弁護士法人ITJ法律事務所

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主         文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求める裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,原判決別紙交通事故目録記載の交通事故につき,控訴人に
対し,保険金の支払義務があることを確認する。
(3) 訴訟費用は,第1,第2審とも,被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
 主文と同旨
第2 事実関係
 事実関係は,次のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」欄の第2記載
のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決2頁25行目の「保険料」を「保険金」と改める。
(2) 同2頁26行目から3頁1行目までを次のとおり改める。
「(2) 平成14年3月26日,同日を振替日とする同月分の分割保険料の口座振
替が預金残高不足により振替不能となったため,被控訴人は同年4月18
日から22日ころ同年4月分の分割保険料の振替日である同月26日の振
替保険料を同年3月分及び同年4月分の分割保険料の合計2万0700円
とする旨の通知を控訴人に郵送したが,控訴人は届出住所から転居してい
たため,同通知は転居先不明で返戻され,同月26日の口座振替も預金残
高不足により振替不能となった。」
第3 争点に対する判断
1 控訴人は,平成14年5月8日控訴人とAとの間でAが控訴人に対し滞納保険
料分の金員を貸し付ける旨の合意が成立しており,同月10日にAは原告から
滞納保険料を領収した旨の領収書を作成しているから,同日a保険は控訴人か
ら滞納保険料を受領したことになると主張する。
 確かに,平成14年5月8日に控訴人とAとの間でAが控訴人に対し滞納保険
料分の金員を貸し付ける旨の合意が成立しており,かつ,同月10日にAが控訴
人から滞納保険料を領収した旨の領収書を作成したことが,Aによる滞納保険
料の出捐と見ることができるならば,上記領収書作成の段階で控訴人はa保険
に滞納保険料の払込みをしたことになり,本件事故に特約5条は適用されない
ことになる。
 しかしながら,以下に述べるとおり,控訴人が平成14年5月8日にAに対し滞
納保険料の立替を依頼した事実は認められるが,Aがその立替を決意したのは
同月13日のことであって,それまでにAが控訴人の上記依頼を承諾した事実を
認めることはできず,本件事故発生前に控訴人とAとの間で上記消費貸借契約
が成立しているということはできない。
2 すなわち,証拠(甲1,2,乙7の1,乙8,9,12の1,控訴人本人,証人A)及び
弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) Aは,控訴人の両親と古くから親交があり,控訴人のことは同人が幼いころ
から知っており,控訴人が元妻(平成14年3月31日別居,同年5月27日離
婚)と婚姻する際の媒酌人であった。
(2) Aは,前記(上記補正後の原判決2頁26行目から3頁1行目)分割保険料
の振替不能通知が平成14年5月7日にa保険に廻ってきたため,早速控訴人
に電話して滞納保険料の払込みを督促しようとしたが電話が通じず,控訴人
の母と控訴人の元妻を介して,漸く控訴人に,本件保険契約の同年3月,4月
分の保険料が未納であり,自動車事故が生じても保険金が支払われない状
態にあること,既に口座振替は停止されているので同年5月分も併せて3か
月分合計3万1050円の送金が必要であることが伝えられた。
(3) 同月8日,Aの外出中控訴人からa保険に電話があったため,Aが折り返し
電話したところ,控訴人は,現在滞納保険料を支払う余裕がないので,ボー
ナスで返すから,立て替えておいて欲しいと頼み込んできたが,Aは,以前控
訴人に金員を貸して控訴人が返済をしなかったことがあったため,本当にボ
ーナスで返済できるのか信用できないと言って,控訴人の上記依頼に対する
応否を明らかにしなかった。
(4) その後もAは控訴人の滞納保険料の立替に応じようかどうか迷っていた
が,同月10日に至り,翌日が土曜日,翌々日が日曜日であることから,控訴
人がその間に自動車事故を起こすといけないと思い,その場合に備えるつも
りで,同日付けで,同年3月ないし5月分保険料合計3万1050円を領収した
旨を記載した被控訴人名義の控訴人宛領収書をとりあえず作成した。なお,
この時も,Aは未だ保険料を立て替えることには躊躇を感じていて,控訴人の
依頼を承諾するかどうかは,態度を決めかねていた。
(5) ところが,前記(原判決「事実及び理由」欄第2の1(4),原判決別紙交通事
故目録)のとおり同月11日午前2時30分ころ本件事故が発生し,同日午前3
時ころ,控訴人はAに電話で本件事故を起こした旨伝えてきたが,この時は,
Aが控訴人に控訴人の目下の対応の仕方を指導し,朝一番にもう一度電話
を入れるよう指示するに留まった。
(6) そして,同日午前7時か8時ころ,控訴人は再びAに電話してきて,保険金
の支払が受けられるかどうか尋ねるため,Aは,同月13日の月曜日になって
被控訴人に問い合わせるまでは何ともいえないと回答した。なお,その際か
その後に,Aは控訴人に対し,同月10日に前記(4)の領収書を作成したことを
告げている。
 そして,その後同月14日まで,Aと控訴人は,日に3,4回電話で連絡を取
り合って,同月10日に控訴人がa保険に滞納保険料を持参したことにしよう
か等,控訴人に本件事故の保険金が支払われるようにする方策を相談して
いるのであるが,その電話の中で,控訴人は再三「何故早く滞納保険料の入
金処理をしなかったのか。」とAを責めている。
(7) その間,Aは,同月12日の日曜日に被控訴人の担当者Bに電話して事故
の発生を報告し,その時は滞納保険料の払込みの有無に言及しなかったが,
同月13日朝,被控訴人にファックスで正式に事故の報告をし,その後a保険
を尋ねてきた被控訴人のC課長とBに対して,何とか有責にしたいとの思いか
ら,同月10日に滞納保険料の払込みがあった旨述べている。
(8) 他方,Aは,同月13日に控訴人に電話して至急滞納保険料を送金するよう
指示するとともに,自ら控訴人の滞納保険料として3万1050円を,保険料保
管口座として被控訴人に届出がされている「有限会社a保険事務所代表取締
役A」名義の普通預金口座へ入金した。そして,控訴人は,同日,a保険へ3
万1050円を現金書留で送金し,この現金書留は,同月14日,a保険に到着
して,同月15日,後記のとおりAに呼ばれてやってきた控訴人に前記(4)の領
収書が交付されている。また,Aによって上記普通預金口座に入金された控
訴人の滞納保険料は,同月29日に他の顧客の保険料とともに,被控訴人の
預金口座に一括入金されている。
(9) なお,Aは,一旦は前記のとおり同月10日に控訴人がa保険に滞納保険料
を持参したと被控訴人に説明することを考え,同月13日か同月14日に前記
C課長から,本件事故は滞納保険料の払込みと時期が接近しているため調
査会社の調査が入ると告げられて,同月15日控訴人を呼んで対策を練ろう
としたが,虚構であることが判明すれば詐欺罪になりかねないと思い直して,
結局同日やってきた控訴人に上記のような説明はできないと告げた。
 そして,同月17日三重県四日市市のファミリーレストランでA,C課長及びB
が控訴人と会った際に,AはC課長及びBに同月10日には滞納保険料を受
け取っていないことを打ち明けたため,C課長らは控訴人に本件事故につい
ては免責とする旨告げた。
3 なお,控訴人が平成14年5月8日にAに対し滞納保険料の立替を依頼した際
にAはこれを承諾した旨の甲2の記載及び控訴人本人尋問の結果がある。しか
しながら,これらの証拠には,同月11日,控訴人が本件事故を起こした後Aと交
わした電話の中で,Aは同月10日に控訴人の滞納保険料を払い込んだと言っ
ていた旨の記載又は供述があるが,前記のとおり,この段階では未だ上記滞納
保険料を払い込んでいないAが控訴人にそのようなことを言ったとはおよそ考え
難い。しかも,上記甲2及び控訴人本人尋問の結果には,Aは,当初同日滞納
保険料を同月10日朝入金したと言っていたのが,その後の電話でさらに尋ねる
と昼過ぎに入金したと言い出したため,控訴人が午後3時までに入金していれ
ば記録が残っている筈だと言うと,Aは午後3時過ぎに入金したので同月13日
月曜日の入金扱いになると言った等という部分もあるが,Aが控訴人に対してこ
のような弁解をしなければならない理由はなく,この部分は滞納保険料が同日
入金されていることと辻褄を合わせるための記載又は供述と考えるほかない。
他方,前記認定にかかる,Aが同月8日に控訴人から滞納保険料の立替えを依
頼されてから同月13日にこれを払い込むまでの経過を裏付ける乙8の記載及
び証人Aの証言は,全体として了解し得るものといえる。そして,これらの各点を
総合すると,控訴人が平成14年5月8日にAに対し滞納保険料の立替を依頼し
た際にAはこれを承諾した旨の甲2の記載及び控訴人本人尋問の結果は,にわ
かに信用することができないものというべきである。
4 そうすると,平成14年5月8日に控訴人とAとの間でAが控訴人に対し滞納保
険料分の金員を貸し付ける旨の合意が成立しているものとはいえず(本件事故
発生前に上記消費貸借契約が成立しているともいえない。),したがって,また,
同月10日にAが原告から滞納保険料を領収した旨の領収書を作成した段階
で,控訴人がa保険に滞納保険料を払い込んだものと認めることもできないこと
になる。
5 結論
 したがって,本件事故には特約5条が適用されるので,控訴人の請求は理由
がなく,これを棄却した原判決は結論において相当であり,本件控訴は理由が
ないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第2部
裁判長裁判官    熊  田  士  朗
裁判官    川  添  利  賢
裁判官    玉  越  義  雄

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