弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告をいずれも棄却する。
     抗告費用は抗告人らの負担とする。
         理    由
 抗告代理人は「原決定を取消す。相手方A、同B及び同Cは本案判決確定に至る
まで株式会社三協紙器製作所の清算人の職務の執行をしてはならない。訴訟費用は
第一、二審とも相手方らの負担とする。」との裁判を求めた。その主張する抗告理
由の要旨は次の通りである。
 抗告人らはいずれも相手方株式会社三協紙器製作所の従業員で総評全国パ労連三
協紙器労働組合の組合員であるが、同会社は昭和三十六年七月二十六日の株主総会
において解散の決議をした。然し右解散決議は抗告人ら従業員の結成している労働
組合を嫌忌しこれを潰滅する意図の下になされたものであるから労働組合法第七条
憲法第二八条に違背する公序良俗違反の行為であつて、民法第九〇条により無効で
ある。而して解散決議があればいずれ従業員を解雇することになるのが通常のなり
ゆきであるから、従業員は解散決議に重大な利害関係を有するものであつて、右決
議の無効確認を求める適格と利益があるものと言うべきである。そこで抗告人らは
相手方株式会社三協紙器製作所を相手とつて解散決議無効並びに清算人選任決議無
効の訴を提起すべく準備中であるが、現在清算事務が着々と進行中であり、相手方
らがこれ以上清算事務を続行して会社財産を処分するに至れば、被告人らが本案訴
訟において勝訴判決を得ても、会社の事業経営は事実上不能となり、ひいては抗告
人らは退職せざるを得ない羽目に陥るので、清算人の職務執行の停止を求める仮処
分を申請したところ、原審は前記解散決議は有効であると判断して仮処分申請を却
下したので、本件抗告に及んだと言うにある。
 <要旨第一>按ずるに会社解散の決議があつても当然これにより従業員の離職を来
たすわけではないけれども、あらためて会社を継続する旨の株主総会の
決議などがなされない限り、解散後はいずれ従業員を解雇することになるのが通常
のなりゆきであろう。そして抗告人らの主張によれば、清算が着々進行していると
言うのであるから、相手方株式会社三協紙器製作所の本件解散決議は従業員を解雇
するため解散を仮装し、解雇後解散することをやめて再び会社の継続をはかろうと
言うのではなく、右会社は真実解散するものであるが、その動機が抗告人ら従業員
の結成している労働組合を嫌忌しこれを潰滅させる意図から発したものであると言
うことは、本件抗告理由に照らし明らかである。
 ところで会社解散の決議は会社とすべての人の間の法律関係を絶止して会社を消
滅させることを目的とする会社内部の意思決定であるから、解散決議の動機が労働
組合を潰滅させる意図より発したとしても、対労働組合乃至労働組合員との法律関
係の絶止だけを目的とすることは許されず、すべての面において法律関係を終了さ
せ、会社自体の消滅に向わなければならないものである。然るに不当労働行為の制
度は企業内における労働者の組合活動の自由を確保して企業における労使対等の原
則を維持しようとするものであるから、企業の存在を前提としてはじめて不当労働
行為を問題となし得るものである。かかる観点からみれば、本件解散決議は虚偽、
仮装のものであることは明らかにせられておらず従つて会社それ自体の消滅を目的
とするものと解すべきであるから、不当労働行為の問題を生ずる余地はないものと
解すべく、労働組合法第七条違反の主張はこの点において既に失当たるを免れな
い。
 <要旨第二>抗告人らは更に憲法第二八条(勤労者の団結権)違反をも言うけれど
も、憲法は同時に第二二条において職業選択の自由を規定しているので
あつて、企業の廃止(従つてこれを目的とする会社解散の決議)は職業選択の自由
の一種として認められねばならない。そしてこの自由はその動機が労働組合を潰滅
させる意図であるにせよ制限されるべき根拠がないことは、原決定の説示する通り
である。から、これ(原決定三枚目裏十行目より四枚目表末行まで)をここに引用
する。よつて抗告人らの憲法第二八条違反の主張も又採用できない。
 以上の次第で会社解散決議が無効であるとして、抗告人らがその無効確認の訴を
提起する適格と利益があるか否かはしばらく別として右の訴を本案とし、その保全
処分として清算人の職務執行停止を求める本件申請はこれを肯認しがたい。従つて
これを却下した原決定は結局正当であつて、本件抗告はいずれも理由がないのでこ
れを棄却することとし、民事訴訟法第四一四条、第三八四条、第九五条、第八九条
を夫々適用して主文の通り決定する。
 なお本件抗告状には相手方の表示として、B、A、C及びDの名があげられてい
るが、原審において相手方とされているのは、株式会社三協紙器製作所、B、A及
びCの四名であることが明らかであるから、抗告状の前記記載は誤つて右会社名を
逸し、且Dの名を記したものと認める。
 (裁判長判事 梶村敏樹 判事 室伏壮一郎 判事 安岡満彦)

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