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平成一一年(ネ)第一四六四号不正競争侵害差止等請求・商標権侵害差止請求・商標
権侵害差止等請求各控訴事件〔原審・東京地方裁判所平成八年(ワ)第八六二五号事
件(以下「甲事件」という。)・同年(ワ)第一五〇一一号事件(以下「乙事件」と
いう。)〕(平成一二年二月七日口頭弁論終結)
判       決
控訴人(原審甲事件被告・乙事件原告丙事件原告)ヒットユニオン株式会

右代表者代表取締役  【A】
訴訟代理人弁護士  松尾 眞
同                 難波修一
同                 兼 松 由理子
同                 内藤順也
同                 鳥養雅夫
同                 寒竹恭子
同                 向 宣明
同                 岩波 修
同                 上 村 真一郎
被控訴人(原審甲事件原告・乙事件被告)有限会社東京バイヤー

右代表者代表取締役  【B】
主       文
一 原判決を次のとおり変更する。
1 控訴人は、平成八年六月一七日以前の輸入に係る原判決別紙二「原告ら
標章目録」一ないし四記載の各標章を付した品番M一二〇〇及びM三〇〇〇の中華
人民共和国製のポロシャツが偽造品である旨を新聞、雑誌等のマスメディアによっ
て広告してはならない。
2 控訴人は、平成八年六月一七日以前の輸入に係る原判決別紙二「原告ら
標章目録」一ないし四記載の各標章を付した品番M一二〇〇及びM三〇〇〇の中華
人民共和国製のポロシャツが偽造品である旨を被控訴人の取引先に対し通知しては
ならない。
3 控訴人は、被控訴人に対し、金一二〇万円を支払え。
4 被控訴人のその余の請求及び控訴人の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、第一、第二審とも、甲事件及び乙事件を通じてこれを五分
し、その一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。
三 この判決は、第一項3に限り、仮に執行することができる。
事実
第一 控訴人の求めた裁判
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人は、原判決別紙二「原告ら標章目録」一ないし四記載の各標章(原
告ら標章)を付した品番M一二〇〇及びM三〇〇〇の中華人民共和国(中国)製の
ポロシャツ(本件商品)を輸入し、販売してはならない。
三 被控訴人は、被控訴人の占有する本件商品を廃棄せよ。
四 被控訴人は、控訴人に対し、金五〇〇〇万円及びこれに対する平成一〇年九
月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 被控訴人は、繊研新聞全国版に、原判決別紙三「謝罪広告」記載の謝罪広告
を一回掲載せよ。
六 被控訴人の請求を棄却する。
七 訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
第二 当事者の主張
当事者の主張の要点は、以下に控訴人の主張を付加するほかは、原判決「事
実及び理由」の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
一 商標権侵害の有無について
 原判決は、「被許諾者(オシア社)において許諾契約に違反する行為があっ
た場合でも、許諾契約が解除されない限り、商標権者(FPS社)から許諾を受け
た者が製造販売した商品であるという点に変わりはないから、当該商品の出所が商
標権者に由来していることを示すという意味において、出所表示機能等が害される
ことはない。」と判示した上、許諾契約が解除されない限り、被許諾者が当該商標
を付与して製造した商品は真正商品であると認定している。
 しかし、右判示は妥当でない。すなわち、商標権者以外の第三者がある商標
を付した商品を製造する場合、その商品が真正商品と判断されるには少なくとも商
標権者からの許諾権の授与がなければならない。そして、内容的に無制限の権利が
存在しないように、許諾権も無制限の権利でないことはいうまでもない。つまり、
被許諾者が当該商標を付して製造した商品が真正商品と認定されるには、自己の有
する「許諾権の行使により」商品を製造したと法的に評価されることが必要であ
り、自己の有する「許諾権の範囲内において、かつ、許諾権行使の条件に従って」
当該商標を付した商品を製造したと法的に評価されることが必要である。かかる許
諾権が商標権者と被許諾者との許諾契約により発生するものである以上、その許諾
権の範囲も許諾権行使の条件も許諾契約の内容により定められる。したがって、被
許諾者が、「許諾契約中の許諾権の範囲及び許諾権の行使条件を定めた条項を遵守
して」当該商標を付した商品を製造した場合に、はじめて、その商品は「許諾権の
行使により」製造された商品と法的に評価され、「適法に」当該商標が付された商
品として真正商品と認定されるのである。
 この点、原判決は、許諾契約が解除されずに存在する以上、その許諾契約の
存在自体を理由として、被許諾者が許諾権の範囲ないし許諾権の行使の条件を越え
て商標を付して製造した商品についても真正商品として認定している点で、理論的
な誤りがある。
二 製造地域制限条項に対する違反について
 原判決は、許諾契約の解除の有無を真正商品か否かの判定基準とする実質的
な理由として、①被許諾者が許諾契約の製造地域制限条項に違反したか否かは商標
権者と被許諾者との内部関係というべきものであること、②商標権者としては許諾
契約に定められた商品見本の送付、製造場所への立入り等を通じて被許諾者の監視
が可能であり、被許諾者に違反行為があった場合には許諾契約を解除することがで
きること、③仮に製造地域制限条項に違反したというだけで、直ちに真正商品であ
ることを否定されるのでは、商品の流通を害し、取引者、需要者の利益を著しく害
することになり商標法の趣旨に反することをあげている。
 しかし、右の理由には説得力はない。まず、①については、製造地域制限条
項は許諾権の範囲を画する重要な条項であり、かつ、商標の有する品質保証機能と
密接に結びつく本質的条項である以上、その違反により製造された商品は、許諾権
の行使に基づかないで製造された偽造品と法的に評価される。そして、商標権は準
物権であると理解されており、商標権者は商標の品質保証機能を害することが明ら
かな商品の流通を差し止める本質的権利を有しているのである。したがって、製造
地域制限条項の違反は、商標権者及び被許諾者との内部関係にとどまらず、広く第
三者に対しても影響を及ぼす事項であり、取引の安全の観点からの具体的事案につ
いての公平な解決は、商標付与の「適法」性の有無の判断における利益衡量や、過
去の販売についての損害賠償請求における過失の有無の問題を通して処理すれば足
りるものである。
 しかも、重要な契約内容である製造地域制限条項に違反して製造された商品
は、権限許諾を受けていない「不真正商品」であり、「偽造品」と解すべきであっ
て、このようなライセンサーの管理の及んでいない粗悪な商品を真正品と考えるこ
とは、それを善意で取得する需要者の利益に反することになるし、ライセンス契約
解除までの間としても、自己の管理の及ばない商品を頒布されるという意味で、商
標権者の利益にも反するのである。
また、製造地域制限条項が商標の有する品質保証機能と密接に結びつく本質的
な条項である以上、このような製造地域制限条項に違反して製造された中国製フレ
ッドペリイ商品である、本件商品の品質の程度が当然問題とされるべきである。そ
して、実際に、真正商品である英国製フレッドペリイ商品は、軽くて通気性がよ
く、洗濯の前後を通して着用時の生理的感触がよい上、どのような体格の人にもフ
ィットして着用快適感があり、これは洗濯の前後を通して変わらないのに対し、中
国製商品はこれらの点で劣っており(乙一一)、本件商品と真正商品とでは、着用
感、快適感の点で顕著な優劣の相違が認められるのである。
 ②については、あくまで一般論であり、各事案の個別具体的な事情を無視し
た抽象的な利益衡量にとどまっている。紛争の解決とは、本来、各事案ごとの状
況、各関係者の利害関係等の個別具体的な事情を考慮に入れながら、各関係者の利
益衡量を行い、各関係者の利益の調和を図り、もって妥当な結論を導くものである
が、原判決は各事案に即した具体的な利益衡量を行っておらず、本件紛争に即した
妥当な解決を図ったものとは到底理解できない。
 ③についても、前記の②への批判が当てはまる。つまり、原判決は善意の取
引者を想定しているが、かかる並行輸入関連のビジネスにおいては、偽造品だと知
りつつ真正商品であると偽って取引を行う悪意の第三者、すなわち、ライセンシー
と同程度にライセンス契約に関与しその間隙を突こうとする悪質な者も多数存在す
るのが実状であって、このような悪意の取引者については、一般消費者と同様の需
要者であるとしても、もはや保護されるべき利益は存しない。実際に、被控訴人
は、過去に偽造品取扱いにより摘発されており、このような悪意の取引者を保護す
ること自体が不当である。
 以上のとおり、原判決の示した解除の有無により真正商品か否かを判定する
という基準は、理論的にも実質的にも妥当でなく、このような一刀両断な判断基準
は、各事案における個別具体的な事情を考慮に入れつつ、適正、かつ、妥当な解決
を図る道具としての裁判基準としても相当なものとはいえないのである。そもそ
も、ライセンス契約は、その内容となる具体的個別的な諸条件を遵守することが当
然の前提となった上でのライセンスなのであるから、単にライセンス契約の締結が
あれば、許されていない商品の製造や、ロイヤリティの不払や、製造を許された地
域外の製造があっても、一切関係なく全てが真正商品となってしまうという事態
は、到底許されるべきではない。
三 本件許諾契約の解除について
 FPS社とオシア社の本件許諾契約は、オシア社の契約違反に基づき、平成
八年六月一四日付解除通知書(乙一八)の送付により、解除されたものであり、原
判決はこの点について誤りがある。
 すなわち、控訴人は、原審において、本件許諾契約が、オシア社の契約違反
に基づき平成八年六月一四日付けで解除されていると主張していたところ、前示の
ような原判決の理論によれば、許諾契約が解除された後は、もはや当該商品の出所
が商標権者に由来するとはいえない状態となり、商標権を侵害する「偽造品」とな
るのであるから、「かかる商品は偽造品であって、何人もかかる商品を販売等する
ことによりかかる侵害標章を使用することはできない」旨を広告したり第三者に通
知したりする行為は、正当な商標権行使の一環として適法なものと評価されなけれ
ばならない。
 したがって、仮に、原判決主文第一、第二項のように、控訴人側の営業妨害
行為の禁止を命ずるのであれば、その対象とされるのが、命令時から将来すべてに
わたって製造される商品か、解除時までの商品に制限されるのかは極めて重要な問
題となるのである。それにもかかわらず、原審においてはこの解除の点について特
段の審理もすることなく、漫然と現在及び将来の営業妨害行為の禁止を認定してお
り、審理不尽といわなければならない。
 なお、本件許諾契約の締結及び解除の経緯を述べる、FPSUK社及びそれ
を引き継いだFP社の社長である【C】の宣誓供述書(乙一〇)は、同人の提出し
た追加の宣誓供述書(乙四九)等からみても、十分に信用できるものである。
四 過失の認定等について
 控訴人には、前記広告掲載及び通知書発送等の行為をなすに当たり、各論文
(乙一二ないし一四)等に基づき、十分な法的調査・検討を踏まえた上で、自己の
権利に対する侵害が生じていると判断したものである。しかも、本件事案は、極め
て高度の法的評価の問題であり、明確な判例等が存しないから、平成八年四月ころ
の段階で、現実に生じているライセンス契約違反の商品が、日本国内へ大量に頒布
されることを認識しつつ、あえてこれを看過し、新聞広告や通告書の送付等の手段
により自己の権利を守るための行為を差し控えるような態度をとることを、商標権
者に期待するのは不可能であったから、これらの行為についての故意及び過失を欠
くものである。現に、原判決の言渡し後も、複数の論文(乙一五ないし一七)は、
原判決のように取引の実体を考慮しない結論が、商標権者側に多大なリスクを負わ
せるものであることを指摘している。
 また、本件で問題とされた繊研新聞における警告の広告では、被控訴人の氏
名は表示されておらず、右広告行為等により被控訴人の信用が毀損されたとはいえ
ないのである。
 さらに、本件においては、問題とされている控訴人の広告掲載行為や通告行
為よりも前に、平成七年一一月下旬及び平成八年四月上旬ころ、本件と同様のフレ
ッドペリイの中国製商品について、神戸税関六甲アイランド出張所及び長崎税関三
池支署により、知的財産権侵害物品として積戻しを行う旨の判断が示されていたと
いう事情が存する。本件訴訟の契機となった大阪税関南港出張所における本件商品
の通関問題が生じるまでの間に行われた、このような連続する公的判断の存在は、
控訴人が、製造地域制限条項に違反して製造された商品は偽造品であるとの認識を
形成するに当たって、有力な根拠となったものである。
     理     由
一 原判決の引用
 当裁判所は、被控訴人の本訴請求のうち、被控訴人が「原告ら標章」を使用す
る権限を有さない旨を、控訴人が新聞、雑誌等のマスメディアによって広告し、そ
の旨を被控訴人の取引先に対し通知することを禁止する請求は理由がないものと認
め、その限度で原判決を変更するが、その余の請求は理由があるものと認め、ま
た、控訴人の本訴請求は、いずれも理由がないものと判断する。
 その理由は、当審における控訴人の主張について、次に項を改めて述べるほか
は、原判決の「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」と同じであるから、
これを引用する(ただし、後記訂正部分を除く。)。
二 当審における控訴人の主張について
1 商標権侵害の有無について
 控訴人は、被許諾者が、許諾契約中の許諾権の範囲及び許諾権の行使条件を
定めた条項を遵守して当該商標を付した商品を製造した場合に、はじめて、その商
品は許諾権の行使により製造された商品と法的に評価され、適法に当該商標が付さ
れた商品として真正商品と認定されるべきであると主張する。
 しかしながら、当該許諾契約に基づき製造された商品については、その一部
の条項に違反して製造されたものであっても、当該商標の出所表示機能等が害され
ることがなく、商品の品質が他の真正商品と実質的に同一であるような場合は、商
標権侵害の実質的違法性を欠き、真正商品と認めるべきであることは、原判決の説
示する(原判決二八頁六行~三七頁一一行、ただし、後記訂正部分を除く。)とお
りであるから、控訴人の主張は採用することができない。
2 製造地域制限条項に対する違反について
 控訴人は、製造地域制限条項が許諾権の範囲を画する重要な条項であり、か
つ、商標の有する品質保証機能と密接に結びつく本質的条項である以上、その違反
により製造された商品は許諾権の行使に基づかないで製造された偽造品と法的に評
価されると主張する。
 しかし、製造地域制限条項の違反が、商標権者及び被許諾者との内部関係と
いうべきものであって、当該条項に違反したというだけで直ちに真正商品であるこ
とを否定するのは、商品の流通の自由を阻害するものであり、他方、商標権者に
は、違反防止の措置及び解除等が可能であることは、いずれも原判決の説示する
(原判決三〇頁五行~三三頁六行)とおりであるから、当該条項に対する違反によ
って本件商品が真正商品に当たらないということはできず、控訴人の主張を採用す
る余地はない。
 また、控訴人は、本件商品と英国製の真正商品とでは着用感及び快適感の点
で顕著な優劣の相違が認められると主張するが、控訴人提出の証拠(乙一一)によ
っても、両商品の品質が実質的同一性を欠くとまでは認められないから、この主張
も採用することができない。
 さらに、控訴人は、並行輸入関連のビジネスにおいて、偽造品だと知りつつ
真正商品であると偽って取引を行う悪意の第三者が多数存在するのが実状であっ
て、このような悪意の取引者については、保護されるべき利益は存しないし、実際
に、被控訴人は、過去に偽造品取扱いにより摘発されており、このような悪意の取
引者を保護すること自体が不当であると主張する。
 しかしながら、被控訴人が、本件商品が製造地域制限条項に違反して製造さ
れたものであることを知っていたこと、この種業界において、偽造品だと知りつつ
真正商品であると偽って取引を行う悪意の第三者が多数存在することを認めるに足
る証拠はなく、仮に、偽造品を真正商品と偽って取引を行う業者が存在し、また、
被控訴人が、過去に偽造品取扱いにより摘発されていることがあったとしても、そ
のことによって直ちに、被控訴人が悪意の取引者であって保護に値しないと断言で
きるものでもないから、控訴人の主張は失当といわなければならない。
 以上の説示に照らして、原判決が、各事案に即した具体的な利益衡量を行っ
ておらず、本件紛争に即した妥当な解決を図ったものとは理解できない旨の控訴人
の主張も、採用することができず、その他当審における本件商品が真正商品とはい
えない旨の控訴人の主張は、原審における主張の範囲を実質的に出るものではな
く、それらがいずれも採用できないことは、原判決の説示するところに照らして明
らかといわなければならない。
3 本件許諾契約の解除について
1 原判決二四頁末行目の次に、改行して次のとおり加える。
「5 FPS社は、日本において中国製フレッドペリイ商品が税関において差
止めになった直後の平成七年一〇月ころ、オシア社に対し、事情説明を求めるFA
Xを入れ、オシア社からは覚えがないとの回答を得た。また、FPS社を引き継い
だFPH社は、平成八年四月初旬ころに、オシア社より中国製商品のサンプルの送
付を受けた際も、同社に対し、本件許諾契約おいては中国での製造を許容していな
いことを通告した上、同社が製造しているフレッドペリイ商品の製造国を確認し
た。
 その後、FPH社は、オシア社より、フレッドペリイ商品を中国で製造
しているとの回答を受け、オシア社が本件許諾契約上の製造地域制限条項に違反し
てることを認識し、再度、本件許諾契約上の製造地域制限条項に違反している旨を
通告した。
 さらに、FPH社が、オシア社に対し、同社製造のフレッドペリイ商品
のサンプル及び製造者の情報について回答を求めたところ、明確な回答も得られな
かったことから、FPH社は、オシア社に対し、製造地域制限条項、販売地条項、
ライセンス料支払条項違反等を理由に、平成八年六月一四日付けの通知書(乙一
八)をFAX及び郵送により発送してオシア社との本件許諾契約を解除し、同通知
書は、遅くとも同年六月一六日にはオシア社に到達した(以上につき乙一〇、一
八、一九、四九)。」
2 原判決三三頁七行目から一一行目までを、次のとおりに改める。
「 なお、本件許諾契約は、平成八年六月一四日付けの通知書のオシア社へ
の到達により解除されたものと認められるが、それ以前に同社が原告ら標章を付し
て販売し、第三者である被控訴人が取得した本件商品が、遡及的に商標権侵害の違
法性を有することとなるものではない。」
3 原判決三六頁六行目の「被告は」を「FPH社」に改め、同七行目の「F
PSUK社」の次に「国際事業部門」を、同七行目から八行目までの「フレッド・
ペリイ・リミテッド」の次に(以下「FP社」という。)を、それぞれ加える。
4 原判決三七頁一〇行目「相当であるから、」から末行目までを、次のとお
りに改める。
「相当といえる。なお、本件許諾契約は、前示のとおり既に解除されたもの
と認められるが、その効力発生の平成八年六月一七日以前に被控訴人が取得した本
件商品が、遡及的に右の違法性を有するものではないから、その販売が禁止された
り、廃棄が求められるものではなく、今後、被控訴人が原告ら標章を付した品番M
一二〇〇及びM三〇〇〇の中国製のポロシャツを輸入し、販売するおそれがあるこ
とを認めるに足る証拠はないから、結局、控訴人の請求は、その余の点について判
断するまでもなく、すべて理由がないこととなる。」
5 原判決三八頁五行目の「したがって、」から八行目までを、改行して次の
とおりに改める。
「 ただし、本件許諾契約は、平成八年六月一四日付けの通知書のオシア社
への到達により解除されたものと認められるから、その効力発生日の同月一七日以
降において、被控訴人が原告ら標章を使用する権限を有しないことは当然であり、
控訴人は、その旨を新聞、雑誌等のマスメディアによって広告し、また、被控訴人
の取引先に対し通知することができるものといわなければならない。
 そうすると、控訴人による本件商品に関する広告及び文書送付行為は、
不正競争防止法二条一項一一号に該当するから、被控訴人は、控訴人に対し、同法
三条一項により、主文第二、第三項のとおり、その差止めを求めることができる
が、現時点において、被控訴人が原告ら標章の使用権限を有しない旨を新聞等に広
告したり、取引先に対し通知したりすることを禁止することは、許されないことと
いえる。」
4 過失の認定等について
 控訴人は、本件事案が、極めて高度の法的評価の問題であり、明確な判例等
が存しないから、平成八年四月ころの段階で、現実に生じているライセンス契約違
反の商品が、日本国内へ大量に頒布されることを認識しつつ、あえてこれを看過
し、新聞広告や通告書の送付等の手段により自己の権利を守るための行為を差し控
えるような態度をとることを、商標権者に期待するのは不可能であったから、これ
らの行為についての故意及び過失を欠くものであると主張する。
 確かに、本件商品のような製造地域制限条項違反の商品が、並行輸入におけ
る真正商品に該当するか否かは、法律上、一義的に明解な問題とはいい難いものと
解されるが、そうである以上、当該商品を販売する者が商標使用について無権限で
あって本件商品が偽造品である旨を、新聞等のマスメディアに広告したり、重要な
取引先等に通知することについては、より一層慎重な配慮が必要とされるべきであ
り、控訴人において、販売等の差止めを求める仮処分等の司法手続によらず、ま
た、本件許諾契約自体が解除されていることを確認することなく、一方的に、本件
商品が偽造品であるとする前記広告掲載及び通知書発送等の行為をなしたことに
は、少なくとも過失が存するものといわなければならない。したがって、控訴人の
主張を採用することはできない。
 また、新聞広告において、本件商品を明示した上これを偽造品と断定して掲
載し、主要な取引先に対して本件商品の販売を即刻中止するよう通知したことは、
原判決認定(原判決二三頁四行~二四頁一一行)のとおりであり、これらの事実に
照らして、右広告行為等により被控訴人の信用が毀損されたとはいえないとする控
訴人の主張が失当であることも明らかといわなければならない。
 さらに、平成七年一一月下旬及び平成八年四月上旬ころ、本件商品と異なる
フレッドペリイの中国製商品について、税関手続により、知的財産権侵害物品とし
て積戻しを行う旨の判断が示されていたという事情が存するからといって、本件商
品自体が偽造品であるとする前記広告掲載及び通知書発送等の行為をなすことが許
されるものではなく、これらの行為に過失がないということもできないから、この
点に関する控訴人の主張もまた採用することができない。
三 以上によれば、控訴人の本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却した
原判決は正当であるが、被控訴人の本訴請求のうち、被控訴人が「原告ら標章」を
前示解除の後に使用する権限を有さない旨及び前示解除の後の輸入に係わる本件商
品が偽造である旨を、控訴人が新聞、雑誌等のマスメディアによって広告し、その
旨を被控訴人の取引先に対し通知することを禁止する請求は失当であるから、被控
訴人の本訴請求をすべて認容した(ただし、損害賠償額については一二〇万円の限
度)原判決は一部不当であり、控訴人の本件控訴には一部に理由があるから、その
限度で原判決を変更することとし、控訴費用の負担につき、民事訴訟法六一条、六
四条、六七条を適用して、主文のとおり判決する。
   東京高等裁判所第一三民事部
       裁判長裁判官田  中  康  久
          裁判官  石  原  直  樹
          裁判官  清  水     節

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