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平成26年3月27日判決言渡
平成25年(ネ)第10026号特許権侵害差止等請求控訴事件
平成25年(ネ)第10049号特許権侵害差止等請求附帯控訴事件
(原審大阪地方裁判所平成20年(ワ)第10819号)
口頭弁論終結日平成26年1月14日
判決
控訴人(附帯被控訴人)株式会社松井製作所
訴訟代理人弁護士畑郁夫
同平野惠稔
同重冨貴光
同黒田佑輝
訴訟代理人弁理士河野登夫
同河野英仁
同野口富弘
被控訴人(附帯控訴人)株式会社カワタ
訴訟代理人弁護士室谷和彦
同面谷和範
補佐人弁理士鈴江正二
同木村俊之
主文
1控訴人(附帯被控訴人)の本件控訴及び被控訴人(附帯控訴人)の附帯
控訴に基づき,原判決主文第4,5項を次のとおり変更する。
(1)被控訴人(附帯控訴人)は,控訴人(附帯被控訴人)に対し,635
万0142円及びうち141万6517円に対する平成20年9月2日
から,うち493万3625円に対する平成23年7月7日から,各支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)控訴人(附帯被控訴人)のその余の請求を棄却する。
2訴訟費用(控訴費用,附帯控訴費用を含む。)はこれを3分し,その2を
控訴人(附帯被控訴人)の負担とし,その余を被控訴人(附帯控訴人)の
負担とする。
3この判決は,第1項(1)のうち当審で控訴人(附帯被控訴人)が勝訴した
部分及び第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1控訴人(附帯被控訴人)
(1)原判決中第4及び6項を,次のとおり変更する。
被控訴人(附帯控訴人)は,控訴人(附帯被控訴人)に対し,1億1000万円
及びこれに対する平成20年9月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
(2)訴訟費用は,附帯控訴費用を含め,第1,2審とも,被控訴人(附帯控訴人)
の負担とする。
2被控訴人(附帯控訴人)
(1)原判決中被控訴人(附帯控訴人)敗訴部分を取り消す。
(2)控訴人(附帯被控訴人)の請求を棄却する。
(3)訴訟費用は,附帯控訴費用も含め,第1,2審とも,控訴人(附帯被控訴人)
の負担とする。
第2事案の概要
以下,控訴人(附帯被控訴人,原審原告)を「控訴人」,被控訴人(附帯控訴人,
原審被告)を「被控訴人」といい,原判決で用いられた略語はそのまま使用する。
1事案の概要
(1)原審における請求等
控訴人は被控訴人に対して,イ号製品及びロ号製品を製造,販売等をする行為が,
控訴人の有する本件特許権(発明の名称「粉粒体の混合及び微粉除去方法並びにそ
の装置」。本件特許発明1,2)を直接侵害又は間接侵害すると主張して,本件特許
権(①ないし③について)及び不法行為(④について)に基づいて,
①イ号製品の生産,譲渡,輸出,輸入又は譲渡の申出の差止め
②ロ号製品の生産,譲渡,輸入又は譲渡の申出の差止め
③イ号製品及びロ号製品並びにこれらの半製品の廃棄
④損害賠償金2億2000万円及びこれに対する平成20年9月2日から支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払
を請求した。これに対し,被控訴人は,無効の抗弁及び先使用による通常実施権を
主張した。
(2)原判決の内容等
原審は,①イ号製品に係る被控訴人の行為について,本件特許発明2に係る特許
権に対する特許法101条2号の間接侵害及び本件特許発明1に係る特許権に対す
る同条5号の間接侵害が成立し,②ロ号製品の一部に係る被控訴人の行為について,
本件特許発明2に係る特許権に対する直接侵害及び本件特許発明1に係る特許権に
対する同条4号の間接侵害が成立し,無効の抗弁及び先使用による通常実施権は認
められないと判断して,控訴人の請求のうち,イ号製品の生産,譲渡等の差止め,
ロ号製品の一部の生産,譲渡等の差止め,イ号製品の廃棄並びに損害賠償金として
687万5290円及びうち70万8258円に対する平成20年9月2日から,
うち616万7032円に対する平成23年7月7日から各支払済みまで年5分の
割合による遅延損害金の支払の請求を認容した。
これに対し,控訴人は,損害賠償請求のうち,原判決で認容された分を含めて損
害賠償金1億1000万円及びこれに対する平成20年9月2日から支払済みまで
年5分の割合による遅延損害金の支払を求めて,控訴を提起し,被控訴人は,原判
決のうち被控訴人敗訴部分の取消し及び控訴人の請求の棄却を求めて,附帯控訴を
提起した。
2前提事実及び争点
以下のとおり訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2事案の概
要」の「1前提事実」(原判決3頁1行目ないし5頁24行目)及び「3争点」
(原判決6頁10行目ないし8頁5行目)に記載のとおりであるから,これを引用
する。
原判決4頁11行目の「該吸引空気源」を「前記吸引空気源」に訂正する。
第3争点に関する当事者の主張
以下のとおり,訂正,付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3争
点に関する当事者の主張」(原判決8頁6行目ないし46頁4行目)に記載のとおり
であるから,これを引用する。
1原判決8頁末行の末尾を改行して,次のとおり加える。
「また,プラスチック成形に用いられる材料は,同一の材料であっても,必ずし
も均質ではなく,例えば,使用済みペットボトルを粉砕した再生材のように,様々
な大きさや重さの材料が混在していることがある。不均質な材料を空気輸送すると,
装置の中で偏りを生じ,材料の嵩密度が場所によって異なることがあるため,材料
を均質化する必要がある。このように,供給される材料が1種類の場合でも,流動
ホッパー内部で材料と空気が吸引されることによって混ざり合い,材料の状態が均
質化されるのであり,これも「混合」に含まれる。」
2原判決9頁24行目の末尾に,次のとおり加える。
「同一材料を対象とする場合に「材料の均質化」が図られるからといって,その
ことが,本件特許発明2の特許請求の範囲の「混合」に該当するとはいえない。」
3原判決38頁8行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「また,一つの材料供給源から混合済みの異種材料がホッパー装置へ供給され,
流動ホッパー内で撹拌される場合も「混合」に該当するとの解釈を前提とするなら
ば,以下のとおり,本件特許発明1は進歩性を有しないことになる。すなわち,公
知文献である特開平9-48025号公報(乙88)に,バージン材と粉砕材との
異種材料が混合されてなる混合済み材料が記載されており,被控訴人公然実施発明
において,ホッパー装置と接続された一つの材料供給源に上記の混合済み材料を投
入するだけで,「混合及び微粉除去」がされる技術が示されることになる。そして,
当業者にとって,供給する材料を上記の混合済み材料に替えることに困難性はない
から,本件特許発明1は,進歩性を欠如することになる。」
4原判決38頁12行目の「周知技術」の後に「又は特開平9-48025号
公報に記載された技術」を加える。
5原判決43頁8行目を,次のとおり訂正する。
「なお,イ号製品の構造中には,本件各特許発明以外の特許発明は実施されてい
ないこと,本件各特許発明は,当該技術分野では極めて高い作用効果を有するもの
であることからすると,本件各特許発明のイ号製品に対する寄与度は,少なくとも
95%とするのが相当である。」
6原判決43頁25行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「本件各特許発明における特許請求の範囲の「混合」は,二つの材料供給源から
それぞれ異種の材料がホッパー装置へ供給され,流動ホッパー内で初めて撹拌され
る場合に限られるべきである。そうすると,本件特許権を侵害するのはロ-1-1
号のみであり,その割合は2.6%であるから,本件特許権を侵害するイ号製品の
販売数量は18台((1222台-508台)×2.6%)とすべきである。
また,イ号製品の76.8%は単一材料の微粉除去のために使用されている。し
たがって,仮に,「混合」が,混合済みの異種材料がホッパー装置へ供給され,流動
ホッパー内で撹拌される場合も含むとしても,イ号製品の販売数量のうち76.8%
は本件特許権を侵害しないとすべきである。」
7原判決44頁12行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「また,平成19年11月14日から平成23年7月7日までの間におけるイ号
製品が組み合わされたロ号製品の販売台数は,以下の合計181台である。
(ア)ロ-1-1号製品23台
(イ)ロ-1-2号製品95台
(ウ)ロ-2-2号製品33台
(エ)ロ-3-1-甲号製品0台
(オ)ロ-3-1-乙号製品1台
(カ)ロ-3-2-甲号製品0台
(キ)ロ-3-2-乙号製品28台
(ク)ロ-4-1号製品1台」
8原判決44頁17行目から18行目の「原告製品と競合するのはイ号製品で
はなく,乾燥機自体である。」を「顧客は乾燥機に着目して購入を決定することから
すると,市場で競合しているのは,原告が販売する乾燥機とイ号製品が組み込まれ
た乾燥機自体である。」と訂正する。
9原判決44頁18行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「本件各特許発明は,その大部分が公知の構成に基づくものであるから,その技
術的価値は極めて低い。また,イ号製品は,大部分が乾燥機等の一部として販売さ
れているが,需要者は乾燥機本体に着目して購入を決定している。したがって,本
件特許発明の寄与率は1%程度と評価されるべきである。
さらに,特許法101条2号及び5号の間接侵害による損害額の算定においては,
非侵害用途の目的で譲渡された製品については,損害額算定の対象から除外すべき
である。イ号製品のうち被控訴人が複数材料に使用されることを認識できたのは,
ロ号製品の一部として譲渡した場合のみであり,ロ号製品のみを損害額算定の基礎
とすべきである。」
10原判決45頁16行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「ウ製造中止について
被控訴人は,平成23年8月までにイ号製品の製造を中止した。したがって,イ
号製品,ロ号製品につき,差止めの必要はなく,差止請求は棄却されるべきである。」
第4当裁判所の判断
1以下のとおり,訂正,付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第
4当裁判所の判断」の「1-1」ないし「8」(原判決46頁5行目ないし67頁
9行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決51頁21行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「この点,控訴人は,プラスチック成形に用いられる材料は,同一材料であって
も,再生材などでは大きさや重さの異なる材料が混在しているものがあり,空気輸
送により偏りが生じ,材料を均質化させる必要があること,同一材料が供給される
場合でも,流動ホッパー内部で,材料の状態の均質化が図られることから,同一材
料を均質化させることも「混合」に該当すると主張する。
しかし,以下のとおり,控訴人の主張は失当である。
本件各特許発明における特許請求の範囲の「混合」の意義については,均質化す
る必要性の有無や流動ホッパー内で材料が均質化されるか否かにより解釈されるべ
きではなく,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明等の記載を斟酌して解釈すべき
である。そうすると,本件各特許発明に係る「特許請求の範囲」及び「発明の詳細
な説明」の各記載を検討したとおり,特許請求の範囲の記載中の「混合」とは,2
つ以上の異種材料を混ぜ合わせることに限定され,同一材料が互いに混ざり合う状
態となることは含まれないと解するのが相当である。同一材料が流動ホッパー内で
互いに混ざり合ったことにより,結果として,均質化されることがあったとしても,
そのことをもって,本件各特許発明における特許請求の範囲の「混合」に該当する
とはいえない。
また,控訴人は,被控訴人による特許出願に係る公開公報(甲110ないし11
3)や被控訴人のパンフレット(甲37,38),その他の文献(甲21,24,2
6,27,114,115等)において,同一材料の「混合」の例等が記載されて
おり,その記載に照らすならば,「混合」には同一材料を混ぜ合わせた場合も含まれ
ると解するのが合理的であると主張する。
しかし,被控訴人がパンフレットにおいて説明した内容等に,同一材料を用いる
例が示されたからといって,そのことは,本件各特許発明における「混合」の解釈
に何ら影響を与えることはないから,控訴人の上記主張を採用することはできな
い。」
(2)原判決52頁13行目から17行目に掛けての「そして,ホッパーに輸送さ
れる前の時点で複数の材料(異種材料)が一旦「混合」がされていた場合にも,混
合ホッパー内において,新たな材料の追加がなくても撹拌又は流動がされる以上,
「混合」を含む構成要件を充足すると解するのが相当であり,この場合を除くべき
ものと解釈する理由は見当たらない。」を次のとおり改める。
「なお,被控訴人は,本件明細書には,解決課題として,材料の一部が「未混合
のまま」一時貯留ホッパーへ直接送られることを防止することであるとの記載があ
ることに照らすならば,既に混合された材料について「未混合のまま」と解するこ
とはできず,既に混合された材料を混ぜ合わせても「混合」には該当しないと主張
する。
しかし,複数の材料(異種材料)が混合ホッパーに輸送される以前に混合されて
いるとしても,混合状態が十分でなく,さらに混合することを要する場合もあり得
ること等を考えるならば,一旦混ざり合った材料であっても,その一部がさらに混
合されることなく一時貯留ホッパーへ直接落下する場合にこれを防止することも,
本件各特許発明の解決課題から排除されるものではないと解するのが合理的である。
したがって,複数の材料が一旦混合されていた場合でも,「混合」を含む構成要件を
充足すると解するのが相当である。」
(3)原判決59頁19行目の「混ぜ合わせることをいい,」の後に,「前記のとお
り」を加える。
(4)原判決60頁6行目の「ロ号製品」を「ロ-1-1号製品」と訂正する。
(5)原判決61頁23行目の「引用発明2と」の後に「被控訴人」を加え,「公
然実施発明」の後に,「。5-4については,被控訴人公然実施発明と周知技術。」
を加える。
(6)原判決62頁3行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「(3)争点5-4について
被控訴人は,被控訴人公然実施発明に公知技術である乙88記載の技術を組み合
わせることにより,本件各特許発明の構成に至るのは容易であると主張する。しか
し,被控訴人の主張は,本件各特許発明と被控訴人公然実施発明との相違点が「混
合及び微粉除去」か「微粉除去」かの1点だけであることを前提としたものである。
そして,前記知財高裁平成23年9月6日付け判決において,本件各特許発明と被
控訴人公然実施発明との間には,上記の点以外にも相違点があると認定されている
ことからすると(甲90),上記主張は,実質的にこの点における主張の蒸し返しで
あり,信義則に反し許されないというべきである。なお,被控訴人は,原判決と無
効審判請求(無効2009-800161)における審決及び上記知財高裁判決と
では「混合」の解釈が異なっており,上記審決や上記知財高裁判決を基に判断する
ことはできないと主張する。しかし,上記審決では,「混合」が「二種類以上の材料
の混合であるとみるのが自然である」と解釈されてはいるものの,混合済みの2種
類以上の材料の再混合がこれに含まれるか否かについては明確には判断しておらず
(甲58),また,上記知財高裁判決では「混合」の解釈については判示しておらず
(甲90),被控訴人の上記主張は失当である。」
(7)原判決62頁4行目の「(3)」を「(4)」に訂正する。
(8)原判決63頁末行の「(甲96~98)」を「(甲45,46,86,96~
98(96及び97については枝番省略。))」と,同行から64頁1行目の「原告が
販売するイ号製品に対応する本件各特許発明の実施品の」を「控訴人は,本件特許
の登録以前から,イ号製品に対応する本件各特許発明の実施品である「エアロパワ
ーホッパー(APH)-1」及び「APHG」を販売していること,当該製品の」
と訂正する。
(9)原判決64頁10行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「また,本件明細書によると,本件各特許発明は,混合済み材料の充填レベルが
供給管の横向き管における最下面の延長線又は延長線よりも下方に降下する前に,
流動ホッパーへの材料の吸引輸送を開始するようにすることにより,材料が未混合
のまま一時貯留ホッパーへ直接落下するのを防止することを目的とした発明であ
る。」
(10)原判決64頁14行目の●●●●●●●●●●●と訂正する。
(11)原判決64頁19行目を次のとおり訂正する。
「[計算]●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
(12)原判決64頁末行から65頁4行目までを,次のとおり改める。
「ただし,前記のとおり,イ号製品自体は同一材料の微粉除去のみに用いること
も可能であり,本件特許発明2の直接侵害は成立せず,イ号製品の譲渡等につき本
件各特許発明の間接侵害が成立するのは,ロ号製品の一部として組み込まれた場合
など,イ号製品が2つ以上の異種材料の「混合」を行う場合に限られる。平成18
年2月10日以降に販売されたイ号製品1222台のうち,1133台は乾燥機等
の一部(付属品)として(販売形態α),47台が株式会社カワタテクノサービスへ
単体で(販売形態γ),42台が販売形態α以外の態様で(販売形態γに該当するも
のを除く。販売形態β)販売されたものである(乙92の2)。また,前記のとおり,
同日から平成19年11月14日までのイ号製品の販売数量は508台であるとこ
ろ,ロ号製品に組み込まれて販売されたのは82台であり,また,同日から平成2
3年7月7日までのイ号製品の販売数量は714台であるところ,ロ号製品に組み
込まれて販売されたのは181台である(乙92の2)。そして,販売形態β及びγ
の形態で販売されたイ号製品も,その後,異種材料を混合するために使用される可
能性がある。
以上によると,平成19年11月14日以降に販売したイ号製品のうち少なくと
も約6割については,イ号製品の販売がなければ控訴人はイ号製品に対応する本件
各特許発明の実施品を販売することが可能であったとはいえない。したがって,平
成19年11月14日以降におけるイ号製品の販売については,●●●●●●●●
円の限度で理由がある(特許法102条1項)。
[計算]●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
(13)原判決65頁4行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「なお,被控訴人は,控訴人が販売する本件各特許発明の実施品はイ号製品と競
合するものではなく,特許法102条1項の「特許権者がその侵害の行為がなけれ
ば販売することができた物」には該当しないと主張する。しかし,以下のとおり,
被控訴人の主張は失当である。控訴人と被控訴人とは競業関係に立ち,控訴人は,
本件特許権が登録される以前において,既にイ号製品に対応する本件各特許発明の
実施品を単体又は乾燥機等の付属品として販売していたことからすると,本件にお
いて,特許法102条1項の適用を排除する事情はないと解される。」
(14)原判決65頁8行目の「687万5290」を「635万0142」に訂
正する。
(15)原判決65頁14行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「(5)被控訴人の主張に対して
被控訴人は,控訴人が販売するイ号製品に対応する本件各特許発明の実施品から
得られる利益額の算定に関し,①株式会社マツイ・エス・ディ・アイ(以下「松井
SDI」という。)による取引が含まれている,②イ号製品にはない容量の実施品ま
で含めて計算している,③見積額が0円とされた取引について,定価販売したもの
としている,④実施品は松井SDIが製造したにもかかわらず,控訴人が製造した
前提で,原価計算しているなどと主張する。
しかし,以下のとおり,被控訴人の主張は失当である。
松井SDIは控訴人の100%子会社であることに照らすならば(甲99),控訴
人が本件各特許発明の実施品を販売することにより得られる利益額について,松井
SDIの製造販売に係る製品と控訴人の製造販売に係る製品を区別することなく,
算定の基礎とすることがあながち不合理であるとはいえない。また,イ号製品は仕
込量が15kgから150kgの乾燥ホッパーに使用可能な製品であるのに対し
(甲103),控訴人が販売する本件各特許発明の実施品(APHG)は,乾燥機の
仕込量に応じて複数の種類が販売されているものであり(甲46),これら全種類に
ついて,イ号製品が販売されなければ販売可能であったとして,利益額を算出する
ことも,不合理であるとはいえない。さらに,本件各特許発明の実施品の製作依頼
書には,実施品の見積額として「0円」と記載されたものがあるが,併せて乾燥機
全体についての見積額が記載されていることからすると,実施品については乾燥機
全体に含めて見積もったものと推認され,これらについて参考価格に基づいて利益
額を算出することが不合理であるとはいえない。」
(16)原判決66頁14行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「また,被控訴人は,イ号製品については販売を終了し,在庫はなく,既に設計
変更を行っているので,差止めの必要はないと主張する。しかし,被控訴人はこれ
までイ号製品の製造,販売等を行っていた経緯に照らすならば,今後,イ号製品の
製造,販売等を行う可能性がないとはいえず,イ号製品に関する差止請求を認める
のが相当である。」
(17)原判決66頁21行目から22行目の「被告が本件特許登録後にロ-4-
1号製品の製造販売をしたことを認めるに足りる証拠はない。」を「被控訴人は,本
件特許登録後1台ロ-4-1号製品を販売したことを認めているが,控訴人はロ-
4-1号製品の販売等の差止請求を棄却した原判決について控訴を提起していない
ので,判断をしない。」と訂正する。
2結論
以上のとおり,控訴人の控訴請求及び被控訴人の附帯控訴請求は,損害賠償請求
につき,損害賠償金635万0142円及びうち141万6517円に対する平成
20年9月2日から,うち493万3625円に対する平成23年7月7日からの
年5分の割合の遅延損害金の支払に変更する限りで理由があり,その余の控訴請求
及び附帯控訴請求はいずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
八木貴美子
裁判官
小田真治

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