弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を福岡高等裁判所宮崎支部に差し戻す。
         理    由
 上告代理人大野直数の上告理由一について。
 原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の適法に確定した事実関
係によれば、被上告人は、昭和三六年一二月二三日訴外Dの代理人である訴外Eを
介し右Dに対し、被上告人所有の本件山林ほか山林一筆を代金二〇五万円で売り渡
し、同月二五日までに手附金二〇万円を受け取つたうえ、Dに対する本件山林の所
有権移転登記手続に必要な書類として権利証、被上告人の印鑑証明書のほか、被上
告人の記名押印および売渡物件の記載があり、金額、名宛人、年月日の各欄を白地
とした売渡証書、被上告人の記名押印、目的物件および登記一切の権限を与える趣
旨の委任事項の記載があり、受任者、年月日の各欄を白地としたいわゆる白紙委任
状をEを介してDに交付し、本件山林の所有権を取得したDは、Eを代理人とし、
同人をして同月二八日上告人両名の代理人である訴外Fとの間に本件山林と上告人
両名共有の山林の交換に当らせたが、Eは、国義に対しDの代理人であることを告
げなかつたばかりか、被上告人からなんら代理権を授与されていないにもかかわら
ず、Dからあらためて交付を受けていた右各書類を示して被上告人の代理人のごと
く装つたので、Fは、契約の相手方を被上告人と誤信し、即日Eと上告人両名共有
の山林七筆を被上告人に譲渡するのと引換えに被上告人から本件山林の譲渡を受け、
合わせて追銭一五万円の交付を受ける趣旨の交換契約を締結するに至り、Eから成
約と同時に追銭の一部一〇万円、翌二九日その残額五万円および白地の部分につき
なんら補充されていない右各書類の交付を受けたというのである。そして、原審は、
右事実関係に基づき、右Eが被上告人の代理人として上告人両名との間に締結した
右交換契約は、無権代理行為であるから、その効果は当然に被上告人に及ぶもので
はないとし、さらに上告人ら主張の民法一〇九条所定の表見代理の成否についても、
本人が不動産登記手続に必要な白紙委任状、処分証書、権利証等を何人において行
使しても差支えない趣旨で交付したのではないのに、本人からこれが交付を受けた
特定他人においてこれをさらに他の者に交付し、その者がこれを濫用して第三者に
対し本人の代理人と称して不動産処分行為に及んだ場合にまで、本人はその第三者
に対し同条にいう表示をしたものとしてその責を負うべきものと解さなければなら
ないものではないところ、本件の場合、被上告人からみてEは右にいう特定他人で
はなく、特定他人であるDから前記各書類の交付を受けた立場にある者であつて、
被上告人がDに右各書類を交付した趣旨は、Dに対する本件山林の所有権移転登記
手続の目的に尽きるものであり、被上告人において、これら書類が転々流通のうえ
D以外の者によつて使用されることを認容して交付したものでないことが認められ
るから、民法一〇九条によつて被上告人をして本件交換契約の効果を受忍せしめる
ことはできない旨判断している。
 しかし、右事実によれば、被上告人は、本件山林の所有権移転登記手続のため右
各書類をDの代理人Eに交付し、Eは、これをDに交付したが、Dは、ふたたびE
を代理人とし、同人に右各書類を交付して同人をして上告人両名との間に本件山林
と上告人両名共有の山林の交換に当らせ、Eは、上告人両名の代理人Fに対し、被
上告人から何ら代理権を授与されていないにもかかわらず、右各書類を示して被上
告人の代理人のごとく装い、契約の相手方を被上告人と誤信したFとの間に本件交
換契約を締結するに至つたというのであつて、なるほど、右各書類は被上告人から
Eに、EからDに、そしてさらに、DからEに順次交付されてはいるが、Eは、被
上告人から右各書類を直接交付され、また、Dは、Eから右各書類の交付を受ける
ことを予定されていたもので、いずれも被上告人から信頼を受けた特定他人であつ
て、たとい右各書類がDからさらにEに交付されても、右書類の授受は、被上告人
にとつて特定他人である同人ら間で前記のような経緯のもとになされたものにすぎ
ないのであるから、Eにおいて、右各書類をFに示して被上告人の代理人として本
件交換契約を締結した以上、被上告人は、Fに対しEに本件山林売渡の代理権を与
えた旨を表示したものというべきであつて、上告人側においてEに本件交換契約に
つき代理権があると信じ、かく信ずべき正当の事由があるならば、民法一〇九条、
一一〇条によつて本件交換契約につきその責に任ずべきものである。原判決引用の
判例の事案は、本件事案と場合を異にする。
 そうだとすると、原判決は、右表見代理の規定の解釈を誤つた結果、本件交換契
約につきその適用はないとするに至つたものというべく、右違法は原判決に影響を
及ぼすこと明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。
 同二について。
 所論の点に関し原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて原審のした判断は
正当として是認するに足り、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することがで
きない。
 よつて、原判決を破棄し、さらに審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻すべ
きものとし、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決
する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    飯   村   義   美
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    関   根   小   郷

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