弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件抗告を棄却する。
2抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
第1申立て
1本件抗告の趣旨
(1)原決定を取り消す。
(2)相手方の申立てを却下する。
(3)申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。
2本件抗告の趣旨に対する答弁
(1)本件抗告を却下する。
(2)抗告費用は抗告人の負担とする。
第2事案の概要
本件は,相手方が,抗告人から,平成19年1月25日付けでα(以下「本件
α」という。)について,同年3月3日9時から16時までの使用承認を受けた
後に,同年2月26日付けで上記使用承認の取消処分(以下「本件取消処分」と
いう。)がされたため,同月27日,本件取消処分の取消しを求める訴え,すな
わち,東京地方裁判所平成19年(行ウ)第131号施設使用許可取消処分取消請
求事件(以下「本件本案事件」という。)を提起した上,本件取消処分により生
ずる重大な損害を避けるため緊急の必要がある旨主張して,行政事件訴訟法25
条2項本文に基づき,本件取消処分につき,効力の停止を求めた事案である。
原審は,相手方の求めた上記申立てについて,本件取消処分の効力を本件本案
事件の判決が確定するまで停止するとして,これを認容した。そこで,抗告人が
これに対して不服を申し立てた。
そのほかの事案の概要は,原決定の事実及び理由欄の「第2事案の概要」に
記載のとおりであるから,これをここに引用する。
また,本件抗告の理由は,抗告人提出の別紙「即時抗告申立書」(写し)の
「第3抗告の理由」に記載のとおりであるが,要旨次のとおり主張した。
(1)本件において,相手方による本件αの使用を認めた場合,相手方が主催す
る集会の開催に反対する者らと集会参加者との間,さらには,一般の公園利用
者との間で混乱が生ずることが客観的事実に照らして具体的に予測され,警察
の警備等によってもこれを防止することが困難であるから,原決定は,行政事
件訴訟法25条4項の「本案について理由がないとみえるとき」の判断及び同
項の本件取消処分の効力停止が「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあ
るとき」の判断を誤ったものである。
(2)本件に関する周囲の関心は極めて高まっており,本件αにおいて本件集会
が開催された場合には,多数の団体が抗議活動のため本件α付近に殺到し,本
件集会参加者との間で混乱が生ずることが抗告人の単なる主観的な予測にとど
まらず,具体的に明らかに予測される。
(3)本件αの収容可能人数は約3000名(疎乙3)であるところ,本件集会
にはこれを大幅に超える約5000名の参加が見込まれており,本件αのある
β公園の出入園は一般に開放されており,本件集会の支持者や反対者が,一般
来園者や本件集会参加者を装って同公園に入園することは容易であるため,本
件集会の際,本件αの収容可能人数を大幅に超過することが明らかに予測され,
さらに,本件集会に反対する団体と本件集会参加者との混乱等が発生した場合
には,あふれかえった入場者が本件αにただ1か所しかない出入口に殺到し,
将棋倒しになるなどの入場者の生命,身体に対する危険を伴う事態が発生する
ことが容易に予測され,警察による警備によってもこの混乱を収束させること
はできず,公園の管理に支障を生じる特別な事情が存在することが明らかであ
る。
したがって,本件集会の開催に伴い,混乱の発生が具体的に明らかに予測さ
れ,警察の警備等によってもこれを防止することが困難であり,また,本件取
消処分について執行停止がされた場合には,公共の福祉に重大な影響が生ずる
おそれがあることも明らかである。
これに対する相手方の意見は,その提出に係る別紙「答弁書」(写し)の「第
2答弁の理由」及び「第3結語」に記載のとおりである。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,相手方がした本件取消処分の効力の停止を求める申立ては,①
「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」(行政事件訴訟法25条2
項本文)に該当し,②「本案について理由がないとみえるとき」(同条4項)
に該当するとまではいえず,③本件取消処分の効力停止が「公共の福祉に重大
な影響を及ぼすおそれがあるとき」(同項)に該当することをうかがわせる疎
明はないから,理由があるものと判断する。その理由は,次のとおり訂正し,
又は付加するほかは,原決定の理由欄の「第3当裁判所の判断」に記載のと
おりであるから,これをここに引用する。
(1)原決定6頁6行目の「わずか3日」を「わずか2日(原決定時には3
日)」に,同7頁15行目の「疎明資料(疎甲5,疎乙1,2)」を「疎明
資料(疎甲5,疎乙1ないし3)」にそれぞれ改める。
(2)原決定7頁18行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「抗告人は,本件αにおいて本件集会が開催された場合には,本件集会に
反対する多数の団体が抗議活動のため本件α付近に殺到し,本件集会参加
者との間で混乱が生ずることが抗告人の単なる主観的な予測にとどまらず,
具体的に明らかに予測され,また,本件αの収容可能人数は約3000名
であるところ,本件集会にはこれを大幅に超える約5000名の参加が見
込まれており,本件αのあるβ公園の出入園は一般に開放されており,本
件集会の支持者や反対者が,一般来園者や本件集会参加者を装って同公園
に入園することは容易であるため,本件集会の際,本件αの収容可能人数
を大幅に超過することが明らかに予測され,さらに,本件集会に反対する
団体と本件集会参加者との混乱等が発生した場合には,あふれかえった入
場者が本件αにただ1か所しかない出入口に殺到し,将棋倒し等の入場者
の生命,身体に対する危険を伴う事態が発生することが容易に予測され,
警察による警備によってもこの混乱を収束させることはできず,公園の管
理に支障を生じる特別な事情が存在することが明らかである旨主張する。
しかしながら,本件αにおいて過去にも4000人を超える集会が行わ
れ,中には1万人を超えるものもあったこと,すなわち,疎甲第10ない
し第18号証によると,最近の平成13年から平成18年の6年間だけで
も4000人を超える集会は少なくとも9回開催され,中には1万人を超
えるものがあったことが認められる(疎甲17,18)。しかも,400
0人を超える集会のテーマも『教育基本法改悪反対』(疎甲10,11),
『有事法制反対』(疎甲12),『イラク派兵反対』(疎甲14,15)
等,国民的関心が強く政治的対立の激しいものも含まれている。こうした
集会も特に大きな混乱が発生したり,集会が中止されたりしたこともうか
がわれない。その上,相手方によれば,本件集会の参加人員は,抗告人が
安全上の理由から使用承認を取り消したこともあり,3000名程度に減
少する見通しであり(疎甲20),相手方において,本件集会の参加人数
を調整することも可能であり,抗告人側から警備等について指示,指導が
あれば全面的に従うとの意見を表明し,本日抗告人側と協議をする予定を
している(疎甲19,20)。
確かに,本件集会の参加人員が本件αの収容可能人数である3000人
を超える可能性は否定できず,また,β公園が一般に開放されている施設
であること,本件αの入り口が1か所しかないことなど警備上の問題点も
あるものの,抗告人において,かかる大規模集会の警備に慣れている警視
庁の専門的な知識,経験のサポートを受けながら,本件αへの入場の人数,
方法等につき,具体的な計画を立て,主催者である相手方にその趣旨を伝
え,励行方を徹底し,もって本件αの公の施設としての使命を十分に達成
できるよう管理権を行使することは可能であり,そうした期待にこたえる
べきであると思料する。相手方が抗告人側の指示に従う旨の意思表明をし
ていることは前記のとおりである。
そもそも,集会の用に供される公の施設である本件αについて,管理者
が正当な理由もないのにその利用を拒否するときは,憲法の保障する集会
の自由の不当な制限につながるおそれがあり,管理者は,当該公の施設の
種類に応じ,また,その規模,構造,設備等を勘案し,公の施設としての
使命を十分に達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであって,
抗告人が本件取消処分の理由に係る事情を理由に本件承認を取り消すこと
ができるのは,本件取消処分の理由に係る事情が,抗告人の主観により予
測されるだけでなく,客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測され
る場合に限られるものと解するのが相当であることは上記のとおりである。
また,主催者が集会を平穏に行おうとしているのに,その集会の目的や主
催者の思想,信条等に反対する者らが,これを実力で阻止し,妨害しよう
として紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むこと
ができるのは,公の施設の利用関係の性質に照らせば,警察の警備等によ
ってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合に限
られるものというべきである(前記最高裁平成8年3月15日第二小法廷
判決・民集50巻3号549頁参照)。本件においては,前記のとおり,
抗告人の事務所等に対し,本件集会に反対する団体等から本件集会の開催
について強硬な抗議されていることが認められるものの,前記のような過
去の大規模な集会の例があること,警視庁の専門的な知識,経験,相手方
の警備当局との連携姿勢等に照らすと,主催者である相手方が本件集会を
平穏に行おうとしているのに,混乱等の事態が生じることが具体的に明ら
かに予測される客観的な事実が存在するとまで認めることはできない。ま
た,本件集会の支持者や反対者らが,一般来園者や本件集会参加者を装っ
て同公園に入園することが容易であることに伴う危険があると主張する点
についても,上記のように抗告人と相手方との協議や既に相手方が警視庁
に本件α付近及びパレードの警備を依頼していることを踏まえた対策を立
てることも可能と思われる。以上のとおり,警察の警備等によってもなお
混乱を防止することができないとまでいうことも困難である。
したがって,本件集会の開催に伴い,混乱の発生が具体的に明らかに予
測され,警察の警備等によってもこれを防止することが困難であるとまで
いうことはできないから,抗告人の上記主張を採用することはできな
い。」
(3)原決定8頁17行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「抗告人は,本件取消処分の効力停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼす
おそれがあることについても,種々の主張をしているが,その理由がない
ことは上記のとおりである。
なお,抗告人は,上記の混乱が生じた場合,本件αに近接する図書館や
飲食店の利用客による施設の利用に対しても,重大な影響が及ぶことが予
想されるとも主張するところ,確かに抗告人主張のような利用客に迷惑が
かかることが予測されるが,本件のような大人数の緊迫した集会の際には,
一般来園者がある程度迷惑を受けることは避け難いところであり,そのた
めに公共の福祉に重大な影響があるとまではいえない。」
2よって,本件取消処分の効力の停止の申立てを認容した原決定は相当であり,
本件抗告は理由がないからこれを棄却し,抗告費用は抗告人に負担させること
として,主文のとおり決定する。
平成19年3月1日
東京高等裁判所第20民事部
裁判長裁判官宮崎公男
裁判官山本博
裁判官今泉秀和

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