弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人A代理人市木重夫の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審
の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立つ
て原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 なお、原審は、第一審判決添付の物件目録(一)ないし(七)、(一〇)及び(一一)記
載の各不動産(但し、(一〇)については共有持分二分の一。以下同じ。)が昭和三
五年一月二〇日に死亡した訴外Dの遺産であり、被上告人ら及び上告人らがその共
同相続人(代襲相続人及び共同相続人の各相続人を含む。以下同じ。)であるとの
事実を確定したうえ、遺産分割の前提問題として、右不動産が右Dの遺産であるこ
との確認を求める被上告人らの請求を認容すべきものとしているところ、このよう
な確認の訴え(以下「遺産確認の訴え」という。)の適否につき、以下職権をもつ
て検討することとする。
 本件のように、共同相続人間において、共同相続人の範囲及び各法定相続分の割
合については実質的な争いがなく、ある財産が被相続人の遺産に属するか否かにつ
いて争いのある場合、当該財産が被相続人の遺産に属することの確定を求めて当該
財産につき自己の法定相続分に応じた共有持分を有することの確認を求める訴えを
提起することは、もとより許されるものであり、通常はこれによつて原告の目的は
達しうるところであるが、右訴えにおける原告勝訴の確定判決は、原告が当該財産
につき右共有持分を有することを既判力をもつて確定するにとどまり、その取得原
因が被相続人からの相続であることまで確定するものでないことはいうまでもなく、
右確定判決に従つて当該財産を遺産分割の対象としてされた遺産分割の審判が確定
しても、審判における遺産帰属性の判断は既判力を有しない結果(最高裁昭和三九
年(ク)第一一四号同四一年三月二日大法廷決定・民集二〇巻三号三六〇頁参照)、
のちの民事訴訟における裁判により当該財産の遺産帰属性が否定され、ひいては右
審判も効力を失うこととなる余地があり、それでは、遺産分割の前提問題として遺
産に属するか否かの争いに決着をつけようとした原告の意図に必ずしもそぐわない
こととなる一方、争いのある財産の遺産帰属性さえ確定されれば、遺産分割の手続
が進められ、当該財産についても改めてその帰属が決められることになるのである
から、当該財産について各共同相続人が有する共有持分の割合を確定することは、
さほど意味があるものとは考えられないところである。これに対し、遺産確認の訴
えは、右のような共有持分の割合は問題にせず、端的に、当該財産が現に被相続人
の遺産に属すること、換言すれば、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の
共有関係にあることの確認を求める訴えであつて、その原告勝訴の確定判決は、当
該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもつて確定し、したがつて、
これに続く遺産分割審判の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰
属性を争うことを許さず、もつて、原告の前記意思によりかなつた紛争の解決を図
ることができるところであるから、かかる訴えは適法というべきである。もとより、
共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、基本的には民法二四九条以
下に規定する共有と性質を異にするものではないが(最高裁昭和二八年(オ)第一
六三号同三〇年五月三一日第三小法廷判決・民集九巻六号七九三頁参照)、共同所
有の関係を解消するためにとるべき裁判手続は、前者では遺産分割審判であり、後
者では共有物分割訴訟であつて(最高裁昭和四七年(オ)第一二一号同五〇年一一
月七日第二小法廷判決・民集二九巻一〇号一五二五頁参照)、それによる所有権取
得の効力も相違するというように制度上の差異があることは否定しえず、その差異
から生じる必要性のために遺産確認の訴えを認めることは、分割前の遺産の共有が
民法二四九条以下に規定する共有と基本的に共同所有の性質を同じくすることと矛
盾するものではない。
 したがつて、被上告人らの前記請求に係る訴えが適法であることを前提として、
右請求の当否について判断した原判決は正当というべきである。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    谷   口   正   孝
            裁判官    高   島   益   郎
            裁判官    大   内   恒   夫

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