弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 原告らの被告a及び被告株式会社隠岐振興に対する請求のうち、五箇村に対し
連帯して金六八五万七二七一円の支払を求める部分を棄却し、隠岐島町村組合に対
し連帯して金八五九万九八八五円の支払を求める部分を却下する。
二 原告らの被告aに対するその余の請求及び被告五箇村総合振興株式会社に対す
る請求を棄却する。
三 訴訟費用は原告らの負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
一1 (主位的請求)
 被告a及び被告株式会社隠岐振興は、五箇村に対し、連帯して金六八五万七二七
一円を支払え。
2 (予備的請求)
 被告a及び被告株式会社隠岐振興は、隠岐島町村組合に対し、連帯して金八五九
万九八八五円を支払え。
二 被告a及び被告五箇村総合振興株式会社は、五箇村に対し、連帯して金七二六
万七八一二円を支払え。
第二 事案の概要
一 本件は、五箇村の住民である原告らが、五箇村が第三セクターである被告株式
会社隠岐振興及び被告五箇村総合振興株式会社へ同村の職員を派遣したことは公務
員の職務専念義務に違反する措置であり、その人件費を支出したことは違法な公金
の支出であるから、五箇村は被告らの共同不法行為により右人件費相当額の損害を
被った等と主張して、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、被告らに対
し、五箇村等に代位して右損害の賠償を請求した事案である。
二 前提事実(証拠の摘示のないものは当事者間に争いがない)
1 当事者等
(一) 原告らは、五箇村の住民である。
(二) 被告aは、昭和六三年一〇月二一日から平成八年一〇月二〇日まで五箇村
の村長の地位にあり、平成七年四月一日当時、隠岐島町村組合の管理者であった。
また、同被告は、平成七年二月二八日から平成八年四月一二日まで被告五箇村総合
振興株式会社(以下「被告五箇村総合振興」という。)の代表取締役であり、平成
七年四月一日当時、被告株式会社隠岐振興(以下「被告隠岐振興」という。また、
被告五箇村総合振興及び被告隠岐振興をまとめて「被告会社ら」ともいう。)の取
締役であった。(被告a及び弁論の全趣旨)
(三) 被告隠岐振興は、平成三年一〇月一一日、隠岐地域の西郷町、布施村、五
箇村、都万村、西ノ島町、海士町及び知夫村の七町村(以下「隠岐島七町村」とい
う。)、隠岐汽船株式会社、隠岐島漁業協同組合連合会、株式会社山陰合同銀行、
株式会社島根銀行並びに島根県を株主として設立された株式会社(第三セクター)
であり、超高速船「レインボー」を隠岐汽船株式会社にリースする事業を中心に、
レンタカー業者に対するレンタカーのリース事業、リネンサプライ関連のリース事
業、宿泊及び観光施設である隠岐ポートプラザの管理受託事業等を営んでいる。
(乙一、二及び弁論の全趣旨)
(四) 被告五箇村総合振興は、平成四年一二月二一日、五箇村、五箇村漁業協同
組合及び五箇村村民を株主として設立された株式会社(第三セクター)であり、定
置網漁業のほか、平成六年七月から温泉施設である隠岐温泉GOKA、平成七年二
月から観光施設である五箇創生館、平成七年四月から宿泊施設であるホテル海音里
及びログハウスの各管理受託業務を営んでいる。(乙三、四及び弁論の全趣旨)
(五) 隠岐島町村組合は、隠岐島七町村をもって組織された地方公共団体の組合
である。(乙九)
2 五箇村職員の被告会社らへの派遣(以下「本件職員派遣」という。)
(一) 被告隠岐振興への派遣
 五箇村は、平成七年四月一日付で、同村職員のbを二年間の期限を付して研修と
して隠岐島町村組合に派遣し、隠岐島町村組合は、同日付で、bを一年間の期限を
付して被告隠岐振興に派遣した。(乙一〇、一二及び弁論の全趣旨)
(二) 被告五箇村総合振興への派遣
 五箇村は、平成七年四月一日付で、同村職員のcを一年間の期限を付して研修と
して被告五箇村総合振興に派遣した。(乙一六及び弁論の全趣旨)
3 公金の支出(以下「本件公金支出」という。)
(一) 当時の五箇村村長被告aは、平成七年四月一日から平成八年三月三一日ま
での間のbの給料・諸手当等として八五九万九八八五円を支出した。(乙一〇、一
二ないし一四及び弁論の全趣旨)
(二) 当時の五箇村村長被告aは、平成七年四月一日から平成八年三月三一日ま
での間のcの給料・諸手当等として九一五万九三〇三円を支出した。(乙一六、一
七及び弁論の全趣旨)
4 監査請求
 原告らは、平成八年三月一九日、地方自治法二四二条一項に基づき、五箇村監査
委員に対し、本件職員派遣は公務員の職務専念義務に違反する措置であり、その人
件費を支出することは違法な公金の支出であるとして、右公金支出の停止、既払の
人件費相当額の返還等の措置を講ずべきことを求める監査請求をなしたところ、五
箇村監査委員は原告らに対し、同年五月一七日付書面をもって、右監査請求には理
由がない旨の通知をした。(弁論の全趣旨)
三 争点
1 本件公金支出の違法性
(一) 原告らの主張
(1) 被告会社らの事業内容と五箇村職員としての職務専念義務
① 地方公共団体の職員は、地方公務員法三五条により、その本来の職務に専念す
べき義務が定められているから、地方公共団体がその職員に対して右職務専念義務
に違反する行動をさせる措置を採ることは右法律の規定に違反する。すなわち、地
方公共団体が当該地方公共団体以外の法人その他の団体へ職員を派遣し、その業務
に従事させることは、法律に特別の定めがある場合を除いては、職務専念義務に違
反しないと認められる場合か、若しくは予め職務専念義務違反の問題が生じないよ
うな措置が採られた場合にのみ許される。
 ところが、本件職員の派遣先となった被告会社らはいずれも営利を目的とする株
式会社であり、その業務は、地方公共の秩序維持、住民の安全、健康及び福祉を保
持すること等を目的とする地方公共団体の事務(地方自治法二条)とは性質を異に
しており、このような被告会社らに五箇村が同村職員を派遣するに当たっては、当
該職員について職務専念義務違反の問題が生じないように予め派遣期間中休職にし
たり、職務専念義務を免除する等の措置を採るべきであるにもかかわらず、五箇村
はそのような措置を採ることなく本件職員派遣を実施し、被告会社らの業務にそれ
ぞれ従事させ、その人件費を負担し支出した。
 よって、本件職員派遣は地方公務員の職務専念義務を定めた地方公務員法三五条
に違反し、本件公金支出は地方自治法二〇四条の二に違反し、地方自治法二四二条
一項、二四二条の二第一項にいう違法な公金の支出に当たる。
② 被告らは、被告会社らの事業が公益性を有するため、本件職員が被告会社らの
職務に就くことは五箇村の行政事務に就くことと等しく、職務専念義務に違反しな
いと主張する。
 しかし、株式会社と地方公共団体とはその目的、存立基盤、組織、運営、社会性
につき基本的な相違があり、私企業と公共団体との関係を公私混同のないよう明確
にしておくことは、憲法、地方自治法の趣意であり、民主主義にとって重要な事柄
である。
 第三セクターといえども株式会社である以上商法の適用を受ける営利企業である
という本質が変わるわけではなく、第三セクターの業務の公益性は、私企業のもつ
公益性と本質的な違いはない。また、被告らは、被告会社らの株主、役員の多く
は、隠岐島町村長、村議会議員であり、被告会社らの活動は公的に統制されている
というが、公的な統制手段といっても、所詮商法に基づく株主及び取締役としての
権利行使以外の何者でもない。
 特に被告五箇村総合振興は、定置網漁業、ホテル、温泉施設の管理・運営を業と
する株式会社であり、その業務内容も公益性が大きいとは到底いえない。
(2) 派遣方法の適法性
① bの被告隠岐振興への派遣
 被告らの主張によれば、五箇村が研修目的でbを隠岐島町村組合に派遣し、同組
合はbを受け入れたのと同日付で同人を職務専念義務を免除したうえ被告隠岐振興
に派遣したことになるが、bの隠岐島町村組合への派遣は形式上のものであって、
実質は被告隠岐振興へ派遣する目的で行われたものといわざるを得ない。
 それは置くとしても、地方公務員法三九条は、職員の研修目的を「その勤務能率
の発揮及び増進のため」と定めているところ、bの隠岐島町村組合又は被告隠岐振
興への派遣にはこのような研修目的は存在しない。また、被告隠岐振興が、隠岐島
町村組合にとって「業務の運営上、その地位を兼ねることが特に必要と認められる
団体」(職務に専念する義務の特例に関する規則二条三号)であれば、隠岐島町村
組合の職員の職務専念義務を免除することができるが、被告隠岐振興は当該団体に
該当しない。さらに、隠岐町村組合がbの職務専念義務を免除しても同人の五箇村
職員としての職務専念義務は免除されることにはならない。
 そうすると、bの被告隠岐振興又は隠岐島町村組合への派遣は、手続的に明らか
に違法である。
② cの被告五箇村総合振興への派遣
 被告五箇村総合振興は、定置網漁業、ホテル、温泉施設の経営等を目的とする私
企業であり、cは、右ホテルの支配人としての業務に従事していたものであるか
ら、cの被告五箇村総合振興への派遣が地方公共団体の職員の研修として是認され
るものではない。また、cは、異なる地方公共団体の職を兼ねたのではなく、私企
業の業務を兼ねたのであり、兼職が許される余地はない。
(二) 被告らの主張
(1) 被告会社らの事業内容と五箇村職員としての職務専念義務
① 第三セクターへの職員派遣
 地方公共団体は、地方自治の担い手として、その地域の自然環境、生活環境、産
業基盤を整備し、地域住民の生活の向上及び活動の活性化を図り、望ましい地域社
会が形成されるよう努める責務を有している。このような責務を達成するために
は、民間活力を導入し活用することが必要であるが、同時に地方公共団体には、民
間資本の営利性に対しては公的な統制・監督を加え、低収益性に対しては保護・助
成を図ることが要請されている。そこで近年、地方公共団体においては、第三セク
ターを設立して地域振興、地域活性化のための事業に取り組む事例が増加してい
る。地方公共団体の第三セクターに対する職員派遣もこのような公益性の観点から
基礎づけられる。
② 被告会社らの事業の公益性と行政目的との関連性
ア 被告隠岐振興
 被告隠岐振興は、隠岐地方の過疎化、高齢化が一層深刻な状態になる中で、超高
速船の導入による隠岐・本土間の高速交通網の整備、それを契機とした雇用機会の
創出、宿泊、観光レクレーション施設の整備・促進等を目的として設立された第三
セクターであって、過疎地域活性化特別措置法に基づく地方債(以下「過疎債」と
いう。)を最大限活用し、かつ迅速な設立と機動的な事業展開を期して株式会社形
態が採用されたものであり、被告隠岐振興の各種事業は、いずれも隠岐島七町村の
行政目的の実現に他ならない。
イ 被告五箇村総合振興
 被告五箇村総合振興は、五箇村漁業協同組合が営んでいた定置網漁業の収益性が
悪化し、同組合がこれを単独で維持することが困難になる中で、定置網漁業の継続
による水産振興に加え、宿泊、観光施設等の整備、促進等による観光産業の振興を
目的として設立された第三セクターであり、五箇村の行政目的に合致し、行政目的
との間に密接な関連性が認められる。
③ 本件職員派遣の必要性・合理性
ア bの被告隠岐振興への派遣
 被告隠岐振興が過疎債等の公的資金を導入するに当たっては行政機関の全面的な
協力を得ることが必要不可欠であり、そのため、被告隠岐振興の職員は行政制度を
理解し、行政経験の豊富な者である必要があったことから、被告隠岐振興にとっ
て、二名の男性職員については島根県と隠岐島七町村から中堅の職員が派遣される
ことが望ましかった。島根県及び隠岐島七町村にとっても職員を派遣してこれらの
事業を担わせることは職員の資質を向上させることにつながり極めて有益であり、
また、派遣される職員にとっても過疎対策について実践的な経験を積むことは有益
であった。そうすると、仮に派遣手続に違法があったとしても、bの派遣は職務専
念義務に違反しない。すなわち、bに被告隠岐振興の業務を経験させることは同人
の資質向上につながり研修の趣旨から外れるものではないこと、被告隠岐振興は五
箇村の「業務の運営上その地位を兼ねることが特に必要と認められる団体」である
ことは明らかであるので、五箇村の職員の職務に専念する義務の特例に関する条例
第二条三号及び職務に専念する義務の特例に関する規則二条二号により、bの五箇
村職員としての職務専念義務を免除したうえで派遣することも本来可能であったこ
と、bの派遣期間が二年間と定められていたことを考え併せると、五箇村村長に裁
量権の逸脱はなく、bについての本件職員派遣は地方公務員法三五条の職務専念義
務に違反しない。
イ cの被告五箇村総合振興への派遣
 被告五箇村総合振興は、観光施設の管理受託を主たる業務としており、しかも早
急に観光に詳しい人材を確保する必要に迫られていたため、観光行政に詳しい五箇
村の職員を派遣してもらう必要があった。五箇村としても、将来の観光行政推進の
ための人材を養成できるという利点があり、派遣される職員にとっても観光施設の
管理運営の経験を積むことは有益であった。そうすると、仮に派遣手続に違法があ
ったとしても、cの派遣は職務専念義務に違反しない。すなわち、被告五箇村総合
振興の主たる業務が五箇村が所有する観光施設等の管理受託業務であり、被告五箇
村総合振興は五箇村の「業務の運営上、その地位を兼ねることが特に必要と認めら
れる団体」であることは明らかであるので、五箇村の職員の職務に専念する義務の
特例に関する条例二条三号、職務に専念する義務の特例に関する規則二条二号によ
り、cの職務専念義務を免除したうえで派遣することも本来可能であったこと、c
の派遣期間が二年と定められていたことを考え併せると、五箇村村長に裁量権の逸
脱はなく、cについての本件職員派遣は地方公務員法三五条の職務専念義務に違反
しない。
(2) 派遣方法の適法性
① bの被告隠岐振興への派遣
ア 派遣の経過
 被告隠岐振興は、従前西郷町から派遣されていた職員の派遣期限が満了すること
から、隠岐島町村会に対し、職員の派遣を要請した。そこで、後任職員は隠岐島町
村組合から派遣されることとなり、これを受けて隠岐島町村組合は、職員の定数を
一名増員したうえ、平成七年四月一日付でdを採用した。ところが、被告隠岐振興
は、西郷町から派遣されていた前記職員に代わることのできる相当の経験を有する
中堅職員を希望したため、隠岐島町村組合から適任者を派遣することができず、隠
岐島町村組合と五箇村との人事交流により、dを五箇村へ派遣し、五箇村職員のb
を隠岐島町村組合が受け入れ、同時に隠岐島町村組合からbを被告隠岐振興へ派遣
することとなった。
イ その際、五箇村によるbの隠岐島町村組合への派遣及びdの五箇村への派遣
は、任命権者の職務命令による研修等を目的とする場合の兼職による派遣とした。
 このような地方公共団体における人事交流は、柔軟で幅広い視野を持った人材の
育成に有効であるとともに、地方公共団体の相互理解や専門的知識の相互活用に資
するものであって、本件の人事交流も、b及びdの資質向上を目的とした研修のた
めの人事交流である。
ウ 隠岐島町村組合によるbの被告隠岐振興への派遣は、隠岐島町村組合の職務に
専念する義務の特例に関する条例二条五号及び職務に専念する義務の特例に関する
規則二条三号の「組合業務の運営上、その地位を兼ねることが特に必要と認められ
る団体の役員等の地位を兼ねることが特に必要と認められる団体の役員等の地位を
兼ね、その事務を行う場合」に該当するものとし、職務専念義務免除による派遣と
した。
 bの被告隠岐振興への派遣は、主に超高速船「レインボー」の導入とリース事業
の運営に当たらせるためであるが、隠岐島町村組合の業務内容には「超高速船の運
行支援に関すること」が揚げられており(隠岐島町村組合規約第三条一〇号)、現
実にも隠岐島町村組合を構成する隠岐島七町村が被告隠岐振興に対し多額の出資及
び補助金の支出を行っていて超高速船の運行事業を支援しなければならない実質的
な理由もあるので、被告隠岐振興が、前記規則二条三号の「組合業務の運営上、そ
の地位を兼ねることが特に必要と認められる団体」に該当することは明らかであ
る。隠岐島町村組合としては、bの五箇村職員としての身分、処遇を保障する必要
から、同人を一旦退職させたり休職とする方法は採用しなかった。
② cの被告五箇村総合振興への派遣
 cの被告五箇村総合振興への派遣は、任命権者の職務命令による研修等を目的と
する場合の兼職による派遣とした。
 このような方法を採用したのは、派遣の目的が五箇村にとっては人材養成、cに
とっての観光行政のための研修であって、cに対して五箇村職員としての身分を保
障する必要もあったからである。
(3) 右に述べた各事情に照らせば、本件職員派遣は地方公務員法三五条の職務
専念義務に違反しないし、本件公金支出も適法である。
2 損害
(一) 原告らの主張
(1) 被告らは、共謀の上、b及びcをその職務専念義務に違反することを知り
ながら被告会社らに派遣させ、五箇村に同人らに対する人件費を違法に支給させた
ものであり、これによって五箇村は右人件費相当額の損害を被った。したがって、
五箇村は被告らに対し右人件費相当額の損害賠償請求権を有している。
(2) 五箇村の損害を考える際に特別交付税が増額されたことを考慮するのは相
当でない。また、特別交付税の交付は損害の填補関係にない。
(二) 被告らの主張
 仮に本件公金支出が違法であるとしても、これにより五箇村の被った損害は次の
とおり回復されている。
(1) 隠岐島町村組合はdの人件費を負担し、五箇村はbの人件費を負担してい
るが、dの平成七年度の人件費は三六八万四二五六円、bの平成七年度の人件費は
八五九万九八八五円であって、その差額は四九一万五六二九円である。
 ところで、五箇村がbを隠岐島町村組合に派遣したことにより、島根県から五箇
村に平成八年三月に交付される特別交付税が派遣しない場合に比較して四〇〇万円
程度加算されることが見込まれたため、五箇村は、平成八年二月二六日、隠岐島町
村組合に対し、人件費差額四九一万五六二九円から四〇〇万円を控除した九一万五
六二九円を人事交流職員差額人件費負担金として請求し、隠岐島町村組合は、右金
額を平成八年四月五日、五箇村に支払った。
 そして、島根県は、従前から隠岐島七町村が被告隠岐振興に職員を派遣した場合
には人件費のうち年間四〇〇万円の範囲で特別交付税を派遣元の町村に対して措置
しており、五箇村が隠岐島町村組合との人事交流を介してbを被告隠岐振興に派遣
することになった際にも、五箇村に対して人件費差額のうち年間四〇〇万円の範囲
で措置することを約束し、現に実行した。
(2) 五箇村の負担したcの人件費九一五万九三〇三円については、五箇村の平
成八年三月一三日の定例議会において、被告五箇村総合振興からその全額が返還さ
れるものとして予算計上がなされ、平成八年三月二八日、その全額が五箇村に支払
われた。
3 被告a及び被告株式会社隠岐振興に対する予備的請求について
(右被告らの主張)
 右予備的請求については住民監査請求がなされていないので、不適法として却下
されるべきである。
第三 争点に対する判断
一 争点1について
1 前記前提事実、証拠(乙一ないし一二、一六、二五、二六、証人e、被告a、
被告隠岐振興代表者f)及び弁論の全趣旨を総合すると次の事実が認められる。
(一) 被告隠岐振興について
(1) 被告隠岐振興は、過疎化、高齢化の深刻化する隠岐地方の振興と活性化の
ため、超高速船の導入による隠岐・本土間の高速交通網の整備、雇用機会の創出、
宿泊、観光レクレーション施設の整備・促進等が行政課題となる中で、これらの事
業の効果的な展開とリスクの軽減及び過疎債等の公的資金の最大限の活用を目的と
して、隠岐島七町村、隠岐汽船株式会社、隠岐島漁業協同組合連合会、株式会社山
陰合同銀行、株式会社島根銀行及び島根県を株主として平成三年一〇月一一日に設
立された株式会社であって、資本金四億六二〇〇万円のうち隠岐島七町村の出資額
は各五〇〇〇万円ずつ合計三億五〇〇〇万円(その財源はすべて過疎債である)、
島根県の出資額は五〇〇〇万円であり、隠岐島七町村の出資比率は約七六パーセン
ト、島根県を併せた出資比率は約八七パーセントである。取締役は隠岐島七町村長
及び島根県職員二名で構成されている。
(2) 被告隠岐振興の営む事業のうち超高速船のリース事業は、超高速船「レイ
ンボー」を隠岐汽船株式会社に低料金でリースする事業であり、レンタカーのリー
ス事業は、レンタカーを低料金で地元のレンタカー業者にリースする事業であり、
リネンサプライ関連のリース事業は、リネン関係機器を低料金で地元のリネンサプ
ライ業者にリースする事業であって、いずれも民間企業単独では採算の面で維持が
困難とみられていた事業でありながら、隠岐地方の振興と活性化のために地元住民
や観光関係者の間で要望の強かった事業である。隠岐ポートプラザの管理受託業務
は、西郷町が所有する隠岐ポートプラザの管理運営を直接西郷町が行う予定がなか
ったことから、同被告が地方自治法二四四条の二第三項及び同法施行令一七三条の
三により受託した業務である。
 そして、被告隠岐振興の中心事業は超高速船のリース事業であり、そのため、同
被告は超高速船「レインボー」を建造したが、その建造資金一八億四五〇〇万円余
りのうち一七億七八○万円が隠岐島七町村及び島根県からの補助金であり(隠岐島
七町村からの補助金一四億七一八○万円のうち九億二一八○万円は過疎債を、残り
五億五〇〇〇万円は隠岐島七町村のふるさと創生資金をそれぞれ財源としてい
る。)、同被告はこれを月額一〇〇万円という極めて低廉なリース料で隠岐汽船株
式会社にリースしている。
(二) 被告五箇村総合振興について
(1) 被告五箇村総合振興は、過疎化、高齢化の特に深刻な五箇村において、定
置網漁業の継続、宿泊・観光施設等の整備、促進等による水産業及び観光産業の振
興と活性化を目的として、五箇村、五箇村漁業協同組合及び五箇村村民を株主とし
て平成四年一二月二一日に設立された株式会社であって、資本金一億一三〇〇万円
のうち五箇村の出資額は一億三〇万円であり、出資比率は約八九パーセントであ
る。取締役も、五箇村の村長、村議会議員、五箇村漁業協同組合役員及び五箇村商
工会役員らで構成されている。
(2) 被告五箇村総合振興の営む定置網漁業は、従来五箇村漁業協同組合が営ん
でいた定置網漁業の収益性が悪化し、同組合単独ではこれを維持することが困難と
なる中で、定置網漁業は観光資源としての要素も有することから、五箇村の水産業
及び観光産業の振興と活性化のため同被告が経営することとしたものであり、その
他の観光施設等の管理受託業務は、五箇村が所有している観光施設等の管理運営を
より効率的で発展性のあるものにするために、同被告が地方自治法二四四条の二第
三項及び同法施行令第一七三条の三により受託した業務である。
(三) 本件職員派遣
(1) bの被告隠岐振興への派遣
① 被告隠岐振興の従業員三名のうち二名は、設立当初から島根県及び西郷町から
派遣された職員であった。これは、被告隠岐振興が隠岐地方の振興及び活性化とい
う広域的な行政課題に継続的に取り組むことを事業目的としており、そのため多額
の公的資金を導入しかつ運用していることなどから、従業員についても行政制度を
理解した公務員が適当と考えられたためである。
 被告隠岐振興は、西郷町からの派遣職員が平成七年三月三一日をもって西郷町に
帰任することとなったので、隠岐島町村会に対し、相当の経験年数と実績を有する
中堅職員を引き続き派遣するよう要請した。これを受けて隠岐島町村会が開かれ、
隠岐島町村組合の事業の中に超高速船の運行支援の事業が含まれていること及び人
件費の広域的な負担の観点から、後任職員は隠岐島町村組合から派遣することとな
った。隠岐島町村組合としては、職員を派遣するためには定員を増員して対応する
ことが必要となり、平成七年二月二〇日の定例議会において、職員の定数を一名増
員する決議を行い、これを受けて、平成七年四月一日付でdを採用した。ところ
が、隠岐島町村組合に前記の西郷町の職員から引き継いで職務を行える適当な職務
経験者がいなかったため、隠岐島町村組合と五箇村との人事交流により、bを隠岐
島町村組合が受け入れ、dを五箇村へ派遣し、隠岐島町村組合がbを被告隠岐振興
へ派遣することとなった。
②ア 五箇村と隠岐島町村組合は、平成七年四月一日付各「職員の派遣に関する協
定書」をもって、五箇村がbを同村職員の身分のまま隠岐島町村組合に派遣するこ
と、派遣期間は平成七年四月一日から平成九年三月三一日までとすること、bの給
料及び手当は五箇村が支給すること等を内容とする協定及び隠岐島町村組合がdを
同組合職員の身分のまま五箇村に派遣すること、派遣期間は平成七年四月一日から
平成九年三月三一日までとすること、dの給料及び手当は隠岐島町村組合が支給す
ること等を内容とする協定を締結し、これらに基づき、五箇村は平成七年四月一日
付でbを隠岐島町村組合に派遣し、隠岐島町村組合は同日付でdを五箇村に派遣し
た。
 b及びdの右各派遣は、いずれも任命権者の職務命令による兼職による派遣であ
り、その目的は同人らの研修とされた。
イ 次に、隠岐島町村組合と被告隠岐振興は、平成七年四月一日付協定書をもっ
て、隠岐島町村組合がbを同人が同組合において保有する身分のまま被告隠岐振興
に派遣すること、派遣期間は平成七年四月一日から平成八年三月三一日までとする
こと、bの給与等は隠岐島町村組合が支給すること等を内容とする協定を締結し、
これに基づき、隠岐島町村組合は、bの職務専念義務を免除したうえ、平成七年四
月一日付で同人を被告隠岐振興に派遣した。
 隠岐島町村組合は、同組合の業務内容に「超高速船の運行支援に関すること」が
掲げられている(同組合規約第三条一〇号)ことから、被告隠岐振興が同組合の職
務に専念する義務の特例に関する条例第二条五号及び職務に専念する義務の特例に
関する規則第二条三号の「組合業務の運営上、その地位を兼ねることが特に必要と
認められる団体」に該当すると解釈し、bの職務専念義務を免除した。
 右派遣先においてbは、右派遣期間中、営業課長として対外的な交渉、企画、町
村との折衝等の業務全般に従事した。
(2) cの被告五箇村総合振興への派遣
① 被告五箇村総合振興は、当初自社従業員で定置網漁業を営んでおり、平成七年
四月一日に開業予定のホテル海音里の支配人についても自社採用の従業員を当てる
予定であったが、右ホテルの開業時までに適任者を採用することができなかったた
め、早急に人材を確保する必要から、五箇村に対し観光に詳しい人材を派遣するよ
う要請した。
② そこで五箇村は、当時五箇村観光対策室の室長であったcを派遣することと
し、被告五箇村総合振興との間で、平成七年三月三一日付「職員の派遣に関する協
定書」をもって、五箇村がcを同村職員の身分のまま被告五箇村総合振興に派遣す
ること、派遣期間は平成七年四月一日から平成八年三月三一日までとすること、c
の給料及び手当は五箇村が支給すること等を内容とする協定を締結し、これに基づ
き五箇村は平成七年四月一日付でcを被告五箇村総合振興に派遣した。
 cの被告五箇村総合振興への派遣は、任命権者の職務命令による兼職による派遣
であり、その目的は同人の研修とされた。右派遣先においてcは、右派遣期間中、
ホテル海音里の支配人としての業務に従事した。
2 ところで、地方公共団体の職員が職務専念義務(地方公務員法三五条)を尽く
すのは当然であり、かつ最も重要な職責であって、地方公共団体の側も職員に職務
専念義務に違反する行為をさせるような措置を取るべきでないという拘束を課され
ていると解される。したがって、地方公共団体が当該地方公共団体以外の法人その
他の団体へ職員を派遣しその業務に従事させるには、法律又は条例に特別の定めが
ある場合を除いては、予め当該職員について職務専念義務に違反しないような措置
を採ることが必要であり、右のような措置を採ることなく単なる職務命令により職
員を他の法人等に派遣することは、派遣先の法人等の事務が当該地方公共団体の事
務と同一視し得るものであるなど職務専念義務に反しないとみられる特段の事情が
ない限り、地方公務員法三五条に違反する違法な措置というべきである。
 これを本件についてみると、次のとおりである。
(一) bの被告隠岐振興への派遣について
 前記認定のとおり、bは、五箇村村長の職務命令により、五箇村職員の身分を保
有したままこれに伴う職務専念義務の免除を受けることなく隠岐島町村組合に派遣
され、次いで隠岐島町村組合管理者の職務命令により、隠岐島町村組合における身
分を保有したまま職務専念義務の免除を受けたうえで被告隠岐振興に派遣されたも
のである。ところで、兼職とは、ある職員がその職を保有したまま他の職に任命さ
れることをいうものであるから、隠岐島町村組合に派遣されたbは、同組合におい
て五箇村職員としての身分と隠岐島町村組合職員としての身分を併有することとな
る。そして、隠岐島町村組合管理者による職務専念義務の免除の対象が隠岐島町村
組合の職員としてのそれに限られることは明らかであるから、bは、五箇村職員と
しての身分及びこれに伴う職務専念義務を保有したまま五箇村村長及び隠岐島町村
組合管理者の各職務命令により被告隠岐振興に派遣されたものと認められる。
 ところで、前記認定にかかる被告隠岐振興の設立目的、事業内容、公的資金の導
入及び運用状況、株主及び役員の構成等に鑑みると、被告隠岐振興の事業の公益性
及び行政目的との関連性は相当高く、五箇村がその職員を同被告に派遣する必要
性、合理性も相当程度認めることができる。しかし、被告隠岐振興は、本質的には
商法上の株式会社組織をとる私企業であるし、その事業である超高速船「レインボ
ー」のリース事業、レンタカーのリース事業及びリネンサプライ関連のリース事業
等は、地方公共の秩序維持、住民の安全、健康及び福祉を保持すること等を目的と
して通常行われる地方公共団体の事務(地方自治法二条)とは基本的に性質を異に
しており、これを五箇村の事務と同一視することは到底できない。
 そして、前記認定によれば、右五箇村村長及び隠岐島町村組合管理者の各職務命
令は、bを被告隠岐振興に派遣することを目的として一体としてなされたものであ
り、それをも併せ考えると、五箇村村長及び隠岐島町村組合管理者のbを五箇村職
員としての身分を保有させたままその職務専念義務を免除することなく被告隠岐振
興に派遣した一連の措置は、全体として地方公務員法三五条に違反する違法な措置
というべきである。
(二) cの被告五箇村総合振興への派遣について
 五箇村村長が職務命令によりcを五箇村職員としての身分を保有させたまま職務
専念義務を免除することなく被告五箇村総合振興に派遣したことは、前記認定のと
おりである。
 ところで、前記認定にかかる被告五箇村総合振興の設立目的、事業内容、株主及
び役員の構成等に鑑みると、被告五箇村総合振興の事業の公益性及び行政目的との
関連性を認めることができ、五箇村がその職員を同被告に派遣する必要性、合理性
も認められないわけではない。しかし、被告五箇村総合振興は、本質的には商法上
の株式会社組織をとる私企業であって、その事業である定置網漁業やホテル経営等
の事業は、地方公共の秩序維持、住民の安全、健康及び福祉を保持すること等を目
的として通常行われる地方公共団体の事務(地方自治法二条)とは基本的に性質を
異にしており、これを五箇村の事務と同一視することは到底できない。
 したがって、五箇村村長の右措置は地方公務員法三五条に違反する違法な措置と
いうべきである。
(三) 被告らは、本件職員派遣は研修(五箇村の職員の職務に専念する義務の特
例に関する条例二条一号、地方公務員法三九条)目的であるとして、その派遣の適
法性を主張しているが、前記認定によれば、右職員派遣は、当該派遣先で従事する
ことが予定されている職務の適任者として指名された上での派遣であり、地方公共
団体が職員を派遣するには名目が必要なため、研修目的として取り扱われることに
なったに過ぎず(真に研修目的であれば、研修が必要でそれに適した者を選定する
研修者の選定作業が行われ、事前に打ち合わせが行われ研修カリキュラムが作成さ
れ、研修中には研修成果を明らかにするために報告書等が作成されているはずであ
るが、本件においては全証拠によってもそのいずれの事実も認められない。)、本
件職員派遣は、研修目的で派遣されたものとはいえないから、被告らの右主張は採
用できない。
(四) なお、被告らは、本件においてb及びcのいずれについても、本来五箇村
の職員の職務に専念する義務の特例に関する条例及び職務に専念する義務の特例に
関する規則により同人らの五箇村職員としての職務専念義務を免除し得る場合であ
ったから本件職員派遣は地方公務員法三五条に違反しないとも主張するが、このよ
うな主張は、前記の地方公務員法三五条の趣旨を軽視するもので是認できない。
(五) 以上によれば、本件公金支出は、五箇村村長の違法な職務命令を前提とす
るものであり、かつ、専ら被告会社らの業務に従事し五箇村の事務を担当しなかっ
た職員に対して人件費を支出したのであるから、地方自治法二〇四条一項、地方公
務員法二四条一項等に違反するものであることが明らかである。よって、本件公金
支出は地方自治法二四二条一項、二四二条の二第一項にいう違法な公金の支出に当
たる。
二 争点2について
1 bに対する人件費の支出について
 証拠(乙一三ないし一五、一九、証人e、被告a、被告隠岐振興代表者f)及び
弁論の全趣旨を総合すると、前記一1(三)(1)に判示のような経過で、dは平
成七年四月一日付で派遣期間を平成九年三月三一日までとして、隠岐島町村組合か
ら五箇村に派遣され、同村の事務に従事していたが、その給料等は隠岐島町村組合
が支払っていたところ、①五箇村と隠岐島町村組合は、平成七年四月一日付「職員
の派遣に伴う人件費に関する覚書」をもって、五箇村がbに支払った人件費と、隠
岐島町村組合がdに支払った人件費及び五箇村の支払った右人件費に対する第三者
からの填補分の合計額とに差額を生じた場合には、五箇村又は隠岐島町村組合はそ
の差額を相手方に(五箇村がbに支払った人件費の方が多ければ五箇村に、右合計
額の方が多ければ隠岐島町村組合に)支払うこと等を合意したこと、②五箇村が負
担したbの平成七年度の人件費は八五九万九八八五円、隠岐島町村組合が負担した
dの平成七年度の人件費は三六八万四二五六円であって、その差額は四九一万五六
二九円であったこと、③五箇村がbを隠岐島町村組合に派遣したことにより、島根
県から五箇村に平成八年三月に交付される特別交付税は右派遣をしない場合と比較
して四〇〇万円加算されることが見込まれたため、五箇村は前記覚書に基づき、平
成八年二月二六日、右の人件費差額四九一万五六二九円から加算見込の特別交付税
額四〇〇万円を控除した九一万五六二九円を人事交流職員差額人件費負担金として
隠岐島町村組合に支払請求し、隠岐島町村組合は、平成八年四月五日、右金額を五
箇村に支払ったこと、④ところで、特別交付税(地方交付税法六条の二)とは、都
道府県又は市町村における特定の事業や災害等その年の特別の財政需要に対応して
交付されるものであり、各市町村に対する交付金額は、各市町村からの交付申請に
基づき、県知事が予算の枠内で各事業ごとに金額を査定しそれを積算することによ
り決定されるものであるところ、島根県は、従前西郷町の被告隠岐振興に対する職
員の派遣事業について、同町が派遣職員に支払った人件費のうち年間四〇〇万円相
当分を毎年特別交付税として査定してきており、右派遣に引き継いで行われた五箇
村によるbの被告隠岐振興に対する派遣事業についても、平成七年秋ころの五箇村
からの交付申請に基づき、同村がbに支払った平成七年度の人件費のうち四〇〇万
円相当分を特別交付税として査定し、平成八年三月末ころ、これを五箇村に交付し
たことが認められる。
2 cに対する人件費の支出について
 証拠(乙一七ないし一九、被告a)及び弁論の全趣旨を総合すると、五箇村の負
担したcの人件費九一五万九三〇三円については、五箇村の平成八年三月一三日の
定例議会において、被告五箇村総合振興からその全額が返還されるものとする予算
が議決され、これに基づき五箇村は同月一九日、被告五箇村総合振興に対して右金
員の支払を請求し、同月二八日、その全額が同被告から五箇村に支払われたことが
認められる。
3 以上によれば、本件職員派遣及び本件公金支出により五箇村の被った損害は全
額回復されたものと認められる。
 なお、原告らは、四〇〇万円の特別交付税の交付は損害の填補関係にない旨主張
するが、前記認定に照らし採用し得ない。
三 争点3について
 被告a及び被告隠岐振興に対する本件予備的請求は、隠岐島町村組合がbの人件
費を支出したものであることを前提に、右公金の支出は違法であると主張して、地
方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、同組合管理者たる被告aと被告隠岐振
興に対し、同組合に代位して右人件費相当額の損害の賠償を求めたものである。
 ところで、原告らが行った住民監査請求において対象となった財務会計行為は、
前記前提事実記載のとおり五箇村による公金支出行為であるのに対し、原告らが本
件予備的請求で主張する財務会計行為は、隠岐島町村組合による公金支出行為であ
って、公金支出の主体である団体も支出権限を有する職員も異なるのであるから、
その間に実質的な同一性を認めることはできない。そうすると、原告らが本件予備
的請求を提起するには、予め隠岐島町村組合の監査委員に対して同組合の右公金支
出行為につき住民監査請求を提起する必要があるところ(地方自治法一九五条、二
四二条、二九二条参照)、それを経ていないことになり、本件予備的請求は不適法
である。
四 以上のとおり、原告らの被告a及び被告隠岐振興に対する請求のうち、五箇村
に対し連帯して金六八五万七二七一円の支払を求める部分は理由がないから棄却
し、隠岐島町村組合に対し連帯して金八五九万九八八五円の支払を求める部分は不
適法であるから却下し、原告らの被告aに対するその余の請求及び被告五箇村総合
振興に対する請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴
訟法六一条、六五条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。
松江地方裁判所民事部
 裁判長裁判官 辻川昭
 裁判官 遠藤浩太郎
 裁判官 次田和明

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