弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
     本件を仙台地方裁判所石巻支部に差し戻す。
         理    由
 上告代理人松嶋泰の上告理由は別紙のとおりである。
 職権をもつて調査するに、原判決は、上告人A寺は宗教法人令による宗教法人で
あつたが、宗教法人法の施行に伴い、同法附則五条に基づき同法による新宗教法人
となるため、その主管者であつたBにおいて、同法附則一四条に則りその包括団体
たる宗教法人D宗に対して被包括関係廃止の通知をしたうえ、所轄宮城県知事に対
し新宗教法人E寺規則の認証を申請し、同知事から認証を受けて右E寺の設立登記
を了したので、これによつて、右規則認証申請ののちにD宗が包括団体としてした
FをA寺の主管者に任命する行為は、遡つてその効力を失い、同人には上告人を代
表して本訴を提起する権限はなかつたものといわざるをえないとして、訴を却下し
た第一審判決を支持したものである。しかし、右E寺規則は、これを認証しえない
とした宮城県知事の決定に対する訴願を容認する旨の文部大臣の裁決に従つて認証
されたものであつたが、Fからこの裁決を違法としてその取消しを求める訴を提起
した結果、右規則の作成から認証の申請に至る手続の過程に重要な法定手続の違背
があるのにこれを認証すべきものとした右裁決は違法である等の理由により、これ
を取り消す旨の判決が確定したので、宮城県知事は、右判決に従つて、昭和四一年
六月一一日に、さきにしたE寺規則の認証を取り消し、新法人の設立登記が抹消さ
れた事実が明らかに認められる。したがつて、上告人A寺は、宗教法人令による宗
教法人として終始し、新宗教法人としての規則認証が受けられないことに確定した
のちにおいても、同令上の清算法人として存続しているものというべく、新宗教法
人となることに伴つてのみすることができるD宗との間の被包括関係の廃止は、そ
の効力を認めるに由ないから、D宗寺院住職任免規程に基づいて同宗からA寺の住
職に任命されたものであること明らかなFは、主管者として、また解散後は清算人
として、同寺を代表する権限を有すべき筋合いであり、原審および第一審判決の判
示するような理由をもつてしては、その代表権を否定しえないものといわなければ
ならない。
 これを要するに、E寺規則の認証が有効になされ上告人が新宗教法人となつたこ
とを前提として、Fの代表権を否定し、本訴を却下すべきものとした原審および第
一審判決は、右認証処分がのちの行政処分により取り消された結果、失当となるに
至つたものとなさざるをえず、破棄および取消しを免れない。
 よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、三八八条に従い、裁判官全員の
一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   大
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎

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