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神戸地方裁判所 平成14年7月15日判決 平成13年(わ)第1075号 強制
わいせつ被告事件
           主       文
    被告人を懲役2年に処する。
   この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。
理       由
(罪となるべき事実)
 被告人は,婦女に強いてわいせつな行為をしようと企て,平成13年10月8日
午前零時17分ころ,神戸市A区Ba丁目b番所在のC電鉄D駅北側出入口におい
て,白い杖をついて通行中のV(当時19歳)に対し,その背後からその臀部を着
衣の上から手の平で撫で,さらに,驚いて振り向いた同女のスカート内に手を差し
入れて下着の上からその陰部を手指で触り,もって,強いてわいせつな行為をした
ものである。
(証拠の標目)ー括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号ー
 省略
(補足説明)
 弁護人は,被告人が,被害者Vの臀部を着衣の上から手の平で撫でたことは事実
であるが,同女のスカート内に手を差し入れて下着の上からその陰部を手指で触れ
た事実はない旨主張するところ,前掲関係各証拠によれば,弁護人主張の点を含め
て,判示事実は優にこれを認めることができるのであるが,所論にかんがみ補足し
て説明を加える。
 被害者Vは,前掲検察官に対する供述調書において,同女が判示D駅北側出入口
の階段を上りきった際,背後から何者かに臀部を手で撫でられ,驚いて振り向く
と,その犯人が同女のスカート内に手を差し入れて下着の上からその陰部を手指で
触った旨明確に供述するところ,同女が敢えて虚偽供述をする理由は全くないし,
何らかの勘違いによる供述であると疑わせる事情は何ら認められない上,同女は視
力障害者(全盲)であるが,その供述は,内容的にも何ら不自然なところはなく,
同女が感得できた限りの状況について,その受けた感触等を根拠になされた具体的
かつ真摯な供述であり,その供述の信用性は十分である。加えて,被告人は捜査段
階において,当初は,被害者のお尻に触ったことは間違いないが,スカートの中に
手を入れた覚えはない旨述べていたものの,犯行日の3日後である平成13年10
月11日からは,一貫して,振り向いた被害者に対し,少し腰を屈めてスカートの
下から手を入れて下着の上からその陰部を触った旨供述するところ,右手が被害者
の両足の太股の内側に当たる感触や,指の先がストッキングに触れる感触があった
と供述するなど,その供述の信用性も十分である。
 これに対し,当公判廷において,被告人は,被害者のお尻に触ったことは間違い
ないが,そのスカートの中に手を入れたことはない旨,前記捜査段階の自白調書は
被害者の供述に合わせておけと取調官に強制されてなしたものである旨供述するの
であるが,被告人の一連の供述内容には,前後矛盾する部分が多々見られるなど,
不自然・不合理な弁解というほかはなく,その供述態度は真摯さに欠けるものとい
わざるを得ないから,被告人の前記公判供述は到底信用できるものではない。
 以上のとおり,前掲関係証拠によれば,判示犯罪事実は優にこれを認めることが
できるから,弁護人の主張は理由がない。
(法令の適用)
 罰     条  刑法176条前段  
 宣  告  刑  懲役2年
 刑の執行猶予   刑法25条1項(5年間猶予)
(量刑の理由)
 本件は,被告人が被害者に対して判示の強制わいせつ行為に及んだ事案であると
ころ,もとよりその動機に酌むべき事情はなく,公共性の高い駅の出入口におい
て,無法なわいせつ行為に及んだ本件犯行は悪質であり,殊に,被告人は,被害者
が視力障害者(全盲)であることを知りつつ,そのような被害者であれば顔を見ら
れることもないとして犯行に及んだものであって,極めて卑劣,破廉恥な犯行とい
うべきこと,被害者の被った心身の打撃は大きく,被害感情は今なお極めて厳しい
こと,加えて,被告人が犯行の一部について,公判廷において,不自然不合理な弁
解を続けて恥じるところがないことを併せ考慮すると,被告人の刑事責任は重いと
いわざるを得ず,この際,被告人を実刑に処すべきであるとも考えられるが,他
方,強制わいせつ行為の程度自体は比較的低いものであること,弁護人を介して被
害者に謝罪し,被害弁償金として金20万円を支払う旨提案し,その後,同額を供
託したこと,被告人には業務上過失傷害による罰金前科のほか前科がないこと,偶
発的な犯行という側面も認められること,被告人は,保釈後,実母と同居し,真面
目に稼働していること,実母において被告人の更生を期待し,その支援を約してい
ること,被告人は知的能力にやや劣る様子が窺われるところ,前記不自然不合理な
公判供述は,被告人に反省の態度がないことのみによるものとは必ずしも断じがた
いこと,未決勾留を経て被告人は被告人なりの反省の態度を示していることなど,
被告人のために斟酌すべき事情も認められるので,これらの事情を最大限に考慮
し,主文のとおり量定した上,今回に限りその刑の執行を猶予することとした次第
である。
 よって,主文のとおり判決する。
平成14年7月15日
     神戸地方裁判所第11刑事係甲
裁 判 官  杉森研二

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