弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 一 上告代理人新美隆、同小野正典、同鈴木宏一、同鈴木淳二の上告理由第二に
ついて
 被上告人らが各上告人に対してした懲戒免職の処分(以下「本件各処分」という。)
は、上告人らが所論の「賭命義務」なるものに違反したことを理由とするものでは
ないから、論旨は採用することができない。
 二 同第三について
 原審の適法に確定した事実関係の下においては、上告人らが昭和四七年四月二七
日に防衛庁正門付近において行った行為は、単なる対外的な宣伝行為にほかならな
いものというべきである。これと同旨の原審の認定判断は、正当として是認するこ
とができ、原判決に所論の違法はない。右違法のあることを前提とする所論違憲の
主張は、その前提を欠く。論旨は採用することができない。
 三 同第四について
 自衛隊法(以下「法」という。)四六条の規定は、法第五章第四節の隊員の服務
に関する規定を前提として解釈すべきものであることが明らかであるところ、同節
の各規定が定める隊員の義務の内容自体は不明確であるとはいえず、社会通念に照
らせば、通常の判断能力を有する隊員の理解において、具体的場合に当該行為が同
条二号にいう「隊員たるにふさわしくない行為」に当たるか否かはおのずから明ら
かとなるものということができる。同号の規定が広汎かつ不明確であることを前提
とする所論憲法三一条違反の主張は、その前提を欠く。
 そして、原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人らが昭和四七年四月二
七日に防衛庁正門付近において行った行為及び同月二八日にa公園で開催された「
四・二八沖縄返還協定粉砕、自衛隊沖縄派兵阻止、日帝の釣魚台略奪阻止、入管二
法粉砕中央総決起集会」において行った行為は、後記四の2に説示するとおりのも
のであって、隊員としての信用を傷つけ、又は自衛隊の威信を損するものであるこ
とは明らかである。これが法四六条二号の定める懲戒事由に当たるとした原審の判
断は正当として是認することができる。
 論旨は、これと異なる見解に立って原判決を論難するものであって、採用するこ
とができない。
 四 同第五について
 1 憲法二一条の保障する表現の自由は、民主主義社会における重要な基本的人
権の一つとして特に尊重されなければならないものであり、これをみだりに制限す
ることは許されないが、表現の自由といえども国民全体の共同の利益を擁護するた
め必要かつ合理的な制限を受けることは、憲法の許容するところであるというべき
である。そして、行政の中立かつ適正な運営が確保され、これに対する国民の信頼
が維持されることは、憲法の要請にかなうものであり、国民全体の共同の利益にほ
かならないものというべきところ、自衛隊の任務(法三条)及び組織の特性にかん
がみると、隊員相互の信頼関係を保持し、厳正な規律の維持を図ることは、自衛隊
の任務を適正に遂行するために必要不可欠であり、それによって、国民全体の共同
の利益が確保されることになるというべきである。したがって、このような国民全
体の利益を守るために、隊員の表現の自由に対して必要かつ合理的な制限を加える
ことは、憲法二一条の許容するところであるということができる。以上は、当審大
法廷判決(最高裁昭和四四年(あ)第一五〇一号同四九年一一月六日大法廷判決・
刑集二八巻九号三九三頁、最高裁昭和六一年(行ツ)第一一号平成四年七月一日大
法廷判決・民集四六巻五号四三七頁)の趣旨に徴して明らかである。
 2 原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人らが昭和四七年四月二七日
に防衛庁正門付近において行った行為及び同月二八日にa公園で開催された「四・
二八沖縄返還協定粉砕、自衛隊沖縄派兵阻止、日帝の釣魚台略奪阻止、入管二法粉
砕中央総決起集会」において行った行為は、自衛官の制服や官職を利用し、それに
よる宣伝効果を狙ったものであるとの評価を免れない上、上告人らが不特定多数の
者に対して読み上げた要求書及び声明の内容並びにその演説における上告人らの主
張は、議会制民主主義の政治過程を経て決定された国の政策につき、「いままさに
日本帝国主義が、再びアジア人民への圧迫と殺りくに乗り出さんとしている」「わ
れわれは、もはやこの帝国主義支配者どもの横暴と圧政に、絶対に耐えることはで
きない」「帝国主義佐藤政府は、われらを侵略と人民弾圧のせん兵とせんがために、
四次防と沖縄派兵を必死になって強行しようとしている」などの一方的かつ過激な
表現をもって公然と批判するとともに、右政策決定を前提とする上司の命令に服し
ようとしない態度を明らかにし、あるいは、「自衛隊兵士は、兵営監獄の中で抑圧
され、差別され、あらゆる屈従を強いられてきた」などとして自衛隊をひぼう中傷
するものであるということができる。自衛官が、その制服や官職を利用し、それに
よる宣伝効果を狙って、国の政策を公然と批判し、これに従わない態度を明らかに
するようなことは、本来政治的中立を保ちつつ一体となって国民全体に奉仕すべき
責務を負う自衛隊の内部に深刻な政治的対立を醸成し、そのため職務の能率的で安
定した運営が阻害され、ひいては議会制民主主義の政治過程を経て決定された国の
政策の遂行にも重大な支障を来すおそれがあるものというべきである。しかも、前
記のような表現をもって隊員が自衛隊を公然とひぼう中傷することは、隊員相互の
信頼関係を破壊し、自衛隊の規律を乱すものといわざるを得ない。右の弊害を防止
するためにこれを懲戒処分の対象とするときは、上告人らの表現の自由が一定の制
約を受けることにはなるが、それは、隊員の身分を保有する限りにおいて、その職
務を適正に遂行するために課せられた制約にすぎず、右の弊害の重大さと比較すれ
ば、利益の均衡を失するものとはいえない。
 そうすると、上告人らの右各行為を懲戒処分の対象として、その表現の自由を制
約することは、前記のような国民全体の利益を守るために必要かつ合理的な措置で
あるということができ、右制約が憲法二一条に違反するものといえないことは、前
記各大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。これと同旨の原審の判断は、正当と
して是認することができ、論旨は採用することができない。
 五 同第六について
 原審の適法に確定した事実関係の下においては、被上告人らが自衛隊法施行規則
八五条二項に基づいて上告人らの供述の聴取等を行うことなく本件各処分を行った
ことに違法の点はないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判
決に所論の違法はない。所論は違憲をも主張するが、その実質は単なる法令違背の
主張にすぎず、採用することができない。
 六 同第七について
 隊員につき、法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、
懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量にゆだねられてい
るものと解されるところ(昭和四七年(行ツ)第五二号同五二年一二月二〇日第三
小法廷判決・民集三一巻七号一一〇一頁参照)、原審が適法に確定した前記四の2
記載の事実関係の下においては、被上告人らが各上告人に対してした本件各処分が
社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したものと認めることはできない。こ
れと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、論旨は採用することが
できない。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    三   好       達
            裁判官    高   橋   久   子
            裁判官    遠   藤   光   男

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