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平成19年2月15日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成18年(ワ)第1080号不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日平成18年12月7日
判決
原告株式会社イーグル・イトガ
訴訟代理人弁護士森博行
被告株式会社イーグル・イチハラ
訴訟代理人弁護士三山峻司
同西迫文夫
同井上周一
同金尾基樹
補佐人弁理士井内龍二
主文
1被告は,大阪法務局平成17年6月7日受付をもってした設立登記中,「株式
会社イーグル・イチハラ」の商号の抹消登記手続をせよ。
2被告は,看板,事務所ドア上の表示,名刺,パンフレットその他の営業表示物
件から「株式会社イーグル・イチハラ」の表示を抹消せよ。
3被告は,その営業上の施設及び活動について,「株式会社イーグル・イチハ
ラ」,「株式会社イーグルイチハラ」,別紙被告表示目録記載1(1),(2)及び2
(1),(2)の各表示を使用してはならない。
4原告のその余の請求を棄却する。
5訴訟費用はこれを5分し,その4を被告の負担とし,その余を原告の負担とす
る。
6この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1主文第1,第2項と同旨。
2被告は,その営業上の施設及び活動について「EAGLE」及び「イーグル」
の文字を含む表示を使用してはならない。
第2事案の概要
本件は,原告が,原告が販売する特殊皮革素材の婦人用高級ハンドバッグ又は
原告の営業を表示するものとして周知性を取得している「EAGLE」及び
「イーグル」の表示(以下,「EAGLE」及び「イーグル」の表示を併せて
「本件表示」という。)を使用している被告の行為が,不正競争防止法2条1項
1号の不正競争に当たると主張して,同法3条に基づき,被告に対し,その商号
の抹消登記手続,営業表示物件から「株式会社イーグル・イチハラ」の表示の抹
消及び本件表示の使用の差止めを求めた事案である。
1争いのない事実
(1)当事者
ア原告は,昭和58年6月1日に袋物の製造販売等を目的として,「株式会
社イーグル・イトガ」の商号により設立された会社である。
イ被告は,平成17年6月7日に袋物の製造販売等を目的として,「株式会
社イーグル・イチハラ」の商号により設立された会社であり,大阪法務局同
日受付により設立登記を経由した。
(2)原告と被告の取扱商品
原告と被告は,株式会社イーグル・オサダ(東京都豊島区所在。以下「オサ
ダ」という。)から,同社が製造する特殊皮革素材の婦人用高級ハンドバッグ
(以下「オサダ製品」という。)を仕入れ,これを販売している(以下,オサ
ダ製品のうち,原告が取り扱っているものを「原告商品」,被告が取り扱って
いるものを「被告商品」という。)。現時点におけるオサダ製品の主要品目を
素材別・売れ筋順で列挙すると次のとおりである。
(素材)(標準価格帯)
①アルパカ(ペルー産)20万円台
②パイソン(東南アジア産)20万円台
③シャーク(南太平洋近海産)20万円台
④オーストリッチ(南アフリカ産)40万円台
⑤エクシール(北欧産)30万円台
⑥コンビネーション(組み合わせ素材)30万円台
⑦ホースヘアー(モンゴル産)30万円台
⑧クロコダイル(シンガポール産)90万円台
(3)原告の表示
原告は,原告商品の販売等,営業活動を行うに当たり,次の各表示を使用し
ている。
ア「株式会社イーグル・イトガ」なる商号
イ「株式会社イーグルイトガ」なる表示(以下「原告文字表示」という。)
ウ別紙原告表示目録(1)(2)記載の各表示(以下,各表示中,「E」の装飾文
字を丸で囲んだロゴマークを「Eマーク」といい,別紙原告表示目録(1)(2)
記載の各表示を併せて「Eマーク付き原告表示」という。)
(4)被告の表示
被告は,被告商品の販売等,営業活動を行うに当たり,次の各表示(以下,
併せて「被告表示」という。)を使用している。
ア「株式会社イーグル・イチハラ」なる商号
イ「株式会社イーグルイチハラ」なる表示(以下「被告文字表示」とい
う。)
ウ別紙被告表示目録1(1)(2)記載の各表示(以下,各表示中,「IE」の文
字を模したロゴマークを「IEマーク」といい,別紙被告表示目録1(1)(2)
記載の各表示を併せて「IEマーク付き被告表示」という。)
エ別紙被告表示目録2(1)(2)記載の各表示(以下,各表示中,「EI」の文
字を模したロゴマークを「EIマーク」といい,別紙被告表示目録2(1)(2)
記載の各表示を併せて「EIマーク付き被告表示」という。)
2争点
本件の争点は,被告表示の使用が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争
に該当するかであり,具体的には次のとおりである。
(1)本件表示は,原告商品又は原告の営業を表示する「商品等表示」といえる
か。
ア本件表示は,不正競争防止法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当す
るか。(争点1)
イ本件表示は,原告に帰属するものか。(争点2)
(2)本件表示は,原告の商品等表示として周知性を有しているか。(争点3)
(3)被告表示は,本件表示と類似するか。(争点4)
(4)被告商品又は被告の営業を原告商品又は原告の営業と誤認混同するおそれ
があるか。(争点5)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(本件表示の商品等表示性)について
【原告の主張】
(1)原告は,本件表示を原告の商号中に使用しているほか,原告の営業上の略
称として使用し,また,商品概要書(甲5),パンフレット(甲6),カタロ
グ(甲7),取扱説明書(甲8),品質保証書(甲9),値札タグ(甲10),
商品プレート(甲11),収納用紙袋(甲12),収納用布袋(甲13)など
にも表記して使用している。
したがって,本件表示は,原告商品又は原告の営業を表示するものであり,
不正競争防止法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当する。
(2)被告は,原告は本件表示を単独で使用しているわけではないと主張するが,
否認する。原告は,次のとおり,「EAGLE」ないし「イーグル」を単独で
も使用している。
ア現在使用中の文書において
(ア)「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとしておよそ30年」
(甲6)
(イ)「EAGLEBAGGALLERY」(甲7)
(ウ)「このたびはイーグル製品をお買い上げいただき,まことにありがと
うございます。」(甲8)
(エ)「EAGLELEATHERCOLLECTION」(甲10)
(オ)「EAGLEBAGGALLERY」(表面),「イーグルは特
殊素材バッグの専門メーカーとしておよそ30年」「EAGLELea
therCollection」「イーグルオリジナルブランド」「E
AGLEオリジナルブランド」(以上,裏面)(以上,甲23)
(カ)「EAGLEBAGGALLERY」(1頁目),「イーグルは,
このように考えています。」(2頁目)(以上,甲24)
イ過去に使用した文書において
(ア)「EAGLETHEHIGHESTFASHIONBAG
ORIGINALCOLLECTION」,「イーグルオリジナルバッ
グ」(以上,甲20)
(イ)「特殊素材のみを扱った最高級バッグのイーグルもおかげさまで30
年」「イーグルは今花盛り」(以上,甲21)…
【被告の主張】
(1)原告は,「EAGLE」及び「イーグル」の文字表示(本件表示)を単独
で使用しているわけではない。原告の表示の使用態様は必ずしも一定していな
いが,甲第5号証ないし第13号証及び第15号証のいずれを見ても,「EA
GLE」の文字表示のみ,あるいは「イーグル」の文字表示のみからなる表示
(本件表示)は使用されていない。主に使用されているのは,「株式会社イー
グルイトガ」なる文字表示(原告文字表示)か,「EAGLE」に「Eマー
ク」を併記した表示(Eマーク付き原告表示)である。
(2)原告は,「EAGLE」又は「イーグル」がそれのみ使用されている例を
挙げるが,例えば「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとして」(甲…
6),「このたびはイーグル製品をお買いあげいただき」(甲8)との記載…
において,「イーグル」の名称は,原告の営業の略称というよりは,原告商品
の製造者であるオサダの略称として使用されているものといえ,原告の主張に
必ずしも沿うものではない。
また,甲第7号証のパンフレットや甲第10号証の値札タグには,その最も
目立つ場所に「EAGLE」に「Eマーク」を併記した表示(Eマーク付き原
告表示)が記載されており,識別力ある表示として使用されているのはむしろ
Eマーク付き原告表示である。甲第20号証及び第21号証のパンフレットに
も,識別力ある表示としてEマーク付き原告表示が使用されている。
(3)したがって,原告は,「EAGLE」ないし「イーグル」の文字表示を,
それのみで原告商品又は原告の営業を表示するものとして使用しているとはい
えず,本件表示は,単独では,不正競争防止法2条1項1号所定の「商品等表
示」とはいえない。
2争点2(本件表示の帰属主体)について
【被告の主張】
(1)以下の事実から明らかなように,本件表示は,原告商品を表示するもので
はない。仮に,本件表示について商品表示性が認められるとしても,それは,
古くから原告に対してオサダ製品を供給してきたオサダに関連するものである。
アオサダと原告との関係
(ア)オサダは,古くから「長田商店」の名称で袋物の製造を手がけ,昭和
47年12月に現社名で会社として設立され,現在まで婦人用バッグ等の
製造を行っている。
原告代表者P1は,もともとオサダ製品の販売業者の社員であったが,
昭和58年ころ独立して原告を設立し,以後オサダ製品の一販売業者とし
て販売活動を行っている。
オサダは,爬虫類皮革製品の製造技術において長い伝統と消費者・取引
業者から高い信頼を有しており,従前から「イーグルオサダ」のブランド
名で自社製品を販売してきた。同社の関連会社である長田商事株式会社は,
イタリアの名門業者フィリベルト・ディーニ社(以下「ディーニ社」とい
う。)から,ディーニ社製バッグの日本における独占的な輸入代理店とし
ての地位を与えられている。
オサダは,爬虫類皮革業者の全国団体である全日本爬虫類皮革産業協同
組合(以下「JRA」という。)に登録し(登録番号191),自社製品
にJRAの織りネームやJRAタッグ(それが付された製品が動物保護に
関するワシントン条約を遵守した製造業者の手にかかる製品であることを
示すもの)を付して販売業者に提供している。
オサダは,自社独自の販売スタッフを有しておらず,その製品の販売に
関しては,原告のような販売業者に委ねられ,この販売業者から全国の問
屋・小売店に対して販売されるという販売形式が行われてきた。
原告は,オサダ製品の一販売業者にすぎず,多いときでもオサダの売上
げの3割程度の製品を販売していたにすぎない。
(イ)他方,原告が販売してきたバッグ等の商品は,最近に至るまですべて
オサダ製品であった。しかし,原告は,これらオサダ製品に原告自身のJ
RA登録番号(337番)を付け替えて販売している。
乙第2号証の1ないし13及び甲第15号証は,ディーニ社製バッグを
掲載した雑誌「世界の一流品大図鑑」の1987年版から2005年版ま
でを抜粋したものであるが,いずれの版にも有名な「フィリベルトディー
ニ」の名称とそのブランド名及びブランド図形が主要な識別標として訴求
されるように表記されている。また,各年版に使用されている図形商標を
見ると,原告は,2002年までは「イーグルオサダ」の頭文字である
「E」と「O」を模したマークを付して商品を販売していたことがわかる。
(ウ)以上のとおり,原告は,オサダの製造技術に対する信頼を不当に取り
込もうとしているうえ,原告のものではあり得ない「EAGLE」及び
「イーグル」の名称をあたかもそれらが古くから原告の商品ブランドであ
るかのように主張しているにすぎない。
イオサダと被告との関係
(ア)被告代表取締役P2は,平成6年2月ころから,原告の外務員(外務
員とは,原告と雇用関係にあるわけではなく,原告とは独立した地位で自
ら得意先を開拓し,一切の経費も負担し,原告商品を販売する立場であ
る。)として,原告商品を借り受けて販売していたところ,平成9年3月
ころ,自ら開拓してきたすべての得意先を息子であるP3に譲って原告の
外務員を辞し,自らは宝飾品販売業に専念した。
他方,P3は,同年4月にP2が設立した有限会社アレス(以下「アレ
ス」という。)の代表取締役となり,原告商品の販売を行うようになった。
原告とアレスの関係は,販売委託契約関係である。
(イ)原告は,数年前から直轄営業部を設け,自社の営業社員を用いて直接
小売店に対して営業を行うようになったが,これは,外務員が開拓した得
意先を奪う「問屋飛ばし」として,従前からの取引先である問屋筋から取
引を忌避され,近年その売上げを大幅に減らした。
平成17年に入ると,原告の銀行に対する返済が滞り,オサダに対する
支払滞納額も多額に上ったことから,オサダから原告に対する売掛けによ
る商品の供給がストップした。
(ウ)アレスは,原告との話し合いの結果,原告商品の販売を行うことを止
めた。他方,P2は,平成17年5月末ころ,P3とともにオサダの役員
と話し合いを行い,オサダの了解を得て,同年6月に被告を設立して自ら
代表取締役に就任した。そして,被告は,オサダ製品の販売を行うように
なった。
(エ)以上のような経緯で,被告は,現在の会社名(被告商号)と,「EA
GLEICHIHARA」の欧文字及びこの欧文字の「EAGLE」,
「ICHIHARA」の頭文字をとった「E」と「I」を模したマークを
併記した表示(IEマーク付き被告表示,EIマーク付き被告表示)を使
用して,オサダの製造供給に係る被告商品を販売するようになった。
被告は,「イーグルイチハラ」の名称使用についてオサダに異議がない
ことを確認しており,そのことは原告も知っているはずである。また,被
告が販売活動を行っている相手方は,被告が引き継いだアレスの得意先又
はP2による宝飾品販売の取引先が中心である。
【原告の主張】
(1)「イーグルオサダ」ブランドの不存在
被告は,オサダが「長い伝統と消費者・取引業者から高い信頼を有してお
り,従前から『イーグルオサダ』のブランド名で自社製品を販売してきた」
と主張する。しかし,このような伝統と信頼の形成は,「イーグル」の名称
で販路を拡大してきた原告の尽力によるものである。また,「イーグル」の
名称によるオサダ製品の販売は,原告とオサダとの約定により,原告のみが
なし得るものとされてきた。「イーグルオサダ」なるブランド名は存在せず,
被告の上記主張の趣旨は,ただ,オサダが自己の社名において製品を供給し
てきたというだけのことでしかない。
すなわち,日本の婦人ハンドバッグ業界においては,これまで国産ブラン
ドはほとんど育ってこず,各小売店が製造業者に作らせたものを自社の商品
として,自社の名称で販売しているのがほとんどであった。原告も,昭和5
0年代半ばころまでは,K1において,オサダから仕入れた商品をノン・ブ
ランドで販売していたが,そのころ,品質の優れているオサダ製バッグを国
産ブランド商品に育て上げようと考え,自社の社名に「イーグル」を冠して
オサダの社名と統一し,以降,「イーグル」バッグのブランド確立を目指し
て,徹底した商品管理と完璧なアフターサービスを実行し,販路拡大に全力
を投球してきた。
(2)原告とオサダの取り決め
オサダの取引先は,原告を含め複数存在するが,原告のように店舗を保有せ
ず,問屋・小売店との異業種提携販売方式により全国的な販売網を形成してい
る業者は,原告以外には存在せず,他の取引先は,すべて店頭販売を行う小売
店である。原告とオサダとの間では,そのような小売店には,原告に供給する
製品と同じ物は供給せず,また「イーグル」ブランドは使用させないという取
り決めが行われてきた。そして,実際にも,オサダは上記取り決めを守ってき
たのであり,過去には,オサダが茨城や東京で原告商品と同一の製品を小売店
に納品したこともあったが,原告の抗議によりその製品をオサダに引き取らせ,
また仙台では,小売店が「イーグル」ブランドによる販売キャンペーンを行っ
たこともあったが,オサダの介入によりこれを中止させるに至ったのである。
(3)JRAタッグ
JRAタッグは,ワシントン条約に基づき適法に輸入された皮革を用いた日
本製品であることを示すものである。原告は,これを独自に入手して「イーグ
ル」ブランドの商品に取り付け,販路に供してきた。
すなわち,原告が販売する「イーグル」ブランドの商品は,原告の独占販売
に係る商品であり,原告は,顧客の声を聞き,その要望を反映させた商品を供
給するため,オサダに対しデザインやサンプルを提示し,あるいはオサダから
試作品の提示を受け,そうして決定された商品の製造をオサダに発注し,出来
上がった商品はすべて原告が引き取ってきたのであって,これらの商品はすべ
て原告の商品であり,これらの商品に関する限り,オサダはその製造工場とい
う立場にあった。つまり,「イーグル」ブランド商品とは,まさしく自主企画
商品(プライベート・ブランド)であり,それゆえJRAも,原告の専門メー
カーとしての地位を承認し,登録番号337を付与したのであるし,オサダも,
原告が製造依頼した商品には,いわゆる「止め商品」として,オサダの登録番
号191のJRAタッグを取り付けない約束となっていたのである。
(4)ディーニ社
原告は,ディーニ社の日本における専属販売代理権を持つ長田商事から独占
的販売権を付与され,同社製バッグを販売してきたが,原告の売上総額に占め
るその割合は1%あるかないかという程度である。にもかかわらず,原告が独
占販売権を確保してきた理由は,舶来志向のある日本の顧客に対し,海外ブラ
ンドの発売者であることをアピールすることにより,自社の信用をより高める
こと,及び専ら舶来のブランド商品を対象としている雑誌「世界の一流品大図
鑑」に発売者として表示されることにより,自社の名称を広く知らしめること
にあった。
(5)オサダの売上に占める原告の割合
オサダは小売販売を行っておらず,その売上は,原告のような異業種提携販
売を全国展開する業者のほかは,地域販売を行う小売業者に対するものがすべ
てである。
平成9年以降のオサダの年間総売上額に占める原告の仕入額の割合は,およ
そ次のとおりである。
年度①原告仕入額②オサダ総売上額比率(①/②)
(百万円)(百万円)
平成933072046%
平成1020663033%
平成1119659033%
平成1223553044%
平成1317758031%
平成1418855034%
平成1515448032%
平成1618845042%
(6)「止め」商品及び「自主企画」商品
平成13年ころまでは,オサダにおいてサンプルを作製し,原告がその中か
ら取扱製品を選んでこれを「イーグル」専用商品,すなわち「止め型」として,
オサダは同製品を原告以外に供給せず,原告にのみ供給するという扱いが行わ
れていた。しかし,そのような約束であるはずなのに,時折同じ商品が出回っ
たため,その都度原告が対処せざるを得なかったことや,オサダの製造工程に
ミスがあったため顧客から多数のクレームを受け,そのすべてを原告の全責任
において引き受けざるを得なかったことから,これら多発する諸問題を解決す
るため,同年ころから専属デザイナーによる原告独自のデザイン開発に取り組
むようになった。こうして,原告において新製品をデザインし,サンプルを製
作し,製造工程を改良し,製作指導を行う,いわゆる「自主企画商品」が原告
商品の主流を占めるようになっていった(ただし,現在は独自のデザイン製作
を停止している。)。したがって,止め商品と自主企画商品とは,その意味合
いは相違するが,少なくとも原告のみが取り扱う商品である点では変わりはな
い。
(7)以上のとおり,オサダの売上の5割ないし3割を原告が占め,これがオサ
ダの生命線を成していたことに加え,商品の流通先も全く異なっていたことか
ら,オサダも本件表示を原告のものであると認め,「イーグル」ないし「EA
GLE」のプレートは原告のみが貼付することができることとして,オサダは
原告以外に納入する製品に同プレートを貼付せず,自社のロゴマークも「OS
ADA」の表示の下に添えるように,小さく「EAGLE」と表示して気を遣
い(甲34),さらには,他社から「大阪にイーグルという会社があるが,同
社はオサダさんの関係ですか」と照会されても,オサダは「知らない」と答え
るなど,長きにわたり,原告による本件表示の独占的使用を尊重し,配慮し続
けてきたのである。
その結果,本件表示は,原告商品の名称として,また原告の略称として,異
業種提携先企業ないし潜在的提携先企業の間で広く認識されるに至ったのであ
る。
(8)商品等表示の帰属主体の判断は,「当該商標がだれの業務に係る商品を表
示するものとして周知となるかは,製造元と販売店間でOEM契約が締結され
たかどうかなど両者間の契約内容によって定まるわけではなく,当該商標の使
用された商品に接した取引者,需要者が,だれの業務に係る商品であることを
表示するものとして当該商標を認識するかによって定まる」(東京高判平成1
4年12月25判時1817号135頁)。
そうすると,オサダのP4専務の陳述する,「イーグルイトガ様以外の取引
業者様に対して当社製品を販売するに当たり,『イーグル』ブランドを使用さ
せないなどという取り決めを行ったとの事実はなく,無論そのような約定はあ
りません」(乙7)との言い分を前提としても,原告がマーケットとしている
異業種企業間においては,本件表示は原告のものとして周知されており,これ
がオサダの業務に係る商品の表示として認識している者など誰一人として存在
しないのであるから,本件表示の帰属主体が原告であることは否定し難い事実
ということができる。
よって,オサダ製品を「イーグル」ブランドに高めてきたのは原告であり,
それゆえ「イーグル」ブランドは,製造者としてのオサダと発売者としての原
告との共有財産であるといってもよいのであるが,今日においては,本件表示
は,少なくとも原告がかつて開拓し,これからも開拓しようとしている異業種
企業を対象マーケットとする限り,原告の専有財産であるといって過言ではな
く,オサダにおいても,原告の許諾なき限り,これを使用することは許されな
いものと解される。
【被告の反論】
(1)原告は,原告とオサダとの間において,原告以外の取引先に対しては
「イーグル」ブランドは使用させないという取り決めが行われてきたとして,
オサダはこの取り決めを守り,過去に原告商品と同一の製品を小売店に納品し
たが原告の抗議によりその製品をオサダに引き取らせたことがある旨主張する
(【原告の主張】(2))が,否認する。原告から「安値で売られては困る。」
とのクレームがあったため,オサダが自主的に自社製品の引き上げを行ったこ
とはあるが,それは原告主張のような取り決めに基づくものではない。
(2)原告は,オサダにおけるオサダ製品の売上のうち原告への売上が3割から
5割近くの割合を占めていたことや,原告の「自主企画商品」が原告商品の主
流を占めていたことを挙げ,本件表示がオサダの商品等表示ではなく,自己の
商品等表示として周知されていた旨主張する(【原告の主張】(5)(6))。しか
し,周知性とは,需要者にとっての認識を指す概念である以上,原告が主張す
るような割合自体に意味があるわけではなく,むしろ原告商品が現実にどのよ
うな態様で販売されていたかが問題である。
ア原告商品の販売活動の実態について
原告が自己の営業やその原告商品について行う宣伝活動は,そのほとんど
が原告の従業員でない「外務員」という委託業者によって行われ,提携先企
業との交渉や販売活動についても,原告の指示によるのではなく各外務員に
一任されていた。「世界の一流品図鑑」や原告のパンフレット・カタログは,
一般の消費者向けというよりも,主として原告の外務員が自己の得意先開拓
に当たり,営業先に対して商品の説明を行うためのツールとして用いられて
いた。
原告は,平成13年以降は,「外務員」方式から徐々に直轄営業部による
販売にシフトしていることを示す資料として甲第29号証を示すが,そこの
直轄営業部の「得意先」として挙げられた中には,原告の下を離れた外務員
から直轄営業部が引き継いだものが少なからず含まれ,また,「ヘルプ」
(外務員の得意先との取引を,直轄営業部社員が外務員を代行して行ったに
すぎないもの)までが挙げられている。他方で,原告の少数の直轄営業部社
員の手によって需要者の間で原告に対する認知度が急速に高まっていったと
する証拠はない。
とすれば,原告が主張するように,「本件表示がオサダの業務に係る商品
の表示として認識している者など誰一人として存在し」ておらず,需要者が
専ら原告の業務に係るものとして本件表示を認識していたといえるかどうか
は,原告の外務員がどのような態様によって販促活動を行っていたかに関わ
ることとなる。しかし,原告の主張・立証するところによっては,到底,需
要者が専ら原告の業務に係るものとして本件表示を認識していたというよう
な実態を認めることなどできない。
むしろ,外務員が販促ツールとして用いていた2001年版までの「世界
の一流品図鑑」には,「フィリベルトディーニ」,「イーグルオサダ」の名
が記載されており(乙2の1ないし9),また,原告のパンフレット・カタ
ログ類を見ても,それらには「dini(フィリベルトディーニ)」の製造
標が記載され,また「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとしておよ
そ30年。」(甲6),「最高級の希少な素材を厳選し,洗練された職人の
技が生み出す」(甲35の1),「高品質にこだわり洗練された職人により
格調高く仕上げられた逸品」(甲35の2)等として,素材の高級感や製造
者の技術に対する信頼(すなわち,これはフィリベルトディーニやオサダに
対する信頼性に他ならない。)を強調した記載がその多くを占めている。
原告の外務員は,このようなツールを現実に使用して販促活動を行ってい
た。にもかかわらず,原告は,「本件表示は原告のものとして周知されてお
り,これをオサダの業務に係る商品の表示として認識している者など誰一人
として存在しない」などと強弁しているのである。
イ原告の「自主企画商品」について
原告は,原告の「自主企画商品」が原告商品の主流を占めるようになって
いたとも主張するが,かかる主張の根拠とされる資料(甲33の4)を見る
と,2002年1月から2003年4月までの16か月間の原告の「自主企
画商品」の売上個数は合計305個(269個+36個)にすぎない。これ
は,2002年1月から同年12月までの1年間の総売上個数として原告が
主張する7048個の約4.3%にしか当たらない。
さらに言えば,上記資料に記載された「自主企画商品」の「売上総計」と
は,売上上代(定価)を合計したものにすぎず,そこから値引き分や外務員
への支払分を差し引いた現実の売上は,それより相当低い金額となるはずで
ある。
そもそも,ハンドバッグを含むファッション業界においては,どの販売業
者においても,かかる程度の少数の自主企画商品を取り扱っている事実につ
いては論を待たない。にもかかわらず,上記のごとき資料を挙げてなされる
原告の主張は,牽強付会な主張というべきである。
3争点3(本件表示の周知性)について
【原告の主張】
以下の事実に照らし,本件表示は,原告の商品等表示として周知性を取得して
いるというべきである。
(1)原告の取引者等
原告が専ら採用してきた原告商品の販売方法は,呉服・婦人服・寝具・宝飾
・時計・図書など異業種の地方問屋・小売店と提携して,それらが主催する展
示会や店舗催事に原告のインストラクターが同席することにより,また,小売
店の顧客に対する外商販売に同インストラクターが同行することにより,並行
販売を行うという方式である(甲5,3枚目)。そして,今日における提携先
企業数は200社に達しており,その所在は,北は北海道から南は九州まで全
国各地に拡がっている。これらに原告の取引先となり得る潜在的提携企業を加
えると,呉服業界では問屋の約9割,小売店の約8割,寝装卸業界及び教科書
卸業界では6割,時計宝石卸業界では4割が,本件表示を原告商品の名称とし
て,また,原告の略称として認識しているものと解される。
なお,原告商品は,主に中高年の富裕層を販売対象とする高級婦人ハンド
バッグであるので,そのような特定層の消費者を「需要者」とみることもでき
るが,他方で,原告商品は,提携先企業に卸す形をとってその顧客に販売する
ものであるため,これを周知性判断の基準とすることに問題はない。
(2)売上実績
平成9年以降の原告の売上実績及び売上個数の推移は,次のとおりである
(1万円未満四捨五入)。
年総売上高売上個数直轄営業部売上高
平成9年9億2661万円9231個−
平成10年7億0817万円7024個−
平成11年6億7315万円7049個−
平成12年7億2920万円8730個−
平成13年5億9821万円7636個5376万円
平成14年5億6873万円7048個1億1860万円
平成15年4億7687万円4999個1億2029万円
平成16年4億9004万円5218個1億0984万円
平成17年2億5675万円3503個1億1860万円
なお,「総売上高」とは,提携先企業に対する卸売総額であり,消費者に対
する小売総額ではない。「売上個数」には,メインとなるハンドバッグの外,
小物類も若干含まれている。「直轄営業部」とは,平成13年以降設置された
ものであるところ,それまでの原告の営業形態はすべて外務員委託方式であり,
提携先企業との交渉や販売活動は各外務員に一任されていたのであるが,直轄
営業部を設置してからは,自社営業社員が直接異業種問屋等と交渉し,インス
トラクターが同行販売する営業形態も採用するようになった。
上記のとおり,原告の売上高は近年低調基調にあり,特に平成17年は経営
危機に遭遇したのであるが,自社営業方式を柱に据えることにより起死回生を
図ることができ,現在はその危機を脱しつつある。したがって,平成17年1
年間を除くと,原告は,少ない年でも金額にして5億円前後,個数にして50
00個以上を売り上げてきたものであり,原告商品が購入層の限られる高級品
であることに鑑みれば,上記取引先企業において,本件表示が原告の商品等表
示として広く認識されていることは明らかである。
(3)本件表示の使用状況
ア宣伝用表示物
(ア)商品概要書(甲5)
原告は,平成14年から平成15年までの間に,自社のロゴマークを現
在のものに変更したが(乙2の10及び11参照),上記商品概要の初版
はそのころ作製したもので,以降毎年改訂しながら現在も使用中である。
同書は,原告が異業種提携販売先を新規開拓する際に,初めて訪問する
業者(地方問屋,大手小売店,メーカー販売会社等)に対し,取扱商品,
販売方法,保証期間,メリット等を説明するために使用し,さらに,提携
を開始した問屋において,その取引先である小売店に対し販売促進をかけ
る際の案内文書としても使用される。なお,初版以降の総使用部数は約2
万部であり,最新版である平成18年版の使用部数は約1000部である。
(イ)商品パンフレット(甲6,21,23)
これらは,主に消費者向けのもので,異業種提携先企業が各種展示会や
店舗催事を開催する際,その顧客に対し案内状と一緒に同封して発送する
等して,集客用に使用される。その具体的使用状況は次のとおりである。
a甲21は,平成13年12月に作製され,使用部数は約3万部である
が,ロゴマークの変更に伴い,平成15年中に使用中止となった。
b甲23は,甲21に代わるものとして平成15年5月に作製され,現
在までの使用部数は約5万部である。
c甲6は,平成16年2月に,大手家電業界専用のパンフレットとして
作製され,約1000部配布したが,1年後に商品内容が変わったため
使用を中止した。
(ウ)商品カタログ(甲7,20)
これらは,主に提携先業者向けのもので,原告商品の詳細を説明するも
のとして使用される。その具体的使用状況は次のとおりである。
a甲20は,平成10年3月に作製され,使用部数は約3万部であるが,
ロゴマークの変更に伴い,平成15年中に使用中止となった。
b甲7は,平成15年4月に作製され,現在までの使用部数は約1万部
である。
(エ)インターネットホームページ(甲24)
これは,平成13年に開設し,以降毎年更新している原告のホームペー
ジである。
イ商品に随伴する表示物
(ア)取扱説明書(甲8)
これは,商品の素材説明,使用上の注意を記入したもので,完成した製
品の検品完了後,各バッグに収納する。現在のものは約5000枚配布し
ているが,過去のものを含めると,延べ配布枚数は約10万枚である。
(イ)品質保証書(甲9)
これは,商品の保証期間及び保証内容等を説明するもので,使用状況は
上記(ア)と同じである。
(ウ)商品タグ(甲10)
これは,商品の値札であり,使用状況は上記(ア)と同じである。
(エ)商品プレート(甲11,25)
これは,バッグの内側に装着し,イーグル・ブランドの商品であること
を表示するものであり,甲25は平成8年から平成15年まで使用し,甲
11は同年以降現在まで使用している。
(オ)商品収納用紙及び袋布(甲12,13)
これは,平成15年以降使用している商品収納用品である。
【被告の主張】
(1)原告が主張する「需要者」について
原告は,本件において周知性の判断基礎となる需要者について,原告の取引
者である提携先(ないし潜在的提携先)を「需要者」と見るべきと主張するが,
そもそも,この「潜在的提携先」なる概念がいかなる業者を指すのか不明であ
る。
仮に,原告が列挙する異業種について全国に存在する全ての業者を指すので
あれば,それらの業者において本件表示が原告の商品等表示として周知されて
いるとの証明はなされていない。また,原告が一度でも営業活動をする等,接
触を図った業者を指すというのであれば,そのように自己に都合よく需要者を
限定して周知性判断を行うことは許されない。
(2)原告が自己の主要取引業者として掲げる一覧資料(甲27)について
原告は,本件表示が需要者に周知されている根拠として,173ある自己の
主要取引先業者の名称を列挙した資料(甲27)を示す。しかし,これらの取
引先の数は,原告が訴状別紙一覧表において示した120とその数が大きく異
なっており,また,原告とそれら取引先との取引期間,取引数量についても明
らかにされていない。そもそも原告が挙げる173の業者の中には,既に原告
との取引を終えたもの,あるいはもともと僅かな取引しかない業者までが含ま
れ,さらに残りの取引先のうちの多くは,現実には外務員が一任されて接触し
てきたにすぎないものである。
また,原告は,上記資料に基づき,自己の主要取引先に他の潜在的提携企業
を加えると呉服業界の問屋の約9割,小売店の約8割,寝装卸業界及び教科書
卸業界の約6割といった各業者の取引者が本件表示を原告の商品等表示として
認識している旨主張する。しかし,例えば,原被告の本店が存在する大阪府内
だけをとっても,電話帳に登録されている呉服卸業者が135件,呉服店が1
160件,寝具製造卸業者が227件も存する(乙17)。これを見れば,原
告の主張が極めて大仰な主張であることは明らかである。
(3)原告商品の売上実績について
原告は,原告商品の売上高が年間5億円前後,個数にして5000個以上で
あったと主張し,損益計算書(甲14の各枝番)をその根拠として挙げる。
しかし,これは,ハンドバッグ以外の財布・ベルトといった小物類の売上も
含んだ数値である。
また,損益計算書の示す数値は,原告の販売実績の実態を示すものではない。
けだし,原告が長年行ってきた営業形態は,専ら外務員委託方式によるもので
あるところ,外務員が顧客に対して販売した商品については,その代金が原告
名義の銀行口座に振り込まれ,その中から原告の外務員に対する販売価格及び
経費が引かれた残りが,外務員の受け取るべき利益として,外務員の口座に支
払われる仕組みとなっていた。そのため,原告が損益計算書において自己の売
上高として計上している金額は,外務員が受け取るべき利益をも含んだものと
なっている(外務員への支払額は,販売費等の項目で費用換算されているもの
と思料される。)。したがって,原告の実際の販売実績は,原告の主張する売
上高の何割かにすぎないと思料される。
したがって,原告の提出するいずれの資料によっても,本件表示が周知性を
獲得しているとはいえない。
4争点(4)(類似性)について
【原告の主張】
(1)被告表示中,ブランド名称として意味のある要部は「EAGLE」及び
「イーグル」であり,これは本件表示と全く同一である。
(2)被告は,「EAGLE」あるいは「イーグル」の表示を単独では使用せず,
もっぱら「イーグルイチハラ」ないし「EIマーク」付きの「EAGLE」を
使用していると主張する。
しかし,被告が日常の営業活動上,「EAGLE」ないし「イーグル」の表
示を,「イチハラ」から切り離して単独で使用していないとの主張は,にわか
に措信できない。たとえば,被告の営業社員が取引先宛に架電ないし面談する
に際し,「イーグルイチハラの○○です。」と名乗るのではなく,「イーグル
の○○です。」と名乗ることは大いにあり得ることであるし,むしろその方が
自然ではないかと思われる。また,商品カタログやパンフレット類においても,
書証として提出されている乙第5号証では,「EAGLE」や「イーグル」の
表示が単独で使用されていないが,他の販促ツールにおいても同様であるとは
必ずしも言い切れない。
したがって,被告の上記主張は,被告の商号及びロゴマークに関してのみ妥
当する主張でしかない。
(3)また,被告は,被告標章「イーグルイチハラ」においてより識別性を有す
るのは「イチハラ」の部分であり,要部は「イーグル」ではなく「イチハラ」
にあるから,「イーグル」の部分を要部として類否判断を行うのは相当でない
と主張する。
なるほど,「イチハラ」は固有名詞としての特定人の氏を示すものであるか
ら,営業主体を識別する表示としては,「イチハラ」に要部があると解するこ
とも可能であろう。
しかし,商品の出所(ブランド性)を識別する表示としては,「イチハラ」
には何の意味もないのであって,まさしく「イーグル」ないし「EAGLE」
が要部であると解するほかはないのである。
(4)被告は,本件表示がウィークマークであると主張するが,同概念の意義が,
それ自体の顕著性は弱く,特定商品または特定役務に継続的に使用された結果,
二次的な出所表示機能を取得することによって,不正競争防止法上の商品等表
示として(商標法上の商標として),保護を受けることになった商品等表示
(又は商標)と定義されるものである限り,まさしく本件表示はウィークマー
クであるということができる。
(5)商品等表示の類否判断は,「取引の実情のもとにおいて取引者又は需要者
が両者の外観・称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に
類似したものと受け取られるおそれがあるか否かを基準として判断すべき」も
のである(最判昭和58年10月7日民集37巻8号1082頁他)。本件表
示は,需要者である異業種提携先企業において周知となっているところ,本件
表示と被告表示とを対比すれば,上記取引先需要者らが時間と場所を異にして
見聞きした場合,その呼称に基づく印象・記憶・連想から,両者を全体的に類
似したものと受け取られるおそれがあることは明白である。特に本件において
は,原告と被告とは,取扱商品及び取引先市場において競争関係にあるため,
商品または営業主体が同一であると混同するおそれのみならず,原告と被告と
の間に経済上・組織上何らかの関係があるのではないかと混同するおそれも多
分にあるのであって,そのような観点からも類似性が認められるべきである。
【被告の主張】
(1)被告が使用している標章は,「EAGLE」又は「イーグル」の文字表示
のみからなるものではない。被告が使用している標章は,「株式会社イーグル
イチハラ」の文字表示(被告文字表示)あるいは「IEマーク」又は「EI
マーク」に「EAGLE」を上段にし「ICHIHARA」を下段にして併記
したもの(IEマーク付き被告表示,EIマーク付き被告表示)である。
被告表示は,「イーグルイチハラ」と区切ることなく記され,また呼称上も
よどみなく一連に発音される以上,これを一体表示として捉え,本件表示との
類似性を判断するのが相当である。
また,被告表示のうち,「イーグル」の語は極めて識別性の薄いウィーク
マークであるのに対し,「イチハラ」は,被告代表者の氏を片仮名表記に替え
ただけの固有名詞であるから,両語を比較すると,被告表示においてより識別
性を有するのが「イチハラ」の部分であることは明らかである。
したがって,本件における表示の類否判断は,本件表示と「イーグルイチハ
ラ」の間で行われるべきであり,後者においては「イチハラ」の部分が独自の
識別性を有すること,さらに欧文字の「IEマーク」又は「EIマーク」が付
され,本件表示との誤認の危険を防止する手立てがなされている点に鑑みれば,
表示が類似するという結論は導き得ないはずである。
(2)また,次のような,同一又は類似表示の登録状況を踏まえても,本件表示
と被告表示が類似しないことは明らかである。
ア原告は,「EAGLE」又は「イーグル」の文字表示について登録商標を
有しているわけではない。
イ「Eagle」の文字標章からなる商標が,昭和60年にK2本店によっ
て「かばん類,袋物,化粧道具(但し,くしを除く)」を指定商品として登
録されている(登録第1739715号)。
「EAGLE」又は「イーグル」を含む商標は,指定商品が同一又は類似
する範囲で,現時点で調査しただけでも48件登録されている。商標の先願
主義からすれば,先に登録されたものと同一又は類似の後願の商標登録は認
められないはずである。したがって,「EAGLE」又は「イーグル」の文
字を含む多数の商標が類似する指定商品の範囲内で登録されているという事
実からは,次のような類否判断がなされていると考えられる。
(ア)「EAGLE/イーグル」の文字標章については,一つが登録されれ
ばその後の登録は認められない。
(イ)上記の語を含むいわゆる合成語あるいは結合表示については,「EA
GLE/イーグル」がディクショナリーワードであることにも起因して
「EAGLE/イーグル」の識別力を小さく解釈し,「EAGLE/イー
グル」を除くその他の部分に識別力の発揮する要素ありとして全体として
の類似性は否定される。
(ウ)文字に図形を結合させる場合も,(イ)とほぼ同様である。
ウ被告が登録出願した「イーグルイチハラ」の商標,及び「EIマーク」の
下に,「EAGLE」を上段にし「ICHIHARA」を下段にして併記し
た商標について,いずれも平成18年6月9日に商標登録がなされた。
5争点5(誤認混同のおそれ)について
【原告の主張】
被告は,本件表示を自己の営業又は被告商品を表示するものとして使用し,
原告の提携先企業の一部を対象に売り込みを図っており,被告商品はオサダか
ら供給されているので,原告商品と同一ないし類似するため,需要者において,
原告と被告とが同一の営業主体であるか,又は両者間に系列関係など密接な関
係が存在すると誤信するとともに,被告の営業または被告商品をもって,原告
の営業または原告商品と混同するおそれが多分にある。
【被告の主張】
争う。
前述のとおり,仮に,本件表示について商品表示性が認められるとしても,
それは,古くから原告に対してオサダ製品を供給してきたオサダに関連するも
のであるから,オサダからオサダ製のバッグ類の供給を受けてこれを「イーグ
ルイチハラ」として被告が販売する行為は,何ら商品主体の混同を生じせしめ
るものではない。
第4争点に対する当裁判所の判断
1争点1(本件表示の商品等表示性)について
(1)証拠(甲6,7,11,20,21,23,25,35の1・2,乙2の
10・11,7)及び弁論の全趣旨(とりわけ,被告代表者は平成6年から9
年まで,被告取締役P3は平成9年から平成17年まで,原告商品の販売を
行っていたか又は原告商品の販売を行う会社の代表者であったから,原告商品
に関する商品プレートやカタログ・パンフレット類について,被告はよく把握
しているものと思われるが,下記のものについては,原告の主張する使用時期
等について具体的な反論反証をしていない点)によれば,次の事実が認められ
る。
ア商品プレート(甲25)
高級バッグの分野では,「Eagle」ないし「EAGLE」のロゴ入り
プレートが付された「イーグル」ブランド商品が,昭和時代から存在する。
原告は,昭和時代から,上記「イーグル」ブランド商品を販売していた。こ
れが原告商品である。甲第25号証のプレートは,原告商品に平成8年から
平成15年まで付されていたものであり,これには,「E」と「O」を模し
たロゴマーク(以下「EOマーク」という。)の下に「EAGLE」の記載
があり,更に小さく「TOKYO・OSAKA」との記載がある。
イ商品プレート(甲11)
上記プレートは,原告商品に平成15年以降付されているものであり,こ
れには,Eマーク付き原告表示の下に「EXCELLENTBAGCO
MPANY」の記載がある。
ウパンフレット(甲35の1)
上記パンフレットは,原告が平成4年ころに作成使用していたものであり,
これには次のような記載がある(なお,同パンフレットは原告の電話番号の
大阪の市内局番が3桁であるから,これが4桁になった平成11年1月より
前の作成であることは外見から明らかである。)。
(ア)「EAGLESPECIALCOLLECTION」
(イ)「E」を□で囲んだマークの右横に「株式会社イーグルイトガ」
エパンフレット(甲35の2)
上記パンフレットは,原告が平成8年ころに作成使用していたものであり,
これには次のような記載がある。
(ア)装飾文字の「EAGLESuperSelection」
(イ)「EOマーク」の右横に「EAGLE」
(ウ)「株式会社イーグルイトガ」
オカタログ(甲20)
上記カタログは,原告が平成11年ころに作成使用していたものであり,
これには次のような記載がある(なお,原告は,平成14(2002)年こ
ろには「EOマーク」を使用していたが,平成15(2003)年にはこれ
をやめ,「Eマーク」の使用を開始したところ(乙2の10・11),上記
カタログには,「EOマーク」が記載されているから,平成14年以前の作
成であると認められる。)
(ア)「EAGLE」,「EOマーク」の右横に「EAGLE」
(イ)「イーグルオリジナルバッグ」
(ウ)「イーグル独自の自然仕上げ」,「イーグルならではの逸品」,
「イーグルオリジナル加工」
(エ)「イーグルだけが取り扱って」,「TPOに合わせて・・・イーグル
で,お選びください」
カパンフレット(甲21)
上記パンフレットは,原告が平成13年ころから作成使用していたもので
あり,これには次のような記載がある。
(ア)「EAGLE」,「EOマーク」の右横に「EAGLE」
(イ)「イーグルは今花盛り」
(ウ)「特殊素材のみを扱った最高級バッグのイーグルもおかげさまで30
年。」
キパンフレット(甲23)
上記パンフレットは,平成15年ころから作成使用されているものであり,
これには次のような記載がある(なお,上記カ(ウ)の記載と下記(ウ)の記載
が類似していることから,甲第21号証のパンフレットに続くものとして作
成されたものと認められる。)。
(ア)「EAGLEBAGGALLERY」(表紙)
(イ)Eマーク付き原告表示(表紙下部,裏表紙,裏面左下)
(ウ)「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとしておよそ30年。」
(裏面左)
(エ)「EAGLELeatherCollection」(裏面上)
(オ)「イーグルが扱う各素材は条約に沿った正規の手続きで輸入しており
ます。」(裏面中下)
(カ)「イーグルオリジナルブランド」(裏面右上)
クパンフレット(甲6)
上記パンフレットは,原告が平成16年2月ころ作成したが,商品内容の
変更に伴い1年後に使用を中止したものである。同パンフレットには,次の
ような記載がある。
(ア)Eマーク付き原告表示(表紙上部)
(イ)「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとしておよそ30年。」
(表紙下部)
(ウ)「Eマーク」(裏面上部)
(エ)「EAGLE」の下に「EXCELLENTBAGCOMPAN
Y」(裏面下部)
ケカタログ(甲7)
上記カタログは,原告が平成15年ころ作成し,現在も使用しているもの
である。同カタログには,次のような記載がある。
(ア)「EAGLEBAGGALLERY」(表紙を含む各頁)
(イ)「株式会社イーグルは,特殊皮革素材のみを取り扱ったバッグの専門
メーカーとしておよそ30年」(4頁)
(ウ)Eマーク付き原告表示(表紙下部,5頁の目次の上部)
(エ)Eマーク付き原告表示の下に「EXCELLENTBAGCOM
PANY」(裏表紙)
(オ)「株式会社イーグルイトガ」(裏表紙下部)
(2)以上のとおり,被告が設立された平成17年6月7日までに,「イーグ
ル」及び「EAGLE」という商品等表示(本件表示)が,原告のパンフレッ
ト,カタログ及び原告商品において使用されていたことが認められる。
(3)被告は,原告は「EAGLE」及び「イーグル」を単独で使用しているわ
けではないと主張するが,これら表示が単独で使用されている例のあることは,
上記(1)のとおりである。
被告は,識別力ある表示として使用されているのはEマーク付き原告表示で
あると主張する。しかし,Eマーク付き原告表示は,「EAGLE」に「E
マーク」が併せて使用されているにすぎず,不可分一体のものではない。した
がって,需要者は,Eマーク付き原告表示のうち,本件表示部分を独立して認
識し得るから,前記認定の「EAGLE」及び「イーグル」の各表示が商品等
表示としての識別性を失うものではない。
(4)したがって,本件表示は,いずれも不正競争防止法2条1項1号所定の
「商品等表示」に該当する。
2争点2(本件表示の帰属主体)について
(1)被告は,「EAGLE」又は「イーグル」が単独で使用されている例とし
て原告が挙げるもののうち,「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとし
て」(甲6)等の記載における「イーグル」は,オサダの略称として使用さ…
れている,オサダは従前から「イーグルオサダ」のブランドで自社製品を販売
してきたなどとして,本件表示は原告商品を表示するものではない旨主張する
ので,以下検討する。
(2)証拠(甲3,33の1ないし4,34,乙2の5ないし9,4の1・2,
6,7)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
アオサダ
オサダは,古くから袋物の製造を手がけていた「長田商店」が,昭和47
年12月に法人化したものであり,ハンドバッグ等,爬虫類皮革製品の製造
卸売業を営んでいる。
平成18年4月現在,オサダは,代表取締役を含め役員5名,従業員は正
社員4名及びパート社員2名で構成されている。オサダの取引先(オサダ製
品の販売業者)は,原被告を含め,大小併せて数十社ある。
オサダの関連会社である長田商事株式会社は,イタリアの高級バッグメー
カーとして著名なディーニ社から,同社製のバッグの日本における独占的な
輸入代理店としての地位を与えられている。
オサダは,爬虫類皮革業者の全国団体である全日本爬虫類皮革産業協同組
合(JRA)に登録し(登録番号191),JRAの織りネームやJRA
タッグ(ワシントン条約に基づき適法に輸入された皮革を用いた日本製品で
あることを示すタッグ)を自社製品に取り付け,販売業者に提供している。
イ原告とオサダの関係
原告代表者P1は,昭和58年ころまでオサダ製品の販売業者の社員で
あったが,当時,日本の婦人ハンドバッグ業界においては,国産ブランドは
ほとんど育っておらず,各小売店が製造業者に作らせたものを自社の商品と
して,自社の名称で販売するのが大半であった。P1は,品質の優れている
オサダ製品を国産ブランド商品に育て上げようと考え,昭和58年にオサダ
の商号「株式会社イーグル・オサダ」から「イーグル」を取り,これに自身
の氏である「イトガ」を併記した商号「株式会社イーグル・イトガ」により,
原告を設立した。原告の販売するバッグは,上記長田商事株式会社の輸入に
係るディーニ社製のものが約1%ある他は,すべてオサダ製品である。
ウ原告の販売方法
原告は,店舗を保有せず,また,平成13年までは独自の営業社員を有せ
ず,外務員に販売を委託する方法を採用していた。すなわち,原告は,呉服
・婦人服・寝具・宝飾・時計・図書など異業種の地方問屋・小売店と提携し,
外務員は,これら問屋・小売店が主催する展示会や店舗催事に参加して販売
を行い,提携先企業との交渉や販売活動も各外務員が行っていた。原告は,
平成13年に「直轄営業部」を設置し,それ以降は,自社営業社員をインス
トラクターとして上記展示会や店舗催事に同席させ,また,小売店の顧客に
対する外商販売に同インストラクターを同行させる方式も併せて採用してい
る。原告の提携先企業は170社以上に達しており,北は北海道から南は九
州までほぼ全都道府県に拡がっている。
エオサダの売上に占める原告の割合
オサダは小売販売を行っておらず,被告がオサダ製品を扱うようになるま
では,原告以外の取引先(販売先)は,すべて地域販売を行う小売業者で
あった。
平成9年以降のオサダの年間総売上に占める原告の仕入額の割合は,およ
そ次のとおりであった。
年度①原告仕入額②オサダ総売上額比率(①/②)
(百万円)(百万円)
平成933072046%
平成1020663033%
平成1119659033%
平成1223553044%
平成1317758031%
平成1418855034%
平成1515448032%
平成1618845042%
オ原告商品とオサダ製品との関係
原告は,オサダから仕入れたオサダ製品をそのまま販売するほか,オサダ
にサンプルを作製させ,その中から取扱商品を選び,これを「止め型」商品
として「イーグル」ブランドで販売していた。この種の「止め型」商品は,
ハンドバッグ類を含め,ファッション業界において珍しいものではなく,製
造業者は,各販売業者の「止め型」商品については,他の販売業者に対して
これを販売することはないものとされている。
ところが,原告の「止め型」商品については,過去にこれが市場に出回る
ことがあったため,原告は,平成13年ころ,専属デザイナーにより原告独
自のデザイン開発,すなわち原告の「自主企画」商品の開発に取り組むよう
になり,原告において新製品をデザインし,サンプルを作製し,製造工程を
改良して,製作指導を行い,そのうえでオサダが同製品を製造する方法を採
用したこともあった。しかし,原告は,その後この方法によるデザイン開発
は取り止めた。
原告は,これら「止め型」商品及び「自主企画」商品を「イーグル」ブラ
ンドで販売し,オサダとは別に独自にJRAに登録し(登録番号337番),
これら「イーグル」ブランドの原告商品にJRAタッグを付している。
カオサダは,過去に,茨城や東京で原告の取り扱う商品と同一の製品を他の
小売店に納品したことがあったが,その際,原告から抗議を受けて,販売先
からこれを回収したことがあった。また,過去に,仙台では,小売店が
「イーグル」ブランドによる販売キャンペーンを行ったことがあり,オサダ
が介入してこれを中止させたこともあった。
キオサダは,原告商品については「EAGLE」のロゴ入りの商品プレート
を付してこれを原告に提供しているが,少なくとも原告が本件表示を自らの
負担でパンフレット等に付し始めたころ(証拠上認定できるのは前示のとお
り平成4年ころ)以降,平成17年の被告設立までは,原告以外の他の取引
先に対して販売する製品には,同プレートを付していたものがあったとは認
められない(なお,上記カの事例の製品に同プレートが付されていた可能性
はあるが,明らかではない。)。
クオサダは,「世界の一流品大図鑑」の平成8年(1996)版から平成1
3(2001)年版にかけて,ディーニ社の「SOLEAGENT」とし
て掲載されているが,その表示は「EOマーク」と「EAGLEOSAD
ACO.,LTD」であり,現在のオサダのロゴマークは,「OSADA」と
「EAGLE」の組合せからなり,「EAGLE」の表示は,「OSAD
A」の表示の下に小さく,添えられるように配置されている。すなわち,オ
サダは,自社を単に「EAGLE」「イーグル」と表示したことがあるとは
認められない。(乙2の5ないし9)
ケ「世界の一流品大図鑑」では,平成8(1996)年版から平成13(2
001)年版にかけて,ディーニ社製品の紹介には,「SOLEAGEN
T」のオサダのほか,発売元として原告が記載されていたが,平成14年
(2002)版には,発売元として,「EOマーク」と「EAGLE」を表
示して原告が,平成15(2003)年版から平成17(2005)年版に
かけては,発売元としてEマーク付き原告表示とともに原告が,それぞれ記
載されている(甲15,乙2の5ないし12)。このような変更が,オサダ
が知らない間に行われたとは考えられないから,少なくとも平成14年ころ
以降,オサダは,原告が「EOマーク」と「EAGLE」,又はEマーク付
き原告表示を使用することを容認していたものと推認される。
コ前記1(1)認定に用いた原告のパンフレット,カタログ及び原告商品にお
いて,オサダの社名は,全く表示されていない。
(3)上記認定事実を前提として,前記1(1)認定に係る本件表示の意味を検討す
る。
ア前記1(1)のうち,オ(エ)は,メーカー又は販売者を指すもの,キ(ウ)
(オ),ク(イ),ケ(イ)はメーカーを指すものと解されるが,それ以外は,
「イーグル」ブランドの商品表示と理解する方が自然である。
上記メーカーが何を指すか検討する。例えば,前記1(1)ケ(イ)のカタロ
グ(甲7)4頁における「株式会社イーグル」は,同カタログ裏表紙下部の
「株式会社イーグルイトガ」とは社名が異なるから,販売者である原告と関
連の深い「株式会社イーグル」というメーカーが存在するという趣旨に読む
のが自然なように思われる。また,その「株式会社イーグルは,特殊皮革素
材のみを取り扱ったバッグの専門メーカーとしておよそ30年」は,同カタ
ログが平成15(2003)年ころの作成で,オサダの設立が昭和47(1
972)年,原告の設立が昭和58(1983)年であることからして,こ
の「株式会社イーグル」をオサダと考える方が整合性がある。したがって,
上記メーカーは,オサダを指す可能性がある。
しかし,他方で,「イーグル」ブランドは,少なくとも平成4年以降被告
が設立されるまでは,オサダが製造し原告が販売しているもの(原告商品)
のみであった。そして,本件表示が記載された原告のパンフレット,カタロ
グ及び原告商品において,オサダの社名は,全く表示されておらず,オサダ
は,自ら「イーグル」の営業表示を用いたこともなく,原告が「イーグル」
の称呼の生じる表示である「EOマーク」と「EAGLE」,又はEマーク
付き原告表示を使用することを容認していたのである。
以上の事実によれば,仮に,前記1(1)オ(エ),キ(ウ)(オ),ク(イ),ケ
(イ)の「イーグル」をメーカーであるオサダを指すものと解したとしても,
「イーグル」ブランド商品,すなわち商品表示である「EAGLE」「イー
グル」(本件表示)は,原告商品のメーカーであるオサダと,販売者である
原告の共同の商品表示として使用されていたものというべきである。
ちなみに,前記1(1)ア認定のとおり,原告商品に平成8年から平成15
年まで付されていた商品プレートには「EAGLE」のほかに「TOKYO
・OSAKA」の記載があるが,証拠(甲32)及び弁論の全趣旨によれば,
オサダは,本店(東京都豊島区)以外に事業所を有しておらず,原告は,東
京に事業所を有していないことが認められる。そうすると,上記「TOKY
O・OSAKA」は,オサダ(東京)・原告(大阪)を指すようにも思われ
るところである。
イ乙第7号証には,①オサダは,昭和47年の設立当初より「Eagle」
のロゴ入りプレートが付された「イーグル」ブランド商品を販売している,
②前記(2)カの「イーグル」ブランドの他社からの商品引き上げ等は,販売
価格が原告のそれよりも安かったことによるトラブルであって,「イーグ
ル」ブランドを他社に販売しないという約束が原告との間にあったわけでは
ないとの記載がある。しかし,①は,仮にそうだとしても,その販売量も不
明であり,しかも,少なくとも平成4年ころ平成17年までは,原告商品以
外に「イーグル」ブランドは存在しなかったのであるから,そのころに用い
られた本件表示が販売者である原告をも出所として示しているとする妨げと
なるものではない。また,②も,仮にそうだとしても,前記(2)カの「イー
グル」ブランドの製品は,結局のところ他社からオサダが引き上げてしまっ
たのであるから,理由はどうであれ,原告商品以外に「イーグル」ブランド
が存在しなかったことに変わりはなく,前記(3)アの認定に反するものでは
ない。
(4)なお,営業表示としての本件表示については,後記のとおり周知性が認め
られないから,その帰属主体についてはここでは判断しない。
3争点3(周知性)について
(1)証拠(甲14の1ないし12,27ないし33)及び弁論の全趣旨によれ
ば,次の事実が認められる。
ア原告商品及び被告商品の市場
(ア)原告商品の販売先
原告は,呉服・婦人服・寝具・宝飾・時計・図書など異業種の地方問屋
・小売店と提携して,これら異業種の業者に対して原告商品を卸売してお
り,原告商品の販売先は,これら異業種の地方問屋・小売店である。
(イ)被告商品の販売先
被告商品の販売先も,上記異業種の地方問屋・小売店である。
(ウ)したがって,本件表示の周知性は,上記異業種の地方問屋・小売店に
ついて判断されるべきである(以下,原告商品と被告商品が対象とする市
場を「本件市場」という。)。なお,原告商品と被告商品の最終需要者は,
中高年の富裕層である。
イ原告の取引先(提携先企業)
原告の取引先である異業種の地方問屋・小売店は,北は北海道から南は九
州まで,ほぼ全都道府県に拡がっており,その数は,170社以上に上る。
ウ原告商品の売上げ
(ア)原告の売上げは,平成5年は約2億9000万円,平成6年は約3億
1000万円,平成7年は約4億円,平成8年は約5億5000万円で
あった。このうち99%近くが原告商品の売上げである。
(イ)平成9年以降の原告の売上実績及び売上個数の推移は,次のとおりで
ある(1万円未満四捨五入)。
年総売上高売上個数直轄営業部売上高
平成9年9億2661万円9231個−
平成10年7億0817万円7024個−
平成11年6億7315万円7049個−
平成12年7億2920万円8730個−
平成13年5億9821万円7636個5376万円
平成14年5億6873万円7048個1億1860万円
平成15年4億7687万円4999個1億2029万円
平成16年4億9004万円5218個1億0984万円
平成17年2億5675万円3503個1億1860万円
なお,「総売上高」とは,提携先企業に対する卸売総額であり,消費者
に対する小売総額ではない。「売上個数」には,メインとなるハンドバッ
グの外,小物類も若干含まれている。
(ウ)上記認定によれば,原告商品の売上高は,近年低下傾向にあり,特に
平成17年は売上が相当落ち込んでいるものの,平成17年1年間を除く
と,平成8年以降は,年間金額にして5億円前後,個数にして5000個
以上が販売されていることが認められる。
エ本件表示の使用状況
前記1(1)のうち,商品プレートは,原告商品すべてに付されているもの
である。また,パンフレットは提携先企業から原告商品の最終需要者向けに
発送されるものであって,取引者需要者に広く頒布され,カタログは,提携
先企業及びその見込み客に広く頒布されて,いずれも原告商品の購入等を検
討してもらうものである。
(2)商品表示としての周知性の有無
ア上記認定事実によれば,原告の取引先(提携先企業)である地方問屋・小
売店は170社以上に上るところ,原告は,各業種におけるその割合につい
て,呉服業界では問屋の約9割,小売店の約8割,寝装卸業界及び教科書卸
業界では6割,時計宝石卸業界では4割と主張する。
原告の主張する数字を裏付ける的確な証拠はない。しかし,原告商品及び
被告商品が特殊皮革素材の婦人用高級ハンドバッグで,その売れ筋商品の価
格帯が20万円台から90万円台であり,これら商品の最終需要者は中高年
の富裕層であることからすると,本件市場は,極めて限定されたものという
ことができる。したがって,原告の取引先には,上記各業種に属するすべて
の業者が含まれるのではなく,上記各業種に属する業者の中でも,原告商品
の最終需要者たる中高年の富裕層を顧客とする業者に限られる。このことに
加えて,原告の取引先がほぼ全都道府県に存在することを併せ考えると,原
告の主張する上記数字は,大仰な数字とは言い切れない。
しかも,上記は,原告が取引をした相手にすぎず,販売員等が見込客とし
て営業をかけたが,取引が成立しなかった相手は含まれていないが,ほぼ全
都道府県の170社と契約を成立させようとすると,営業をかけた数は,更
に相当多いものと推測される。また,取引先・見込客等の同業者間で,原告
商品やそのブランド(「イーグル」ブランド)についての情報が流通してい
ることも十分に考えられるところである。
そうすると,原告商品は,本件市場において,業種によっては4割から8,
9割といっても大仰とは言い切れないような数の業者を取引先とし,原告は
これら取引先に対し,少なくとも年間5億円前後,個数にして5000個以
上の商品プレート付きの商品を10年近くにわたって販売しており,これら
業者より更に相当多くの業者にパンフレット,カタログが配布されているの
であるから,本件表示は,被告が設立された平成17年6月7日までに,本
件市場において,原告商品の商品表示として周知性を有しており,その周知
性は現在まで継続していると認められる。そして,前示のとおり,原告商品
の商品表示たる本件表示は,オサダと原告の両者の出所を示すものとして使
用されていたから,本件表示は,オサダと原告の商品等表示として需要者の
間に広く認識されているものというべきである。
イ被告は,①原告が主張する「潜在的提携先」なる概念が不明である,②原
告が自己の主要取引業者として掲げる一覧表(甲27)では,原告の取引先
とされた業者との取引期間,取引数量が明らかでなく,また,既に原告との
取引を終えた者等も含まれているし,各業界の取引者における周知性を示す
割合として原告が主張する数字は大仰なものである,③原告商品の売上実績
は損益計算書(甲14の各枝番)を根拠とするものであるが,そこには,ハ
ンドバッグ以外の小物類の売上も含まれているし,外務員の受け取るべき利
益も含まれており,原告の販売実績の実態を示すものではない旨主張する。
しかし,被告の主張は採用できない。その理由は次のとおりである。
(ア)①について
①については,「潜在的提携先」なる概念を用いずとも,前示のとおり,
原告商品及び被告商品が対象とする市場を観念することがでる。
(イ)②について
甲第27号証で原告の取引先とされる業者の中に,取引期間が短く,取
引数量の少ない業者や,既に原告との取引を終えた者等が含まれていると
しても,本件表示の使用状況からすれば,本件表示に周知性があるとの前
記判断を左右するものではない。
(ウ)③について
周知性の有無は,原告商品の売上高又は原告の利益の大小に直接関わる
ものではなく,売上高から推認される取引回数ないし取引機会の頻度に関
わるものである。したがって,前記認定の原告商品の売上高に小物類のそ
れが含まれており(なお,小物類の価格は,ハンドバッグに比べれば,格
段に低額であると考えられ,売上高の大半はハンドバッグによるものであ
ることが容易に推認される。),また,売上高に外務員の受け取るべき利
益が含まれているとしても,そのことによって本件表示に周知性があると
の前記判断を左右するものではない。
(3)営業表示としての周知性の有無
ア証拠(甲15,乙2の10ないし12)によれば,原告は,「世界の一流
品大図鑑」の平成14(2002)年版から平成17(2005)年版に,
「EOマーク」と「EAGLE」,又はEマーク付き原告表示を,原告の営
業表示として使用していたことが認められる。
イしかし,前記1(1)ケ(イ)のカタログ(甲7)4頁においてメーカーとさ
れている「株式会社イーグル」は,オサダを指す可能性があることは前示の
とおりであり,このことからみて,メーカー(オサダ)を指すか,又はその
可能性がある前記1(1)オ(エ),キ(ウ)(オ),ク(イ),ケ(イ)の「イーグ
ル」について,原告の営業表示として使用されている立証があったとするこ
とはできない。また,前記1(1)の本件表示の中には,営業表示の意味も含
まれているように思われるものもないではないが,それが原告を指すのかオ
サダを指すのかが明確でない。
ウ甲第8ないし第10号証,第12,第13号証には,Eマーク付き原告表
示が使用されている。しかし,これらは,「イーグル」ブランドを表示する
商品表示とも解されるうえ,使用開始時期も明らかでなく,そのために頒布
数も不明であって,本件表示が原告の営業表示として,周知性を認めるに足
りるほど使用されていたと認定するに足りるものではない。
また,証拠(甲24)によれば,平成18年8月22日の原告のホーム
ページにおいて,「イーグルは,このように考えています。」との記載があ
ることが認められる。しかし,弁論の全趣旨によれば,原告のホームページ
は,平成13年に開設されたものの,毎年更新しているというのであるから,
その使用開始時期が明らかではなく,原告の営業表示としての周知性判断の
資料とすることはできない。
エそうだとすると,本件表示が原告の営業を表示するものとして使用されて
いると認められるのは,前記アに掲げた程度であり,期間も短いから,原告
の取引先ないし本件市場の需要者(前記異業種の地方問屋・小売店)おいて,
本件表示が原告の営業表示として広く認識されるに至っていると認定するに
は足りない。
オしたがって,本件表示は,原告の営業を表示するものとしては未だ周知性
を獲得しているとは認められない。
4争点4(類似性の有無)について
(1)本件表示と被告の商号(株式会社イーグル・イチハラ)との類否
本件表示からは,「イーグル」の称呼が生じる。
被告の商号において「株式会社」が商標の要部となり得ないことは明らかで
ある。そして,被告の商号は,「イーグル」と「イチハラ」の間に「・」を挟
んで両者を分離しているから,「・」の前の部分から「イーグル」の称呼を生
じ,全体として,本件表示と類似する。
(2)本件表示と被告文字表示(株式会社イーグルイチハラ)との類否
被告の商号において「株式会社」が商標の要部となり得ないことは前示のと
おりである。そして,「イーグルイチハラ」のうち,「イチハラ」は,よくあ
る氏を連想させる。他方,「イーグル」が原告商品の商品表示としての周知性
を有していることからすれば,本件市場における需要者(前記異業種の地方問
屋・小売店)が被告文字表示に接した場合,「イーグル」に着目し,「イチハ
ラ」は氏であるとみて「イーグル」の称呼を生じる。
このことからすれば,被告文字表示は,本件表示に類似する。
(3)本件表示と,IEマーク付き被告表示及びEIマーク付き被告表示との類

ア被告表示目録1(1)記載の表示は,黒で二段書きにされた「EAGLE」
「ICHIHARA」の文字に対して,「IE」の文字を模した図柄は背景
となっているにすぎず,色も異なる。このため,被告表示目録1(1)記載の
表示は,上記二段書きの上段部分から「イーグル」の称呼を生じる。
このことからすれば,被告表示目録1(1)記載の表示は,全体としてみて
も本件表示に類似するものと認められる。
イ被告表示目録1(2)記載の表示は,二段書きにされた「EAGLE」「I
CHIHARA」の文字に対して,上部に「IE」の文字を模した図柄があ
るものの,上記二段書き部分が「EAGLE」「ICHIHARA」である
のに,図柄部分がなぜ「IE」なのか,両者の関係が明確でないため,必ず
しも全体がひとまとまりとは限らず,図柄部分と文字部分が分離して理解さ
れる余地がある。このことに,「イーグル」が原告商品の商品表示としての
周知性を有していることをも考慮すれば,被告表示目録1(2)記載の表示は,
文字二段書きの上段部分から「イーグル」の称呼を生じるものというべきで
ある。
このことからすれば,被告表示目録1(2)記載の表示は,全体としてみて
も本件表示に類似するものと認められる。
ウ被告表示目録2(1)記載の表示は,二段書きにされた「EAGLE」「I
CHIHARA」の文字に対して,左側に「EI」の文字を模した図柄があ
るものの,両者が不可分一体として理解されるものでもない。このことに,
「イーグル」が原告商品の商品表示としての周知性を有していることをも考
慮すれば,被告表示目録2(1)記載の表示は,文字二段書きの上段部分から
「イーグル」の称呼を生じるものというべきである。
このことからすれば,被告表示目録2(1)記載の表示は,全体としてみて
も本件表示に類似するものと認められる。
エ被告表示目録2(2)記載の表示は,黒で二段書きにされた「EAGLE」
「ICHIHARA」の文字に対して,上部に「EI」の文字を模した図柄
があるものの,色も異なるから,両者が不可分一体として理解されるもので
もない。このことに,「イーグル」が原告商品の商品表示としての周知性を
有していることをも考慮すれば,被告表示目録2(2)記載の表示は,文字二
段書きの上段部分から「イーグル」の称呼を生じるものというべきである。
このことからすれば,被告表示目録2(2)記載の表示は,全体としてみて
も本件表示に類似するものと認められる。
(4)なお,被告は,商標の登録状況を踏まえても本件表示と被告表示が類似し
ないことは明らかであると主張するが,本件においては,2個の商標の表示を
静的かつ形式的に対比して決するのではなく,本件表示が周知であることを始
めとする取引の実情に照らして判断すべきものであるから,商標の類否の判断
と必ずしも一致するものではない。したがって,被告の上記主張は採用できな
い。
5争点5(誤認混同のおそれ)について
前示のとおり,本件表示は,オサダと原告の商品等表示として需要者の間(1)
に広く認識されている。そうすると,被告が,本件市場において,本件表示と
類似する被告表示を使用した場合,本件表示の主体の1人である原告の営業と
被告の営業との間に何らかの関係があるとの誤認混同が生じるおそれがある。
(2)被告は,オサダからオサダ製品の供給を受けてこれを「イーグルイチハ
ラ」として被告が販売する行為は,商品主体の混同を生じさせるものではない
と主張する。
しかし,本件において問題とすべきは,バッグという商品の出所の混同では
なく,営業の混同である。これを敷衍すると,本件表示は,オサダと原告の商
品等表示として需要者の間に広く認識されていることは前示のとおりである。
そして,本件表示の主体が,オサダと原告の製造販売共同体である(両者が別
々に使用することはできない)のか,両者それぞれであるのか(両者が別々に
使用する余地がある)はさておき,そのいずれであるにしても,被告がこれに
類似する表示を使用した場合に,被告の営業と,オサダあるいは原告の営業と
の混同(本訴において問題は原告の営業との混同)を生じさせる。すなわち,
被告が販売している被告商品は,オサダ製品であっても,その営業主体である
被告は,オサダあるいは原告と関係があるわけではなく,単にオサダから製品
を仕入れて販売しているにすぎないのに,営業主体間に関係があるという誤認
混同が生じるおそれがあるのである。
(3)なお,前記2認定の事実からすれば,本件表示について,オサダ又は原告
の一方が,他方の承諾なしに,第三者に対してライセンスする権原があるとは
認めがたいが,オサダからのライセンスについての主張はされていないから,
この点についての認定の必要はない。
6差止めの必要性について
以上によれば,被告に対しては,被告商号の抹消登記手続,被告文字表示の抹
消を命ずるとともに,被告表示の使用の差止めを命ずべき必要性が認められる。
なお,被告が販売しているのは,婦人用高級ハンドバッグ(その他にあるとして
も若干の小物類)のみであるから,被告商号の抹消登記手続を行うことは,不正
競争防止法3条2項にいう「侵害の停止又は予防に必要な行為」に当たるという
べきである。
原告は,本件表示を含む表示一切の使用の差止めを求めるが,本件表示を含む
表示であっても,その記載態様によっては,本件表示に類似しないものも考え得
るところである。このような類似性を欠く表示の使用は,不正競争防止法2条1
項1号に該当しないことは明らかである。そして,被告が,被告表示以外に,本
件表示に類似する表示を使用していると認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件表示を含む表示のうち,被告表示以外の表示については,差
止めの必要性は認められない。
7結論
以上によれば,原告の請求は,主文第1ないし第3項の限度で理由があるから
これを認容し,その余は理由がないからこれを棄却し,主文第2項(表示の抹
消)の仮執行は相当でないから付さないこととして,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官山田知司
裁判官西理香
裁判官村上誠子

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