関係及び友好関係の維持並びに今後の都の事務事業に支障を生じさせないた
め,開示されている以上の相手方の個人名の識別等に及ぶ内容について明らかにすること
はできない。
しかし,会合開催が決まった場合,会合の目的及び内容並びに相手方の氏名
及び役職に関しては,特別秘書等から会合の大まかな日程等を伝えられた秘書課長が,ま
ず最初にその会合が都政に関係のあるものであるかどうか,相手方がその会合の相手方と
してふさわしいかどうかを確認しているので,相手方不明の交際であったということはな
い。
ウ番号68ないし78の交際に係る支出の適法性
(ア)都の広報番組制作に係る交際(番号68)
施策の内容a
本件番組は,I知事が準レギュラーとして出演し,20代,30代の若者
をターゲットに都政への興味を抱かせるきっかけを作るため,都の施策を視聴者に分かり
やすく説明するとともに,視聴者からの東京や都政に対する疑問・不満にI知事自らが答
える唯一の番組である。従来,国や自治体が行うテレビ・ラジオの広報番組は視聴者の関
心を惹きつけているとはいい難いような堅苦しい雰囲気の,行政からの一方的な情報提供
というものであったが,この番組は従来のスタイルとは全く異なり,テレビ番組のプロデ
ューサ・演出家であるT氏を中心として斬新な番組作りを目指し,自治体提供番組の中で
も好感度が高く,通常自治体提供番組に関心を示さない若年層を中心に人気が浸透してい
る。したがって,I知事も「Tokyo,Boy」を通じて都の施策を視聴者に分かりや
すく,明確に伝えるためにはどのようにすればよいか,常に関心を持っているのである。
交際の内容b
番号68の交際は,本件番組の制作方針に関し,平成15年2月27日に
実施された会合である。都側出席者はI知事及びT特別秘書であり,相手方は株式会社■
■取締役で本件番組の制作プロデューサであるSUである。
制作現場の責任者から率直な意見を聞くことが都の広報政策にとって重要
であることから,I知事は本件番組の制作現場の担当プロデューサから直接,今後の番組
制作の方向性や政策進行上の問題点等,都政の理解促進に一層資する番組を制作するため
の必要事項,特に都政に無関心な人が多い若年層に都政について興味を持たせるには,I
知事自身が番組を通じてどのように情報発信するのが最も効果的か等について意見交換を
行うことが必要になったため,平成15年2月ころ,T特別秘書はM秘書課長に,I知事
が,T特別秘書の同席のもと,上記の意見交換のためSUと同月下旬ころに会合を行う旨
を伝え,M秘書課長に対し会合の開催準備を指示した。
M秘書課長は,秘書課職員に指示し,SUと連絡を取らせ,I知事及びT
特別秘書の日程を踏まえ日程調整させた結果,双方ともに職務多忙なことから,同年2月
27日の夜に会合を行うこととなった。
会場の選定に当たっては,M秘書課長は,①T特別秘書から指示された会
合の目的が率直な意見交換であること,②相手方がT氏とともに番組制作会社を運営する
地位にある人物であること,③当日のI知事,T特別秘書及び相手方の都合上,銀座近辺
の場所が適していること,④I知事の警護がしやすいこと等を考慮し,1人当たり2万円
程度で個室での飲食が可能である中央区銀座にある■■を選定し,T特別秘書に報告した
ところ,了解を得られたので,秘書課職員に同店の予約を指示した。会合開催後,M秘書
課長は料金の支払を行った。
,,,番号68の会合の後本件番組の放送内容は東京の観光スポット紹介等
東京の魅力探訪を中心とする内容から,治安,少子高齢化問題等,都政の重要課題に関わ
る内容を多く扱うよう変化した。
交際の適法性c
番号68の会合は,①都政広報媒体のうち最も重要な位置付けがなされて
いる本件番組の制作方針について,現場の担当者と意見交換を行うということを明確な目
的とした会合であり,②経費面では,会合の目的及び内容の重要性,相手方の社会的地位
相応の予算及び相手方の都合を考慮してM秘書課長が選定した店舗において,通常のメニ
ューによる料金により開催された会合であり,③遊興費の支出等,宴会による接待それ自
体をその目的としたものと窺う事情は見当たらない会合である。
したがって,番号68の会合が社会通念を逸脱したものと見るに足る理由
は存しない。
(イ)横田基地(横田飛行場)の軍民共用化実現に係る交際(番号69,77,7
8)
施策の内容a
横田飛行場の民間航空利用は,既存施設の有効活用により首都圏の空港機
能を補完し,多摩の振興はもとより日本経済の再生も含めて将来の国力の充実を図るもの
である。都は,空港アクセス時間の比較から羽田空港,成田空港,横田飛行場の勢力圏を
設定し,横田飛行場の2015年度の国内線需要を260万人,国際線需要は他空港の状
況にもよるが230万人程度はあるものと推計している。このように,横田基地の軍民共
用化は,経済効果が非常に高く,都の最重要課題の1つとなっている。
I知事は,初めての都知事選挙(平成11年)に当たり,公約の1つとし
,。,,て横田基地の返還もしくは民間との共同使用の実現を掲げた都知事就任後I知事は
横田飛行場の返還を最終目標としつつ,返還までの対策として,首都圏の空港機能を補完
し,多摩の振興を図るため,民間航空機利用が実現されるべきであることを一貫して表明
してきた。平成12年12月には「航空政策基本方針」を策定し,羽田空港の国際化と,
ともに横田飛行場の民間航空利用を都の取組み方針に定めた。
,,,I知事は横田飛行場の民間航空利用を実現するため自ら米国に出張し
人脈,政治力を最大限活用して次々と米国高官と会談し,都の政策を訴え,理解を求めて
きた。平成13年9月には,米国国防副長官と会談,平成14年10月には米国国務副長
官,国務次官のほか米国国家安全保障会議幹部らと会談した。I知事の米国への働きかけ
は,平成15年5月のいわゆる小泉・ブッシュ会談に成果として結びつき,同会談で小泉
首相から米国側へ横田基地の軍民共用化が要請され,ブッシュ米国大統領も検討していく
ことで一致した。その後も,I知事は,平成15年11月には在ハワイ米国太平洋軍司令
官と会談し,引き続き,横田基地の軍民共用化の必要性を訴え続けているのである。そし
て,平成15年11月には,内閣官房,防衛庁,防衛施設庁,国土交通省及び外務省と都
との間で,連絡会を立ち上げる合意がなされるに至った。また,日本政府と米国との間で
は,平成17年10月,日米安全保障協議委員会において,在日米軍の再編や米軍と自衛
隊の役割分担に関する中間報告がまとめられた。その中で,横田基地の軍民共同使用の具
体的な条件や態様が検討されるべきこととして,明記されるに至った。
番号69の交際についてb
()交際の内容a
番号69の交際は,平成15年3月18日に実施された横田基地問題に
ついての意見交換や情報収集のための会合である。都側出席者はT特別秘書であり,相手
方はSI及び米国大使館員1名である。SIは,シンクタンクである米国国際戦略研究セ
ンターを経て在日米国大使館に勤務する政治アナリストである。SIとT特別秘書とは,
横田基地問題について意見交換や情報収集を行うため,以前から度々面会していた関係に
ある。
T特別秘書は,横田基地軍民共用化に関する米国側の視点から見た共用
化実現の見通し,予想される困難事項について意見交換を行う目的で,SIと在日米国大
使館員1名と平成15年3月18日に会合を行う旨,M秘書課長に指示した。その際,T
特別秘書は,①本件会合の目的は上記のとおりであり,その内容が日米両国の安全保障,
外交問題に関する重要な事柄であることから,特に機密保持が必要であり,かつ,②相手
方が職務多忙であるため,相手方の都合上,当日の夜,赤坂にある在日米国大使館近辺の
場所が適している旨,申し伝えた。
M秘書課長は,番号69の会合が,都政上最も重要な問題である横田基
地軍民共用化に関する会合であり,在日米国大使館員も同席することから,その目的及び
内容の重要性,機密保持の必要性,相手方の社会的地位及び相手方の都合等を考慮し,1
人当たり2万円程度の経費で個室での飲食が可能であり,赤坂の在日米国大使館から徒歩
15分程度のところにある■■を選定し,T特別秘書に報告したところ,了解が得られた
ので,秘書課職員に同店の予約を指示した。会合開催後,M秘書課長は,料金の支払を行
った。
()交際の適法性b
番号69の交際は,①都の施策上の最重要課題の1つである横田基地の
軍民共用化の実現推進について,米国関係者と意見交換を行うということを明確な目的と
した会合であり,②経費面では,会合の目的及び内容の重要性,機密保持の必要性,相手
方の社会的地位相応の予算及び相手方の都合を考慮してM秘書課長が選定した店舗におい
て,通常のメニューによる料金により開催された会合であり,③遊興費の支出等,宴会に
よる接待それ自体を目的としたものと窺う事情は見当たらない会合である。したがって,
番号69の会合が社会通念を逸脱したものと見るに足る理由は存しない。
番号77の交際についてc
()交際の内容a
番号77の交際は,平成15年8月13日に実施された,横田基地軍民
共用化問題の米国側へのアプローチ方法等について意見交換を行うための会合である。都
側出席者はT特別秘書であり,相手方は米国国際戦略研究センター主任研究員W氏,米国
政治分析・安全保障問題の専門家である米国在住のジャーナリストのU氏,米国政治問題
アナリストのY氏及び在日米国大使館員1名である。
,,,平成15年8月初めころT特別秘書は横田基地の軍民共用化に関し
米国側の視点から見た共用化実現の見通し,共用化の実現に向けて米国側へのアプローチ
方法等について意見交換を行う目的で,同月13日に上記相手方と会合を行う旨,N秘書
課長に指示した。
N秘書課長は,番号77の会合が,横田基地の軍民共用化問題というI
知事の選挙公約の1つであり,都政上最も重要な問題に関する会合であり,在日米国大使
館員も同席することから,その目的及び内容の重要性,機密保持の必要性,相手方の社会
的地位及び相手方の都合等を考慮し,1人当たり1万円程度の経費で個室での飲食が可能
であり,赤坂の在日米国大使館から徒歩15分程度のところにある■■を選定し,T特別
秘書に報告したところ,了解が得られたので,秘書課職員に同店の予約を指示した。会合
開催後,N秘書課長は,料金の支払を行った。
()交際の適法性b
番号77の交際は,①都の施策上の最重要課題の1つである横田基地の
軍民共用化の実現推進について,米国関係者と意見交換を行うということを明確な目的と
した会合であり,②経費面では,会合の目的及び内容の重要性,機密保持の必要性,相手
方の社会的地位相応の予算及び相手方の都合を考慮してN秘書課長が選定した店舗におい
て,通常のメニューによる料金により開催された会合であり,③遊興費の支出等,宴会に
よる接待それ自体を目的としたものと窺う事情は見当たらない会合である。したがって,
番号77の会合が社会通念を逸脱したものと見るに足る理由は存しない。
番号78の交際についてd
()交際の内容a
番号78の交際は,平成15年11月19日に実施された,横田基地軍
。,民共用化の実現に関する最新情報の入手のための会合である都側出席者はI知事であり
相手方は米■■研究所首席研究員で国際戦略分析の第一人者のHである。
I知事が横田基地関連事項について在ハワイ米国太平洋軍司令官等と協
議するために米国ハワイに出張するに当たり,横田基地の軍民共用化の実現に資する最新
情報を入手する必要があるため,T特別秘書は,平成15年11月初めころ,I知事とH
との面会を同月19日に行う旨,N秘書課長に指示した。
N秘書課長は,同日,I知事が成田空港から夜10時ころの便でハワイ
に出張する予定であり,出発直前の限られた時間を利用して面会するということなので,
空港への交通の便や,相手方の当日の予定を考慮し,都心の店舗を選定することとした。
そして,本件面会の重要性,機密保持の必要性を考慮し,個室が確保できる店舗が相応し
いと考えた。また,Hは,米国屈指のシンクタンクである■■研究所の首席研究員,ハー
バード大学客員教授や全米商工会議所顧問等を兼ねる著名な人物であり,多忙なスケジュ
ールの中,あえて時間をとって面会に応じて頂くという事情も踏まえ,失礼に当たらない
程度の相応の接遇ができる店舗を選定するようにした。以上のことを考慮して,N秘書課
長は,■■を選定し,メニューについては同店における一般的なものを選定し,1人当た
り3万円程度のものとして,T特別秘書を通じてI知事に報告したところ,了解が得られ
たので,秘書課職員に同店の予約を指示した。会合開催後,N秘書課長は,料金の支払を
行った。I知事は,同日,横田基地軍民共用化の実現に資する最新情報の入手を行い,渡
米した。
()交際の適法性b
番号78の会合は,①都の施策上の最重要課題の1つである横田基地の
軍民共用化について,米国政府関係者等と協議するに当たり,最新情報を入手するという
ことを明確な目的とした会合であり,②経費面では,会合の目的及び内容の重要性,機密
保持の必要性,相手方の社会的地位相応の予算及び相手方の都合を考慮してN秘書課長が
選定した店舗において,通常のメニューによる料金により開催された会合であり,③遊興
費の支出等,宴会による接待それ自体を目的としたものと窺う事情は見当たらない会合で
ある。したがって,番号78の会合が社会通念を逸脱したものと見るに足る理由は存しな
い。
(ウ)東京大都市マラソン実施に向けた取組みに係る交際(番号70,76)
施策の内容a
I知事が初めて都知事に就任した翌年の平成12年7月には,既に都では
「国際マラソンは都市観光等の切り札」というシンポジウムを開催し「東京国際市民マ,
ラソン(仮称」の実現を目指すパネルディスカッションを開催している。そして,平成)
13年5月10日には,スポーツ振興法18条1項の規定に基づき,都教育委員会の附属
機関として設置されている東京都スポーツ振興審議会は「東京スポーツビジョンの策定,
に向けて」という審議テーマに対する建議の中間のまとめを発表し「東京の名物となる,
民活主導のマラソン等の創設,既存大会の将来的な見直し」を都教育委員会に建言した。
このように,後に「東京大都市マラソン」に結実する提言,建言を受け,平成15年11
月,I知事は,国内外から大勢のランナー,観光客を呼び込むような大都市マラソンの実
現を目指し,都心部におけるマラソンのあり方について検討するための組織を都教育委員
会の事務局である都教育庁に設置することを発表した。
平成16年9月3日の定例記者会見で,I知事は,都と財団法人日本陸上
競技連盟(以下「陸連」という)が共同して,東京に相応しい大都市マラソンの内容や。
運営の枠組みに関する考え方を,大方まとめたことを発表した。
都は,平成16年11月,翌平成17年度予算編成時に定める重点事業と
して,市民が参加できる国際マラソンを実現し「世界の観光都市東京」の目玉とするた,
め,世界に通用する,いわゆる世界標準の大都市マラソンをアジアで初めて開催すること
を目指すことを選定し,1億円の予算をもって取り組むこととした。
残念ながら,運営の枠組みや開催時期などを固めるには,なお,時間を要
することから,平成17年度における東京大都市マラソンの実施は中止されたが,東京大
都市マラソンの平成18年度開催を確実なものとするため,都と陸連とで「東京大都市マ
ラソン開催準備委員会(仮称」を設置する等,取組みを継続することとした。平成18)
年4月,都は,ようやく東京大都市マラソンの大会要領を発表するにこぎ着けた。その概
要を述べれば正式名称は東京マラソン2007主催予定は陸連・都後援予,「」,(),(
定)は関係省庁,財団法人日本体育協会,同日本オリンピック委員会,日本経済団体連合
会等,定員はフルマラソン2万5000人,10キロメートル5000人,日程は平成1
9年2月18日(日曜日)などである。
番号70の交際についてb
()交際の内容a
番号70の交際は,平成15年3月11日に実施された,東京大都市マ
。,ラソンの実現向けての意見交換を目的とした会合である都側出席者はT特別秘書であり
相手方は■■スポーツ事業局部長Hである。
Hは,■■スポーツ事業局に勤務し,スポーツマーケティングの経験が
豊富で,米大リーグ公式戦の日本招聘を実現し,また,世界陸上競技選手権,世界水泳選
手権大会の運営を担当するなど世界レベルでの大規模スポーツ大会の運営を担当するなど
世界レベルでの大規模スポーツ大会運営の第一人者である。さらに,陸連等の関係団体の
事情にも詳しい。
東京大都市マラソンの実現に向けて,陸連及び既存マラソン大会の主催
団体である各新聞社をはじめとする,関係者との調整が非常に困難な状況にあったため,
T特別秘書は,平成15年3月ころ,スポーツマーケティングと競技団体の実情に詳しい
Hから率直な意見を聴く必要があったため,同月11日にHと会合を行う旨,M秘書課長
に指示した。
その際,T特別秘書は,Hの経歴のほか,①本件会合の目的及び内容が
東京大都市マラソンの実現に向け,陸連及び既存マラソン大会の主催団体である新聞各社
をはじめとする関係者との調整が必要な事項についての率直な意見交換であり,かつ,②
Hは広告代理店に勤務し職務多忙であり,同氏の都合上,当日の夜,飯田橋近辺が適して
いることから,神楽坂にある■■が適所であるので,同店において1人当たり1万500
0円程度で夕食をともにしながら会合を行いたい旨,要望を申し伝えた。
M秘書課長は,I知事が,観光施策を都の産業振興にとって重要な施策
と位置づけていることは職務柄十分知っていたので,本件会合の目的,内容の重要性,機
密保持の必要性,日本最大手の広告代理店部長という相手方の社会的地位及び当日多忙で
あるという相手方の都合等を考慮し,1人当たり1万5000円程度の経費で会合を行う
ことを了承し,秘書課職員に同店の予約を指示し,会合開催後,料金の支払を行った。
()交際の適法性b
番号70の会合は,①都の重要施策である東京大都市マラソンの実現に
向けて関係者との調整を図る上での意見交換を行うということを明確な目的とした会合で
あり,②経費面では,会合の目的及び内容の重要性,機密保持の必要性,相手方の社会的
地位相応の予算及び相手方の都合を考慮してM秘書課長が適当と判断した店舗において,
通常のメニューによる料金により開催された会合であり,③遊興費の支出等,宴会による
接待それ自体を目的としたものと窺う事情は見当たらない会合である。したがって,番号
70の会合が社会通念を逸脱したものと見るに足る理由は存しない。
番号76の交際についてc
()交際の内容a
番号76の交際は,平成15年7月10日に実施された,都心における
大規模マラソン大会の実現のための会合である。都側からは,T特別秘書並びにT特別秘
書が把握していないような具体的な事項に話題が及んだときの説明要員として知事本部政
策部政策課長I及び同部副参事Nが出席した。相手方は■■スポーツ財団常務理事F及び
同財団でスポーツ事業を担当する担当部長及び課長の役職にある職員2名の計3名であ
る。
■■スポーツ財団は,スポーツの普及,振興,育成を図ることを目的と
して設立された財団であり,誰もが身近にスポーツを楽しめる環境としての「道路」に注
目し「道路をスポーツに開放しよう!」をスローガンに掲げ,市民を対象にしたロード,
レースの開催に取り組み,神宮外苑ロードレース(平成8年∼平成12年,東京シティ)
ロードレース(平成14年)を実現してきた実績のある団体である。
■■スポーツ財団は,都が開催を目指している東京大都市マラソンと同
様のコンセプトの大規模マラソン大会(東京市民マラソン)を提唱していたため,都心に
おける大規模マラソン大会をともに目指している都と■■スポーツ財団との間での協議・
調整が必須作業であったため,T特別秘書は,平成15年7月初めころ,都と■■スポー
ツ財団が意見交換,調整を行う目的で,Fほか2名と同月10日に会合を行う旨,N秘書
課長に指示した。
その際,T特別秘書は,本件会合の目的のほか,会合の場所について,
相手方の移動の都合上,都心が適していること,また,相手方に余り気を使わせず,うち
,,。解けた雰囲気で自由に意見交換できるよう堅苦しくない所がよいと要望を申し伝えた
N秘書課長は,職務柄,■■スポーツ財団と都が同様のコンセプトの大
規模マラソン大会を提唱していることを知っていたため,本件会合においては,大都市マ
ラソン実現に向けて,相手方と重要な調整が図られるものと考え,機密性の保持や,T特
別秘書から要望のあった条件を考慮の上,1人当たり1万5000円程度で個室での飲食
が可能であり,かつ,人形町駅から徒歩2分のところにあって,交通の便のよい■■を選
定し,T特別秘書に報告したところ了解が得られたので,秘書課職員に同店の予約を指示
した。会合実施後,N秘書課長は,料金の支払を行った。
()交際の適法性b
番号76の会合は,①都の重要施策である東京大都市マラソンの実現に
向けて競合団体との意見調整を図るということを明確な目的とした会合であり,②経費面
では,会合の目的及び内容の重要性,機密保持の必要性,相手方の社会的地位相応の予算
及び相手方の都合を考慮してN秘書課長が選定した店舗において,通常のメニューによる
料金により開催された会合であり,③遊興費の支出等,宴会による接待それ自体を目的と
したものと窺う事情は見当たらない会合である。したがって,番号76の会合が社会通念
を逸脱したものと見るに足る理由は存しない。
(エ)「アジア大都市ネットワーク21」のテーマのうち,芸術及び文化の振興に
係る交際(番号71,72)
施策の内容a
都は,アジアの大都市が「アジア大都市ネットワーク21」を構築して大
都市に共通する課題に共同で取り組むことをデリー準州,クアラルンプール及びソウル特
別市とともに共同提唱し,多くのアジア大都市の参加を得ている。共同で取り組むテーマ
は,①環境,②都市計画及び都市問題,③芸術,文化及び観光の振興,④人材育成,⑤教
育,⑥女性の社会参画,⑦保健衛生,⑧災害対策及び支援,⑨新技術・新製品の共同開発
(ITを含む)である。。
「アジア大都市ネットワーク21」のテーマのうち,芸術,文化の振興に
関しては,都は,アジアの大都市との交流を生かし,世界が文化的魅力を認め,都民自身
も世界に文化的豊かさを誇ることができる,文化創造の基盤が充実した創造的な文化を生
み出す都市・東京を目指している。
東京が,世界からその文化的魅力を認められる,文化の創造のポテンシャ
ルの高い都市となるためには,まず,新進・若手の芸術家が東京を自己の活躍の舞台の第
,。,一段階と選択しそして世界へ羽ばたいていける環境づくりが必要であるそのためには
アジアの大都市の優れた面と先進的な施策を参考にし,若い人材を発掘し,制作・交流す
る機会を提供する必要がある。若手芸術家の支援の面で,都の文化施策の現状を分析し,
改革を図る必要がある。
これらの課題の解決には,アジアを中心とした海外での芸術実践経験があ
り「今,自分が東京に求めているもの」を語ることができる若手芸術家の意見が最も参,
考になる。彼らから得られた情報や提言が,芸術家の滞在・交流・制作拠点の整備,個別
の取組みとしては,アーティスト・イン・レジデンス(地方公共団体が芸術家に住居兼ア
トリエを提供する事業,トーキョーワンダーサイト,トーキョーワンダーウォール,ヘ)
ブンアーティスト等の施策の充実のほか,外部の専門家から文化施策に関する提言を受け
る仕組みとしての東京芸術文化評議会の設立構想に生かされているのである。
番号71の交際についてb
()交際の内容a
番号71の交際は,平成15年2月1日,文化振興事業に関する意見交
換のために実施された会合である。都側出席者はI知事,T特別秘書及びI参与であり,
相手方はJ氏,P氏,A氏及びM氏である。
J氏は,米国籍の若手の現代絵画画家であり,欧州,アジアの各国で絵
。,,画展示会等を行った経験を有するP氏はニュージーランド出身の若手の彫刻家であり
当時,日本で創作活動や取材活動を行っていた。A氏は,中国系英国人の若手映像作家で
,。ありロンドン大学卒で英国アートカウンシル委員のアシスタントを務めた経験を有する
M氏は,台湾出身の女性絵画作家であり,台北市の文化事情に詳しい人物である。
アジアの若者の感性とエネルギーを吸収し,アジアの都市としての東京
の感性を訴求するためには,都の文化行政が果たすべき役割と意義について主としてアジ
アの芸術家と率直な意見交換を行う必要がある。平成15年1月ころ,T特別秘書は,I
知事がT特別秘書及びI参与の同席のもとI参与の知己である海外の芸術家4名と同月下
旬又は2月上旬頃懇談する旨,M秘書課長に指示した。
M秘書課長は,会場の選定に当たっては,①本件会合の内容が,文化大
国といわれる国々において文化芸術の発展のため行政がどのような事業を行っているか,
芸術家の観点から率直な意見を聞くものである上,②東京アニメフェアの開催,若手芸術
家支援のための作品展示場所の無償提供,ヘブンアーティストの実施等,文化行政は作家
でもあるI知事が重点施策としているものであること,③相手方が絵画,現代芸術,映像
分野における海外の芸術家であること,④当日のI知事及び相手方の都合上,渋谷近辺の
場所が適していること,⑤I知事の警備がしやすいこと等を考慮し,1人当たり1万50
00円程度で個室での飲食が可能であり,過去に何度か利用したことがある渋谷区代官山
にある■■を選定し,T特別秘書に報告したところ,了解が得られたので,秘書課職員に
同店の予約を指示し,会合実施後,料金の支払を行った。なお,相手方はI参与の知己で
あるため,現金出納簿上は「接遇I参与様ほか」と記載したものである。
当日は,各相手方の経験,知識に基づき,文化芸術の発展において都の
文化行政が果たす役割と意義について,いわゆる文化大国といわれる国々では,どのよう
な事業が行われているか,芸術家の観点から意見を聞いた。例えば,①若手芸術家が展示
会を開くためには,行政提供のアートスペースが必要であること,特に,彫刻は絵画と違
って,大きさがまちまちであり,配慮が必要であること,②英国のアートカウンシルには
ダイナミズムがあり,アートカウンシル制度が都に導入されれば,アジアにおける東京の
文化都市としての地位は格段に向上すること,③台北市で取り組まれているアーティスト
・イン・レジデンスの情報についてである。中でも,アーティスト・イン・レジデンス事
業については,実際の事業を行っている国々の状況を知らされる等,今後の都における芸
術文化施策に大いに参考になった。
()交際の適法性b
番号71の会合は,①都の重要施策である「アジア大都市ネットワーク
21」のテーマのうち芸術及び文化の振興に関し,東京を世界に有数の文化都市とするた
めのまちづくりの課題について意見交換を行うということを明確な目的とした会合であ
り,②経費面では,会合の目的及び内容の重要性,相手方の社会的地位相応の予算及び相
手方の都合を考慮してM秘書課長が選定した店舗において,通常のメニューによる料金に
より開催された会合であり,③遊興費の支出等,宴会による接待それ自体を目的としたも
のと窺う事情は見当たらない会合である。したがって,番号71の会合が社会通念を逸脱
したものと見るに足る理由は存しない。
番号72の交際についてc
()交際の内容a
番号72の交際は,平成15年4月22日に,アジア大都市ネットワー
ク21の交流事業のうち芸術関係事業に関する意見交換のために行われた会合である。都
側出席者はT特別秘書及びI参与であり,相手方はいずれも首都がアジア大都市ネットワ
ーク21に加盟している韓国のT氏及びY氏並びに台湾のL氏の3名である。
T氏は,韓国出身で米国と韓国において様々な芸術活動と若手アーティ
スト支援事業を行っており,ニューヨークのアーティスト・イン・レジデンスについて豊
富な知識を有する。Y氏は,米国パーソンズ美術学校を卒業し,日本における留学経験を
有する韓国の若手彫刻作家である。L氏は,米国ニューヨーク大学卒業の台湾の女性絵画
作家である。
アジア大都市ネットワーク21の共同事業の1つである「アジア芸術・
工芸・文化・観光ネットワーク(当時。現「アジア芸術・工芸・食品文化・観光ネット」
ワーク)を円滑に推進するためには,アジアの芸術家の素朴な意見を収集する必要があ」
る。そこで,平成15年4月ころ,T特別秘書は,I参与とともに,I参与の知己である
上記アジアの芸術家3名と意見交換を行うため同月22日に会合を行う旨,M秘書課長に
指示した。
,,,,その際T特別秘書は当日のT特別秘書I参与及び相手方の都合上
目黒区近辺が適していることから,目黒区自由が丘にある■■において1人当たり1万円
程度の経費で行いたい旨,要望を申し伝えた。
,,,M秘書課長は予定された会合の重要性・必要性相手方の社会的地位
双方の都合等を考慮し,予算も1人当たり1万円程度ということなので,本件会合を■■
で行うことが適当であると判断し,秘書課職員に同店の予約を指示し,会合実施後,料金
の支払を行った。なお,相手方各氏は,I参与の知己であるため,現金出納簿上は「接遇
I参与様ほか」と記載したものである。
当日は,アジア大都市ネットワーク21における課題の1つである芸術
文化ネットワークの構築に都の文化芸術制作事業をどのように位置づけることができる
か,特に,アーティスト・イン・レジデンス事業をアジア大都市ネットワーク21の交流
事業と位置づけた場合,どのような問題点が生じるか等について意見交換を行った。
()交際の適法性b
番号72の会合は,①都の重要施策である「アジア大都市ネットワーク
21」のテーマのうち芸術及び文化の振興に関し,都の文化芸術事業のあり方の検討のた
めの意見交換を行うということを明確な目的とした会合であり,②経費面では,会合の目
的及び内容の重要性,相手方の社会的地位相応の予算及び相手方の都合を考慮してM秘書
課長が適当と判断した店舗において,通常のメニューによる料金により開催された会合で
あり,③遊興費の支出等,宴会による接待それ自体を目的としたものと窺う事情は見当た
らない会合である。したがって,番号72の会合が社会通念を逸脱したものと見るに足る
理由は存しない。
(オ)「羽田空港の国際化」推進事業に係る交際(番号73)
施策の内容a
東京が国際都市として発展していくためには,首都圏の空港機能の充実が
喫緊の課題である。このため,都は平成12年12月「航空政策基本方針」を策定した。
羽田空港の国際化は,同方針で示した8つの取組方針の1つである。羽田空港の国際化が
実現すれば,成田空港を補完する形で海外旅行経路の選択肢の拡大や外国との機動的な往
,。来が可能となり航空利用者の利便性の向上や物流の効率化が図られることは間違いない
東京のみならず日本の国際競争力の維持向上や経済の活性化を図るとともに,首都圏の空
港容量不足に早急に対応するためには,国の航空政策を転換させ羽田空港を国際化する必
要がある。また,空港処理容量の拡大のため,羽田空港の沖合への再拡張を推進する必要
がある。羽田空港の国際化及び再拡張による経済効果は,首都圏1都3県で約1兆200
0億円,全国で約1兆8000億円と極めて大きく,それに伴う税収増加及び雇用増加が
見込まれている。
,,,,I知事は都知事就任の翌年である平成12年6月には早速国に対し
羽田空港の国際化の推進を国の施策及び予算に反映させるよう,提案要求した。さらに,
平成13年7月にも,羽田空港の国際化を提案要求するとともに,羽田空港の再拡張の推
,,。進について短期間早期に事業化することを都の提案要求として国に明確に打ち出した
都からのねばり強い提案要求を受け,平成13年8月には政府の都市再生
本部は「大都市の拠点空港である東京国際空港について,需要に応じて時機を失するこ,
となく整備するとともに,アクセスの利便性向上を図る「国際化を視野に入れつつ羽。」
,。」。,田空港の再拡張に早急に着手し4本目の滑走路を整備することを決定した続いて
平成13年12月19日,国土交通省は「羽田空港の再拡張に関する基本的考え方」を発
表し,新滑走路としてB滑走路平行案を採用すると具体案を示した。平成14年6月21
日,政府は構造改革の推進と我が国の経済社会の活性化を目指す構造改革基本方針第2弾
と位置づけている「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002(以下「基本方」
針2002」という)を閣議決定した。基本方針2002において,経済活性化戦略と。
して「6つの戦略,30のアクションプログラム」が政策の実施主体・実施時期をできる
だけ具体的に明示して掲げられ,経済諮問会議が今後関係府省における具体的推進状況等
についてフォローアップを行うこととした。経済活性化戦略のアクションプログラムの1
つである「国際競争力のある大都市の再生」プログラムにおいて,羽田空港の再拡張のス
ケジュールが「財源について関係府省で見通しをつけた上で,国土交通省は,羽田空港を
再拡張し,2000年代後半までに国際定期便の就航を図る」と明記された。。
基本方針2002により,国が責任をもって羽田空港の再拡張の事業に着
手することが現実化した一方,羽田空港の国際化及び再拡張を求める地元地方公共団体に
とっては,費用負担等を巡り,非常に困難な舵取りが求められる状況が生じつつあった。
平成15年8月1日,国土交通省は羽田空港再拡張事業の事業スキームを発表し,総額9
000億円(ターミナル整備を加えると1兆円)の事業費の資金スキームを示した。この
,,,スキームで7000億円程度を要する滑走路整備事業について滑走路新設については
国と地方自治体が協力して行うこととし,地方自治体に少なくとも事業費の2割相当額の
1300億円程度の無利子貸付等による協力を要請するとされた。都をはじめとする関係
地方公共団体は,事業の重要性に鑑み,整備事業費の約2割程度,概ね1300億円の無
利子貸付に協力するという重大な政治決断を行った結果,財源スキームが決着したことか
ら,国では,羽田空港の再拡張事業に関し,平成16年度末に滑走路新設の工事契約を締
結,平成17年度に実施設計,平成18年度には予算1177億円が措置され,現地着工
することとなり,平成21年末の供用開始を目指している。
交際の内容b
番号73の交際は,平成15年5月29日に実施された羽田空港の国際化
問題等に関する会合である。都側出席者はI知事,H副知事及びT参与であり,相手方は
航空関係者5名である。なお,都のために知恵とアドバイスを出した相手方との信頼関係
の維持及び今後の都の航空政策の推進に支障を生ぜしめないため,出席者の氏名,役職等
を明らかにすることはできない。
羽田空港の国際化問題を中心に都の航空政策を更に推進するため,I知事
が,H副知事及びT参与の同席のもと,羽田空港の国際化・再拡張に関係する航空関係者
で相当の地位にある者5名と平成15年5月下旬ころに会合を行う必要があった。T特別
秘書は,同年4月ころ,M秘書課長に対し,会合の趣旨を伝え,会合の準備を行うよう指
示した。
M秘書課長は,職業柄,平成12年12月,都が「航空政策基本方針」を
取りまとめ,その中でも羽田空港の国際化問題を最重要課題の1つと位置づけていたこと
,,を心得ていたためこの問題は国及び関係自治体の利害が絡む難しい問題であることから
都政にとって極めて重要な会合であること,相手方が航空関係者の中でも相当の地位にあ
る者であると聞いたことに加え,知事と副知事・参与がそろって出席することから,会合
の重要性が極めて高いと判断した。そこで,会場の選定に当たっては,①機密保持が十分
確保されること,②双方の会合前後の予定,③I知事の警備がしやすいこと等を考慮し,
重要な会合に相応しく,機密保持・警備の点でも優れていることから,中央区築地にある
■■を選定し,T特別秘書に報告したところ,了解が得られた。そこで,M秘書課長は,
秘書課職員に同店の予約を指示した。その際,料金については,同店における一般的な1
人当たりの料金相当の4万3000円程度になるよう指示した。当日は,羽田空港の国際
化問題を中心に都の航空政策の推進策について,様々な角度から意見交換を行った。
交際の適法性c
番号73の会合は,①都の施策上の最重要課題の1つである羽田空港の国
際化問題を中心に都の航空政策を更に推進するため,羽田空港の国際化・再拡張関連の重
要関係者と意見交換を行うということを明確な目的とした会合であり,②経費面では,会
合の目的及び内容の重要性,機密保持の必要性,相手方の社会的地位相応の予算及び相手
方の都合を考慮してM秘書課長が選定した店舗において,同店における一般的な1人当た
りの料金相当の料金により開催された会合であり,③遊興費の支出等,宴会による接待そ
れ自体をその目的としたものと窺う事情は見当たらない会合である。したがって,番号7
3の会合が社会通念を逸脱したものと見るに足る理由は存しない。
(カ)「アジア大都市ネットワーク21」のテーマのうち,中小型ジェット機開発
事業の促進に係る交際(番号74)
施策の内容a
「アジア大都市ネットワーク21」の共同事業の1つである「中小型ジェ
ット旅客機の開発促進」は,アジアの航空需要に対応するため,アジア独自の中小型ジェ
ット旅客機の開発を促進することを目的とする都の提案事業である。アジアに航空機産業
が確立されることによって,アジアが経済的に発展することは,日本及び東京の発展の基
盤となるし,東京の産業に対する技術的波及効果も期待できる。このため,都は本事業を
「」。アジア大都市ネットワーク21の共同事業の中でも最も重要な事業と位置づけている
交際の内容b
番号74の交際は,平成15年6月13日に実施された,中小型ジェット
機開発事業の促進に関する会合である。都側出席者はI知事であり,相手方はN教授及び
航空機関係者5名である。
N教授は,わが国におけるジェット機開発の第一人者であり,アジア大都
市ネットワーク21「中小型ジェット旅客機の開発促進」■■会議の座長である。なお,
N教授以外の相手方の氏名,役職等については,相手方との信頼関係の維持及び今後の都
の航空政策の推進に支障を生ぜしめないため,明らかにすることはできない。
中小型ジェット旅客機の開発促進については,国内の技術開発状況,諸外
国の小型機の開発状況,中小型ジェット機分野のマーケティング市況・EUの動向等の情
報収集が欠かせない。
中小型ジェット旅客機の開発促進のため,I知事がN教授及び航空機開発
関係における有識者でかつ相当な地位にある者5名と平成15年6月中旬ころに意見交換
を行う目的で,会合を行う必要があったため同年5月ころ,T特別秘書はM秘書課長に会
合の準備を指示した。
M秘書課長は,職業柄,中小型ジェット旅客機の開発促進が「アジア大都
市ネットワーク21」の中心的な事業であり,米国等との関係で機密を要する事業である
,,ことは心得ていたところ①相手方が航空関係者の中でも相当の地位にある者であること
②当日のI知事及び相手方の都合上,渋谷近辺の場所が適していること,③I知事の警護
,,がしやすいこと等を考慮し1人当たり2万5000円程度で個室での飲食が可能であり
過去に何度か利用したことがある渋谷区代官山にある■■を選定し,T特別秘書に報告し
たところ,了解が得られたので,秘書課職員に同店の予約を指示した。会合後,M秘書課
長は,料金を支払った。
当日は,中小型ジェット旅客機の開発促進に関し,意見交換を行った。
交際の適法性c
番号74の会合は,①都の重要施策である「アジア大都市ネットワーク2
1」のテーマのうち中小型ジェット機開発事業の促進に関し,当該問題に関連する重要関
係者と意見交換を行うということを明確な目的とした会合であり,②経費面では,会合の
目的及び内容の重要性,機密保持の必要性,相手方の社会的地位相応の予算及び相手方の
都合を考慮してM秘書課長が選定した店舗において,通常のメニューによる料金により開
催された会合であり,③遊興費の支出等,宴会による接待それ自体をその目的としたもの
と窺う事情は見当たらない会合である。したがって,番号74の会合が社会通念を逸脱し
たものと見るに足る理由は存しない。
(キ)I知事の政策全般の立案・検証に係る交際(番号75)
アドバイザリーボードの意義と都政への寄与a
I知事の独自の政策を具体化するために,有益な意見と情報を提供し,実
現への道筋を確かなものにしているのがアドバイザリーボード(顧問団)である。アドバ
イザリーボードを構成するのは,I知事が国政に携わっていた当時からの知己であり,国
の各省庁の事務次官経験者等及び日本有数の経営者など,各界著名人や一流の専門家であ
る。
I知事は,定期的にアドバイザリーボードのメンバーと意見交換すること
により,都庁職員からは得られない様々なアイデアや知恵,情報等を得ると同時に,国政
絡みの施策,特に国の省庁が障害となっている施策を推進するため,あるいは都が国に先
んじてこれまでになかった独自の取組みを進めるために,アドバイザリーボードの人脈を
,。通じて関係部署との調整を円滑に進めるなど国政レベルでの調整に務めているのである
こうしたアドバイザリーボードの活用があってこそ,CLO・CBOの発行や新銀行の設
立等,都独自の施策が実現でき,また,羽田空港の国際化や横田基地問題等,都政の重要
課題の進展をみたのであり,都政への貢献は計り知れないものがある。
交際の内容b
番号75の交際は,平成15年7月3日に実施された会合である。都側出
席者はI知事及びH副知事であり,相手方は株式会社■■ITセンター最高顧問であるE
ほか8名である。
,。Eほか8名はI知事のアドバイザリーボードを構成するメンバーである
多忙な中,貴重な時間を割いて会合に参加し,都政運営上,非常に有益な提言を行ってい
る。なお,E以外の相手方の氏名,役職については,相手方との信頼関係の維持及び今後
の都の政策の推進に支障を生ぜしめないためにも,明らかにすることはできない。
,,,,I知事はH副知事同席のもと都の航空政策東京大都市マラソン実現
アジア大都市との交流事業,東京の治安回復等,都政の重要課題の解決策について幅広く
意見交換を行う目的でEほか8名の助言を得る必要があったため,平成15年6月中旬,
T特別秘書は,I知事とH副知事がEほか8名と7月3日に会合を行う準備をするよう,
N秘書課長に指示した。その際,T特別秘書は,多忙な相手方がスケジュールの合間を縫
って参集するので,移動の都合上,都心が適していると併せ申し伝えた。
N秘書課長は,アドバイザリーボードのメンバーはいずれも社会的地位が
高く,多忙であるにもかかわらず,I知事と都政のために参集を得ている以上,礼を失し
ないよう,まず,相手方の地位に相応する場所を選定する必要があると考えた。また,職
務柄,都の政策づくりとその実現において,I知事のアドバイザリーボードが果たす役割
とI知事との関係を公にできないメンバーの立場を十分に理解していたため,T特別秘書
から伝え聞いた会合の内容によれば,都政の重要課題に関する高度に政策的な懇談になる
と予想されたことから,会場は,機密保持や警備等の点からみて信頼のおける店で,個室
がとれる所が相応しいと考えた。N秘書課長は,これらの条件を満たす店舗として,■■
を選定し,T特別秘書を通じてI知事に報告したところ,了解が得られたので,秘書課職
員に同店の予約を指示した。なお,その際,メニューについては,同店における一般的な
,。,,料金のものを選定し1人当たり3万5000円程度のものとしたそして会合実施後
N秘書課長は会合に要した料金を支払った。
当日は,都の航空政策,東京大都市マラソン実施及びアジア大都市との交
,。流事業についてのほか東京の治安回復問題を含む都政の重要課題について提言を受けた
交際の適法性c
番号75の会合は,①I知事が都知事に就任してから果敢に取り組んでき
た都独自の施策を検証・強化し,支えてきたアドバイザリーボードと,都の重要施策に関
し意見交換を行うということを明確な目的とした会合であり,②経費面では,会合の目的
及び内容の重要性,機密保持の必要性,相手方の社会的地位相応の予算及び相手方の都合
を考慮してN秘書課長が選定した店舗において,同店における一般的な1人当たりの料金
相当の料金により開催された会合であり,③遊興費の支出等,宴会による接待それ自体を
その目的としたものと窺う事情は見当たらない会合である。したがって,番号75の会合
が社会通念を逸脱したものと見るに足る理由は存しない。
第3争点に対する判断
1争点()(別紙記載番号1ないし67に係る監査請求の期間経過の「正当な理由」1
の有無)について
()後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。1
東京都は,平成12年度から平成14年度までの交際費の執行状況につき,予算
額,執行合計件数及び金額,執行率,執行残額,慶祝・弔意・見舞い・会費・接遇・その
他の各件数及び金額を集計した表を,翌年7月16日から東京都生活文化局広報広聴部情
報公開課都民情報ルームで閲覧に供していた。同表には,個々の支出について,その内容
が記載された公文書の開示を希望する者は,都民情報ルームに問い合わせるよう注意書き
が付されている(乙2∼4の各1・2。)
平成15年11月14日付けで,東京都情報公開条例に基づき,平成11年4月
23日から平成15年11月13日までの知事及び副知事の交際費現金出納簿・日程表等
の開示請求がなされ,被告は,同年12月4日付けで,知事等交際費の現金出納簿(平成
12年度,平成13年度,平成14年度,平成15年4月1日から11月13日まで,)
知事及び副知事日程表(平成14年4月1日から平成15年11月13日まで)等の公文
書全部を,写しの交付により開示すること決定して通知した(乙5の1・2。)
サンデー毎日平成16年1月18日号は「石原慎太郎研究第1弾知事交際,
費の闇」と題する記事を掲載し,上記開示結果に基づき,知事交際費の支出相手がI知事
の知人やブレーンに偏っていること,公務員に対し慶祝,弔意,見舞い以外の支出を禁じ
た支出基準に違反している疑いのあること等を報道した(甲7。)
原告らは,上記記事を読んだ上で,平成16年1月13日に,知事等交際費の現
金出納簿を見て,同年3月10日に住民監査請求をした(弁論の全趣旨。)
()別紙記載の番号1から67までの支出については,支出がされてから1年経過後2
に監査請求がされているため,監査請求期間徒過に正当な理由があるかどうかが問題とな
るが,この点については,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の
注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及
び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによ
って判断すべきものである(最高裁平成14年9月12日判決。)
前記事実関係によれば,別紙記載番号1から67の支出についても,随時,情報
公開条例に基づき交際費現金出納簿や日程表の開示請求をすれば,直近の支出についてま
で,その存在及び内容を知ることができた可能性があると考えられる。また,各年度の支
出はそれぞれ翌年度の7月16日ころには集計された上で都民情報ルームにて閲覧に供さ
れていたのであるから,特に情報公開条例に基づく開示請求の手続をとるまでもなく,平
成15年7月16日には,交際費の種類ごとに,支出の存在のほか,支出件数,合計金額
,,を知ることができたといえこれらの総括的な情報を基にして個別的な交際費支出につき
情報公開請求をするなどして調査を進めれば,その内容を把握することは可能であったも
のといえ,現に,平成15年11月14日に,第三者によって情報公開請求がされ,同年
12月4日には,情報公開条例に基づき交際費現金出納簿等が開示されているのであるか
ら,遅くとも同日ころには,一般住民においても,客観的にみて監査請求をするに足りる
程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたといえる。そして,そのころから3か
月以上の期間が経過した平成16年3月10日になされた本件監査請求は,前記の相当な
期間内にされたものということはできない。
原告らは,当該支出行為が違法との疑いを持つ前から,積極的に調査を尽くす義
務が認められるものではないなどと主張する。しかしながら,原告らの主張を前提とする
と,執行機関による財務会計行為一般について違法であるとの疑いがある場合を除き,報
道等で具体的に違法性が指摘されるまでは,どれだけ時間が経っても監査請求をすること
ができることになり,原則として当該行為から1年間の期間制限をおいた地方自治法24
2条2項の趣旨を没却するものであって採用できない。
,,()したがって本件訴えのうち別紙記載番号1から67までの支出にかかる部分は3
不適法である。
2争点()(本件各支出の違法性)について2
()違法性の判断基準ないし方法について1
普通地方公共団体は,当該普通地方公共団体の事務を処理するため必要な経費を
(),,支弁するものとされている地方自治法232条ところ接遇のための費用については
普通地方公共団体の長が,当該普通地方公共団体の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程
において,社会通念上儀礼の範囲にとどまる程度の接遇を行うことは,当該普通地方公共
団体も社会的実体を有するものとして活動している以上,上記事務に随伴するものとして
許容されるものというべきであるが,対外的折衝等をする際に行われた接遇であっても,
それが社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものである場合には,上記接遇は当該普通地方公
共団体の事務に当然伴うものとはいえず,これに要した費用を公金により支出することは
許されない。
,,,そして社会通念上儀礼の範囲に属するか否かは接遇が行われるに至った経緯
出席者,接遇に要した費用の合計額及びその内訳などの具体的事情に照らして判断するこ
ととなるが,接遇の要否や参加者,参加人数等については,都政の運営に責任を持つ知事
等の判断に委ねるべき部分があることは否定できないのであるから,上記の判断に当たっ
ても,このような裁量権の存在を踏まえるべきものであると解される。
原告らは,経費を伴う会議の開催基準や交際費支出基準に反する支出は当然に違
法であるとしている。このうち,経費を伴う会議の開催基準は,飲食を伴う随時の協議,
,,打合せを必要最小限度のものとすることを求めているがその内容からも明らかなとおり
総務局長が各局(室・本部)長宛てに通知した,とりあえずの基準というべきものであっ
て,法的規範性が認められるものであるかどうかは疑問であるのみならず,接遇としての
交際までを対象としているものではないのであるから,本件各支出の適否を,上記基準に
よって判断することはできない。これに対し,改正後の交際費支出基準は「時代に適合,
した,都民から納得の得られる交際費のあり方について検討」するため,総務局長により
任命された,学識経験を有する者7名からなる「交際費を考える会」が,8回にわたり議
論を重ね「都民が納得できる交際費とは何かという観点から意見の集約を行い」取りま,
とめられた報告(甲9)に基づき改正されたものであり,接遇のための費用が社会通念上
儀礼の範囲に属するか否かを判断する際の基準となり得べきものであるといえるが,この
基準も,慶弔・弔慰・見舞い,会費については支出限度額を設定しているものの,接遇と
しての懇談については「ア民間有識者や各種団体との意見交換や情報収集を目的とし,
て,知事等(島しょにおいては支所長)が特に必要と認めた場合に限り行うものとする。
イ開催に当たっては,目的,内容,相手方等を十分勘案し,適切な場所で,必要最小
限の参加者となるよう配慮し,支出額についても,社会通念上妥当と認められる範囲内で
なければならない」と定めているのみなのであるから,結局,本件各支出の適否は,そ。
れが,社会通念上妥当と認められる範囲内であるかどうかによって判断されるべきことと
なることには変わりがない。
()交際費を伴う会合の一般的な開催手続について2
乙22,証人Nによれば,次の事実が認められる。
ア会合開催の決定
知事ら特別職が有識者との意見交換ないし情報収集を目的として行う会合につ
いて,会合の相手方及び大まかな日程は,知事ら特別職自らが決定する。
知事が会合を開催する場合,会合の大まかな目的(場合によってはその詳しい
内容,相手方の氏名ないし社会的地位,大まかな日程等を,特別秘書を通じて秘書課長)
に通知する。これを受けて,秘書課長は,秘書課職員に指示し,相手方及び知事の日程調
整をした上で,開催日時を決定する。
イ会合場所の決定
会合場所については,基本的に,秘書課長が,①都政にとっての当該会合の必
要性・重要性,②機密保持の要否,③相手方の社会的地位及び人数,④双方の会合前後の
予定や移動の便,⑤知事の警護の行い易さ,⑥その店における料金相場等を考慮して候補
を選定し,知事ら特別職の意見を聞いた上で決定する。
もっとも,知事ら特別職から店を指示されることもあるが,この場合も,秘書
課長は,会合の目的,内容,相手方の地位等から会合場所が明らかに妥当と思われない場
合は再考を要請することとされている。
ウ店の予約
,,秘書課長又は秘書課長から指示を受けた秘書課職員が開催場所の店に連絡し
予約をとる。メニューについては,①都政にとっての会合の必要性・重要性,②相手方の
社会的地位,③相手方の好み等についての知事ら特別職の意見等を考慮し,予約時又は予
約後に連絡する。料亭のようにそもそもメニューがない場合は,上記①ないし③の点を考
慮し社会通念上妥当と認められる範囲と秘書課長が判断した金額を伝える。
予約後は,交際費の支出の経緯について上司である秘書部長に報告するととも
に,秘書部内の関係者間で情報の共有化を図る目的で,秘書課長が秘書課職員に「接遇等
開催伺」と題する書面の作成を指示し,これを供覧させる。
エ支払
開催場所の店から請求書が送られてくると,秘書課長が請求書の内容を確認し
た上で,秘書課職員に「交際費の支出について」と題する秘書部長への報告書の作成を指
示し,秘書課長が予め知事ら特別職の交際費として資金前渡を受けた資金の中から請求額
の支払を決定し,職員に支払を指示する。
()別紙記載番号68の支出について3
ア認定事実
(ア)東京都が提供する情報バラエティ番組「Tokyo,Boy(東京MXテ」
,,)(),レビ毎週日曜日午後9時から午後9時30分まで毎週土曜日再放送本件番組は
I知事が準レギュラーとして出演し,20代・30代の視聴者を主たる対象とした広報テ
レビ番組である。
東京都は,刊行物,ホームページのほか,テレビ・ラジオの提供番組を通じ
,,,て都政の課題や都民生活に有益な情報を都民に伝達しているがその中でも本件番組は
都の施策を視聴者に分かりやすく説明するとともに,視聴者からの東京や都政に関する疑
問・不満に知事自らが答える唯一の番組として,都の広報テレビ番組の中でも特に重要な
ものと位置付けられており,テレビ番組のプロデューサ・演出家であるTを司会に迎え,
行政からの一方的な情報提供を中心とする従来の自治体提供番組と異なる独自のスタイル
が取り入れられている。I知事自らも,本件番組を通じて都の施策をより分かりやすく,
明確に伝えるためにはどのようにすればよいか関心を持っていた。
本件番組の放送内容は,平成14年度においては,都内の観光地の紹介と,
文化やスポーツでの若者の活躍を中心としていたが,平成15年度においては,犯罪や社
会問題など,都政と関連の深い話題も加わるようになった(以上につき,乙23,45,
46の1・2。)
(イ)平成15年2月ころ,T特別秘書は,M秘書課長に対し,I知事が,T特別
秘書同席のもと,本件番組の制作方針について意見交換を行う目的で,同番組の制作現場
の担当プロデューサであり,番組制作会社(株式会社■■)の取締役であるSUと,同月
下旬ころ会合を行う旨,指示をした。
M秘書課長は,秘書課職員に指示して,SUと連絡を取らせて日程調整をさ
せ,同月27日夜に会合を行うこととした。
,,,また上記会合の目的・内容が番組制作現場の担当プロデューサから直接
I知事自身が番組を通じてどのように情報発信するのが最も効果的かとの点を含め,率直
な意見を聞くことにあること,SUが番組制作会社を運営する地位にあること,当日のI
知事・T特別秘書及びSUの都合,I知事の警護のしやすさ等を考慮し,1人当たり2万
円で個室での飲食が可能な中央区銀座所在の割烹・小料理店「■■」を選定し,T特別秘
書に報告したところ,了解が得られたので,秘書課職員に指示して予約をさせた。
M秘書課長は,同年3月24日,秘書課職員に指示して上記会合の飲食代金
の支払をさせた(以上につき,甲79,111,138の1,乙23,証人M。)
(ウ)インターネットでは「■■」の夜間の飲食料金が1万5000円ないし1,
万9999円である旨紹介されている(以上につき,甲138の1。)
イ検討
SUは本件番組の制作現場担当プロデューサーであり,番組の制作方針につい
て提供主たる都と意見交換をすることは同人の業務に属するものであると考えられるとこ
ろ,本件会合の目的は,I知事自身がどのように情報発信すべきかという点を含め,本件
番組の内容に関するものであって(本件会合後,実際に本件番組の内容に変化が見受けら
れる,本来的にSUの業務に属するというべきものである。そして,東京都とSUと。)
の関係は,番組のスポンサーと当該番組のプロデューサーとしての関係,SUとI知事と
の関係も,番組のプロデューサーと番組の出演者としての関係なのであるから,SUにと
って,番組の内容をどのようなものにするか,また,I知事が番組においてどのように情
報発信をするかといった事柄は,プロデューサーとしての職務の内容にほかならず,その
立場は,学識経験者が,第三者として,その識見に基づいて意見を述べる場合等とは異な
るのであるから,都から接遇を受けてこれらの事柄について検討したり教示したりする筋
合いのものではないし,都としても,接遇をしてまでこれらの検討や教示を依頼する筋合
いのものであるとは考えられないのである(番組をきっかけとして知り合ったSUから,
都の広報のあり方について意見を求めるなどといった事情があるのであれば別であろう
が,本件では,そのような事情の存在を認めることはできない。。)
このように,本件接遇は,本件において問題とされている他の接遇と異なり,
本来的に東京都のために効果的な番組制作を行うべき職務を負っている者に対する接遇の
当否が問われているのであるから,仮に,このような場合にまで,当該接遇に要した費用
の支出が地方公共団体の事務に伴う費用の支出としてなお正当化される局面があるとして
も,接遇を開催する必要性については相当高度の立証が求められるというべきであるし,
また,接遇の内容や要した費用についても,おのずから厳密な吟味を要するものといわざ
るを得ない。
このような観点から本件会合に関する事情を検討すると,そもそも,本件会合
は,本件番組を通じた都政に関する広報の在り方に関する意見交換を目的として開催され
たものであり,接遇を受けたSUからしてみれば,本来的には,接遇を待つまでもなく同
人の職務として必要な意見を述べるべき筋合いのものであって,接遇自体の必要性に疑問
が残ることは前示のとおりである。そして,被告は,本件会合を開催する必要性として,
M秘書課長が秘書課職員に指示してSUと連絡を取らせ,I知事及びT特別秘書の日程を
踏まえ日程調整をさせた結果,双方ともに職務多忙なことから,日中に会合を開催するこ
とが困難であったことを主張し,証人Mも同趣旨の供述をしているが,飲食店での飲食を
伴う会合とせざるを得なかった事情についての説明としては具体性に乏しいものと評価す
るほかはない。のみならず,前説示のとおり,仮に本件会合を開催するとしても,接遇の
内容や費用については相当程度の配慮が加えられて然るべきであったにもかかわらず,本
件会合は,中央区銀座所在の高級飲食店(■■)において開催されたものであり,要「」
した費用も1人当たり単価1万9355円という高額なものである上,都側からは,I知
事に加え,本件番組とのかかわりが証拠上明らかではないT特別秘書が同席し,飲食料金
の総額は5万8065円となっているから,これらの点からも,何故に,SUに対しこの
ような接遇をしなければならないかという疑問を持たざるを得ない。
以上説示したところを総合すると,本件会合に要した費用について,都政の運
営に責任を持つ知事等の裁量権の存在を考慮してもなお,地方公共団体の事務に当然伴う
(),もの最高裁平成元年9月5日判決参照として正当化することは困難というほかはなく
上記費用の支出は違法というべきである。
()別紙記載番号69の支出について4
ア認定事実
(ア)横田基地問題について
I知事は,平成11年4月の都知事選挙において,横田基地の返還ないし民
間との共同使用を公約の1つに掲げて当選し,都知事就任直後から,横田基地の返還を最
終目標としつつ,返還までの対策として,首都圏の空港機能を補完し,多摩の振興を図る
ため,民間航空機利用が実現されるべきであることを一貫して表明してきた(甲11,乙
33,34。)
平成11年10月,都は横田基地に関する概況調査報告書をまとめ,その中
で,横田飛行場の2015年度における民間航空需要を,国内線では年間260万人,国
際線では条件にもよるが年間230万人程度と予測した(乙16。)
平成12年12月,都の都市計画局は「航空政策基本方針」を策定し,東,
京都の取り組み方針の1つとして,横田基地の民間航空機利用を定めた(乙11。)
I知事は,平成13年9月,米国国防副長官と会談し,横田基地問題を説明
して意見交換した。また,平成14年10月には,米国国務副長官,国家安全保障会議幹
部らと会談し,横田基地の返還・軍民共用化に理解を求めた(乙35,36の1∼3。)
小泉首相は,I知事と意見交換をした上,平成15年5月23日のブッシュ
大統領との首脳会談において,日米両政府が横田基地の軍民共用化の実現可能性を検討す
ることで一致した(乙37の1・2,38。)
平成15年11月,都と国は,横田基地の軍民共用化問題を話し合うため,
連絡組織を立ち上げることを合意した。I知事は,同月22日(日本時間,在ハワイ米)
国太平洋軍司令官と会談し,そのことを伝え,横田基地の軍民共用化の必要を説いた(乙
39の1・2。)
(イ)番号69の支出の経緯について
T特別秘書は,在日米国大使館勤務の政治アナリストであるSIと,横田基
地問題について意見交換や情報収集を行うため面談をしていたが,平成15年3月ころ,
M秘書課長に対し,SIのほか在日米国大使館員1名と,同月18日に会合を行うこと,
その目的は,横田基地の軍民共用化に関し米国側から見た共用化実現の見通し,共用化の
実現に向けて今後予想される困難事項についての率直な意見交換であること,その内容が
日米両国の安全保障,外交問題に関する重要な事柄であることから特に機密保持が必要で
あること,相手方が職務多忙であり,相手方の都合上,当日の夜,赤坂にある在日米国大
使館近辺の場所が適していることを告げた。
M秘書課長は,会合の目的・内容,機密保持の必要性,相手方の社会的地位
及び相手方の都合を考慮し,1人当たり2万円程度で個室での飲食が可能であり,赤坂の
在日米国大使館から徒歩15分ほどのところにある■■を選定し,T特別秘書に報告した
ところ,了解が得られたので,秘書課職員に指示して予約をさせた(以上につき甲80,
112,乙23,証人M,弁論の全趣旨。)
(ウ)インターネットのグルメサイトでは,■■の平均予算が7000円であり,
夜景が見える個室でのコース料理を8400円から用意している旨の紹介がなされている
(甲138の2。)
イ検討
本件会合の目的は,SI及び同人から紹介を受けたものと思われる米国大使館
員との横田基地問題に関する意見交換であるところ,米国大使館員の具体的な氏名,役職
は不明であるが,会合の目的や同席したSIの社会的地位からすれば,横田基地軍民共用
化に向けて米国側からみた問題点等について,上記米国大使館員もまた相当の地位や専門
的知識を有する者であるものと考えられる。また,かかる会合の目的や相手方の地位から
すると,夜間,個室のある飲食店で会合を開く必要性があったものと考えられる上,支出
額は1人当たり2万円弱とやや高額であるが,会合の目的や相手方の地位に照らして,た
だちに社会通念に逸脱するものとまではいいがたい。
原告らは,本件会合に関する事後の記録が残っておらず,M秘書課長も証人尋
問において本件会合後に横田基地の軍民共用化に向けての具体的な指示が出たか否かにつ
いて分からないと述べていることを指摘している。しかしながら,本件会合が行われた時
期は,都において横田基地の軍民共用化を政策課題としていたものである上,その2か月
後には日米首脳会談で横田基地の軍民共用化の実現可能性を検討課題とすることで合意さ
,,れていることからすると本件会合直後にI知事が具体的な指示を出さなかったとしても
横田基地の軍民共用化という政策課題実現に向けて広く情報収集や意見交換をする必要性
はあったと考えられる。
また,原告らは,昼間の時間帯に優先して時間を入れるか,夜間であっても都
庁内又は在日米国大使館内で飲食を伴わない打合せをすることが可能であり,機密性の点
では,不特定多数人のいる外部の飲食店などではなく,都庁内や在日米国大使館内で会合
を行うのが適切であったとも主張する。しかしながら,相手方2名の都合を尊重しつつ,
時宜に遅れぬように情報収集等をするため,夜間に会合をする必要性があることも十分考
えられるし,情報交換に応じてくれたSIらへの感謝を含めた接遇という点から,また,
機密保持の点から,夜間に外部の飲食店で会合を行ったことが不適切であったともいえな
い。
したがって,番号69の支出にかかる会合は,特別職による接遇として社会通
念上儀礼の範囲を逸脱したものとはいえず,上記支出は適法である。
()別紙記載番号70の支出について5
ア認定事実
(ア)東京大都市マラソンの実施について
都は,平成12年7月「国際マラソンは都市観光・産業振興の切り札」と,
題して「世界の観光都市東京」創りを目的とし,その手法の1つとして,ニューヨーク,
シティマラソンを超える,市民の手作り「東京国際市民マラソン(仮称」の実現の可能)
性について話し合うシンポジウムを開催した(乙52。)
また,東京都スポーツ振興審議会は「東京スポーツビジョンの策定にむ,『
』」,けて−いきいき・はつらつスポーツ都市東京をめざして−をテーマとして審議を重ね
,,,,平成13年5月10日東京都教育委員会に対し建議の中間まとめを報告しその中で
「東京の名物となる民活主導のマラソン等の創設,既存大会の将来的な見直し」を建言し
た(乙53。)
都は,平成15年11月,国内外から大勢のランナーや観光客を呼び込む大
都市マラソンの実現を目指し,都心部におけるマラソンのあり方について検討するため,
教育庁を事務局とする横断的な組織の設置を決めた(乙54。)
I知事は,平成16年9月3日の定例記者会見で,東京大都市マラソンにつ
いて,都と陸連が共同して,東京に相応しい大都市マラソンの内容や運営の枠組みに関す
る考え方を,大方まとめたことを発表した(乙18,19。)
東京大都市マラソンは,当初目標とされた平成17年度における実施は中止
されたものの,都は,平成18年4月,陸連及び都の主催により「東京マラソン200,
7」を平成19年2月18日に開催する旨の大会要領を発表した(乙58,59。)
(イ)番号70の支出の経緯について
■■は,平成13年9月,世界陸上競技選手権大会を含む,国際陸上競技連
盟主催大会の2009年までの全世界におけるマーケティング権及び放映権を取得した
(乙60。)
T特別秘書は,平成15年3月ころ,M秘書課長に対し,東京大都市マラソ
ンの実現に向け,陸連及び既存マラソン大会の主催団体である新聞各社をはじめとする関
係者との調整が必要な事項についての率直な意見交換を行う目的で,■■スポーツ事業局
部長のHと,同月11日に会合を行う旨を指示した。その際,T特別秘書は,Hが職務多
忙であり同人の都合上,当日の夜,飯田橋近辺が適していることから,神楽坂にある■■
で会合を行いたいと述べた。
また,T特別秘書は,M秘書課長に対し,Hが,米国大リーグ公式戦の日本
招聘,世界陸上競技選手権大会,世界水泳選手権大会の運営を担当した経験を有し,陸連
等の関連団体の事情に詳しいことを説明した。
M秘書課長は,本件会合の目的,内容の重要性,相手方の社会的地位及び相
手方の都合等を考慮し,■■で1人当たり1万5000円程度の費用で会合を行うことを
了承し,秘書課職員に同店の予約を指示した(以上につき,甲81,113,乙23,証
人M。)
イ検討
本件会合は,都の施策の1つである東京大都市マラソンの実現に向けた,陸連
及び既存マラソン大会関係者との調整に関して,かかる問題について専門的知識や参考と
なる経験を有するものと考えられる外部の者との意見交換を目的としたものであり,会合
の目的,大手広告代理店の部長職にある相手方の地位からすれば,相手方の職務内容,当
日の都合を考慮し,夜,外部の飲食店で会合をする必要性がないとはいえない。また,寿
司店で1人当たり1万5000円余りの支出はやや高額であるものの,相手方の社会的地
位や本件会合の目的に照らして,直ちに社会通念を逸脱したものとはいえない。
原告らは,本件会合の目的から,昼間に都庁や相手方の勤務先の会議室等で行
えば足りるはずと主張するが,本件会合の目的からすると,T特別秘書がHから都の施策
を実現する上で必要な情報の提供を受ける立場にあったものと考えられるから,相手方が
希望するのでない限り,相手方を都庁に呼び出したり,あるいは相手方の勤務先の会議室
で会合を持つことを避け,外部の飲食店を利用したことが不適切であったとはいえない。
また,原告らは,飯田橋付近には他にも飲食店は多数あり1人1万円以内でも
十分に飲食は可能であるとも主張するが,上記のような会合の目的,相手方の地位に照ら
せば,相手方への接遇としての意味も含めて,上記店舗においてかかる支出を伴う飲食を
することが明らかに社会通念に反するものとは断定しがたい。
原告らはさらに,本件会合の日程及び使用する飲食店がT特別秘書から指定さ
れたものであったことから,当初から夜に飲食を共にする前提で,T特別秘書ないしHが
希望する飲食店を指定したと考えられるなどと主張するが,相手方の社会的地位からすれ
ば,日中は相手方の勤務先における職務に従事しているものと考えられる上,特定の業界
における利害関係者の調整について情報を得るという本件会合の内容に照らすと,関係者
の利害に直接かかわる事項等,都からみて他では得難い情報について話題が及ぶことも考
えられるのであって,そのような会合の雰囲気作りの目的も含めて,T特別秘書が飲食店
を指定したとも考えられることからして,原告らの主張する事情からただちに本件会合の
目的が単なる飲食であったと推認することはできない。
これらの点に照らすと,本件会合は,特別職による接遇として社会通念を逸脱
したものとはいえず,番号70の支出は適法である。
()別紙記載番号71の支出について6
ア認定事実
(ア)アジア大都市ネットワーク21のテーマのうち,芸術・文化の振興策につい

アジア大都市ネットワーク21は,アジアの大都市が,地理的にアジアに属
し,文化的な多様性とともに共通性も持ち,歴史的・経済的に相互に深い関わりを持って
発展したものであり,21世紀においてアジアが更に発展し,国際社会でより重要な役割
を担うためには,アジアの頭脳部分であり心臓部である大都市が先導役となって連携し,
一層緊密な関係を形成して協力することが必要であるとして,アジアの大都市が連携して
大都市に共通する課題に共同で取り組むこととを理念として,デリー準州,クアラルンプ
ール市,ソウル特別市及び東京都が共同提唱都市となって平成12年8月に首長会議を開
催したものである。
アジア大都市ネットワーク21は,平成15年1月時点で,共同提唱都市に
加えて,バンコク都,北京市,ハノイ市,ジャカルタ特別市,マニラ首都圏,シンガポー
ル国,台北市,ヤンゴン市が参加し,環境,都市計画及び都市問題,芸術・文化及び観光
の振興,人材育成,教育,女性の社会参画,保健衛生,災害対策及び支援,新技術・新製
品の共同開発(ITを含む)を共同テーマとして,平成13年10月以降毎年総会を開催
している。
アジア大都市ネットワーク21のテーマのうち,芸術・文化の振興策として
は,アジア芸術・工芸・食品・文化・観光ネットワークとの名称で(平成15年11月に
「」),,アジア芸術・工芸・文化・観光ネットワークから名称変更したものアジアの芸術
工芸,食文化等を紹介するフェスティバルを定期的に開催することが共同事業として行わ
れている(以上につき乙20。)
(イ)都の文化施策について
都では,トウキョーワンダーウォール(新進美術作家に,東京都現代美術館
及び都庁舎内壁面を作品発表の場として提供するとともに,多くの都民に鑑賞の機会を提
供するもの。平成11年度事業開始,トーキョーワンダーサイト(国内外の若手芸術家)
・グループの育成を図るため,都の施設2か所を発表の場として提供し,作品の展示や芸
術家同士及び作家と都民との交流等を実施するもの。平成13年12月及び平成17年7
月開館。なお,I参与が館長を務めている,ショートショート・フィルムフェスティ。)
バル・アジア(アジアの若手映像作家の活動を支援するとともに,映像産業の育成と映像
文化の魅力を東京から発信することを目的として,アジア最大級のショートフィルムの映
画祭を開催するもの。平成16年度事業開始)等を行ってきた(乙47。)
,,,,都は平成17年1月東京都の文化施策について広く意見を求めるため
学識経験者等7名以内の委員で構成する,東京都の文化施策を語る会を設置し,I参与も
その委員となった。東京都の文化施策を語る会は,平成18年1月,日本の東京の顔とな
る首都・東京の魅力づくりを通じて文化力を高めることにより,アジアの文化の発信拠点
ともなると同時に,世界が東京に,ひいては日本に魅力を感じるよう,その存在価値を高
めていくことが可能であり,また,文化を核とした新しい政策づくり・都市づくりに挑戦
,,することにより21世紀の新しいライフスタイルと価値を構築していくことができれば
都民の創造性を刺激し,活性化することができるとして,都の文化政策の基本目標を明確
にした上,それらの目標を達成するために都が優先して取り組むべき事項を提言としてと
りまとめた。その中では,将来的には,都が区市町村やNPO等を直接支援するのではな
く,東京都から一定の距離を保ち,芸術表現の自由と独立性が担保された,芸術関連の専
門家によって構成される公的な執行機関(英国型のアーツ・カウンシル)を通じて助成を
行うことも検討に値するとしている。都は,上記提言を受け,国内外の事例を参考にしな
,(,,)。がら外部の専門家などからなる評議組織の設置を検討している乙505165
また,都は,平成18年9月,国連大学の高等研究所の移転後の建物を利用
し,内外の若手芸術家に住居兼アトリエを提供して,若手芸術家が長期滞在しながら活動
を行う施設を作ることを決めた(乙49,弁論の全趣旨。)
(ウ)番号71の支出の経緯について
T特別秘書は,平成15年1月ころ,M秘書課長に対し,I知事が,T特別
秘書及びI参与の同席のもと,文化芸術の発展のために都の文化行政が果たすべき役割と
意義について率直な意見交換をする目的で,I参与の知己である,絵画・現代芸術・映像
分野における海外の芸術家4名と,同月下旬又は同年2月上旬ころに会合を行う旨を指示
した。
M秘書課長は,I参与に,同年1月下旬ないし2月上旬の知事及びT特別秘
書の日程を伝え,調整を依頼したところ,同年2月1日夜に会合を行うこととなった。
M秘書課長は,本件会合の内容のほか,文化行政は作家でもあるI知事が重
点施策としているものであること,相手方が絵画,現代芸術,映像分野における海外の芸
術家であること,当日のI知事及び相手方の都合上,渋谷近辺の場所が適していること,
I知事の警護がしやすいことと等を考慮し,1人当たり1万5000円程度で個室での飲
食が可能であり,過去に何度か利用したことのある渋谷区代官山所在の■■を選定し,T
特別秘書に報告したところ了解が得られたので秘書課職員に同店の予約を指示した以,,(
上につき甲11,82,114,乙23,証人M。)
(エ)上記会合の相手方は,次のとおりである。
欧州,アジアの各国で絵画展示会等を行った経験を有する米国籍の若手のa
現代絵画作家J
当時日本で創作活動や取材活動を行っていたニュージーランド出身の若手b
芸術家P
ロンドン大学を卒業し,英国アートカウンシル委員のアシスタントを務めc
た経験を有する中国系英国人若手映像作家のA
台湾出身の女性絵画作家で,台北市の文化事情に詳しいMd
上記会合において,Jからは,若手芸術家育成のための行政が提供するアー
トスペースの必要性などについての意見,Pからは,絵画と比較して大きさに多様性があ
る彫刻作品は,展示スペースの確保等が困難であることなどから提供場所についての配慮
が必要となることなどの意見,Aからは,アートカウンシル制度及びアートカウンシルに
よる文化施策の展開についての情報提供や,同様の制度を都に導入すればアジアにおける
東京の文化都市としての地位が格段に向上するとの意見,Mからは,アーティスト・イン
・レジデンス事業について台北市における具体的な取組状況などの情報提供を,それぞれ
受けた(以上につき乙66。)
(オ)■■は,インターネットサイトで,夜間の平均客単価が1万円弱であると紹
介されている(甲138の4。)
イ検討
本件会合は,海外出身の芸術家から,文化芸術の発展のために都の文化行政が
果たすべき役割と意義について率直な意見交換を行う目的でなされたものであり,当日は
都の文化行政についての要望や海外の文化行政の事例についての情報提供を受けたもので
あるところ,かかる会合の内容や,相手方の社会的地位,相手方が4名であることからす
ると,夜間に会合をする必要性はあったものと考えられるし,その際外部の飲食店を利用
することも不合理なものとはいえない。また,相手方がそれぞれ出身国,活動分野や活動
地域の異なる海外の芸術家4名であり,話題が多岐に及ぶであろうことにも鑑みると,I
知事のほか,T特別秘書及び紹介者であるI参与が同席することも不合理とはいえない。
1人当たり1万8000円弱の支出は,やや高額ではあるものの,海外の芸術家に対する
接遇としてみれば,直ちに社会通念を逸脱したものであるともいえない。
原告らは,都の文化政策を直接担っている担当者等を交えて行うのが合理的で
あると主張しているが,会合には,トーキョーワンダーサイト館長を務めるI参与が参加
,。,しておりその他の担当者等を同席させなかったことが不合理であるとはいえないまた
会合がなされたのが土曜日夜であることについても,出席者の顔ぶれや人数からみて,日
程調整の結果土曜日夜になったことが不自然であるともいえない。
また,本件会合の事後報告が存在せず,また本件会合の内容が直接具体的な施
策に結びつかなかったとしても,会合の内容は,都の既設の文化施設の運営方法や,その
後の東京都の文化施策を語る会の提言内容とも関わりのあるものであって,当該意見交換
が文化芸術施策のために行われたとは考えられないとはいえない。
原告らは,I参与に対する接遇は官官接待に当たり到底許されないと主張する
が,前示の事実関係からすれば,I参与は,都側,すなわち接遇をする側で会合に参加し
たことは明らかである(その意味で,会計書類等の記載は不適切であったというべきであ
るが,このことによって会合自体が違法となるものではない。そして,I参与の経歴。)
や当日の相手方からみて,紹介者であるI参与を参加させる判断をしたことには相応の理
由があると考えられる。
原告らは,アーティスト・イン・レジデンス事業は,平成15年2月当時,特
に意見交換によらなければ得られない特殊な知識経験とはいえないとも主張するが,都の
果たすべき文化芸術施策全般についての意見交換の中で,結果的に上記事業が話題の中心
となることもあり得ることであるし,他の地方公共団体で同種事業の実施例があるとして
も,事業の対象としている芸術家と直接意見交換をする意義が減ずるものとはいえないの
であって,原告の主張する事情をもって,本件会合が文化芸術施策のために行われたもの
でないことの根拠となるとは考え難い。
原告らは本件飲食場所の平均飲食額は1人当たり1万円弱であり,この金額を
1人当たり8000円近く上回る支出をみると,支払額を必要最低限にしようとの配慮も
,(),窺えないなどと主張するが同店はアラカルトを中心とした料理店であり甲138の4
実際の支出額はまちまちであると考えられることも勘案すると,かかる1人当たりの飲食
額のみを理由として,本件会合が社会通念を逸脱したものとすることは相当ではない。
これらの点に照らすと,本件会合は,特別職による接遇として社会通念を逸脱
したものとはいえず,番号71の支出は適法である。
()別紙記載番号72の支出について7
ア認定事実
(ア)番号72の支出の経緯について
T特別秘書は,平成15年4月ころ,M秘書課長に対し,当時のアジア芸術
・工芸・文化・観光ネットワークについて意見交換を行う目的で,I参与とともに,I参
与の知己であるアジアの芸術家3名と,同月22日に会合を行う旨を指示した。その際,
T特別秘書は,当日のT特別秘書,I参与及び相手方の都合上,目黒区近辺が適している
ことから,目黒区自由が丘にある■■で,1人当たり1万円程度の費用で会合を行いたい
旨を要望した。
M秘書課長は,本件会合の重要性・必要性,相手方の社会的地位,双方の都
合等を考慮し,予算も1人当たり1万円程度ですることを前提に,本件会合を■■で行う
,(,,,)。ことを了承し秘書課職員に同店の予約を指示した甲83115乙23証人M
(イ)上記会合の相手方は,次のとおりである。
米国と韓国において様々な芸術活動と若手アーティスト支援事業を行い,a
ニューヨークのアーティスト・イン・レジデンス事業についても豊富な知識を有する韓国
出身のT
米国パーソンズ美術学校を卒業し,日本への留学経験を有する韓国の若手b
彫刻作家であるY
米国ニューヨーク大学卒業の台湾の女性絵画作家であるLc
上記会合において,Tからは,ニューヨークのアーティスト・イン・レジデ
ンス事業の実情を踏まえ,対象者をアジア大都市ネットワーク21の加盟都市の市民に限
定することに対する疑問等,Yからは,部屋の広さや利用料,管理形態など,具体的な事
項についての意見,Lからは,アーティスト・イン・レジデンス事業及び施設のアジア大
都市ネットワーク21ないし都の施策における位置付け,外国からの芸術家が日本に長期
滞在する場合の在留資格等の問題点の指摘や,台湾国際芸術村の現状の詳細が述べられた
(以上につき,乙66。)
イ検討
本件会合の目的,相手方の地位・人数に照らして,番号71に係る会合と同様
の理由で,上記会合が海外の芸術家に対する接遇として社会通念を逸脱したものであると
いえない。
本件会合に利用した飲食店は,T特別秘書の要望に基づくものであるが,本件
会合の目的,相手方の地位に照らして,1人当たり9000円余りの費用を要したことに
格別不自然,不合理な点はなく,本件全証拠に照らして,本件会合が飲食のみを目的とし
たものであるとは認定できない。
その他,原告の主張を勘案しても,本件会合が特別職による接遇として社会通
念を逸脱したものとはいえず,番号72の支出は適法である。
()別紙記載番号73の支出について8
ア認定事実
(ア)羽田空港の国際化推進事業について
東京都(所管局は都市計画局)は,平成12年6月,国の施策及び予算に対
する都の提案要求として,羽田空港の国際化の推進を最重点事項として提案要求し,平成
13年7月には,羽田空港の国際化の推進とともに,羽田空港の再拡張を最重点事項とし
て提案要求した(乙24,25。)
都は,平成12年12月に策定した航空政策基本方針において,8つの取組
方針の1つとして,羽田空港の国際化を挙げた(乙11,12。)
政府の都市再生本部(本部長・内閣総理大臣)は,平成13年8月,都市再
生プロジェクト(第二次決定)として,国際化を視野に入れつつ羽田空港の早期再拡張に
早急に着手し,4本目の滑走路を整備することを決定した(乙26。)
国土交通省は,平成13年12月,羽田空港の再拡張に関する基本的考え方
として,新設滑走路の位置を発表した(乙27。)
政府は,平成14年6月,基本方針2002を閣議決定し,経済活性化戦略
のアクションプログラムの1つである「国際競争力のある大都市の再生」プログラムにお
いて,羽田空港の再拡張のスケジュールが「財源について関係府省で見通しをつけた上,
で,国土交通省は,羽田空港を再拡張し,2000年代後半までに国際定期便の就航を図
る」と明記された(乙29。。)
国土交通省は,平成15年8月,羽田空港再拡張事業の事業スキームを発表
し,7000億円程度を要する滑走路整備事業について,国の直轄事業とするものの,地
方自治体に,無利子貸付等の方法で,少なくとも事業費の2割相当額の1300億円程度
の協力を要請することとした(乙30。)
都をはじめとする関係地方公共団体は,整備事業費の約2割程度,概ね13
00億円の無利子貸付に協力することとし,財源スキームが確定したことから,国は,平
成16年度から事業化を開始し,平成18年度に現地着工した上,平成21年末の供用開
始を目指している(乙31,弁論の全趣旨。)
国土交通省航空政策局は,平成15年6月時点で,羽田空港の国際化及び再
拡張に伴う経済波及効果として,再拡張により増加する発着枠13万2000回のうち3
万回を国際線に,10万2000回を国内線に割り当てることを想定し,それによる生産
額増加を都について1兆0689億円,全国で1兆8520億円と試算し,それに伴う税
収増加や雇用増加を見込んでいる(乙13,弁論の全趣旨。)
(イ)番号73の支出の経緯について
T特別秘書は,平成15年4月ころ,M秘書課長に対し,羽田空港の国際化
問題を中心に都の航空政策の推進策について意見交換を行う目的で,I知事が,H副知事
及びT参与の同席のもと,その方面ではかなりの地位にある航空関係者5名と,同年5月
下旬ころに会合を行う旨を指示した。M秘書課長は,T参与に同年5月下旬のI知事及び
,,。H副知事の日程を伝え調整を依頼したところ同月29日夜に会合を行うこととなった
M秘書課長は,①羽田空港の国際化問題は,都の最重要課題の1つであり,
国及び関係自治体の利害が絡む難しい問題である上,知事に加えて参与及び副知事も出席
することから,本件会合が都にとって極めて重要であること,②相手方が航空関係者の中
でも相当の地位にある者であること,③機密保持の必要性が極めて高いこと,④双方の会
合前後の予定,⑤I知事の警護がしやすいこと等を考慮し,中央区築地にある■■を選定
し,T特別秘書に報告したところ,了解が得られたので,秘書課職員に同店の予約を指示
した。
M秘書課長は,予算を1人当たり4万3000円ほどとした(以上につき甲
84,116,乙23,証人M。)
(ウ)■■は,明治8年に創業し,伊藤博文の愛顧を受けたとの伝承を有する老舗
の料亭であり,宣伝活動をしたことがないが,芥川賞・直木賞選考会の会場として知られ
ている。店舗は,昭和5年に完成した書院造りの座敷をはじめとする木造建築からなって
いる(甲138の6。)
イ検討
本件会合の目的は羽田空港の国際化問題を中心とする都の航空政策の推進策に
ついての意見交換とされているところ,羽田空港の国際化問題は,再拡張問題とあわせ,
都の最重要課題の1つと位置付けられてきた施策であり,また国及び関係自治体の利害の
絡む問題である。また,本件会合が行われた平成15年5月29日は,国土交通省その他
関係府省で羽田空港再拡張計画の事業化の前提となる財源問題が検討途上であった時期に
あたるものと考えられることからも,I知事ら特別職及びM秘書課長において,本件会合
が都にとって重要なものであると認識していたことには相応の理由があるものといえる。
しかしながら他方,本件会合は,老舗料亭において,飲食代金合計34万10
92円を要したものであり,出席者は都側3名,相手側5名の合計8名にのぼり(飲食代
金の1人当たり単価は,4万2636円となる,かつ都からは知事,副知事,参与が。)
揃って出席する一方で,当該施策を担当している都市計画局関係者の出席がないことから
すると,本件会合の実質的な目的は,意見交換よりもむしろ老舗料亭を利用した単なる接
待と疑われてもやむを得ない側面を持つものである。
そうすると,このような接遇の必要性や相当性については,相応の説明が不可
欠であるというべきところ,被告は,本件訴訟に至っても,相手方5名は,航空関係者の
中でも相当の地位にある者であるという以外,一切説明をしようとしない。その結果,相
手方の地位等はもとより,本件会合において,具体的にどのような事項が取り上げられ話
し合われたのかといった点も一切明らかではないといわざるを得ないのであって,このよ
うな状況のままで本件会合の適法性を肯定することは困難であるといわざるを得ない(な
お,当裁判所としては,相手方の具体的な氏名や地位を明らかにしなければならないとま
で考えているわけではないが,たとえ機密保持の必要性があるとしても,どのような事項
について,どのような立場で関与する地位にある者であるかといった点を,もう少し具体
的に説明することが不可能であるとは思われないし,そのような説明がなければ,本件の
ような高額の接遇を正当化することは困難であるといわざるを得ないと考える。。)
したがって,本件会合は,普通地方公共団体の長による接遇として社会通念を
逸脱するものであり,番号73の支出は違法である。
()別紙記載番号74の支出について9
ア認定事実
(ア)中小型ジェット旅客機の開発促進について
中小型ジェット旅客機の開発促進は,東京都が推進するアジア大都市ネット
ワーク21の共同事業の1つとして,増大するアジアの航空需要に対応するとともに,ア
ジアの存在感,交流の象徴とするため,アジア独自の中小型ジェット旅客機の開発を促進
することを目的とした事業であり,国内外で研究者,企業家による会議やシンポジウムを
行っている。国内では,平成14年6月から平成16年7月まで6回にわたり,国内の航
空機製造企業担当部長,航空業界関係者,学識経験者等からなる検討委員会が開催され,
N教授がその座長を務めている(乙20,41の1∼3,乙42。)
(イ)番号74の支出の経緯について
T特別秘書は,平成15年5月ころ,M秘書課長に対し,中小型ジェット旅
客機の開発促進について意見交換を行う目的で,I知事が,N教授及び航空機関係者5名
と同年6月中旬ころに会合を行う旨を指示した。
M秘書課長は,秘書課職員に対し,N教授及び航空機関係者5名と連絡を取
らせ,I知事の日程を踏まえ日程調整をさせた結果,双方共に職務多忙なことから,同年
6月13日夜に会合を行うことになった。
M秘書課長は,会場の選定に当たって,①本件会合の内容,②相手方の社会
的地位,③当日のI知事及び相手方の都合上,渋谷近辺の場所が適していること,④I知
事の警護がしやすいこと等を考慮し,1人当たり2万5000円程度で個室での飲食が可
能であるとして,渋谷区代官山にある■■を選定し,T特別秘書に報告したところ,了解
,(,,,)。が得られたので秘書課職員に同店の予約を指示した甲85117乙23証人M
(ウ)■■は,一軒家のイタリア料理店であり,インターネット上のグルメサイト
で,ディナーの予算が1万5000円ないし2万円であると紹介されている(甲138の
7。)
イ検討
本件会合は,東京都の施策の1つである中小型ジェット旅客機の開発促進に関
し意見交換をすることを目的としたものであり,会合の相手方は,N教授以外は航空機関
係者5名としか明らかにされていないが,N教授の社会的地位やN教授が座長を務める検
討委員会の構成員に照らすと,航空機開発促進に関し知見を有し相当の社会的地位にある
者であったと推測することができ,会合の具体的内容が,都の施策を推進する上で有益な
情報の提供を受けることを目的としていたものであったと考えられる。
また,相手方の属性や出席者数に照らすと,日程調整の結果,夜に会合を行う
ことも必要であったことに不自然な点はない。
,,また本件会合における実際の支出額は1人当たり2万2000円余りであり
若干高額ではあるものの,本件会合の内容や相手方の属性に照らして,社会通念を逸脱す
るほど高額のものであるとまでは認めがたい。
原告らは,ジェット機の開発促進の意見交換なら,昼間に都庁や大学の研究室
又は航空機関係者の会社で行えば足りると主張するが,相手方の属性や出席者数に照らす
と,日程調整の結果,夜間に会合をすることになったとしても不自然ではない。また,相
手方から都の施策に有益な情報を得ることを目的としていたのであれば,相手方が特に希
望するのでない限り,相手方を都庁に呼び出したり,相手方のうちの1人の所属する組織
の施設を利用することを避け,外部の飲食店を用いることも,相手方への接遇として不合
理なものとはいえない。
原告らはまた,N教授が東北大学の教授であり国家公務員であるから,このよ
うな者に対する接遇は官官接待に当たり許されないと主張するが,N教授の前示の活動内
容からすれば,同人は,公務員としての立場で(公務員の職務として)検討会の座長を務
めているというよりは,航空機開発の専門家,すなわち学識経験者としての立場で,個人
として座長を務めているものであって,その立場は民間有識者と異なるところはないもの
というべきであるから,N教授が国立大学の教授であるという一事をもって,本件会合を
,。官官接待であるとすることは相当とはいい難く原告らの主張を採用することはできない
以上によれば,本件会合は,知事による接遇として社会通念を逸脱するものと
はいえず,番号74の支出は適法である。
()別紙記載番号75の支出について10
ア認定事実
(ア)番号75の支出の経緯について
I知事は,平成11年の都知事就任以前,昭和43年に参議院議員に,昭和
47年に衆議院議員にそれぞれ初当選し,昭和51年に環境庁長官,昭和62年には運輸
大臣に就任している(甲11。)
I知事は,T特別秘書を通じて,平成15年6月中頃,N秘書課長に対し,
,,,I知事がH副知事同席のもと株式会社■■ITセンター最高顧問であるEほか8名と
同年7月3日に会合を行う旨を指示し,会合の内容は,都の航空政策,東京大都市マラソ
ン実現,アジア大都市との交流事業,東京の治安回復など,都政の重要課題の解決策につ
いて幅広く意見交換を行うとした。
N秘書課長は,Eほか8名が,I知事が国政に携わっていた当時からの知己
であり,著名な経営者を含む各界の著名人,専門家など,いずれも社会的地位が高い者で
あり,I知事の政策実現のために有益な意見と情報の提供を受けていると聞いていた。
N秘書課長は,相手方に失礼にならない場所を選定することをまず心掛け,
会合の目的から,会合の内容が高度に政策的なものとなると予想し,機密保持や警備等の
点からみて信頼のおける店で,個室が利用できるところがふさわしく,さらに移動の都合
上,都心が適していることを考慮し,■■を選定し,T特別秘書を通じてI知事に報告し
たところ,了解が得られたので,秘書課職員に同店の予約を指示した。
N秘書課長は,予算については,1人当たり3万5000円程度のものとし
た。
なお,被告は,E以外の8名の氏名,役職については,都として,相手方と
の信頼関係の維持及び今後の都の政策の推進に支障を生じさせないためにも,明らかにす
ることはできないと判断している(以上につき,甲86,118,乙22,証人N。)
(イ)■■は,千代田区永田町所在の料亭であり,ホームページにおいては,夜の
京懐石料理の費用は2万3000円から3万円,税(5%・サービス料(15%・席))
料(5%)と表示している(甲138の8。)
イ検討
本件会合は,都の航空政策,東京大都市マラソン実現,アジア大都市との交流
事業,東京の治安回復等を含む都政の重要課題の解決策について幅広く意見交換を行い,
相手方からかかる政策実現のための意見や情報提供を受ける目的で行われたものである。
また,Eの社会的地位に照らして,その余の8名についても,著名な経営者その他の各界
著名人や専門家であり,高い社会的地位を有するものと推認することができ,同推認を覆
すに足りる証拠はない。そして,会合の目的,相手方の属性を前提とすると,会合の内容
が高度に政策的なものになるとのN秘書課長の判断も首肯することができる。
また,会合場所は料亭であり,1人当たり3万5000円余りの費用を要して
いるが,相手方の属性や人数に照らすと,会合を夜間に開催する必要性があったものと考
えられるし,本件会合の目的や相手方の属性に照らして,接遇の意味を含めて,料亭を会
合場所とすることも直ちに不合理であるとはいえない。また,費用についても,税・サー
ビス料等も含めた金額としては,■■のホームページで紹介されている額の範囲内にある
と考えられる。
これらの点を総合すると,本件会合が,知事の行う接遇として社会通念を逸脱
したものであるとまでは断定するのは困難である。
原告らは,料亭で飲食をし酒を飲みながら,複数の重要課題について濃密な議
論を行えるとは思えず,都庁の知事の執務室等で行うべきであり,相手方がI知事の顧問
,。,団であるならば昼間の時間帯とすることも可能なはずであると主張するしかしながら
高い社会的地位を有する複数の者から,具体的な政策課題を含め都の政策実現のための意
見や情報提供を受けることを目的としていることからすると,相手方に都庁への来訪を求
めることを避けて,接遇の意味も含めて料亭を会合場所とすることが直ちに不合理である
とはいえない。
また,原告らは,顧問団なるものがそもそも真実存在するか否かも定かでない
し,仮に存在するとしても,I知事が知事として活動するための能力を補完する役割を担
っているものであり,I知事個人が私費で費用負担すべきであると主張する。Eほか8名
は,I知事の知事就任前からの知己であり,本件会合の内容が広範にわたることからする
と,本件会合がI知事個人の政治家としての能力を補完する役割を果たす面を有するもの
である可能性は否定できないものの,他方で,本件会合の内容には都の具体的な施策にか
かわるものも含まれることからすると,およそ都の政策実現のための意見や情報提供を受
けるとの側面を有しないとみることは困難であある。
これらの点を総合すると,本件会合は,特別職による接遇として,社会通念を
逸脱したものとまで断定することは困難であり,番号75の支出を違法とするのは相当で
ない。
()別紙記載番号76の支出について11
ア認定事実
(ア)■■スポーツ財団について
■■スポーツ財団は,神宮外苑ロードレース(平成8年∼平成12年,東)
(,),京シティロードレース平成14年参加者数合計6080人の主催団体の1つであり
平成12年には,海外では数万人の参加者の中,障害者も気兼ねなく走ることのできるパ
リマラソンやニューヨークシティマラソンなど,魅力的な市民マラソンがあるのに対し,
日本の大都市では市街地を走る市民参加型のマラソンがないとの現状認識から「道路を,
スポーツに開放しよう」と題し,道路を使ったスポーツイベント開催の可能性について考
えるセミナーを開催しているほか,平成15年度には東京都心における数万人規模の市民
マラソンの開催実現に向け海外ロードレース大会の実態調査や市民マラソン開催実現に向
けた広報活動を行っている(乙61∼64。)
(イ)番号76の支出の経緯について
T特別秘書は,平成15年7月初めころ,N秘書課長に対し,東京大都市マ
ラソンに向けた意見交換を行う目的で,■■スポーツ財団常務理事であるFほか2名と,
同月10日に会合を行う旨を指示した。その際,T特別秘書は,本件会合の目的は,現行
3大会を東京市民マラソンに統合するため,関係者と意見交換ないし調整を行うことであ
ると説明し,会合の場所については,相手方の移動の都合上,都心が適していること,ま
た相手方に余り気を使わせず,うち解けた雰囲気で自由に意見交換ができるよう堅苦しく
ないところがよいと述べた。
N秘書課長は,■■スポーツ財団が,都と同様,都心における大規模マラソ
ン大会の実現を提唱していたことから,会合では,東京大都市マラソン実現に向けて相手
方と重要な調整が図られるものと判断し,機密性の保持や,T特別秘書の述べた条件を考
慮した上,1人当たり1万5000円程度で個室での飲食が可能であり,人形町駅から徒
歩2分のところにある■■を選定し,T特別秘書に報告したところ了解が得られたので,
秘書課職員に同店の予約を指示した。
当日,都側から,T特別秘書のほか,具体的な事項に話題が及んだときの説
明要員として,知事本部政策部政策課長I及び同部副参事Nが出席し,相手方は,Fのほ
か,■■スポーツ財団でスポーツ事業を担当する部長及び課長の役職にある職員2名が出
席した(以上につき,甲87,119,乙22,証人N,弁論の全趣旨)
(ウ)■■は,インターネット上のグルメサイトにおいて,軍鶏鍋専門店であり,
親子丼発祥の店と紹介され,平均予算は9000円とされている(甲138の9。)
イ検討
本件会合は,都心における大規模マラソン大会開催を目指している点で都と競
合する■■スポーツ財団との間で協議・調整を行うことを目的としたものであるところ,
かかる目的を実現するためには,相手方の都合を考慮するのみならず,うち解けた雰囲気
で自由に意見交換をするため,夜間,個室のある飲食店で会合をすること,他方で,具体
的な事項に話題が及んだときに備えて説明要員として都の担当者を同席させることのいず
れの判断も相応の根拠のあるものといえる。
また,本件会合の費用は1人当たり飲食額1万7000円弱で,インターネッ
トで紹介されている■■の平均予算より高額であるものの,本件会合の目的や相手方の社
会的地位に照らすと,かかる金額が社会通念を逸脱したものとまではいえない。
したがって,本件会合は特別職による接遇として社会通念を逸脱したものとは
いえず,番号76の支出は適法である。
()別紙記載番号77の支出について12
ア認定事実
(ア)番号77の支出の経緯について
T特別秘書は,平成15年8月初めころ,N秘書課長に対し,横田基地軍民
共用化問題について,米国側へのアプローチ方法等について意見交換を行う目的で,米国
国際戦略研究センター主任研究員のW,米国政治分析・安全保障問題の専門家である米国
在住ジャーナリストのU,米国政治問題アナリストY,及び米国大使館員1名と,同月1
3日に会合を行う旨を指示した。その際,T特別秘書は,会合の趣旨が,横田基地の軍民
共用化に関し,米国側の視点から見た共用化実現の見通し,共用化の実現に向けて今後予
想される困難事項などについての率直な意見交換であると述べた。
N秘書課長は,会合の目的が横田基地の軍民共用化問題というI知事の選挙
公約の1つであり,都政上最も重要な問題に属するものであり,米国大使館員も同席する
,,,ことを踏まえさらに機密保持の必要性相手方の社会的地位及び相手方の都合を考慮し
1人当たり1万円程度で個室での飲食が可能であり,赤坂の米国大使館から徒歩15分ほ
どのところにある■■を選定し,T特別秘書に報告したところ了解が得られたため,秘書
課職員に同店の予約を指示した(以上につき,甲88,120,乙22,証人N。)
(イ)■■は,インターネットのホームページにおいて,ディナーの平均予算を8
000円と表示している(甲138の10。)
イ検討
本件会合は,横田基地軍民共用化問題について,米国側へのアプローチ方法等
について意見交換を行うための会合であり,相手方は米国の政治,安全保障問題の専門家
3名と米国大使館員であるところ,会合の場所,時間帯,及び費用のいずれについても,
番号69に係る会合の場合と同様の理由で,社会通念を逸脱するものとは認めがたい。
原告らは,飲食店をインターネットで検索すれば,都心で1人当たり1万円程
度で個室での飲食が可能な場所を選ぶことができたはずであり,経費を伴う会議の開催基
準や交際費支出基準に照らせば,やむを得ず夜に飲食を伴う打ち合わせを行う場合には,
少なくとも1人当たり1万円程度で個室での飲食ができる店舗を探すべきであると主張す
るが,会合の目的,会合を開催する必要性,相手方の社会的地位,都と相手方との関係は
様々なものがあり,これらの具体的事情を考慮すれば,1人当たり1万円を超える費用を
支出して接遇することが直ちに社会通念を逸脱するものとすることは相当ではなく,原告
らの主張は採用しがたい。
以上によれば,本件会合は,特別職による接遇として社会通念を逸脱するもの
とはいえず,番号77の支出は適法である。
()別紙記載番号78の支出について13
ア認定事実
(ア)番号78の支出の経緯について
I知事は,平成15年11月初めころ,T特別秘書を通じ,N秘書課長に対
し,横田基地関連事項について米国政府関係者等と協議するため米国ハワイに出張するに
当たり,横田基地の軍民共用化の実現に資する最新情報を入手するため,同月19日,米
国■■研究所首席研究員のHと面会を行う旨を指示した。
N秘書課長は,その日はI知事がハワイ出張出発直前の限られた時間を利用
して面会をすることから,空港への交通の便や,相手方の当日の予定を考慮し,都心の店
を選定することとし,本件面会の重要性,機密保持の必要性から,個室を利用できる店が
適切であり,さらに,Hがハーバード大学客員教授や全米商工会議所顧問等を兼ねる著名
な人物であり,多忙なスケジュールの中あえて時間をとって面会に応じてもらう事情を踏
まえ,相応な接遇ができる場所を選定する必要があると判断し,■■を選定し,T特別秘
書を通じてI知事に報告したところ,了解が得られたため,秘書課職員に同店の予約を指
。,(,,,示したメニューは1人当たり3万円程度のものとした以上につき甲89121
乙22,証人N。)
(イ)■■は,インターネットのグルメサイトで,平均予算1万円として紹介され
ている(甲138の11。)
イ検討
本件面会は,前記()ア(ア)のとおり,平成15年5月の日米首脳会談で横田4
基地の軍民共用化の実現可能性を検討することが合意されたのを受け,同年11月に国の
関係機関と都との間で連絡会を立ち上げる合意がなされたのと同時期に,I知事が横田基
地関連事項について在ハワイ米国太平洋軍司令官と協議するため米国ハワイに出張する当
日の限られた時間に,横田基地軍民共用化の実現に資する最新情報を入手することを目的
。,,,として行われたものであるそして前記()ア(ア)のとおり横田基地の軍民共用化は4
I知事が初当選した際の選挙公約の1つであり,都の重要施策の1つとして位置付けられ
てきたものである。また,面会の相手方Hは,米国■■研究所首席研究員であり,ハーバ
ード大学客員教授や全米商工会議所顧問の肩書も有する著名な人物である。かかる面会に
至る経緯,面会の目的,相手方の社会的地位に鑑みると,夜間に都庁外の飲食店で面会す
る必要性はあったものと考えられる。飲食費用として1人当たり3万1000円余りを要
している点は,面会場所における平均予算として紹介されている1万円と比較して高額で
はあるものの,前記諸事情を勘案すると,知事による接遇として社会通念を逸脱したもの
とまでは断定しがたい。
したがって,上記面会は,知事による接遇として社会通念を逸脱したものとは
いえず,番号78の支出が違法であるとはいえない。
,,()以上のとおり別紙記載番号68から78までの各支出のうち違法であるものは14
番号68及び73の支出である。
3I知事らの責任について
前示のとおり,別紙記載番号68の支出に係る会合は,そもそも普通地方公共団体
の事務に随伴してなされたものとはいえず,また,同番号73の支出に係る会合は,相手
方の社会的地位が明らかにされないまま,老舗料亭において社会通念を逸脱した高額な費
用によりなされたものである。そして,上記各支出に係る資金前渡を受け,その資金の範
囲内で処理する契約に関する事務の委任を受けた職員であるM秘書課長は,故意又は重大
な過失があれば,地方自治法243条の2第3項の規定による賠償命令の対象となるとこ
ろ,上記各事実関係を認識しながら番号68の債務負担行為,支払及び番号73の債務負
担行為をしたものであり,故意又は重大な過失に基づいて,違法な財務会計行為をしたも
のといえ,都に対して損害賠償責任を負う。また,T特別秘書は,M秘書課長に対し,番
号68の会合の開催を指示し,開催場所についても了解を与えているのであるから,故意
又は過失によって同会合を開催させ,その結果,同会合に係る支出をしたものといえ,し
たがって,当該支出に係る損害賠償義務を負うものといえる。更に,I知事は番号68及
び番号73の各会合に出席したものであるところ,これらの会合の開催をM秘書課長に指
示し,開催場所を了承したT特別秘書の上司として,T特別秘書の行為について了解をし
ていたものと推認できるから,同特別秘書に上記各会合の開催を指示したことについて,
あるいは,指揮命令権を行使して,その開催を阻止しなかったことについて責任を負うも
のというべきであるから,上記各会合に係る支出について損害賠償義務を負うものという
べきである。これに対し,H副知事については,番号73の会合の開催や,それに基づく
支出についていかなる関与をしたのかについて何ら主張立証がないのであるから,同副知
事の損害賠償責任を肯定することは困難であるというほかはない。
以上によれば,番号68の支出に関しては,I知事,T特別秘書の各個人が連帯し
て,番号73の支出に関しては,I知事が,それぞれ都に対して当該支出金額相当の損害
賠償責任を負い,M秘書課長は番号68及び番号73につきそれぞれ同額の賠償命令の対
象となるというべきである。
4結論
以上によれば,本件訴えのうち,別紙記載番号1から67に係る部分は不適法であ
るから却下し,番号68から78に係る部分のうち,番号68及び73(ただし,I知事
及びM秘書課長に係る部分に限る)については理由があるから認容し(原告らの請求の。
うちM秘書課長に係る部分は,同人に対する賠償命令を求める趣旨を含むものと善解す
る,その余については理由がないから棄却することとし,訴訟費用及び補助参加の費。)
用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条本文,65条1項本文及び6
6条を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官鶴岡稔彦
裁判官中山雅之
裁判官進藤壮一郎

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