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平成17年2月28日判決言渡
平成15年(ワ)第565号 損害賠償請求事件
主文
1 被告Aは,原告に対し,金150万円及びこれに対する平成15年3月19日
から支払済みまで年6分の割合による金員を支 払え。
2 原告の被告Aに対するその余の請求並びに被告B及びCに対する請求をいずれ
も棄却する。
3 訴訟費用は,これを8分し,その7を原告の負担とし,その余は被告Aの負担
とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実
第1 請求
 被告らは,原告に対し,連帯して金1200万円及び内金1040万円に対する
平成15年3月19日から,内金160万円に対する平成13年8月12日から支
払済みまで年6分の割合による各金員を支払え。
第2 当事者の主張
 1 請求原因
(1) 債務不履行に基づく損害賠償請求について
ア 当事者
 (ア) 原告は,主として甲という種類の犬の繁殖を行うブリーダーである。
 (イ)a 被告Aは,住所地において「D」の名称で,乙という種類の犬のブリ
ーディングやペットホテルの事業等を行ってい   る者である。
    b 被告Cは被告Aの実母,被告Bは被告Aの夫であり,被告Aと共に
「D」を経営する者である。
 イ 原告と被告ら間の契約の締結
 (ア) 原告は,平成11年8月10日,被告らに対し,原告所有の別表1記載
の甲9頭(以下,それぞれの犬を通称名で特定   する。)を,期間を定めず
に,委託料1か月10万円で預け,犬の飼育管理を委託する旨の寄託契約(以下
「本件寄託契    約」という。)及び準委任契約(以下「本件準委任契約とい
う。)を口頭で締結し,原告は,9頭の犬を被告らに引き渡し   た。
 (イ) その後,甲9が死亡したため,原告と被告らは,平成11年12月28
日,以後は本件寄託契約ないし本件準委任契約   の委託料を1か月8万円とす
る旨合意し,残りの8頭(以下,甲9を除いた8頭を「本件犬」ということがあ
る。)は,引   き続き被告らに預けることとした。
ウ 犬の死亡等
  ところが,平成13年8月12日までの間に,本件犬のうち,甲1,甲2,甲
6,甲7,甲8の5頭が死亡し,甲3は片目失 明及び片耳欠損の傷害を,甲4は
片目失明の傷害を負った。
エ 損害
 (ア) 死亡した犬の価値相当額
   死亡した5頭の犬の死亡当時の財産的価値は,以下のとおりであり,合計6
24万円を下らない。
 a 甲1  344万円
 b 甲2   70万円
 c 甲6   30万円
 d 甲7  150万円
 e 甲8   30万円
 (イ) 慰謝料
   原告は,本件犬に対し,家族同様の深い愛情を注いでおり,本件犬が死亡
し,あるいは,目がつぶされたり耳が引きちぎら   れる等の死亡にも比肩する
傷害を負ったことによって,著しい精神的損害を受けた。死亡した犬の死亡年月日
や,骨壺の存   在すらわからない状態であること,被告らが,原告に対し,犬
の死亡を直ちに報告しなかったことなどを考慮すると,慰謝   料は1頭当たり
30万円,7頭分の合計210万円は下らない。
 (ウ) 甲1の死亡による逸失利益
   甲1は,種犬として非常に価値があり,現実に年間10件以上の交配希望が
あった。交配料は1回当たり10万円であり,   平均寿命は12,3歳である
から,少なくともあと3年間は交配可能であり,甲1の死亡によって原告に生じた
逸失利益は   合計300万円を下らない。
(2) 本件寄託契約等の取消しに基づく不当利得返還請求について
ア 請求原因(1)ア及びイと同じ。
イ 被告らは,原告に対し,請求原因(1)イ(イ)の合意に際し,甲2が既に死
亡していたことや本件犬の健康状態に関し,真 実を告げずに原告を欺き,甲2が
生きている等と信じさせた上,上記合意をさせた。
ウ また,被告らは,これ以降にも,本件犬が死亡した際には原告に対してこれを
報告すべき義務があったにもかかわらずこれを 秘して,不作為により原告を欺罔
した。
エ 原告は,被告らに対し,平成12年1月分から平成13年8月分まで,本件寄
託契約ないし本件準委任契約に基づく委託料合 計160万円を支払った。
オ 原告は,平成15年3月18日送達の訴状によって,被告らに対し,平成11
年12月28日の変更後の本件寄託契約及び本 件準委任契約を取り消すとの意思
表示をした。
(3) よって,原告は,被告らに対し,債務不履行に基づき,損害賠償金104
0万円及びこれに対する弁済期の後であり,本  訴状送達の日の翌日である平成
15年3月19日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金,
並びに,不  当利得に基づき,既払の委託料160万円及びこれに対する受益の
日の後である平成13年8月12日から支払済みまで商事  法定利率年6分の割
合による利息の支払を求める。
 2 請求原因に対する認否
(1)ア(ア) 請求原因(1)ア(ア)は認める。
   (イ) 同(1)ア(イ)aは認める。
       同(1)ア(イ)bのうち,被告Cが被告Aの実母であること及び
被告Bが被告Aの夫であることは認めるが,被       告C及び被告Bが,
「D」の共同経営者であることは否認する。「D」を経営しているのは,被告Aの
みである。
 イ(ア) 同(1)イ(ア)のうち,原告と被告Aとの間で,原告所有の甲9頭
を,委託料1か月10万円で預ける旨の寄託契    約が締結され,被告Aが犬
の引渡しを受けたことは認めるが,被告C及び被告Bが本件寄託契約の当事者であ
ること及び    被告らが本件準委任契約を締結したことは否認する。
   被告Bは,本件当時,E株式会社に勤務するサラリーマンであり,犬の世話
をするような時間もなく,実際に犬の世話を手   伝ったこともない。また,被
告Cは,本件寄託契約締結後である平成11年10月15日に被告Aが出産したこ
とを機に被   告Aと同居したものであり,本件犬の世話を手伝ったことはある
が,あくまでも手伝ったという程度に過ぎず,契約の当事   者ではない。
 (イ) 同(1)イ(イ)のうち,合意をしたのが被告ら3名であることは否認
し,その余は認める。なお,甲9が死亡したの   は,平成11年12月28日
の朝である。
 ウ 同(1)ウは認める。
 エ(ア) 同(1)エ(ア)は否認する。5頭の犬は,いずれも老齢であった
り,販売には適さない犬であり,また健康状態も  悪かったことから,財産的価
値のある犬ではなかった。
 (イ) 同(1)エ(イ)は否認する。原告は,本件犬を被告Aに預けている
間,一度も本件犬に会いに来たことがなく,原告  が本件犬に対して深い愛情を
注いでいたことなどあり得ない。
 (ウ) 同(1)エ(ウ)は否認する。被告Aが本件犬を預かっている間,交配
の依頼があったのは甲5について一度だけであ  り,甲1を交配するために原告
のもとへ連れて行ったことはない。また,通常,犬の交配適正年齢はおよそ5歳か
ら6歳まで  であり,預かった当時8歳であった甲1に,交配依頼が多数あるこ
とは考えられない。
(2)ア 同(2)アに対する認否は,同(1)ア及びイに対する認否と同じ。
 イ 同(2)イは否認する。
 ウ 同(2)ウは否認する。
 エ 同(2)エのうち,支払を受けたのが被告らであることは否認し,その余は
認める。支払を受けたのは,契約当事者である 被告Aのみである。
 3 抗弁
  (1) 帰責事由の不存在
ア 本件犬のうち5頭が死亡し,2頭が片耳欠損等の傷害を負ったのは,本件犬同
士のけんかによるものであるか,もともと本件 犬が高齢であったためであるか又
は健康状態が悪かったためである。
イ 被告Aは,手間暇を惜しまずに本件犬の面倒をみていたものであり,本件犬が
死亡ないし傷害を負うに至ったのは,原告が, 被告Aに対し,本件犬の特徴や管
理する上での注意事項につき適切な指示をしなかったためである。
ウ 本件寄託契約の委託料は1頭当たり1か月1万円であり,通常,小型犬1頭の
1か月のえさ代は約7000円程度かかるこ  と,業者として小型犬を1か月預
かる場合の相場は6万円以上であることからすると,本件寄託契約の委託料は相場
に比して異 常に低い金額であり,被告Aが負うべき注意義務は,通常の有償寄託
契約に比べて相当低いものというべきであるから,結局, 被告Aに過失はない。
  (2) 和解
 原告は,平成13年8月14日ころ,被告Aに対し,5頭の犬の死亡が発覚した
後,「どうせ,おまえ達なんかじゃ金なんて払えないだろう。だったら,お客の犬
を返して,ショーで稼ぐようなことはするなよ。」などと謹慎を申し入れ,被告A
はこれを承諾した。このことにより,原告は,被告Aに対する損害賠償請求権を放
棄するという内容の和解が成立した。
 4 抗弁に対する認否
  (1)ア 抗弁(1)アは否認する。本件犬の死亡原因が,本件犬同士のけん
かによることはあり得ないし,被告Aは,原告   に対し,甲6及び甲8につい
ては,被告A所有の丙にかみ殺された旨述べた。また,原告は,被告らに対し,本
件犬の様子   がおかしいときは,F獣医師のもとに連れて行くよう指示し,治
療費については原告負担とする旨伝えていたにもかかわら   ず,被告らは,F
獣医師のもとに本件犬をほとんど連れて行かなかった。
    また,甲は,短吻種といって頭部が短く,顔の長い一般種に噛まれやすい
のであるから,運動させる際には,気性の荒い   一般種である丙と時間をずら
して行うべきことは,犬を預かるプロであれば常識であるところ,被告らは,本件
犬を被告ら   所有の丙と一緒に運動させるなど,適切な管理を怠った。
     イ 同(1)イは否認する。原告は,被告らに対し,本件契約に際し,
被告らに預ける犬を厳密に選別するとともに,    預ける犬1頭ごとにその特
徴,既往症や飼育する上での注意点等を紙に書いて渡しており,犬を管理する上で
の適切な指    示を行った。
     ウ 同(1)ウは否認ないし争う。
  (2) 同(2)は否認する。
理由
第1 請求原因について
 1 請求原因(1)について
  (1) 請求原因(1)ア(ア)の事実,同(1)ア(イ)aの事実,同
(1)イ(ア)のうち,原告と被告Aとの間で,本   件寄託契約が締結された
事実,同(1)イ(イ)の事実のうち,原告と被告Aとの間で,本件寄託契約の委
託料を1か月8   万円に変更する旨の合意をした事実及び同(1)ウの事実
は,いずれも当事者間に争いがない。
  (2)ア そこで,請求原因(1)イ(ア)のうち,被告C及び被告Bが,本
件寄託契約の当事者であるかについて,検討す   る。
     イ 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められ
る。
      (ア) 被告Aは,平成10年の秋ころ,原告の内縁の夫であるGに
対し,丁のアメリカチャンピオンの輸入を依頼      したことをきっかけと
して,原告と付き合うようになった。
      (イ) 被告Aは,平成6年12月ころから,東京都世田谷区に居住
して,ペットショップを営んでおり,そのこ       ろ,被告Bは,サラリ
ーマンとして働いていた。
      (ウ) 被告A及び被告Bは,平成11年8月ころ,原告から物件の
紹介を受けて,現住所へ引っ越した。
          現住所への引っ越しに先立ち,被告B,被告A世帯の収入を
確保するため,原告が,その所有する犬を預け        て報酬を支払うと
いう話がなされた。
          これに関し,原告は,本人尋問において,被告Bが,本件寄
託契約の話を持ちかけてきた旨供述するが,証        拠には,被告A
が,本件寄託契約の話を持ちかけてきた旨の原告の供述記載部分があり,矛盾して
いることなど        から,原告の上記供述は,採用できない。
      (エ) 被告Bは,平成11年9月ころから,株式会社Eにアルバイ
トとして勤務しており,平成12年2月1日こ         ろから,正社員
となった。
      (オ) 被告Cは,平成11年10月ころ,被告Aの出産を機に,被
告A及び被告Bと同居した。
      (カ) 原告は,平成12年3月14日,同年11月16日,平成1
3年6月27日,7月11日の4回,被告に対         し,本件寄託契
約に基づく委託料を,被告B名義の預金口座に送金する方法により支払った。
         その余の委託料については,被告Aが,原告の自宅に赴き,受
領していた。
      (キ) 被告Cと被告Aは,平成13年8月14日ころ,原告の自宅
において,原告に対し,犬を死亡させたこと等        について謝罪をし
た。その後も,被告Aは,数回,原告に対して謝罪をした。
      (ク) Dのホームページには,代表者として,被告Aのみが記載さ
れている。
     ウ 上記認定の事実によれば,本件寄託契約の当事者は,原告と被告A
であったものと認められる。
     エ これに対し,原告は,被告Aのみならず,被告B及び被告Cも,本
件寄託契約の当事者であると主張し,本人尋問      において,これに沿う
供述をする。
       しかし,上記事実認定によれば,Dの経営者が被告ら3名であると
認めることはできず,かえって,ホームページ      の記載などから,被告
Aのみが経営しているものと認めるのが相当である。
       また,本件寄託契約の委託料が被告Bの預貯金口座に数回振り込ま
れた事実は認められるものの,被告Bの預金口      座は,被告Bが株式会
社Eに勤務している期間中も,子犬の売却代金等が振り込まれていることなどを考
慮すると,      このことから直ちに,被告Bが本件契約の当事者と認めら
れるものではなく,他に被告Bが,原告に対し,本件寄託      契約の当事
者として,本件犬を預かる旨の意思表示をしたと認めるに足りる証拠はない。
       被告Cは,本件契約締結後の平成11年10月ころ,被告Aの出産
を機に,被告Aと同居するに至ったものである      から,本件寄託契約の
当事者として,本件犬を預かる旨の意思表示をしたとは到底認められない。
       したがって,原告本人の前記供述は,これを採用することができ
ず,他に原告の主張を認めるに足りる証拠はな       く,本件寄託契約の
当事者が被告ら3名であるとする原告の主張は,理由がない。
     オ なお,原告は,本件寄託契約と同時に,同契約とは別に,準委任契
約を締結した旨主張するようであるが,預かっ       た犬について飼育管
理を行うことは,寄託に付随する当然の事務というべきであるから,寄託契約の他
に,準委任      契約が成立したと認めることはできない。
  (3) 請求原因(1)エについて
     ア 死亡した犬に係る財産的損害について
      (ア) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認め
られる。
        a 甲は,一般にペットとして市場で売られている小売価格が約
30万円前後であり,ペットショップで売られ        るのは,生後45
日から50日前後くらいの子犬であることが一般的であるが,ドッグショーに出陳
するような        犬については,価格はより高額になる。
        b 甲1,甲2,及び甲5は,原告がアメリカで購入した輸入犬
であるが,甲1は原告の犬舎の看板犬であっ         た。輸入甲の一般
的な価格は,約80万円程度である。
        c 甲3,甲6,甲4及び甲8は,国産の犬であり,原告がその
顧客から,甲3,甲6及び甲8をそれぞれ30         万円で,甲4を
100万円で購入したものである。また,甲7は,原告が生産した犬であり,原告
は,自家生         産した犬を売却する  場合には,子犬で30万円
から50万円,成犬で100万円から150万円で売却す         るこ
ととしていた。
      (イ) 上記認定事実によれば,原告の所有する本件犬のうち5頭
が,被告Aによる保管中に死亡したのであるか         ら,これにより
原告に死亡した犬の財産的価値に相当する損害が生じたことは明らかである。
          そこでこれを検討するに,原告は,購入価格等を根拠とし
て,死亡した犬の,死亡当時の財産的価値は,合        計624万円を
下らない旨主張し,証拠中にも,これに沿う供述記載部分があるが,犬の財産的価
値(取引価         格)は,一般的に高齢になることによって低下する
ものであることは明らかというべきであり,購入価格をもっ        て,
死亡当時の価値とみることはできない。そして,犬の死亡時の価格は,性質上その
額を立証することが極め        て困難であると認められるから,民訴法
248条により,死亡した犬の購入時及びその価額,死亡時の年齢,そ     
   の他本件審理に顕れた一切の事情を考慮し,本件犬のうち5頭が死亡したこ
とによる犬の財産的価値の損害額         は,別表2のとおり,合計8
0万円と認めるのが相当である。
      (ウ) これに対し,被告らは,本件犬が,いずれも,不用犬である
か又は高齢であったことから,取引の対象とし        ての価値はないと
主張するが,本件犬の財産的価値が全くないとは認められないから,被告らの主張
は採用でき        ない。
     イ 慰謝料について
       債務不履行によって,動産が毀損等した場合において,当該動産に
係る財産的損害が填補されるとしても,これに      よって特段の精神的苦
痛を被ったと認められるときは,財産的損害の賠償のほかに,精神的苦痛を慰謝す
るための慰      謝料を請求することができると解するのが相当である。
       本件では,ブリーディングに用いていた犬であり,飼い犬と同様と
いうことはできないものの,証拠によれば,原      告としては,努力して
入手したり,愛情を持って育てたりしたことから,それぞれに愛着を持っていた本
件犬を失っ      たものである上,死亡時に直ちに報告を受けられず,骨壺
も一部について受け取ることができていないなどの事実が      認められ,
これらは上記特段の事情に当たるというべきである。
       そして,その慰謝料額は,上記認定の諸事情を考慮すると,合計7
0万円が相当である。
     ウ 甲1の死亡による逸失利益について
       原告は,甲1について,年間10件以上の交配希望があったことを
前提として,その死亡によって原告に逸失利益      が発生した旨の主張を
しているが,被告Aに預けている間,現実に交配が行われた事実及び甲1に対する
交配希望が      あった事実を認めるに足りる証拠はないから,原告の前記
主張は,その前提を欠くというべきである。
       したがって,逸失利益に関する原告の主張は,採用できない。
 2 請求原因(2)について
  (1) 原告は,甲2が平成11年12月28日よりも前に死亡していたこと
ないしは本件犬の健康状態が悪化していたこと    を前提に,同日にされた委
託料を毎月8万円とする旨の意思表示が詐欺に該当すると主張する。
      しかし,そもそも,甲2が12月28日より以前に死亡したと認める
に足りる証拠はなく,また,本件犬について,    原告に報告すべき程度に健
康状態が悪化していたとの証拠もないから,原告の前記主張は,その前提を欠き,
失当であ     る。
  (2) また,原告は,被告らが,本件犬の死亡等を原告に秘匿することによ
って,不作為により原告を欺罔したとも主張す     る。
  (3) したがって,請求原因(2)は,理由がない。
第2 抗弁について
 1 抗弁(1)について
  (1) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
     ア 原告は,平成11年8月10日の本件寄託契約の際に,被告Aとの
間で,本件犬が病気等になったときには,F獣      医師のもとへ連れて行
き,治療を受けさせることとし,その費用は原告の負担とするとの合意をした。
     イ(ア) 被告Aは,平成11年8月27日,甲2の陰部から出血があ
ったため,原告の指示によって,F獣医師の診      察を受けさせたとこ
ろ,子宮がんであることが判明し,手術が行われた。
      (イ) 同年9月30日,F獣医師は,甲1及び甲2に対し,薬剤を
処方した。
      (ウ) 同年12月9日,F獣医師は,甲1及び甲4に対し,薬剤を
処方した。
      (エ) 平成12年4月4日,F獣医師は,甲1及び甲2に対し,薬
剤を処方した。
      (オ) 被告Aは,本件犬を預かっている間,1度,甲5を繁殖のた
めに,原告のもとへ連れて行った。
      (カ) 甲1は,平成13年2月ころに死亡し,甲6,甲7及び甲8
は,同年5月ないし6月ころに死亡した。な         お,甲2の死亡時
期は,明らかでない。
     ウ 被告Aは,平成13年8月14日ころ,原告に対し,本件犬のう
ち,甲1,甲2,甲6,甲7及び甲8の5頭が死      亡したことを初めて
告げた。
     エ 原告は,本件犬を預けている間,本件犬に会うために被告らの自宅
を訪れたことはない。
     オ 被告Aは,原告に対し,死亡した犬のうち,一部の犬の骨壺を引き
渡した。
  (2) 被告らは,原告が,本件犬の飼育方法等について適切な指示をしなか
ったこと,本件犬がもともと病弱であったかあ    るいは高齢であったことな
どが原因で,本件犬が死亡ないし傷害したものであること,本件寄託契約の委託料
が相場と比    較して安いものであり,そもそも被告Aが負うべき義務の程度
は低いことなどから被告らに責任はない旨主張し,被告A    もこれに沿う供
述をする。
     しかし,被告Aは,他人の犬を預かることを業としている者であり,丙
のブリーディングをするなど,いわば犬を扱う    プロであるといえることか
らすると,仮に,本件寄託契約の委託料が相場と比較して安いものであったとして
も,善管注    意義務の程度が低くなると解することはできない。
    また,同じく犬を扱うプロである原告が個別の指示を行い,これに従った
管理を行ったというのであればともかく,特段    の指示を行わなかった場合
には,被告Aが,プロとしての適切な管理を行うべき義務があることは当然である
から,仮     に,原告が適切な指示をしなかったとしても,これによって,
直ちに被告Aが免責されるものではないと解するのが相当    である。
    かえって,被告Aは甲9が死亡した際には,直ちに原告に報告しているの
に対し,他の5頭が死亡した際には,直ちに原    告に報告していないこと,
比較的短期間のうちに複数の犬が死亡していること,詳細な死亡原因及び死亡年月
日が明らか    ではないものの,5頭の死亡が老齢による自然死であったこと
を裏付ける証拠はなく,その原因は犬同士のけんかによる    傷害又は病気に
よるものと推察されることなどからすると,被告Aの管理は不十分なものであった
と認めることができ,    被告Aには善管注意義務違反があったというべきで
ある。
    したがって,抗弁(1)は,理由がない。
 2 抗弁(2)について
   被告らは,原告が,被告Aに対し,本件犬の死亡が明らかになった後に,謹
慎を命じ,被告Aがこれを受け入れたことによ  って,原告の被告Aに対する損
害賠償請求権を放棄する旨の和解契約が成立した旨主張し,被告Aも,これに沿う
供述をす   る。
   しかし,仮に,原告が,被告Aに対し,顧客から預かっている犬を返し,ド
ッグショーに出て利益を得る行為を禁止する旨  を申し向け,被告Aがこれに異
議を述べることなく承諾したとしても,その発言の趣旨は,発言の時期及び内容な
どからする  と,被告Aが犬を死亡させるなどしたことに対する怒りの気持ちな
どからなされたものと考えるのが自然であって,少なくと  も,被告らに対し,
本件犬の死亡等に関し,金銭的な請求を一切しないとの意思を含む趣旨の発言と見
ることはできない。
   したがって,原告の上記発言によって,原告が被告Aに対する損害賠償請求
権を放棄する意思表示をしたと認めることはで  きず,抗弁(2)は,理由がな
い。
第3 結論
 よって,原告の請求は,被告Aに対し,債務不履行に基づく損害賠償金150万
円及びこれに対する弁済期の後である平成15年3月19日から支払済みまで商事
法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を認める限度で理由があるから認容
し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
千葉地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官小   磯   武   男
裁判官   見   米       正
裁判官    吉野内   謙   志
 
別表(省略)

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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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