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(原審・東京地方裁判所平成10年(ワ)第5272号損害賠償請求事件(原審言渡日平成13年2月6
日))
     主      文
 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人らの負担とする。
     事実及び理由    
第一 控訴の趣旨
 一 原判決を取り消す。
 二 被控訴人は、各控訴人に対し、それぞれ金100万円及びこれに対する平成1
0年3月25日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
 一 本件事案の概要は、当審における控訴人らの主張を次の二のとおり加えるほ
か、原判決「事実及び理由」欄中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるか
ら、これを引用する。
 二 当審における控訴人らの主張
  1 Nシステムにおいて、車両の運転者及び同乗者が撮影されたとしても、被控
訴人主張のように、それが人目に触れることなく処理され、運転者等の容ぼう等の
画像が記録、保存されることがないということはあり得ない。このことは次の事実か
らも明らかである。
   (一) ストロボの照射範囲の変遷
     Nシステムが車両のナンバーデータの取得を目的とするものであるならば、
その装置により車両のナンバープレートを照射することで足りるはずであり、現に初
期のものは、専ら車両先端部にあるナンバープレート付近を照射していた。ところ
が、その後、Nシステムに改良が重ねられるにつれて、運転席、助手席を含む車両
全体に赤外線を照射する型式のものが増えてきた。これは、Nシステムの対象がナ
ンバープレートから運転者及び同乗者へと変化していることを示している。
   (二) 自動車盗で検挙された犯人1人当たりの車両窃取台数の変化
     自動車盗で検挙された犯人1人当たりの車両窃取台数は、平成4年までは
1人平均2.32台であったものが、平成5年からはそれが3.0台を超え、同年から
平成10年までの1人平均窃取台数は3.4台に達している。これは、Nシステムに
運転者の容ぼう等の画像データが含まれるに至ったため、1人の犯人を検挙したと
きの余罪捜査が容易になったためと考えられる。
   (三) 警察が様々な方法で画像データの活用を意図していること
     Nシステムと同様の末端を使用し、画像の記憶装置をも備えた車両の速度
取締装置について、現在、特許請求がなされており、また、警察とコンビニエンスス
トアをオンラインでつなぎ、コンビニエンスストア側の操作によって監視カメラの画像
を警察に送る実験も開始されている。更に、警察では、運転免許証の書替え時に撮
影された顔写真のデータ化など、人の顔を識別するためのデータ収集を積極的に
推進している。
     以上に鑑みると、もともと、画像の撮影、記録、保存機能を備えるハイテクカ
メラを主要な構成要素とするNシステムが、画像の記録、保存を敢えて行わないと
いうことは、著しく不自然である。
  2 Nシステムの目的が、盗難車両や、自動車使用犯罪における被疑者の車両
を速やかに捕捉し、犯人を検挙することにあるとすることは、あくまでも被控訴人の
建て前であり、Nシステムは、現実には、諜報、公安、場合によっては警察の内部
監視を目的として使用されているものである。
    また、Nシステムに記録されたナンバーデータについて、被控訴人は、一定
期間保存された後消去されることになっていると主張するが、一定期間とは具体的
にどの程度の期間かの明示がなく、データの廃棄方法も不明であり、現実に廃棄さ
れていることを示す証拠の提出もないことからみると、上記主張のような方法が取
られているとは認められない。
  3 Nシステムは増殖を続けており、本訴提起時には全国で400箇所強の設置
であったものが、控訴提起時には680箇所を数えるに至り、国民の権利、自由に対
する制限が強まっている。
  4 以上からみるならば、Nシステムの設置が違法なものであることは明らかで
ある。
第三 当裁判所の判断
 一 当裁判所も、控訴人らの本件請求は理由がなく棄却すべきものと判断する。
その理由については、当審における控訴人らの主張に対する判断として次の二の
とおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「第三 争点に対する判断」に
記載のとおりであるから、これを引用する。
 二 当審における控訴人らの主張について
  1 当審における控訴人らの主張1(一)の事実(Nシステムにおいて、運転席、助
手席を含む車両全体に赤外線を照射する型式のものが増えていること)及び同1
(三)のうち、画像記憶装置を備えた速度取締装置の特許請求がなされている事実
については、それらが、直ちに、Nシステムにより運転者等の画像が記録、保存さ
れていることを示すものとはいえず、このことは前記引用に係る原判決において説
示するとおりである。
  2 また、当審における控訴人らの主張1(二)の主張事実(自動車盗の犯人1人
当たりの車両窃取台数)については、甲23(Aの陳述書)中にそれに沿う記載があ
るが、仮にそのとおりであるとしても、そのことから、直ちに、Nシステムにおいて車
両運転者等の画像が記録、保存されている事実を認めることは困難であり、同1
(三)の特許請求以外の主張事実についても、仮にそのような事実があるとしても、
同様に解される。
  3 Nシステムの目的及び方法についても、当審における控訴人らの主張2のよ
うに解すべき根拠はなく、かえって、前記引用に係る原判決掲記の証拠によると、
それらについて原判決認定のとおり認めることができる。
    同3についても、仮にNシステムの設置箇所について控訴人らの主張を前提
としても、その程度からみて、控訴人ら主張の情報コントロール権に関する前記引
用の原判決の判断を左右するものではない。
  4 なお、控訴人らが当審において提出した甲33(新聞記事)によると、刑事事
件の被疑者の乗用車が京都市内の交差点に設置された「交通監視カメラ」に撮影、
記録されていた旨の記事が平成13年6月18日付の新聞に掲載されたことが認め
られるが、その「交通監視カメラ」がNシステムに該当するものであるか否かは必ず
しも明らかではなく、また、その記事内容も、被疑者自身の姿、容ぼう等が撮影、記
録されていたとするものでもないから、それが、Nシステムにおける運転者等の画
像の記録、保存の事実を裏付けるものとはいえない。
第四 結論
  以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却すること
とし、控訴費用の負担について民事訴訟法第67条第1項、第61条、第65条1項を
適用して、主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第5民事部
  
     裁判長裁判官  魚 住 庸 夫
  
          裁判官  飯 田 敏 彦
  
          裁判官  持 本 健 司

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