弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人登政良の上告理由第一点について。
 所論の点についての原審認定は、これに対応する挙示の証拠に照らして首肯し得
られるのであって、その認定判示上に所論の違法があるものとは認められない。
 論旨は、畢竟、原審の専権に属する事実認定を非難するに帰するものであって、
採用し得ない。
 同第二点について。
 論旨指摘の原審判示によれば、原審は、上告人の主観において判示行政訴訟が知
事の敗訴となり転用許可処分が取消されることをおそれたものと認定しているに止
まるのであって、右判示は、右行政訴訟の勝敗に関する原審自身の判断を示してい
るものでないと解せられる。
 されば原判決に所論の違法はないのであって、論旨は、採用し得ない。
 同第三点について。
 知事の許可なくしてなされた農地の売買契約は、右許可を法定条件として成立し、
右許可があればそのときから将来に向って効力を生ずるものであって、右許可があ
るまではその効力は生じないまま不確定な状態にあるものというべきである(昭和
三三年(オ)第一〇五三号・同三七年五月二九日第三小法廷判決、民集一六巻五号
一二二六頁参照)。従って、知事の許可なくしてなされた本件売買契約当時目的土
地の一部が農地であったとの原審認定を前提とするときは、右売買契約中の農地に
関する部分は前記の法律状態にあったものと解すべきである。ところで、原審認定
の事実関係によると、本件土地中農地であった部分については、右売買契約後に売
主たる上告人の申請によりこれを宅地とすることの転用許可があり、これに基づき、
買主たるDにおいて宅地化を実施完了したというにあるから、この部分は、これが
宅地となったとき以後その権利移転について知事の許可を要しなくなつたものとな
すべきである。されば、農地であったことによりその効力発生につき知事の許可を
要したがため前記の法律状態にあったと解される本件農地部分の売買契約は、右の
ようにその部分が転用許可に基づき宅地化されたことによりその権利移転につき知
事の許可を要しなくなったのであるから、右転用許可により宅地化せられたとき、
当然、効力を生じておるものと解するのが相当である。以上の判断は所論のDの占
有権原の有無によって左右せられない。
 従って、右と同旨の結論を示した原判決には所論の違法はなく、論旨は採用し得
ない。
 よって、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六

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