弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     一 本件控訴を棄却する。
     二 控訴費用は、控訴人の負担とする。
         事実及び理由
 第一 当事者の求めた裁判
 一 控訴の趣旨
 1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
 2 被控訴人は、控訴人に対し、金三〇〇〇万円及びこれに対する平成四年九月
一日から支払済みまで年五・八七五パーセントの割合による金員を支払え。
 3 訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
 (当審における請求の減縮により、控訴人の請求は、右2のとおりとなった。)
 二 控訴の趣旨に対する答弁
 主文同旨
 第二 当事者の主張
 次のように付加、訂正、削除するほかは、原判決の事実及び理由の「第二 事案
の概要」の冒頭部分の第一文(同四頁三行目から同八行目まで)及び一、二に記載
のとおりであるから、これを引用する。
 一 原判決六頁九行目の括弧書きの中の「条例」を「本件条例」に改め、同一一
行目から同七頁一行目にかけての括弧書きの次に「合計四二三五万円」を加え、同
四行目及び同六行目の「条例」を「本件条例」に、同七行目の「子メーター」を
「戸メーター」に、同一〇行目の「したがって」を「控訴人のaの給水計画は、原
判決別紙物件目録二(ただし、同(2)の『子メーター』を『戸メーター』に改め
たもの)記載のとおりであるところ、控訴人は」に改め、同八頁四行目の「給水契
約の申込み」の次に「(以下『本件給水申込み』という。)」を加え、同四、五行
目の括弧書きを削る。
 二 同七行目の「本件申込み」を「本件給水申込み」に改め、同九頁八行目の次
に次のように加える。
 「水道法一四条一項は、『水道事業者は、料金、給水装置工事の費用の負担区分
その他の供給条件について、供給規程を定めなければならない。』としている。同
項の規定の趣旨は、附合契約である給水契約の約款としての供給規程の内容を水道
事業者の自由な作成に委ねると、水道事業者に一方的に有利なものとなり、需用者
の利益を不当に害するおそれがあるため、供給規程の内容について厚生大臣がその
認可等の手段により介入し、もって需用者の利益を保護することにある。したがっ
て、供給規程に含まれるべきでない事項(供給条件に当たらない事項)は、たとえ
水道事業者たる市町村が水道事業に関し、制定した条例(給水条例)に定められて
いたとしても、附合契約の約款とはならない。なお、標準給水条例に関する厚生省
通達は、『この標準給水条例には、……法的な条例事項のほかに管理規程に譲り得
るものも含まれているので、条例事項以外は必要に応じて、規程の内に移しても差
し支えない』と述べているが、このことは、給水条例に規定された事項がすべて供
給条件に当たるとは限らないことを示している。
 地方公共団体たる水道事業者については、供給規程の認可主義は採用されておら
ず、料金変更について厚生大臣に対する届出義務があるにすぎない。これは、地方
公共団体たる水道事業者の事業活動について国が監督せず、放任する趣旨ではな
く、通達、求報告、立入検査及びその結果に基づく認可取消し、供給改善命令等の
強力な指揮監督手段によってその内容の適正を確保することとしたことによるもの
である。
 右の厚生省による標準給水条例の示達は、民間水道事業者の供給規程における認
可基準に代わるものであり、附合契約の約款に対する国の行政的介入の趣旨からい
って、水道事業者たる地方公共団体が制定する条例の内容のうち、附合契約の約款
たる供給規程に該当する部分(供給条件に該当する部分)については、標準給水条
例に反することは、許されないというべきである。標準給水条例には、水道加入金
に関する定めはないが、このことは、水道事業の所管官庁である厚生省の見解によ
れば、水道加入金は供給規程の中に定めるべき事項ではないこと、すなわち、水道
加入金は『供給条件』に該当しないことを意味している。したがって、b町が本件
条例中に寄付金の性格を有する水道加入金について定めることはもとより自由であ
るが、水道加入金に関する条項は、供給条件には該当しない。」
 三 同九頁九行目の「条例」から同一〇行目の「それは」までを「憲法九四条、
地方自治法一四条一項によれば、地方公共団体は、国の法令の範囲内において、こ
れに違反しない限度で当該地方公共団体の事務について条例を制定することができ
るのであって、国の事務については、個別的委任がない限り条例を制定することが
できない。すなわち、憲法上法律に留保されている事項はもとより、国の法令で先
占された領域については、条例制定権は、及ばないのである。そして、憲法二九条
二項は、財産権の内容についての定めを法律に留保しているから、条例で財産権の
内容を制限し、侵害することは許されず、また、条例は、行政法規の一種であり、
国法の独占する領域である私法秩序の形成に関する事項は、条例の所管事項ではな
いところ、水道の利用関係は、私法関係に属するから、本件条例が水道加入金の支
払を義務づけているとすれば、それは、給水申込者に対して」に改める。
 四 同一〇頁一行目の次に次のように加える。
 「さらに、b町と地形、人口、観光客数、財政規模等が類似している市町村の水
道事業において、本件条例における水道加入金のように高額な水道加入金の支払を
義務づけ、これを徴収している例はなく、このように著しく高額な水道加入金を前
納しない新規需用者に対し、給水を拒絶することができるとすれば、b町に移転す
る希望を持つ国民がb町に事実上移転できないことになるから、本件条例の水道加
入金の定めは、憲法二二条に違反する。」
 五 同九行目の「本件申込み」を「本件給水申込み」に、同一一頁四行目の「責
任がある。」を「責任があり、控訴人は、被控訴人ら対し、その内金三〇〇〇万円
の支払を求める。」に改め、同行目の次に次のように加える。
 「三 被控訴人の主張
 1 地方公共団体の経営する企業については、その経営に要する経費は、当該企
業の経営に伴う収入をもってこれに充てるのが原則であり(地方財政法六条)、当
該経費の負担の方法は、当該地方公共団体の置かれている社会的、経済的状況を勘
案したうえで、一定の政策的判断を加えて決定されるべきものである。水道加入金
は、料金とは異なるが、水道経営に必要不可欠なものであり、継続的かつ安定的な
給水と対価関係に立つものであるから、水道法一四条一項の『その他の供給条件』
としてその負担を求めることができるものである。
 2 水道法一四条一項は、『水道事業者は、料金、給水装置工事費用の負担区分
その他の供給条件について、供給規程を定めなければならない』と定めているが、
その趣旨は、水道事業者と水道の需用者との給水契約の内容(供給条件)をあらか
じめ供給規程として定めておかなければならないということにある。すなわち、そ
の性質上、附合契約とならざるを得ない給水契約の内容を供給規程で定めたうえ
で、その供給規程を事前に一般に周知させることとして(同条五項)、給水契約の
申込者が予測できない不利益を被ることのないように配慮しているのである。いい
換えれば、需用者が負うべき義務の内容は、法定されているものを除き、そのすべ
てが供給規程に定められていなければならない反面、供給規程に定められている以
上、給水契約の締結者は、当然にこれに基づく義務を負うことになるのである。
 本件加入金は、本件条例二七条に定められ、その支払が供給条件の一部をなし、
料金と一体となって、本件簡易水道の事業経営の基礎をなし、これを支えているも
であるから、水道加入金に関する条項だけが附合契約たる給水契約に含まれないと
する控訴人の主張は、理由がない。
 3 水道加入金の正当性を判断するに当たっては、水道事業を巡る自然的、社会
的、経済的条件、水道事業の実態、水道事業の従前の経緯、既存の需用者との公平
などを総合考慮し、水道加入金の必要性を検討する必要があるところ、本件簡易水
道に係る水道事業には、次のような事情がある。
 (一) b町は、地形的に急峻であることなどから、もともと給水設備に多額の
投資を要する。
 (二) 定住人口に匹敵するほどの観光客が存在し、しかも、これが夏期に集中
するため、一時的な水需要増大に対応する設備が必要である。
 (三) 本件簡易水道は、町内の簡易水道組合の事業を統合したものであるが、
水源は乏しく、施設も老朽化しているため、水源開発、施設の補修・新設に多額の
資金を要する。
 (四) 統合前の簡易水道組合の施設は、組合員の人的・物的負担により建設さ
れたものであり、ほとんどの組合において新規加入者から権利金を徴収していた。
 (五) 町内における給水先の戸数の増加については、近年、常時水道を使用し
ない別荘の増加が顕著である。
 (六) 簡易水道特別会計に一般会計から財源を繰り入れるにも限度があり、同
特別会計においては、水道加入金が重要な財源となっている。
 したがって、b町にとっては、本件簡易水道の財政的基盤を維持する収入源とし
て、水道加入金は必要不可欠であり、その制度が正当であることは明らかである。
 4 控訴人の本件給水申込みには、水道法一五条一項は適用されない。
 水道法一五条一項は、『水道事業者は、事業計画区域内の需用者から給水契約の
申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない』と規定
するが、これは、需用者が水道法一四条一項の供給規程に定める供給条件を承諾し
た上で行う給水契約の申込みについて適用されるものであり、その供給条件と異な
る条件を提示してした給水契約の申込みを承諾すべきことを定めるものではない。
また、地方公共団体の執行機関であるb町長としての被控訴人は、条例や規則に従
った内容の契約を締結する義務があり、任意に条例や規則の定めるところと異なる
契約を締結することは許されない。
 控訴人は、水道加入金の支払に関する本件条例の規定に従わないことを明らかに
したうえで本件給水申込みをしたものであるが、このような申込みは、水道法一五
条一項の全く予定していないところであり、このような場合には、同項は適用され
ないと解すべきであるから、被控訴人が本件給水申込みにつき承諾を拒否したのは
当然であって、同項にいう『正当の理由』の有無を問題とするまでもなく、これを
拒否することができるものである。
 仮に、本件給水申込みに水道法一五条一項が適用されるとしても、水道加入金
は、水道事業を適正に運営するための財政的基盤を維持するための収入源であり、
その支払を拒否することは、水道事業の適正な運営を図ることを目的とする水道法
の趣旨に反する行為であるから、本件給水申込みに対する承諾を拒否する正当の理
由に当たることは明らかである。」
 第三 当裁判所の判断
 一 本件給水申込みの拒否の違法性の有無について判断する。
 1 水道法は、水道が国民の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くこと
のできないものであり、水道事業が公共的性格を有するものであることに鑑み、私
法上の契約である給水契約の締結について規制を加えており、水道事業者に対し、
料金、給水装置工事の費用の負担区分その他の供給条件について、供給規程を定め
る権限を与え、かつ、義務を負わせる(一四条一項)一方、需用者から給水契約の
申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならないものとし
て、給水契約の申込みに対し受諾義務を負わせ、契約の締結を強制するとともに
(一五条一項)、水道事業者は、供給規程を、一般に周知させる措置をとらなけれ
ばならないものとし、給水契約の申込みをする者が不測の不利益を受けることがな
いように配慮している(一四条五項)。また、水道事業を経営しようとする者は、
厚生大臣の認可を受けなければならないものとし(六条一項)、その認可を受ける
に当たっては、申請書に添付する事業計画書に、料金、給水装置工事の費用の負担
区分その他の供給条件を記載して提出しなければならず(七条一、二項)、厚生大
臣は、料金が能率的な経営の下における適正な原価に照らし公正妥当なものである
こと、特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないことなど一四条四項
各号に規定する要件に適合すると認めるときでなければ、その認可を与えてはなら
ないとして(八条)、供給条件の内容の適正を確保するものとしている。
 <要旨>これらの規定によれば、供給規程に定める供給条件は、水道法一四条四項
各号の規定の趣旨を逸脱する不合理なものであってはならないが、供給条件
がそのような不合理なものでない限り、水道事業者と需用者との給水契約は、専ら
水道事業者が定めた供給規程の供給条件により規律されるものと解するのが相当で
ある。したがって、水道事業者は、需用者から、供給規程に定める供給条件に従わ
ず、あるいは、右供給条件とは異なる契約条件を示した給水契約の申込みを受けた
場合には、その受諾を拒絶することができるものといわなくてはならない。同法一
五条一項は、水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需用者から給水契約の
申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならないものとし
ているが、この規定は、需用者からの給水契約の申込みが供給規程に定める供給条
件に従っていることを当然の前提とするものであると解されるから、需用者から供
給規程に定める供給条件に従わず、あるいは右供給条件とは異なる契約条件を示し
た給水契約の申込みを受けた場合には、同項の規定によって、これを受諾すべき義
務が生ずるものとはいえないのである。
 2 ところで、本件条例は、本件簡易水道事業の給水についての料金及び給水装
置工事の費用負担、その他の供給条件並びに給水の適正を維持するために必要な事
項を定めることを目的として制定されたものであるところ(本件条例一条)、その
二七条は、一項においては、給水装置の新設等をする者から水道加入金を徴収する
旨規定した上、二項において、供給装置のメーターの口径(一三ミリメートルない
し七五ミリメートル)に応じて水道加入金の額(三〇万円ないし三六〇万円)を定
め、三項において、前項の規定にかかわらず、共同住宅等の水道加入金の額は建築
物の一区画(一戸)につき三〇万円とすると定めるとともに、四項において、水道
加入金は、当該工事の申込みの際に納入しなければならない旨を規定している。そ
して、本件条例では、本件簡易水道の給水装置の新設等の申込みは、右新設等に伴
う給水契約の申込みを包含するものと解されるから、本件条例は、右の給水契約の
申込みをする者に対して、申込みと同時に、すなわち、b町が申込みを承諾する前
提として、水道加入金を納付することを要求しているものということができる。
 そうすると、本件条例の水道加入金は、その納付が右の給水契約の締結の前提と
なっていて、水道法一四条一項に例示されている料金、給水装置工事の費用負担区
分と同様に、水道の供給の条件といえるものであるから、同項にいう「その他の供
給条件」に該当するものと解するのが相当である。
 なお、本件条例の水道加入金は、右に述べたところから寄付金に当たるといえな
いことは明らかであり、私法上の契約に当たる給水契約にかかわるものであって、
受益者に受益の限度で負担させるとの考慮によるものであることを窺い得ないか
ら、地方自治法上の分担金に当たるといえないこともいうまでもない。
 控訴人は、標準給水条例には、水道加入金に関する定めがなく、このことは、水
道加入金が供給条件に該当しないことを意味していると主張するが、標準給水条例
は、社団法人日本水道協会が作成した一般的な供給規程の参考例にすぎないもので
あるし、その作成の趣旨(全国的な一般的事項を記載し、地方の特殊事情を必ずし
も折り込んでいない。)からしても、これに定められていない事項を供給規程の中
に定めることを否定するものではないから(甲三五。なお、厚生省の所管課長が標
準給水条例に若干の註解を付した上、都道府県宛に参考送付しているが、このこと
も、右判断を左右しない。)、控訴人の右主張は、失当である。
 3 本件加入金の総額につき、控訴人は、水道法及び本件条例に定める「給水装
置」には、aのように共用給水装置を設置した上、各戸に給水する場合の戸メータ
ーは含まれないから、戸メーターの数及び口径にかかわらず、共同給水装置内のメ
ーターの数及び口径により算出されるべきであると主張する。
 まず、本件条例二七条一項は、給水装置を新設する者から水道加入金を徴収する
ものとしているところ、控訴人は、aについては、同項の「給水装置を新設する
者」に該当するから、本件条例の水道加入金を徴収されるべき者であることはいう
までもない。次に、同条二項は、水道加入金の額を水道メーターの口径に応じて定
め、同条三項は、「前項の規定にかかわらず」とした上、共同住宅(リゾート・マ
ンション、アパート)等の水道加入金の額を一律に一区画(一戸)につき三〇万円
とする旨を規定しているところ、これらの規定の趣旨に照らすと、同項は、共同住
宅等については、共同給水装置を設置してこれから各戸に配水する場合であって
も、一区画(一戸)ごとに水道加入金の支払を要するものとし、その額を一区画
(一戸)当たり三〇万円とする趣旨の規定であると解するのが相当である。同項を
含む本件条例二七条の規定についての控訴人主張の右解釈は、共同住宅等において
は、共同給水装置を設置し、これから各戸に配水することによって、各戸ごとに水
道加入金を支払う必要がなくなることとなり、共同住宅等について各区画(各戸)
ごとに水道加入金の支払を求める同条の趣旨が没却されることになるとともに、共
同給水装置を設置しない共同住宅等との均衡を著しく欠く結果になるから、不当で
あって、容易に採用することができない。
 したがって、各戸ごとに水道加入金の支払を要するものとしてb町が算出し、控
訴人に対し支払を求めたaに係る本件加入金の総額は、本件条例に基づくものとし
て正当である。
 4 そこで、本件条例の水道加入金に係る供給条件の合理性につき検討する。
 甲第九号証、乙第六号証の一、二、第七号証から第二三号証までによれば、次の
事実が認められる。
 (一) b町は、山梨県北端の山間部に位置し、南北二〇・九キロメートル、東
西六・七キロメートルの南北に長い細長い地形で、その総面積は、六四・五八平方
キロメートルであり、その地勢は、南々西から南北に傾斜し、山や谷が多く、集落
は、標高六〇〇メートルから一二〇〇メートルにわたる傾斜地に散在している。同
町内には河川その他の水源が乏しく、主要な水源は、各所に散在する小規模の湧水
及び井戸(地下水)並びにダム用水からの受水である。
 そのため、本件簡易水道においては、配水管を効率的に布設することが困難であ
り、水源である湧水及び井戸からの取水及び送水並びにダム用水の送水のためにポ
ンプ等の施設が相当数必要であることから、これらの施設の維持及び整備等に多額
の費用を要する実情にある。また、町内には、水源がもともと乏しいことから、近
年の水需要の増大に応じるために、新たな水源の開発にも資金を投じなければなら
ない。
 (二) 本件簡易水道事業は、昭和六三年ころに町内の多数の簡易水道組合を統
合して発足したもので、その施設は、統合前の各簡易水道組合のものをそのまま受
け継いでいるため、その大部分が昭和三〇年代から昭和四〇年代にかけて建設され
たものであって、老朽化しており、配水管の布設替えその他施設の維持及び補修に
多額の費用を要している。
 (三) 平成六年の統計によれば、b町の人口は、八七七四人であるが、同町の
観光の中心地であるc高原には、年間二五四万八二〇〇人の観光客が訪れており、
この観光客の数と同年のb町の人口の通年の延べ人員(同年の人口八七七四人に年
間の日数三六五を乗じたもの)とを比較すると、観光客数は、同町の人口の約〇・
八倍に達している。また、年間の観光客数を月別に比較すると、観光シーズンであ
る七月、八月の観光客数は、それぞれ年間の月平均観光客数の約三倍となってお
り、例年この時期の水需要が一時的に著しく増大する。そのため、夏季における水
需要の著しい増大に対応する水源の開発、施設の整備及び維持が本件簡易水道事業
の課題となっている。
 これに加えて、年間の使用総水量も近年増加する傾向にあり、平成二、三年ころ
には、しばしば断水があり、平成五年には、夏季におけるc地区の水需要に応じる
ため、約四〇〇〇万円の費用をかけてボーリングをし、これによって新たな水源を
確保したという経緯があり、また、近年、年間を通じては水道を使用しない別荘が
増加する傾向にある。
 (四) そこで、b町では、水道整備について長期的な計画を立てて、これまで
水道管の布設替え、水源の確保等の施設整備を進めてきたが、今後もこれらについ
て多額の投資をする必要があり、近年本件簡易水道にとって重要な水源となってい
る峡北地域広域水道企業団からの大門ダム用水の受水については、今後供給量の増
加が見込めないこともあって、増大する水需要に対する供給の確保は、容易ではな
い状況にある。
 (五) 本件簡易水道事情特別会計に係る歳入歳出をみると、歳入については、
近年では、一般会計予算から毎年一億円を超える金額の繰入れを行っており、他
方、歳出についても、これまでに起債した公債の償還のために多額の公債費を計上
している。歳入としては、国庫補助金もあるが、その額は、定住人口を基礎として
算出されるため、それほど多額ではない。
 (六) なお、前記(二)の統合前の簡易水道組合の各施設は、組合員の建設負
担金の出捐や労力奉仕、地区の共同財産の処分により調達した資金等により建設さ
れ、維持されてきたものであったため、前記の統合時において、ほとんどの簡易水
道組合では、新規加入者に対し、従前からの組合員との公平の観点から、権利金の
支払を求めており、その額は、組合によって異なるものの、三〇万円を超える権利
金の支払を求める組合も数組合あり、その最も高額なものは、八〇万円に達してい
た。昭和六三年に簡水道組合を統合してb町営の簡易水道事業として発足した際に
制定された本件条例においても、統合前の簡易水道組合における権利金の支払の制
度を引き継ぐ形で、水道加入金の徴収についての規定を設けた経緯がある。
 (七) 水道加入金は、現在、我が国の多くの水道事業体において徴収されてお
り、昭和五八年の調査によれば、全国の水道事業体の八一・七パーセントにおいて
その徴収がされている。
 右各事実によれば、b町においては、水資源が乏しく、その開発が容易ではない
うえ、地勢上も効率的な配水管の布設等が困難であるため、給水施設の整備及び維
持に多額の資金を要していたところ、さらに、近年における多数の観光客の流入や
別荘等の増加により、一時的ないし季節的な水需要の増大に対処することができる
ような水道施設の整備が要請され、そのために多額の資金を要する状況にある。こ
れらの定住人口以外の需用者の水需要は季節的な変動を伴うとともに、経済的な要
因によって左右される部分が大きいため、その需要は、安定的なものではなく、こ
れに応えるための施設を整備する費用を、使用量に応じて支払われる建前の水道料
金によって回収することは、実際上困難であると考えられる。もとより、理論上こ
れらをすべて水道料金に転嫁してその回収を図ることは可能ではあるが、それは、
水道料金のかなりの高額化を招き、これを年間を通じて負担する定住住民に過重な
負担を強いることとなるとともに、右(二)、(六)の本件簡易水道事業の沿革に
照らすと、同事業発足当時の水道加入者が建設負担金の出捐や労力奉仕等によって
水道施設を維持整備してきたこととの関係で均衡を失する結果となるものと考えら
れる。そこで、これらの諸点と水道事業については、独立採算性の建前が採用され
ていること(地方財政法六条)を考え合わせると、新規の水道加入によって生ずる
水道需要の増大に伴う水道施設の建設、整備費用、水源開発費等に相当する費用に
ついて、新規の水道加入者に対し、水道加入金としてその分担を求めることは、不
合理ではなく、新規加入者に対して不当な差別的取扱いをすること(水道法一四条
四項四号参照)にもならないものというべきである。
 本件条例の水道加入金の金額は、平成三年四月一日現在の全国の水道事業体にお
ける水道加入金の平均値が水道メーターの口径が一三ミリメートルの場合には六万
五三八二円であることからすると(甲四八)、相当に高額であるといえるが、水道
加入金の額は水道事業体によって著しく異なっている状況にあること、新たに開発
された分譲地においては、水道加入金の額は二〇万円前後の金額であることが多い
こと(甲九、乙一)などといった事実に右(一)から(七)までの諸事情を総合考
慮すれば、本件条例の水道加入金が著しく高額で不合理であるということはできな
い。
 そうすると、本件条例の水道加入金に関する定めは、水道法一四条四項各号の趣
旨を逸脱する不合理なものでなく、また、他の関係法令上も右の定めを違法とすべ
き理由はないから、水道法一四条一項の供給条件の一つとして給水契約を規律する
効力を有するものというべきである。
 控訴人は、憲法二九条二項は、財産権の内容についての定めを法律に留保してい
るから、条例で財産権の内容を制限することは許されず、また、私法秩序の形成に
関する事項は、条例の所管事項ではないから、本件条例が水道加入金の支払を義務
づけているとすれば、条例の所管事項ではない私法秩序を形成するものであり、憲
法二九条の財産権を条例によって侵害するものであるから、許されないと主張する
が、本件条例の水道加入金に関する定めは、財産権の内容を定めるものでも、私法
秩序を形成するものでもなく、水道法一四条一項に基づき、本件簡易水道による給
水を受ける者と水道事業者であるb町との給水契約の内容を定めるもの(約款)に
すぎないから、この点に関する控訴人の主張は採用することができない。
 さらに、控訴人は、本件条例の水道加入金に関する定めは、憲法二二条に違反す
ると主張するが、右の定めは、本件簡易水道への加入を申し込む者に対して水道加
入金の支払を求めるものにすぎず、b町への居住又は移転を制限するものではない
から、憲法二二条に違反するものということはできない。
 5 以上要するに、本件条例に基づく水道加入金の納入を拒絶することを明示し
てした控訴人の本件給水申込みは、本件簡易水道の供給規程における適法な供給条
件に反するものであって、これにより、水道法一五条一項の規定に基づく受諾義務
は生じないものであるから(右1)、b町は、右申込みに対しその承諾を拒否する
ことができるものであり、したがって、本件給水申込みの拒否には、何ら違法なと
ころはない。
 なお、控訴人は、水は人の生存に極めて重要な物資であるから、水道法一五条一
項の「正当の理由」に当たるとするには、料金不払いに匹敵するような水道法固有
の違反又は重大な正義に反する特段の事情の存在を要すると主張するが、右に述べ
たように、本件給水契約の申込みについては、水道法一五条一項の規定の適用がな
いから、同項の規定の適用があることを前提とする控訴人の右の主張は失当であ
る。
 なお、仮に、同項の規定の適用があるとしても、叙上の事実関係に照らせば、本
件給水申込みに対しその承諾を拒否したことにつき同項の正当の理由があることは
明らかである。
 二 そうすると、b町長である被控訴人のした本件給水申込みの拒否が違法であ
るということはできないから、控訴人の本訴請求は、その余の点について判断する
までもなく、理由がない。
 第三 結論
 よって、原判決は、相当であるから、本件控訴を棄却することとする。
 (裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 柳田幸三 裁判官 小磯武男)

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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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