弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人藤枝紘一郎の上告理由第一の一、二について
 土地の一部を譲渡したことによって公路に通じない土地(以下「袋地」という。)
を生じた場合には、袋地の所有者は、これを囲繞する土地のうち、土地の譲渡人若
しくは譲受人の所有地(以下、これらの囲繞地を「残余地」という。)についての
み通行権を有するものであることは民法二一三条二項の規定するところであり、同
項が、一筆の土地の一部の譲渡に限らず、同一人の所有に属する数筆の土地の一部
が譲渡されたことによって袋地が生じた場合にも適用されるべきことは、当裁判所
の判例とするところである(最高裁昭和四三年(オ)第一二七五号同四四年一一月
一三日第一小法廷判決・裁判集民事九七号二五九頁参照)。この理は、右譲渡が担
保権の実行としての競売によるものであっても異なるところはない。そして、右囲
繞地通行権は、残余地について特定承継が生じた場合にも消滅するものではなく、
その場合、袋地所有者は、同法二一〇条に基づき残余地以外の囲繞地を通行するこ
とができるものではないと解するのが相当である(最高裁昭和六一年例第一八一号
平成二年一一月二〇日第三小法廷判決・民集四四巻八号一〇三七頁参照)。
 これを本件についてみるのに、原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりで
ある。
 (一) 訴外Dは、一団となっている鹿屋市a町b番cの土地、その北側に隣接す
るb番dの土地及び更にその北側に隣接するe番dの土地(ただし、右b番d及び
e番dの各土地は、昭和六三年一二月八日、合筆及び分筆を経て、e番d及びe番
fの各土地となった。)を所有していた。
 (二) b番cの土地は、他の土地に囲繞されて公路に通じない土地であり、e番
fの土地は、その北側で公道に面している。
 (三) 被上告人は、同六二年六月二四日、b番cの土地を担保権の実行としての
競売によって競落し、同年七月二四日その旨の所有権移転登記を経由した。
 (四) 他方、上告人Aは、同年一二月二三日、合筆及び分筆前のe番d及びb番
dの各土地を担保権の実行としての競売によって競落し、同六三年二月一日その旨
の所有権移転登記を経由した。
 (五) 上告人Aは、平成元年八月二九日上告会社にe番fの土地を売り渡し、同
月三〇日その旨の所有権移転登記を経由した。
 右事実関係の下では、被上告人は、b番cの土地の競落により、合筆及び分筆前
のe番d及びb番dの各土地の一部につき民法二一三条二項の規定する囲繞地通行
権を取得し、被上告人の取得した右囲繞地通行権は、上告会社が右各土地の合筆及
び分筆後のe番fの土地を買い受けた後においても消滅するものではないというべ
きである。右と同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所
論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採
用することができない。
 その余の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属す
る事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎ
ず、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官園部逸夫の反
対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官園部逸夫の反対意見は、次のとおりである。
 私は、上告理由第一の一、二についての多数意見に賛成することができず、原判
決は破棄を免れないと考える。その理由は、次のとおりである。
 民法二一三条二項は、残余地が土地の一部譲渡をした当時の所有者の所有に属す
る限りにおいて、袋地所有者が残余地を無償で通行し得る旨を規定したにとどまり、
残余地が当時の所有者から第三者に譲渡されるなどして、その特定承継が生じた場
合には、同項の規定する囲繞地通行権は消滅し、同法二一〇条一項の規定する囲繞
地通行権を生ずるものと解すべきであって、その理由は、前掲第三小法廷判決にお
ける私の反対意見の中で述べたとおりである。
 以上と異なる見解の下に、被上告人は、上告人Aが合筆及び分筆前のe番d及び
b番dの各土地を競落により取得した後においても、右各土地に対する囲繞地通行
権を有するとした原審の判断は、民法二一〇条一項、二一三条二項の解釈適用を誤
った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は、右の
趣旨をいうものとして理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上によれ
ば、被上告人がb番cの土地から公路に至る通行の場所及び方法として、e番d及
びe番fの各土地のうち本件各係争部分の土地が、被上告人のために必要で、かつ、
囲繞地のため最も損害が少ないものであるかどうかにつき更に審理を尽くさせる必
要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    佐   藤   庄 市 郎
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    大   野   正   男

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