弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
一 被告株式会社豊和は、別紙イ号図面及び説明書に記載する各ワイヤー式排煙オ
ペレーターを製造・販売してはならない。
二 被告株式会社豊和は、その製造にかかる前項記載の各物件を廃棄しなければな
らない。
三 被告渋谷金属産業株式会社は、第一項記載の各物件を販売又は販売のため展示
してはならない。
四 訴訟費用は被告らの負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
 主文同旨。
二 被告ら
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 請求の原因
一 原告は、次の実用新案権(以下これを「本件実用新案権」といい、その考案を
「本件考案」という)の権利者である。
名称 「排煙連窓の復帰装置」
出願 昭和四八年一〇年八日(実願昭四八-一一七二六九)
公告 昭和五二年三月二四日(実公昭五二-一三一五五)
登録 昭和五二年一二月二四日(第一二〇八七〇一号)
実用新案登録請求の範囲
 「緊急時係止が解かれて一斉開放する排煙連窓1…1に於いて、各窓1側にワイ
ヤー掛架装置2を、枠3側にはワイヤー張架装置4、4をそれぞれ適宜取着し、一
端を固着したワイヤー5をワイヤー張架装置4…4を介してそれぞれのワイヤー掛
架装置2…2に連続的に張架すると共に、同ワイヤーの他端にワイヤー巻取機6を
設けて成る排煙連窓の復帰装置。」
二 本件考案の構成要件及びその作用効果は次のとおりである。
1 構成要件
(一) 緊急時係止が解かれて一斉開放する排煙連窓1…1であること。
(二) 各窓1側にワイヤー掛架装置2を、枠3側にはワイヤー張架装置4、4を
それぞれ適宜取着し、一端を固着したワイヤー5をワイヤー張架装置4…4を介し
てそれぞれのワイヤー掛架装置2…2に連続的に張架してあること。
(三) 同ワイヤー5の他端にワイヤー巻取機6を設けること。
よりなる排煙連窓の復帰装置
2 作用効果
(一) すべてが閉鎖状態にある排煙連窓1…1は、火災等の緊急時に、窓を閉鎖
状態に保持させる係止装置を解除させることで、オートヒンヂ又はガススプリング
等の弾性部材による開放方向への付勢力によつて、ワイヤー5が窓の開放に支障が
ないように繰り出され、自動的に迅速かつ一斉に開放されるので、排煙効果が優れ
ている。
(二) 排煙連窓1…1を一斉開放後、手動又は電動式の巻取機6を駆動してワイ
ヤー5を巻取ると、ワイヤーの長さが短くなるので、ワイヤー掛架装置2及びこれ
と一体の窓1…1が閉鎖方向に引張られ、閉鎖位置まで引張られると、窓は元の閉
鎖状態に一斉に復帰する。この場合、ワイヤー掛架用ローラ2…2は動滑車の作用
をなすので、窓が多数あつてもワイヤーを巻取る長さが変化するだけで、巻取力は
一枚の窓を閉鎖させるに足る力だけでよく、小さな力で多数の窓を一斉に閉鎖する
ことができる。
 したがつて、窓の数が増加してもワイヤーの巻取力を変化させる必要がないの
で、窓の数のいかんにかかわらず、常に一定の力で巻取機6を簡単に操作すること
ができるので排煙連窓の閉鎖が簡単容易である。
三 被告株式会社豊和(以下「被告豊和」という)は、別紙イ号図面及び説明書に
記載する各ワイヤー式排煙オペレーター(以下同図面第1ないし第3図に記載する
ものを「イ号第一物件」と、同図面第4ないし第6図に記載するものを「イ号第二
物件」といい、あわせて「イ号物件」という)を業として製造販売し、被告渋谷金
属産業株式会社(以下「被告渋谷金属」という)は、イ号物件を業として販売し、
又は販売のため展示している。
四 イ号物件は次のような構成及び作用効果を有する。
1 イ号第一物件の構成
(一) 緊急時にワイヤー⑤をゆるめることにより、係止が解かれて一斉に開放す
る排煙連窓①…①であり、各排煙連窓①は、下端が蝶着⑪され、上方が外側に開放
するとともに、別紙イ号図面第1ないし第3図のとおりステイダンパー⑦を常に開
放方向に付勢された状態で張架してあること。
(二)(1) 各窓①側にはワイヤー⑤を掛ける滑車②、②を中間部材を介して首
振り状として左右応取付け、枠③側にはワイヤー⑤を掛ける滑車④、④を中間部材
を介して首振り状として取付け、
(2) 一端をワイヤーストツパーで固着した一本のワイヤー⑤を、枠③側の滑車
④、④を介してそれぞれの窓①側滑車②、②に連続的に張架してあること。
(三) ワイヤー⑤の他端に、ワイヤーの巻取機⑥を設けてあること。
よりなる排煙連窓の復帰装置。
2 イ号第二物件の構成
(一) 緊急時にワイヤー⑤をゆるめることにより、係止が解かれて一斉に開放す
る排煙連窓①…①であり、各排煙連窓①は、下端が蝶着⑪され、上方が内側に開放
するとともに、別紙イ号図面第4ないし第6図のとおりステイダンパー⑦を常に開
放方向に付勢された状態で張架してあること。
(二) (1) 各窓①側にはワイヤー⑤を掛ける滑車②、②を中間部材を介して
首振り状として左右端部に取付け、枠③側にはワイヤー⑤を掛ける滑車④、④を中
間部材を介して首振り状として取付け、
(2) 一端をワイヤーストツパーで固着した一本のワイヤー⑤を、枠③側の滑車
④、④を介してそれぞれの窓①側滑車②、②に連続的に張架してあること。
(三) ワイヤー⑤の他端に、ワイヤーの巻取機⑥を設けてあること。
よりなる排煙連窓の復帰装置。
3 イ号物件の作用効果
(一) すべてが閉鎖状態にある排煙連窓①…①は、火災等の緊急時に、イ号図面
の第1図又は第4図に示す巻取機⑥のボタンを押すと、ワイヤーがゆるみステイダ
ンパー⑦の開放方向への付勢力によつて、ワイヤー⑤が窓の開放に支障がないよう
に繰り出され、自動的にイ号図面第3図又は第6図に示すように迅速かつ一斉に開
放されるので、排煙効果が大である。
(二) 開放状態の排煙連窓①…①は、巻取機⑥を駆動することにより閉鎖するこ
とができる。すなわち、巻取機⑥でワイヤー⑤を巻取ると、ワイヤーの長さが短く
なるので、窓側の滑車②、②及びこれと一体の窓①が閉鎖方向に閉鎖位置まで引張
られると、窓①…①は元の閉鎖状態に一斉に復帰する。この場合、窓①の滑車②…
②は動滑車の作用をなすので、窓が多数あつてもワイヤーを巻取る長さが変化する
だけで、巻取力は一枚の窓を閉鎖させる力だけでよく、小さな力で多数の窓を一斉
に閉鎖することができる。
 したがつて、窓の数が増加してもワイヤーの巻取力を変化させる必要がないの
で、窓の数のいかんにかかわらず、常に一定の力で巻取機⑥を簡単に操作すること
ができるので、排煙連窓の閉鎖が簡単容易である。
五 イ号物件の前記構成(一)′、(二)′、(三)′はそれぞれ本件考案の前記
構成要件(一)、(二)、(三)を充足し、イ号物件の作用効果は本件考案のそれ
と同一であるから、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属する。
六 被告豊和は業としてイ号物件を製造販売することにより、被告渋谷金属は業と
してイ号物件を販売し又は販売のため展示することにより、原告の本件実用新案権
を侵害している。
七 よつて、原告は、被告豊和に対してイ号物件の製造販売の差止めとその廃棄
を、被告渋谷金属に対してイ号物件の販売、販売のためり展示の差止めを求める。
第三 請求原因に対する被告らの答弁
一 請求原因一の事実は不知。
二 同二1の事案は争う。本件考案の「実用新案登録請求の範囲」を分説して得ら
れる構成要件は次のとおりである。
(一) 緊急時係止が解かれて一斉開放する排煙連窓1…1であること。
(二) 各窓1側にワイヤー掛架装置2を、枠3側にワイヤー張架装置4、4をそ
れぞれ適宜取着すること。
(三) 一端を固着したワイヤー5をワイヤー張架装置4…4を介してそれぞれの
ワイヤー掛架装置2…2に連続的に張架すること。
(四) ワイヤー5の他端にワイヤー巻取機6を設けること。
よりなる排煙連窓の復帰装置。
三 同二2、三、四の事実は認める。
四 同五、六の事実は否認する。
五 同七は争う。
第四 被告らの主張
一 公知技術の存在
1 被告渋谷金属が昭和四八年五月に発行の営業用カタログ「排煙窓用金具」(乙
第一号証、以下「公知技術①」という)。
 右カタログ中の排煙錠に関する説明文及び図面には、煙感知器からの信号により
解錠装置のソレノイド装置が作用して数個の連窓を一つの信号で解錠し、自動的に
連窓を開放する装置が示されている。右装置は本件考案の構成要件(一)を充足す
る。
2 ドイツ帝国一九二七年(昭和二年)二月二一日発行の「ワイヤー引きによる窓
及び換気窓の同時開閉装置」に関する特許公報(乙第二号証の一・二、以下「公知
技術②」という)。
 右公報には、一斉開放する連窓に於いて、一端を固定するとともに他端を巻取機
に連結しているワイヤーを、窓側に設けたワイヤー掛架装置と窓枠側に設けたワイ
ヤー張架装置に連続的に張架し、一斉開放した排煙連窓を巻取機を駆動するだけで
一斉に閉鎖させることのできる排煙連窓の復帰装置が示されている。右装置は本件
考案の構成要件のすべてを充足する。
すなわち、
(一) 右公報には、全体構造として、緊急時であると否とを問わずまた排煙用で
あると否とを問わず、一斉開放する連窓が示されており、右は本件考案の構成要件
(一)を充足する。
(二) 右公報には、「引き紐aは動向ローラbと各一つのシリンダーローラcを
通つている」構造が示されているが、シリンダーローラcは連結棒iを介して窓
k、l、mに連結されているので、本件考案の窓側のワイヤー掛架装置に、また動
向ローラbは本件考案の窓枠側に設けたワイヤー張架装置に該当する。右は本件考
案の構成要件(二)を充足する。
(三) 右公報には、引き紐aの一端を釣合おもりu、爪t、歯付案内oにより固
定するとともに、この引き紐aを、ワイヤー張架装置としての動向ローラbを介し
てワイヤー掛架装置としてのシリンダーローラcに、連続的に張架している構造が
示されている。右は本件考案の構成要件(三)を充足する。
(四) 右公報にはウインチwが示されており、右は本件考案の構成要件(四)を
充足する。
3 実開昭四八-七六七三九公開実用新案公報(昭和四八年九月二一日公開)(乙
第三号証、以下「公知技術③」という)。
 右公報には、「ガラス窓、よろい窓又はその類似物の開閉機構」、すなわち、巻
取機としての作用をする操作部7と、窓枠15に取付けられているケーブル1、張
架装置の作用をするコネクタ3、窓側に取付けられているケーブル2、掛架装置の
作用をする金具18を有し、一斉開放した連窓を一斉に閉鎖させることのできる連
窓の復帰装置が示されている。右装置は本件考案の構成要件(一)、(二)、
(四)を充足する。すなわち、
(一) 右公報にはハンドル10を回動することにより連窓を一斉に開閉する機構
が示されており、右は本件考案の構成要件(一)を充足する。
(二)右公報には、窓側にワイヤー掛架装置としての金具18と、枠側にワイヤー
張架装置としてのコネクタ3が示されており、右は本件考案の構成要件(二)を充
足する。
(三) 右公報には操作部7が示されており、右は本件考案の構成要件(四)を充
足する。
4 昭和六-三七八〇実用新案公報(昭和四六年一一月四日公告)(乙第五号証、
以下「公知技術④」という)。
 右は複数個連設した艙口蓋を連続的に開閉するための考案であり、右公報には、
各艙口蓋6、7、8側に設けた滑車11、隔壁3側に設けた滑車12を介して索1
4を連続的に張架し、索14を巻取り又は巻戻すことにより、艙口蓋6、7、8を
順番にかつ連続的に開閉することのできる構造が示されている。右構造は本件考案
の構成要件(三)、(四)を充足する。すなわち、
(一) 右公報には、一端を固着した索14を隔壁3側に設けた滑車12を介して
各艙口蓋6、7、8側に設けた滑車11に連続的に張架している構造が示されてお
り、右は本件考案の構成要件(三)を充足する。
(二) 右公報には、索14をカーゴウインチにより矢印方向(第2図参照)に巻
取るとの構造が示されており、右は本件考案の構成要件(四)を充足する。
二 本件考案の効果と公知技術②
 本件考案の作用効果は公知技術②のそれと同一である。このことは、乙第二号証
の二(訳文)の五頁一八行目ないし六頁四行目の「窓が開いており、これらを閉じ
ようとする時、ウインチwが右へ回され、ロープaが巻き上げられる。その端が固
定されているためループd及び案内hも引き上げられ、案内は棒iを通じて窓を調
節する。抵抗に応じていずれかの窓が先ず動き始める。最初の窓が閉じられると次
の窓が続き以下同様となる。」との記載からも明らかである。
三 右のとおり、本件考案の構成要件(一)ないし(四)及び作用効果はすべて公
知技術②に開示されており、更に、本件考案はその余の乙号各証に開示された公知
技術の単なる寄せ集めにすぎないから、本件考案の技術的範囲は、明細書及び図面
に実施例として具体的に明示されたところに限定して解釈されるべきである。
1 本件考案の実施例
(一) 本件考案の公報(以下「本件公報」という)(甲第二号証)の第1図ない
し第3図に記載の実施例(第一実施例という)。
 この実施例は、外開き方式の排煙連窓を示したものであり、窓1側中央にローラ
2を一個枢着し、枠3側中央部にローラ4を2個枢着している。
(二) 本件公報の第4、第5図に記載の実施例(第二実施例という)。
 この実施例は、取付金具とチユーブ、又は樹脂成形物をワイヤー掛架装置、ワイ
ヤー張架装置として用いたものである。
2 イ号物件は、その構成及び作用効果において本件考案の実施例と異なるが、そ
の詳細は次のとおりである。
(一) 本件考案は、排煙連窓1…1自体の係止が解かれて一斉開放するものであ
るのに対し、イ号物件は、巻取機6の係止が解かれワイヤー5をゆるめることによ
り、排煙連窓①…①を一斉開放するものである。すなわち、本件考案の排煙連窓1
…1は、錠装置13等により閉状態を保つように係止され、この係止が解かれるこ
とにより開放せられるものであり、一方イ号物件のそれは、巻取機6に巻取られて
いるワイヤー5の引張り力により排煙連窓1…1は閉状態を保ち、ワイヤー5を巻
取機6より繰出しワイヤー5をゆるめることにより、ステイダンパー7の押圧を受
けて排煙連窓1…1が開放されるものである。
 したがつて、イ号物件は本件考案の構成要件(一)を充足しない。
(二)(1) イ号物件では、各窓側にワイヤーを掛ける二個の滑車を左右に離反
させて取付け、枠側にワイヤーを掛ける滑車を二個左右に離反させて取付けてい
る。これに対し、本件考案の場合は、窓側の掛架装置が一個で、しかも窓側の掛架
装置、枠側の張架装置がともに窓、枠の上部中央部に設けられている。右構造上の
差異により、イ号物件は、本件考案の実施例に比べ、窓の閉動作の安定性の点にお
いて秀れた作用効果を奏する。
(2) イ号物件では、窓側、粋側の両滑車は、窓への固定部材に保持部材を首振
り状に連結し、更にこの保持部材に貫通させた支軸に滑車を回転自在として間接的
に取付けられている。このため、窓が開閉動のために枠に対して角度を変えるとき
も、両滑車はワイヤーの角度に対応して回転をスムースに行いうるようになつてい
る。これに対し、本件考案では、掛架装置、張架装置の両滑車は窓及び枠に直接固
定された支軸に回転自在として取付けられているから、滑車の取付角度が常に一定
であり、開閉動により窓の角度が変つた場合にも両滑車の対向角度が変換されず、
したがつて滑車の回転に無理が生ずる。
(3) したがつて、イ号物件は、本件考案の構成要件(二)を充足しない。
(三) イ号第二物件が、内開き方式の排煙窓に関するものであるのに対し、本件
考案の実施例は外開き方式の排煙窓に関するものである。
 したがつて、イ号第二物件は本件考案の構成要件(一)を充足しない。
四 仮に、本件考案の技術的範囲を認定するに当り、全部公知による限定解釈を採
用できないとしても、前記三2(一)、(二)で指摘のとおり、本件考案との比較
で認められるイ号物件の構成と作用効果上の特徴は、イ号物件が本件考案の技術的
範囲に属しないことを示している。
第五 原告の反論
一 被告らの主張する公知技術②ないし④は、本件考案とはその構成、作用効果を
異にするものである。
1 公知技術②について
(一) 右発明は、本件考案とは異なる次の構成の結合からなり、それにより本件
考案とは異なる作用効果を奏するのであるから、右発明の構成の一部を抽出して本
件考案と比較することは許されない。
(1) 右発明では、本件考案のように窓に直接にロープ車c、gを取付けていな
いうえに、定滑車としては転向ローラb、bのほかに誘導ローラf、fを必須の構
成としている。
(2) 右発明のロープ車c、gは、それぞれの引き紐a、eを介して上下動し、
それに随伴して案内hと連結棒iも上下動され、各窓k、l、mを開閉するもので
ある。
(3)右発明では、ロープ車c、gを上下動させる手段として、ウインチwで操作
される二本の引き紐a、eを必須のものとしている。すなわち、釣合おもりv、誘
導ローラf、f、ロープ車gからなるローラ装置群に通した開窓用引き紐eと、釣
合おもりu、転向ローラb、b、ロープ車cからなる今一つのローラ装置群に通し
た閉窓用引き紐aとを欠くことのできないものとしており、これらの引き紐a、e
は、一方の紐が繰出される間、他方の紐が引き込まれるようにウインチwで移動さ
れる構成としている。
(4) 右発明の両引き紐a、eの一端にはおもりu、vを設け、おもりu、vに
形成した爪t、tを歯付案内の溝に噛合させるとともに、案内hの下端には、同案
内hとロープ車c、gの上下動を停止するストツパーyを設けている。
(二) 被告らの主張一2(一)について
 本件考案では、緊急時に排煙連窓を一斉開放する具体的構成としては、実施例に
示されているとおり、オートヒンジ又はガススプリング等で常に開放方向に付勢し
ているものが採られている。
 これに対し、公知技術②の発明には、かかるオートヒンジ又はガススプリング等
は取付けられていないので、火災等の緊急時に各窓が、本件考案のように迅速かつ
一斉に開放されず、排煙連窓としての機能を全うすることができない。
 したがつて、公知技術②は本件考案の構成要件(一)を充足しない。
(三) 被告らの主張2一(二)について
 公知技術②の発明では、ロープ車cは案内hに、案内hは連結棒iにそれぞれ接
続し、右連結棒iの上端は各窓k、l、mの腕部材に連結されているが、ロープ車
cは窓に取付けられていないのみならず、案内hにはロープ車gをも設けている点
で、本件考案の窓側1のワイヤー掛架装置2とは明らかに異なる構成である。ま
た、転向ローラbは、各窓k、l、mの腕部材と連結した連結棒iに接続した案内
hに取着したロープ車cと、引き紐a、eとで有機的に結合されているものであつ
て、本件考案の枠3側に設けたワイヤー張架装置4とは異なる構成である。
 したがつて公知技術②は本件考案の構成要件(二)を充足しない。
(四) 被告らの主張2一(三)、(四)について
 公知技術②の発明の引き紐a、eは二本の紐をウインチwで結んで一本の紐とし
たもので、その紐の両端を釣合おもりu、v、爪t、歯付案内qにより固定してな
り、両引き紐a、eのうち、一方が繰出される間、他方が引込まれるようにして、
ウインチwに巻込むというより、案内h、連結棒i等を介して各窓k、l、mを開
閉するために回動されると考えられる。したがつて、引き紐aは他方の引き紐eと
一体不可分の関係にあり、一方のみの引き紐を抽出して本件考案と比較することは
当を得ない。
 要するに、公知技術②のものは、二本の引き紐a、eを必須として、この両引き
紐a、eをウインチwで操作してロープ車c、gを上下動させ、案内h及び連結棒
iを上下動させ窓を開閉する構成を採るものであることからみても、本件考案とは
構成、作用効果を異にするものである。
 したがつて公知技術②は本件考案の構成要件(三)、(四)を充足しない。
2 公知技術③について
(一) 被告らの主張3(二)について
 右考案のコネクタ3は、駆動用のケーブル1と従動用のケーブル2のスパイラル
部を噛み合わせ、かつ駆動用のケーブル1を案内する溝4と従動用のケーブル2を
案内する溝5との二条の溝を有しているから、コネクタ3が本件考案の枠3側のワ
イヤー張架装置4に当るとは考えられない。しかも、金具18はガラス窓17の枠
に従動用のケーブル2を固着するものであつて、本件考案のようにワイヤー5を摺
動可能に掛架する倍力装置としてのワイヤー掛架装置2に相当するものではない。
 したがつて、公知技術③は本件考案の構成要件(二)を充足しない。
(二) 被告らの主張3(三)について
 公知技術③の考案の操作部7は、同考案の実用新案登録請求の範囲に記載された
考案の一構成部材として有機的に結合されているものであるから、この操作部7は
本件考案のワイヤー巻取機6とは作用効果を異にするものである。
 したがつて、公知技術③は本件考案の構成要件(四)を充足しない。
3 公知技術④について
(一) 右考案は、索14を巻取ることによつて、
ハツチ蓋6、7、8を順次開放し、各ハツチ蓋の閉鎖はその自重によつて行うこと
を基本原理としているから、本件考案と異なる。
(二) 公知技術④の考案のハツチ蓋6、7、8の自由端には、引起し用アイ10
を介して複数の滑車11を着脱自在に取付けてあり、これにより任意のハツチ蓋の
みを開放し、その残余のハツチ蓋を閉鎖状態に維持する構成としている点で、本件
考案と異なる。
(三) 公知技術④の考案は、ハツチ蓋を水平的に閉鎖させるものである点、窓を
常に開放方向に付勢した構成としていない点、ワイヤー巻取機の作用として本件考
案のものとは逆作用をなしている点において、本件考案とは異なる。
二1 右のとおり、公知技術②ないし④は、いずれも本件考案の構成要件を充足す
るものではなく、そもそも本件考案は、その登録請求の範囲に記載された事項の組
合せにかかる結合考案であるから、公知技術②ないし④の各一部を抽出し、これら
を合せたものをもつて、本件考案がその出願前日本国内において公知のものであつ
たとの資料とすることは許されない。
 本件考案が公知のものでないこと右のとおりであるとすれば、本件考案の技術的
範囲を明細書・図面の実施例に限定して解釈すべきであるとの被告らの主張は、そ
の前提を欠き理由がない。
2 イ号物件が本件考案の技術的範囲に属することは前記のとおりであるが、その
理由を付加する。
(一) 本件考案の構成要件(一)の「係止」には別段の限定がないから、イ号物
件のようにワイヤー5の他端を巻取機6の巻胴に巻き、その巻取最終時に巻胴の回
転を停止させることによつて、連窓を閉状態に保持する構成も、「係止」に含まれ
る。
(二)(1) 本件考案において、窓側に取着したワイヤー掛架装置と枠側に取着
したワイヤー張架装置とはそれぞれ適数個ずつ設けられるものであるから、個数に
関係なくすべて本件考案の技術的範囲に含まれる。また、右ワイヤー掛架装置、張
架装置の取付位置については、多少の相違があつたとしても設計上の微差にすぎ
ず、本件考案の技術的範囲に属する。
(2) 滑車を中間部材を介して首振り状にすることは、例えば実公昭三八-四四
〇五実用新案公報(昭和三八年三月二〇日公告)(甲第五号証)にも示されてい
る。同公報一頁右欄三、四行目には「滑車aは牽引方向に随動して自由に首を振る
から」との記載がある。したがつて、首振りする滑車は公知ないし慣用の技術であ
り、この種滑車を本件考案のワイヤー掛架装置、張架装置として採用することは、
当業者であれば極めて容易なことである。
(三) イ号第二物件の内開き方式のものも、本件考案の技術的範囲に属する。
第六 被告らの反論
 本件考案が出願前公知の技術であつたかどうかは、本件考案の構成要件と公知資
料にあらわれている技術思想とを対比して決すべきであるが、原告の主張は、本件
考案の実施例の具体的構造と公知技術例のそれとの対比を行い(原告の反論一1、
2、3)、あるいは本件考案の構成要件以外の事項を論ずるもので(原告の反論一
1(一)、(二))、主張自体失当である。
第七 証拠(省略)
       理   由
一1 いずれも成立に争いのない甲第一、第二号証によると、請求原因一の事実
(本件実用新案権の存在及び原告がその権利者であること)を認めることができ
る。そして、右認定の実用新案登録請求の範囲の記載によると、本件考案の構成要
件は次のとおり分説するのが相当である。
(一) 緊急時係止が解かれて一斉開放する排煙連窓1……1であること。
(二) 各窓1側にワイヤー掛架装置2を、枠3側にワイヤー張架装置4、4をそ
れぞれ適宜取着すること。
(三) 一端を固着したワイヤー5をワイヤー張架装置4…4を介してそれぞれの
掛架装置2……2に連続的に張架すること。
(四) ワイヤー5の他端にワイヤー巻取機6を設けること。
よりなる排煙連窓復帰装置
2 請求原因二2の事実(本件考案の作用効果)同三の事実(被告らによるイ号物
件の製造販売等)、同四の事実(イ号物件の構成と作用効果)は、いずれも当事者
間に争いがない。
二 そこで、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属するか否かについて、以下検討
するが、被告らは、本件考案の構成要件はすべて公知であつたとし、これを前提
に、本件考案の技術的範囲につきいわゆる限定解釈をなすべきである旨主張するの
で、まずこの点についてみることとする。
 ところで、本件考案は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案であつて、前判
示のように複数の構成要件から成り立つているものであるが、それは各構成要件の
単なる集合ではなく、各構成要件を一定の技術思想のもとに不可分有機的に結びつ
けたもので、一体性ある技術思想の創作である。各構成要件の結合関係もまた無視
することのできない構成要件である。このような点に留意してみると、登録請求の
範囲に記載された考案の技術思想がその出願前そのまま公知であつたいわゆる全部
公知のような例外的な場合はともかく、考案の各構成要件個々について出願前各公
知技術が存在していたとしても、このような場合に考案の技術的範囲の認定につい
て被告ら主張の限定解釈をすることは許されないものと解するのが相当である。
 右観点のもとに、被告らの指摘する公知技術について検討する。
1 公知技術②について
(一) いずれも成立に争いのない乙第二号証の一・二、甲第四号証によると、次
のとおり認められる。
 ドイツ帝国特許庁一九二七年(昭和二年)二月二一日発行、同年五月三〇日特許
局陳列館受入の特許第四四一〇四一号公報に示されている公知技術②は、ローラを
経て案内される引張ロープによつて複数の窓及び換気窓を同時に開閉するための装
置に関するものである。
 前示特許公報によると、右装置は、各窓k、l、mが、連結棒i、案内hを介し
て案内hに軸支されたシリンダーローラc及びgに連結され、各窓の建物側にはそ
れぞれ二個の転向ローラb、b、誘導ローラf、fが配置されており、共通のウイ
ンチWにより互いに反対方向に繰出され引込まれる二本の紐a、eがそれぞれ転向
ローラb、bとシリンダーローラc、誘導ローラf、fとシリンダーローラgを通
つて互いに逆向きのループを形成するように連続的に張架され、各紐の端部がおも
りu、v、止め爪t及び歯付案内(ノツチ)oにより紐がたるまないように掛け止
めされており、シリンダーローラc、gが、紐a、eの移動方向に応じて上下動
し、かつそれによつて窓等を開閉することを特徴とするものである。
(二) 前示特許公報により右装置の作用をみると、まず、紐aがそれぞれの窓
k、l、mの位置において、建物に固定された二個の転向ローラb、bと、各窓に
連結棒i、案内hを介して連結されたシリンダーローラcの間を通つてループを形
成し、この中にシリンダーローラcがぶら下がつた状態となつているため、紐aを
ウインチwで引張ることにより、各シリンダーローラcが転向ローラb、b側に引
寄せられる結果各窓の閉鎖が行われること、他方右と同一の方式で誘導ローラf、
fとシリンダーローラgとの間を通り逆向きのループを形成している紐eを、ウイ
ンチwで引張ることにより窓の開放が行われる。
(三) ところで、前示甲第二号証の本件公報によると、本件考案の主な作用効果
は、一端が固定された一本のロープを、各窓の、枠側に取着されたワイヤー張架装
置と窓側に取着されたワイヤー掛架装置とに通し、他端を巻取ることによりワイヤ
ー掛架装置が動滑車の役割をする結果、窓の個数にかかわらず、一枚の窓を閉鎖す
る力により複数個の窓の開閉をなしうることにあることが明らかである。
(四) 他方、前示特許公報における閉鎖用の紐aの作用をみる限りでは、その巻
上げにより建物側の転向ローラb、bが定滑車の役割をし、連結棒i案内hを介し
て窓に連結されたシリンダーローラcが動滑車の役割を果すことにより連窓を閉鎖
しているところから、本件考案と同様の作用効果をあげていることが窺われる。
(五) 被告らは、右の点を指摘して、公知技術②のシリンダーローラc、転向ロ
ーラb、bがそれぞれ本件考案のワイヤー掛架装置、ワイヤー張架装置に当り、ま
た右ローラ間を連続的に通る紐とこれを巻取るウインチがそれぞれ本件考案のワイ
ヤーとワイヤー巻取機に当ると主張し、一方原告は、公知技術②の閉鎖機構、開放
機構が不可分一体となつており、前者のみを抽出することは許されないと主張して
いる。
 そこで、公知技術②の閉鎖機構のみを抽出し、これを独立の装置としてその作用
をみることとする。
 いま、窓が開放された状態から閉鎖する場合の作用をみると、ウインチwにより
紐aが引張られて、そのおもりuのある側は止め爪tがノツチoに噛み合つて固定
され、巻取られるにつれてシリンダーローラcは転向ローラb、bに引寄せられ、
シリンダーローラcに連結された案内h、連結棒iを介して窓k、l、mを閉鎖す
る。
 ところが、これを開放すべくウインチwを反対方向に回して紐aを繰出すなら
ば、それまで上方向に引張られて止め爪tとノツチoにより固定されていたおもり
uは噛み合せをはずされて降下し、それにつれて繰出された紐aもそれぞれの窓に
対応する転向ローラb、bとシリンダーローラcの間を擦り抜けるだけで、シリン
ダーローラcを押し下げて窓を開放する動作をなしえず、更に、これとは別に閉鎖
を終えた右装置について、止め爪tの部分を固定したうえウインチwにより紐aを
繰出してみたところで、それはゆるむばかりでシリンダーローラcを押し下げる力
たりえないものと考えられる。
 結局、公知技術②のうち閉鎖機構のみの装置は動作不能のものといわざるをえな
い。
 そうとすれば、開放、閉鎖の両機構が一体となつて連窓の開閉動作を行う公知技
術②の閉鎖機構のみを抽出し、本件考案の構成要件(二)ないし(四)を充足する
との被告らの主張は、にわかに採用し難いといわなければならない。
(六) 更に、前示特許公報では、本件考案の構成要件(一)の「緊急時係止が解
かれて一斉開放する排煙連窓1……1であること」中の連窓の係止とこれを解いて
連窓を一斉開放する構成について全く言及するところがないから、公知技術②は本
件考案の構成要件(一)を充足しないことが明らかである。
2 その余の公知技術について
 いずれも成立に争いのない乙第一号証、第三号証、第五号証、第九号証の二・
三、同号証の五・六、同号証の一六ないし一九により認められる公知技術①、③、
④及びその余の公知技術は、せいぜい本件考案の構成要件の一部を充足するにすぎ
ないものばかりであつて、本件考案の登録請求の範囲に記載の技術的思想をそのま
ま包含するものではなく、右各公知技術をもつて本件考案が出願前全部公知である
と解することはできない。
 右説示のとおりであるから、本件考案の技術的範囲の認定に当り、限定解釈によ
るべきである、との被告らの見解を採用できないことは明らかである。
三 そこで、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属するか否かについてみる。
1 イ号物件が本件考案と同じく排煙連窓の復帰装置であることについては、当事
者間に争いがなく、イ号物件の(一)′、(二)(1)、(二)′(2)、(三)
′の構成を、本件考案の(一)、(二)、(三)、(四)の構成要件と対比してみ
ると、(二)′(2)、(三)′の構成が、本件考案の(三)、(四)の構成要件
をそれぞれ充足することは明らかである。この点については、被告らも実質的に争
つていないものと認められる。
2 そして、(一)の構成も、(一)の構成要件と対比すると、これを充足するも
のと考えられる。被告らは、本件考案では排煙窓自体に設けられた係止が解かれて
窓が開放されるのに対し、イ号物件では巻取機に設けられた係止が解かれて窓が開
放される旨、また、本件考案は外開き方式の排煙窓であるのに対し、イ号第二物件
は内開きのものである旨主張する。なるほど前示甲第二号証(本件公報)により推
認しうる、願書に添付の明細書の「考案の詳細な説明」には、「排煙窓1は、下端
が蝶着11され、…上端が錠装置13によつて係止され、同錠装置が伝動ワイヤー
14の引張によつて解錠されたとき自動的に開放する形式のものである。」(同公
報二欄三行目ないし八行目)との記載があり、また、図面には外開き方式のものが
示されている。しかし、これらが実施例の説明としてなされたものであることは、
その記載に照らし明らかであるし、明細書の「実用新案登録請求の範囲」には、係
止の方法、開放の方向に関してなんらの記載もなく、「考案の詳細な説明」にも、
本件考案の技術的範囲が右実施例に限定されることを肯定する記載はないのであ
る。被告らの主張は採用できない。
3 進んで、(二)(1)の構成が(二)の構成要件を充足するかについて考え
る。
(一) 被告らは、ワイヤー掛架装置の個数、ワイヤー掛架装置及びワイヤー張架
装置の取付位置が相違する旨主張するが、被告らがイ号物件と比較しているのは本
件考案の実施例にすぎないこと、「実用新案登録請求の範囲」「考案の詳細な説
明」に実施例に限定して本件考案の技術的範囲を解釈すべきことを肯定する記載の
ないことは、前記明細書に照らし明らかであるから、右主張は理由がない。
(二) 被告らは、掛架装置、張架装置の滑車を窓側、枠側に取付ける方法につい
て、直接(本件考案)か、間接首振り状(イ号物件)かによつてその作用効果を異
にする旨主張する。しかし、成立に争いのない甲第五号証によると、滑車の支軸を
直接対象物に固定取着することなく、対象物への固定部材に保持部材を首振り状に
連結し、更にこの保持部材に貫通させた支軸に滑車を取付けるイ号物件の技術思想
は、本件考案の出願前公知であつたと認められる。そして、本件考案の掛架装置、
張架装置については、「考案の詳細な説明」に「ワイヤーを摩擦力の小さい状態で
掛架乃至張架できるものであればよく、」(本件公報二欄九行目ないし一一行目)
と、登録請求の範囲にも、「適宜取着し」とそれぞれ記載されていて、イ号物件に
よる右取付け方法を除外することをうかがわせる記載はない。また、窓側の滑車に
イ号物件のような付加をしたとしても、この滑車が、本件考案が有する次の作用効
果、すなわち、「ワイヤー掛架用ローラー2…2は動滑車の作用を為すので、窓が
多数あつてもワイヤーを巻取る長さが変化するだけで、巻取力は一つの窓を閉鎖さ
せるに足る力だけでよく、小さな力で多数の窓を一斉に閉鎖させることができ
る。」(本件公報二欄三七行目ないし三欄三行目)との作用効果を奏することに変
わりはないのである。被告らの右主張も理由がない。
(三) 右(一)、(二)で検討したところに従い、両者を対比すると、イ号物件
の(二)′(1)の構成は本件考案の(二)の構成要件を充足するものと認められ
る。
4 右に説示のとおり、イ号物件の(一)′、(二)′(1)、(二)′(2)、
(三)′の構成はそれぞれ本件考案の(一)、(二)、(三)、(四)の構成要件
を充足し、イ号物件が本件考案と同じ作用効果を奏することは前判示の事実から明
らかであるので、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属する。
四 以上のとおりとすると、被告豊和は業としてイ号物件を製造販売することによ
り、被告渋谷金属は業としてイ号物件を販売し、又は販売のため展示することによ
り、それぞれ原告の有する本件実用新案権を侵害しているのであるから、原告は、
被告豊和に対してイ号物件の製造販売の差止めとその廃棄を、被告渋谷金属に対し
てイ号物件の販売と展示の差止めを求めることができるものといわなければならな
い。
 よつて、原告の本訴請求はすべて理由があるから認容し、訴訟費用の負担につい
て民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 金田育三 鎌田義勝 若林諒)
イ号図面及び説明書
イ号物件は、イ号図面の第1図ないし第3図(イ号第一物件)、第4図ないし第6
図(イ号第二物件)のとおりである。
 その構造の特徴は、緊急時係止が解かれて一斉開放する排煙連窓①……①に於
て、ワイヤー⑤をゆるめることにより排煙連窓①……①が一斉開放せられる仕組に
なつており、この各排煙連窓①は下端が蝶着⑪され、上方が外側(イ号第一物件)
又は内側(イ号第二物件)に開放するものであるとともに、第1図及び第4図に示
すとおりステイダンパー⑦を常に開放方向に付勢されて張架してあり、また各窓①
側にワイヤー⑤を掛ける滑車②、②を中間部材を介して首振り状として左右(イ号
第一物件)、又は窓①の左右端部(イ号第二物件)に取付け、枠③側にもワイヤー
⑤を掛ける滑車④、④を中間部材を介して首振り状として取付け、一端をワイヤー
ストツパーで固定した一本のワイヤー⑤を枠③側の滑車④、④を介してそれぞれの
窓①の障子の滑車②、②に連続的に張架するとともに、更に他端にワイヤーの巻取
機⑥を設けてなる排煙連窓の復帰装置である。
 イ号図面の簡単な説明をすれば、第1図ないし第3図は排煙連窓が外側に開放す
る方式のもの(イ号第一物件)であつて、第1図は排煙連窓の閉鎖状態における概
略正面図、第2図(A)は滑車とワイヤーの張架状態を示す横断面図、第2図
(B)はイ号第一物件の一部を示す正面図、第3図は排煙連窓の開放状態を示す縦
断面図である。第4図ないし第6図は排煙連窓が内側に開放する方式のもの(イ号
第二物件)であつて、第4図は連窓の閉鎖状態における概略正面図、第5図(A)
は滑車とワイヤーの張架状態を示す横断面図、第5図(B)はイ号第二物件の一部
を示す正面図、第6図は排煙連窓の開放状態を示す縦断面図である。
<12313-001>
<12313-002>
<12313-003>
<12313-004>
<12313-005>

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛