弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの上告趣意第一点、第二点、被告人Bの上告趣意第一点、第三点、第五
点、被告人Cの上告趣意第一点、被告人D、同E、同A、同B、同F、同C、同G、
同H、同Iの弁護人森健の上告趣意第四点、被告人Jの弁護人森健の上告趣意第二
点、被告人Kの弁護人林武雄の上告趣意は、何れも、事実誤認、単なる法令違反、
量刑不当の主張を出ないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Aの上告趣意第三点、被告人Bの上告趣意第二点(1)、被告人Cの上告
趣意第二点は、刑訴四〇五条の上告理由に当らない事実誤認の主張を前提とする違
憲の論旨であつて、前提において既に適法な上告理由とならない。
 被告人Bの上告趣意第四点(2)は、単なる法令違反の論旨であつて、刑訴四〇
五条の上告理由に当らない。(論旨は、実行の任に当つて居らない同被告人に共同
正犯としての刑事責任を認めた原判決には、刑法六〇条の解釈の誤がある旨主張す
るけれども、原判決判示第一によれば、同被告人は、他数名の者と、多数共同して
原判示駐車場に侵入し、多衆の威力を示し、同所にある自動車に向つて、石、火焔
瓶を投げてこれを破壊することを、協議決定し、これに基き同判示の犯罪が実行せ
られたものであり、しかも、大審院及び最高裁判所において累次示された判例によ
れば、数人共謀の上犯罪が実行せられた場合、共謀者中の或る者が自ら実行の任に
当つて居らなくても、共同正犯の責任を免れるものではないのであるから、仮に、
所論の如く、同被告人が右判示犯罪の実行の任に当つて居らなかつたとしても、同
被告人は、右判示犯罪の共同正犯の責任を免れるものではない。)
 被告人D、同E、同A、同B、同F、同C、同G、同H、同Iの弁護人森健の上
告趣意第二点、被告人Bの上告趣意第二点(2)は、原判決を以つて、人種又は民
族によつて、刑罰法令の解釈適用を差別するものであるとして、憲法一四条一項違
反を主張するけれども、記録によるも、原判決が所論の如き差別をした迹を見出し
得ないから、論旨は、これを採り得ない。
 被告人Bの上告趣意第四点(1)、被告人Jの弁護人森健の上告趣意第一点、同
被告人及び被告人Kを除くその余の被告人の弁護人人森健の上告趣意第一点、同第
三点は、原判決が拷問脅迫による所論供述調書を証拠に供して犯罪事実を認定して
居るとの主張を前提として、原判決の憲法三六条、三八条二項違反を云為するけれ
ども、記録上、右主張事実を認め得ないから、論旨は、その前提において既に上告
適法の理由とならない。
 被告人Jの弁護人森健の上告趣意第一点の二2、同被告人及び被告人Kを除くそ
の余の被告人の弁護人森健の上告趣意第三点は、原判決が共犯者の供述調書のみを
証拠に供して被告人I、同Jの各犯罪事実を認定して居る旨主張し、この主張に立
つて、原判決の憲法三八条三項違反を論ずるけれども、当裁判所の判例(昭和二九
年(あ)第一〇五六号同三三年五月二八日大法廷判決、刑集一二巻八号一七一八頁
以下)の示すところによれば、共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同
審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係において
は、被告人以外の者であつて、かゝる共犯者または共同被告人の供述は、憲法三八
条二項のごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、
憲法三八条にいわゆる「本人の自白」と同一視し、またはこれに準ずるものではな
いこと、明かであるから、原判決が所論供述調書を罪証に供して、被告人I、同J
の有罪を認定しても、憲法三八条三項に違反するものとは、いえない。されば論旨
は、理由がない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三七年八月二八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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