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平成15年(ネ)第4920号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方
裁判所平成11年(ワ)第18380号)(平成16年4月12日口頭弁論終結)
          判    決
       控訴人   三井化学株式会社
       訴訟代理人弁護士   牧 野 利 秋
       同          鈴 木   修
       同          深 井 俊 至
       補佐人弁理士   増 井 忠 弐
       同          小田島 平 吉
       被控訴人   東燃化学株式会社
       被控訴人   東燃タピルス株式会社
       両名訴訟代理人弁護士 竹 田   稔
       同          川 田   篤
       補佐人弁理士   河 備 健 二
       同          小 栗 久 典
       同          竹 澤   誠
       同          横 山 公 一
          主    文
      控訴人の当審における請求をいずれも棄却する。
      当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。
          事実及び理由
第1 控訴人の当審における請求(訴えの交換的変更による主位的請求及び予備的
請求)
 1 被控訴人らは,控訴人に対し,各自29億8959万円及びうち16億97
44万円に対する平成11年8月26日から,うち7億9951万円に対する平成
13年1月1日から,うち4億9264万円に対する平成14年1月1日から各支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
第2 事案の概要
 控訴人は,いずれも名称を「超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム及
びその製造方法」とする特許第1893038号発明(昭和58年6月10日特許
出願〔以下「本件第1出願」という。〕,平成6年12月26日設定登録。以下,
その特許を「本件第1特許」,その特許権を「本件第1特許権」といい,後記訂正
後の請求項1記載の発明を「第1訂正発明」という。)及び特許第2047192
号発明(本件第1出願の一部につき平成5年6月28日新たな特許出願,平成8年
4月25日設定登録。以下,その特許を「本件第2特許」,その特許権を「本件第
2特許権」といい,後記訂正後の請求項1記載の発明を「第2訂正発明」とい
う。)の特許権者であった。
 本件は,控訴人が,当審における後記の訴えの変更に基づき,主位的に,本
判決別紙物件目録1,2記載の物件(以下,それぞれ「第1物件」,「第2物件」
という。)として特定される製品は,第1訂正発明及び第2訂正発明(以下,併せ
て「各訂正発明」という。)の技術的範囲に属し,これを製造,販売する被控訴人
らの行為が,控訴人の本件第1特許権及び本件第2特許権(以下,併せて「本件各
特許権」という。)を侵害するとして,また,被控訴人らの製造,販売に係る物件
が「ポリエチレン」の構成を有しないとしても,「ポリオレフィン」の構成を有す
るものであることを前提に,予備的に,同目録3,4記載の物件(以下,それぞれ
「第3物件」,「第4物件」という。)を製造,販売する被控訴人らの行為が,控
訴人の本件各特許権を侵害するとして,被控訴人らに対し,不法行為による損害賠
償として,各自29億8959万円及びこれに対する附帯金員の支払を求めている
事案である。
 控訴人は,平成14年11月25日,本件第1特許及び本件第2特許に係る
明細書の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正審判の請求をし,特許庁は,
上記各請求を訂正2002-39247号事件及び訂正2002-39248号事
件として審理した上,本件訴訟の原審の口頭弁論終結(平成15年1月20日)後
である平成15年2月12日,各訂正を認める旨の審決をし,これが確定した。
 原判決は,控訴人の,上記訂正前の特許請求の範囲の記載に係る本件各特許
権に基づく被控訴人東燃化学株式会社(以下「被控訴人東燃化学」という。)に対
する原判決原告第1物件目録及び同第2物件目録記載の各物件の製造,販売の差止
め及び廃棄,被控訴人東燃タピルス株式会社(以下「被控訴人東燃タピルス」とい
う。)に対する上記各物件の販売の差止め及び廃棄並びに上記各物件の製造,販売
による本件各特許権侵害の不法行為に基づく被控訴人らに対する各自24億969
5万円の損害賠償及びこれに対する附帯金員の支払を求める請求をいずれも棄却し
た。
 原審の口頭弁論の終結後,本件各特許権について,上記のとおり各訂正審決
が確定し,また,平成15年6月10日に本件各特許権の存続期間が終了したた
め,控訴人は,原判決中損害賠償請求を棄却した部分のみの取消しを求めて控訴す
るとともに,当審において,上記訂正後の特許請求の範囲の記載に係る本件各特許
権に基づき,請求の拡張を伴う上記主位的請求に訴えの交換的変更をし,かつ,上
記予備的請求を追加した。
 1 前提となる事実
(1)本件第1特許に係る明細書(訂正2002-39247号による訂正後の
もの〔甲42添付,以下「第1訂正明細書」という。〕)の特許請求の範囲の請求
項1の記載
 少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフ
ィンAで,且つ炭化水素系可塑剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横
方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したものであって,初期弾性率が7300k
g/cm2
以上で且つ破断強度が910kg/cm2
以上であることを特徴とする超
高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム。
(下線が訂正部分。以下,その構成を,①「少なくとも極限粘度[η]が
5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで」,②「且つ炭化水素系可塑
剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二
軸延伸したものであって」,③「初期弾性率が7300kg/cm2
以上で」,④
「且つ破断強度が910kg/cm2
以上である」,⑤「ことを特徴とする超高分子
量ポリオレフィン二軸延伸フィルム」と分節して,それぞれ「構成要件①」~「構
成要件⑤」という。)
(2)本件第2特許に係る明細書(訂正2002-39248号による訂正後の
もの〔甲43添付,以下「第2訂正明細書」という。〕)の特許請求の範囲の請求
項1の記載
 少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィ
ンAで,且つ炭化水素系可塑剤Bを添加して一旦固化した後の縦方向の延伸倍率が
4倍以上及び横方向の延伸倍率が4倍以上に二軸延伸したものであって,初期弾性
率が6900kg/cm2
以上で且つ破断強度が720kg/cm2
以上(ただし,
縦方向の延伸倍率が5倍以上,及び横方向の延伸倍率が5倍以上であって,初期弾
性率が7300kg/cm2
以上で且つ破断強度が910kg/cm2
以上を除く)
であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム。
(下線が訂正部分。以下,その構成を,①「少なくとも極限粘度[η]が
5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで」,②「且つ炭化水素系可塑
剤Bを添加して一旦固化した後の縦方向の延伸倍率が4倍以上及び横方向の延伸倍
率が4倍以上に二軸延伸したものであって」,③「初期弾性率が6900kg/c
m2
以上で」,④「且つ破断強度が720kg/cm2
以上」,⑤「ただし,縦方向
の延伸倍率が5倍以上,及び横方向の延伸倍率が5倍以上であって,初期弾性率が
7300kg/cm2
以上で且つ破断強度が910kg/cm2
以上を除く」,⑥
「であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム」と分節し
て,それぞれ「構成要件①」~「構成要件⑥」という。)
(3)控訴人は,本件各特許権の特許権者であったが,平成15年6月10日,
本件各特許権の存続期間が終了した。
(4)被控訴人東燃化学は,商品名「セティーラE25MMS」を含む商品名
「セティーラ」の製品(以下「被控訴人製品」という。)を製造し,被控訴人東燃
タピルスを通じて販売し,被控訴人東燃タピルスは,被控訴人東燃化学から供給を
受けた被控訴人製品を販売している。
(5)被控訴人製品は,第1訂正発明における構成要件②の「縦方向の延伸倍率
が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したもの」及び第2訂正発
明の構成要件②における「縦方向の延伸倍率が4倍以上及び横方向の延伸倍率が4
倍以上に二軸延伸したもの」を充足する。
 2 控訴人の主張
(1)被控訴人製品は各訂正発明の技術的範囲に属するか(争点1)
(1-1)各訂正発明における構成要件①の「少なくとも極限粘度[η]が5.0d
l/g以上の超高分子量ポリオレフィンA」の意義
ア 以下,京都大学化学研究所教授A作成の平成15年10月27日付け意
見書〔甲61,以下「甲61意見書」という。〕に基づき,繰り返し単位がエチレ
ンの場合(被控訴人製品の場合)を前提にして主張する。分子量分布を有し,しか
も特定の極限粘度を有するポリマーの集合体は,見掛けの極限粘度が同一の単分散
のポリマーが存在するにしても,見掛けの極限粘度より大きい極限粘度のポリマー
と小さい極限粘度のポリマーから構成されるものである。市販のポリエチレンは比
較的広い分子量分布を有するものである。このような分子量分布を有するポリマー
は,分子量あるいは極限粘度が異なる単分散のポリマーを混合して製造できること
は論ずるまでもなく,分子量分布を有するポリマー同士を混合しても製造できるこ
とは,ポリマーの分子量分布について上記定義についての考察から導き出されるこ
とである。また,分子量分布を有するポリマーは,種々の分子量を有するポリマー
の集合体,換言すれば,種々の極限粘度を有するポリマーの集合体であることは明
らかである。そして,極限粘度[η]が5dl/gである分子量分布を有するポリ
マーには,極限粘度[η]が5dl/g以上のものと5dl/gより
小さいものの両者が含まれていることも明白である。極限粘度[η]が5dl/g
である単分散のポリエチレンを直接重合で得ることは現在でも可能ではないが,仮
にそのようなものが存在するとして,甲61意見書引用の平成11年ジョン・ワイ
リー・アンド・サンズ・インク第4版発行の「ポリマー・ハンドブック」(甲7
6)のK=0.0677,α=0.67(訳文表1続き)を採用して極限粘度
[η]が5dl/gのポリマーの分子量を算出すると,Mw(=Mn)は59.4万
であり,その部分を上記測定結果の分子量分布曲線に合わせて直線で示している。
この直線が横軸と交わる点が表すのは,極限粘度[η]が5dl/gの分子量であ
る59.4万である。この直線より左側は分子量が59.4万より低く(極限粘度
[η]は5dl/gより小さい),右側は分子量が59.4万より大きい(極限粘度
[η]が5dl/gより大きい)。これにより,分子量の極限粘度[η]が8.8
0dl/gのものであっても,極限粘度[η]が5dl/gより小さい成分が含ま
れており,極限粘度[η]が5.10dl/gのものにも極限粘度[η]が5dl/
gより大きいものも小さいものも含まれていることが明白である。各訂正発明の実
施例に記載の極限粘度[η]が8.20dl/gの超高分子量ポリエチレンといっ
ても,極限粘度[η]が5dl/g未満であるポリエチレンが含まれていること
は,控訴人従業員B作成の平成15年10月20日付け「超高分子量ポリエチレン
のGPC測定結果について」(甲77,以下「甲77実験報告書」という。)にも
具体的に示されている。
イ 次に,低中圧法のポリエチレンの分子量分布について考察する。本件第
1出願当時の技術では,ポリエチレンは,ハロゲン化チタンあるいはそれを更にハ
ロゲン化マグネシウムなどの担体に担持した固体触媒と有機アルミニウムなどの有
機金属化合物から成る触媒などで,エチレンを重合して得るものが一般的であっ
た。このような方法で重合したポリエチレンでは,重量平均分子量と数平均分子量
の比は,通常5~10程度であるが,昭和56年2月1日化学同人第2版発行「高
分子化学序論」(甲62)によれば,20~30のものが知られていることが示さ
れている。触媒によっては,分子量分布が5~7と小さい場合もあるが,分子量分
布について上記したように,比較的狭い分子量分布を有するポリマーであっても,
分子量の異なるものを混合して分子量分布を広げることができることは明白であ
り,そのような技術的思想の特許も出願されている(特開昭57-177036号
公報〔甲64〕及び特開昭58-2339号公報〔甲65〕)。一方,分子量が異
なるものを混合するには,分子量によって溶融粘度が異なることから,極端に分子
量が異なる場合には困難であり,溶媒に溶解して混合するほかに,重合に際して分
子量の異なるポリマーを段階的に重合するなどして製造することも広く行われてい
る。そのような技術的思想の特許出願も,ポリエチレン(甲61意見書引用の特公
昭48-42716号公報〔甲66〕,特開昭51-47079号公報〔甲6
7〕,特開昭51-100984号公報〔甲68〕,特開昭56-161405号
公報〔甲69〕,特開昭56-32505号公報〔甲70〕及び特開昭56-38
303号公報〔甲71〕)のみならず,ポリプロピレン(甲61意見書引用の特開
昭57-102907号公報〔甲72〕,特開昭57-185304号公報〔甲7
3〕及び特開昭58-7406号公報〔甲74〕)についても行われ,また,分子
量が異なるものを製造することの内容について解析すること(甲61意見書引用の
平成12年4月テクノロジー・アンド・エデュケイション・パブリシャーズ発行の
「触媒オレフィン重合の発展及び進展」〔甲75〕)も行われている。このよう
に,比較的分子量分布の狭いポリマーを与える触媒であっても,分子量の異なるも
のを重合で製造して分子量分布が10以上のものを作ること,すなわち,重合によ
って広い分子量分布のポリマーを得ることも本件第1出願の時点で周知であり,そ
の実現に何ら困難性がないことは明らかである。
ウ そもそも通常のポリオレフィンは,ポリエチレンと同様,種々の分子量
のポリオレフィンの集合体であり,分子量分布を有するものであるから,ある極限
粘度で表されるポリマーは,その極限粘度より大きい値を有するポリマーと小さい
値を有するポリマーの集合体である。したがって,[η]が5以上のものは,5以
上のものと5未満のものを混合したものであることを排除しないことは明らかであ
る。各訂正発明の実施例には,極限粘度[η]が8.20dl/gの超高分子量ポ
リエチレンが記載されているが,この中にも極限粘度[η]が5dl/g未満であ
るポリエチレンが含まれていることは,上記アのとおりである。各訂正発明におい
て,超高分子量ポリオレフィンAの極限粘度[η]が5dl/g以上と記載されて
いるのは,要するに,極限粘度[η]が5dl/g以上のポリオレフィンと極限粘
度[η]が5dl/g未満であるポリオレフィンの混在した状態の極限粘度[η]
が5dl/g以上であることを要するということであり,混在した状態で極限粘度
[η]が5dl/g未満である場合は,高強度フィルムが得られないおそれがある
ということである。上記のように,本件第1出願当時において,極限粘度[η]が
異なるポリオレフィンを混合して,ある目的とした極限粘度[η]及び分子量分布
を有するポリオレフィンを製造することは周知であったから,明細書に極限粘度
[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAと記載されていた場合に,
極限粘度[η]が5dl/g以上のポリオレフィン(例えば,入手できた極限粘度
[η]が7dl/gのポリエチレン)と極限粘度[η]が5dl/g未満であるポ
リオレフィン(例えば,入手できた極限粘度[η]が2dl/gのポリエチレン)
を混合して極限粘度[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンA(例え
ば,使用しようとした極限粘度[η]が6dl/gのポリエチレン)を当業者が準
備して使用することもあり得ることは,分子量分布についての考察から明らかなこ
とである。各訂正発明において,混合物の極限粘度[η]が5dl/g以上であれ
ば,目的とした高強度フィルムを得られるのであるから,このような場合を排除す
る理由はない。
エ さらに,極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリエ
チレンに極限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレンを少しでも混合
すれば,いかに混合物の極限粘度[η]がなお5.0dl/g以上である場合であ
っても,「超高分子量ポリオレフィンA」に該当しないとすることは,極めて容易
に各訂正発明の実施を迂回することができることになり,不合理極まりない。
オ 以上のとおり,極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量
ポリエチレンと極限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレンとを混合
した混合物の極限粘度[η]が5.0dl/g以上である限り,当該混合物は,
「極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリオレフィンA」に該
当すると解されるべきである。
(1-2)第1訂正発明における構成要件⑤及び第2訂正発明における構成要件⑥
の「超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム」の意義
ア B作成の平成15年11月14日付け「実験報告書」(甲81)のデー
タ部分によれば,可塑剤の量比,可塑剤の種類によらず,可塑剤を抽出した後の物
性は略同等である。したがって,炭化水素系可塑剤Bが抽出されたフィルムは,二
軸延伸により発現した機械的性質を基本的に保持したものと考えられるから,「超
高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム」には,炭化水素系可塑剤を抽出除去し
たものも含まれると解すべきである。
イ 訂正2002-39247号事件及び訂正2002-39248号事件
による訂正(以下,併せて「本件各訂正」という。)によって除外した態様は,特
許庁が明細書に記載がないとした「超高分子量ポリオレフィンAを炭化水素系可塑
剤を添加しないで二軸延伸したもの」にすぎず,「炭化水素系可塑剤を抽出除去し
た超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム」は,「超高分子量ポリオレフィン
を炭化水素系可塑剤を添加して二軸延伸したもの」である。
ウ 第1訂正明細書(甲42添付)には,炭化水素系可塑剤を添加して二軸
延伸を行い製造された本件超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムが開示さ
れ,さらに,当該フィルムから当該炭化水素系可塑剤を除去することができること
が開示されている。すなわち,第1訂正明細書には,炭化水素系可塑剤を含まない
態様の超高分子量二軸延伸フィルムが開示されているのであるから,これらの開示
を受けた本件第1出願当時の当業者にとって,当該超高分子量ポリオレフィン二軸
延伸フィルムが,二軸延伸する前に添加した炭化水素系可塑剤を除去した場合をも
含むことは,自明のことであった。そして,第1訂正発明における炭化水素系可塑
剤は,第1訂正発明の超高分子量ポリエチレン二軸延伸フィルムの製造過程におい
て,超高分子量ポリエチレンの二軸延伸を可能にする主たる要因(製造するための
条件の一つ)ではあるが,製造された当該超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィ
ルムの組成上不可欠な要素となるものではない。第1訂正発明に係る特許請求の範
囲第1項では,形状,用途を限定することなく,単に「超高分子量ポリオレフィン
二軸延伸フィルム」と記載され,「フィルム」は,一般には「薄膜」とも称され
(甲31-2~4),「膜」には種々の構造,形態のものがあり,透過物質の膜内
通路となる膜の孔構造により,孔径3nm以下の緻密膜,孔径3nm~104
nmの
多孔性膜,孔径104
nm以上の繊維質膜に分類される。緻密膜は,高分子フィルム
など直接重合,延伸,ブラスト成型,キャスティングなどの方法でつくられる高分
子膜が代表的である(甲31-5)から,通常,「フィルム」が孔のない膜を意味
するものではないことは明らかであり,微孔のある薄膜も「フィルム」であるか
ら,炭化水素系可塑剤Bの抽出除去後の微孔のある薄膜も,「フィルム」に該当す
るというべきである。
(1-3)被控訴人製品と各訂正発明の構成要件との対比
ア 被控訴人製品
  被控訴人製品は,第1物件ないし第4物件に該当するものである。
イ 第1物件及び第3物件と第1訂正発明の構成要件との対比
(ア)構成要件①について
 ポリエチレンは,「ポリオレフィン」に該当し,第1物件及び第3物
件において,極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリエチレン
と極限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレンとを混合した混合物の
極限粘度[η]は5.0dl/g以上であるから,上記(1-1)のとおり,当該混合物
は,「少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィ
ンA」に該当する。したがって,第1物件及び第3物件は,構成要件①を充足す
る。
(イ)構成要件②について
 流動パラフィンは,「炭化水素系可塑剤B」に該当し,第1物件及び
第3物件は,流動パラフィンを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上10倍以下及
び横方向の延伸倍率が5倍以上10倍以下に二軸延伸したものであるから,構成要
件②を充足する。
(ウ)構成要件③について
 第1物件及び第3物件の初期弾性率は,7300kg/cm2
以上30
000kg/cm2
以下であるから,第1物件及び第3物件は,構成要件③を充足す
る。
(エ)構成要件④について
 第1物件及び第3物件の破断強度は,910kg/cm2
以上2000
kg/cm2
以下であるから,第1物件及び第3物件は,構成要件④を充足する。
(オ)構成要件⑤について
 ポリエチレンは,「ポリオレフィン」に該当し,第1物件及び第3物
件は超高分子量ポリエチレン二軸延伸フィルムであるから,上記(1-2)のとおり,構
成要件⑤を充足する。
(カ)以上のとおり,第1物件及び第3物件は,第1訂正発明のすべての構
成要件を充足する。
ウ 第2物件及び第4物件と第2訂正発明の構成要件との対比
 被控訴人製品中,第1物件又は第3物件に該当しないものがあるとして
も,それは第2物件又は第4物件であり,第2物件及び第4物件は,以下のとお
り,第2訂正発明の構成要件を充足する。
(ア)構成要件①について
 ポリエチレンは,「ポリオレフィン」に該当し,第2物件及び第4物
件において,極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリエチレン
と極限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレンとを混合した混合物の
極限粘度[η]は5.0dl/g以上であるから,上記(1-1)のとおり,当該混合物
は,「少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィ
ンA」に該当する。したがって,第2物件及び第4物件は,構成要件①を充足す
る。
(イ)構成要件②について
 流動パラフィンは,「炭化水素系可塑剤B」に該当し,第2物件及び
第4物件は,流動パラフィンを添加して一旦固化した後の縦方向の延伸倍率が5倍
以上6倍以下及び横方向の延伸倍率が5倍以上6倍以下に二軸延伸したものである
から,構成要件②を充足する。
(ウ)構成要件③について
 第2物件及び第4物件の初期弾性率は,6900kg/cm2
以上30
000kg/cm2
以下であるから,第2物件及び第4物件は,構成要件③を充足す
る。
(エ)構成要件④について
 第2物件及び第4物件の破断強度は,720kg/cm2
以上2000
kg/cm2
以下であるから,第2物件及び第4物件は,構成要件④を充足する。
(オ)構成要件⑤について
 第2物件及び第4物件は,初期弾性率が7300kg/cm2
以上で,
かつ,破断強度が910kg/cm2
以上のものではないから,構成要件⑤を充足す
る。
(カ)構成要件⑥について
 ポリエチレンは,「ポリオレフィン」に該当し,第2物件及び第4物
件は,超高分子量ポリエチレン二軸延伸フィルムであるから,上記(1-2)のとおり,
構成要件⑥を充足する。
(2)本件各特許に無効理由があり,控訴人が本件各特許権に基づく権利行使を
することが権利濫用に当たるか(争点2)
 被控訴人らは,仮に,各訂正発明に炭化水素系可塑剤を抽出除去したフィ
ルムが含まれるとすれば,各訂正明細書は,平成2年法律第30号による改正前の
特許法36条3項(以下「旧36条3項」という。)所定の記載要件を具備してい
ないものとなるから,各訂正発明に係る本件各特許に無効理由が存在することが明
らかであって,本件各特許権に基づく損害賠償の請求は,権利の濫用に当たり許さ
れないと主張するが失当である。当業者は,各訂正明細書の発明の詳細な説明中の
記載及び本件第1出願当時の周知技術から,容易に,炭化水素系可塑剤を抽出除去
した超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムを製造し,これを利用することが
できるから,各訂正明細書の記載は,旧36条3項が規定する実施可能要件を満た
すことは明らかである。
(3)損害(争点3)
ア 平成4年3月23日から平成7年9月19日までの第1物件又は第3物
件の製造,販売
 被控訴人らは,平成4年3月23日から平成5年12月31日までの
間,第1物件又は第3物件を48万平方メートル製造,販売し,その間,単価は1
平方メートル当たり1000円であったから,被控訴人らの上記期間中の売上高
は,4億8000万円である。被控訴人らは,平成6年1月1日から同年12月3
1日までの間,第1物件又は第3物件を132万平方メートル製造,販売し,その
間,単価は1平方メートル当たり900円であったから,被控訴人らの上記期間中
の売上高は,11億8800万円である。被控訴人らは,平成7年1月1日から同
年9月19日までの間,第1物件又は第3物件を123万平方メートル製造,販売
し,その間,単価は1平方メートル当たり800円であったから,被控訴人らの上
記期間中の売上高は,9億8400万円である。
 以上によれば,被控訴人らの平成4年3月23日から平成7年9月19
日までの間の第1物件又は第3物件の製造,販売による売上高は,26億5200
万円である。そして,第1訂正発明については,製品の売上高に対して10%を乗
じた額が,控訴人の受けるべき相当な対価である。したがって,控訴人は,上記期
間中に2億6520万円の損害を被った(特許法102条3項)。
イ 平成7年9月20日から平成11年6月30日までの第1物件又は第3
物件と第2物件又は第4物件(以下,(3)の項において「被控訴人物件」という。)
の製造,販売
 被控訴人らは,平成7年9月20日から同年12月31日までの間,被
控訴人物件を48万平方メートル製造,販売し,その間,単価は1平方メートル当
たり800円であったから,被控訴人らの上記期間中の売上高は,3億8400万
円である。被控訴人らは,平成8年1月1日から同年12月31日までの間,被控
訴人物件を456万平方メートル製造,販売し,その間,単価は1平方メートル当
たり650円であったから,被控訴人らの上記期間中の売上高は,29億6400
万円である。被控訴人らは,平成9年1月1日から同年12月31日までの間,被
控訴人物件を643万平方メートル製造,販売し,その間,単価は1平方メートル
当たり550円であったから,被控訴人らの上記期間中の売上高は,35億365
0万円である。被控訴人らは,平成10年1月1日から同年12月31日までの
間,被控訴人物件を816万平方メートル製造,販売し,その間,単価は1平方メ
ートル当たり470円であったから,被控訴人らの上記期間中の売上高は,38億
3520万円である。被控訴人らは,平成11年1月1日から同年6月30日まで
の間,被控訴人物件を489万平方メートル製造,販売し,その間,単価は1平方
メートル当たり430円であったから,被控訴人らの上記期間中の売上高は,21
億0270万円である。
 以上によれば,被控訴人らの平成7年9月20日から平成11年6月3
0日までの間の被控訴人物件の製造,販売による売上高は,128億2240万円
である。そして,各訂正発明については,製品の売上高に対して10%を乗じた額
が,控訴人の受けるべき相当な対価である。したがって,控訴人は,上記期間中に
12億8224万円の損害を被った(同条同項)。
ウ 平成11年7月1日から平成12年12月31日までの被控訴人物件の
製造,販売
 被控訴人らは,平成11年7月1日から同年12月31日までの間,被
控訴人物件を711万平方メートル製造,販売し,その間,単価は1平方メートル
当たり410円であったから,被控訴人らの上記期間中の売上高は,29億151
0万円である。被控訴人らは,平成12年1月1日から同年12月31日までの
間,被控訴人物件を1200万平方メートル製造,販売し,その間,単価は1平方
メートル当たり365円であったから,被控訴人らの上記期間中の売上高は,43
億8000万円である。
 以上によれば,被控訴人らの平成11年7月1日から平成12年12月
31日までの間の被控訴人物件の製造,販売による売上高は,72億9510万円
である。したがって,控訴人は,上記期間中に7億2951万円の損害を被った
(同条同項)。
エ 平成13年1月1日から同年12月31日までの被控訴人物件の製造,
販売(当審における請求の拡張部分)
 被控訴人らは,上記の間,被控訴人物件を少なくとも合計1380万平
方メートル製造,販売し,その間,単価は少なくとも1平方メートル当たり328
円であったから,被控訴人らの上記期間中の売上高は,少なくとも45億2640
万円である。
 したがって,控訴人は,上記期間中に少なくとも4億5264万円の損
害を被った(同条同項)。
オ 上記ア~エのとおり,控訴人は,被控訴人らの被控訴人物件の製造,販
売により,平成4年3月23日から平成11年6月30日までの間に少なくとも1
5億4744万円,同年7月1日から平成12年12月31日までの間に少なくと
も7億2951万円,平成13年1月1日から同年12月31日までの間に少なく
とも4億5264万円,合計27億2959万円の損害を被った。
カ 弁護士・弁理士費用
 本件訴訟に関し,弁護士・弁理士費用は,平成4年3月23日から平成
11年6月30日までの間の被控訴人らの被控訴人物件の製造,販売に係る損害賠
償請求については1億5000万円を下ることはなく,平成11年7月1日から平
成12年12月31日までの間の被控訴人らの被控訴人物件の製造,販売に係る損
害賠償請求については7000万円を下ることはなく,平成13年1月1日から同
年12月31日までの間の被控訴人らの被控訴人物件の製造,販売に係る損害賠償
請求については4000万円を下ることはない(当審における請求の拡張部分)か
ら,控訴人は,弁護士・弁理士費用として,合計2億6000万円の損害を被っ
た。
キ 控訴人の当審における主位的請求及び予備的請求
 よって,控訴人は,本件各特許権侵害の不法行為による損害賠償とし
て,被控訴人らに対し,各自上記損害合計29億8959万円及びうち16億97
44万円については訴状送達の日の翌日である平成11年8月26日から,うち7
億9951万円については平成13年1月1日から,うち4億9264万について
は平成14年1月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害
金の支払を求める。
 3 被控訴人らの主張
(1)被控訴人製品は各訂正発明の技術的範囲に属するか(争点1)について
(1-1)各訂正発明における構成要件①の「少なくとも極限粘度[η]が5.0d
l/g以上の超高分子量ポリオレフィンA」の意義について
 甲61意見書の指摘するような分子量分布は,飽くまでも一般的な低分子
量のポリエチレンに対して適用できる一般的な知見であって,超高分子量のポリエ
チレンに対しても適用できるというのは推測にすぎず,特殊なポリオレフィンであ
る本件の超高分子量ポリオレフィンに対しても適用できる論理であるとは到底いえ
ない。甲61意見書は,平均分子量としての極限粘度が5dl/g以上のポリオレ
フィンと平均分子量としての極限粘度が5dl/g未満のポリオレフィンとが混在
していることを意味するものではない。単独のポリオレフィンであれば,その極限
粘度[η]が5.0dl/gであった場合には,極限粘度[η]が5.0dl/g
以上の成分と極限粘度[η]が5.0dl/g未満の成分とが混在しているからこ
そ分子量分布が存在するのであり,分子量分布が1であるとは,被控訴人らは主張
していない。
 東京工業大学資源化学研究所助教授C作成の平成16年1月31日付け意
見書(乙38,以下「乙38意見書」という。)及びJournalofPolymer
Science:PolymerPhysicsEdition,Vol.20,pp2229-2241(1982)(乙39,以下「乙
39文献」という。)によれば,超高分子量ポリオレフィンに,低分子量のポリオ
レフィンを添加すると,各訂正発明の目的である高強度のフィルムが得られないこ
とは,本件第1出願当時には技術常識であったのであり,各訂正発明においては,
極限粘度[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンと極限粘度[η]が
5dl/g未満のポリオレフィンとから成る組成物を用いることは,最初から排除
されていたものであるというほかはない。したがって,極限粘度[η]が5.0d
l/g以上である超高分子量ポリエチレンと極限粘度[η]が5.0dl/g未満
であるポリエチレンとを混合した混合物は,「極限粘度[η]が5.0dl/g以
上の超高分子量ポリオレフィンA」に該当しない。
(1-2)第1訂正発明における構成要件⑤及び第2訂正発明における構成要件⑥
の「超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム」の意義について
ア 本件各訂正は,炭化水素系可塑剤を添加しない二軸延伸フィルムを特許
請求の範囲から除外して無効を回避したものであるから,各訂正発明に,当初から
技術的範囲に含まれていなかった,可塑剤を添加した後抽出除去した超高分子量ポ
リオレフィン二軸延伸フィルムが含まれることはあり得ず,このことは,各訂正発
明の構成要件が,可塑剤を抽出除去したものの初期弾性率と破断強度を規定してい
ないことからも明らかである。したがって,各訂正発明の技術的範囲は,炭化水素
系可塑剤を含む超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムに限定されたものであ
る。
イ 各訂正明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載からみて
も,また,本件第1出願の出願経過における控訴人の平成3年5月27日付け意見
書(乙9)の「可塑剤抽出(注,「注出」とあるのは誤記と認める。)工程を経
て,はじめて微孔が形成される本願発明(注,第1訂正発明)のフィルムと,引用
例1(注,特公昭53-18553号公報)記載の・・・多孔性フィルムとは,そ
の製法,ならびに物性において明らかに区別される」(8頁第2段落),同年10
月5日付け意見書(乙13)の「本願発明における前記初期弾性率や破断強度が大
きい(初期弾性率が7300kg/cm2
以上で且つ破断強度が910kg/cm2
以上)超高分子量ポリエチレン二軸延伸フィルムは,具体的には,超高分子量ポリ
エチレンに特定の炭化水素系可塑剤を配合した混合物の押出物を,超高分子量ポリ
エチレンの融点以下の温度で延伸することにより得られるものであります」(10
頁第3段落)との記載からみても,各訂正発明の「超高分子量ポリオレフィン二軸
延伸フィルム」は,炭化水素系可塑剤Bを抽出除去した後の多孔化したフィルムを
含まないことが明らかである。
ウ 「パラフィンワックス」と「流動パラフィン」とは,各訂正明細書にお
いて,炭化水素系可塑剤Bとして一緒に例示されているが,超高分子量ポリエチレ
ン中においては,全く異なった挙動や作用効果を示すから,当然の結果として,こ
れら炭化水素系可塑剤を抽出除去した後では,前者を含む二軸延伸フィルムの場合
は,その機械的性質が基本的に保持されたものとなるのに対して,後者を含む二軸
延伸フィルムの場合は,その機械的性質が大きく変化するから,炭化水素系可塑剤
として「流動パラフィン」を用いた被控訴人製品は,各訂正発明の「超高分子量ポ
リオレフィン二軸延伸フィルム」に相当しない。
(1-3)被控訴人製品と各訂正発明の構成要件との対比について
ア 被控訴人製品について
  被控訴人製品は,商品名を「セティーラ」と称し,極限粘度[η]が5.
0dl/g未満であるポリオレフィンと,極限粘度[η]が5.0dl/g以上であ
る超高分子量ポリオレフィンと,流動パラフィンを混合した混合物から得られた,
縦方向の延伸倍率が5倍及び横方向の延伸倍率が5倍であって,初期弾性率が16
50kg/cm2
以下であり,かつ,破断強度が500kg/cm2
以下であるポリ
オレフィン二軸延伸フィルムから,流動パラフィンの全量を抽出除去して得られた
ポリオレフィン微多孔膜である。
イ 被控訴人製品と第1訂正発明の構成要件との対比について
(ア)構成要件①について
 被控訴人製品は,極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量
ポリオレフィンと極限粘度[η]が5.0dl/g未満のポリオレフィンの混合物
に流動パラフィンを混合して二軸延伸するものであって,極限粘度[η]が5.0
dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンと極限粘度[η]が5.0dl/g未満
のポリオレフィンの混合物は,超高分子量ポリオレフィンとは樹脂組成物として明
確に区別されるものであるから,構成要件①を充足しない。
(イ)構成要件②について
 被控訴人製品は,上記(ア)の混合物に流動パラフィンを混合し,二軸延
伸したものであり,上記流動パラフィンは「炭化水素系可塑剤B」に該当する。し
かしながら,被控訴人製品は,この二軸延伸フィルムから可塑剤である流動パラフ
ィンの全量を抽出除去して得られたポリオレフィン微多孔膜であるところ,第1訂
正発明は,炭化水素系可塑剤Bを含む二軸延伸フィルムに限定されるから,第1訂
正発明の技術的範囲には属しない。
(ウ)構成要件③及び④について
 被控訴人製品の初期弾性率は1650kg/cm2
以下であり,かつ,
破断強度が500kg/cm2
以下であるから,構成要件③及び④を充足しない。ま
た,被控訴人製品(控訴人のいう「最終製品」)は,顧客の要請に応じて製品ごと
に物性値を定めており,顧客との秘密保持事項とされているが,製品名「E25H
HS」の破断強度は,縦方向705kg/cm2
,横方向658kg/cm2
であ
り,また,製品名「E16HHS」の破断強度は,縦方向754kg/cm2
,横方
向628㎏/㎝2
であって,いずれも構成要件④を充足しない。
(エ)構成要件⑤について
 第1訂正発明の構成要件⑤は,構成要件①~④を備えた「ことを特徴
とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム」であって,炭化水素系可塑剤
Bを含む二軸延伸フィルムに限定され,これを添加後に抽出除去したものはその技
術的範囲に属しない。したがって,被控訴人製品「セティーラ」が構成要件⑤を充
足しないことは明白である。
ウ 被控訴人製品と第2訂正発明の構成要件との対比について
 被控訴人製品が第2訂正発明の構成要件①~⑥を充足しないことは,上
記イのとおりである。
(2)本件各特許に無効理由があり,控訴人が本件各特許権に基づく権利行使を
することが権利濫用に当たるか(争点2)について
  第1訂正発明のおける構成要件⑤及び第2訂正発明における構成要件⑥の
「超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム」が,炭化水素系可塑剤を含む二軸
延伸フィルムに限定されることは,各訂正明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細
な説明の記載並びに出願経過に照らし明らかであり,仮に,各訂正発明に炭化水素
系可塑剤を抽出除去したフィルムが含まれるとすれば,各訂正明細書は,旧36条
3項所定の記載要件を具備していないものとなるから,各訂正発明に係る本件各特
許に無効理由が存在することが明らかであって,本件各特許権に基づく損害賠償の
請求は,権利の濫用に当たり許されない。
  すなわち,各訂正明細書の記載を見ると,上記「炭化水素系可塑剤を抽出
除去したフィルム」の態様に関しては,発明の詳細な説明には,「本発明の超高分
子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムは均一に炭化水素系可塑剤Bが分散されてい
るので,例えばn-ヘキサン,n-ヘプタン等により抽出することにより副次的に
生成する微孔を利用した選択膜,エレクトレットフィルム等の機能材料への適性に
も優れている」(第1訂正明細書〔甲42添付〕8頁第2段落,訂正第2明細書
〔甲43添付〕段落【0022】)との記載がわずか一行あるにすぎず,炭化水素
系可塑剤Bを抽出除去する上で当業者が容易に実施できる程度に記載された実施例
に相当する部分は,発明の詳細な説明には記載されていない。しかも,炭化水素系
可塑剤Bが均一に分散されている超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムから
炭化水素系可塑剤Bのみを抽出除去する技術自体はもとより,こうして得られた抽
出除去後の微孔を有する超高分子量ポリオレフィン二軸延伸膜を選択膜,エレクト
レットフィルム等の機能材料に利用することも,本件第1出願時において当業者に
自明のものではない。仮に,各訂正発明が「炭化水素系可塑剤を抽出除
去したフィルム」を含むとすれば,その構成を具体的かつ明確に説明した実施例
は,各訂正明細書に全く開示されていないこととなるから,当該部分について,当
業者が容易に実施できる程度に,その発明の目的,構成及び効果が発明の詳細な説
明に記載されていないというべきである。
(3)損害(争点3)について
 控訴人の損害の主張は,否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(被控訴人製品は各訂正発明の技術的範囲に属するか)について
 (1)各訂正発明における構成要件①の「少なくとも極限粘度[η]が5.0dl
/g以上の超高分子量ポリオレフィンA」の意義について
ア 各訂正発明における構成要件①の「少なくとも極限粘度[η]が5.0d
l/g以上の超高分子量ポリオレフィンA」の解釈について,控訴人は,極限粘度
[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリエチレン(又はポリオレフィ
ン)と極限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレン(又はポリオレフ
ィン)とを混合した混合物の極限粘度[η]が5.0dl/g以上である限り,当
該混合物は,「極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリオレフ
ィンA」に該当すると主張し,被控訴人らは,極限粘度[η]が5dl/g以上の
超高分子量ポリオレフィンと極限粘度[η]が5dl/g未満のポリオレフィンと
から成る組成物を用いることは,各訂正発明においては,最初から排除されていた
ものであるから,上記混合物は,「極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超
高分子量ポリオレフィンA」に該当しないと主張するので検討する。
イ 特許発明の技術的範囲は,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記
載に基づいて定めなければならず(特許法70条1項),この場合においては,願
書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して,特許
請求の範囲に記載された用語の意義を解釈しなければならない(同条2項)のであ
って,これらの記載を離れて特許発明の技術的範囲を認定することは許されない。
そこで,「少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレ
フィンA」の用語を解釈するに当たり,明細書の発明の詳細な記載を見ると,その
「発明の詳細な説明」欄には,①「超高分子量ポリオレフィンの代表例である超高
分子量ポリエチレンは汎用のポリエチレンに比べ耐衝撃性,耐摩耗性,耐薬品性,
引張強度等に優れており,エンジニアリングプラスチックとして用途が拡がりつつ
ある。しかしながら汎用のポリエチレンに比較して溶融粘度が極めて高く流動性が
悪いため,従来の押出成形によって成形することは非常に難しく,その殆どは圧縮
成形によって成形されており,一部ロッド等が極めて低速で押出成形されているの
が現状であった」(第1訂正明細書〔甲42添付〕2頁第2段落,第
2訂正明細書〔甲43添付〕段落【0002】),②「本発明(注,各訂正発明)
に用いる超高分子量ポリオレフィンAは,デカリン溶媒135℃における極限粘度
[η]が5dl/g以上,好ましくは7ないし30dl/gの範囲のものである。
[η]5dl/g未満のものは,分子量が低く超高分子量ポリオレフィンの特徴で
ある高強度フィルムが得られない虞があり,・・・かかる超高分子量ポリオレフィ
ンAは,エチレン,プロピレン,1-ブテン,4-メチル-1-ペンテン,1-ヘ
キセン等を所謂チーグラー重合により重合することにより得られるポリオレフィン
の中で,はるかに分子量が高い範疇のものである」(第1訂正明細書3頁第2段
落,第2訂正明細書段落【0007】),③「本発明の超高分子量ポリオレフィン
二軸延伸フィルムは,従来の通常のポリオレフィンフィルムでは得られない高引張
強度,高衝撃強度を有し且つ高弾性であるので包装材料等のポリオレフィンフィル
ム分野に加えて高弾性,高強度フィルム分野への利用が可能となり各種材料との複
合化による補強材にも使用できる」(第1訂正明細書7頁最終段落~8頁第1段
落,第2訂正明細書段落【0022】)との記載があり,また,④各訂正
発明の実施例及び比較例には,ポリマー成分としては,超高分子量ポリエチレンあ
るいは超高分子量ポリプロピレンのみから成るものが記載され,通常のポリオレフ
ィンとの混合物は記載されていない(第1訂正明細書8頁第3段落~12頁最終段
落,第2訂正明細書段落【0023】~【0039】)。
  上記①には,超高分子量ポリオレフィンの代表例である超高分子量ポリ
エチレンが,通常の「汎用のポリエチレン」に比べて,耐衝撃性,耐摩耗性,耐薬
品性,引張強度等に優れている反面,溶融粘度が極めて高く流動性が悪い等の性質
を有するものとして記載され,上記③には,超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フ
ィルムが,通常のポリオレフィンフィルムでは得られない高引張強度,高衝撃強度
を有し,かつ,高弾性であることが記載されているのであるから,各訂正発明にお
ける「超高分子量ポリオレフィンA」は,通常のポリオレフィンとは,引張強度,
衝撃強度等の性質において,明確に区別されるものとして記載されていると認めら
れる。また,上記②には,「超高分子量ポリオレフィンA」とは,エチレン,プロ
ピレン,1-ブテン,4-メチル-1-ペンテン,1-ヘキセン等の単量体を重合
して得られる,通常のポリオレフィンよりもはるかに分子量の高いポリオレフィン
であることが記載されているのであるから,各訂正発明における「超高分子量ポリ
オレフィンA」は,通常のポリオレフィンとは分子量の点においても,明確に区別
されるものとしとして記載されていると認められる。さらに,上記②の記載によれ
ば,「極限粘度[η]」は,分子量と相関するパラメータであるところ,各訂正発
明における「極限粘度[η]が5dl/g以上」との規定は,超高分子量ポリオレ
フィンの特徴である高強度のフィルムを得るために必要な条件であるとして記載さ
れていることが明らかである。
  そうすると,各訂正発明においては,その性質及び分子量の点におい
て,通常のポリオレフィンとは明確に区別されるものとして,分子量に相関する
「極限粘度[η]」というパラメータを用いて,「少なくとも極限粘度[η]が5
dl/g以上である超高分子量ポリオレフィンA」との規定をし,ポリマー成分と
して,このように規定した「ポリオレフィンA」を用いるものであると理解すべき
であり,このことは,上記④のとおり,各訂正発明の実施例及び比較例には,ポリ
マー成分としては,超高分子量ポリエチレンあるいは超高分子量ポリプロピレンの
みから成るものが記載され,通常のポリオレフィンとの混合物は記載されていない
ことによっても裏付けられるものということができる。
  以上によれば,各訂正発明における構成要件①の「少なくとも極限粘度
[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンA」との用語は,通常のポ
リオレフィンと明確に区別するために規定された用語であるというべきである。
ウ 控訴人は,甲61意見書に記載されているように,分子量分布を有し,
しかも特定の極限粘度を有するポリマーの集合体は,見掛けの極限粘度より大きい
極限粘度のポリマーと小さい極限粘度のポリマーから構成されるのであって,極限
粘度[η]が5dl/g以上である分子量分布を有するポリマーには,極限粘度
[η]が5dl/g以上のものと5dl/gより小さいものの両者が含まれている
ことは明白であり,このことは甲77実験報告書にも具体的に示されているから,
[η]が5以上のものは,5以上のものと5未満のものを混合したものであること
を排除しないことは明らかであり,また,本件第1出願当時において,極限粘度
[η]が異なるポリオレフィンを混合して,ある目的とした極限粘度[η]及び分
子量分布を有するポリオレフィンを製造することは周知であり,極限粘度[η]が
5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンと極限粘度[η]が5dl/g未満の
ポリオレフィンとを混合して極限粘度[η]が5dl/g以上のポリオレフィンA
とすることもあり得ることであって,混合物の極限粘度[η]が5dl/g以上で
あれば目的とした高強度フィルムを得られるのであるから,この場合を排除する理
由はないと主張する。
  確かに,「超高分子量ポリオレフィンA」は,エチレン,プロピレン,
1-ブテン,4-メチル-1-ペンテン,1-ヘキセン等の単量体を重合すること
により得られるものである以上,重合の程度の異なる種々のポリオレフィン成分の
集合体であり,分子量分布が存在することは自明である。また,分子量分布を有す
る超高分子量ポリオレフィンについて「極限粘度[η]」を規定する場合には,分
子量の平均値に相当する値を指すことも明らかであるから,極限粘度[η]が5d
l/g以上である分子量分布を有するポリマーには,極限粘度[η]が5dl/g
以上の成分と5dl/gより小さい成分の両者が含まれる場合があることは,控訴
人の主張するとおりである。そうすると,重合反応により得られた「超高分子量ポ
リオレフィンA」に,極限粘度[η]が5dl/g以上の成分と5dl/g未満の
成分とが混在しても,平均分子量に相当する極限粘度[η]が5dl/g以上であ
れば,各訂正発明における「少なくとも極限粘度[η]が5dl/g以上である超
高分子量ポリオレフィンA」との要件を充足するものということはできる。
  しかしながら,各訂正明細書(甲42,43添付)には,「ポリオレフ
ィンA」に極限粘度[η]が5dl/gの通常のポリオレフィンの添加を許容する
記載は全くない上,各訂正発明における「少なくとも極限粘度[η]が5dl/g
以上であるポリオレフィンA」は,通常のポリオレフィンと明確に区別するために
規定された用語であることは,上記イのとおりであるから,各別に重合された,平
均分子量に相当する極限粘度[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィン
と平均分子量に相当する極限粘度[η]が5dl/g未満のポリオレフィンとを混
合した混合物の極限粘度[η]が5dl/g以上であったとしても,平均分子量に
相当する極限粘度[η]が5dl/g未満のポリオレフィンは通常のポリオレフィ
ンに相当するものであるから,当該混合物が各訂正発明における「少なくとも極限
粘度[η]が5dl/g以上であるポリオレフィンA」に該当するということはで
きない。
エ さらに,控訴人は,極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分
子量ポリエチレンに極限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレンを少
しでも混合すれば,いかに混合物の極限粘度[η]がなお5.0dl/g以上であ
っても,「超高分子量ポリオレフィンA」に該当しないとすることは,極めて容易
に各訂正発明の実施を迂回することができることになり,不合理極まりないとも主
張する。しかしながら,「極限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレ
ン」は,引張強度,衝撃強度等の性質及び分子量の点において,各訂正発明におけ
る「超高分子量ポリオレフィンA」と明確に区別されるものとした「通常のポリオ
レフィン」に相当するものであるから,控訴人主張の混合物が,たとえ極限粘度
[η]5.0dl/g以上を有するとしても,各訂正発明における「少なくとも極
限粘度[η]が5dl/g以上である超高分子量ポリオレフィンA」に該当しない
ことは,上記用語の解釈から当然のことであって,不合理ということはできない。
オ 以上検討したところによれば,極限粘度[η]が5.0dl/g以上で
ある超高分子量ポリエチレン(又はポリオレフィン)と極限粘度[η]が5.0d
l/g未満であるポリエチレン(又はポリオレフィン)とを混合した混合物の極限
粘度[η]が5.0dl/g以上である限り,当該混合物は,「極限粘度[η]が
5.0dl/g以上である超高分子量ポリオレフィンA」に該当するとの控訴人の
主張は,採用することができない。
(2)被控訴人製品と各訂正発明の構成要件①との対比について
  別紙物件目録によれば,控訴人が主張する第1物件及び第2物件は,いず
れも,極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリエチレン,極限粘
度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレン及び流動パラフィンを混合した混
合物から得られるものであり,第3物件及び第4物件は,いずれも,極限粘度
[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリオレフィン,極限粘度[η]が
5.0dl/g未満であるポリオレフィン及び流動パラフィンを混合した混合物から
得られるものである。そして,第1物件及び第2物件における「極限粘度[η]が
5.0dl/g未満であるポリエチレン」並びに第3物件及び第4物件における「極
限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリオレフィン」は,各訂正発明が,
「少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンA」
と規定することによって「超高分子量ポリオレフィンA」と明確に区別されるもの
とした「通常のポリオレフィン」に該当することが明らかであるから,これらを混
合して成る混合物は,上記「少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高
分子量ポリオレフィンA」には該当しないものである。したがって,控訴人主張に
係る第1物件ないし第4物件は,いずれも,各訂正発明の構成要件①を充足せず,
被控訴人製品は,各訂正発明の技術的範囲に属しないものというべきである。
 2 結論
   以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人製品は,
各訂正発明の技術的範囲に属するとはいえないから,被控訴人らが,被控訴人製品
を製造,販売する行為は,控訴人の本件各特許権を侵害するものということはでき
ない。
   よって,控訴人の被控訴人らに対する当審における主位的請求及び予備的請
求は理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所知的財産第2部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
            裁判官   岡  本     岳
    裁判官 早  田  尚  貴
(別紙)
物件目録
1 商品名が「セティーラ」であって,
① 極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリエチレンと極限
粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレンとを混合した混合物(当該混
合物の極限粘度[η]は5.0dl/g以上である。)を,
② 流動パラフィンを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上10倍以下及び横方
向の延伸倍率が5倍以上10倍以下に二軸延伸したものであって,
③ 最終商品の初期弾性率が7300kg/cm2
以上30000kg/cm2

下で
④ 最終商品の破断強度が910kg/cm2
以上2000kg/cm2
以下であ

⑤ 超高分子量ポリエチレン二軸延伸フィルム
2 商品名が「セティーラ」であって,
① 極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリエチレンと極限
粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリエチレンとを混合した混合物(当該混
合物の極限粘度[η]は5.0dl/g以上である。)を,
② 流動パラフィンを添加して一旦固化した後の縦方向の延伸倍率が5倍以上6
倍以下及び横方向の延伸倍率が5倍以上6倍以下に二軸延伸したものであって,
③ 最終商品の初期弾性率が6900kg/cm2
以上30000kg/cm2

下で
④ 最終商品の破断強度が720kg/cm2
以上2000kg/cm2
以下であ

⑤ 最終商品の初期弾性率が7300kg/cm2
以上で且つ最終商品の破断強度
が910kg/cm2
以上のものではない
⑥ 超高分子量ポリエチレン二軸延伸フィルム
3 商品名が「セティーラ」であって
① 極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリオレフィンと極
限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリオレフィンとを混合した混合物(当
該混合物の極限粘度[η]は5.0dl/g以上である。)を,
② 流動パラフィンを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上10倍以下及び横方
向の延伸倍率が5倍以上10倍以下に二軸延伸したものであって,
③ 最終商品の初期弾性率が7300kg/cm2
以上30000kg/cm2

下で
④ 最終商品の破断強度が910kg/cm2
以上2000kg/cm2
以下であ

⑤ 超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム
4 商品名が「セティーラ」であって
① 極限粘度[η]が5.0dl/g以上である超高分子量ポリオレフィンと極
限粘度[η]が5.0dl/g未満であるポリオレフィンとを混合した混合物(当
該混合物の極限粘度[η]は5.0dl/g以上である。)を,
② 流動パラフィンを添加して一旦固化した後の縦方向の延伸倍率が5倍以上6
倍以下及び横方向の延伸倍率が5倍以上6倍以下に二軸延伸したものであって,
③ 最終商品の初期弾性率が6900kg/cm2
以上30000kg/cm2

下で
④ 最終商品の破断強度が720kg/cm2
以上2000kg/cm2
以下であ

⑤ 最終商品の初期弾性率が7300kg/cm2
以上で且つ最終商品の破断強度
が910kg/cm2
以上のものではない
⑥ 超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム

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