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平成23年3月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(ネ)第10043号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所
平成19年(ワ)第19202号)
口頭弁論終結日平成22年12月15日
判決
控訴人(原告)株式会社ユニバーサルエンターテインメント
(旧商号:アルゼ株式会社)
訴訟代理人弁護士若槻哲太郎
松宮浩典
足立高志
被控訴人(被告)株式会社SNKプレイモア
(判決中では「被控訴人SNK」と表記)
訴訟代理人弁護士栗原良扶
清水正憲
宮下尚幸
木村真也
坂井慶
被控訴人(被告)サミー株式会社
(判決中では「被控訴人サミー」と表記)
訴訟代理人弁護士浅岡輝彦
鯉沼希朱
上床竜司
山崎純
牧義行
緒方泉
内藤寿彦
主文
1原判決中被控訴人SNKに関する部分を次のとおり変更する。
(1)被控訴人SNKは,控訴人に対し,200万円及びこれに対する平
成17年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
(2)控訴人の同被控訴人に対するその余の請求を棄却する。
2被控訴人サミーに対する本件控訴を棄却する。
3控訴人の当審における予備的請求を棄却する。
4控訴人と被控訴人SNKとの間に生じた訴訟費用中訴え提起及び控訴
提起の手数料の2000分の1を被控訴人SNKの負担,その余は第1,
2審とも各自の負担とし,控訴人と被控訴人サミーとの間に生じた当審
の訴訟費用は控訴人の負担とする。
5この判決の第1項の(1)は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2(主位的請求)
被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して金20億円及びこれに対する平成17年
3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(予備的請求)
被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して金10億8625万3200円及びこれ
に対する平成15年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3(1)被控訴人SNKは,控訴人に対し,日本経済新聞,朝日新聞,毎日新聞,
讀賣新聞及び産経新聞の各朝刊全国版社会面広告欄並びに株式会社アド・サークル
発行の月刊誌「グリーンべると」,株式会社遊技通信社発行の月刊誌「遊技通信」
及び株式会社アミューズメントプレスジャパン発行の月刊誌「月刊アミューズメン
トジャパン」の各誌上に,原判決別紙2謝罪広告目録1記載の謝罪広告を同目録記
載の条件で1回掲載せよ。
(2)被控訴人サミーは,控訴人に対し,日本経済新聞,朝日新聞,毎日新聞,
讀賣新聞及び産経新聞の各朝刊全国版社会面広告欄並びに株式会社アド・サークル
発行の月刊誌「グリーンべると」,株式会社遊技通信社発行の月刊誌「遊技通信」
及び株式会社アミューズメントプレスジャパン発行の月刊誌「月刊アミューズメン
トジャパン」の各誌上に,原判決別紙3謝罪広告目録2記載の謝罪広告を同目録記
載の条件で1回掲載せよ。
4仮執行宣言
第2事案の概要
1(1)控訴人は,遊戯機器,遊戯機器及びその関連機器の試験研究,企画,開
発,販売,リース,レンタル及び輸出入等を目的とする株式会社である。控訴人は,
原判決後の平成21年11月1日,商号をアルゼ株式会社から現商号に変更した。
(2)被控訴人SNKは,平成13年8月1日に設立された遊戯機器の開発,
製造,賃貸及び輸出入等を目的とする株式会社である。被控訴人SNKが平成15
年7月7日に変更する前の商号は株式会社プレイモアであった。
(3)被控訴人サミーは,パチンコ遊技機,回胴式遊技機,アレンジボール遊
技機,雀球遊技機及び関連機器の製造販売を目的とする株式会社である。
(4)Aは,控訴人の創業者であり代表取締役であったが,平成16年6月に
代表権のない取締役会長となった。その後,平成18年1月18日に代表取締役に
就任し,同年6月29日に退任した。(甲5の16頁,弁論の全趣旨)。
(5)後記本件各書籍の出版当時,Bは被控訴人SNKの取締役会長であり,
Cは被控訴人サミーの代表取締役社長であった。
(6)株式会社鹿砦社は出版物の編集・発行・販売等を目的とする株式会社で
あり,Dは平成63年2月から同社の代表取締役兼編集長であった。(甲5の7
頁)
(7)株式会社鹿砦社は,「アルゼ王国の闇巨大アミューズメント業界の裏
側」(本件書籍1)を平成15年4月10日に,「アルゼ王国はスキャンダルの総
合商社続アルゼ王国の闇」(本件書籍2)を平成15年9月10日に,「アルゼ
王国の崩壊アルゼ王国の闇3」(本件書籍3)を平成16年3月1日に,「アル
ゼ王国地獄への道アルゼ王国の闇4」(本件書籍4)を平成17年3月25日に,
それぞれ出版した(以下,これらの書籍をまとめて「本件各書籍」という。)。
(8)本件各書籍には,それぞれ別紙4−1ないし4−4虚偽事実一覧表の各
記載内容欄の記載(本件各文章)がある。
また,本件書籍1ないし3には,それぞれ次のようなあとがき記載がある。
・本件書籍1の「あとがきにかえて」(181頁以下)
「第二弾では是非ともそこまで突っ込んでいただきたい。その意味では,本書
ほんの〝序章〟にすぎない。第二弾のために(中略)どんどん情報を寄せていただ
きたい。」
・本件書籍2の「エピローグ」(221頁以下)
「本書の更なる続編の課題も出来た。(中略)「アルゼ王国」の<闇>を抉る
われわれの取材活動,出版活動は,本書をバネにこれからも持続してゆくことに変
わりはない。」
・本件書籍3の「エピローグ」(219頁)
「これからも第四弾,第五弾・・・・・・と出していく決意だ。」
2控訴人は,被控訴人らが,鹿砦社と共謀して,同社に控訴人の営業上の信用
を害する虚偽の事実を記載した本件各書籍を出版させ,それを多数買い上げて全国
のパチンコホール,警察署,業界団体,関係者に広く頒布したことは,不正競争防
止法2条1項14号の不正競争行為であって,鹿砦社との共同不法行為に該当する
と主張して,被控訴人ら各自に対し,主位的には本件各書籍による売上げの減少又
は信用毀損に基づく損害賠償金20億円と遅延損害金の支払を,予備的には本件書
籍1及び2の出版・頒布による売上げの減少に基づく損害賠償金10億8625万
3200円と遅延損害金の支払を求めるとともに,不競法14条に基づく謝罪広告
を求めた。
3原審は,本件各書籍の出版行為の主体は鹿砦社であり,被控訴人らが自ら出
版行為を行ったと評価することはできず,被控訴人らの行為は鹿砦社の出版行為を
幇助したにすぎないところ(被控訴人サミーについては本件書籍1の出版行為のみ
を幇助したにとどまる),共同不法行為が成立するには,各行為者の行為が当該不
法行為の成立要件を満たしていることが必要であり(最高裁昭和43年4月23日
第三小法廷判決・民集22巻4号964頁参照),出版行為の主体である鹿砦社は
控訴人と競争関係にはなく同社に不競法違反が成立しない以上,被控訴人らは不競
法違反とはならない鹿砦社の出版行為の共同行為者とみなされるにすぎないから,
不競法違反の共同不法行為は成立しない,本件各書籍の頒布行為は被控訴人ら及び
鹿砦社が共同して行ったものであるが(被控訴人サミーについては本件書籍1の頒
布行為を行ったにとどまる),実際に頒布行為を行った鹿砦社に不競法違反を理由
とする不法行為が成立しない以上,被控訴人らが鹿砦社の頒布行為に加担しこれを
共同して行ったとしても,不競法違反とはならない行為を共同して行ったにすぎず,
不競法違反を理由とする共同不法行為は成立しないなどとして,控訴人の請求を棄
却した。
争点及び当事者双方の原審主張は,原判決「事実及び理由中」の「第2事案の
概要」の1∼3に記載のとおりである。なお,控訴人は当審において,民法上の共
同不法行為に基づく請求を予備的に追加した。
第3当審における控訴人の主張
1被控訴人らの加害行為
(1)被控訴人らは,本件各書籍という一連のシリーズを通じて控訴人に対する
加害行為を行っているが,これを項目ごとに整理して主張すると,以下のとおりで
ある。
①出版要請
被控訴人SNKは,控訴人を誹謗中傷した書籍を広く流布させて控訴人に打撃を
与えるため,自ら鹿砦社及びDに対し,本件書籍1の出版を強く要請した。
②情報提供及び内容確認
被控訴人SNKは,本件書籍1を作成・出版するため,鹿砦社のDと何度も面談
し,控訴人との訴訟やこれまでの経緯などの全情報を鹿砦社に提供した。また,鹿
砦社から本件書籍1の原稿を受け取った被控訴人SNKは,原稿の全面改訂ともい
える改訂を行い,これにより本件書籍1の出版時期の見直しが行われた。そして,
被控訴人SNKが修正後の原稿を再度確認し出版を許可したことによって本件書籍
1が出版されるに至った。
このような被控訴人SNKによる情報提供は,本件各書籍出版の不可欠の前提で
あり,被控訴人SNKの関与なくして一連の出版はあり得なかった。
③被控訴人SNKによる被控訴人サミーの勧誘
被控訴人SNKは,本件書籍1等の問題を自己の問題にとどめず,被控訴人サミ
ーを勧誘した。
④全体構想の構築等
被控訴人SNKから勧誘を受けた被控訴人サミーは,その場で「サミーで500
0冊買い取る。」,「全国のパチンコホールに配ろう。」,「名簿を送るからそこ
に配ってくれ。」などと述べ,強い意気込みをみせるとともに,被控訴人らが買い
取った各書籍を全国のパチンコホールにばら撒くという全体の構想や,その送付先
を被控訴人サミーが提供するという具体的手段を提案した。
⑤購入約束
本件書籍1の出版につき,被控訴人SNKは3000冊を,被控訴人サミーは5
000冊の買取を約束した。そして,被控訴人らによるこれらの購入約束があり,
採算の裏付けがなされたことで,鹿砦社はより活発に本件各書籍の出版行為に突き
進んだ。
⑥送付先名簿の提供
被控訴人サミーは,前記④の構想を実際に実現すべく,平成15年3月ころ,全
国のパチンコホールの名称や住所,各都道府県警の生活安全関係部署の住所など合
計4419か所の送付先を記載した名簿を提供した。
⑦書籍の買取り及び無償交付
被控訴人らは,鹿砦社を通じて全国のパチンコホール等に本件各書籍を送付する
ため,次のとおり買い取るとともに,鹿砦社に対し,本件名簿の送付先にこれらを
無償で送付するよう指示した。
タイトル総発行部数買取部数
本件書籍11万3500SNK:3000
サミー:5000
本件書籍21万2000SNK:8000
本件書籍31万5000SNK:1万
本件書籍4不明SNK:4000
被控訴人らは,このようにして,鹿砦社を金銭面で全面的にバックアップした。
また,本件書籍1等の一連の書籍は無償で交付されたからこそ,広く4419か所
のパチンコホール等が目にすることになった。
⑧隠蔽行為
被控訴人らは,本件各書籍の買取りを行うにあたり,わざわざ別名目の費用に上
乗せをして支払をしたり(例えば本件書籍1に関する被控訴人サミーから被控訴人
SNKへの支払),被控訴人SNKの関連会社から取引先である株式会社ラブロス
経由によって鹿砦社への支払を行うなどして(例えば,同書籍に対する被控訴人S
NKから鹿砦社への支払),不正行為の隠蔽を図った。
⑨ラブロス手数料相当額の追加支払
被控訴人SNKは,単に本件各書籍の買い取りを行うだけではなく,鹿砦社がラ
ブロスに中間搾取された手数料相当額を追加で支払った。被控訴人SNKは,かか
るイレギュラーな金銭支出までして鹿砦社を支援し,本件各書籍のばら撒きを行い
たかったということであり,被控訴人SNKによる積極的加害意思は甚だしい。
⑩鹿砦社の弁護士費用の負担
被控訴人SNKは,控訴人の鹿砦社に対する本件書籍2に関する民事訴訟(別件
名誉毀損訴訟)の弁護士費用(合計1925万円)を負担した。すなわち,控訴人が
鹿砦社らに対して別件名誉毀損訴訟を提起したのは平成15年9月2日であるが,
第3弾の本件書籍3が企画されたのは平成15年9月ころ,第4弾の本件書籍4が
出版されたのは平成16年3月であり,鹿砦社としては,控訴人から民事訴訟を提
起されながら,あえて第3弾である本件書籍3,第4弾である本件書籍4を出版し
た。そして,鹿砦社が本件書籍3,本件書籍4にて意図的な加害行為に及んだのは,
被控訴人SNKが合計1925万円にものぼる鹿砦社の弁護士費用を負担し,続編
の出版を実質的に唆したことに起因する。通常,外部第三者の弁護士費用を負担す
ることはあり得ず,かかる行為は,被控訴人SNKが鹿砦社と強い共同不法行為関
係にあったことを裏付ける事実である。
(2)以上のとおり,被控訴人らは,いわば鹿砦社のスポンサーとして,また,
単なるスポンサーとしての金銭的支援を遥かに超える多数の重大な役割を果たし,
本件書籍1から本件書籍4の一連のシリーズを通じて控訴人に損害を与えた。
2被控訴人らには不競法違反が成立する
原判決は,「本件書籍1の頒布行為は,被控訴人ら及び鹿砦社が客観的に関連し
共同して行ったものと認められる」(39頁)として,被控訴人らと鹿砦社の客観
的関連性を認定しながら,他方で「鹿砦社は,控訴人と競争関係にあるものではな
い(当事者間に争いはない。)から,同社に不競法違反が成立しないことは明らか
である」(36頁),「出版行為の主体である鹿砦社に不競法違反が成立しない以
上,被控訴人らは,不競法違反とはならない鹿砦社の出版行為の共同行為者とみな
されるにすぎないから,不競法違反の共同不法行為が成立すると認めることはでき
ない」(37頁)として,被控訴人ら及び鹿砦社との不競法違反の共同不法行為の
成立を否定している。
しかし,原判決によれば,他人と競争関係にある者が競争関係のない第三者を利
用して他人の営業上の信用を害する虚偽事実の告知等を行った場合,不競法違反の
責任を免れることになるが,これは明らかに不合理である。
本件において,本件各書籍を出版し,全国のパチンコホール等に直接頒布したの
は鹿砦社である。しかし,前記のとおり,被控訴人らは,いわば鹿砦社のスポンサ
ーとして,また,単なるスポンサーとしての金銭的支援を遥かに超える多数の重大
な役割を果たして,本件書籍1∼4の一連のシリーズを通じて控訴人に損害を与え
たものである。よって,本件においては,被控訴人らの行為は単なる幇助にとどま
るものではなく,刑法的にいえば「共同正犯」に相当する関係にあるというべきで
ある。
3不法行為の個数
本件では,平成15年4月に第1弾である本件書籍1が出版され,その続編とし
て同年9月10日に第2弾である本件書籍2,平成16年3月1日に第3弾である
本件書籍3,平成17年3月25日に第4弾である本件書籍4が出版されているが,
第2弾ないし第4弾に「続アルゼ王国の闇」「アルゼ王国の闇3」「アルゼ王国の
闇4」との副題が付されていること,書籍の内容,外観及び形状から,これらの書
籍が一連のシリーズ出版であることは明白である。
そして,これらのシリーズ出版は,①いずれも控訴人に対する加害意思のもとに
出版,配布がなされていること,②いずれも被控訴人サミーが提供した名簿に基づ
く流通経路に沿って,同一の送付先に頒布されていること,③1冊1400円ほど
の価値を有しながら,いずれも無償交付されていること,④いずれも被控訴人らに
よる買取りが行われていること,⑤ほぼ同様の代金支払経路による支払がなされて
いること,⑥関係当事者がいずれも同一であること,⑦被控訴人SNKが,控訴人
の鹿砦社に対する民事訴訟における鹿砦社の弁護士費用まで肩代わりし,訴訟提起
後に企画出版された,本件書籍3,本件書籍4の出版を支援,助長していること,
⑧これらを総合するに,第1弾の「アルゼ王国の闇」で確立された諸体制が利用さ
れ,これを基盤とし,当初形成された流れにのって各続編が出版,流通したこと,
などからすれば,本件書籍1∼4の各出版を巡る不法行為は,一連の不法行為とみ
るべきである。
4民法719条に基づく不法行為
共同不法行為が成立するためには,権利侵害が客観的に関連し共同してなされれ
ば足りるところ(最高裁昭和32年3月26日第三小法廷判決・民集11巻3号5
43頁),前記の事実経緯に照らせば,少なくとも本件において鹿砦社及び被控訴
人らの間にかかる関連性が認められることは明らかであり,原審判決も,本件書籍
1は「被告ら及び鹿砦社が客観的に関連し共同して行ったものと認められる」と判
断している(39頁)。したがって,被控訴人らには,少なくとも,民法第719
条に基づく共同不法行為が成立する。
なお,上記主張は,不競法違反の主張との関係では予備的請求の根拠とする。
5消滅時効は成立しない
(1)被控訴人SNKの平成15年7月を起算点とする消滅時効の主張に対し
本件で権利行使が可能となったのは,平成18年10月2日,控訴人がDに関す
る刑事事件記録の謄写を申請し,これを控訴人が受領した日以降であって,被控訴
人らに対する不法行為の消滅時効は同時点から進行する。よって上記告訴状作成時
(平成15年7月)を起算点とする消滅時効は成立していない。
(2)民法上の不法行為責任に関する消滅時効の主張(平成18年8月起算の消
滅時効)に対し
本件において,不競法に基づく損害賠償請求と民法に基づく損害賠償請求の両請
求は,ともに本件各書籍の出版及びこれに対する被控訴人らの関与という全く同一
の事実を原因として請求を行うものであるから,基本的な請求原因事実は同一であ
り,また,控訴人が被った損害を請求するという点で経済的にも同一の給付を目的
とする関係にある。そして,民法に基づく損害賠償請請求権は,不競法に基づく損
害賠償請求を求める訴えの提起により,同訴訟の係属中は,民法に基づく損害賠償
請求を求める権利行使の意思が継続的に表示されているものといえ,同損害賠償請
求権につき催告が継続していたのであり,控訴人が本件口頭弁論期日において,民
法に基づく損害賠償請求を追加したことにより,右請求権の消滅時効につき中断の
効力が確定的に生じたものといえる。
よって,民法に基づく損害賠償請請求権は時効消滅していない。
第4当審における被控訴人SNKの主張
1「被控訴人らの加害行為」に対し
(1)鹿砦社が本件書籍1を企画・出版するにつき,被控訴人SNKの関係者
(B,E)が鹿砦社からの取材を受け,その後,原稿段階で取材を受けた事項に関
する記載内容の正確性について確認する程度のことは行ったが,被控訴人SNK及
びその関係者が,それ以上,本件各書籍の企画・出版に関わったことはない。
控訴人は,被控訴人SNKが鹿砦社のDに本件各書籍の出版を強く要請したかの
ように主張するが,そのような事実はない。本件各書籍の企画・出版行為は,出版
社である鹿砦社自らの責任と判断の下で行われたものである。
(2)被控訴人SNKは,鹿砦社が出版した本件各書籍をそれぞれ買い取って業
界の監督官庁である各都道府県警察本部の生活安全部署やパチンコホール等へ送付
し(出版社から直接送付させ)たことはある。しかし,本件各書籍は,控訴人につ
いて強い関心を持つようになった鹿砦社のDが独自の調査ないし取材を重ねて作成
されたもので,鹿砦社の責任において出版され,単行本として一般の書店の店頭に
並べられ市販された書物である。被控訴人SNKは,本件各書籍がこのような趣旨
の一般刊行物であるとの認識の下で,本件各書籍の発行部数の一部を購入し,これ
らを関係先に送付することを鹿砦社に依頼したものにすぎない。被控訴人SNKが
本件各書籍を関係先に送付したのは,株式会社エス・エヌ・ケイ(旧SNK)が民
事再生申立てから破産により消滅するに至るまでの控訴人やAの不公正な行為を広
く関係者に知らせて被控訴人SNKをはじめとする旧SNKの従業員その他関係者
の名誉を回復するためと(上記のような経緯に加えて,当時,業界において,被控
訴人SNKが旧SNKを計画倒産させてその資金を流用して会社を立ち上げ,また
旧SNK破産管財人と共謀して不正に知的財産権を取得したという噂が流布されて
いたうえ,本件書籍1が出版されたころには,控訴人が被控訴人SNKの役員等に
対して旧SNKを計画倒産させたとして50億円の損害賠償請求並びに被控訴人S
NK及び旧SNK破産管財人に対して不正に知的財産権が譲渡されたとして4億円
の損害賠償請求の各訴えを提起していたため,これらが事実でないことを明らかに
して,パチンコ・パチスロ業界での事業展開を準備していた被控訴人SNKをはじ
めとする旧SNKの従業員その他関係者の名誉を回復する必要があった。),これ
ら控訴人やAの行為が上場企業ないしその経営者の行為として社会的に断じて許さ
れないことを広く訴えるためであった。その際,被控訴人SNKは,本件各書籍の
記載事実は,当然真実であると考えていた。それは,本件書籍1の出版に際しての
鹿砦社の被控訴人SNKに対する入念な取材に照らせばそう考えてしかるべきで
あったからである。
(3)以上より,控訴人が主張するような,被控訴人SNKが「鹿砦社のスポン
サーとしての役割を担う」とか「(鹿砦社に)多額の資金を拠出することを約束す
る」などの事実はない。
(4)なお,控訴人は,被控訴人SNKによる本件書籍1の原稿訂正が全面に及
んでいたと主張するが,被控訴人SNKの総務部長Eが本件書籍1の原稿に目を通
したのは,EがDの取材に応じて話した内容が正確に書かれているかどうかをチェ
ックするためであり,訂正を加えた箇所もEがDに話した内容に関連する部分に限
定されていたのであって,本件書籍1のうち被控訴人SNKに関係しない事実関係
については一切手を加えていないし,被控訴人が経験していない情報を修正するこ
となどそもそもできない。Eによる原稿のチェックと訂正は,本件書籍1の内容の
うち被控訴人SNKに関連する部分につき取材を受けた者の立場からDの依頼を受
けて行ったものにすぎず,そのこと自体書籍の編集過程におけるごく一般的な作業
である。
また,控訴人は支払方法に関連して被控訴人SNKが買取りの事実を隠蔽したな
どと主張するが,これらの被控訴人SNKの行為は経理処理上の都合によるところ
が大きい(支払先がラブロスやファミネットとなっている部分があるのは鹿砦社が
そのように指定したからである。)。関連する会社が複数ある場合にその経理の状
況に応じて経費の支出元を適宜選択することは,通常行われていることであって,
特別視しなければならないものではない。
さらに,控訴人は,被控訴人SNKがラブロス手数料相当額の追加支払や弁護士
費用を支払っていることに関し,被控訴人SNKが本件各書籍をばら撒きたかった
からであるとか,鹿砦社に対する大口スポンサーであったためなどと主張するが,
当時の被控訴人SNKの売上規模等からすれば,これらの支出は,被控訴人SNK
をはじめとする旧SNKの従業員その他関係者の名誉回復等に少しは寄与する結果
となった出版社に対する付き合い程度のものであって,「大口スポンサー」等とい
う評価は誤りである。
(5)そもそも,本件各書籍は鹿砦社が独自の取材に基づきその責任と判断に基
づいて発行しかつ市販されたものであり,このような出版物を購入の上配布するこ
とは不競法2条1項14号所定の「事実を告知し,又は流布する」行為には該当し
ないというべきである。
2被控訴人SNKは共同不正競争行為者としての責任を負わない
(1)共同不正競争行為の成立には,各行為者に「競争関係」等の基本的な不正
競争行為の要件が備わっていることを要する
不正競争行為が複数人によりなされた場合の責任については,民法719条が適
用される。そして,同条の解釈として,共同不法行為の成立のためには,共同行為
者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加え,各自の行為がそれぞれ
独立に不法行為の要件を備えることを要するとするのが確固たる判例,通説である
(最高裁昭和43年4月23日第三小法廷判決・民集第22巻4号964頁)。し
たがって,不正競争行為の共同不法行為が成立するには,各自の行為がそれぞれ独
立に不正競争行為の要件を備えることを要する。近時の共同不法行為の成立要件に
ついての学説として,関連共同性の要件,因果関係の要件を緩和する見解等が有力
に主張されているところであるが,かかる有力説も不法行為のその他の要件を緩和
するものではなく,たとえば不正競争行為が共同してなされる場合において,「競
争関係にあること」といった固有の基本的な要件について,一部の行為者に備わっ
ていなくてもよいなどとするものではない。
本件において,本件各書籍の企画・出版を含めた行為は全て,鹿砦社が出版社と
しての責任の下で行ったものであり,被控訴人SNKは鹿砦社に取材源として協力
し,本件各書籍の一部を買い取って配布したにとどまる。被控訴人SNKが「共同
正犯」であるとの前提自体,事実に反しており,控訴人の主張には理由がない。ま
た,鹿砦社は,不正競争行為の要件を欠くのであるから,鹿砦社との間で何らかの
「共同行為」があったとしても,鹿砦社と被控訴人SNKの共同不正競争行為が成
立しうるものではない。
(2)不正競争行為の幇助の成立にも,行為者に「競争関係」等の基本的な不正
競争行為の要件が備わっていることを要する
民法719条2項に「行為者を教唆した者及び幇助した者は,共同行為者とみな
して,前項の規定を適用する。」と定められる趣旨は,行為者並びに教唆者及び幇
助者についてもそれぞれ不法行為の要件が備わっていることを前提として,行為者
と連帯して賠償責任を負うことを示すものであって,それ以上に共同不法行為の成
立要件を緩和するものではない。とりわけ,行為者自身に不法行為の要件が備わっ
ていることを要することは当然である。よって,不正競争行為に幇助者等としての
責任が成立するためには,少なくとも行為者について「競争関係」等の基本的な不
正競争行為の要件が備わることを要するというべきである。
被控訴人SNKは鹿砦社の行為を「幇助した」との点を争うが,仮にそのような
事実を前提としても,鹿砦社は控訴人との「競争関係」がないから鹿砦社の行為が
不正競争行為に該当する余地はなく,鹿砦社の行為が不正競争行為に該当しない以
上,鹿砦社の行為(不正競争行為に該当しない行為)を「幇助」する行為が不正競
争行為となるものではない。
3不正競争行為に基づく損害賠償請求の平成15年7月を起算点とする消滅時
効について
本件書籍1の出版・頒布といった損害の原因となりうる事実の発生については,
そもそも控訴人がそれを知ったことが本件告訴のきっかけとなっているのであるか
ら,控訴人が告訴の時点において,被控訴人SNKの関与を明確に認識していたこ
とは明らかで,平成15年7月の時点で,すでに「損害賠償請求することが可能な
程度に関与のあることを知っていた」ものと解すべきである。
4不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効
(1)平成15年7月起算の消滅時効
前記のとおり,控訴人は,平成15年7月には被控訴人SNKが本件書籍1の出
版・頒布に関し一定の関与をした事実等を認識しており,「損害及び加害者を知っ
た」ものであるから,その後3年の経過により,不法行為に基づく損害賠償請求権
は時効消滅した。
(2)平成18年8月起算の消滅時効
控訴人は,遅くとも平成18年8月2日にはDに対する名誉棄損刑事第1審判決
(甲5)を入手していた。そして,この判決においては,Bらが鹿砦社の取材に応
じたこと,被控訴人SNKが本件各書籍の一部を買い取って配布したことその他の
事実関係について判示がなされているのであるから,遅くとも,控訴人は,平成1
8年8月2日には,「損害及び加害者を知った」ものであり,その後3年の経過に
より,不法行為に基づく損害賠償請求権は時効消滅した。
第5当審における被控訴人サミーの主張
1「被控訴人らの加害行為」に対し
(1)被控訴人サミーの行為は,本件書籍1について,5000部を買い取った
こと,各都道府県の警察の生活安全関係部署の住所などを記載したもの,その他公
開されている市販の名簿を被控訴人SNKに提供したことにとどまり,本件書籍2
∼4についてはこうした関与もない。そして,本件書籍1は一見して明らかに虚偽
の事実が記載されているものであったり,控訴人の名誉を毀損するものと思われる
ような内容ではなく,被控訴人サミーは,本件書籍1に特段の問題があると認識す
ることなく,取引先である被控訴人SNKに対して本件書籍1の買取の約束をした
にとどまる。そもそも,独立した既成の出版社が自ら企画し,出版を予定した書籍
は,その内容の吟味は出版社自身が担保していると信頼されるのであり,その信頼
に立って,本件書籍1の具体的内容を正確に把握することがないまま,出版前に出
版されたら買取りをする旨約束すること,また手持ちの名簿(いずれも市販されて
いるものであり,秘密にすべきもの,あるいは高価なものではない)を送付するこ
とは,何ら不当なことではない。被控訴人サミーが送付した名簿中に各都道府県の
警察の生活安全関係部署のものがあったということ自体,被控訴人サミーとして,
自らの行為が何ら不当なものではないと認識していたことの証左であるし,実際に
送付を受けた各都道府県の警察の生活安全関係部署のどこからも本件書籍1の配布
が問題視されなかったことは,本件書籍1が特段問題となるようなものではなかっ
たことを裏付けるものである。
なお,控訴人は,被控訴人サミーから被控訴人SNKへの本件書籍1の購入代金
の支払が書籍購入代金ではなく,被控訴人SNKが作成したゲームソフトの使用許
諾料に上乗せして支払われたことを「関与を隠蔽するため」であるなどと主張して,
被控訴人サミーが何らかの問題性を認識していたかのように主張するが,支払名目
をそのようにしたのは税務上の考慮から当時の当事者間の使用許諾取引の対価に含
めて処理したにすぎず,それ以上の意味はない。
(2)本件書籍1については,被控訴人SNKが3000部を買い取り,被控訴
人サミーが5000部を買い取ったが,被控訴人らが買取りを決めた先後関係は,
まず被控訴人SNKが3000部を買い取ることを決め,その後被控訴人サミーが
5000部の買取りを了承したものである。
(3)そもそも,他人により出版された書籍を他社に配布すること,すなわち自
らの表現が皆無で自らの認識を他者に伝えるものでない行為については,不競法2
条1項14号の「告知・流布」にはあたらないというべきである。
仮に出版された書籍を他者に配布することが「告知・流布」にあたるとしても,
本件各書籍を配布したのは鹿砦社であり,被控訴人サミーは何ら本件各書籍の配布
行為を行っていない。被控訴人サミーは,本件書籍1を被控訴人SNKから買い取
り,市販の名簿を被控訴人SNKに送付したという限度で本件書籍1にかかわった
にすぎず,これが配布行為でないことは明白である。
2被控訴人サミーは共同不正競争行為者としての責任を負わない
控訴人は,不競法2条1項14号の「競争関係」とは一種の身分であると主張す
るが,「身分」とは刑法上の概念であり,民法あるいは不競法上,「身分」という
概念はなく,単に要件の一つにすぎない。。控訴人の主張は不競法2条1項14号
の「競争関係」を刑法で例えれば「身分」のようなものであるという比喩にすぎず,
法的な主張とはいえない。
そして,刑法上は,刑法65条1項という明文の規定があるために,身分者が非
身分者に対して加功する場合にも身分者と非身分者の共犯が成立する。これに対し,
民法上は,719条に定める共同不法行為の成立要件として,共同行為者の1人1
人について,責任能力,故意・過失,違法性などの不法行為の一般的成立要件を充
足する必要があると解されている。刑法と民法・不競法とが異なる法体系である以
上,その解釈において異なるところがあるのは当然のことであり,民法の条文に刑
法65条1項と同様の規定がなく,かつ,上記のとおり共同不法行為が成立するに
は共同行為者の1人1人について不法行為の一般的成立要件を充足する必要がある
と解されている以上,民法上は不法行為の一般的成立要件を充足しない者と不法行
為の一般的成立要件を充足する者とが共同で行為を行ったとしても,共同不法行為
が成立しないことは明らかである。不競法は民法上の不法行為法の特則であるから,
不正競争行為を共同で行った場合にも,同様に共同行為者の1人1人について不正
競争行為の一般的成立要件を充足していなければ,共同の不正競争行為は成立しな
い。
3時効の援用
控訴人は,Dについての別件名誉毀損訴訟について平成18年7月4日の判決日
当日に判決内容を把握し,平成18年8月2日には同判決文を入手していたことか
らすれば,遅くとも,控訴人は,平成18年8月2日には「損害及び加害者を知っ
た」ものである。
控訴人は,平成21年8月24日提出の控訴理由書において民法上の不法行為の
主張を追加するに至ったが,その時点では既に3年の時効期間を経過しており,不
法行為に基づく損害賠償請求権は時効消滅した。
4加害行為者の時効完成による幇助者の責任消滅
本件各書籍の出版頒布の行為者は鹿砦社ないしDであるところ,控訴人は,鹿砦
社ないしDに対する損害賠償責任追及としては別件名誉毀損訴訟以外にはしていな
い。したがって,本件各書籍について,鹿砦社ないしDに別件民事訴訟で認められ
た以外の損害賠償義務が存在するとしても,すでにその時効は完成している。
ところで,被控訴人サミーの責任が問題となる場面は本件書籍1についてのみで
あり,しかも幇助概念を極めて広く捉えた場合の幇助となるかどうかという場面の
みであると考えられる。そして,民法719条2項の幇助により共同行為者とみな
される場合にあっては,同条1項の共同不法行為者同士の債務が不真正連帯債務と
されるのとは異なって,連帯債務における原則に従い民法439条を適用し,本来
の行為者について時効が完成したときは,幇助者においてもその義務を免れると解
すべきであるため,被控訴人サミーは,本件書籍1に関しても控訴人への損害賠償
義務を負うことはないというべきである。
第5当裁判所の判断
1前提となる事実経過
本件各書籍の出版・頒布の事実経過,当該出版・頒布にあたっての被控訴人らの
関与等は,次のとおり訂正付加するほか,原判決32頁9行∼35頁1行に記載の
とおりである。
(1)原判決32頁6行目∼7行目の「証拠(甲10ないし19)」を証拠(証
拠(甲5,6,10ないし19,55,56,64,乙11)と改める。
(2)原判決32頁10行∼33頁15行を次のとおり改める。
「ア株式会社エス・エヌ・ケイ(旧SNK)は昭和53年7月に設立された株
式会社である。Bはその創業者であり,平成12年3月31日まで旧SNKの代表
取締役の地位にあった。旧SNKは業務用(ゲームセンター向け)ビデオゲーム機
及びソフトの開発を主な業務としてきたが,平成6年に業務用ゲーム機とほぼ性能
の変わらない家庭用ゲーム機「プレイステーション」が発売されて以降,ゲームセ
ンターの営業が急速に減退するのに伴い,旧SNKの業績も下降していった。
イかかる状況の中,控訴人が株式の第三者割当により旧SNKの過半数の株式
を取得して経営支援を行うことになり,旧SNKは控訴人の指示によりパチンコ・
パチスロ機用のソフトを開発するなどしてパチンコ・パチスロ業界へ参入するとと
もに,ゲーム開発事業は中止ないし縮小した。
ウ旧SNKは,平成13年3月30日に手形不渡りを出し,同年4月2日に大
阪地方裁判に対し民事再生手続きの開始を申し立てたが,再生計画案の提出期限で
ある同年9月28日までに再生計画案を提出しなかったため,大阪地方裁判所は同
年10月1日,民事再生廃止決定をして管理命令を発令した上,同月30日,旧S
NKに対する破産宣告をした。
エ平成13年8月1日,Bが中心となって被控訴人SNK(当時の商号は株式
会社プレイモア)が設立された。これは,パチスロ事業を継続するにあたって,民
事再生手続中の旧SNKの名義では公安委員会からの許認可が下りないため,別法
人である被控訴人SNKを設立して,同被控訴人においてパチスロ事業を行おうと
したためであり,Bは,旧SNKの民事再生廃止決定後は被控訴人SNKにおいて
再起を図ろうと考え,旧SNKの所有していた商標や著作権,特許といったすべて
の知的財産権を被控訴人SNKが2億1000万円で取得し,旧SNKの従業員約
35名ほどを移籍させて事業を開始した。
オBは,控訴人あるいはその代表取締役であったAにより自らが創業した旧S
NKを破綻させられたとして,強い怒りや憤りを抱いていた。
カ出版社である鹿砦社の代表取締役兼編集長のDは,平成14年後半ころ,被
控訴人SNKの取引先である株式会社ラブロスの代表取締役であったFの紹介で,
Bに対し,被控訴人SNKと控訴人の関係や経緯について取材をしたが,その取材
をもとにした記事は週刊誌などに掲載されなかった。BがFに対し,せっかくDの
取材に応じたのに記事として掲載されていないのはなぜかと述べ,FがDを連れて
Bを訪ねたことから,DからBに対して,被控訴人SNKと控訴人との関係の話を
単行本として出版する旨の申入れがあった。Bは,単行本の出版となると膨大な資
料と取材が必要と考え,当時被控訴人SNKの総務部長であり,控訴人と被控訴人
SNKとの間の経緯を詳細に知っていたEにDの取材に対応するように指示し,主
として,EがDからの取材に応じた。
キ平成15年初めころ,Dは,Eに対し,本件書籍1の原稿の内容の確認を依
頼した。Eは,当該原稿を確認して訂正を加え,Bの目も通させてその了承を得た
上,訂正を加えた原稿をDに渡し,約1週間後に再度原稿を確認したところ,訂正
部分がすべて書き換えられていたので,Dにその内容で出版してかまわない旨を伝
えた。
ケ被控訴人サミーもパチンコ・パチスロ業者であって,Bは,同被控訴人の代
表取締役であったCとは個人的にも親しくしていたところ,Cは控訴人と対立して
いた同被控訴人として,控訴人を批判する書籍に関心を有しているであろうと考え,
平成15年2月又は3月ころ,本件書籍1の原稿をCに渡した。Cは「これは面白
い。」と言って興味を示し,被控訴人サミーが本件書籍1を5000冊買い取るこ
と,被控訴人サミーから全国のパチンコホールの名簿を送るのでそれに記載された
あて先に本件書籍1を頒布するよう述べた。
コBは,本件書籍1を被控訴人SNKが3000部,被控訴人サミーが500
0部買い取ることになったことをEに伝え,被控訴人サミーから送られた全国のパ
チンコホールの名称及び住所,各都道府県警の生活安全部署の住所等が書かれた本
件名簿を渡してそれに記載されたあて先に本件書籍1を頒布するように指示し,こ
の指示を受けて,Eは,Dに対し,本件名簿を渡して,そのあて先に本件書籍1を
頒布するように伝えた。
サ鹿砦社は,平成15年4月10日,初版部数を1万2000部ないし1万3
000部として本件書籍1を出版し,前記指示に基づき,本件名簿に記載されたあ
て先に前記買取りに係る本件書籍1を送付した。
シ被控訴人SNKは,被控訴人サミーの分も含めて,株式会社サン・アミュー
ズメント名義で,株式会社ラブロスを通じて,鹿砦社に対して,本件書籍1の買取
代金及び発送費用として,1352万5675円を支払った。
被控訴人サミーから被控訴人SNKに対する買取代金については,被控訴人サミ
ーが被控訴人SNKに支払うゲームソフトの使用許諾料に当該買取代金を上乗せす
ることとして,支払がなされた。
ス被控訴人SNKは,Dが本件書籍1の買取代金のうちの多くを株式会社ラブ
ロスに手数料名目で取られたと言ってきたことから,平成17年7月,ファミネッ
トという別会社を介し,鹿砦社に対し,株式会社サン・アミューズメント名義で1
000万円を追加で支払った。
セこのように,Dは,本件書籍1の出版当時,被控訴人SNKが出版の大口ス
ポンサーであると認識し,同被控訴人から被控訴人サミーの拠出分も含めて資金援
助を受けた。」
(3)原判決35頁1行の次に改行して次のとおり加える。
「(5)被控訴人SNKは,平成15年12月から平成16年にかけて,Dに対
し,A及びGと鹿砦社及びDとの間の別件名誉毀損訴訟の弁護士費用として192
5万円を支払った。」
2行為の個数及び消滅時効について
不法行為の個数については,原判決35頁2行∼36頁4行に記載のとおりであ
る。後記7で判断するとおり,控訴人が主張する本件各書籍の記述中,不競法上の
虚偽事実の記載があると認められるのは本件書籍4の記載のみであるから,それ以
外の本件各書籍に関する流布によって生じた不競法上の損害賠償請求権に関する消
滅時効の援用については判断するまでもないことになる。
被控訴人SNKは,本件書籍4について不競法上の損害賠償責任を負う以上,ま
た,そこで肯定する虚偽事実以外には,不法行為該当性についてみても流布された
虚偽事実が認められないから,予備的請求である民法上の共同不法行為責任の存否
について判断する必要はないし,共同不法行為の成立を認めることもできない。被
控訴人サミーについては,本件書籍4について事実を告知し又は流布する行為が認
められず,主張に係る他の虚偽事実についても虚偽のものとは認められない以上,
かかる事実のあることを前提として控訴人が主張する民法上の共同不法行為も成立
しない。したがって,これらの共同不法行為責任の消滅時効についても判断するま
でもない。
3控訴人と被控訴人SNKとの競争関係が生じた時期について
不競法2条1項14号の「競争関係」とは,現実に競争関係にある場合に限られ
ず,将来現実化する関係で足りると解されるところ,前記前提となる事実経過記載
の事実によれば,被控訴人SNKは平成13年8月1日以降,パチスロに関する事
業を行っていたと認めることができるし,また,被控訴人SNK自身,本件書籍1
の出版当時,パチンコ・パチスロ業界での事業展開を準備していたと主張している。
そうすると,本件書籍1及び2が出版された平成15年4月10日及び同年9月1
0日当時において,被控訴人SNKがパチスロ遊技機の販売を行っていなかったと
しても,競争関係が将来現実化する関係があったと認められるから,パチスロ遊技
機の製造販売を業とする控訴人と競争関係にあったと認めるのが相当である。
4告知流布行為の有無について
(1)本件書籍1について
本件各書籍の出版・頒布に係る経緯は前記のとおりである。そして,本件書籍1
の出版を企画し,取材及び編集を行ったのは鹿砦社であるが,本件書籍1の内容が
競争関係にある控訴人を批判するものであることを認識しながら,予め被控訴人S
NKは3000部,被控訴人サミーは5000部という大部の買い取りを約束し,
その買取部数は発行部数(1万数千部と推認される)の半数前後を占める大きなも
のである上,本件名簿により送付先を控訴人の業務に深く関係するパチンコホール
等に指定し,これに基づき鹿砦社が本件書籍1をパチンコホール等に送付したもの
であるから,被控訴人らは本件書籍1を自らパチンコホール等に配布したものと容
易に推認することができる。この行為は,被控訴人らの本件書籍1の出版・頒布へ
の関与が書籍店のように単に他人により出版された書籍を取り次ぎとして他者に配
布するという関与を超えて,競争関係にある控訴人の信用毀損を図る意図のもとに,
鹿砦社による本件書籍1の出版を利用ないしこれに乗じたものと認められることか
らすれば,自ら控訴人に関する事実を流布したものにほかならない。
なお,被控訴人らは,他人により出版された書籍を他者に配布すること,すなわ
ち自らの表現が皆無で自らの認識を他者に伝えるものでない行為については,不競
法2条1項14号の「事実を告知し,又は流布する」行為には該当しないというべ
きであるとか,被控訴人らの行為は鹿砦社の出版・頒布行為に対する幇助にとどま
るものであるなどと主張する。
しかし,前記の認定事実によれば,控訴人の社会的信用を毀損するような虚偽の
事実が含まれていることを期待しつつ,被控訴人らは入手した書籍を業務関係者に
配布したということができるのであるから,書籍の表現を自ら記載したのでないこ
とをもって,被控訴人らの行為が不競法所定の上記行為に該当しないとすることは
できないし,幇助にとどまるとすることもできない。
(2)本件書籍2∼4について
被控訴人SNKについては,本件書籍1と同様の理由により,本件書籍2∼4に
記載された競争関係にある控訴人に関する事実を流布したと認めるのことができる。
しかし,被控訴人サミーについては,本件書籍2∼4についての関与があったと
は認められないから,同被控訴人に不競法2条1項14号の「事実を告知し,又は
流布する」行為があったということはできない。
控訴人は,被控訴人サミーが本件名簿の回収をしなかったこと等を捉えて,被控
訴人サミーに本件書籍2∼4についても不競法2条1項14号違反の行為が成立す
ると主張する。しかし,前記のとおり,本件書籍1が出版された段階では本件書籍
2∼4の出版予定があったとは認められないから,被控訴人サミーが本件書籍1が
出版された段階で本件書籍2∼4が出版・頒布されることを予見することができた
とは認められないし,その他,被控訴人サミーが本件名簿を回収したり,被控訴人
SNK及び鹿砦社による本件書籍2∼4の出版・頒布を中止させる法的義務が発生
することを根拠づける事実も見当たらず,控訴人の上記主張は採用することができ
ない。
5被控訴人らと鹿砦社による外形的共同不法行為の成否について(被控訴人ら
及び控訴人との間に競争関係のない鹿砦社を共同不法行為者として,不競法2条1
項14号違反の共同不法行為が成立するか)
前記のとおり,被控訴人らは本件書籍1に記載された事実を流布し,被控訴人S
NKは本件書籍2∼4に記載された事実を流布したものである。
そして,鹿砦社は出版社であり控訴人とは競争関係にはないが,被控訴人SNK
と控訴人が競争関係にあることは前記のとおりであり,被控訴人サミーと控訴人が
競争関係にあることは当事者間に争いがない以上,鹿砦社に不競法違反が成立しな
くとも,虚偽か否かは後記で判断するところではあるが,外形行為の観点からみれ
ば,被控訴人ら各自の行為において不競法2条1項14号該当要件を満たす以上,
この点においては所定の「不正競争」に該当し,他の要件を充足する場合には同法
4条による損害賠償義務の成立は免れないものというべきである。被控訴人ら指摘
の最高昭和43年4月23日第三小法廷判決・民集第22巻4号964頁は,共同
行為者の加害行為について不法行為者が賠償の責めに任ずべき損害の範囲について
判断しているものであって,本件に適切でない。
6本件各文章は被控訴人の信用を害するものであるかについて
(1)控訴人は,別紙4−1∼4虚偽事実一覧表(原判決の別紙4−1∼4に通
し番号を付して再掲)記載の各事実は控訴人の営業上の信用を低下させるものであ
ると主張するのに対し,被控訴人らはこれを争うので,以下検討する。なお,「虚
偽の事実」か否かの認定に際しては,記載の文章における事実記載の具体性,記載
事実内容の反社会性の程度を軸にし,被控訴人らは書籍を配布したとはいえ自らが
記載し出版したものではないことも踏まえて判断するものである。
まず,別紙虚偽事実一覧表記載の各事実は,次のとおりである。
①控訴人と被控訴人SNKの間の経緯に関するもの(控訴人は旧SNKへの資金援助を申し
出ていながら,旧SNKの価値ある部分のみを取得して旧SNKを倒産させたこと等):別
1823343536紙虚偽事実一覧表番号∼,,,,
②控訴人の製造販売にかかる遊技機に関するもの
aパチスロ機「ミリオンゴッド」に関するもの(「ミリオンゴッド」の射倖性の高さ,検
定における申告や自主回収における不誠実さないし不適切さ等):別紙虚偽事実一覧表番
2526号,
bパチスロ機「ゴールドX」の不具合(バグ)に対する対応に関するもの:別紙虚偽事実
27383940一覧表番号,,,
cパチスロ機「コンチネンタル」に関するもの(「コンチネンタル」の射倖性の高さ,不
3031適切なプログラムの変更等):別紙虚偽事実一覧表番号,
dパチスロ機「HANABI」にいわゆる裏ロムが取り付けられていたことに関するもの
92829:別紙虚偽事実一覧表番号,,
③控訴人の経営に関するもの
37控訴人の米国ラスベガスでのカジノホテル共同経営状態:別紙虚偽事実一覧表番号
④上記以外の控訴人に関する事実
16a40億円の所得隠しの発覚:別紙虚偽事実一覧表番号
b国税局と東京地検が控訴人を捜査対象としようとしていることとこれに関連する事実:
33別紙虚偽事実一覧表番号
c元警察官僚や警察出身政治家を利用して捜査機関やその他の公的機関へ影響力を及ぼし
11,14,15,45,47ていること:別紙虚偽事実一覧表番号
d株取引に関するもの:別紙虚偽事実一覧表番号⑰⑱⑲
41e鹿砦社との裁判における控訴人の行動に関するもの:別紙虚偽事実一覧表番号
42f控訴人が違法行為,不法行為を野放しにしていること:別紙虚偽事実一覧表番号
⑤Aに関する事実
aAがギャンブルマシン(違法賭博用マシン)を製作していたこと等:別紙虚偽事実一覧
12表番号
bパチンコ・パチスロホールに設置された両替機において偽造紙幣が使用されたことにつ
43いてのAの関与:別紙虚偽事実一覧表番号
cAが米国でカジノ・ライセンスを取得する際の偽証に関するもの:別紙虚偽事実一覧表
4446番号,
13dAと殺人を犯した者との個人的な交際に関するもの:別紙虚偽事実一覧表番号
e女性関係に関するもの:別紙虚偽事実一覧表番号∼,10,2022
32f前科前歴に関するもの:別紙虚偽事実一覧表番号
⑥その他
パチスロ業界内では控訴人出身で逮捕される者が多いこと等:別紙虚偽事実一覧表番号
2448,
(2)上記①については次の7で判断するが,②はパチスロ機の販売に直結する
ものであるし,①,③,④は営業を含む企業経営における法令遵守や行動の適正さ
に関するものであり,控訴人の社会的信頼(営業上の信用)に影響を及ぼす事実で
ある。⑤はA個人に関する事実ではあるが,Aは控訴人の創業者でありその経営に
大きな影響力を有しているところ,上記文章がAの経営者としての資質や控訴人が
株式上場企業でありながら公私混同した人事や経営が行われていることを批判する
趣旨が含まれていると解されることからすれば,控訴人の営業上の信用にかかわる
事実であると認めることができる。さらに,⑥も,控訴人の退職者に関する事実に
よって控訴人の営業手法や経営体質を批判する趣旨が含まれていると解されるから,
控訴人の営業上の信用にかかわる事実であると認めるのが相当である。
被控訴人らは,パチスロ機の売上げは遊技機そのものが持つ特性(ゲーム性,射
倖性など),ホールでの稼働状況(人気度など)ないしその顧客吸引力等に大きく
左右されるものであり,パチスロ機の製造業者ないしその代表者如何によってその
売上げが実質的な影響を受けるとは考えがたいところ,控訴人が虚偽事実と主張す
るものは,いずれも控訴人のパチスロ機の性能や顧客吸引力等とは関わりのない事
実であるとか,控訴人が虚偽事実と主張するものはパチスロ業界内の周知事実であ
るから営業上の信用を害するものではなく,控訴人の売上げが減少していないこと
からしてもパチスロ機の取引が停止される具体的なおそれがあるものではないなど
と主張する。
しかし,営業上の信用を害する事実は製品やサービスの性能・顧客吸引力に関す
るものに限られるとは考えられないし,本件各文章に記載された事実がパチスロ業
界内の周知事実と認めるに足りる証拠もない。また,控訴人の主張する事実が取引
が停止される具体的なおそれがない事実ということもできない。被控訴人らの上記
主張は採用することができない。
7本件各文章は虚偽の内容であるかについて
(1)控訴人と被控訴人SNKの間の経緯に関する文章(別紙虚偽事実一覧表番
号1∼8,23,34,35,36〔前記6の①〕)について
前記「1前提となる事実経過」のとおり,本件各文章のうち控訴人と被控訴
人SNKの間の経緯に関する部分は,鹿砦社が被控訴人SNKの取締役会長である
Bや総務部長であるEに対してした取材に基づくものであるところ,証拠(甲1∼
4)によれば,上記文章部分は,全体として,控訴人は旧SNKへの資金援助を申
し出ていながら,旧SNKの価値ある部分のみを取得して旧SNKを倒産させたと
の論調を基調として記載されていると認められる。
Aは陳述書(甲49,64)及び当審における証人尋問において,控訴人の主張
に沿う証言をするが,その内容が具体的に裏付けられているとはいい難く,上記文
章部分が虚偽であると認めるには足りない。
かえって,証拠(乙9)によれば,旧SNKの民事再生手続の監督委員である弁
護士が,裁判所に対し,民事再生手続き開始の可否につき,「旧SNKの再生の見
込みは控訴人の業務支援にほとんど依存しているが,控訴人が再生債権である自己
の売掛金及び代行店の手数料が全額返済されない限り業務支援はしないとの姿勢を
崩さなかったところ,かかる要求が債権者平等(民事再生法155条)に反し,他
の一般再生債権者の同意を得られるはずもないこと,旧SNKは控訴人の支援なし
での再生を探っているが,控訴人代表取締役が旧SNK会長取締役を辞任したと言
明していることから,今後人材引抜きも予想される等,一転して控訴人が旧SNK
の自力再生の最大の壁になりかねない状況である」旨を報告していることが認めら
れる。そして,上記事実によれば,旧SNKの民事再生のためには旧SNKの経営
支援を行っている控訴人の協力が必須であったにもかかわらず,控訴人は再生債権
者間において不平等となることが明らかな条件を提示して民事再生手続続行の障害
となる対応をしていたことが認められるところ,かかる控訴人の対応は,旧SNK
の創業者であるBらの立場からすれば,旧SNKに対する経営支援を行っていた者
として信義誠実を欠くものと受け取られてもやむを得ないものがあると解される。
また,証拠(乙11)によれば,控訴人は旧SNKの平成13年6月の株主総会に
おいて特に協議を行うこともなく議案をすべて否決するなどしていたことが別件判
決で認定されているところ,このような控訴人の対応も,Bらからすれば,旧SN
Kの再建の障害となるような対応であると受け取られてもやむを得ないもとがある
と解される。そして,旧SNKの経営再建における控訴人のかかる対応からすれば,
上記文章部分が虚偽であるとまで認めることはできない。
(2)控訴人の製造販売にかかる遊技機に関する文章について(別紙虚偽事実一
覧表番号9,25,26,27,28,29,30,31,38,39,40〔前記6の②〕)
ア本件各文章のうち,控訴人の製造販売にかかる遊技機に関する文章は,
概ね,(ア)控訴人が極めて射倖性の高いパチスロ機「ミリオンゴッド」を販売し
ていたこと,その検定に際し控訴人が不適切な申告の仕方をしていたこと,「ミリ
オンゴッド」の自主回収に関する発表は表向きの態度であり,かつ被控訴人サミー
への牽制策であること,(イ)控訴人が販売していたパチスロ機「ゴールドX」の
不具合(バグ)に対する対応が不誠実でサブ基盤の交換という法令違反となる行為
があったこと,(ウ)控訴人が極めて射倖性の高いパチスロ機「コンチネンタル」
を販売したこと,それに対して不適切なプログラムの変更をしていたこと,(エ)
控訴人製造のパチスロ機「HANABI」にいわゆる裏ロムが取り付けられていた
ことに関する控訴人の対応や,1998年製裏ロムが取り付けられていたことを日
本電動式遊技機工業協同組合(日電協)に報告しなかったこと,控訴人が裏ロムを
取り付けたとか政治家が陰で動いたという噂があることが記載されていると認めら
れる。
Aは陳述書(甲49,64)及び当審における証人尋問において,控訴人の主張
に沿う陳述をするが,その内容が具体的に裏付けられているとはいい難く,上記文
章部分が虚偽であると認めるには足りない。
かえって,「ミリオンゴッド」が極めて射倖性の高いパチスロ機であること,控
訴人がこれを自主回収するに至っていること,「ゴールドX」に不具合が生じたこ
とは控訴人も争っていない。
また,証拠(乙2の5・6,乙3,4)によれば,控訴人は,「ゴールドX」
の不具合につき,「ゴールドX」を設置しているパチンコホールに対し「ホール従
業員が遊技客に対して押し順を告知する。」,「ホール従業員がゴールドXを監視
して遊技客に特定の打ち方をさせない。」,「液晶画面にシールを貼ってセット打
法をできなくする。」という対応策を提案したところ,ホール側から,かかる対策
では,遊技客に不快感を与えたり困惑させたりし,あるいは遊技客との間で無用の
摩擦を招くおそれがある,押し順そのものを物理的に制約することはできないため
ホール従業員が遊技客に押し順を告知するという方法は特定遊技方法を防止する対
策としては不十分である,液晶画面へシールを貼付すると映像を隠すことになるの
で遊技の面白みや娯楽性を大幅に減殺させることになるといった不満が出され,控
訴人に対する訴訟が提起されるに至り,判決で控訴人の売買契約の債務不履行に基
づく損害賠償義務が認められたこと,全日本遊技事業協同組合連合会は,控訴人が
関係方面の了承のない中で「ゴールドX」のサブ基盤の交換を行おうとしたが,か
かる行為は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風適法)違反の無
承認変更となるものであるとして,平成15年7月中旬,控訴人に対する中止要請
の連絡と傘下の組合に対し注意喚起の連絡をしたことが認められる。
以上のとおり,控訴人はパチスロ機に不具合が生じた際にホールに対して適切さ
を欠く対応をしており,全日本遊技事業協同組合連合会から法令違反となるパチス
ロ機の改造行為を行おうとしていると指摘されていたところ,このような控訴人の
行動や第三者からの指摘からすると,上記ア(イ)の「ゴールドX」に関する文章が
虚偽であると認めることができないことはもとより,上記ア(ア)(ウ)の「ミリオンゴ
ッド」,「コンチネンタル」に関する文章が虚偽であると認めることもできない。
イ控訴人が扱う「HANABI」に関する別紙虚偽事実一覧表番号9の文章に
つき,控訴人は控訴人自身が裏ロムが仕組まれた出来事に関与しているかのように
述べている点で虚偽事実であると主張している。しかし,上記9のこの部分に関し
ては,裏ロム設置に関し運送業者を告訴した控訴人の対応についての文章であり,
控訴人自身が裏ロムが仕組まれた出来事に関与しているとの事実が記載されている
とはいえないから,控訴人の主張する上記虚偽事実が記載されているとは認められ
ない。
上記文章には,「HANABI」に裏ロムを取り付けた「犯人」が控訴人の指定
登録運送会社であるとして,控訴人が警察に告訴したとの記載がある。しかし,告
訴したこと自体は事実であり(甲42),この辺りの表現ぶりは噂を含めた情緒的
なものにとどまり,故意に無実と思っていた運送会社を貶めた事実までが記載され
ているとは認められず,虚偽の事実と認めることはできない。
別紙虚偽事実一覧表番号28の文章には,控訴人が「HANABI」に1998年
製裏ロムが取り付けられていたことを日電協に報告しなかったことが記載されてい
るが,かかる事実が虚偽であることを認めるに足りる証拠はない。
別紙虚偽事実一覧表番号29の文章については,控訴人は,控訴人が裏ロムを仕込
んだかのように述べている点,政治家の圧力を利用したかのように述べている点で
虚偽の事実を摘示していると主張するが,上記文章を前後の文章と併せて読めば
「HANABI」に裏ロムが設置されていたことにつき真相が判明していない中で
様々な噂が流れたこと中の一つとして記載されたものであることが認められ,控訴
人主張の虚偽事実が記載されていると認めることはできない。
(3)控訴人の経営に関する文章について(別紙虚偽事実一覧表番号37〔前記6
の③〕)
別紙虚偽事実一覧表番号37の文章には,控訴人の米国ラスベガスでのカジノホテ
ルの経営が思わしくない旨が記載されているが,かかる記載が虚偽であることを認
めるに足りる証拠はない。
また,上記文章には,控訴人のゲーミング・ライセンスが不安定な要素をはらん
でいると記載されている。この点につき,控訴人は,控訴人及びAはラスベガスの
ゲーミング当局にAが法人税法違反で有罪判決を受けたことを含め真実を告げ,そ
の結果ライセンスが付与されたものであって,上記記載は虚偽であると主張する。
しかし,本件書籍3の109頁∼124頁には,控訴人及びAは米国の当局にAが
法人税法違反で有罪判決を受けたことは申告していたが,Aの代理人が「懲役刑は
下ったが,それは延期(執行猶予)されており,つまり犯罪的な行為がなかったと
いうことだ」と主張したこと対し疑問を呈する旨の記載がなされていると認められ
る。そして,控訴人は本件書籍3の109頁∼124頁の記載が虚偽である旨の主
Itis張はしていないし,控訴人が米国当局に提出した文書(甲48の1)には「
importanttoonceagainidentifydifferencesbetweentheAmericanandJapanesesystems.
Manytaxissuesandviolations,suchasoccurredhere,wouldbesettledbypaymentof
additionaltaxassessmentsortreatedascivilmattersintheUnitedStates.InJapan,although
thepenaltiessometimesappearcriminalinnature,theguiltypartyisnotreallyconsideres
criminal.Inthiscase,eventhoughMr.wasplacedonprobation,hisprobationisnotA
supervised.Heisundernorestrictionsduringtheprobationaryperiod.Mr.wasneverA
arrestedorplacedunderanyphysicalrestraintbecauseofhisinvolvementasmanaging
director.ThebasisforthistreatmentisthedeterminationbytheCourtsthatMr.motivesA
werenotcriminalinnatureandthattherewerenostrongindicationsofanti-socialor
(原告訳:もう一度いうが,米国のシステムと日本のシステムのanti-moralbehavior.
間の差異を認識することは重要である。本件で起きたような数々の税務問題や違反
は,米国では,追加課税査定額の支払で和解するか,民事事件として取り扱われる
ものである。日本では,しばしば処罰が本来の刑事罰のように見えるが,有罪とさ
れた当事者は実際に犯罪者であるとは見なされないのである。本件でA氏は執行猶
予となったが,保護観察下には置かれず,執行猶予期間中何らの制限を受けなかっ
た。A氏は,代表者として巻き込まれたことを理由に,逮捕されたり身柄の拘束を
受けたことは一切なかった。この扱いの基礎となったのは,A氏が取った行動の理
由には本質的に犯罪性がなく,反社会的又は反道徳的行為ではなかったと裁判所が
決定したことであった。」との記載がされているところ,Aの代理人の主張に対す
る鹿砦社の上記疑問が不適切なものであるとまではいえず,ひいては「控訴人のゲ
ーミング・ライセンスが不安定な要素をはらんでいる。」旨の記載が虚偽であると
いうこともできない。
(4)上記以外の控訴人に関する文章について
ア別紙虚偽事実一覧表番号16の文章には控訴人の40億円の所得隠しが発
覚したとの事実が記載されているが,控訴人が取消訴訟が控訴審係属中であり,税
務当局によって更正処分を受けたことは争っていないことからすると,上記文章が
虚偽であるとまでいうことはできない。
イ別紙虚偽事実一覧表番号33の文章には,国税局と東京地検が控訴人を捜
査対象としようとしており,それが原因で控訴人の顧問だった元警視総監が辞任し
たことが記載されているが,かかる事実が虚偽であること認めるに足りる証拠はな
い。
ウ別紙虚偽事実一覧表番号11,14,15,45,47の文章には,控訴人が元警察官
僚や警察出身政治家を利用して捜査機関やその他の公的機関へ影響力を及ぼしてい
ることが記載されているが,かかる事実が虚偽であることを認めるに足りる証拠は
ない。
エ別紙虚偽事実一覧表番号17∼19の文章には,株価操作やインサイダー取
引が噂される人物を顧問にしたり,インサイダー取引が噂される団体の交流会に参
加していたことなどが記載されているが,かかる事実が虚偽であることを認めるに
足りる証拠はない。
オ別紙虚偽事実一覧表番号41の文章には,控訴人・鹿砦社間の裁判におい
て鹿砦社提出にかかる鑑定意見書を作成した大学助教授に対し,控訴人関係者と思
われる人物が電話をして手を引くように述べたことが記載されているが,かかる事
実が虚偽であることを認めるに足りる証拠はない。
カ別紙虚偽事実一覧表番号42の文章には,控訴人が違法行為,不法行為を
野放しにしている旨が記載されいるが,かかる記載はそもそも具体性を欠く上,虚
偽であることを認めるに足りる証拠もない。
(5)Aに関する文章について
ア別紙虚偽事実一覧表番号12の文章には,Aがバーリー社製のギャンブル
マシンをフルコピーして製作していたことが記載されているが,かかる記載が虚偽
であることを認めるに足りる証拠はない。
イ別紙虚偽事実一覧表番号43の文章には,パチンコ・パチスロホールに設
置された両替機において偽造紙幣が使用されたことについてのAの指示があった旨
が記載されているところ,紙幣(通貨)の偽造は極めて反社会性の高い犯罪行為で
あり,企業を経営する者がこのような行為を行うということはほとんど考えられな
いことからすれば,特定の人物が紙幣を偽造ないし使用したりそれを指示したとの
事実を流布することについては,ごくまれな特段の事情のない限り,虚偽の事実を
流布したと強く推認するのが相当である。本件においては,Aが偽造紙幣の使用を
指示したことを裏付ける主張及び立証は全くなされておらず,上記の特段の事情は
認められないから,別紙虚偽事実一覧表番号43の文章には虚偽の事実が記載されて
いると認めるべきである。
ウ別紙虚偽事実一覧表番号44,46の文章には,Aが米国でカジノ・ライセ
ンスを取得する際に三百代言的に偽証した旨の記載があるところ,前記(3)記載の
経過からすると,上記記載が虚偽であるとまでいうことはできない。
エ別紙虚偽事実一覧表番号13の文章には,Aと殺人を犯した者と個人的な
交際があったことが記載されているが,かかる記載が虚偽であることを認めるに足
りる証拠はない。
オ別紙虚偽事実一覧表番号10,20∼22の文章には,Aの女性関係や愛人と
される女性が控訴人社内において大きな影響力を有していることが記載されている。
証拠(甲40,41)によれば,株式会社光文社が同社発行にかかる発行にかかる
週刊誌「FLASH」に「パチスロ富豪『アルゼ』社長が“愛人”を役員に」と題
する記事を掲載したことにつき,「お詫び本誌平成11年7月20日号に掲載し
たアルゼ株式会社及び同社取締役に関する記事は,取材手続が十分でなかったため,
誤解を与える内容となってしまいました。その結果,同社及び同社取締役の方にご
迷惑をおかけしました。本誌面においてお詫び申し上げます。」との謝罪広告を上
記週刊誌に掲載する旨の裁判上の和解が成立し,FLASH誌上において同旨の謝
罪広告がなされたことが認められるが,訴訟の内容等が明らかではないことなどか
らすれば,上記和解の成立とその和解内容が実施されたことをもって,上記記載が
虚偽であると認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
カ別紙虚偽事実一覧表番号32の文章には,Aが愛人と口論となり,その自
宅に乗り込んだ結果,強盗傷害,住居侵入で逮捕された話があった旨が記載されて
いるが,かかる記載が虚偽であることを認めるに足りる証拠はない。
(6)その他に関する文章について
別紙虚偽事実一覧表番号24,48の文章には,パチスロ業界内では控訴人出身で逮
捕される者が多いことや控訴人の元従業員がいわゆる裏ロムの販売で逮捕されたこ
とが記載されているが,かかる記載が虚偽であることを認めるに足りる証拠はない。
また,控訴人が基盤の無断交換などを日常的に行っていることも記載されているが,
前記(2)ウの事実からすると,上記文章が虚偽であるとまで認めることはできない。
8被控訴人SNKの損害賠償責任
上記のとおり,本件書籍4中の別紙虚偽事実一覧表番号43の文章には虚偽の事実
が含まれていると認められる。同被控訴人は不競法4条の要件を充足する限りにお
いて同条に基づき損害賠償義務があるが,被控訴人サミーについては本件書籍4に
関する同法1条14号該当行為がないから(前記4(2)),控訴人主張の損害賠償
義務はない。そして,前記1の「前提となる前提となる事実経過」の認定事実によ
れば,被控訴人SNKは別紙虚偽事実一覧表番号43の文章を含む本件書籍4が控訴
人の営業上の信用を害するものであることを十分認識しながら,その真偽につき何
らの調査や確認をしないままこれを流布したものである。すなわち,本件書籍1の
配布段階ですらその記述内容が控訴人の信用を毀損することを期待していたのであ
るから,その2年後に刊行され配布された本件書籍4についてはその期待は更に高
まっていたものと推測される。本件書籍4のプロローグ(4頁以下)には,控訴人
とAが「巨悪」だとか,「アルゼが違法行為,不法行為を野放しにしているといっ
ても過言ではない。セタの偽造紙幣事件では既に逮捕者が出ており」との記述があ
り,本件書籍4の本文をつぶさに熟読しなくとも同書籍中に控訴人の信用を毀損し
ようとする意図の記述があるとはおよそ理解できるものである。このようなことを
踏まえると,被控訴人SNKにおいて会長として支配権を有していたBは,本件書
籍の記述中に控訴人ないしAが犯罪行為に荷担したことの記述があることを認識し
ながらそれが真実か否かの確認をあえてしないままにこれを流布したものというべ
きである。したがって,被控訴人SNKの本件書籍4配布行為は不競法2条1項1
4号に該当するものであり,被控訴人SNKには虚偽の事実を流布するにつき故意
があったというべきである。
被控訴人SNKは,本件書籍4は鹿砦社の取材結果に基づくものであって真実で
あると認識していたとか,本件書籍4の具体的内容を細部まで把握することがない
まま買取りを決断したなどと主張するが,かかる事情が故意を否定するものではな
い。
したがって,控訴人SNKは本件書籍4の流布によって控訴人に生じた損害を賠
償する義務がある。
9控訴人が被った損害
(1)ア控訴人の決算短信(丙1の1∼11)によれば,控訴人のパチスロ機売
上台数は以下のとおりである。
平成15年3月期(平成14年4月1日∼平成15年3月31日)
29万6481台
平成16年3月期(平成15年4月1日∼平成16年3月31日)
25万0559台
平成17年3月期(平成16年4月1日∼平成17年3月31日)
約7万8000台
平成18年3月期(平成17年4月1日∼平成18年3月31日)
約6万台
平成19年3月期(平成18年4月1日∼平成19年3月31日)
約6万0700台
イ控訴人作成の「販売台数及び売上高一覧」(甲65)によれば,控訴人
のパチスロ機売上台数は以下のとおりである。
平成11年度37万8827台
平成12年度41万1077台
平成13年度20万8643台
平成14年度29万6570台
平成15年度20万3700台
平成16年度7万8003台
平成17年度4万0530台
(2)控訴人のパチスロ機売上台数は,控訴人の決算短信と控訴人作成の「販売
台数及び売上高一覧」で異なる部分があるが,平成16年3月期(平成15年度)
以降,売上台数が減少していることが認められる。
しかし,証拠(丙1の1∼11)によれば,控訴人の決算短信には,平成16年
3月期(平成15年4月1日∼平成16年3月31日)以降のパチスロ事業不振の
原因として,平成15年6月から7月にかけて販売した「ゴールドX」にプログラ
ム上の不具合が発覚し,同製品の販売停止や返品処理が行われたこと,「ゴールド
X」の不具合を修正した代替製品である「ゴールドXR」は変則押しに対する過度
のペナルティー機能が製品本来の特性を発揮することを阻害し,市場の評価を獲得
できず,それ以降の控訴人の製品販売に悪影響を与えたこと,平成17年3月期
(平成16年4月1日∼平成17年3月31日)においては,開発を進めていた新
機種の申請が全て許可されなかったことにより,旧基準機のみの販売となったこと
から,販売するものが少なく,競争力を発揮することができなかったこと,平成1
8年度3月期(平成17年7月1日∼平成18年3月31日)は,新基準機による
認可取得が9月末までにずれ込んだことが挙げられているが,本件各書籍の出版・
頒布がパチスロ機の販売減少やパチスロ事業の不振の原因である旨の記載は見当た
らない。
かえって,証拠(丙1の2)によれば,控訴人の平成16年度3月期中間決算短
信(平成15年4月1日∼平成15年9月30日)には,「パチスロ・パチンコ事
業」として,「当中間期のパチスロ事業は今年6月から7月にかけて販売した『ゴ
ールドX』のデータ上の不具合から,当社は一時『ゴールドX』の機械販売を停止
し,対応に追われましたが・・・事態収拾のために約2ヶ月もの期間的な損失が
あったにもかかわらず,営業本部による精力的な営業活動を行った結果,計画販売
台数の17万台を大きく上回る230,105台を販売いたしました。」との記載
があり,本件書籍1が出版・頒布された平成15年4月以降の一時期,控訴人がパ
チスロ機の売上げを伸ばしていたことが認められる。
そうすると,平成16年3月期(平成15年度)以降のパチスロ機の売上台数の
減少は本件各書籍の出版・頒布により控訴人の信用が毀損されたことが原因である
と認めることはできない。また,パチスロ機市場における控訴人のシェアが低下し
ているとしても,上記と同様の理由により,その原因を本件各書籍の出版・頒布に
より控訴人の信用が毀損されたことが原因であると認めることもできない。
なお,Aは,陳述書(甲28,64)及び当審における証人尋問において,控訴
人の主張に沿う陳述をし,控訴人従業員の陳述書(甲25∼27)にも同旨の記載
があるが,パチスロ事業不振の原因が本件各書籍の出版・頒布にあることを認識し
ながら投資家向けの資料である決算短信にそれを記載しないとは考えられず,採用
することはできない。
以上より,パチスロ機の売上減少ないしシェアの低下を理由とする損害を認める
ことはできない。
(3)しかしながら,別紙虚偽事実一覧表43の文章の記載内容からして,企業の
社会的名声,信用が一定程度毀損されていることを優に認めることができ,控訴人
の営業規模,本件書籍4の配布規模,記載内容を総合勘案すると,信用毀損による
損害額は200万円と認めるのが相当である。
10謝罪広告の要否
本件書籍4のうち虚偽の事実が含まれていると認められるのはごく一部分である
こと,本件書籍4の出版頒布によって控訴人の売上げが減少したとは認められない
こと等に照らすと,控訴人の営業上の信用を回復する措置として謝罪広告が必要で
あるとまでいうことはできない。
第6結論
以上より,控訴人の本訴請求は,被控訴人SNKが本件書籍4の別紙虚偽事実一
覧表番号43の文章を流布したことにより営業上の信用を毀損されたことによる損害
200万円及びこれに対する不法行為後である平成17年3月25日から支払済み
まで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認
容し,その余は被控訴人サミーに対するものも含めて理由がないので棄却すべきも
のである。そうすると,控訴人の請求を全部棄却した原判決は,被控訴人SNKと
の関係では一部不当であるから主文第1項のとおり変更し,被控訴人サミーとの関
係では相当であるから本件控訴を棄却し,当審の予備的請求も棄却することとして,
主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
塩月秀平
裁判官
真辺朋子
裁判官
田邉実
以下別紙省略

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